(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態の押込量調整装置について
図1から
図5を参照して説明する。
本実施形態の研磨装置は、工具本体である研磨ディスク部10aを有する公知の加工工具である研磨工具10と、研磨工具10に取り付けられて加工対象面20に対して加工として研磨加工をする際に使用される押込量調整装置3とを備えている。
【0032】
本実施形態では、工具として公知の研磨工具10を使用している。本実施形態で使用する研磨工具10としては、
図1から
図3に示すような3M社製のダブルアクションサンダーを用いている。そして、工具である研磨工具10は、工具本体であり加工対象面20に当接可能とされ研磨ディスクを有する研磨ディスク部10aと、研磨ディスク部10aに空気を供給するエア源10cと、エア源10cから研磨ディスク部10aへの空気の供給量を調整する電磁バルブ10dと、研磨工具10の上部に配置されるレバー10fと、レバー10fと連動し電磁バルブ10dの開閉量を調整するスイッチ部10eと、を有している。研磨工具10は、上部からレバー10fが押しこまれることでスイッチ部10eによって電磁バルブ10dが開放され、工具本体である研磨ディスク部10aのエアモータにエア源10cから空気が供給されて研磨ディスクが回転し、加工対象面20を研磨している。そして、工具本体である研磨ディスク部10aは、レバー10fによってスイッチ部10eが押されることで電磁バルブ10dの開閉量が調整され、エアモータへの空気の供給量が調整されることで研磨ディスクの回転数を調整可能とされている。
【0033】
加工対象面20は、塗装が施された加工対象物の塗装面であり、下地層20bの上から下地材と色の異なる塗料が吹き付けられることで形成される塗膜20aの表面である。本実施形態では、再塗装するために下地層20bを残して塗膜20aのみを研磨し剥離する場合に研磨工具10を用いることを想定している。
【0034】
第一実施形態の押込量調整装置3は、
図1から
図4に示すように、研磨工具10に取り付けられる把持部4と、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aに作用する力を調整する調整機構5と、加工対象面20に対する工具本体である研磨ディスク部10aの位置を規制するロック部6と、加工対象面20の状態を検出する加工状態検出部7と、加工状態検出部7からの信号に基づいて調整機構5や研磨工具10を制御する制御部8とを有している。
【0035】
把持部4は、工具本体である研磨ディスク部10aを加工対象面20に押し付ける際に作業者によって研磨工具10と共に把持される。そして、把持部4は、研磨工具10の上部に嵌め込まれる把持部カバー41と、研磨工具10の外周に沿って配置される外周把持部材42と、把持部カバー41と外周把持部材42とを接続する複数の把持部接続部材43とを有しており、研磨工具10に対して一体に固定されることで工具本体である研磨ディスク部10aに接続されている。
把持部カバー41は、研磨工具10の上部とレバー10fとの間に嵌まり込むように固定されており、作業者が研磨工具10を使用するために研磨工具10の上部を掴んでレバー10fを押す際には把持部カバー41も共に把持されるよう配置されている。
外周把持部材42は、薄板状をなす金属板によって形成され、一端を切り欠かれたリング状をなして研磨工具10の外周に沿って配置されている。
把持部接続部材43は、複数の薄板状をなす金属板によって形成され、それぞれ溶接等によって一端が外周把持部材42に、他端が把持部カバー41の上部に対して直接固定されている。そして、把持部接続部材43が、研磨工具10の周方向に等間隔に離間して配置されていることで、外周把持部材42を把持部カバー41に対して固定している。
【0036】
調整機構5は、加工対象面20に対して押し付けるように把持部4から研磨工具10の研磨ディスク部10aへ作用する力を研磨ディスク部10aへ直接作用しないよう緩和し、代わりに加工対象面20に対して一定の力Fを作用させている。調整機構5は、把持部4と工具本体である研磨ディスク部10aとの間に介在するように接続して配置されている。そして、調整機構5は、把持部4と一体に固定され工具本体である研磨ディスク部10aを支持する支持部51と、圧縮バネ52bを介して研磨ディスク部10aに対して弾性力によって力を作用させる弾性負荷部52と、弾性負荷部52を支持するダンパ部53と、ダンパ部53と研磨工具10とを接続する調整機構保持部54とを有している。
【0037】
支持部51は、把持部4の周りに離間して複数配置されており、第一実施形態では周方向にわたって等間隔に離間して三カ所配置されている。(なお、図示都合上、
図4においては、支持部51は
図1から
図3に記載に支持部51のうち、二つのみが記載されている。)支持部51は、初期状態では工具本体である研磨ディスク部10aよりも上に位置している。研磨ディスク部10aが加工対象面20に当接後、把持部4が上部から押圧されると、支持部51が加工対象面20に当接して接地荷重を支持することとなる。そして、支持部51は、回転することで加工対象面20に当接したまま移動可能とする球面ローラ部51aと、球面ローラ部51aと一体に接続される支持部ロッド51bと、支持部ロッド51bと把持部4の外周把持部材42とを固定する支持部接続部材51cとを有している。
球面ローラ部51aは、回転可能に配置された球状部材を有しており、加工対象面20に当接したまま球状部材が回転することで支持部51を移動可能としている。
支持部ロッド51bは、球面ローラ部51aから鉛直方向上方に円柱状をなして延びる棒部材であり、球面ローラ部51aと固定されていない端部には、ねじが切られている。
支持部接続部材51cは、矩形板状の金属板で、タップを有する孔部が一方の端部に形成されており、孔部にねじが切られた支持部ロッド51bが挿通されて固定されている。そして、支持部接続部材51cは、孔部の形成されていない側の他方の端部で外周把持部材42に固定されている。
【0038】
弾性負荷部52は、圧縮バネ52bを介して外周把持部材42を支持しつつ、把持部4の位置が固定されることで、工具本体である研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して弾性力によって一定の力Fを作用させている。弾性負荷部52は、
図5に示すように、支持部接続部材51cを介して外周把持部材42に固定される圧縮バネ軸52aと、圧縮バネ軸52aを軸に配置される圧縮バネ52bとを有している。
圧縮バネ軸52aは、ダンパ部53のダンパピストン部53aと一端が一体に形成された軸状部材であり、ダンパピストン部53aと一体となっていない他端は、外周面にネジが切られており支持部接続部材51cの外周把持部材42が固定されていない側の孔部に接続されている。
圧縮バネ52bは、公知の圧縮コイルばねを用いることができ、圧縮バネ軸52aを内部に挿通させてダンパシリンダ部53bと支持部51の支持部接続部材51cとで圧縮されるように配置され、圧縮バネ52bが反発する弾性力によってダンパシリンダ部53bと支持部51の支持部接続部材51cとに力を作用させている。
なお、弾性負荷部52に用いられる圧縮バネ52bは、弾性力を発揮することができれば良く、例えば、機械的なバネやゴム材であっても良く、ソレノイドを用いた電磁バネであっても良い。
【0039】
ダンパ部53は、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20を加工する速度に応じて内部の作動流体W
MRの量を調整しながら弾性負荷部52と一体になって把持部4と接続されており、弾性負荷部52にかかる力を減衰している。そして、ダンパ部53は、
図5に示すように、弾性負荷部52を支持するダンパピストン部53aと、ダンパピストン部53aを内部に摺動可能に収容するダンパシリンダ部53bと、ダンパシリンダ部53b内の鉛直方向下方に充填される作動流体W
MRと、ダンパシリンダ部53b内の作動流体W
MRの量を調整するリザーバタンク53cと、ダンパシリンダ部53bとリザーバタンク53cとを接続する作動流体供給管53dとを有している。
【0040】
ダンパピストン部53aは、円板状をなして弾性負荷部52の圧縮バネ軸52aと一体に形成されており、ダンパシリンダ部53b内に摺動可能に収容されている。
ダンパシリンダ部53bは、円筒状をなしており、内部に作動流体W
MRが充填され、ダンパピストン部53aを摺動可能に収容している。
作動流体W
MRは、一定の粘度を有する流体であれば良く、第一実施形態では公知のMR流体が使用される。MR流体は、周囲の磁場の強弱によって粘度が変化する流体である。
リザーバタンク53cは、円筒状をなして内部に作動流体W
MRが充填されており、外気圧と内部の作動流体W
MRに差圧によってフローティングピストン53eを移動させることで、内部の作動流体W
MRの量を調整している。なお、フローティングピストン53eの代わりにダイアフラムを用いてリザーバタンク53c内の流体の容積を調節しても良い。
作動流体供給管53dは、リザーバタンク53cの底部とダンパシリンダ部53bの底部とを挿通する管材であり、内部に作動流体W
MRが流通可能とされていることで、リザーバタンク53cとダンパシリンダ部53bと間で作動流体W
MRを流通させている。
【0041】
調整機構保持部54は、ダンパ部53のダンパシリンダ部53bを保持し、研磨工具10に接続されている。調整機構保持部54と支持部接続部材51cとによって、調整機構5は研磨工具10に固定されている。
なお、ダンパ部53は調整機構5として弾性負荷部52と一体に設けられていることに限定されるものではなく、例えば、調整機構5とは別に弾性負荷部52と並列に設けられていても良い。
【0042】
ロック部6は、
図5に示すように、ダンパシリンダ部53bとリザーバタンク53cとの間に配置された作動流体供給管53dの外周に配置される電磁コイルであり、電流が供給されることで磁力を発生させている。ロック部6は、磁力が発生することで作動流体供給管53dの周囲に強い磁場を生じさせ、作動流体W
MRであるMR流体を固化させることで、ダンパ部53内の作動流体W
MRを固定する。そして、調整機構5のダンパ部53が固定されることで、加工対象面20に対する工具本体である研磨ディスク部10aの位置を固定して規制している。
なお、作動流体W
MRはMR流体に限定されるものではなく、例えば、電界を印加することによって粘度が変化するER流体や、通常の作動油を用いても良い。作動油を用いる場合には、電磁コイルの代わりに電磁弁や形の異なるオリフィスを設けることでロック部6を形成することができる。
【0043】
加工状態検出部7は、支持部51の支持部ロッド51bに取り付けられる色差センサーであり、加工対象面20の色差を測定し、信号を出力することで加工対象面20の状態を検出している。加工状態検出部7は、球面ローラ部51aよりも加工対象面20から離れるように配置されて支持部51の支持部ロッド51bに固定されており、球面ローラ部51aが加工対象面20に当接しても加工状態検出部7である色差センサーが加工対象面20から一定の距離だけ離間するよう配置されている。
【0044】
制御部8は、
図4に示すように、加工状態検出部7からの信号を基に加工対象面20からの状態を判定する運転条件判定部81と、運転条件判定部81の判定結果に基づいて工具本体である研磨ディスク部10aを停止させる工具制御部82と、運転条件判定部81の判定結果に基づいてロック部6を作動させるロック制御部83とを有している。
【0045】
運転条件判定部81は、加工状態検出部7である色差センサーでの検出結果が、予め定めた閾値を超えている場合に、塗膜20aの剥離が終了したものとして信号を出力する。即ち、第一実施形態の場合、加工対象面20の塗膜20aの色と下地層20bとの色との色差から、予め閾値となる色差の値を決定しておき、塗膜20aが剥離され下地層20bが露出したか否かを判定している。そして、運転条件判定部81からの信号は、工具制御部82とロック制御部83との両方に同時に出力される。
【0046】
工具制御部82は、判定結果によって運転条件判定部81から信号が入力されると、研磨工具10の電磁バルブ10dに閉塞するよう信号を出力する。そして、電磁バルブ10dが閉塞されることで、研磨ディスク部10aのエアモータへの空気の供給が止まり工具本体である研磨ディスク部10aの研磨ディスクの回転が停止する。
【0047】
ロック制御部83は、判定結果によって運転条件判定部81から信号が入力されると、ロック部6である電磁コイルに電流を供給するよう信号を出力する。そして、ロック部6に電流が供給されると、調整機構5によって工具本体である研磨ディスク部10aの位置が、その場で固定される。
【0048】
次に、上記第一実施形態の押込量調整装置3の作用について説明する。
上記のような第一実施形態の押込量調整装置3では、研磨工具10の研磨ディスク部10aの研磨ディスクを回転させ研磨工具10の上部に固定された把持部4を加工対象面20に向かって押圧すると、工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象面20に当接する。この状態では研磨ディスク部10aから加工対象面20には力が作用しておらず研磨加工ができないため、さらに、把持部4を加工対象面20に向かって押圧すると、支持部51が加工対象面20に当接する。
その後、支持部51を加工対象面20に当接させたまま、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20が研磨され、塗膜20aが剥離される。加工対象面20の研磨加工は、加工状態検出部7である色差センサーによって加工対象面20の色差を検出しながら実施する。下地層20bと塗膜20aとは色が異なっているため、研磨加工が進み、加工対象面20の塗膜20aが一定の深さまで剥離され下地層20bが露出すると、加工状態検出部7である色差センサーにて検出している色差の値が、予め定めた閾値を超える。
【0049】
制御部8の運転条件判定部81にて、加工状態検出部7で検出した色差の値が閾値を超えていると判定すると、工具制御部82とロック制御部83とそれぞれ信号が出力される。
工具制御部82では、信号が入力されると、研磨工具10の電磁バルブ10dに閉塞させるよう信号を出力する。そして、電磁バルブ10dを閉塞することで、研磨ディスク部10aのエアモータへの空気の供給を停止させ、工具本体である研磨ディスク部10aの研磨ディスクの回転を停止させる。
ロック制御部83では、信号が入力されると、ロック部6に電流が供給されロック部6の電磁コイルに磁力が生じる。ロック部6で磁力が生じることで、ダンパ部53の作動流体W
MRが固化され、ロック部6は加工対象面20に対する工具本体である研磨ディスク部10aの位置を固定して規制する。
その結果、制御部8である工具制御部82及びロック制御部83によって、工具本体である研磨ディスク部10aは位置を固定されて停止し研磨加工が終了する。
【0050】
このような押込量調整装置3によれば、研磨工具10の研磨ディスク部10aで研磨加工を開始する際には、支持部51は工具本体である研磨ディスク部10aよりも加工対象面20から離間している。そして、研磨するために研磨ディスク部10aを加工対象面20に当接させて、研磨工具10の上部から加工対象面20に向かって力をかけて押しつけられると、把持部4を介して調整機構5である支持部51も加工対象面20に向かって押しつけられ、支持部51の球面ローラ部51aが加工対象面20に当接する。この時、研磨工具10を加工対象面20に向かって押しつけることで、調整機構5の弾性負荷部52圧縮バネ52bの弾性力によって、調整機構5から工具本体である研磨ディスク部10aへ押し付けるような力が作用している。
【0051】
その後、支持部51の球面ローラ部51aが加工対象面20に当接した状態で、さらに研磨工具10の上部から加工対象面20に向かって力をかけても、研磨ディスク部10aは加工対象面20に支持部51によって支持されているため加工対象面20に当接したまま沈み込まない。そのため、加工対象面20に向かって研磨工具10の上部からさらに押しけようとする力である把持部4から研磨ディスク部10aへ作用する力は、支持部51を介して加工対象面20へと伝達される。つまり、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aへ作用する力が大きくなっても緩和され、工具本体である研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用させる力は、調整機構5である弾性負荷部52の圧縮バネ52bの弾性力によって、工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象面20に対して作用させている一定の力Fから変化しない。したがって、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aに作用する力の大きさに関わらず、研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用させる力を一定に保つことができる。そのため、加工対象面20に対して一定の力Fで工具本体である研磨ディスク部10aを押し付けたまま研磨加工を行うことができる。これにより、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20を安定して研磨加工をすることが可能となる。
【0052】
また、調整機構5として複数の支持部51及び弾性負荷部52を用いているため、研磨する際に研磨工具10を加工対象面20に押しつけることで、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aに作用する力は加工対象面20に当接している支持部51から加工対象面20に伝達される。そして、代わりに弾性負荷部52の圧縮バネ52bの弾性力によって生じる工具本体である研磨ディスク部10aを加工対象面20に押しつける一定の力Fが加工対象面20に作用することとなる。そのため、把持部4から研磨ディスク部10aに作用する力を緩和して、弾性負荷部52を介して研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して一定の力Fを作用させることができる。したがって、調整機構5の構造自体も把持部4に接続された支持部51と、圧縮バネ52bと用いた弾性負荷部52で構成できるため、簡単な構造で調整機構5を形成できる。これにより、調整機構5を容易に形成することが可能となる。
【0053】
さらに、弾性負荷部52をダンパ部53と一体に設けることで、ショックアブソーバーのように作用させ衝撃を吸収させることができる。即ち、加工対象面20に凹凸がある場合などに研磨工具10に対して研磨加工中に衝撃が生じ、調整機構5である弾性負荷部52で衝撃を吸収した際に弾性負荷部52に生じる圧縮バネ52bの周期振動をダンパ部53で減衰させることで、振動を抑えることができる。そのため、工具本体である研磨ディスク部10aの加工対象面20に対する振動も抑えることができ、研磨加工時のびびり等の不具合を防止できる。これにより、加工対象面20をより安定して研磨加工をすることが可能となる。
【0054】
また、加工状態検出部7である色差センサーによって加工対象面20の状態を検出することで、研磨等の加工の進み具合や加工対象面20に異常を生じさせていないか等を確認しながら工具本体である研磨ディスク部10aで研磨加工することが容易にできる。
【0055】
そして、加工状態検出部7が色差センサーによって色差を検出して、加工対象面20の状態を検出していることで、本実施形態のように色の異なる複数の層を有する加工対象面20である塗装面の塗膜20aのみを剥離させる場合に、下地層20bまで研磨が進んでいることを容易に検出することができる。そのため、塗膜20aのみを剥離し下地層20bを残すよう研磨加工を実施したい場合に、下地層20bが露出したことを塗膜20aとの色差から直ちに検出することができ、下地層20bまで研磨して剥離させてしまうことを防止できる。これにより、色の異なる複数の層からのなる加工対象面20に対して加工を必要とする部分のみを安定して研磨加工することができる。
【0056】
また、制御部8の運転条件判定部81で加工状態検出部7の色差センサーによって検出した値が予め定めた閾値を超えたことを判定することで、工具本体である研磨ディスク部10aによる加工対象面20への研磨加工が十分であることを検出できる。
【0057】
そして、運転条件判定部81によって加工状態検出部7で検出した色差が予め定めた閾値を超えたと判定し、工具制御部82から信号が出力されることで、電磁バルブ10dを閉止し工具本体である研磨ディスク部10aの研磨ディスクの回転を停止させることができる。これにより、加工対象面20を過剰に研磨加工してしまうことを確実に防止でき、加工対象面20への加工品質を向上させることが可能となる。
【0058】
また同様に、運転条件判定部81によって加工状態検出部7で検出した色差が予め定めた閾値を超えたと判定し、ロック制御部83に信号が出力されることで、ロック部6に電磁コイルに電流を供給し磁力を生じさせてダンパ部53の作動流体W
MRであるMR流体を固化させダンパ部53を固定することができる。そのため、加工対象面20に対する工具本体である研磨ディスク部10aの位置を固定して規制することができる。これにより、加工対象面20を過剰に研磨加工してしまうことをより確実に防止でき、加工対象面20への加工品質を向上させることが可能となる。
【0059】
さらに、ロック部6を作動流体W
MRにMR流体を用いて、電磁コイルによって作動流体W
MRを固化させる構造とすることで、電磁弁等を用いた場合よりもロック部6の小型化や軽量化を図ることができる。
【0060】
また、加工状態検出部7である色差センサーが、球面ローラ部51aよりも一定の距離だけ加工対象面20から離間していることで、加工対象面20を研磨加工中も加工対象面20からの距離が一定とされるため、加工対象面20の状態を安定して検出することが可能となる。
【0061】
さらに、押込量調整装置3を備える研磨工具10を用いることで、作業者によらず安定して加工対象面20を研磨することができる。
【0062】
次に、
図6(a)、(b)を参照して第二実施形態の押込量調整装置3について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第二実施形態の押込量調整装置3は、加工対象面20に対して支持部51が研磨工具10を傾斜させて支持する点について第一実施形態と相違する。
【0063】
即ち、第二実施形態における押込量調整装置3は、
図6(a)に示すように、工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象に当接した際に、研磨ディスク部10aを加工対象面20に対して傾斜させた状態で支持する段差支持部510を有している。
段差支持部510は、研磨工具10の周方向にわたって配置される位置によって、加工対象面20からの高さが異なっている。具体的には、段差支持部510は、研磨工具10の周方向にわたって第一支持部511、第二支持部、第三支持部513と等間隔に離間して順に有している。そして、段差支持部510は、第二支持部を一端が切り欠かれたリング状をなす外周把持部材42の中央に配置することで、第二支持部を境に第一支持部511と第三支持部513とを、周方向に対称に配置している。
なお、図示都合上、
図4と同様に、
図6(a)、(b)においては、段差支持部510は第一支持部511及び第三支持部513のみが記載されている。
【0064】
第一支持部511は、第一実施形態の支持部51と同様に、回転することで加工対象面20に当接したまま移動可能とする第一球面ローラ部と、第一球面ローラ部と一体に接続される第一支持部ロッドと、第一支持部ロッドと把持部4の外周把持部材42とを固定する第一支持部接続部材とを有している。
第二支持部は、第一支持部511と同じ形状をなす第二球面ローラ部及び第二支持部接続部材と、第一支持部ロッドよりも短い第二支持部ロッドと、を有している。
第三支持部513は、第一支持部511と同じ形状をなす第三球面ローラ部及び第三支持部接続部材と、第二支持部ロッドよりもさらに短い第三支持部ロッドと、を有している。
【0065】
したがって、段差支持部510も、第一実施形態における支持部51と同様に、初期状態では工具本体である研磨ディスク部10aよりも加工対象面20から離間しているが、加工対象面20からの離間距離は、第一支持部511の第一球面ローラ部の加工対象面20からの離間距離である第一距離δ1は、第二支持部の第二球面ローラ部の加工対象面20からの離間距離である第二距離よりも小さい。そして、第三支持部513の第三球面ローラ部の加工対象面20からの離間距離である第三距離δ3は、第二支持部の第二距離より大きい。即ち、研磨工具10の周方向に配置された第一支持部511から第三支持部513に向かうにしたがって加工対象面20からの離間距離が徐々に大きくなるよう配置されている。
【0066】
次に、上記第二実施形態の押込量調整装置3の作用について説明する。
上記のような第二実施形態の押込量調整装置3では、
図6(a)に示すように、段差支持部510の第一支持部511から第三支持部513に向かうにしたがって加工対象面20からの離間距離が大きくなっている。そのため、研磨工具10を加工対象面20に押し付けると、
図6(b)に示すように、工具本体である研磨ディスク部10aは加工対象面20に対して傾斜して当接した状態で段差支持部510によって支持される。そして、段差支持部510によって支持された状態で加工対象面20を研磨することで、研磨工具10の工具本体である研磨ディスク部10aが傾斜して当接したまま加工対象面20を研磨する。
【0067】
このような押込量調整装置3によれば、段差支持部510によって工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象面20に対して当接する際には研磨ディスク部10aを加工対象面20に対して傾斜して支持することができる。そのため、工具本体である研磨ディスク部10aは、加工対象面20に当接すると弾性負荷部52の圧縮バネ52bの弾性力によって生じる一定の力Fだけでなく、一定のモーメントMを加工対象面20に作用させることができる。したがって、一定のモーメントMを加工対象面20に作用させながら研磨工具10で研磨することができ、作業者が意図的に研磨工具10の研磨ディスク部10aを加工対象面20に片当てするような研磨加工を模擬することができる。これにより、曲率の大きな加工対象面20であっても安定して研磨加工をすることができる。
【0068】
次に、
図7を参照して第三実施形態の押込量調整装置3について説明する。
第三実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第三実施形態の押込量調整装置3は、調整機構5の構成について第一実施形態と相違する。
【0069】
即ち、第三実施形態における押込量調整装置3は、
図7に示すように、第一実施形態の調整機構5の代わりに、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aへ作用する力を受けて内部の圧力を一定に保つことで、加工対象面20に対して一定の力Fを作用させる第二調整機構50を有している。さらに、第三実施形態における押込量調整装置3は、研磨工具10を支持する補助支持部90と、加工状態検出部7からの信号に基づいて第二調整機構50や研磨工具10を制御する第二制御部80と、第一実施形態と同じ把持部4及び加工状態検出部7とを有している。
【0070】
第二調整機構50は、把持部4から研磨工具10の研磨ディスク部10aへ加工対象面20に対して押し付けるように作用する力を調整し、加工対象面20に対して一定の力Fを作用させている。第二調整機構50は、内部に作動流体が充填されピストン部50bを摺動可能に収容するシリンダ部50aと、工具本体である研磨ディスク部10aと一体に接続されているピストン部50bと、を有している。さらに、第二調整機構50は、シリンダ部50a内に供給する作動流体の供給圧力を一定に調整する圧力調整弁50cと、圧力調整弁50cで供給圧力が一定に調整された作動流体をシリンダ部50a内のピストン部50bを介して鉛直方向上方及び鉛直方向下方のどちらに供給するかを切り替える方向切換弁50dとを有している。
【0071】
シリンダ部50aは、円筒状をなしており、内部がピストン部50bによって鉛直方向上方と鉛直方向下方に分けられている。シリンダ部50aは、後述する方向切換弁50dによって鉛直方向上方及び鉛直方向下方の作動流体が充填や除去されることで、作動流体の充填具合に合わせてピストン部50bを鉛直方向に摺動可能に収容している。そして、シリンダ部50aは、ピストン部50bが接続されていない側である鉛直方向上部で把持部4と一体に接続されている。
ピストン部50bは、工具本体である研磨ディスク部10aと一体に接続されており、円盤状をなしてシリンダ部50a内に摺動可能に収容されている。そして、ピストン部50bは、シリンダ部50a内の鉛直方向上方又は鉛直方向下方に供給される作動流体によって摺動させられる。
【0072】
圧力調整弁50cは、工具本体である研磨ディスク部10aを加工対象面20に対してどの程度の荷重をかけて研磨加工を行うかに検討して予め定めておき、それに基づいて定めた圧力でエア源10cからシリンダ部50a内へ作動流体が供給されるよう供給圧力を一定の大きさに調整する。
方向切換弁50dは、圧力調整弁50cで一定に調整された供給圧力で供給される作動流体を、シリンダ部50a内のピストン部50bを挟んで鉛直方向上方又は鉛直方向下方のいずれかに供給し、他方から作動流体を排出する。そして、方向切換弁50dは、作動流体の供給と排出とを切り替えている。
作動流体は、流体であれば良く、本実施形態では研磨工具10を駆動させる際に使用する空気が使用される。なお、公知の作動油や第一実施形態のダンパ部53で使用されたMR流体を作動流体としても良い。
【0073】
補助支持部90は、第一実施形態の支持部51と同様の構成をしているが、支持部ロッド51bよりも長い補助支持部ロッドを有している点で相違している。即ち、補助支持部90は、第一実施形態の支持部51と異なり、初期状態では工具本体である研磨ディスク部10aよりも加工対象面20に近づいており、研磨ディスクが加工対象面20に当接する前から球面ローラ部が加工対象面20に当接している。
【0074】
第二制御部80は、第一実施形態と同様の構成要素である運転条件判定部81と、工具制御部82とを有しており、さらに、運転条件判定部81の判定結果に基づいて第二調整機構50の方向切換弁50dに対して信号を出力するピストン制御部84を有している。
ピストン制御部84は、運転条件判定部81での判定結果によって信号が入力されると、シリンダ部50a内の鉛直方向上方の作動流体を排出しつつ、鉛直方向下方に対して作動流体を供給させるよう方向切換弁50dに信号を出力する。
【0075】
次に、上記第三実施形態の押込量調整装置3の作用について説明する。
上記のような第三実施形態の押込量調整装置3では、研磨工具10の研磨ディスク部10aの研磨ディスクを回転させることで駆動させ、研磨工具10の上部に固定された把持部4を加工対象面20に向かって押圧すると、補助支持部90が加工対象面20に当接する。研磨工具10の研磨ディスク部10aが駆動する前では、第二調整機構50のシリンダ部50aには、ピストン部50bの鉛直方向下方に作動流体が充填されており、ピストン部50bは鉛直方向上方に押し上げられている。そして、研磨工具10が駆動すると、方向切換弁50dが作動し、方向切換弁50dによってシリンダ部50a内の鉛直方向下方の作動流体が排出されつつ、鉛直方向上方に作動流体が充填されることで、シリンダ部50a内をピストン部50bが加工対象面20に向かって下がっていく。ピストン部50bの動きに伴い、ピストン部50bに接続された工具本体である研磨ディスク部10aも加工対象面20に向かって下がり、加工対象面20に当接する。そして、研磨ディスク部10aが加工対象面20に当接した状態で、第二調整機構50は方向切換弁50dによってシリンダ部50a内の作動流体の圧力を一定にする。
【0076】
その後、第一実施形態と同様に、支持部51を加工対象面20に当接させたまま、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20が研磨され、塗膜20aが剥離される。加工対象面20の研磨加工は、加工状態検出部7である色差センサーによって加工対象面20の色差を検出しながら実施する。下地層20bと塗膜20aとは色が異なっているため、研磨が進み、加工対象面20の塗膜20aが一定の深さまで剥離され下地層20bが露出すると、加工状態検出部7である色差センサーにて検出している色差の値が、予め定めた閾値を超える。
【0077】
第二制御部80の運転条件判定部81にて、加工状態検出部7で検出した色差の値が閾値を超えていると判定すると、工具制御部82とピストン制御部84とにそれぞれ信号が出力される。
工具制御部82では、第一実施形態と同様の制御が行われ、工具本体である研磨ディスク部10aを停止させる。
ピストン制御部84では、信号が入力されると、内部の圧力が一定に保たれていたシリンダ部50a内の鉛直方向上方の作動流体を排出しつつ、鉛直方向下方に対して作動流体を供給させるよう方向切換弁50dに信号を出力する。シリンダ部50a内の鉛直方向下方に作動流体が充填されるとピストン部50bが押し上げられる。そして、ピストン部50bの動きに合わせて、ピストン部50bに接続された工具本体である研磨ディスク部10aも鉛直方向上方に上がり、加工対象面20から離間する。
その結果、第二制御部80である工具制御部82及びピストン制御部84によって、工具本体である研磨ディスク部10aは加工対象面20から離間して停止し研磨加工が終了する。
【0078】
このような押込量調整装置3によれば、加工対象面20に向かって研磨工具10の上部からさらに押しつけようとする力である把持部4から研磨ディスク部10aへ作用する力を大きくしても、第二調整機構50であるシリンダ部50aの内部の作動流体の圧力が一定に保たれるように方向切換弁50dで調整されピストン部50bが摺動して移動することで、加工対象面20には力が伝わらずに緩和される。即ち、工具本体である研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用させる力は、第二調整機構50であるシリンダ部50aの内部の作動流体が一定の圧力に保たれることによって、ピストン部50bを介して工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象面20に対して作用させている一定の力Fから変化しない。したがって、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aへ作用する力の大きさに関わらず、研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用させる力を一定に保つことができる。そのため、加工対象面20に対して一定の力Fで工具本体である研磨ディスク部10aを押し付けたまま研磨加工を行うことができる。これにより、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20を安定して研磨加工をすることが可能となる。
【0079】
また、補助支持部90によって研磨工具10を加工対象面20に対して支持することで、工具本体である研磨ディスク部10aが加工対象面20に対して安定した姿勢を維持することができる。そして、第二調整機構50であるピストン部50bとシリンダ部50aとが加工対象面20に対して鉛直方向に一定の姿勢を容易に維持し易くなり、ピストン部50bとシリンダ部50aとの摺動を効率よく行うことができる。そのため、把持部4から工具本体である研磨ディスク部10aへ作用する力の大きさが変化しても、ピストン部50bとシリンダ部50aが直ぐに圧力を一定に保つように摺動することができ、研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用させる力を安定して一定に保つことができる。これにより、工具本体である研磨ディスク部10aによって加工対象面20をよい安定して研磨加工をすることが可能となる。
【0080】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、調整機構5のダンパ部53が、ダンパピストン部53aに対してダンパシリンダ部53bの鉛直方向下方側に作動流体W
MRが充填されていることに限られるものではなく、第一実施形態のダンパ部53の変形例として
図8が挙げられる。
即ち、
図8に示すように、変形例として、調整機構5のダンパ部53が変形ダンパ部55であっても良い。
変形ダンパ部55は、ダンパ部53と同様に、弾性負荷部52を支持する変形ダンパピストン部55aと、変形ダンパピストン部55aを内部に摺動可能に収容する変形ダンパシリンダ部55bと、変形ダンパシリンダ部55b内の作動流体W
MRの量を調整する変形リザーバタンク55cと、変形フローティングピストン55eとを有している。そして、変形ダンパ部55は、作動流体W
MRが変形ダンパシリンダ部55bの鉛直方向上方側に充填されており、変形ダンパシリンダ部55bの鉛直方向上方の側面に接続されている変形作動流体供給管55dを有している点がダンパ部53と異なっている。さらに、変形ダンパピストン部55aと変形ダンパシリンダ部55bとの間から作動流体W
MRが流出しないよう封止するシール部55fとを有している。
即ち、変形作動流体供給管55dは、変形リザーバタンク55cの底部と変形ダンパシリンダ部55bの鉛直方向上方の側面とを挿通する管材であり、内部に作動流体W
MRが流通可能とされていることで、変形リザーバタンク55cとダンパシリンダ部53bと間で作動流体W
MRを流通させている。
この構成としても、ダンパ部53と同様作用効果を得ることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0082】
なお、把持部4は、加工に際して工具本体である研磨ディスク部10aから加工対象面20に対して作用する力では変形しない剛性を有する材料によって形成されていれば良く、金属材料や樹脂材料等の種類は問わない。
また、加工状態検出部7としては、本実施形態の色差センサーに限定されるものでない。例えば、小型カメラを支持部51に取り付けることによって、加工対象面20の状態を目視で確認することで検出しても良い。さらに、研磨加工によって塗膜20aから剥離された粉塵を吸引し、この粉塵を用いて加工対象面20の状態を算出することで検出しても良い。また、研磨工具10とは別に離れた場所にカメラを設置しておき、加工対象面20を広範囲にわたって確認することで加工対象面20の状態を検出しても良い。即ち、加工対象面20の状態を検出する方法としては、色の変化に限定されるものではなく、例えば、光学分析や表面温度等によって検出しても良い。
さらに、加工状態検出部7で加工対象面20の状態を検出した値が、予め定めた閾値を超えているかを判定する運転条件判定部81は、本実施形態のように単純に値の大きさを判定する方法に限定されるものではない。例えば、加工状態検出部7にカメラを用いた場合は、画像処理を行い研磨工具10の周辺のみを追尾し、研磨工具10から一定の距離の範囲内の加工対象面20の状態の変化を検出する方法や、画像処理により研磨工具10の走査方向を検出し研磨工具10の研磨した後の範囲の加工対象面20の状態の検出する方法を用いても良い。さらに、研磨工具10の周辺の加工対象面20の状態の変化を検出すると同時に、作業者に研磨加工の足りない部分を知らせるようにしても良い。