(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、紙おしぼりやペーパータオルには、2層構造、又は3層構造の積層紙が使用されている。
紙おしぼりは、水分を含んだ状態で使用されるため、積層紙に水分を含ませた後、袋に封入される。一方、ペーパータオルは、例えば、テーブルにこぼれた水分を拭き取るために使用される。このペーパータオルは、水分を含んでいない状態で保管され、使用時に拭き取る対象に接触することで水分を含む。
紙おしぼりやペーパータオルには、厚さが薄い積層紙が使用されているため、これらの積層紙は、水分を含むと強度が小さくなり、大きな外力が加わった場合に破れてしまうという課題がある。
【0003】
上記の課題から、水分が含んだ状態で、強度が大きく、破れにくい積層紙が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の積層紙では、一方向に延びる皺を有するクレープ紙が、熱融着性シートに積層され、熱融着部によりクレープ紙及び熱融着性シートが部分的に熱融着されている。そして、この熱融着部は、クレープ紙の皺方向と直交する方向に一定間隔で配置される多数の長点からなる破線状であり、互いに略平行となるよう皺方向に一定間隔を置いて複数配置されている。
また、皺方向に隣接する熱融着部では、一方の熱融着部の長点間の非融着部の長さ方向の中間部が、他方の熱融着部の長点の長さ方向中間部と一致するよう、複数の熱融着部を皺方向に一定間隔を置いて配置され、熱融着部の長点の長さ方向の端部が、隣接する熱融着部の長点の長さ方向の端部と、皺方向と直交する方向において所定長重複するように形成されている。
一般的に、クレープ紙の皺は、積層紙の製造の過程で、クレープ紙を構成する繊維が配列されている繊維方向に対して直交する方向に形成されている。そのため、特許文献1の積層紙の熱融着部の長点はクレープ紙の繊維方向と同じ向きに形成される。
【0004】
特許文献1の積層紙は、複数の熱融着部をクレープ紙の皺の延びる方向に一定間隔置いて配置しているため、クレープ紙の皺の延びる方向に外力が加わったときに、クレープ紙と熱融着シートとが剥離することが阻止される。また、この積層紙は、水分を吸収したときに全体のボリューム感を増大できるため、外観を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙おしぼりは、手を拭くのに加え、顔や口元を拭くために使用されている。そのため、紙おしぼりには、水分を含んだ状態で、様々な方向から外力が加わる。一方、ペーパータオルは、例えば、テーブルの水分を拭き取るために使用された際、ペーパータオルでテーブルを何度もこするため、ペーパータオルには、水分を含んだ状態で様々な方向から外力が加わる。そのため、紙おしぼり等に使用する積層紙には、水分を含んだ状態で、様々な方向から加わる力に対して強度が大きく、破れにくいという性質が求められる。
上述の通り、特許文献1の積層紙では、熱融着部の長点が、積層紙の繊維方向に対して同じ方向に形成されているため、この積層紙は、繊維方向に対して直交方向に加わる外力に弱く、破れてしまうおそれがある。
【0007】
また、使い捨て紙製品(例えば、使い捨ておしぼり)に積層紙を使用する場合、原紙(素材)のコストが嵩み、使い捨て製品としては割高になり、使い捨て製品の普及を阻害しているという問題がある。
そのため、使い捨て紙製品には、廉価で、水分を含んだ状態でも強度が大きいことが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、水分を含んだ状態で、繊維方向に対して直交方向に加わる外力を含む様々な方向から外力が加わった場合でも、強度が大きく破れにくい単層紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の単層紙は、一方向に配列された繊維、及び熱融着繊維を含む単層紙であって、前記熱融着繊維に熱が加えられ、前記繊維同士が融着することによって形成される第一熱融着部を備え、この第一熱融着部は、
矩形であり、その長辺が前記繊維に対して、60度から80度又は100度から120度の角度で、前記繊維が配列されている繊維方向及びこの繊維方向に直交する交差方向に複数かつ独立して形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の単層紙は、熱融着部が矩形であり、その長辺が繊維に対して90度の角度で、前記繊維が配列されている繊維方向及びこの繊維方向に直交する交差方向に複数かつ独立して形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の単層紙は、熱融着繊維に熱が加えられ、繊維同士が融着することで形成された第二熱融着部に囲まれた非熱融着部に第一熱融着部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の単層紙は、紙おしぼり又はペーパータオルに使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の単層紙は、熱融着部が単層紙を構成する繊維方向に対して40度から140度で形成されているため、様々な方向から加わる外力に対する強度が大きくなる。
そのため、単層紙に大きな外力が加わった場合でも、破れることなく使用でき、多様な使用態様に適用できる。
【0016】
また、本発明の単層紙は、熱融着部を矩形とし、長辺を上記の角度(40度から140度)とすることで、例えば、繊維方向に対して長辺が0度で形成されている単層紙と比較し、繊維方向に直交する方向に隣り合う繊維同士が融着される面積が大きくなる。
そのため、熱融着部の面積が小さい場合でも、繊維方向と直交する方向の強度を大きくできる。
【0017】
また、本発明の単層紙は、第二熱融着部によって囲まれた非熱融着部が形成され、この非熱融着部に第一熱融着部を形成することもできる。
非熱融着部に第一熱融着部を形成することで、非熱融着部に大きな外力が加わった場合、第一熱融着部は、その外力の一部を吸収するため、非熱融着部と第二熱融着部との境目部分に加わる力が低減され、非熱融着部と第二熱融着部との境目部分が破れることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
本実施形態に係る衛生紙1(単層紙)を、
図1〜
図7を参照し、説明する。
衛生紙1は、単層で構成され、使い捨て紙製品、例えば、紙おしぼりやキッチンペーパに使用される。
衛生紙1は、
図1(a)に示すように、一方向に配列された繊維2、及び熱融着繊維3を含む。この衛生紙1には、
図1(b)に示すように、衛生紙1の繊維2が配列されている方向X(以下、繊維方向Xと記す。)に対して、所定の角度θで形成される複数の第一熱融着部としての熱融着部4(以下、第一熱融着部4とも記す。)が形成されている。
なお、本実施形態の熱融着部4とは、熱融着繊維3に熱が加えられ、衛生紙1を構成する繊維同士が融着した部分を指す。
【0020】
衛生紙1は、吸水性を有し、この衛生紙1を構成する繊維2は一定方向に配列されている。この衛生紙1には、例えば、プレーン紙や、繊維方向Xと垂直に交差する方向Y(以下、交差方向Yと記す。)に皺を有するクレープ紙を使用することができる。
なお、衛生紙1には、熱融着性繊維3の代わりに熱融着剤を混ぜ込んでおくこともでき、衛生紙1の厚みは、用途や目的に応じて適宜変更できる。
【0021】
熱融着部4は、矩形状であり、部分的に複数形成される。この熱融着部4は、繊維方向Xおよび交差方向Yに対し、一定間隔で形成されている。
角度θは、非熱融着部の繊維2に対して熱融着部4の一方の長辺5(
図2中左側)がなす角度であり、例えば、
図2(a)は、熱融着部4が、その左側の長辺5と繊維6の角度θが60度で形成された例を示し、
図2(b)は、熱融着部4の角度θが90度で形成された例を示し、
図2(c)は、熱融着部4の角度θが120度で形成された例をそれぞれ示している。
この角度θは、40度から140度が好ましく、40度から50度又は130度から140度がさらに好ましく、60度から80度又は100度から120度が最も好ましい。
なお、
図2では、熱融着部4の左側の長辺5と繊維6がなす角度θについて説明したが、熱融着部4の右側の長辺5と繊維6がなす角度を角度θとしてもよい。
【0022】
熱融着部4は、例えば、
図3から
図7に示した配列で形成することができる。
衛生紙1において、熱融着部4は、角度θが同一で、繊維方向X、交差方向Yに一定の間隔で形成することができる(
図3(a))。繊維方向Xの列の熱融着部4と交差方向Yに形成されている熱融着部は、それぞれ隣り合っている。
また、衛生紙1において、熱融着部4は、
図3(a)に示した衛生紙1の交差方向Yの熱融着部4を、繊維方向Xに所定の距離ずらして形成されている(
図3(b))。この場合、交差方向Yにおいて、熱融着部4が必ず形成されている。
【0023】
衛生紙1の熱融着部4は、
図4(a)に示すように、直線状に、複数形成することもできる。また、熱融着部4は、
図4(b)に示すように、この直線を分割して、矩形状とすることができる。
【0024】
また、
図5(a)に示すように、衛生紙1において、矩形状で、角度θが90度である熱融着部4を繊維方向X及び交差方向Yに複数形成することもできる。この場合、交差方向Yに配列される熱融着部4間に隣り合う熱融着部4が交差方向Y上で重なり、熱融着部4の両端縁が隣り合う熱融着部4の両端よりも内側に配置されるように配列されている。
さらに、
図5(b)に示すように、熱融着部4は、矩形状で角度θが90度の熱融着部4と、直線状で所定の角度θ(40度から140度)で形成された熱融着部4とを組み合わせて形成することもできる。
【0025】
衛生紙1には、美感を向上させるために模様が付されることがある。この際、熱融着部4を模様の一部(あるいは全部)とすることもできる。例えば、
図6(a)に示すように、円形状の模様が複数形成されている際に円形模様と円形模様の接する部分に熱融着部4を直線状に形成することができる。なお、円形模様部分も熱融着部としてもよい。
また、熱融着部4を、多角形の模様の一部又は全部に含ませることができる。例えば、六角形状(
図6(b))、四角形状(
図7(a))、三角形状(
図7(b))の模様の構成に含ませることができる。
【0026】
次に、衛生紙1の製造方法について、
図8を参照し、説明する。
本実施形態に係る衛生紙1は、
図8に示すヒートシール部10を備える衛生紙製造装置によって製造できる。このヒートシール部10は、上側ローラ11と、この上側ローラ11と対向する下側ローラ12とを備えている。この上側ローラ11のローラ面11Aには、上側突起部13が形成されている。この上側突起部13は、矩形であり、この上側突起部13の長辺は、上側ローラ11の周方向に対し、40度から140の角度で形成されている。
この上側ローラ11と下側ローラ12との間に、衛生紙1を挿入し、上側ローラ11、下側ローラ12から熱が加えられ、衛生紙1が部分的に熱融着され、熱融着部4が形成される。その後、衛生紙1は、巻き取りローラ(図示しない)によって巻き取られ、ロール巻きされる。
【0027】
ヒートシール部10には、例えば、
図8に示した、ヒートシール部10A〜ヒートシール部10Cを使用できる。
ヒートシール部10Aでは、上側ローラ11のローラ面11Aに矩形状の上側突起部13および下側ローラ12のローラ面12Aに矩形状の下側突起部14がそれぞれ複数形成されている(
図8(a))。上側突起部13と下側突起部14は、同じ形状に設計され、周方向に対し、上側突起部13と下側突起部14を設ける間隔は同じとする。このヒートシール部10Aでは、上側突起部13と下側突起部14が、衛生紙1を上下から挟み込むことで、複数の熱融着部4が形成される。なお、下側突起部14の長辺も、下側ローラ12の周方向に対し、40度から140の角度で形成されている。
【0028】
ヒートシール部10Bでは、上側ローラ11、下側ローラ12に所定の間隔で上側突起部13、下側突起部14がそれぞれ複数形成されている(
図8(b))。
このヒートシール部10Bでは、ローラ面11Aに形成された上側突起部13とローラ面12Aに形成された下側突起部14が、衛生紙1をギアのように上下から挟み込むことで、複数の熱融着部4が形成される。
【0029】
ヒートシール部10Cは、上側ローラ11のローラ面11Aにのみ上側突起部13が形成されている(
図8(c))。このヒートシール部10Cでは、上側突起部13が衛生紙1を下側ローラ12に押し付けることで、複数の熱融着部4が形成される。
なお、上側突起部13および下側突起部14は、各ローラ11,12の周方向に連続してそれぞれ形成されている。
【0030】
このヒートシール部10において、上側突起部13や下側突起部14を形成する角度を変更することで、繊維方向Xに対する熱融着部4の角度θを変更できる。また、上側ローラ11には、上側突起部13以外にも所望の模様、文字およびロゴ等の彫刻部を設けることができる。この彫刻部が衛生紙1に押圧されることにより、衛生紙1に模様、文字、ロゴを付することができ、意匠性を向上させ、衛生紙1に高級感を与えることができる。
【0031】
[実施例]
実施例1〜実施例22では、衛生紙1に、プレーン紙、又はクレープ紙を使用した。クレープ紙には、交差方向Yに皺が複数形成されているものを使用した。
熱融着部4は、
図3(a)に示した配列で、繊維方向X、交差方向Yにそれぞれ一定の間隔で形成させた。
【0032】
[強度試験]
水分を含ませた衛生紙1に対し、交差方向Y又は、
図1(b)に示した交差方向Yに対して斜めの方向(以下、斜め方向Zと記す。)から外力を加えたときの強度(破れにくさ)を調べた。
強度試験は、衛生紙1の両端をそれぞれ挟み、交差方向Y、斜め方向Zに所定の外力を加えた。所定の外力は、熱融着部4が、繊維方向Xに対して0度(180度)で形成された積層紙1が破れるときに必要な力とした。
強度評価は、衛生紙1に外力を加えた後、衛生紙1に破れ目が生じているかを目視で観察した。強度評価の基準は、以下の通りとした。
◎:破れにくい(破れ目なし)
〇:やや破れにくい(一部に小さな破れ目あり)
△:やや破れやすい(一部に大きな破れ目あり)
×:破れやすい
【0034】
衛生紙1にプレーン紙、又はクレープ紙を使用し、熱融着部4を
図3(a)に示した配列で形成した衛生紙1の強度評価の結果を表1に示す。
プレーン紙を使用した衛生紙1において、熱融着部4の角度θを40度から140度で形成させた場合、衛生紙1の強度が大きいことが分かった(実施例1から実施例11)。
交差方向Yからの引っ張り力に関しては、熱融着部4の角度θを60度から120度で形成した衛生紙1では、破れ目は観察されなかった。
一方、斜め方向Zに対する引っ張り力に関しては、熱融着部4の角度θを50度から80度、100度から130度で形成した衛生紙1では、破れ目が観察されなかった。
これらの結果から角度θが60度から80度、100度から120度で、熱融着部4を形成させた場合、衛生紙1は、交差方向Yおよび斜め方向Zからの引っ張り力に対し、特に大きな強度を示すことが分かった。
また、この熱融着部4を形成する角度θに対する衛生紙1の強度は、衛生紙1にクレープ紙を使用した場合でも同じであった(表1:実施例12から実施例22)。
【0035】
一方、熱融着部4の角度θを0度から30度、150度から180度で形成した衛生紙1では、大きな破れ目が生じたり、衛生紙1が完全に破れてしまうことが分かった(比較例1から比較例10)。
【0036】
実施例23〜実施例44では、衛生紙1に、プレーン紙、又はクレープ紙を使用し、熱融着部4を、
図3(b)に示した配列で、繊維方向X、交差方向Yにそれぞれ一定の間隔で形成させた。強度試験は、上記と同様の方法で行った。
【0038】
衛生紙1にプレーン紙、又はクレープ紙を使用し、熱融着部4を
図3(b)に示した配列で形成した衛生紙1の強度評価の結果を表2に示す。
衛生紙1の強度は、熱融着部4を
図3(a)に示した配列で形成した衛生紙1とほぼ同じ結果だった。熱融着部4の角度θを40度から140度で形成した場合、強度が大きいことが分かった(実施例23から実施例44)。
交差方向Yに対する引っ張り力に関しては、熱融着部4の角度θを60度から120度で形成した衛生紙1では破れ目が観察されず、一方、斜め方向Zに対する引っ張り力に関しては、熱融着部4の角度θを50度から80度、100度から130度で形成した衛生紙1では破れ目が観察されなかった。
これらの結果から、熱融着部4の配列を変えた場合でも、角度θが60度から80度、100度から120度で、熱融着部4が形成された衛生紙1は、交差方向Yおよび斜め方向Zからの引っ張り力に対し、特に大きな強度を示すことが分かった。
また、角度θが0度から30度、150度から180度で熱融着部4を形成させた場合、衛生紙1では、大きな破れ目が生じたり、衛生紙1が完全に破れてしまうことが分かった。
【0039】
次に、本実施形態における衛生紙1の効果について説明する。
本実施形態に係る衛生紙1は、熱融着部4の角度θを40度から140度で形成することで、水分を含んだ状態において、交差方向Yや斜め方向Zから外力を加えても、破れにくい。そのため、衛生紙1は、様々な方向から外力を加えても、機能を維持することができ、衛生紙1を使用する作業範囲を広くすることができ、紙おしぼりやペーパータオルの多様な使用態様に適用できる。
【0040】
また、本実施形態の衛生紙1は単層であるため、複数の層で構成される衛生紙に比べ、素材にかかる費用を軽減でき、生産原価を大幅に軽減することができる。したがって、広い消費者層に良質で廉価な紙おしぼりを提供することができる。
さらに、衛生紙1を廉価で作製できるため、使い捨ておしぼり等の使い捨て紙製品を広く普及することができる。
【0041】
衛生紙1において、押圧されて形成された熱融着部4は凹状となるため、熱融着部4以外の部分が幾何学模様となり、衛生紙1の面にメリハリを付与することができ、適度な払拭感を付与することができる。
また、模様の一部(あるいは全部)として熱融着部4を形成した場合(
図6及び
図7)、衛生紙1の強度を大きくしつつ、衛生紙1の清潔的美観を付与することができ、衛生紙1の意匠性を向上させることもできる。
【0042】
本実施形態では、衛生紙1を紙おしぼりやペーパータオルに使用した場合について、説明したが、この衛生紙1は、その他にも調理台シーツ、紙製のタオル、キッチンペーパ等の水分吸収機能を必要とする使い捨て紙製品等に使用することができる。
衛生紙1は、用途に応じて、求められる強度が異なるが、熱融着部4の繊維方向Xに対する形成角度、面積、形成する個数を適宜変更して、所望の強度の衛生紙を設計できる。
【0043】
[第二実施形態]
本実施形態に係る衛生紙1は、第二熱融着部20が形成されることで、所定の形状の非熱融着部21が形成され、その非熱融着部21に第一熱融着部4が形成されている点で、第一実施形態に係る衛生紙1と相違する。
以下、本実施形態に係る衛生紙1について、第一実施形態に係る衛生紙1と相違する部分を中心に説明する。
【0044】
本実施形態に係る衛生紙1は、
図9(a)に示すように、熱融着繊維に熱が加えられ、繊維同士が融着することによって、第二熱融着部20が形成され、第二熱融着部20によって囲まれた円形状の非熱融着部21が形成されている。この非熱融着部21は、繊維方向X及び交差方向Yに複数形成され、かつ繊維方向X及び交差方向Yに沿って、並列して形成されている。
【0045】
第一熱融着部4は、非熱融着部21に形成され、かつ、繊維方向Xに対して、所定の角度θでそれぞれ形成されている。ここで、角度θは、40度から140度が好ましく、40度から50度又は130度から140度がさらに好ましく、60度から80度又は100度から120度が最も好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る衛生紙1は、
図9(b)に示すように、十二角形状に形成された非熱融着部21を複数備え、非熱融着部21に第一熱融着部4が形成する構成とすることもできる。繊維方向Xにおいて、隣り合う非熱融着部21は、繊維方向Xに沿って並列に形成されている。一方、交差方向Yにおいて、隣り合う非熱融着部21は、繊維方向Xに所定の間隔だけずらされて形成されている。
図9(a)及び(b)に示す衛生紙1において、非熱融着部21及び第一熱融着部4以外の部分は、第二融着部20によって、全て熱融着されている。つまり、第二熱融着部20は、繊維方向X及び交差方向Yを含む全方向に向けて形成されている。
【0047】
次に、本実施形態に係る衛生紙1の作用効果について説明する。
本実施形態に係る衛生紙1において、第二熱融着部20は、繊維方向Xや交差方向Yを含む全方向に向けて形成されているため、衛生紙1の強度は、主として第二熱融着部20によって確保され、水分を含んだ状態でも強度を確保することができる。
【0048】
衛生紙1を、例えば、おしぼりやペーパータオルとして使用した場合、非熱融着部21には大きな外力が加わり、その外力は、非熱融着部21と第二熱融着部20との境目部分にも加わる。
本実施形態の衛生紙1に大きな外力が加わった場合、非熱融着部21に第一熱融着部4が形成されているため、非熱融着部21と第二熱融着部20との境目部分に加え、第一熱融着部4にも大きな外力が加わる。第一熱融着部4は、外力の一部を吸収するため、非熱融着部21と第二熱融着部20との境目部分に加わる力が低減される。
したがって、衛生紙1に大きな外力が加わった場合でも、非熱融着部21と第二熱融着部20との境目部分が破れることを防止できる。また、第一熱融着部4が形成されていることで、非熱融着部21の強度を確保することもできる。
【0049】
本実施形態に係る衛生紙1は、
図10(a)に示すように、円環状の第二熱融着部20を形成し、この第二熱融着部20によって形成された非熱融着部21に第一熱融着部4を形成する構成とすることもできる。このように作製された衛生紙1においても、非熱融着部21と第二熱融着部20との境目部分が破れることを防止でき、かつ、非熱融着部21の強度を確保することができる。
また、第一熱融着部4は、
図10(b)に示すように、全ての非熱融着部21に形成されていなくてもよく、繊維方向X及び交差方向Yに複数形成されていればよい。
【0050】
本実施形態に係る衛生紙1において、第二熱融着部20が、主として衛生紙1全体の強度を維持する役割を担い、第一熱融着部4は衛生紙1の強度を維持することに加え、非熱融着部21の強度を確保する、補助的な役割を担う。
本実施形態に係る衛生紙1は、水分を含んだ状態でも強度の大きい使い捨て紙製品として使用することができる。また、衛生紙1は、単層紙であるため、積層紙と比べ、廉価で提供することができる。
したがって、この衛生紙1が普及されることにより、使い捨て紙製品を広く普及することができ、衛生紙1は、使い捨て紙製品関連の産業への貢献することが大きく期待される。
【0051】
以上、実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
第一実施形態では、衛生紙1にプレーン紙、クレープ紙を使用した例を示したが、衛生紙1には、不織布(例えば、メッシュシート、多孔質シート、エアレイド不織布)を使用することもできる。例えば、衛生紙1に不織布を使用した場合、不織布の極細繊維に細かいゴミが絡むため、衛生紙1をペーパータオルとして使用した場合、不織布の面で、細かいゴミを拭き取ることができ、さらに、手に付着した細かいゴミを除去することができる。さらに、衛生紙1を顔や口を拭くために使用する場合、衛生紙1は、不織布のソフトな感触で顔や口を拭くことができ、幼児や高齢者に優しい肌触りで顔や口を拭くことができる。
【0052】
衛生紙1には、繊維が一方向にのみ配列しているもの以外、例えば、複数の繊維層からなり、各繊維層が交差して形成されているものも使用できる。この場合、最上層の繊維が配列している方向を繊維方向X、あるいは、繊維が最も多く配列している方向を繊維方向Xとみなして、熱融着部4の角度θを決定できる。さらに、熱融着部4の面積を変更することで、熱融着部4と、非熱融着部の面積を変化させ、皺の発生率を変え、美的価値を付与することもできる。また、本実施形態では、規則的に配列した熱融着部4を形成する例が示されているが、熱融着部4は、不規則(ランダム)に形成されていても、同様な効果が生じる。
【0053】
また、第二実施形態の衛生紙1において、非熱融着部21の形状は、円形状や十二角形上に限定されず、例えば、三角形状や星形状に形成することもでき、さらに、第一熱融着部4の配置は、適宜変更することができる。第二実施形態の衛生紙1では、非熱融着部21の形状や第一熱融着部4の配置を適宜変更することで、衛生紙1の意匠性を自在に変更することができる。
なお、第二実施形態の衛生紙1における非熱融着部21は、必ずしも第二熱融着部20によって閉じられた領域に限定されない。
【解決手段】衛生紙1は、一方向に配列された繊維2、及び熱融着繊維を含む単層紙であって、熱融着繊維に熱が加えられ、繊維同士が融着することによって形成される熱融着部4を備え、この熱融着部4は、繊維2に対して、40度から140度の角度で形成された構成をとる。