特許第6188024号(P6188024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6188024-発光体及び放射線検出器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188024
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】発光体及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/79 20060101AFI20170821BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20170821BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20170821BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20170821BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C09K11/79CPR
   C09K11/78CPQ
   C09K11/00 E
   G01T1/20 B
   G01T1/202
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-94378(P2014-94378)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212311(P2015-212311A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 圭
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彰
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】横田 有為
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−505742(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0119092(US,A1)
【文献】 特開2007−016197(JP,A)
【文献】 特開2009−046598(JP,A)
【文献】 特開2013−227575(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0270482(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0260107(US,A1)
【文献】 特開2009−074039(JP,A)
【文献】 国際公開第03/083010(WO,A1)
【文献】 特開昭56−005883(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037395(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/037726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/79
C09K 11/00
C09K 11/78
G01T 1/20
G01T 1/202
WPI
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式CeRE2−x(ただし、0.0001≦x<2、MはSi、Zr、Hfから選ばれた1種又は2種以上、及びREはLa、Pr、Gd、Tb、Yb、Y、Luから選ばれた1種または2種以上である)で表される発光体に対し、少なくとも1種類以上の1価または2価の陽イオンを、全陽イオンに対し1ppm以上20000ppm以下のモル比で共添加したパイロクロア型発光体を含むことを特徴とする発光体。
【請求項2】
前記共添加する2価の陽イオンが、MgおよびCaから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1記載の発光体。
【請求項3】
単結晶であることを特徴とする請求項1または2記載の発光体。
【請求項4】
γ線、X線、α線、中性子線といった放射線を吸収して発光する発光体と、前記発光体の発光を検出する受光器とを有する放射線検出器であって、前記発光体として請求項1、2または3記載の発光体を用いることを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線、X線、α線、β線、中性子線等の放射線や高エネルギーのフォトンを吸収し、よりエネルギーの小さいフォトンに急速に変換するための賦活剤としてセリウムを含有する発光体に関する。また、本発明は、当該発光体を用いた光子検出器あるいは放射線検出器にも関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータ等の発光体は、ガンマ線、X線、α線、β線、中性子線等を検出するフォトン検出器あるいは放射線検出器に用いられ、当該検出器は陽電子放出核種断層撮影装置(PET)装置やX線CT等の医療画像装置、高エネルー物理用の各種放射線計測装置、資源探査装置などに幅広く応用されている。
【0003】
例えば、陽電子放出核種断層撮影装置(PET)装置においては、比較的エネルギーの高いガンマ線(消滅ガンマ線:511eV)が同時計数により検出されるため、感度が高くかつ高速応答が得られるシンチレーション検出器が採用されてきた。検出器特性には、高計数率特性や偶発同時計数ノイズ除去のための高い時間分解能が要求される。
【0004】
さらに、近年ではTime of flight型PET(TOF-PET)と呼ばれる、消滅ガンマ線が放射線検出器までに到達する時間差を計測することで、位置検出精度を向上させたPETも登場している。TOF-PETに用いられる放射線検出器では特に高速応答がもとめられ、放射線検出器に用いられるシンチレータは蛍光寿命が短いことが重要である。
【0005】
一般に、これらの放射線検出器に適するシンチレータとしては、検出効率の点から密度が高く原子番号が大きいこと(光電吸収比が高いこと)、高速応答の必要性や高エネルギー分解能の点から発光量が多く、蛍光寿命(蛍光減衰時間)の短いことや透明性の高い結晶であることが望まれる。近年のシステムでは、多層化・高分解能化のため、多量のシンチレータを細長い形状(例えばPETでは5×30mm程度)で稠密に並べる必要から、取り扱い易さ、加工性、大型結晶作製が可能なこと、さらには価格も重要な選定要因となっている。加えて、シンチレータの発光波長が光検出器の検出感度の高い波長域と一致することも重要である。
【0006】
現在、PET装置用シンチレータとして最も一般的なシンチレータ結晶は、Ce添加LuSiO(Ce:LSO)であり、高密度(〜7.39g/cm)・短寿命(約40nsec)・高発光量(24000photon/MeV)という優れたシンチレータ特性を有する。このCe:LSOにCaイオンを微量添加することで、発光量を増加し、蛍光寿命を短寿命化する技術が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
より最近では、各種放射線検出器へ応用される好ましいシンチレータとして、Ce添加(Gd,La、Y、Lu)2Siの組成であらわされる希土類パイロクロア型結晶がある(例えば、特願2012−283465号または非特許文献2参照)。Ce添加(Gd,Y,Lu)3(Al、Ga)12では、結晶組成により、密度、発光量、蛍光寿命、といったシンチレータ特性が変化することが確認されており、加えて、調和・非調和融液組成の挙動も組成により変化することが分かっており、融液成長可能な組成範囲が報告されている。例えば、Ce添加(Gd0.25La0.75)2Siシンチレータは、密度5.5g/cm3、発光量が40000photon/MeVの特性を有し、調和融液組成となることから、融液成長によるバルク結晶成長が可能である。また、自己放射能が十分に少ないことから、PET装置への応用のみにとどまらず、高エネルー物理用の各種放射線計測装置、環境放射線測定器への応用が期待されている。加えて、150℃を超える高温でも発光量の低下が少ないことから、資源探査用検出器への応用も期待されている。一方、当該シンチレータでは、蛍光寿命が50〜100ns程度と長いのが問題となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.A. Spurrier, P. Szupryczynski, K. Yang, H. Rothfuss, A.A. Carey, C.L. Melcher, “The effect of codoping on the growth stability and scintillation properties of lutetium oxyorthosilicate”, J. Crystal Growth, 2008, 310, p.2110-2114
【非特許文献2】Akira Suzuki, Shunsuke Kurosawa, Toetsu Shishido, Jan Pejchal, Yuui Yokota, Yoshisuke Futami, and Akira Yoshikawa ”Fast and High-Energy-Resolution Oxide Scintillator: Ce-Doped (La,Gd)2Si2O7” Appl. Phys. Express, 2012, 5, 102601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、ガンマ線、X線、α線、中性子線といった放射線検出器用の発光体に好適であり、蛍光減衰時間が短くかつ発光強度の大きい発光体及び、その発光体を用いた放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
すなわち、本発明に係るシンチレータ、蛍光体等の発光体は、Ce3+の4f5d準位からの発光を用いたパイロクロア型シンチレータであり、一般式CeRE2−x(ただし、0.0001≦x<2、MはSi、Zr、Hfから選ばれた1種又は2種以上、及びREはLa、Pr、Gd、Tb、Yb、Y、Luから選ばれた1種または2種以上である)で表される発光体に対し、少なくとも1種類以上の1価または2価の陽イオンを、全陽イオンに対し1ppm以上20000ppm以下のモル比で共添加したパイロクロア型発光体を含むことを特徴とする発光体である。
【0011】
また、この発光体は、ガンマ線等の放射線や高エネルギーフォトンにより励起されて発する蛍光波長が200〜600nmであってもよい。
【0012】
本発明のCe3+の4f5d準位からの発光を用いる発光体は、Li、Na、K、Rb、Csといった1価のアルカリ金属イオンおよびBe、Mg、Ca、Sr、Baといった2価のアルカリ土類金属イオンから選ばれた少なくとも1種又以上を全陽イオンに対し20000ppm以下のモル比で共添加することにより、共添加無しの発光体に対し蛍光減衰時間および発光の立ち上がり時間がそれぞれ5%以上短寿命・高速化し、発光強度が5%以上増加することから、蛍光測定のためのサンプリング時間が短くて済み、高時間分解能、すなわちサンプリング間隔の低減が期待出来る。高時間分解能が実現されると、単位時間でのサンプリング数を増加させることが可能になる。また、発光強度が増加することによりエネルギー分解能が向上する。
【0013】
このような短寿命の発光を有する発光体をからなるシンチレータ結晶はTOF-PET、PET、SPECT、CT用の高速応答の放射線検出のためのシンチレータとしての利用が期待され、高エネルギー物理用の各種放射線計測装置、環境放射線測定器への応用も期待される。
【0014】
本発明に係る発光体は、前記共添加する2価の陽イオンが、MgおよびCaから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。また、本発明に係る発光体は、単結晶であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る放射線検出器は、γ線、X線、α線、中性子線といった放射線や高エネルギーフォトンを吸収して発光する発光体と、前記発光体の発光を検出する受光器とを有する放射線検出器であって、前記発光体として本発明に係る発光体を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ガンマ線、X線、α線、中性子線といった放射線検出器用の発光体に好適であり、蛍光減衰時間が短くかつ発光強度の大きい発光体及び、その発光体を用いた放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態の発光体であるCaを1000共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Si72およびCaを共添加していない結晶の137Csガンマ線を照射し、デジタルオシロスコープにより得られた電圧パルス信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明においては、Ce3+の4f5d準位からの発光を用いたパイロクロア型発光体であり、一般式CeRE2−x(ただし、0.0001≦x<2、MはSi、Zr、Hfから選ばれた1種又は2種以上、及びREはLa、Pr、Gd、Tb、Yb、Y、Luから選ばれた1種または2種以上である)で表される発光体に対し、少なくとも1種類以上の1価または2価の陽イオンを、全陽イオンに対し1ppm以上20000ppm以下のモル比で共添加したパイロクロア型発光体を含むことを特徴とする発光体であるので、短い蛍光減衰時間、短い発光の立ち上がり時間、大きい発光強度を兼ね備えることを可能としている。
【0019】
本発明のセリウム賦活発光体は、Li、Na、K、Rb、Csといった1価のアルカリ金属イオンおよびBe、Mg、Ca、Sr、Baといった2価のアルカリ土類金属イオンの少なくとも1種以上を、全陽イオンに対し、1ppm以上20000ppm以下のモル比、好ましくは、5ppm以上10000ppm以下のモル比、より好ましくは、10ppm以上6000ppm以下のモル比で含有する。
【0020】
いずれの単結晶の製造方法においても、出発原料としては、一般的な酸化物原料が使用可能であるが、シンチレータ用結晶として使用する場合、99.99%以上(4N以上)の高純度原料を用いることが特に好ましく、これらの出発原料を、融液形成時に目的組成となるように秤量、混合したものを用いる。さらにこれらの原料は、目的とする組成以外の不純物が極力少ない(例えば1ppm以下)ものが特に好ましい。
【0021】
結晶の育成を、不活性ガス(例えば、Ar、N、He等)雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス(例えば、Ar、N、He等)と酸素ガスや炭酸ガス、一酸化炭素ガスとの混合ガスを使用してもよい。ただし、この混合ガスを用いて結晶の育成を行う場合、坩堝の酸化を防ぐ目的で、酸素の分圧は2%以下であることが好ましい。なお、結晶育成後のアニールなどの後工程においては、酸素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素ガス、不活性ガス(例えば、Ar、N、He等)、および不活性ガス(例えば、Ar、N、He等)と酸素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素ガスとの混合ガスを用いることができる。混合ガスを用いる場合、酸素分圧は2%という制限は受けず、0%から100%までいずれの混合比のものを使用してもよい。
【0022】
本実施形態の酸化物発光体シンチレータ用結晶の製造方法として、マイクロ引き下げ法の他に、チョコラルスキー法(引き上げ法)、ブリッジマン法、帯溶融法(ゾーンメルト法)、フローティングゾーン(FZ)法又は縁部限定薄膜供給結晶成長(EFG法)等の液相法やトップシーディッドソルーショングロース(TSSG)法、フラックス法等の溶液成長法、雰囲気焼結法、反応焼結法、熱間等方加圧式焼結法等の焼結法など、特に制限なく、採用可能であるが、歩留まりを向上させ、相対的には加工ロスを軽減させる目的で、大型結晶を得るためには、チョコラルスキー法又はブリッジマン法が好ましい。
【0023】
一方、シンチレータ用結晶として小型の結晶のみを使用するのであれば、後加工の必要が無いかあるいは少ないことから、ゾーンメルト法、EFG法、マイクロ引き下げ法、チョコラルスキー法といった液相法や雰囲気焼結法、反応焼結法、熱間等方加圧式焼結法等の焼結法が好ましい。
【0024】
また、使用する坩堝・アフターヒータとして、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、タングステン、モリブデンまたはこれらの合金を使用することも可能である。
【0025】
さらに高周波発振機のみならず集光加熱器や抵抗加熱機の使用も可能である。
【0026】
以下に本実施形態のシンチレータ結晶の製造方法について、マイクロ引き下げ法を用いた単結晶製造法を以下に一例として示すが、これに限定されるものではない。
【0027】
マイクロ引き下げ法については、高周波誘導加熱による雰囲気制御型マイクロ引き下げ装置を用いて行う。マイクロ引き下げ装置は、坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する融液に接触させる種を保持する種保持具と、種保持具を下方に移動させる移動機構と、該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する誘導加熱手段とを具備した単結晶製造装置である。このような単結晶製造装置によれば、坩堝直下に固液界面を形成し、下方向に種結晶を移動させることで、単結晶を作製するようになっている。
【0028】
当該坩堝はカーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、タングステン、モリブデンまたはこれらの合金であり、坩堝底部外周にカーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、タングステン、モリブデンまたはこれらの合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置する。坩堝及びアフターヒータは、誘導加熱手段の出力調整により、発熱量の調整を可能とすることによって、坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界領域の温度およびその分布の制御を可能としている。
【0029】
チャンバーの材質にはSUS、窓材には石英を採用し、雰囲気制御を可能にするため、ローターリポンプを具備し、ガス置換前において、真空度が1×10−3Torr以下にすることを可能にした装置である。また、チャンバーへは、付随するガスフローメータにより精密に調整された流量でAr、N、H、Oガス等を導入できるものである。
【0030】
この装置を用いて、上述の方法にて準備した原料を坩堝に入れ、炉内を高真空排気した後、ArガスもしくはArガスとOガスとの混合ガスを炉内に導入することにより、炉内を不活性ガス雰囲気もしくは低酸素分圧雰囲気とし、高周波誘導加熱コイルに高周波電力を徐々に印加することにより坩堝を加熱して、坩堝内の原料を完全に融解する。
【0031】
続いて、次のような手順で結晶を成長させる。種結晶を所定の速度で徐々に上昇させて、その先端を坩堝下端の細孔に接触させて充分になじませたら、融液温度を調整しつつ、引き下げ軸を下降させることで結晶を成長させる。
【0032】
種結晶としては、結晶成長対象物と同等ないしは、構造・組成ともに近いものを使用することが好ましいが、これに限定されたものではない。また、種結晶として方位の明確なものを使用することが好ましい。
【0033】
準備した材料が全て結晶化し、融液が無くなった時点で結晶成長終了となる。一方、組成を均一に保つ目的および長尺化の目的で、原料の連続チャージ用機器を取り入れても構わない。
【0034】
本発明におけるシンチレータ結晶と受光器とを組み合わせることで、放射線検出器としての使用が可能となる。さらに、これらの放射線検出器を放射線検出器として備えたことを特徴とする放射線検査装置としても使用可能である。
【0035】
放射線検査装置としては、資源探査用検出器、高エネルギー物理用検出器、環境放射能検出器、ガンマカメラや医用画像処理装置等が挙げられる。医用画像処理装置の例としては、陽電子放出核種断層撮影装置(PET)、X線CT、SPECTなどの用途に好適である。また、PETの態様としては、二次元型PET、三次元型PET、タイム・オブ・フライト(TOF)型PET、深さ検出(DOI)型PETが好ましい。さらに、これらを組み合わせて使用しても構わない。
【0036】
さらに本実施形態の放射線検出器における受光部としては、位置検出型光電子増倍管(PS−PMT)、シリコンフォトマルチプライヤー(Si−PM)フォトダイオード(PD)、またはアバランシェ−フォトダイオード(APD)が挙げられる。
【0037】
以下、本発明の具体例について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、以下の実施例では、Ceや共添加する1価あるいは2価の陽イオンの特定に、結晶中における濃度と、融液(仕込み)における濃度とのいずれかの記載となっているが、各実施例において、結晶中の濃度1に対して仕込み時の濃度1〜100程度となるような関係があった。
【実施例1】
【0038】
マイクロ引下げ法により、Mgをそれぞれ200、1000、2000ppm共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型シンチレータ単結晶を作製した。この単結晶は、約3mmの直径と約15mmの長さを有し、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、390nm付近の波長に確認された。
【実施例2】
【0039】
マイクロ引下げ法により、Caをそれぞれ200、1000、2000ppm共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型単結晶を作製した。この単結晶は、約3mmの直径と約15mmの長さを有し、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、390nm付近の波長に確認された。
【実施例3】
【0040】
マイクロ引下げ法により、Kを200ppm共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型単結晶を作製した。この単結晶は、約3mmの直径と約15mmの長さを有し、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、390nm付近の波長に確認された。
【実施例4】
【0041】
マイクロ引下げ法により、Naを200ppm共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型単結晶を作製した。この単結晶は、約3mmの直径と約15mmの長さを有し、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、390nm付近の波長に確認された。
【実施例5】
【0042】
TSSG法により、Caをそれぞれ200、1000、2000ppm共添加したLu1.60.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型結晶を作製した。この結晶は、約10mmの直径と約25mmの長さを有し、一部無色透明な領域が得られ、この領域から評価用サンプルを加工研磨した。Ce3+の4f5d準位からの発光が、380nm付近の波長に確認された。
【0043】
[比較例1]
マイクロ引下げ法により、共添加しないLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型単結晶を作製した。この単結晶は、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、380nm付近の波長に確認された。
【0044】
[比較例2]
マイクロ引下げ法により、Caを30000ppm共添加したLa0.6Gd1.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型単結晶を作製した。この単結晶は、約3mmの直径と約15mmの長さを有し、無色透明であった。Ce3+の4f5d準位からの発光が、390nm付近の波長に確認された。共添加しない比較例1の結晶に比べ、発光強度が50%低下した。
【0045】
[比較例3]
TSSG法により、共添加しないLu1.60.38Ce0.02Siの組成のパイロクロア型結晶を作製した。この結晶は、約10mmの直径と約25mmの長さを有し、一部無色透明な領域が得られ、この領域から評価用サンプルを加工研磨した。Ce3+の4f5d準位からの発光が、380nm付近の波長に確認された。
【0046】
図1は、実施例2のうち、Caを1000ppm共添加したGd2.985Ce0.0015GaAl12、および、同じ組成でCaを共添加していない比較例1の結晶を、φ3×1mmサイズに加工・研磨した後、光学接着剤を用いて光電子増倍管に接着し、上面をテフロン(登録商標)テープで覆い、137Csガンマ線を照射し、デジタルオシロスコープにより得られた電圧パルス信号である。得られた電圧パルス信号を解析し、発光強度、発光の立ち上がり時間、蛍光寿命を評価した。Caを1000ppm添加することで、共添加していない結晶に対し、発光強度が21%増加し、立ち上がり時間は2.5ns(共添加無し)から1.9ns(1000ppm共添加)と24%短くなった。また、蛍光寿命は63ns(共添加無し)から49ns(1000ppm共添加)と22%短くなった。
【0047】
表1は実施例1〜5で得られた結晶の、発光強度、発光の立ち上がり時間、蛍光寿命の評価結果を示す表である。比較例1〜3と比べて、1価のアルカリ金属イオンまたは2価のアルカリ土類金属イオンを共添加することで、発光強度が増加し、発光の立ち上がり時間および蛍光寿命が短くなっているのが分かる。
【0048】
【表1】
図1