(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)微結晶セルロースのウェットケーキを、置換度が0.45〜0.85であって、組成物の総重量に対して5%〜25%の量の第1のカルボキシメチルセルロースと混合するステップと、
b)ステップa)の製品を押し出し成形するステップと、
c)i)置換度が0.9〜1.5であって、組成物の総重量に対して2%〜20%の量の第2のカルボキシメチルセルロースをステップb)の製品中に混合した後、押し出し成形するステップ、または、
ii)ステップb)の微結晶セルロース:カルボキシメチルセルロースの押し出し成形物、および置換度が0.9〜1.5である第2のカルボキシメチルセルロースを含み、前記第2のカルボキシメチルセルロースが、組成物の総重量に対して2%〜20%の量で存在する、水分散体を調製するステップ、のいずれかを実行するステップと、
d)ステップc)の製品を乾燥するステップと、を含む、
安定化剤組成物の製法。
前記第1のカルボキシメチルセルロースは、置換度が0.7のカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、前記第2のカルボキシメチルセルロースは、置換度が1.2のカルボキシメチルセルロースナトリウムである、
請求項1の製法。
エマルション、飲料、ソース、スープ、シロップ、ドレッシング、フィルム、冷菓、発酵食品、パンの詰め物、パンのクリーム、超高温およびレトルト加工されたタンパク質および栄養補助飲料、超高温加工されたpHの低いタンパク質系の飲料、超高温加工されたCa強化飲料、高温およびレトルト加工されたミルククリーム、含気酪農食品系、および含気非酪農食品系の形態である、
請求項8の食品製品。
【背景技術】
【0002】
微結晶セルロースは、MCCまたはセルロースゲルとしても知られ、最終の食品製品の性質または特性を向上させるために、一般に、食品分野で使用される。例えば、微結晶セルロースは、飲料を含む食品用途では、バインダ兼安定化剤、および安定化剤として使用されてきた。また、微結晶セルロースは、製薬錠剤中においてバインダ兼崩壊剤として使用され、液体の医薬製剤中において懸濁化剤として使用され、工業用途、洗剤および/または漂白剤の錠剤などの家庭用品、農業製剤、および歯磨粉および化粧品などのパーソナルケア製品おいてバインダ、崩壊剤、および加工助剤として使用されてきた。
【0003】
微結晶セルロースは、鉱酸、好ましくは、塩酸で、セルロース源、好ましくは、繊維状の植物材料から得られるパルプの形態をとるアルファセルロースを処理して製造される(酸加水分解)。前記酸は、セルロースポリマー鎖の配列の程度が劣る領域を選択的に攻撃し、それによって、微結晶セルロースを構成する結晶集合体を形成する結晶サイトを露にして攻撃されやすくする(freeing)。その後、これらは反応混合物から分離されて、分解される副生成物を除去するために洗浄される。その結果生じる湿った集合物は、一般に、40〜60パーセントの水分を含み、当該技術分野では、「加水分解セルロース」、「加水分解セルロースのウェットケーキ」、「レベルオフDPセルロース」、「微結晶セルロースのウェットケーキ」、または単なる「ウェットケーキ」を含むいくつかの名称で呼ばれる。
【0004】
旧来のMCCの製造プロセスは、精製されたセルロースの酸加水分解であり、O.A.Battistaが先駆者である(特許文献1、2、および3)。MCCの品質を維持または改良するとともに、コストを低減する試みでは、種々の代替プロセスが提案されてきた。これらの内訳は、蒸気爆砕(特許文献4、Haら)、反応押出成形(特許文献5、Hannaら)、1ステップの加水分解と漂白(特許文献6、Schaibleら)、および酸素および/または二酸化炭素ガスで加圧され、100〜200℃で運転する反応器内での半結晶セルロースと水反応性溶剤との部分的な加水分解(特許文献7、Bergfeldら)である。
【0005】
微結晶セルロースおよび/または加水分解セルロースのウェットケーキは、種々の用途のために、改変されてきた。食品製品において、該セルロースは、ゲル化剤、増粘剤、脂肪代替品および/またはノンカロリーのフィラーとして、並びに、懸濁安定化剤および/または調質剤として使用される。該セルロースは、医薬品および化粧品のローションおよびクリームにおいて、エマルション安定化剤および懸濁化剤としても使用される。このような用途の改変は、微結晶セルロースまたはウェットケーキを、大きな摩擦(高剪断)力に曝して実行される。その結果、微結晶は、実質的に細分化されて、微細化粒子が製造される。もっとも、粒子の大きさが小さくなるにつれ、個々の粒子は、乾燥時に集合し、角状になる傾向がある。(カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などの)保護コロイドが、磨耗中または磨耗後であるが乾燥前に添加されてもよい。前記保護コロイドによって、小径粒子間に作用する水素または他の結合力の全部または一部が無効にされる。コロイド状の微結晶セルロースとは、例えば、特許文献8(Durandら)に開示された、カルボキシメチルセルロースで被覆される微結晶セルロースである。この添加物によって、乾燥後の材料の再分散も促進される。得られる材料は、摩耗済みの微結晶セルロースまたはコロイド状の微結晶セルロースと呼ばれることが多い。
【0006】
水中に分散されているときに、コロイド状の微結晶セルロースは、粒径が1ミクロン未満の微結晶セルロース粒子とともに、白色の、不透明な、揺変性のゲルを形成する。(米国のペンシルバニア州のフィラデルフィアにある)エフ・エム・シー・コーポレーションは、この製品の種々のグレードを製造販売している。この製品には、特に、アヴィセル(AVICEL(登録商標))およびゲルスター(GELSTAR(登録商標))という名称で呼ばれ、共処理される微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。
【0007】
しかしながら、ゲル強度が高められ、安定性が高められ、および他の所望のレオロジー特性を有し、種々の用途、特に、食品製品において有用であるコロイド状の微結晶セルロース組成物を得る必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、塩溶液である摩耗助剤(attriting aid)を用いずに、低および高程度の置換度(DS)を有するカルボキシメチルセルロースとともに製造されるコロイド状の微結晶セルロースを包含する。得られる製品は、食用に適する食品製品中において、安定化剤として有用である。さらに、本発明は、置換度(DS)が高いCMC(カルボキシメチルセルロース)と混合されるMCC(微結晶セルロース)のウェットケーキを直接押し出し加工処理するという試みを解決するプロセスを包含する。
【0017】
本発明によれば、高性能のコロイド状のMCCを製造するために、置換度(DS)が高いCMCまたは他の「滑りやすい(slippery)」親水コロイドを使用できる。一実施形態では、MCCのウェットケーキは、置換度(DS)が低いCMCとともに押し出し成形された後に、続いて、置換度(DS)が高いCMCまたは他の「滑りやすい(slippery)」親水コロイドとともに、第1の押し出し成形物を押し出し成形(あるいは該第1の押し出し成形物に分散し混合)する。この方法では、摩耗助剤(attriting aid)として、塩を要しない。
【0018】
一実施形態では、十分な押し出し加工/磨耗は、2またはそれ以上のステップで実行されてもよい。例えば、MCCのウェットケーキおよび置換度(DS)が低いCMCは、最初に、押し出し成形/摩耗され、次に、置換度(DS)が高いCMCを添加されて、押し出し成形/摩耗される。
【0019】
本発明者らは、理論に囚われずに、最初に、置換度(DS)が低く、MCC/CMCの相互作用に十分な影響を及ぼす第1のCMCとともに、MCCのウェットケーキの粒子を押し出し成形し、該粒子を覆うと、次に、置換度(DS)が高い第2のCMC(および、押し出し組成物中に直接的に有効に含むには「滑りやす(slippery)」過ぎる他のもの)は、MCC:CMC粒子上に固定される置換度(DS)が低い第1のCMCの表面を覆って、該表面に結合できるとともに、MCC表面の残部を覆うこともできると確信している。このように作成された、スプレー乾燥後の製品粉末は、極めて低い剪断条件を適用した場合であっても、優れた分散特性を有するであろう。
【0020】
「コロイド」および「コロイド状」は、混合物中に懸濁されてもよい粒子を定義するために、本明細書において互換可能に使用される。当業者に公知のように、コロイド粒子は、ある特定の平均粒径のものである。例えば、約0.1〜10ミクロンのオーダーである。本願明細書で記載されるコロイド粒子は、コロイド状の懸濁液を形成できるのであれば、全ての好適な粒径であってもよい。
【0021】
「ゲル」とは、軟質の、固体の、または固体様状の材料であり、少なくとも2種の成分からなるものを言う。成分の1つは、大量に存在する液体である(Almdal,K.,Dyre,J.,Hvidt,S.,Kramer,O.;Towards a phenomological definition of the term‘gel’.Polymer and Gel Networks 1993,1,5−17)。
【0022】
「ゲル強度G」とは、可逆的に保存される系のエネルギー(弾性係数G’)のことを言い、本願明細書では、組成物に対しては、セルロース濃度の関数になっている。ゲル強度Gの測定は、1Hzおよび20℃での振動歪み掃引条件にし、ギャップサイズを1.8mmにし、ティー・エイ・インスツルメントのレオメーター(ARES−RFS3)を用いて行う。試験は、脱イオン水中に固形分が2.6%分散された組成物を24時間かけてセットアップして行う。
【0023】
(脱イオン水中に2.6%で材料の固形分が分散された)活性化された組成物の初期粘度を得るため、ブルックフィールド粘度試験が使用される。この試験は、24時間後の粘度を得るために繰り返される。好適なスピンドルを有するRTV粘度計が、20℃〜23℃において、20rpmの条件で使用される。
【0024】
(微結晶セルロースのウェットケーキ)
あらゆる原料から得られる微結晶セルロースのウェットケーキが、本発明の方法で用いられてもよい。MCCを得ることができる好適な原料には、例えば、(晒し亜硫酸塩パルプ(bleached sulfite pulp)および硫酸塩パルプなどの)木材パルプ(wood pulp)、トウモロコシの皮、バガス、麦わら、綿、コットンリンター、亜麻、大麻、苧麻(ちょま)、海藻、セルロース、および発酵セルロースが含まれる。原料には、さらに、晒し針葉樹クラフトパルプ、晒し広葉樹クラフトパルプ、晒しユーカリクラフトパルプ、製紙用パルプ、フラッフパルプ(fluff pulp)、溶解パルプ、および非木材の晒しセルロース質パルプが含まれる。一実施形態では、使用されるMCCは、アメリカ食品医薬品局によって人による消費が認可されているものである。
【0025】
(カルボキシメチルセルロース)
使用されるカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩であると好ましい。例えば、CMCのナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩である。最適には、カルボキシメチルセルロースは、CMCナトリウムである。
【0026】
CMCは、特に、存在する置換度(DS)によって特徴付けられる。置換度は、アンヒドログルコース単位ごとに置換される水酸基の平均数を表している。例えば、CMC中において、各アンヒドログルコース単位は、3個の水酸基を含む。これらの水酸基によって、CMCの置換度(DS)は、理論上、最大3.0になる。2個の市販のカルボキシメチルセルロースは、(米国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド・インコーポレーテッドの)アクアロン(登録商標)7LF(低粘度)およびアクアロン(登録商標)7MF(中粘度)であり、両者の置換度(DS)は0.7である。これは、10個のアンヒドログルコース単位ごとに、平均7個のカルボキシメチル基があることを示している。置換度(DS)が高く、中粘度を示すCMCは、(アッシュランドの)12M8Fである。別の置換度(DS)が高く、中粘度を示すCMCは、(アッシュランドの)12M31Pである。置換度(DS)が高く、高粘度を示すCMCは、(アッシュランドの)9H7F CMCである。さらなるCMCは、(アッシュランドの)DrisPac CMCである。
【0027】
本発明では、2種類の置換度の範囲のカルボキシメチルセルロースを用いる。第1のカルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.45〜約0.85である。いくつかの実施形態では、第1のカルボキシメチルセルロースの置換度は0.45〜0.80である。さらに他の実施形態では、第1のカルボキシメチルセルロースの置換度は約0.7である。第2のカルボキシメチルセルロースの置換度は0.9〜1.5である。さらに、他の実施形態では、第2のカルボキシメチルセルロースの置換度は、0.9〜1.2である。本発明の方法で使用するために考案される、第1および第2のカルボキシメチルセルロースは、それぞれ低いおよび高い置換度を有し、かつ、種々の程度の粘度を有する。
【0028】
これらの組成物に含まれるMCCおよびカルボキシメチルセルロースの量は、MCC:カルボキシメチルセルロースの重量比が、それぞれ約50:50〜約95:5となるようにされる。MCC:CMCの重量比が、それぞれ約95:5〜約70:30の範囲にあると好ましい。重量比が85:15であると最適である。
【0029】
得られる組成物を形成する方法も本願明細書に開示される。該方法は、微結晶セルロースのウェットケーキとともに置換度(DS)が低い第1の水溶性のカルボキシメチルセルロースを混合することを含む。ここで、カルボキシメチルセルロースに対する微結晶セルロースの重量比は約50:50〜約95:5である。各成分を均質混合するのに影響を及ぼすように、湿潤混合物が押し出し成形される。置換度が高い第2の水溶性のカルボキシメチルセルロースは、コロイド状のMCC:CMCの押し出し成形物中に混合される。
【0030】
本明細書中で使用されるように、「摩耗される」および「摩耗」という用語は、互換可能に使用され、粒子の全てではないにしても、少なくとも一部の粒子の大きさをコロイドの大きさにまで有効に低減する処理を意味する。該処理は、CMCと混合する前のMCCのウェットケーキ、または、MCCウェットケーキとCMCとの混合物のいずれかに剪断力を付与する機械的な処理である。「共摩耗」は、MCCおよびCMC成分の混合物に高剪断力を加えることを指すために用いられる。好適な摩耗条件は、例えば、共押し出し成形、粉砕、または混練によって得られてもよい。押し出し成形物は、乾燥されてもよいし、あるいはスラリーを形成するために水中に分散されてもよい。現在のMCCの製造において利用するような種々の種類の押出機に加えて、ウェットケーキまたはMCC:CMCを摩耗する他の装置の例には、圧縮ロール/ベルト、カレンダロール(calendaring roll)、機械的なリファイナディスク(refiner disc)、超音波リファイナ、(微小流体デバイスを含む)高圧ホモジナイザー、高圧縮型のプラネタリー混合機、および衝撃波/キャビテーションデバイスが含まれる。
【0031】
押し出し成形されたコロイド状のMCC:CMCは水中に分散されて、スラリーを形成する。スラリーはホモジナイズされて、噴霧乾燥され得る。噴霧乾燥により形成される乾燥粒子は、所望の水性媒体または溶液中に戻されて、本願明細書に記載される組成物、食用に適する食品製品、および工業用懸濁液を形成し得る。押し出し成形される混合物は、噴霧乾燥以外の処理、例えば、流動層乾燥、ドラム乾燥、バルク乾燥、およびフラッシュ乾燥などでも乾燥され得る。
【0032】
先の各実施形態の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかになるであろう。先の一般的な記載および特定の実施形態の詳細な説明は、単に、例示的なものであり、説明的なものであって、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0033】
(用途)
さらに、本発明の組成物から形成される食用に適する食品製品が開示される。これらの食品製品には、エマルション、飲料、フィルム、ソース、スープ、ドレッシング、酪農および非酪農牛乳および製品、冷菓、および発酵食品が含まれてもよい。食用に適する食品製品は、さらに、タンパク質、フルーツジュース、野菜ジュース、フルーツ味の物質、またはこれらの全ての組み合わせを含む、種々の食用に適する材料および添加物を含むことができる。さらに、医薬品製品、栄養補助製品、化粧品製品、パーソナルケア製品、農業製品、または化学製剤に適した本発明の組成物を含む非食品の多数の懸濁液が開示される。
【0034】
開示される組成物は、多数の工業および消費用途を有する安定化剤として作用できる。これらの用途は、食品および飲料産業に関するもの、あるいは医薬品、ヘルスケア、および他の工業的な用途の懸濁液に関するものである。粉末形態に乾燥した後、該組成物は、水性溶液に混合されて、コロイド混合物を形成し得る。いくつかの実施形態では、該組成物は、極めて長期間、公知の組成物よりも過酷な条件下において、コロイドの性質を維持する。本願明細書に記載される組成物を用いて形成される食用に適する食品製品のいくつかによって、pHが酸性の条件であっても、長期間、安定なコロイド特性が得られる。食用に適する食品製品のいくつかの例には、以下のものが含まれる。つまり、(特に、pHが低く/塩濃度が高いタイプの)ソース、レトルトのスープ、スプーンですくうことができる(spoonable)ドレッシングと注ぐことができる(pourable)ドレッシングとの両者を含むドレッシング、例えば、低温殺菌法または超低温殺菌法によって熱処理されるもの、または超高温処理法(UHT)または高温短時間殺菌法(HTST)あるいはレトルト処理を用いて熱処理されるものを含む飲料、UHTおよびレトルト処理されるタンパク質および栄養補助飲料、UHT処理されるpHの低いタンパク質系の飲料、UHT処理されるカルシウム(Ca)強化飲料、UHT処理される乳飲料、UHTおよびレトルト処理されるミルククリーム、pHの低い冷菓(例えば、フルーツシャーベット)、含気酪農および非酪農系の食品系、発酵食品(サワークリーム、ヨーグルト)、およびパンの詰め物またはクリームである。パンの詰め物中にあるコロイド状のMCC:CMCの組成物によって、オーブンで焼いている間、詰め物は優れた安定性を示す。考案された食品製品中で使用される組成物の量は、食品製品の総重量に対して、約0.05%〜約3.5%の範囲にでき、いくつかの例では、食品製品の総重量に対して、0.2%〜2%にできる。これらの食用に適する食品製品のいくつかでは、長期間の安定性を補助するために、補助的な安定化剤が加えられ得る(例えば、付加的なCMCが約0.05%〜約0.5%の量で加えられ得る)。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物を含む食用に適する食品製品が得られる。これらの食品製品は、例えば、野菜またはフルーツの果肉、岩塩、タンパク源、フルーツジュース、酸味料、甘味料、緩衝剤、pH調整剤、安定化塩、またはこれらの組み合わせなどの他の食用に適する食品製品を含むこともできる。当業者であれば、いくつもの他の成分、例えば、付加的な香味料、着色料、防腐剤、pH緩衝剤、栄養補助剤、加工助剤などが添加されてもよいことを理解するであろう。付加的な食用に適する成分は、可溶性にすることもできるし、あるいは不溶性にすることもできる。不溶性の場合、付加的な食用に適する成分は、食品製品中に懸濁される。いくつかの食用に適する食品製品では、組成物は、一般に、安定化剤、タンパク質、および/またはフルーツジュースから構成される(例えば、(果肉などの)固体および果汁を含むフルーツジュースは、安定化剤組成物を加えることにより、容易に安定化される)。ジュースだけ、またはタンパク質だけを有する該混合物では、安定化剤組成物を含む組成物と飲料混合物中で使用される安定化剤組成物の量とは、所望の安定性の結果を維持するのに応じて調整される必要があってもよい。ありふれた方法で、このように組成物を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内であり、本発明の範囲および目的に含まれる。これらの食用に適する食品製品は、乾燥済みの混合製品(インスタントソース、肉汁、スープ、インスタントココア飲料など)、pHの低い酪農系(サワークリーム/ヨーグルト、ヨーグルト飲料、固められたフローズンヨーグルトなど)、焼き菓子、および非含水性の食品系および水分の少ない食品系中に存在する充填剤のようなものである。
【0036】
安定化剤組成物を含む好適なジュースには、(これらに限られる訳ではないが、レモンジュース、ライムジュース、およびオレンジジュース(レモネード、ライムネード、またはオレンジネードなどの変形例を含む)、白色または赤色のグレープジュース、グレープフルーツジュース、アップルジュース、洋梨ジュース、クランベリージュース、ブルーベリージュース、ラズベリージュース、チェリージュース、パイナップルジュース、ザクロジュース、マンゴージュース、アプリコットジュースまたは果汁、ストロベリージュース、およびキウイジュースを含む)フルーツジュース、および(これらに限られる訳ではないが、トマトジュース、キャロットジュース、セロリジュース、ビートジュース、パセリジュース、ほうれん草ジュース、およびレタスジュースを含む)野菜ジュースが含まれる。ジュースは、ゲルまたは他の濃縮物、氷またはシャーベット、あるいは粉末などの液体、固体、または半固体の形態を含む、どのような形態であってもよく、懸濁された固体を含んでもよい。別の実施形態では、天然由来の味付けをされた、人工的に味付けをされた、あるいは他の天然の風味(「WONF」)を有するものを含むフルーツ味または他の加糖物質が、フルーツジュースの代わりに用いられてもよい。このようなフルーツ風味の物質も、粉末、ゲルまたは他の濃縮物、氷、またはシャーベットなどの液体、固体、または半固体の形態であってもよく、懸濁された固体を含んでもよい。
【0037】
食用に適し、安定化剤組成物を含む食品製品に好適なタンパク質には、食用タンパク質およびアミノ酸が含まれる。これらは、哺乳類、鳥類、爬虫類、および魚類に有益である可能性がある。食用タンパク質には、動物または植物のタンパク質および画分またはこれらの誘導体が含まれる。動物由来のタンパク質には、牛乳および牛乳由来の製品が含まれる。例えば、ヘビークリーム、ライトクリーム、全乳、低脂肪乳、スキムミルク、タンパク質強化牛乳、超加熱処理および/または濃縮処理を含む加工される牛乳および乳製品を含む強化牛乳、加糖または非加糖のスキムミルクまたは全乳、全乳の粉末および脱脂の乾燥ミルク(NFDM)を含む乾燥済みの牛乳の粉末、カゼインおよびカゼイン塩、ホエイおよびホエイ濃縮物、非ラクトース型のホエイ、鉱質を除去したホエイ、ホエイプロテインアイソレートなどのホエイ由来の製品などである。卵および卵由来のタンパク質が用いられてもよい。植物由来のタンパク質には、ナッツ、ナッツ由来のタンパク質、モロコシ、未加工の大豆、液体の大豆、大豆濃縮物、大豆アイソレートなどの大豆および大豆由来の製品などのマメ科植物およびマメ科植物由来のタンパク質、きな粉および米タンパク質、並びにこれらの全ての形態および画分が含まれる。食用タンパク質は、液体、濃縮物または粉末状を含む、入手可能な全ての形態で使用されてもよい。もっとも、粉末状のタンパク源を用いるときは、得られる飲料物をさらに安定させるために、安定化剤組成物およびジュースを混合する前に、タンパク質を予め水和すると好ましい場合がある。タンパク質が野菜または果物ジュースとともに添加される場合、使用量は、所望の最終結果によるであろう。タンパク質の量の典型的な範囲は、8オンスごとに約1〜約20グラムである。もっとも、安定であり、食用に適する結果として得られる食品製品(飲料物など)の取り扱いは、用途に大きく依存するかもしれない。
【0038】
本発明の組成物、または安定化剤組成物が使用されてもよい他の製品および用途には、工業用懸濁液が含まれる。いくつかの実施形態では、工業用懸濁液は、医薬品、化粧品、パーソナルケア製品、農業用製品、または化学製剤での用途に適した本発明の組成物を含む。工業的な用途のいくつかの例には、薬効成分(例えば、APAP、アスピリン、イブプロフェンなど)を矯味する咀嚼錠剤用の賦形剤、懸濁化剤、医薬品用途における徐放剤、食品、医薬品、および農業用途における香味剤および栄養補助剤用の伝達システム、錠剤、フィルム、および懸濁液などの医薬品の剤形として使用され得る直接圧縮型の徐放剤、パーソナルケア用途において、泡、クリーム、およびローション中で使用され得る増粘剤、セラミックス、着色剤、化粧品、およびオーラルケア中において、色素およびフィラーとともに使用され得る懸濁化剤、セラミックスのような材料、殺虫剤を含む伝達システム、および他の農業用製品が含まれる。
【0039】
ある実施形態では、組成物は、一般に、微結晶セルロースおよび少なくとも1種の水溶性のカルボキシメチルセルロースを含み、乾燥混合物として調製される。付加的な親水コロイド、界面活性剤、活性物質、およびフィラーのうちの少なくとも1種が、前記乾燥混合物に添加され得る。好適な実施形態では、付加的な親水コロイドが、前記乾燥混合物に添加される。前記乾燥混合物は、所望の食品、医薬品、工業、または化粧品製品または用途において、服用され、安定化剤を活性化するのに適するように、十分な水に加熱攪拌して分散され得る好適な中間生成物である。
【0040】
代替の実施形態では、付加的な親水コロイド、界面活性剤、活性物質、およびフィラーのうちの少なくとも1種が、一般に、微結晶セルロースおよび少なくとも1種の水溶性のカルボキシメチルセルロースを含むスラリーに添加される。その後、前記スラリーは噴霧乾燥される。
【0041】
好適な付加的な親水コロイドは、食品工業において、任意に使用され得る。これらの親水コロイドは、これらに限られる訳ではないが、例えば、高メトキシル(「HM」)および低メトキシルペクチンならびにアセチル化ペクチン(ビートペクチンなど)を含むペクチン、置換の程度が低いカルボキシメチルセルロース(「CMC」)、置換の程度が高い(「高置換度(DS)」)カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸塩、カラヤガム、キサンタンガム、アラビアガム、ゲランガム、PGA、カラギーナン、トラガント、およびガラクトマンナン(グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガムなど)、蒟蒻の主成分であるグルコマンナン、タマリンドシードガム、およびこれらの混合物などの、デンプンおよび加工デンプン、水溶性および水分散性のガム、多糖類、並びに合成高分子を含む。いくつかの実施形態では、付加的な親水コロイドは、デンプン、キサンタンガム、高置換度(high DS)のCMCまたはペクチンである。デンプンの一例は、(ナショナル・スターチ社から入手される)ナショナル・フリゲックス・エイチ・ヴィー(National Frigex HV)などのタピオカデンプンである。タマリンドシードガム系の製品は、pHの低いタンパク質飲料用途で使用され得る。この例には、pHの低い大豆飲料、酸性のミルクジュース、および発酵乳製品が含まれる。
【0042】
付加的な親水コロイドは、多方面で使用され得る。ある実施形態では、付加的な親水コロイドは、本願明細書に記載される安定化剤組成物を製造する間に、乾燥混合物またはスラリーに添加される。例えば、親水コロイドは、混合物の全体が一度に噴霧乾燥されるように、噴霧乾燥の直前にスラリーに添加される。次に、結果物として得られる、付加的な親水コロイドを加えた安定化剤組成物の混合物は、包装され保管されて、本願明細書に記載される、食品、医薬品、工業用、または化粧品製品を製造する間に、単一の手段として添加されてもよい。
【0043】
代替の実施形態では、付加的な親水コロイドは、製造時の追加のステップにおいて、製造されている特定の製品に適する量だけ添加される。
【0044】
付加的な親水コロイドは、最終的な食品、医薬品、工業用、または化粧品製品において、MCC:カルボキシメチルセルロースの組成物の安定化機能を高めるのに十分な量だけ使用される。例えば、飲料中では、補助的な安定化剤が、最終的な飲料中での漿液の分離を低減するのに十分な量だけ使用され得る。
【0045】
好適な界面活性剤には、これらに限られる訳ではないが、HLBが1〜40である、イオン性または非イオン性のものが含まれる。活性物質が組成物に添加されてもよく、該活性物質には、これらに限られる訳ではないが、栄養補助剤、ビタミン、ミネラル、着色剤、甘味料、香味料、芳香剤、唾液の分泌を刺激する成分、食品、オーラルケア成分、息を爽やかにする成分、医薬成分、農業成分、治療成分、化粧成分、化学物質、緩衝剤、またはpH調整剤が含まれる。活性物質は、その放出特性を変更するために、カプセル化され、あるいは他の処理または処置を施され得る。
【0046】
使用される特定のフィラーは、混合物および/または所望の製品を改変する能力次第である。不溶性のフィラーは、二酸化チタンなどの色素、およびゲル粒子、セルロースまたは微結晶セルロースなどの不溶性であるが、膨潤性を有するフィラーであり、該不溶性のフィラーによって、活性化される安定化剤とともに、懸濁液または分散体が形成される。この代わりに、フィラーは水溶性および水に容易に溶解できるものであり得る。該フィラーは、砂糖またはマルトデキストリンなど、あるいは、特定の処理条件下において、反応性が高い、例えば、pHに対する感度が高いか、または温度に対する感度が高く、可溶である炭酸カルシウムなどである。
【0047】
pHが低い相とタンパク質の相とを備える食用に適する製品または飲料を製造する場合、単一の相において、食用に適する製品または飲料を製造することによって、所望の安定レベルを得ることもできる。このような単一の相の処理では、安定化剤組成物および任意に追加される親水コロイドは、水中に分散されてもよい。その後、これらに限られる訳ではないが、タンパク質、フルーツジュース、酸味料、緩衝剤、甘味剤、pH調整剤、消泡剤、および塩を含む、付加的な成分が単一の相における本発明の組成物に添加されてもよい。全ての付加的な成分を添加する順番は、食用に適する製品または飲料を形成する間と形成後の両方において、タンパク質を確実に保護するように選ばれるべきである。
【0048】
付加的な成分は、本明細書に開示される、食用に適する組成物、または食用に適する食品製品に添加されてもよい。添加するのに好適なこのような付加的な成分は、これらに限られる訳ではないが、あらゆる製造段階で、ジュースまたはタンパク質成分のいずれかに添加されてもよい、(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸、酢酸、および乳酸などを含む)酸味料などのpH調整剤、(炭酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、リンゴ酸塩などを含む)緩衝剤、あるいは、(砂糖、コーンシロップ、果糖などの)甘味料、(アスパルテームなどの)甘味度の高い甘味料、(スクラロースなどの)甘味料代替物、または(ソルビトール、マンニトール、およびマルチトールなどの)糖アルコールを含むことができる。一実施形態では、スクラロース、アスパルテーム、またはアススルファムKなどの糖代替物が使用されて、炭水化物含量が低い組成物が結果として製造される。さらに、適用可能な添加物には、香味料、着色剤、乳化剤、防腐剤、マルトデキストリンなどのフィラー、アルコール組成物、濃縮物、栄養添加物(カルシウム、つまり、マレイン酸カルシウムまたは他の鉱物、ビタミン、ハーブサプリメントなど)が含まれる。任意的な成分である、消泡剤などの加工助剤も、これらの用途において使用されてもよい。
【0049】
本願明細書に開示される食用に適する食品製品の多くは、安定化剤組成物から利益を得ることができる。該安定化剤組成物は、食用に適する食品製品であって、pHの低い液体を含む。結果として得られるpHは、約2.5よりも高く約7.0よりも低い。一実施形態では、食品製品のpHは、約2.8と約6.5の間にある。さらなる実施形態では、食品製品のpHは、約3.0と約6.0の間にある。pHを約5.5より低くすることもできる。組成物は、本質的に、アルコール性のもの、または非アルコール性のもののいずれかにすることができる。
【0050】
最終的な飲料組成物は、様々な方法で、熱処理によって加工されてもよい。これらの方法には、これらに限られる訳ではないが、低温殺菌法、超低温殺菌法、高温短時間殺菌法(「HTST」)、および超高温処理法(「UHT」)が含まれてもよい。これらの飲料組成物は、回転式レトルトまたは静置式レトルト加工のいずれかによって、レトルト処理されてもよい。ジュース添加用の、あるいは天然または人工的な風味のソフトドリンクなどの、いくつかの組成物は、冷却加工されてもよい。これらの加工の多くには、ホモジナイゼーションまたは他の剪断方法が含まれてもよい。これらは、共乾燥組成物であってもよい。該共乾燥組成物は、乾燥固体の形態で調製でき、次に、消費するために、必要に応じて元に戻されると都合がよい。結果物として得られる飲料組成物は、商業的に許容される期間、冷蔵され保存されてもよい。代替案では、結果物として得られる飲料組成物は、無菌状態で充填されるという条件で、常温で保管されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、開示される食用に適する食品製品は、保存安定性が高められていたので、商品としての魅力が高かった。安定な組成物は、許容可能な水準の保存安定性を示すものである。保存安定性とは、製品の所望の保存寿命に渡って、1または複数の以下の製品特性を意味することを意図する。つまり、液体系においては、沈降が最小または沈降がなく、漿液の分離が最小または漿液の分離がなく、クリーミングが最小またはクリーミングがなく、まだらが最小またはまだらがなく、波打ちがなく、ゲルの局在化またはゲル化がない、懸濁液である。固体、半固体、ゲル、泡またはフィルム系においては、漿液の分離が最小または漿液の分離がなく、脱気されたものまたは集合体状のものである。さらに、凍結系の場合は、氷晶の大きさの成長または数の増加を低減または回避にするものである。上記の記載で使用されるように、沈降が最小とは、存在するあらゆる沈降物が、振動することで容易に系内に戻ることでできる遊離した沈降物として存在することを意味する。上記の記載で使用されるように、漿液の分離が最小とは、液体系が250mLのフラスコ中に見られる場合、5mm未満の漿液が存在することを意味する。いくつかの実施形態では、食用に適する食品製品は、(組成物中で使用されるカルボキシメチルセルロースに含まれない)補助的な安定化剤を要さずに、保存能力を高めることができる。例えば、キサンタンガムなどの補助的な安定化剤を欠くいくつかのソースは、相対粘度を長時間維持することを示す。該期間は、いくつかの例では少なくとも6ヶ月である。
【0052】
本発明をさらに詳細に記載するために、以下に非限定的な例を示す。
【実施例】
【0053】
[比較材料1:アヴィセル(AVICEL(登録商標))RC−591]
アヴィセル(AVICEL(登録商標))RC−591は、分散性のあるコロイド状のMCCであって、粘度が中程度であり、置換度(DS)が低いCMCからなる。該MCCは、ペンシルベニア州のフィラデルフィアにあるエフ・エム・シー・コーポレーションによって製造される。該MCCは、粘度を制御および変更するためと、揺変性を有することにより、食品および医薬品の懸濁液中で使用される。該MCCは、熱および凍結融解に対して安定であり、長期の有効保存期間に渡って安定であり、pH4−11の範囲で安定であり、無臭/無味である。
【0054】
脱イオン水中に1.2%の固形分濃度で分散された場合、固形分が分散された溶液は、常温での初期のブルックフィールド粘度が40〜175cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が900〜1600cpsであった。24時間のセットアップ後に、固形分が1.2%の分散体がテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は23Paを示した。水中に固形分が2.6%分散された場合、ゲル強度G’は30Paになった。
【0055】
[実施例1:共押し出し成形された後に12M31P・CMC中に混合された、MCC:CMC・7LF]
最初に、85%のMCCのウェットケーキが15%のCMC・7LF(アッシュランド製)と共押し出し成形された。次に、MCC:CMC・7LFの押し出し成形物は、水中に分散され、MCC:CMC・7LFの総重量を基準にして、5重量%の12M31P・CMC(アッシュランド製)と混合された。その後、混合系は、ホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末になった。最終的な粉末は、81%のMCC、14.2%のCMC・7LF、および4.8%のCMC・12M31Pから構成された。
【0056】
常温において、2.6%の固形分濃度で、製造された粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は2250cpsであり、セットアップ時(24時間)の粘度は6700cpsであった。2.6%の固体の分散体は、24時間のセットアップ後にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された。該分散体のセットアップ時のゲル強度G’は68Paを示した。コロイドの含量は89.2%であった。
【0057】
[比較例1a:共押し出し成形されたMCCのウェットケーキ:7LF・CMC:12M31P・CMC]
最初に、81%のMCCのウェットケーキ、14.2%のCMC・7LF、および4.8%のCMC・12M31Pを共押し出し成形した。押し出し成形物は、滑りやすいものであった。これは、置換度(DS)が高いCMC・12M31Pの濃度に起因するものである。押し出し成形によって、制作物の十分な特徴・外形は得られなかった。その後、押し出し成形物は水中に再分散され、ホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末になった。
【0058】
常温において、2.6%の固形分濃度で、粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は140cpsであり、セットアップ時の粘度は1800cpsであった。固形分が2.6%の分散体は、24時間のセットアップ後にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された。該分散体のセットアップ時のゲル強度G’は極めて低く、6Paであった。コロイドの含量は59.8%であった。
【0059】
[比較例1b:MCC:CMC・7LF製品と12M31P・CMC粉末との乾燥混合粉末]
市販のコロイド製品(85%のMCC:15%のCMC・7LF)の乾燥粉末を、(MCC:CMC・7LFの総重量を基準として)5重量%のCMC・12M31P(アッシュランド製)と乾燥混合した。組み合わされた粉末は、2.6%の固形分濃度で、脱イオン水中に分散されて活性化された。この系は、81%のMCC、14.2%のCMC・7LF、および4.8%のCMC・12M31から構成された。この系の初期粘度は、常温で380cpsであり、セットアップ時(24時間)の粘度は2300であり、セットアップ時のゲル強度G’は極めて低く、8Paであった。コロイドの含量は67.7%であった。
【0060】
[実施例2:共押し出し成形した後、4.8%の12M31P・CMCに混合された90%のMCC:10%の7LF・CMC]
最初に、90%のMCCのウェットケーキを10%のCMC・7LF(アッシュランド製)と共押し出し成形した。次に、MCC:CMC・7LFの押し出し成形物を水中に分散し、MCC:CMC・7LFの総重量を基準として、5重量%の12M31P・CMC(アッシュランド製)と混合した。その後、混合系をホモジナイズし、噴霧乾燥して粉末にした。最終的な粉末は、85.7%のMCC、9.5%のCMC・7LF、および4.8%のCMC・12M31Pから構成された。
【0061】
常温において、2.6%の固形分濃度で、粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は2150cpsであり、セットアップ時の粘度は4600cpsであり、セットアップ時のゲル粘度G’は65Paであった。コロイドの含量は89.3%であった。
【0062】
[実施例2a:共押し出し成形した、85.7%のMCC:9.5%の7LF・CMC:4.8%の12M31P・CMC]
3種の成分、85.7%のMCCのウェットケーキ、9.5%の7LF・CMC、および4.8%の12M31P・CMCを共押し出し成形した。押し出し成形物は、滑りやすく、制作物の十分な特徴・外形は得られなかった。押し出し成形物は、水中に分散され、ホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末にされた。
【0063】
常温において、2.6%の固形分濃度で、粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は200cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は1650であり、セットアップ時のゲル強度G’は7Paであった。コロイドの含量は53.6%であった。
【0064】
[実施例3:共押し出し成形後、4.8%の9H7F・CMCと混合された(85%のMCC/15%のCMC・7LF)]
最初に、85%のMCCのウェットケーキを15%のCMC・7LF(アッシュランド製)と共押し出し成形した。次に、MCC:CMC・7LFの押し出し成形物を水中に分散し、MCC:CMC・7LFの総重量を基準として、5重量%の9H7F・CMC(アッシュランド製)と混合した。その後、混合系はホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末にされた。最終的な粉末は、81%のMCC、14.2%のCMC・7LF、および4.8%のCMC・9H7Fから構成された。
【0065】
常温において、2.6%の固形分濃度で、製造された粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は5000cpsであり、セットアップ時の粘度は6400cpsであり、セットアップ時のゲル強度G’は30Paであった。
【0066】
[比較例3a:9H7F・CMCと共押し出し成形されたMCC]
MCCのウェットケーキを9H7F・CMC(アッシュランド製)と、85:15の重量比で共押し出し成形した。次に、MCC:CMCの共押し出し成形物は、分散され、ホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末にされた。
【0067】
常温において、2.6%の固形分濃度で、製造された粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は13600cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は10000cpsであった。セットアップ時のゲル強度G’は18Paであった。
【0068】
[実施例4:共押し出し成形後、4.8%のドリスパック(Dris Pac)CMCに混合された(85%のMCC:15%のCMC・7LF)]
最初に、85%のMCCのウェットケーキを15%のCMC・7LF(アッシュランド製)と共押し出し成形した。次に、MCC:CMC・7LFの押し出し成形物を水中に分散し、MCC:CMC・7LFの総重量を基準として、5重量%のドリスパック(Dris Pac)CMC(アッシュランド製)と混合した。その後、混合系はホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末にされた。最終的な粉末は、81%のMCC、14.2%のCMC・7LF、および4.8%のドリスパック(Dris Pac)CMCから構成された。
【0069】
常温において、2.6%の固形分濃度で、製造された粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は2600cpsであり、セットアップ時の粘度は5250cpsであり、セットアップ時のゲル強度G’は30Paであった。
【0070】
[実施例5:共押し出し成形後、第2のCMCと混合された(88%のMCC:6%のCMC・7LF:6%のCMC・7MF)]
MCCのウェットケーキを7LF・CMCおよび7MF・CMCと、重量比88:6:6で共押し出し成形した。次に、実験室用の共同方向回転二軸押出機のもう一度の工程によって、押し出し成形物をさらに押し出した。
【0071】
事例5A)比較例の試料
最終的な押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散され、噴霧乾燥されて粉末にされた。該押し出し成形物は、2.65の固形分濃度で水中に分散された場合、初期の粘度は3700cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は7000cpsであった。G’は70Paであった。この製品は、極めて緩やかな剪断条件で水中に分散され、この製品の水分散体の取り扱いの容易さは、この実施例中の以下の他の製品に対する参照例として使用された。
【0072】
事例5B)本発明の試料
最終的な押し出し成形物は、脱イオン水中に分散された。該脱イオン水には、置換度(DS)が高いCMC Aqualon 12M31Pが、既に(全押し出し成形物の重量を基準として)5%溶解されていた。次に、この配合物は噴霧乾燥され粉末にされた。該配合物は、2.6%の固形分濃度で水中に分散された場合、初期の粘度が4300cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が6100cpsであった。G’は90Paであった。緩やかな剪断条件で攪拌した場合、この製品は、視覚的な観察で確認すると、事例5Aと比べて、素早く、かつ容易に分散された。
【0073】
事例5C)本発明の試料
最終的な押し出し成形物は、脱イオン水中に分散された。該脱イオン水には、置換度(DS)が高いCMC Aqualon 12M31Pが、既に(全押し出し成形物の重量を基準として)10%溶解されていた。次に、この配合物は噴霧乾燥され粉末にされた。該配合物は、2.6%の固形分濃度で水中に分散された場合、初期の粘度が4400cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が7400cpsであった。G’は92Paであった。緩やかな剪断条件で攪拌した場合、この製品は、視覚的な観察によると、事例5Aと比べて、素早く、かつ容易に分散された。
【0074】
事例5D)比較例の試料
最終的な押し出し成形物は、脱イオン水中に分散された。該脱イオン水には、粘度が低く置換度が低いCMC Aqualon 7LFが、既に(全押し出し成形物の重量を基準として)5%溶解されていた。次に、この配合物は噴霧乾燥され粉末にされた。該配合物は、2.6%の固形分濃度で水中に分散された場合、初期の粘度が3050cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が7400cpsであった。G’は60Paであった。緩やかな剪断条件で攪拌した場合、この製品は、視覚的な観察で確認すると、事例5Aと比べて、素早く、かつ容易に分散されが、置換度(DS)が高いCMCを用いた事例5Bおよび5Cほど良好ではなかった。
【0075】
[実施例6:共押し出し成形後、タマリンドシードガムに混合された(85%のMCC:15%のCMC・7LF)]
MCCのウェットケーキは、85:15の重量比で、7LF・CMCとともに共押し出し成形された。次に、押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散され、15重量%のタマリンドシードガムと混合された。次に、この系は、ホモジナイズされ、噴霧乾燥されて粉末にされた。
【0076】
常温において、2.6%の固形分濃度で、粉末を脱イオン水中で活性化すると、初期粘度は1100cpsであり、セットアップ時の粘度は4275cpsであり、セットアップ時のゲル強度G’は50Paであった。
【0077】
食品用途(FA)
[実施例FA1:濃縮ラズベリーを基体とし、ブリックスが40°および50°である加熱時に安定なフルーツの詰め物]
試料は、A)コロイド状のMCCであって、比較材料1に記載されるようなエフ・エム・シーで作成される適用量範囲のアヴィセル(Avicel(登録商標))RC591、およびB)実施例1に記載されるような本発明による適用量範囲のゲル粘度の高いコロイド状のMCCを用いて調製された。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
(加工)
コロイド状のMCC、他の乾燥粉末、および水分は別個に量り分けられた。最初に、シルバーソン(Silverson)の混合機を用いて、コロイド状のMCCを10分間高剪断混合して、水中に分散した。次に、グルコースシロップを40℃で前以て加熱し、他の乾燥粉末とともに、該グルコースシロップを前述の混合機物に加えた。次に、該製品を緩やかに混合しながら、水浴中で90℃まで加熱した。次に、フルーツの濃縮物を加え、滑らかになるまで混合した。最後に、クエン酸を加え、滑らかになるまで混合し、該製品を適当な容器内に高温状態で入れた。
【0081】
(加熱安定性試験)
加熱安定性は、保形性を測定することにより判定された。保形性は、所与の温度で一定量の時間加熱後に、初期の形状および容積を保持するフルーツを入れた調合物の能力として定義される。製パン用のオーブンは、200℃まで前以て加熱された。カップ(30ml)を試料製品で満たした。30mlのカップから得られる充填物は、オーブンプレートの製パン用のシート上にある紙シートの同心円の中央部に置かれた。プレートはオーブンの中央部に配置された。同心円の16本の軸上での材料の幅広がりは、加熱前と加熱後に記録された。充填物は、200℃で10分間加熱された。材料の幅広がりの平均値が、百分率として計算された(つまり、加熱前の平均値と加熱後の平均値)。
【0082】
(試料の評価)
加熱安定性の結果を表FA1.1と表FA1.2に記載する。
【0083】
【表FA1.1】
【0084】
【表FA1.2】
【0085】
(結論)
試料B(本発明)は、良好から極めて良好までの加熱安定性(つまり、幅広がりの%が小さい)を示した。