特許第6188048号(P6188048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188048
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F24F11/02 A
   F24F11/02 S
   F24F11/02 102S
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-65651(P2012-65651)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195032(P2013-195032A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月6日
【審判番号】不服2016-9476(P2016-9476/J1)
【審判請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安冨 正直
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−226739(JP,A)
【文献】 特開昭63−54545(JP,A)
【文献】 特開昭63−148042(JP,A)
【文献】 特開2011−80758(JP,A)
【文献】 特開平6−101892(JP,A)
【文献】 特開2003−232531(JP,A)
【文献】 特開2007−192480(JP,A)
【文献】 特開2011−237092(JP,A)
【文献】 特開2000−171088(JP,A)
【文献】 特開2009−97755(JP,A)
【文献】 特開2002−295888(JP,A)
【文献】 特開2011−196666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機(30)の下部に設けられた吹出口(35)から吹き出される吹出空気を、部屋の天井面(C)に沿った気流にする天井吹きモードを実行可能な空気調和機であって、
圧縮機(21)と、凝縮器(24)と、膨張機構(22)と、蒸発器(33)と、が冷媒配管で接続されており、冷媒が循環する冷媒回路(11)と、
熱交換された前記吹出空気の空気流れを形成するファン(34)と、
空気の流れのそばにあってその流れの方向と異なる方向の面に沿った方向に流れようとする現象であるコアンダ効果を利用して前記吹出空気を自己の外側面(42a)に沿った気流に変えるコアンダ羽根(42)と、
前記室内機(30)の前面部を構成し、吸込口がなく、且つ前記コアンダ羽根(42)を収納可能な収容部(37)が設けられている前面パネル(31b)と、
冷房運転において前記天井吹きモードを実行する場合に、前記吹出空気の温度を変更することで、前記天井面に沿った気流が前記天井面から剥がれる剥離位置を調整する制御部(61)と、
を備え、
前記コアンダ羽根(42)は、運転停止時には前記前面パネル(31b)に設けられた前記収容部(37)に収容され、前記天井吹きモードにおいては回動することによって前記収容部(37)から離れて、前記コアンダ羽根(42)の後方端が前記吹出口(35)の前方となる位置へ移動し、前記コアンダ羽根(42)の前記外側面(42a)の前方端における接線方向が前方上向きとなる姿勢を採り、前記吹出空気の方向を天井方向に変える
空気調和機(10)。
【請求項2】
前記制御部は、前記ファンの回転数及び/又は前記圧縮機の回転数を調整して、前記吹出空気の温度を変更することで、前記吹出口から前記剥離位置までの距離を変更する、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記ファンを一定の回転数で回転させ、かつ、前記圧縮機の回転数を上げて、前記吹出空気の温度を下げることで、前記吹出口から前記剥離位置までの距離を短くする、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、前記ファンの回転数を下げ、かつ、前記圧縮機を一定の回転数で回転させて、前記吹出空気の温度を下げることで、前記吹出口から前記剥離位置までの距離を短くする、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、前記蒸発器を通過する冷媒の蒸発温度の目標値である目標蒸発温度を調整することで、前記吹出空気の温度を変更する、
請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記部屋の所定エリア内における人の存在の有無を検知する人検知センサ(91)、及び/又は、前記部屋における床面の温度を検知する床温度センサ(92)を更に備え、
前記制御部は、前記人検知センサ、及び/又は、前記床温度センサの検知結果に基づいて、前記剥離位置を決定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹出口から吹き出される吹出空気を、部屋の天井面に沿った気流にすることが可能な空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吹出口から吹き出される吹出空気を、部屋の天井面に沿った気流にすることが可能な空気調和機がある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2003−232531号公報)に開示されている空気調和機では、冷房運転時に、吹出空気を、横ルーバに沿った上向きの気流にすることで、部屋の天井に向かって誘導している。そして、天井に到達した気流は、天井面に沿った気流となり、室内機と対向する側壁へと向かう。その後、側壁へと到達した気流は、側壁面、床面の順に伝い、最終的に室内機に吸い込まれる。このように、この空気調和機では、部屋の天井面に沿った気流を形成することで、部屋内に気流を循環させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部屋の天井面に沿った気流を形成した場合、この気流は、コアンダ効果により、天井面から剥がれにくくなっている。このため、特に冷房運転時には、天井面に沿った気流を、室内機と対向する側壁等の吹出口から遠いエリアに導くことができる一方で、室内機周辺等の吹出口から近いエリアには導くことができず、部屋全体の快適性を損なうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、天井面に沿った気流が天井面から剥がれる位置を調整することで、部屋全体の快適性を図ることができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る空気調和機は、室内機の下部に設けられた吹出口から吹き出される吹出空気を、部屋の天井面に沿った気流にする天井吹きモードを実行可能な空気調和機であって、冷媒回路と、ファンと、コアンダ羽根と、前面パネルと、制御部と、を備える。冷媒回路には、圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、が冷媒配管で接続されている。また、冷媒回路には、冷媒が循環する。ファンは、熱交換された吹出空気の空気流れを形成する。コアンダ羽根は、空気の流れのそばにあってその流れの方向と異なる方向の面に沿った方向に流れようとする現象であるコアンダ効果を利用して吹出空気を自己の外側面に沿った気流に変える。前面パネルは、室内機の前面部を構成し、吸込口がなく、且つコアンダ羽根を収納可能な収容部が設けられている。制御部は、冷房運転において、天井吹きモードを実行する場合に、吹出空気の温度を変更することで、天井面に沿った気流が天井面から剥がれる剥離位置を調整する。コアンダ羽根は、運転停止時には前面パネルに設けられた収容部に収容され、天井吹きモードにおいては回動することによって収容部から離れて、コアンダ羽根の後方端が吹出口の前方となる位置へ移動し、コアンダ羽根の外側面の前方端における接線方向が前方上向きとなる姿勢を採り、吹出空気の方向を天井方向に変える
【0007】
本発明者は、吹出空気を部屋の天井面に沿った気流にする天井吹きモードを実行可能な空気調和機において、冷房運転時に天井吹きモードを実行したときに、天井面に沿った気流が天井面から剥離する剥離位置について検討したところ、吹出口から吹き出される吹出空気の温度を変更して、吹出空気の空気密度を変えることで、天井面に沿った気流の剥離位置を調整することができることを見出した。
【0008】
そこで、本発明の第1観点に係る空気調和機では、コアンダ羽根により吹出口から吹き出された吹出空気を自己の外側面に沿ったコアンダ気流にして天井面へと誘導する天井吹きモードを実現し、このコアンダ羽根を用いて天井面に沿った気流を形成する。そして、冷房運転において天井吹きモードを実行する場合に、吹出空気の温度を変更することで、天井面に沿った気流の剥離位置を調整している。この空気調和機では、剥離位置を調整することで、天井面に沿った気流を、吹出口から遠いエリアだけでなく、吹出口から近いエリアにも導くことができる。
【0009】
これによって、天井面に沿った気流が天井面から剥がれる位置を調整することで、部屋全体の快適性を図ることができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る空気調和機は、第1観点の空気調和機において、制御部は、ファンの回転数及び/又は圧縮機の回転数を調整して、吹出空気の温度を変更することで、吹出口から剥離位置までの距離を変更する。この空気調和機では、ファンの回転数及び/又は圧縮機の回転数を調整することで、吹出空気の温度を変更し、この結果、吹出空気の空気密度を変えることができる。
【0011】
本発明の第3観点に係る空気調和機は、第2観点の空気調和機において、制御部は、ファンを一定の回転数で回転させ、かつ、圧縮機の回転数を上げて、吹出空気の温度を下げることで、吹出口から剥離位置までの距離を短くする。この空気調和機では、ファンを一定の回転数で回転させ、かつ、圧縮機の回転数を上げて、吹出空気の温度を下げることで、吹出空気の空気密度を上げている。この結果、吹出口から剥離位置までの距離を短くすることができる。これにより、天井面に沿った気流の剥離位置を吹出口に近づけることができるため、吹出空気を吹出口から近いエリアに導くことができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る空気調和機は、第2観点に空気調和機において、制御部は、ファンの回転数を下げ、かつ、圧縮機を一定の回転数で回転させて、吹出空気の温度を下げることで、吹出口から剥離位置までの距離を短くする。この空気調和機では、ファンの回転数を下げ、かつ、圧縮機を一定の回転数で回転させて、吹出空気の温度を下げることで、吹出空気の空気密度を上げている。この結果、吹出口から剥離位置までの距離を短くすることができる。これにより、天井面に沿った気流の剥離位置を吹出口に近づけることができるため、吹出空気を吹出口から近いエリアに導くことができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る空気調和機は、第1観点又は第2観点の空気調和機において、制御部は、蒸発器を通過する冷媒の蒸発温度の目標値である目標蒸発温度を調整することで、吹出空気の温度を変更する。この空気調和機では、冷媒の目標蒸発温度を調整することで、吹出空気の温度を変更し、この結果、吹出空気の空気密度を変えることができる。
【0014】
本発明の第6観点に係る空気調和機は、第1観点から第5観点のいずれかの空気調和機において、人検知センサ、及び/又は、床温度センサを更に備える。人検知センサは、部屋の所定エリア内における人の存在の有無を検知するものである。床温度センサは、部屋における床面の温度を検知するものである。また、制御部は、人検知センサ、及び/又は、床温度センサの検知結果に基づいて、剥離位置を決定する。このため、空気調和機が人検知センサを備えている場合には、剥離位置を、人検知センサが人の存在を検知したエリアに決定することで、発熱体である人が存在していないエリアよりも温度が高いと考えられるエリアに天井面に沿った気流を導くことができる。また、空気調和機が床温度センサを備えている場合には、剥離位置を、他のエリアよりも床面の温度が高いエリアに決定することで、床面の温度が他のエリアよりも高いと考えられるエリアに天井面に沿った気流を導くことができる。
【0015】
これによって、部屋内における温度ムラの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る空気調和機では、部屋全体の快適性を図ることができる。
【0017】
本発明の第2観点に係る空気調和機では、吹出空気の空気密度を変えることができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る空気調和機では、吹出空気を吹出口から近いエリアに導くことができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る空気調和機では、吹出空気を吹出口から近いエリアに導くことができる。

本発明の第5観点に係る空気調和機では、吹出空気の空気密度を変えることができる。
【0020】
本発明の第6観点に係る空気調和機では、部屋内における温度ムラの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の備える冷媒回路の概略図。
図2】空気調和機の備える制御装置の制御ブロック図。
図3】室内機の外観斜視図。
図4】運転停止時の室内機の断面図。
図5】運転時の室内機の断面図。
図6】運転時の室内機の断面図。
図7】天井面に沿った気流が天井面から剥離するエリアを説明するための図。
図8】異なる設定温度に設定した場合の剥離位置を説明するための図。
図9】変形例Bに係る空気調和機の備える制御装置の制御ブロック図。
図10】変形例Bに係る空気調和機において、天井面に沿った気流が天井面から剥離するエリアを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る空気調和機10について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
(1)空気調和機の全体構成
空気調和機10は、室外機20と、室内機30と、制御装置60(図2参照)と、を備えている。なお、本実施形態の空気調和機10は、図1に示すように、1台の室外機20と、1台の室内機30とが冷媒配管によって並列に接続されているペア型の空気調和機である。また、この空気調和機10は、冷房運転及び暖房運転を含む各種運転を行う。なお、本実施形態の空気調和機10は、ペア型の空気調和機であるが、これに限定されず、1台の室外機20に複数台の室内機30が接続されたマルチ型の空気調和機であってもよい。
【0024】
また、この空気調和機10では、室外機20と室内機30とが冷媒配管によって接続されることで、蒸気圧縮式の冷媒回路11が構成されている。冷媒回路11には、圧縮機21と、室内熱交換器33と、電動膨張弁22と、室外熱交換器24と、が順に接続されている。
【0025】
(2)詳細構成
(2−1)室外機
室外機20は、室外に設置されており、図1に示すように、圧縮機21、四路切替弁23、アキュムレータ25、室外熱交換器24、室外ファン28、及び、電動膨張弁22等を内部に収納している。
【0026】
圧縮機21は、回転数が可変なインバータ式の圧縮機であって、吸入したガス冷媒を圧縮するためのものである。
【0027】
電動膨張弁22は、室内熱交換器33と室外熱交換器24との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための弁である。なお、本実施形態では、膨張機構として電動膨張弁22が採用されているが、冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うことができる機構であれば膨張機構はこれに限定されない。
【0028】
室外熱交換器24は、主に、長手方向両端で複数回折り返されてなる伝熱管と、伝熱管から挿通される複数のフィンとから構成されている。室外熱交換器24は、暖房運転時には蒸発器として機能し、冷房運転時には凝縮器として機能する。また、室外熱交換器24は、室外空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、室外ファン28が室外熱交換器24に接触する空気流れを生成することで、室外空気と室外熱交換器24を流れる冷媒とを熱交換させることができる。
【0029】
室外ファン28は、室外空気を室外機20内に取り込み、室外熱交換器24において冷媒と熱交換させた後に、室外機20外に排出するためのファンである。なお、本実施形態における室外ファン28は、ファンモータ28aによって駆動されるプロペラファンである。
【0030】
また、四路切替弁23は、冷媒回路11を流れる冷媒の流路を変更する切替機構を構成している。四路切替弁23は、圧縮機21の吐出部21aと室外熱交換器24とを接続し、かつ、室内熱交換器33と圧縮機21の吸入部21bとを接続する第1状態(図1の実線参照)と、圧縮機21の吐出部21aと室内熱交換器33と接続し、かつ、室外熱交換器24と圧縮機21の吸入部21bとを接続する第2状態(図1の破線参照)とに切り替わることで、冷媒回路11における冷媒の循環方向が可逆に構成されている。
【0031】
さらに、アキュムレータ25は、液冷媒とガス冷媒とを分離するためのものであり、冷媒回路11において、圧縮機21の吸入部21bと四路切替弁23とを接続する冷媒配管に設けられている。
【0032】
(2−2)室内機
室内機30は、部屋の側壁面等に設置される壁掛け型の室内機である。また、室内機30は、室内熱交換器33及び室内ファン34を内部に収容している。
【0033】
室内熱交換器33は、主に、長手方向両端で複数回折り返されてなる伝熱管と、伝熱管から挿通される複数のフィンとから構成されている。室内熱交換器33は、暖房運転時には、凝縮器として機能し、冷房運転時には蒸発器として機能する。また、室内熱交換器33は、室内空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、室内ファン34が室内熱交換器33に接触する空気流れを生成することで、部屋内の空気と室内熱交換器33を流れる冷媒とを熱交換させることができる。
【0034】
室内ファン34は、部屋内の空気を室内機30内に吸い込ませるとともに、室内熱交換器33との間で熱交換を行った後の空気を部屋内に吹き出させるためのファンである。なお、本実施形態における室内ファン34は、回転駆動することによって、回転軸と交わる方向に空気流を生成するクロスフローファンである。
【0035】
(2−3)制御装置
制御装置60は、図2に示すように、室外機20及び室内機30の備える各種機器と接続されており、リモートコントローラ80を介したユーザーからの運転指令に基づいて、冷房運転及び暖房運転を含む各種運転に応じた各種機器の動作制御を行う。例えば、冷房運転を行う場合には、制御装置60は、四路切替弁23を第1状態に切り替えるとともに、圧縮機21、室外ファン28、室内ファン34及び電動膨張弁22を、ユーザーによって設定されている設定温度及び設定風量や部屋内の空気温度等に応じて駆動させる。一方で、暖房運転を行う場合には、制御装置60は、四路切替弁23を第2状態に切り替えるとともに、圧縮機21、室外ファン28、室内ファン34及び電動膨張弁22を、設定温度及び設定風量や部屋内の空気温度等に応じて駆動させる。
【0036】
また、制御装置60は、後述する各種運転モードを実行可能な実行部61を有している。
【0037】
(3)室内機の詳細構成
図3は、運転停止時の室内機30の外観図である。図4は、運転停止時の室内機30の断面図である。図5は、天井吹きモード実行時の室内機30の断面図である。図6は、斜め方向から視た天井吹きモード実行時の室内機30の断面図である。
【0038】
室内機30は、本体ケーシング31、室内熱交換器33、室内ファン34、水平羽根41、及び、コアンダ羽根42を備えている。
【0039】
本体ケーシング31は、天面部31a、前面パネル31b、背面板31c及び下部水平板31dを有し、内部に室内熱交換器33及び室内ファン34を収納している。
【0040】
天面部31aは、本体ケーシング31の上部に位置し、天面部31aの前部には、吸込口39が設けられている。
【0041】
前面パネル31bは室内機30の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル31bは、その上端が天面部31aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。また、前面パネル31bには、コアンダ羽根42を収納可能な収容部37が設けられている。
【0042】
室内熱交換器33及び室内ファン34は、底フレーム36に取り付けられている。また、室内熱交換器33は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン34が位置している。
【0043】
また、本体ケーシング31の下部には、吹出口35が設けられている。吹出口35は、本体ケーシング31の長手方向を長辺とする長方形の開口である。吹出口35は、吹出流路38によって本体ケーシング31の内部と繋がっている。吹出流路38は、吹出口35から底フレーム36のスクロールに沿って形成されている。そして、部屋内の空気は、室内ファン34の稼動によって吸込口39、室内熱交換器33を経て室内ファン34に吸い込まれ、室内ファン34から吹出流路38を経て吹出口35から吹き出される。
【0044】
さらに、吹出口35近傍には、室内機30の長手方向に長い板状の水平羽根41が回動自在に取り付けられている。水平羽根41は、モータ(図示せず)によって駆動して、傾斜角度が異なる複数の姿勢を採ることで、吹出口35から吹き出される吹出空気の上下方向の流れを変更することができる。
【0045】
また、吹出口35の近傍であって、水平羽根41の上方には、コアンダ羽根42が設けられている。コアンダ羽根42は、室内機30の長手方向に長い板状の部材である。なお、コアンダ羽根42は、運転停止時には、前面パネル31bに設けられた収容部37に収容される。
【0046】
コアンダ羽根42は、モータ(図示せず)によって駆動して、傾斜角度が異なる複数の姿勢を採ることが可能である。例えば、コアンダ羽根42は、回動することによって収容部37から離れて、図5に示すように、前端が後端よりも上方に傾斜した姿勢を採ったり、図5に示す状態からさらに回転して前端と後端とがほぼ水平となるような姿勢を採ったり、さらに回転して前端が後端よりも下方に傾斜した姿勢を採ったりする。
【0047】
(4)各種運転モードについて
次に、制御装置60の有する実行部61によって実行される各運転モードについて説明する。
【0048】
実行部61によって実行される各運転モードには、通常吹きモードと、天井吹きモードと、下吹きモードと、が含まれる。なお、運転モードの選択は、ユーザーがリモートコントローラ80等を介して行うことができるものとする。また、運転モードは、空気調和機10で行われる各種運転に応じて、自動的に変更されるように制御することも可能である。
【0049】
(4−1)通常吹出モード
通常吹きモードでは、水平羽根41のみを回動させて吹出空気の方向が調整される。具体的には、実行部61が、水平羽根41の内側面41bが略水平になる位置まで水平羽根41を回動させることで、吹出空気を、水平羽根41の内側面41bに沿った前方吹きの気流にしたり、水平羽根41の内側面41bを、水平よりも前下がりになるまで水平羽根41を回動させることで、吹出空気を、水平羽根41の内側面41bに沿った前方下向きの気流にしたりする。
【0050】
(4−2)天井吹きモード
コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。そして、天井吹きモードは、このコアンダ効果を利用したモードである。
【0051】
天井吹きモードでは、水平羽根41及びコアンダ羽根42を回動させて吹出空気の方向が調整される。具体的には、実行部61は、水平羽根41の内側面41bが略水平になるまで水平羽根41を回動させる。次に、実行部61は、コアンダ羽根42の外側面42aが前方上向きとなるまでコアンダ羽根42を回動させる。これにより、水平羽根41で水平吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根42の外側面42aに付着した流れとなり、外側面42aに沿ったコアンダ気流に変わる。したがって、水平羽根41の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根42の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根42の外側面42aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。そして、天井方向に吹き出された吹出空気は、コアンダ効果により、部屋の天井面に沿った気流になる。
【0052】
(4−3)下吹きモード
下吹きモードは、水平羽根41の姿勢がスクロールの終端Fの接線L0よりも下向きになる場合に実行されるモードであって、水平羽根41及びコアンダ羽根42を回動させて吹出空気の方向が調整される。具体的には、下吹きモードでは、実行部61が、水平羽根41の内側面41bが下向きなるまで水平羽根41を回動させる。次に、実行部61は、コアンダ羽根42の外側面42aが下向きとなるまでコアンダ羽根42を回動させる。これにより、吹出空気は、水平羽根41とコアンダ羽根42との間を通過し、下向きに吹き出される。
【0053】
(5)天井吹きモード実行時の各種機器の動作制御について
冷房運転が行われているときに、ユーザーによって「天井吹きモード」が選択された場合、実行部61は、水平羽根41及びコアンダ羽根42を駆動させるだけでなく、天井面に沿った気流が天井面から剥離する剥離位置を調整するために、吹出口35から吹き出される吹出空気の温度(以下、吹出温度という)を、所定時間毎に自動的に変更する。具体的には、実行部61は、設定温度等に基づいて駆動している室内ファン34の回転数及び圧縮機21の回転数を、所定時間毎に調整することで、設定温度に基づいて決定されている吹出温度を所定温度だけ変更する。なお、実行部61による吹出温度の所定時間毎の変更は、冷房運転を開始してから部屋内の平均温度が設定温度に達した後の期間(安定期)に行われるものとする。そして、実行部61は、この安定期に、室内ファン34の回転数を変えずに、圧縮機21の回転数を上げることで、吹出温度を下げる制御を行う。
【0054】
なお、上記所定時間、すなわち、吹出温度を自動的に変更する時間の間隔は、机上計算やシミュレーション、実験等によって適宜決定されている。また、実行部61による吹出温度の変更は、一定時間(例えば、1分間)だけ行われる。
【0055】
(6)天井面に沿う気流の天井面からの剥離位置と吹出温度との関係について
図7は、試験室内の所定エリアを示す図である。図8は、冷房運転時に天井吹きモードを実行した場合に、天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥離する剥離位置を説明するための図であって、(a)は、設定温度を28度とした場合の剥離位置を示しており、(b)は、設定温度を20度とした場合の剥離位置を示している。なお、図7及び図8は、試験室内の側壁面Haに設置した室内機30について、冷房運転時に、天井吹きモードを実行させた結果である。
【0056】
吹出空気が部屋の天井方向に向かって吹き出されると、コアンダ効果により、部屋の天井面に沿った気流になる。そして、この気流は、コアンダ効果により、天井面Cから剥がれ難くなっているため、吹出口35から離れた遠くのエリアまで気流を導くことができる。
【0057】
ここで、本発明者は、冷房運転時に、吹出空気を部屋の天井面Cに沿った気流にした場合の部屋内の温度分布を調査したところ、室内機30周辺の吹出口35から近いエリア(図7に示すエリアA1)の温度が、吹出口35から遠いエリア(図7に示すエリアA2)の温度よりも高いという結果を得た。このことから、冷房運転時に、吹出空気を部屋の天井面Cに沿った気流にした場合、吹出口35から近いエリアの温度が下がりにくいことが判明した。
【0058】
この結果から、本発明者は、天井面Cに沿った気流が形成される天井吹きモードの実行時に、天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥がれる剥離位置を室内機30に近づけることができれば、室内機30に近いエリアにも天井面Cから床面に向かう気流を導くことができるため、吹出口35から近いエリアの温度も下げることができると考えた。
【0059】
そこで、まず、本発明者は、剥離位置を吹出口35に近づける手段として、室内ファン34の回転数を下げて、吹出空気の風量を少なくするという手段を考えた。そこで、本発明者は、室内ファン34の回転数に応じて、天井面Cに沿った気流が天井から剥離する剥離位置が変化するか否かを検証した。この結果、室内ファン34の回転数だけを下げても、天井面Cに沿った気流の剥離位置はほとんど変化しなかった。
【0060】
次に、本発明者は、剥離位置を室内機30に近づける手段として、吹出温度を下げて、吹出空気の密度を上げるという手段を考えた。そこで、本発明者は、吹出温度に応じて、天井面Cに沿った気流が天井から剥離する剥離位置が変化するか否かを検証するために、異なる設定温度で冷房運転を行い、天井吹きモードを実行した。なお、異なる設定温度で冷房運転を行うことで検証を試みた理由は、冷房運転では、設定温度を変更することで、室内熱交換器33を流れる冷媒の目標蒸発温度が変更され、この結果、吹出口35から吹き出される吹出温度が変化するためである。
【0061】
そして、冷房運転において天井吹きモードを実行させる際に、設定温度を28度に設定した場合と、設定温度を20度に設定した場合とで、室内機30の設置されている部屋の側壁面Haから剥離位置までの距離を比較したところ、設定温度が28度である場合には、側壁面Haから剥離位置までの距離が、約5mであったのに対して、設定温度が20度である場合には、側壁面Haから剥離位置までの距離が、約4mであった(図8参照)。
【0062】
この結果から、吹出温度を下げることで、室内機30が設置されている側壁面Haから天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥がれる剥離位置までの距離を短くすることができることが明らかとなった。このことから、本発明者は、吹出温度を変更することで、天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥がれる剥離位置を調整できることを見出した。
【0063】
なお、室内ファン34の回転数だけを下げても天井面Cに沿った気流の剥離位置が変化しなかった理由は、設定温度を変更しなければ、吹出温度が一定に保たれるように圧縮機21の能力制御が自動的に行われるためであると考えられる。
【0064】
そして、本実施形態では、冷房運転時に天井吹きモードが実行される際の吹出温度を変更する手段として、室内ファン34の回転数を一定にし、かつ、圧縮機21の回転数を変更することにした。
【0065】
(7)特徴
(7−1)
冷房運転時に天井面Cに沿った気流が形成される場合、この天井面Cに沿った気流は、コアンダ効果により、天井面Cから剥がれ難くなっている。このため、室内機から遠いエリアには、天井面Cに沿った気流、すなわち、天井面Cから剥離して床面へと向かう気流が導かれるが、室内機から近いエリアには、天井面Cから剥離して床面へと向かう気流が導かれないために、室内機から近いエリアの空気が調和されにくくなり、この結果、部屋全体の快適性を損なうおそれがある。
【0066】
そこで、本発明者は、天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥がれる剥離位置について検討した結果、室内機30が設置されている側壁面Haから剥離位置までの距離は、吹出温度が低いほど短くなることを発見した。このことから、本発明者は、吹出温度を変更して、吹出空気の密度を変更することで、天井面Cに沿った気流が天井面Cから剥がれる剥離位置を調整できることを見出した。
【0067】
そして、本実施形態では、冷房運転が行われているときに、ユーザーによって「天井吹きモード」が選択された場合、実行部61は、設定温度に基づいて決定されている吹出温度を自動的に変更することで、部屋の天井面Cに沿った気流の天井面Cからの剥離位置を調整している。このため、天井面Cに沿った気流を、天井面Cにおいて、特定の位置以外の位置からも剥離させることができるため、特定のエリア以外のエリアにも、天井面から床面へと向かう気流を導くことができる。したがって、部屋内の温度が安定している安定期となり吹出温度が高くなることで、天井面Cに沿った気流が吹出口35から遠いエリアに導かれているときに、強制的に吹出温度を下げる制御が行われることで、天井面Cに沿った気流を、天井面Cにおいて、室内機30に近い位置で天井面Cから剥離させることができるため、室内機30、すなわち、吹出口35から近いエリアに天井面Cから剥離して床面へと向かう気流を導くことができる。この結果、吹出口35から近いエリアに、天井面Cから剥離して床面へと向かう気流を間欠的に導くことができるため、剥離距離が調整されない天井吹きモードでは空気が調和されにくい吹出口35近傍のエリアの空気を調和することができる。
【0068】
これにより、この空気調和機10では、部屋全体の快適性を図ることができている。
【0069】
(7−2)
本実施形態では、室内熱交換器33における冷媒の目標蒸発温度を変更して吹出温度を変更する手段として、室内ファン34の回転数を一定にし、かつ、圧縮機21の回転数を変更している。この空気調和機10では、室内ファン34の回転数を一定にし、かつ、圧縮機21の回転数を変更して、吹出温度を変更することで、剥離位置を調整している。
【0070】
(7−3)
本実施形態では、吹出温度を下げる場合には、室内ファン34の回転数を変えずに、圧縮機21の回転数を上げる制御が行われている。この空気調和機10では、室内ファン34の回転数を変えずに、圧縮機21の回転数を上げて、吹出空気の空気密度を上げることで、吹出口35から剥離位置までの距離を短くしている。これにより、天井面Cに沿った気流の剥離位置を吹出口35に近づけることができている。
【0071】
(7−4)
本実施形態では、コアンダ羽根42と水平羽根41とが共同することで、吹出口35から吹き出された吹出空気を、コアンダ羽根42の外側面42aに沿ったコアンダ気流にして、天井面Cへと誘導している。このため、簡易な構成で、吹出空気を、天井面Cに沿った気流にすることができる。また、例えば、室内機30の前面パネル31bに沿うことで、吹出空気が、天井面Cに沿った気流になる場合と比較して、ショートサーキットが発生するおそれを低減することができる。
【0072】
(8)変形例
(8−1)変形例A
上記実施形態では、室内熱交換器33における冷媒の目標蒸発温度を変更して吹出温度を変更するために、室内ファン34の回転数を一定にし、かつ、圧縮機21の回転数を変更している。しかしながら、吹出温度を変更することができれば、冷媒の蒸発温度を調整する方法はこれに限定されない。
【0073】
例えば、実行部61が、圧縮機21の回転数を一定にし、かつ、室内ファン34の回転数を変更する制御を行うことで、冷媒の目標蒸発温度を調整してもよい。具体的には、吹出温度を下げる場合には、圧縮機21を一定の回転数で回転させ、かつ、室内ファン34の回転数を下げる制御を行う。また、吹出温度を上げる場合には、圧縮機21を一定の回転数で回転させ、室内ファン34の回転数を上げる制御を行う。このような制御が行われても、室内熱交換器33における冷媒の蒸発温度を調整することができるため、吹出温度を変更することができ、この結果、冷房運転時に天井吹きモードが実行される場合に、天井面Cに沿った気流が天井から剥離する剥離位置を調整することができる。
【0074】
(8−2)変形例B
図9は、変形例Bに係る空気調和機の備える制御装置160の制御ブロック図である。なお、図9では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態と同様の符号を付している。
【0075】
上記実施形態では、実行部61による吹出温度の変更は、所定時間毎に行われている。このため、所定時間毎に剥離位置が変更されている。
【0076】
これに代えて、空気調和機が各種センサを備えている場合には、各種センサの検知結果に基づいて、剥離位置が決定されてもよい。
【0077】
以下には、空気調和機が、部屋の所定エリア内における人の存在の有無を検知する人検知センサ91を備えている場合について説明する。空気調和機が人検知センサ91を備えている場合には、冷房運転時に天井吹き気流が実行されるときに、人検知センサ91によって人の存在が検知されたエリア内に天井面Cから剥離して床面へと向かう気流が導かれるように、或いは、人検知センサ91によって人の存在が検知されたエリア以外のエリア内に天井面Cから剥離して床面へと向かう気流が導かれるように、実行部161が剥離位置を決定してもよい。なお、実行部161も、上記実施形態の実行部61と同様に、吹出温度を変更する制御は、部屋内の温度が安定した安定期に行われるものとする。
【0078】
例えば、図10に示すように、人検知センサ91が、室内機130が設置されている側壁面Haに対向する側壁面Hbを含むエリアA4と、エリアA4よりも室内機130近傍のエリアA3と、における人の存在の有無を検知可能なセンサである場合には、人検知センサ91によってエリアA3内で人の存在が検知されたときに、実行部161がエリアA3内に剥離位置を決定してもよい。この場合、部屋内の温度が安定している安定期となり吹出温度が高くなることで、天井面Cに沿った気流が吹出口35から遠いエリアであるエリアA4に導かれている場合であって、吹出口35から近いエリアであるエリアA3内で人の存在が検知された場合に、吹出空気の温度が下げられることで、エリアA3に天井面Cから剥離して床面へと向かう気流を導くことができる。この結果、発熱体である人が存在するために、エリアA4よりも温度が高くなると考えられるエリアA3の温度を積極的に下げることができる。これにより、部屋内の温度ムラの発生を抑制することができる。また、天井面Cから剥離した気流はエアシャワーのような気流となって床面へと向かう。このため、剥離位置が人の頭上になったとしても、吹出口35から吹き出された気流が直接人に当たる場合と比較して、ドラフト感を抑えることができる。
【0079】
一方で、実行部161が、人検知センサ91によってエリアA3内で人の存在が検知されたときに、実行部161がエリアA3以外のエリアに、すなわち、エリアA4内に天井から剥離した気流が向かうように剥離位置を決定する場合には、天井面Cに沿った気流がエリアA3内に居る人に当たりにくくなるため、部屋内に居る人に対してドラフト感を与えるおそれを低減することができる。
【0080】
また、空気調和機が、人検知センサ91に代えて、或いは、人検知センサ91に加えて、部屋における床面の温度を検知するサーモパイル等の床温度センサ92を備えている場合には、冷房運転時に天井吹き気流が実行されるときに、床温度センサ92によって床面温度が他のエリアよりも高いエリア内に、天井面Cから剥離して床面へと向かう気流が導かれるように、実行部161が剥離位置を決定してもよい。
【0081】
例えば、床温度センサ92によって検知された床面の温度が、吹出口35に近いエリアの方が吹出口35から遠いエリアよりも高い場合に、実行部161が吹出口35から近いエリア内に剥離位置を決定してもよい。この場合、部屋内の温度が安定している安定期となり吹出温度が高くなることで、天井面Cに沿った気流が吹出口35から遠いエリアに導かれている場合であって、吹出口35から近いエリアの床面の温度が高い場合に、吹出空気の温度が下げられることで、吹出口35から近いエリアに天井面Cから剥離して床面へと向かう気流を導くことができる。この結果、吹出口35に近いエリアの床面の温度を積極的に下げることができるため、部屋内の温度ムラの発生を抑制することができる。
【0082】
なお、上記実施形態では、設定温度に基づく吹出温度が一定時間だけ変更されることで、設定温度に基づく吹出温度に応じた剥離位置が一定時間だけ変更されているが、空気調和機が床温度センサ92を備えている場合には、実行部161によって吹出温度が変更されて床面温度の高いエリアの温度が積極的に下げられた後、該エリアの床面温度が他のエリアと同等程度の温度になったときに、吹出温度の変更が解除されてもよい。これにより、一定時間だけ温度が積極的に下げられる場合と比較して、床面全体における床面温度の差がさらに小さくなるため、部屋内の温度ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0083】
(8−3)変形例C
上記実施形態では、室内機30がコアンダ羽根42を備えており、コアンダ羽根42と水平羽根41とが共同することで、吹出空気を天井面Cに沿った気流にする天井吹きモードが実行されている。しかしながら、吹出空気を天井面Cに沿った気流にすることができれば、室内機30の構成はこれに限定されず、室内機30がコアンダ羽根42を備えていなくてもよい。
【0084】
(8−4)変形例D
上記実施形態の空気調和機10は、暖房運転及び冷房運転を実行可能な空気調和装置であるため、冷媒回路11には四路切替弁23が接続さているが、冷房運転のみ実行可能な空気調和機であれば、冷媒回路に四路切替弁が接続されていなくてもよい。
【0085】
(8−5)変形例E
上記実施形態では、実行部61は、天井吹きモードを実行する際に、剥離距離が自動的に変更されるように、吹出温度を自動的に変更している。
【0086】
これに代えて、天井吹きモード実行時に、実行部61によって吹出温度が自動的に変更されるか否かを、ユーザーが設定可能であってもよい。
【0087】
(8−6)変形例F
上記実施形態では、実行部61は、天井吹きモードを実行する際に、所定時間毎に吹出温度を所定温度だけ変更し、変更してから一定時間が経過すると吹出温度を変更する制御を解除する。このため、冷房運転時に、天井吹きモードが実行されると、所定時間毎に、一定時間だけ、設定温度に基づいて決定されている吹出温度が変更されることになる。これに代えて、実行部61が、天井吹きモードを実行する際に、吹出温度を段階的に変更するようにしてもよい。吹出温度が段階的に変更されることで、天井面Cの様々な位置で、天井面Cに沿った気流を天井面Cから剥離させることができるため、部屋内の空気が攪拌されやすくなり、部屋内に温度ムラが生じるおそれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、天井面に沿った気流が天井面から剥がれる位置を調整することで、部屋全体の快適性を図ることができるため、天井面に沿った気流を形成可能な空気調和機への適用が有効である。
【符号の説明】
【0089】
10 空気調和機
11 冷媒回路
21 圧縮機
22 電動膨張弁(膨張機構)
24 室外熱交換器(凝縮器)
33 室内熱交換器(蒸発器)
34 室内ファン(ファン)
35 吹出口
42 コアンダ羽根
42a 外側面(面)
61 実行部(制御部)
91 人検知センサ
92 床温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2003−232531号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10