特許第6188036号(P6188036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188036ニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188036
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20170821BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61B34/20
   A61N7/00
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-516230(P2015-516230)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-521490(P2015-521490A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】US2013044647
(87)【国際公開番号】WO2013184993
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年4月19日
(31)【優先権主張番号】201210190164.6
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505174633
【氏名又は名称】長庚大学
【氏名又は名称原語表記】CHANG GUNG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ハオ−リ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、ホン−チー
(72)【発明者】
【氏名】ル、ユ−ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、コウ−チェン
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−047079(JP,A)
【文献】 特開平06−315541(JP,A)
【文献】 特開平07−047078(JP,A)
【文献】 米国特許第05722411(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0005711(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0009734(US,A1)
【文献】 特表2008−513148(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0049486(US,A1)
【文献】 特開2004−097474(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0122493(US,A1)
【文献】 特開平07−313525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 8/08
A61N 7/00−7/02
A61B 17/00−17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束超音波エネルギーを中枢神経系の組織内にある標的点に誘導するニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムであって、
焦点を生成し、かつ前記エネルギーを、硬組織によって包まれた組織であり、個人の目的領域内にある前記標的点に送達する集束超音波装置
記集束超音波装置と接続し、かつ校正ユニット及びコンピュータユニットを含むニューロナビゲーションシステムであって、前記校正ユニットは、前記焦点と前記目的領域との間の位置関係を確立し、前記ニューロナビゲーションシステムは、前記焦点に対して校正プロセスを実行して、前記ニューロナビゲーションシステムが前記焦点を認識して前記焦点を前記標的点に誘導することを可能とし、前記校正ユニットは、第1追跡点及び第2追跡点を提供し、前記第1追跡点は固定基準座標を提供し、かつ前記個人の前記目的領域に対する相対的な位置が不変である位置に配置され、前記第2追跡点は前記集束超音波装置の超音波トランスデューサに配置され、前記コンピュータユニットは、前記個人の前記目的領域の画像を読み出し、前記個人の前記目的領域の前記画像は、MRI(磁気共鳴映像法)技術又はCT(コンピュータ断層撮影)技術を用いて先に得られた画像であり、前記コンピュータユニットは、前記目的領域上の基準点を選択かつ記録して、前記目的領域の前記画像内にある前記基準点の座標を決定することを特徴とするニューロナビゲーションシステムと、
前記ニューロナビゲーションシステムと接続する校正トラッカーと、
前記集束超音波装置の超音波トランスデューサに配置されるダミーであって、前記ダミーの先端は、前記焦点の空間位置を指し示し、前記先端が空間中の前記基準点を順次押しつつ、前記第2追跡点と前記第1追跡点を前記校正トラッカー及び前記コンピュータユニットが追跡して、前記第2追跡点と各前記基準点との間の既知の空間関係に基づいて前記基準点の空間位置を検索し、前記コンピュータユニットは、前記基準点の前記空間位置を前記目的領域の前記画像内にある前記基準点の前記座標と比較して、前記第2追跡点と前記焦点との間の既知の空間関係に基づいて、前記焦点の空間位置が前記目的領域の前記画像内にある前記焦点の座標と一致することにより、前記校正プロセスを完了するダミーと、
前記個人の前記目的領域を固定する固定具、を含む、
ニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項2】
前記集束超音波装置はさらに、超音波信号を生成する信号発生器、電気的に前記信号発生器と接続し、電気的に前記超音波トランスデューサと接続し、かつ前記超音波信号を前記集束超音波に増幅させる信号増幅器とを含み、前記超音波トランスデューサは、前記集束超音波を前記標的点に送達し、前記集束超音波の中心周波数は超音波トランスデューサと共振することを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項3】
前記集束超音波装置はさらに、電気的に前記超音波トランスデューサと接続し、かつ前記集束超音波の力を測定する電力計を含むことを特徴とする、請求項2に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項4】
前記超音波信号は正弦波信号であることを特徴とする、請求項2に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項5】
前記固定具はスライドトラック及び固定トラックを備え、前記集束超音波装置の超音波トランスデューサは前記スライドトラックに配置されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項6】
前記固定具はさらに固定装置を備え、前記固定装置は前記個人によって装着され、かつ前記個人の前記目的領域の前記画像の読み出しにおいて、前記個人の前記目的領域を固定することを特徴とする、請求項に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項7】
前記固定装置は熱可塑性金型であることを特徴とする、請求項に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項8】
前記固定具はスライドトラック及び固定トラックを備え、前記第1追跡点は前記固定トラックに配置され、前記第2追跡点は前記スライドトラックに配置されることを特徴とする、請求項に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項9】
記集束超音波は、焼灼、局所又は深部の細胞の刺激、局所又は深部の細胞の調節、血管透過性の向上、血栓の溶解、及び薬剤又は治療物質の脳への局所送達に適用されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項10】
前記集束超音波は血液と脳との間の透過性を向上させるために適用されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項11】
前記集束超音波装置は多点集束超音波装置であることを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【請求項12】
前記標的点は前記ニューロナビゲーションシステム達領域内にあることを特徴とする、請求項1に記載のニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集束超音波システム、特にニューロナビゲーションガイド下集束超音波システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
集束超音波(FUS)はヒトの組織に対して非常に透過性があり、かつ人体内部の奥深くに到達可能である一方で、米粒ほどの小さな領域に大部分の超音波エネルギーが集中する。集束超音波の現在の臨床用途としては、組織又は腫瘍の焼灼、局所又は深部の細胞の刺激、局所又は深部の細胞の調節、血管透過性の向上、血栓の溶解、薬剤の局所送達、及び血液脳関門の破壊が挙げられる。
集束超音波の大部分のエネルギーは焦点に集中する。これにより、集束超音波は通路に沿って組織を損傷することなく、非侵襲的に深部の局所組織を破壊することが可能となる。上述の用途に加えて、集束超音波はまた、局所又は深部の細胞の刺激、血管透過性の増大、血栓の溶解、及び薬剤の局所送達など、臨床医学の多くの分野に適用され得る。
【0003】
集束超音波の適用の際に遭遇する特別な問題は、超音波エネルギーを容易かつ正確に標的に誘導するための高精度ナビゲーション装置が欠如していることである。
【0004】
現在、集束超音波はMRI(磁気共鳴映像法)によって誘導されており、MRIは水分子の超音波誘導振動の熱を検出して焦点を位置付けることにより、焦点は標的領域に誘導され得る。この技術により、温熱療法においてリアルタイムモニタリングが提供され得る。しかしながら、この技術では全ての集束超音波装置をMRIシステムと統合し、かつそれらをMRIシステム中に埋め込むことが必要とされる。現在のMRIベースの集束超音波ガイドシステムは、高性能のMRI製造技術及び対応するFUS MR適合設計を必要とするため、高価かつ設計が困難である。
【0005】
上述したように、MRIは温熱療法中にリアルタイムモニタリングを提供可能である。しかしながら、集束超音波を使用して局所的に血液と脳との間の透過性を向上させるときに、MRIはリアルタイムモニタリングを提供できない。その代わりに、集束超音波での治療後に、オペレータはもう一度患者に画像造影剤を注入して再度MRIスキャンを実施し、血液と脳との間の透過性が向上するかどうかを調査しなければならず、これは、MRIベースの技術を採用することを非常に困難なものとしている。
これまでのところ、血液と脳との間の透過性を向上させるための集束超音波を適用する、臨床的に利用可能なガイドシステムはない。さらに、リアルタイムのフィードバック制御は、現在のMRIベースの集束超音波ガイド技術において実現しそうにない。
【0006】
さらに、癌患者に対する複数の化学療法計画など、患者に繰り返し薬物を送達する必要がある治療において、MRIスキャンは薬物送達のための集束超音波治療における繰り返しのサイクルごとに必要とされ、これはかなりの時間及び医療資源を消費する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、この分野の専門家は、効果的に患者の標的領域に集束超音波を集中させることが可能な新たなガイド−位置決め技術が開発されることを熱望している。
【0008】
本発明の主な目的は、エネルギーを送達するためのニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波送達システム及び方法を提供することであり、それらは集束超音波を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた新規かつ実用的なシステム及びその方法を代表するものである。
【0009】
本発明の別の目的は、エネルギーを送達するためのニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波送達システム及び方法を提供することであり、それらは正確に標的領域に超音波を送達するためにニューロナビゲーションシステムを使用し、かつ血液と脳との間の透過性を向上させるために適用され得る。
【0010】
本発明のさらなる目的は、エネルギーを送達するためのニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波送達システム及び方法を提供することであり、集束超音波装置はMRIシステムと統合されることも、またMRI室で操作されることもないため、適用における柔軟性が増加し、かつ製造コストが低減し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明はニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムを提案し、それは集束超音波エネルギーを標的点に誘導し、かつ集束超音波装置、ニューロナビゲーションシステム、及び固定具を備える。
集束超音波装置は超音波を焦点に集中させることが可能である。ニューロナビゲーションシステムは電気的に集束超音波装置と接続し、かつ焦点と個人の目的領域との間の位置関係を確立するため、座標を校正するため、かつ焦点を認識するために使用される校正ユニットを備える。固定具は個人の目的領域を固定するために使用される。
【0012】
一実施形態では、集束超音波装置によって生成されるエネルギーは、焼灼、局所又は深部の細胞の刺激、局所又は深部の細胞の調節、血管透過性の向上、血栓の溶解、薬剤の局所送達、及び血液と脳との間の透過性の向上に適用され得る。
【0013】
本発明は、中枢神経系(脳及び脊髄など)の組織及び硬組織によって包まれた組織を含む、ニューロナビゲーションシステムが到達可能な領域に適用される。
【0014】
また、本発明は、エネルギーを送達するためのニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波送達方法を提案し、それは集束超音波を標的点に集中させるように誘導し、かつ以下の工程を含む。
(1)集束超音波装置、ニューロナビゲーションシステム、及び固定具を備えるニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムを提供する工程
(2)個人の目的領域の画像を取得する工程
(3)集束エネルギーの焦点を空間座標系に提供する工程
(4)目的領域と焦点との間の位置関係を確立する工程
(5)焦点の座標及び目的領域を校正することで、ニューロナビゲーションシステムが焦点を認識できる工程
(6)ニューロナビゲーションシステムを用いて焦点を標的点に誘導する工程
(7)集束超音波装置を用いてエネルギーを標的点に送達する工程
【0015】
本発明の一実施形態では、本方法はさらに、エコー信号の変化を検出し、リアルタイムで治療効果をモニタできる工程を含む。
【0016】
本発明の目的、技術内容、特徴及び成果を説明するために、実施形態を添付の図面と併せて以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に従って、ニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムによって実施される集束超音波治療のフローチャートを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に従って、集束超音波のエネルギー送達を誘導するためのニューロナビゲーションシステムの使用におけるフローチャートを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に従って、ニューロナビゲーションガイド下集束超音波エネルギー送達システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図4A】本発明の一実施形態に従って、集束超音波治療の前に頭部を固定するための装置及びプロセスを模式的に示す図である。
図4B】本発明の一実施形態に従って、集束超音波治療の前に頭部を固定するための装置及びプロセスを模式的に示す図である。
図4C】本発明の一実施形態に従って、集束超音波治療の前に頭部を固定するための装置及びプロセスを模式的に示す図である。
図4D】本発明の一実施形態に従って、集束超音波治療の前に頭部を固定するための装置及びプロセスを模式的に示す図である。
図5A】本発明の一実施形態に従って、ニューロナビゲーションシステムがどのようにして追跡点P1と焦点Oとの間のつながりを認識するかを模式的に示す図である。
図5B】本発明の一実施形態に従って、ニューロナビゲーションシステムがどのようにして追跡点P1と焦点Oとの間のつながりを認識するかを模式的に示す図である。
図5C】本発明の一実施形態に従って、校正プロセスにおける集束超音波装置、追跡点P1及びP2、ダミー並びに基準点を模式的に示す図である。
図5D】本発明の一実施形態に従って、校正プロセスにおける集束超音波装置、追跡点P1及びP2、ダミー並びに基準点を模式的に示す図である。
図5E】本発明の一実施形態に従って、校正プロセス後に、水袋が超音波トランスデューサに結合され、かつ超音波トランスデューサがスライドトラックに取り付けられることを模式的に示す図である。
図5F】本発明の一実施形態に従って、校正プロセス後に、水袋が超音波トランスデューサに結合され、かつ超音波トランスデューサがスライドトラックに取り付けられることを模式的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に従って、校正プロセスのフローチャートを示す図である。
図7】本発明の一実施形態に従って、動物の血液と脳との間の透過性を向上させるよう集束超音波を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実験結果を評価するMRIの結果を示す図である。
図8A】集束超音波治療後に、図7に従って局所脳領域でのMRスピン格子緩和率(R1)分析、及び造影剤の分子濃度変化の分析を示す図である。
図8B】集束超音波治療後に、図7に従って局所脳領域でのMRスピン格子緩和率(R1)分析、及び造影剤の分子濃度変化の分析を示す図である。
図9A】本発明の一実施形態に従って、動物の血液脳関門を開くために多点集束超音波治療を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実験の結果を示す図である。
図9B】本発明の一実施形態に従って、動物の血液脳関門を開くために多点集束超音波治療を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実験の結果を示す図である。
図10】集束超音波(FUS)の焦点の数と、焦点とFUSが実際に作用する位置との間の距離との関係を示す図である。
図11A】本発明の一実施形態に従って、体積FUSエネルギー分布を定義するための多点FUS位置決め装置を模式的に示す図である。
図11B】本発明の一実施形態に従って、体積FUSエネルギー分布を定義するための多点FUS位置決め装置を模式的に示す図である。
図11C】本発明の一実施形態に従って、体積FUSエネルギー分布を定義するための多点FUS位置決め装置を模式的に示す図である。
図11D】本発明の一実施形態に従って、体積FUSエネルギー分布を定義するための多点FUS位置決め装置を模式的に示す図である。
図12A】ニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波エネルギーは、固定トラックを用いて手動で操作又は支援されることを模式的に示す図である。
図12B】ニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波エネルギーは、固定トラックを用いて手動で操作又は支援されることを模式的に示す図である。
図12C】集束超音波トランスデューサは、球状に集束された単一要素又は多素子の集束超音波フェイズドアレイであることを示す図である。
図12D】集束超音波トランスデューサは、球状に集束された単一要素又は多素子の集束超音波フェイズドアレイであることを示す図である。
図13A】本発明の一実施形態に従って、標的位置で集束超音波を使用する前の超音波エコー信号及び対応するスペクトルを示す図である。
図13B】本発明の一実施形態に従って、標的位置で集束超音波を使用する前の超音波エコー信号及び対応するスペクトルを示す図である。
図13C】本発明の一実施形態に従って、血液と脳との間の透過性を向上させるためのFUSの使用における、強化された低調波/高調波の成分を含む典型的な超音波エコー及び対応するスペクトルを示す図である。
図13D】本発明の一実施形態に従って、血液と脳との間の透過性を向上させるためのFUSの使用における、強化された低調波/高調波の成分を含む典型的な超音波エコー及び対応するスペクトルを示す図である。
図14】本発明の一実施形態に従って、広範な脳組織の領域を網羅するよう薬物送達を実施するための多点FUSの使用におけるリアルタイム制御戦術のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムを開示し、有形の手術器具を誘導するニューロナビゲーションシステムは、無形の集束超音波エネルギーを誘導し、新規かつ実用的な操作システムを実現することになる。
【0019】
本発明は、集束超音波装置をMRIシステムと統合させる必要性から免れ、その代わりに既存のニューロナビゲーションシステムを集束超音波装置と組み合わせることによって実現されるため、操作システムの柔軟性を向上させることができる。本発明ではMRI室内で集束超音波治療を行う必要がないので、治療プロセスが簡略化される。
【0020】
以下に、血液と脳との間の透過性を向上させるために患者の脳の標的領域に集束超音波エネルギーを誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実施形態によって本発明を例示する。しかしながら、本発明は実施形態によって限定されるものではない。本発明は、中枢神経系(脳及び脊髄など)の組織及び硬組織によって包まれた組織を含む、ニューロナビゲーションシステムが到達可能なあらゆる領域に適用され得る。
【0021】
図1を参照する。従来技術と本発明との間の差異を説明するために、脳における集束超音波治療が使用されている。従来のMRIガイド下集束超音波治療は、ステップS11−ステップS41及びステップS61−S71を含む。
ステップS11では、一部の患者が脳疾患を有すると診断される。ステップS21では、集束超音波による治療に適した患者が選択される。ステップS31では、選択された患者に対して治療プロセスが計画される。ステップS41では、MRIを使用して患者の脳内の領域を位置付け、かつ集束超音波治療がその領域において行われる。ステップS61では、MRIを再び使用して集束超音波治療の効果を検証する。ステップS71では、治療の効果が追跡される。
脳癌における化学療法などのいくつかの場合では、患者は各薬剤が投与された後に、もう一度上記のステップを経ることになり得る。したがって、集束超音波治療の複数のサイクルが必要とされる。
【0022】
本発明は、ステップS11−ステップS51及びステップS71を含む。従来技術とは異なり、ステップS41において、本発明では集束超音波によって治療され得る患者の脳内の領域を位置付けるために、MRI、CT(コンピュータ断層撮影)、又は他の方法が使用され得る。ステップS51において、本発明では治療される標的点に集束超音波を誘導するためにニューロナビゲーションシステムが使用される。ステップS51において、本発明ではリアルタイムで集束超音波治療の効果を評価し、かつ瞬時にフィードバック制御を行うことができる。集束超音波治療の複数のサイクルが必要である場合、本発明ではサイクルごとに実施されるMRIは必要としないが、先に得られた脳画像及びニューロナビゲーションシステムを使用することで、サイクルごとに集束超音波が誘導される。集束超音波治療の後、医師はMRIを使用して集束超音波治療の効果を確認する。ステップS71では、医師は治療の効果を追跡する。
【0023】
従来技術では、集束超音波装置をMRIシステムと統合することを必要とする。さらに、従来技術では、MRI室内でのステップS41−ステップS61の実施を必要とする。また、集束超音波治療の複数のサイクルを必要とする治療について、MRIは従来技術においてサイクルごとに行われなければならず、それは医療資源の点で非常に複雑かつ高価である。
対照的に、本発明では集束超音波装置をMRIシステムと統合せず、又はMRI室内でステップS51を行わない。集束超音波治療の複数のサイクルを必要とする治療について、本発明では患者の目的領域の以前に得られた画像がニューロナビゲーションシステムに利用可能であるため、サイクルごとに標的点が位置付けられて集束超音波が誘導される。したがって、本発明は複雑な医療機器の設計及び操作の必要性を排除するものである。上記の説明から、本発明は従来技術とは異なることが明らかである。
【0024】
本発明では、患者の目的領域の画像の供給源はMRIに限定されず、その代わりにCTなどの別の医療画像技術から供給されてもよいことに留意すべきである。目的領域の画像がMRIから供給される実施形態は単に本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
本発明の一実施形態に従ってニューロナビゲーションガイド下集束超音波送達方法のフローチャートを示す図2を参照する。本発明の方法は、集束超音波を誘導して患者の組織内の標的点に集中させることができ、かつステップS202、S204、S206及びS208を含む。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態従ってニューロナビゲーションガイド下集束超音波システムの構成を示すブロック図である。図4A−4Dは、ニューロナビゲーションシステムによって校正された超音波トランスデューサがトラックに取り付けられて超音波エネルギーを送達することを模式的に示す図である。
【0027】
以下に、本発明を脳における集束超音波治療に適用する実施形態を説明する。集束超音波治療の前に、固定装置を使用して患者の頭部の位置を固定する。通常、集束超音波治療において、目的領域を固定するのに固定装置を使用することで十分である。
図4A及び図4Bに示されるように、固定装置306は患者40に接触するように熱的に形成された熱可塑性金型であってもよい。固定装置306は、繰り返し患者40に取り付けられ、かつ患者40から取り外され得る。患者40は固定装置306を装着しながら画像読取室において走査される。
【0028】
図4Cに示されるように、固定トラック304は固定装置306と係合している。患者40が集束超音波治療の複数のサイクルを必要とする場合、医師は繰り返し患者40を走査する必要はない。医師は、患者40に専用の固定装置306を装着させて目的領域を固定しながら、同時に第1走査で得られた画像情報を直接利用できる。
【0029】
図5A−5Fは、本発明の一実施形態に従って校正プロセスを模式的に示す図である。操作システム及びその方法は、図2−4及び図5A−5Fにおいて以下に詳細に説明する。
【0030】
ステップS202では、固定具30が提供され、それは定位固定フレームに類似し得る。固定具30は(図4A−4Cに示されるように)患者40の頭部を固定するために使用され、かつスライドトラック302、固定トラック304及び固定装置306を備えている。
【0031】
ステップS204では、患者40の先に得られた脳画像(図1のステップS41を参照のこと)が読み出される。ステップS206では、超音波エネルギーが標的点に集中するように集束超音波装置10を誘導するためのニューロナビゲーションシステム20が提供される。
【0032】
ニューロナビゲーションシステム20は、少なくとも2つの追跡点P1及びP2を提供する校正ユニットを含む。追跡点P1は固定基準座標を提供し、かつ通常は相対位置が目的領域に対して不変である位置に配置される。追跡点P1は固定具30の固定トラック304に配置されることが好ましい。集束超音波装置10の超音波トランスデューサ106は、固定具30のスライドトラック302に配置される。ニューロナビゲーションシステム20の別の追跡点P2は、集束超音波装置10の超音波トランスデューサ106に配置される。本発明は校正プロセスを実行して、追跡点P1及びP2、ステップS204で得られた患者の脳画像、並びに集束超音波装置10の焦点Oに応じて標的点の位置を定義する。
【0033】
ステップS208では、集束超音波装置10はエネルギーを定義された標的点に送達するため、標的点における局所組織の血液と脳との間の透過性が増加する。
【0034】
一実施形態についての図3を参照する。集束超音波装置10は電気的にニューロナビゲーションシステム20と接続し、かつ信号発生器102、信号増幅器104、超音波トランスデューサ106、及び電力計108を含む。
信号発生器102は超音波信号V1を出力する。信号増幅器104は信号発生器102と接続し、かつ超音波信号V1を増幅することで集束超音波V2を生成する。超音波トランスデューサ106は信号増幅器104と接続し、かつ集束超音波V2を標的点に送達する。電力計108は超音波トランスデューサ106と接続し、かつ集束超音波V2のエネルギーを測定する。
【0035】
一実施形態では、超音波信号V1は正弦波信号であってもよい。集束超音波V2の中心周波数は超音波トランスデューサ106と共振する。
【0036】
一実施形態では、ニューロナビゲーションシステム20は、コンピュータユニット及びその関連ソフトウェア、ファームウェア並びにメモリを備える。ニューロナビゲーションシステム20は患者40の脳画像を記録し、かつ追跡点P1及びP2を提供する。
ニューロナビゲーションシステム20は、患者40の脳画像、集束超音波装置10の焦点O、並びに追跡点P1及びP2に従って校正プロセスを実行する。一実施形態では、追跡点P1は固定具30の固定トラック304に配置され、空間内に固定座標のセットを有する基準点として機能する。追跡点P2は超音波トランスデューサ106の検出点に配置される。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
上述したように、固定具30はスライドトラック302及び固定トラック304を備える。ニューロナビゲーションシステム20は、固定具30の固定トラック304に配置された追跡点P1及び追跡点P2を使用して、標的点を定義するために校正プロセスを実行する。超音波トランスデューサ106はスライドトラック302に配置され、スライドトラック302に沿って前後にスライドし、集束超音波を定義された焦点Oに送達する。
図4Dに示されるように、スライドトラック302は第1軸に対して360度回転可能であり、スライドトラック302に配置された超音波トランスデューサ106は(最大180度の回転で)第2軸に対して回転可能であり、第2軸は第1軸に垂直である。したがって、超音波トランスデューサ106は3次元空間の任意の位置に移動して、3次元空間の任意の位置から標的点に集束超音波を送達可能である。
【0041】
固定装置306の材料は、画像化システムに適していなければならない。例えば、MRIシステムでは、誤った結果を引き起こし得る画像化での予想外のノイズ干渉がないように、不適当な材料を避けるべきである。
【0042】
以下に、集束超音波装置10をどのようにしてニューロナビゲーションシステム20と統合するか、及びニューロナビゲーションシステム20はどのようにして校正プロセスを実行するかを詳細に説明する。
【0043】
集束超音波装置10及びニューロナビゲーションシステム20は、2つの完全に異なる器具であり、そのため、その間の安定した統合を達成するために新たな校正プロセスが必要とされる。
【0044】
物理的な手術器具の従来の校正では、(追跡点P1及びP2とは異なる)校正トラッカー24を使用して校正が支援される。校正トラッカー24は、校正手順を介して手術において使用され得る物理的な手術器具をニューロナビゲーションシステムが特定することを可能とする。ニューロナビゲーションシステムが有形の手術器具を校正する方法は従来技術であり、本明細書では説明しない。
本発明では、無形の超音波焦点Oを校正するための新規な校正プロセスを提案する。本発明で提案する新規な校正プロセスを以下に詳細に説明する。
【0045】
図5C及び図5Dは、本発明の一実施形態に従って校正プロセスを模式的に示す図である。一方で、本発明の一実施形態に従って校正プロセスのフローチャートを示す図6も参照のこと。
【0046】
ステップS602では、集束超音波装置の焦点Oが決定される。音場における焦点O及び完全な3次元エネルギー分布は、精密な水中での超音波音場測定によって得られる。集束超音波装置の焦点Oを定義するために、本発明は超音波トランスデューサのダミー26を提案し、校正トラッカー24と連携する。一実施形態では、ダミー26はT字型のダミーであり、それは校正トラッカー24が正確に空間内で集束超音波エネルギーの焦点位置を決定するのを支援するように使用される。
図5Dに示されるように、T字型ダミー26は超音波トランスデューサ106に取り付けられ、無形の焦点はT字型ダミー26の有形先端で一時的に置き換えられる。
【0047】
ステップS604では、ダミー26を使用して焦点Oの位置を指し示し、かつ画像内の校正プロセスが実行される。まず、患者の脳画像がニューロナビゲーションシステムに入力され、かつ図5Dに示されるように、患者の頭部におけるいくつかの基準点R1、R2、...、Rnが定義される。(マーカーR1...Rnが第1のMRIにおいて取り付けられるので、次の校正プロセスが進められる。R1...Rnの取り付けは、標準的なニューロナビゲーションガイダンス校正手順である)。ニューロナビゲーションシステムは、基準点R1、R2、...、Rnを記録し、かつ脳画像において基準点の座標を決定する。校正トラッカー24は、ニューロナビゲーションシステムが座標比較を実施し、かつ座標が許容範囲内にあるかどうかを判断するのを支援する。
一実施形態では、検出点P2は超音波トランスデューサ106に配置されて、焦点Oと基準点R1、R2、...、Rnに対応する脳画像における座標との関係を連続的に確立するため、画像において検出点P2と焦点Oとの間の位置関係が確立される。
【0048】
ステップS606では、校正プロセスは画像−空間変換において行われる。ニューロナビゲーションシステムは、空間内で検出点P2の位置を探索し始める。一方で、P1の固定座標が画面に現れる。ニューロナビゲーションシステムは、基準点P1と検出点P2との相対位置を使用して、基準点R1、R2、...、Rnを参照しながらP2の座標を校正する。
校正トラッカー24に支援されて、ニューロナビゲーションシステムは画像内で空間位置と座標とを比較して、空間位置が座標と一致するかどうかを決定する。この時、ニューロナビゲーションは、P1とP2との間の既知の空間関係、並びにP2とOとの間の空間関係に基づいて、焦点Oを特定可能である。一旦集束超音波の焦点の校正が完了したら、T字形ダミー26を取り外す。したがって、ニューロナビゲーションシステムは、集束超音波の無形焦点Oを特定し、かつ標的点を定義可能である。
【0049】
次に、図5E及び図5Fに示されるように、水袋50が超音波トランスデューサ106に結合して超音波エネルギー伝達カップリングとして機能し、かつ超音波トランスデューサ106はスライドトラック302に取り付けられる。一方で、ニューロナビゲーションシステムは集束超音波の焦点Oを追跡し続ける。
図4Dは、スライドトラックに取り付けられた超音波トランスデューサが集束超音波治療を行うことを模式的に示している。このような場合には、追跡点P1、P2及び焦点Oは同時に画面に現れるため、標的点の物理的な位置が正確に位置付けられ得る。次いで、集束超音波装置は集束超音波エネルギーを標的点に送達する。
【0050】
結論として、本発明は、集束超音波を迅速、正確かつ効率的に標的点に誘導するためのシステム及び方法を提案する。集束超音波の焦点は、通常数センチメートルから10センチメートル超の距離で超音波トランスデューサから離間している。さらに、焦点はわずか米粒のサイズである。「超音波エネルギーを特定の標的点に集中させる」集束超音波の利点は、集束超音波が正確に本発明のシステム及び方法によって誘導されない限り、十分に実現され得ない。
本発明は、集束超音波装置をニューロナビゲーションシステムと統合し、かつニューロナビゲーションシステムが到達できる領域に適用される。本発明は、脳に薬剤を送達するために血液と脳との間の透過性を向上させるよう使用され得る。また、本発明は、局所的な中枢神経系の深部組織の焼灼、局所又は深部の細胞の調節又は刺激、局所血管の透過性の増加、局所血栓の溶解、及び薬剤又は治療物質、例えば、小分子化学療法薬、治療用ペプチド、モノクローナル抗体、遺伝子、ウイルスベクター、又は細胞の脳への局所送達に使用され得る。
【0051】
図7は、本発明の一実施形態に従って、動物(幼若ブタ)の血液と脳との間の透過性を向上させるよう集束超音波を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実験結果を評価するMRIの結果を示している。第1MRIの画像取得が行われた後、上述の焦点校正プロセスが実行される。次に、集束超音波は局所的に送達されて標的点を刺激する。一方で、微小気泡が動物に注入されることで、血液と脳との間の透過性が向上し得る。次に、動物はMRI室で走査されて、ニューロナビゲーションシステムによって誘導された集束超音波治療の効果を確認する。MRI走査の前に、MRI画像造影剤が動物に注入される。局所血管の透過性が増加すると、MRI画像造影剤(Gd−DTPA)が脳組織に入る。一方で、標的点と画像造影剤が脳組織内に漏出する領域との間の距離が測定される。
図7において、1列目の座標1の点1及び点2は標的点である。4列目の座標2の点1及び点2は、集束超音波が実際に作用する位置である。1列目及び2列目のMR T1強調画像を使用して、試験動物が第1画像化作業(集束超音波治療前)と第2画像化作業(集束超音波治療後)との間で移動しているかどうかを検出する。血管透過性が増加している位置は、明確に2列目から4列目において観察され得る。矢印は、標的点の位置及び集束超音波が実際に作用する位置を示している。
図7の右下の局所拡大図は、標的点と集束超音波が実際に作用する位置との間の距離が、それぞれわずか1.5mm及び0.7mmであることを示している。実験結果から、本発明ではプロセスの一部のみにMRIを使用するのにもかかわらず、本発明は従来技術の誤差に非常に近い誤差を有していることが示される。したがって、本発明は効率的に機能することが証明される。
【0052】
図8Aは、図7の集束超音波によって治療された矢印の領域におけるMRスピン格子緩和率(R1)マップを示している。図8Bは、同一の実験パラメータによる脳の領域の分析画像を示している。図8A及び図8Bはさらに、上昇したR1値の増加に基づいて血液と脳との間の透過性が増加したことを示している。
MRI造影剤濃度がR1値と線形的に相関しているので、それはより高いMRI造影剤濃度が標的点に堆積されたことを証明する(この場合、超音波処理されていない脳の領域と比較すると、それは少なくとも100%の濃度増加を実証した)。したがって、本発明では効果的に薬剤を局所組織に送達することが可能である。
【0053】
図9A及び図9Bは、本発明の一実施形態に従って、動物の血液と脳との間の透過性を向上させるよう多点集束超音波治療を誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた実験結果を示しており、それぞれ2つの隣接する焦点の間隔は5mmであり、かつ集束超音波治療は3×3=9回行われる。
図9A及び図9Bは、多点集束超音波治療によって血液と脳との間の透過性が効果的に向上される領域は、20mmの直径を有することを示しており、それは単点集束超音波治療によって成される4mmの間隔よりもはるかに大きい。したがって、多点FUS(集束超音波)治療は、広い領域の血液と脳との間の透過性を向上させることができる。
【0054】
図10はFUSの焦点の数と、焦点とFUSが実際に作用する位置との間の距離との間の関係を示す。図10は、焦点とFUSが実際に作用する位置との間の距離がわずか2.3±0.9mmであることを示している。これは、本発明が実用的かつ効果的であることを証明している。
【0055】
通常、集束超音波は点には集中せず、3次元空間に分布される。集束超音波がエネルギー点ではなくエネルギー空間に誘導される場合は、誘導はより正確になる。本発明の一実施形態による多点FUS位置決め装置について、図11A−11Dを参照のこと。そこでは、複数ピンのT字型ダミー26が集束超音波エネルギーの3次元分布の校正に使用される(この実施例において、本実施形態では、50%の等圧分布を特定するために一実施例を示した)。
図11C及び図11Dは、それぞれ、図11Aに示される超音波トランスデューサ106の底面図及び側面図である。図11Bは、図11Aに示される集束領域107の局所拡大図である。複数ピンのT字型ダミーにより、ニューロナビゲーションシステムが順に校正の複数のサイクルを行うことが可能となるため、体積集束超音波エネルギー分布が定義される。この実施形態と図5C−5Fに示される単点追跡の実施形態との間の差異は、体積集束超音波エネルギー分布を定義するための50%の音圧線の使用にある。
図11A−11Dでは、O1−O6はそれぞれ6つの異なる位置を表しており、それらはピークの集束超音波圧力レベルと比較すると、全てが50%の圧力レベルを含む。
【0056】
図12A及び図12Bはそれぞれ、本発明の一実施形態に従って多点FUSの手動操作モード及び固定トラック操作モードを示している。図12C及び図12Dに示されるように、2つのモードのうちのいずれかは、より大きな3次元集束空間を定義可能である。図12C及び図12Dは、本発明の一実施形態に従って、脳組織への薬剤送達を実施するためにFUSの単一サイクル又はFUSの複数サイクルを使用するリアルタイム制御戦略を示しており、太い曲線で囲まれた領域は図11Bで定義された集束3次元空間である。
【0057】
特に以下の事項において言及がなされるべきである。血液と脳との間の透過性が向上する前、スペクトルはベースバンド周波数、fcのみを含む(図13A及び図13Bを参照のこと)。脳血管の透過性が増加する場合、低調波又は高調波が超音波エコーと同時に生じる。脳血管の透過性が増加しない場合、低調波及び高調波は現れないであろう。したがって、本発明では、低調波又は高調波が現れるかどうかに応じて超音波の適用を停止するか否かを判定する。
図13C及び図13Dは、低調波及び高調波の周波数成分を示しており、低調波の周波数は、それぞれ0.5×fc及び1.5×fcであり、fcは集束超音波の中心周波数である。
【0058】
本発明では、特有のエコーを検出してリアルタイムで局所血管の透過性が変化するかどうかを決定する。フィードバックループ管理指標としての低調波及び高調波の検出は、血液と脳との間の透過性の向上への適用において使用される。他の適用については、受信したエコー信号から特定される異なる指標が使用され得る。例えば、血栓溶解への適用について、血流/血流速度の回復を検出するためにエコー信号から受信したドップラー信号の変化(すなわち、周波数シフト)を分析することが可能である。
【0059】
図14は、本発明の一実施形態に従って、脳組織への薬剤送達を実施するためにFUSの単一サイクル又はFUSの複数サイクルを使用するリアルタイム制御戦略のフローチャートを示している。図14に示されるように、多点FUS制御プロセスはステップS111−S127を含む。
【0060】
ステップS111−S119では、先に得られた脳画像が読み出され、登録及び校正が実行され、標的領域が選択され、かつ超音波が標的領域に集中する。ステップS121では、FUSのスペクトルが変化するかどうか(低調波又は高調波が現れるかどうか)について検出が行われる。低調波又は高調波が現れる場合、FUSの適用は中止される(ステップS123)。低調波及び高調波が現れない場合、プロセスはステップS119に戻り、FUSが適用され続ける。
【0061】
ステップS123の後、システムは全ての標的領域が治療されたかどうかを検出する。全ての標的領域が治療された場合、プロセスは終了する(ステップS127)。治療されていないいずれかの標的領域がある場合、プロセスはステップS117に戻り、超音波を標的領域に集中させる。
【0062】
ステップS115では、校正は3次元集束空間を定義し、かつスペクトル変動を使用することで、血管透過性が増加するかどうかが決定され得ることに留意されたい。現在の標的領域の血管透過性が増加した場合、全ての標的領域が治療されるまで、治療は次の標的領域に移る。校正プロセスは、図11Bに示される校正点O1−O6に従って行われる。
【0063】
結論として、本発明は、エネルギーを送達するためにニューロナビゲーションシステムによって誘導される集束超音波送達システム及びその方法を提案する。それは集束超音波を標的領域に誘導するためのニューロナビゲーションシステムを用いた新規な技術である。
【0064】
本発明は、集束超音波装置をMRIシステムと統合する必要性を排除して、FUSを誘導するために既存のニューロナビゲーションシステムを用いることを特徴とする。したがって、本発明は設備コストを削減し、かつ操作システムの柔軟性を増加させ得る。
【0065】
上述の実施形態は本発明の技術的思想及び特徴を示すため、当業者が本発明を理解、構成、及び使用することを可能とする。これらの実施形態は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神に従うあらゆる同等の修正又は変更は、本発明の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14