特許第6188081号(P6188081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6188081-流動化砂及びそれを用いた地盤改良工法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188081
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】流動化砂及びそれを用いた地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20170821BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E02D3/08
   E02D3/10 104
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-62040(P2014-62040)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183466(P2015-183466A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 修二
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−013885(JP,A)
【文献】 特開2010−121438(JP,A)
【文献】 特開2011−256574(JP,A)
【文献】 特開2014−015756(JP,A)
【文献】 特開2011−106158(JP,A)
【文献】 特開2008−285810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0123937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00−3/115
E02D 3/12
E02D 5/22−5/80
E02D 7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良に用いられる砂材料に流動化剤を加えて圧送ポンプにより配管を通して移送可能に処理された流動化砂において、
吸水性樹脂のうち、吸水力が高く増粘性及び凝集性を有さないか極低い高吸水性樹脂を含有すると共に、前記高吸水性樹脂の添加量を増減することにより流動化状態を保っている流動化維持時間を調整したことを特徴とする流動化砂。
【請求項2】
前記砂材料に、前記流動化剤と、前記高吸水性樹脂と、含水比調整用水と、遅効性塑性化剤とを混入していることを特徴とする請求項1に記載の流動化砂。
【請求項3】
袋に流動化砂を充填した3時間後のブリーディング率が0.5%以下であることを特徴とする請求項2に記載の流動化砂。
【請求項4】
圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良工法において、請求項2又は3に記載の流動化砂を、圧送ポンプによって配管を通して地盤に貫入したり引き抜かれる中空管に圧送し、該中空管の先端側より地盤中に圧入すると共に、地盤中で塑性化させることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項5】
土被圧が小さい箇所において、前記流動化砂に、該流動化砂に含有されている水を強制排水可能にする強制排水剤を注入して、前記流動化砂を急速に塑性化することにより地盤中に圧入した前記流動化砂の砂材料が地表側へ上昇し排出されるのを防ぐことを特徴とする請求項4に記載の地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良に用いられる砂材料に流動化剤を混ぜてポンプ圧送可能な状態とした流動化砂、及びそれを用いた圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良のうち、例えば、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)は、地盤中に締固めた砂杭を造成することで地盤の密度を増加させるもので、液状化対策工法として一般的であるが、大型施工機械を用いるため施工スペースの確保上の制約から適用できない場合が多い。代用工法としては、小型施工機を用いる薬液注入系やセメントモルタルを圧入する工法の適用が増加しているが、コストが高くなることに加え、環境負荷を軽減できる砂材料の使用を可能にする工法が望まれていた。このような背景から、本出願人らは、特許文献1〜3に開示されるごとく、砂材料をポンプで圧送可能な流動化状態にし、地盤への圧入を行うことでコスト削減と環境負荷の低減を可能にした圧入式砂杭造成工法を開発し既に実用化している。この工法は、砂圧入式静的締固め工法(SAVE−SP工法(登録商標):本発明の圧入式砂杭造成工法に相当)と称され、小型施工機の使用により狭隘地での施工、更に斜め施工にも対応可能なため既設構造物直下の改良にも対応できる。
【0003】
特許文献1はその圧入式砂杭造成工法の基本を開示している。すなわち、この工法では、地盤改良に用いる砂材料に流動化剤と遅効性塑性化剤とを含有する砂杭材料流動化物(以下、流動化砂と言う)を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させる。この細部は、中空管24を地盤中に設計深度まで貫入した後、該中空管24を通して遅効性塑性化剤を含有する流動化砂を地表から地中に圧入し、地中に該流動化砂を残致し、この上に次のステップ分の流動化砂を圧入し、これを繰り返して行うことにより、所定長さの砂杭25を造成する。装置としては、図4に示されるごとく、遅効性塑性化剤を含有する流動化砂製造プラント10と、砂杭造成用の中空管23と、製造プラント10で製造された流動化砂を中空管23に配管34を通して送る圧送ポンプ4とを備えている。符号1は流動化砂供給手段、2は砂材料供給手段、3は流動化剤供給手段、5は遅効性塑性化剤供給装置である。
【0004】
特許文献2はその流動化砂の作製プラントを開示している。この作製プラントでは、砂材料に流動化剤を混合して流動化砂を作製するプラントであって、流動化砂は砂材料に水、流動化剤、遅効性塑性剤の順に混合する。好ましくは流動化砂は砂材料の重量を計測し、その重量に基づき水、流動化剤、遅効性塑性剤を自動計算して混合する。
【0005】
図5は、以上の流動化砂を用いた施工時の材料の状態変化を示した模式図である。同(a)は圧入前の流動化砂を示す。流動化砂は、中空管から地盤中に圧入されるまでは流動化剤(例えば、アニオン系高分子材料)が砂の粒子同士の間隙水の粘性を高め、粒子同士の摩擦をなくし砂と水との分離を抑制して、高い流動性を維持している。同(b)は圧入中の流動化砂を示す。圧入中は、流動化砂が脱水し密な状態に締め固められる。流動化剤は網状で残る。同(c)は塑性化終了状態を示す。この状態では、遅効性塑性化剤が電気的に流動化剤を中和して流動化剤の網状構造を消失しており、粒子同士の摩擦を完全回復している。なお、特許文献3は、以上の流動化砂の使用例として特許文献1や2に記載以外の例として、地下空洞部に流動化砂を充填して地盤を安定化する砂充填工法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5188894号公報
【特許文献2】特許第5189951号公報
【特許文献3】特開2012−12878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記流動化砂を用いた圧入式砂杭造成工法の適用に際しては、事前調査により対象地盤の特性が把握されて、それに応じて砂材料の選定と配合仕様が決定される。実工法では、一般的に、直径100〜200mm程度の中空管が用いられ、流動化砂の地中圧入により直径500〜700mm程度の砂杭を造成することが多い。ここで、砂材料としては、流動性を高めた状態でポンプ圧送するため、配管内で閉塞しない保水性の良さと、圧入時に脱水する排水性の良さとを併せ持つ性質が必要である。また、流動化砂の圧入性は、原地盤の排水性にも影響され、例えば、細粒分含有率Fc=10〜20%程度の砂質地盤に比べ、砂礫地盤のように細粒分が少なく、透水性の良好な地盤では同じ粒径の砂材料を用いても流動化砂の地中圧入時に発生する圧力が大きくなる傾向となる。
【0008】
図6はこれまでの実施工で使用された砂材料、つまり適用可能とされた砂の粒度分布を示している。適用可能な砂材料は、基本的に、平均粒径D50 =0.5mm程度、細粒分含有率Fc=5%以下程度の砂である。粒度組成の粗い砂は、流動化砂として用いるとポンプ圧送中や地盤注入直後に排水してしまうため材料を地中に充分に圧送できなくなる。このような問題は、流動化剤や遅効性塑性化剤の配合比を変えてもさほど改善されないため、原地盤が中砂から粗砂、更に粗砂から礫になるほど地中圧入時の圧力が高くなったり流動化砂の脱水が進んで圧入量が目標値に達しなくなる。また、適用可能な砂材料は、選択範囲が制約されているためSCP工法に使用可能な砂材料に比べ高価になることも多く、圧入式砂杭造成工法を更に適用拡大する上での制約要因となっている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、圧入式砂杭造成工法(SAVE−SP工法)や砂充填工法の適用に際し、地盤の土質性状からの制約を減らし、砂材料として適用が難しい粗い砂であっても地中に充分な量を圧送できるようにして同工法の更なる適用機会を拡大することにある。他の目的は、以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良に用いられる砂材料に流動化剤を加えて圧送ポンプにより配管を通して移送可能に処理された流動化砂において、吸水性樹脂のうち、吸水力が高く増粘性及び凝集性を有さないか極低い高吸水性樹脂を前記流動化剤と共に含有すると共に、前記高吸水性樹脂の添加量を増減することにより流動化状態を保っている流動化維持時間を調整したことを特徴としている。
【0011】
以上の本発明は次のように具体化されることがより好ましい。すなわち、請求項2の発明は、前記砂材料に、前記流動化剤、前記高吸水性樹脂、含水比調整用水、遅効性塑性化剤を混入している構成である。請求項3の発明は、請求項2において、袋に流動化砂を充填した3時間後のブリーディング率が0.5%以下である構成である。このブリーディング率の値は、表1と2より、高吸水性樹脂が砂材料(乾燥砂)1,000g当たり0.5g以上含む構成である。
【0012】
上記目的を達成するため請求項4の発明は、圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良工法において、請求項2又は3に記載の流動化砂を、圧送ポンプによって配管を通して地盤に貫入したり引き抜かれる中空管に圧送し、該中空管の先端側より地盤中に圧入すると共に、地盤中で塑性化させることを特徴としている。

【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4において、土被圧が小さい箇所(例えば、深度が地表側に近づくような箇所)において、前記流動化砂に、該流動化砂に含有されている水を強制排水可能にする強制排水剤を注入して、前記流動化砂を急速に塑性化することにより地盤中に圧入した前記流動化砂の砂材料が地表側へ上昇し排出されるのを防ぐ構成である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1と4の発明は、従来の流動化砂に比べ吸水力が高く増粘性及び凝集性を有さないか極低い高吸水性樹脂を流動化剤と共に含有し、該高吸水性樹脂の添加量を増減して流動化状態を保っている流動化維持時間を調整可能となるため保水性を向上して、圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良工法に用いる場合に以下の利点が得られる。
(ア)本発明の流動化砂は、これまで適用不可能とされていた粒度組成が粗い砂でも、圧送過程に加えて地中への圧入時に受ける負荷によっても排水され難くなり、その結果、従来不可能とされた粗い砂材料でも使用でき、使用可能な砂材料の範囲を拡大できる。
(イ)同時に、原地盤の土質性状が中砂から粗砂、更に粗砂から礫になる場合でも、地中への圧入後に直ちに脱水する量が抑制され、保水性の維持ひいては流動状態も維持され必要な圧入量を注入可能となり、その結果、地盤の土質性状からの制約を緩和できる。
【0015】
請求項2の発明は流動化砂の理想的な組成を特定したものである。この流動化砂の作用を図5を使って説明する。まず、遅効性塑性化剤は、(a)から(c)状態になるまで流動化剤を電気的に中和すべく作用し、流動化砂に保水されている水を少しづつではあるが分離している。高吸水性樹脂は、流動化砂の保水力を補強して、流動化砂が圧入前及び圧入中に受ける負荷によって生じる粒子間を結合している流動化剤の縮み度合を抑制することで、流動化剤が遅効性塑性化剤に触れ難くしている。その結果、この構成では、流動化砂が(a)から(b)状態となる時間、つまり排水を遅らせることで流動化状態を保っている流動化維持時間を従来に比べ長くなるよう調整可能となる。
【0016】
請求項3の発明は、流動化砂が高吸水性樹脂を含有する否かでブリーディング率、つまり袋に流動化砂を充填した後、3時間経過したときの分離水の全流動化砂に対する割合が大幅に小さくなるという物性試験結果(表1と2を参照)に基づく特定であり、本発明の流動化砂の製造時等における評価指標として重要となる。
【0017】
請求項5の発明では、流動化砂(砂材料)の圧入量が不足したり逆に過剰となることなく設計通り達成可能となる。すなわち、請求項1〜3の流動化砂を請求項4や特許文献1から3に開示の圧入式砂杭造成や砂充填等の改良工法に用いた場合、土被圧が小さい箇所(例えば、深度が地表側に近づくような箇所、透水係数が小さい地盤)において、中空管の下端から地中に圧入された流動化砂の一部が中空管回りに形成される隙間を通して上昇し地表側に排出され易くなる。本発明は、その対策として、図2に示したごとく地中に圧入される流動化砂に強制排水剤を注入し、流動化砂を急速に塑性化することにより、圧入された流動化砂から排水・分離された水分だけを地表側へ上昇し排出させるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の圧入式砂杭造成工法や砂充填工法を実施する場合の装置構成を示した説明用の模式図である。
図2図1のA部を拡大した要部拡大図である。
図3】(a)は流動化砂配合(表1と2)に対する物性試験結果のうち、ブリーディング試験結果を示すグラフ、(b)は高吸水性樹脂配合(表3と4)に対する脱水試験結果のうち、脱水時間と脱水量の関係をグラフである。
図4】特許文献1に開示されている砂杭造成装置を示す説明図である。
図5】(a)〜(c)は施工時における流動化砂の状態変化を示す説明図である。
図6】圧入式砂杭造成工法で使用された砂材料の粒度分布を併記した実積図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した形態例を図面を参照して説明する。この説明では、圧入式砂杭造成工法や砂充填工法に用いられる施工機、流動化砂を作製する製造プラント、圧入式砂杭造成工法を明らかにした後、実施例1として高吸水性樹脂を含有した流動化砂の物性試験、実施例2として高吸水性樹脂配合による脱水試験について述べる。
【0020】
(施工機)請求項4や5の工法に用いられる施工機は、大別すると、中空管をリーダに沿って垂直に貫入したり引き抜くクローラタイプ(傾斜角度が垂直つまり0度)と、中空管を補助クレーンに吊り下げた状態で貫入したり引き抜くボーリングマシンタイプ(傾斜角度が約0−20度)と、中空管を任意の角度に貫入したり引き抜くロータリーパーカッションドリルタイプ(傾斜角度が約0−60度)とがあり、対象地盤や施工深度などに応じて選択される。
【0021】
図1は以上の3タイプのうち小型クローラタイプの施工機1と、流動化砂製造プラント2とを模式的に示している。この施工機1は、中空管3を上下動する昇降機構4と、昇降機構4に保持されて中空管3を回動する回転機構5と、中空管の上端3aに設けられたスイベル15と、製造プラント2で作られた流動化砂を圧送するポンプPと、ポンプPの出口とスイベル15を接続している管路16と、管路16の途中に設けられて圧送されている流動化砂の圧力を検出する圧力計6を備えている。
【0022】
ここで、昇降機構4は、走行式ベースマシン10により移動可能に起立された柱状リーダー12の一側に沿ってラック・ピニオン機構等を介して上下動される。回転機構5は、昇降機構4でリーダー12に沿って昇降されると共に、中空管3をモーター及び減速ギア機構等を介し正転・逆転する。ベースマシン10は、運転室11の前方にリーダー12の下端側を位置決め保持し、運転室11の後方側に共に図示を省いた油圧装置や電動機等を搭載している。運転室11には各種の施工用操作部や制御部が配設されている。リーダー12は、延縮ロッド13等により支持されており、下側に付設されて中空管3の振れを規制する振止具18、上側に付設されて管路16の上側を支えるガイド具17などを有している。管路16の上端は、スイベル15を介し中空管3の上端3aに接続されている。
【0023】
ポンプPは、特に高い吸込み力、機密性、空気の吸込みを起こさず、流動化砂性状の変化を低く抑えられるものとして、圧送構造が油圧ピストンを利用したタイプが選択されている。ポンプ駆動は、運転室11に配置された制御部を介して自動制御される。圧力計6は、ポンプPで圧送されている流動化砂の圧力を検出して中空管3の下端開口より地盤側領域(中空管引き抜きにより密度が低くなった箇所及びその周囲)に圧入されるときの流動物の圧入圧力を測定可能にする。また、圧力計6は、施工時において、流動化砂の圧送時の圧力を検出し、その検出信号を運転室11の制御部に送信している。制御部では、その検出信号に基づいて流動物の圧入圧力として、設定圧入圧力になったときにポンプPに駆動停止用の信号を送信するようになっている。なお、圧力計6としては、圧力と共に流量を検出する圧力流量計を使用すると、後述する1ピッチの引抜きに応じた流動化砂の充填量も直ちに知ることができる。
【0024】
(流動化砂製造プラント)この製造プラント2は、混合室21及びアジテータ室22等を有した製造装置20を中心として、混合室21に対し、砂材料7を投入するバックホウ等の砂供給手段23、流動化剤を投入する流動化剤供給手段24、含水量調整用の水を供給する水供給手段25、塑性化剤を投入する塑性化剤供給手段26、高吸水性樹脂を投入する吸水性樹脂供給手段27が設けられている。また、この例では、製造プラント2の一環として、強制排水剤を中空管3から圧入された流動化砂に注入する強制排水剤供給手段28が設けられている。この強制排水剤供給手段28は、図面上、製造プラント2と離れた箇所に示したが、製造プラント2の近くに設けることも可能である。また、以上の製造プラント2は、施工域に接近した箇所に便宜上図示されているが、製造される流動化砂や強制排水剤はそれぞれ専用のポンプ手段Pで圧送されるため施工域から100mm以上離れた箇所に設けることも可能である。
【0025】
流動化砂を用いた圧入式砂杭造成工法の適用に際しては、事前調査により対象地盤の特性に応じて砂材料の選定と配合仕様が決定される。製造プラント2では、通常、目的の流動化砂が混合室21で1バッチ量(砂杭9)毎に作製される。砂供給手段23で供給される砂材料7、流動化剤供給手段24で供給される流動化剤、水供給手段で供給される水、塑性化剤供給手段26で供給される塑性化剤、吸水性樹脂供給手段27で供給される高吸水性樹脂については、以下に各選択基準や作用などを明らかにする。
【0026】
(1)、砂材料は、一旦流動性を高めた状態でポンプ圧送するため、配管内で閉塞しない保水性の良さと、圧入時に脱水する排水性の良さとを併せ持つ性質が好ましい。但し、本発明では、図6に示されたこれまでのSAVE−SP工法で適用可能とされた粒度組成より粗い砂や礫、要はSCP工法とほぼ同程度のものも用いることができる。
【0027】
(2)、流動化剤は、砂の粒子間の間隙水の粘性を高め、飽和状態で砂と水の分離を抑制してポンプ圧送性を向上させる添加剤である。好ましくは、粘性を高め砂粒子の沈降分離を抑制するアニオン系高分子凝集剤であり、他にノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤などでもよい。これらは、高分子の親水基と高分子の網の内部に水分を保持する性能に優れ、品質の長期安定性も高い。なお、アニオン系高分子凝集剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体が挙げられる。
【0028】
流動化剤の配合割合は、砂材料に対し、外割配合で0.01〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%である。この配合割合は、少な過ぎると、砂材料が流動化せず、配管内で分離したり目詰まりしたりして圧送できなくなると共に、多過ぎても流動化効果は変わらず、却ってコストを上昇させることになる。ここで、ポンプPで圧送可能となる流動性とは、日本工業規格で規定する「ベーンせん断試験」における安定せん断強度0.3kg未満のものを言う。
【0029】
(3)、遅効性塑性化剤は、時間経過により砂と水を分離させて元の砂に戻す効果を持つ添加剤である。例えば、流動化剤がアニオン系高分子剤の場合には分子量10〜10のカチオン系高分子剤を、流動化剤がカチオン系高分子剤の場合には分子量10〜10のアニオン系高分子剤を利用する。これは、電気的に流動化剤を中和させて水と分離させて元の砂に戻す。すなわち、砂の粒子間の間隙水は、粘性のない通常の水に戻り、砂粒子の摩擦は回復する。
【0030】
遅効性塑性化剤の使用量は、流動化砂を塑性化できる配合量であり、製造される流動化砂中の砂材料に対して、外割配合で0.001〜2重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%である。この添加量は、少な過ぎると、流動化物が塑性化せず、設計通りの砂杭が造成できなくなり、添加が多過ぎると塑性化が早く起こりポンプ圧送に支障をきたすと同時に、コスト的に高くなる。
【0031】
(4)、水は、含水比調整用であり、流動化剤等に影響する多様な成分を含む工業用水や海水は避けて、中性の水道水を用いることが好ましい。水の使用量は、通常、製造される流動化砂の含水比が30%から40%となるよう算出される。
【0032】
(5)、高吸水性樹脂は、親水性の直鎖状あるいは分子状高分子の架橋体であり、流動化砂がこの樹脂の含有量を増減することにより流動化砂の流動化状態を保っている造成時の流動化維持時間を長くなるよう調整可能にするもので、吸水力が高く増粘性及び凝集性並びに分散性を有さないか極低いものが用いられる。また、高吸水性樹脂は、一般的に吸水力(量)が水中で自重の10倍以上のものとされているが、流動化砂の流動化維持時間を効果的に調整する上で、吸水力(量)が水中で自重の100倍以上に高いものを用いることが好ましい。これは、吸水力が自重の100倍より小さいと使用量が多くなり取扱性が悪くなったりコスト的に高くなるからである。
【0033】
ところで、吸水性樹脂のうち、合成ポリマー系の高吸水性樹脂には、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリエチレンオキシド系などが知られているが、用途に応じて、幹となる親水樹脂鎖の種類を変えることで水に対する吸収能力を変化させることができ、架橋密度を変えることで水を吸って膨潤したゲルの強度を変えることができる。そのため、例えば、ポリアクリル酸塩系の吸水性ポリマーと言っても、分散性を有したり吸水力が自重の10倍より小さいものもある。本発明では、そのような吸水力の小さい吸水性ポリマーは除外され、吸水力が水中で自重の10倍以上、好ましくは100倍以上の高吸水性樹脂、例えばポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂などを用いる。市販品としては、例えば、実施例で用いた株式会社ハイモ製のポリアクリル酸架橋タイプの『ハイモサブ300』が挙げられる。これは、白色粉状であり、吸水力(量)が水中で約300〜600倍であった。高吸水性樹脂の使用量は、製造される流動化砂中の砂材料に対して、外割配合で0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。これは、図3(a),(b)から推察されるごとく流動化維持時間を長く調整する上で、本試験(比較例及び実施例)に用いた砂材料では0.01重量%以下だと効果に欠け、逆に0.25重量%以上だと効果が過多になったりコスト的に高くなる。
【0034】
なお、ポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂の一例として、ポリアクリル酸ナトリウム系高吸水性樹脂(SAP)は、アクリル酸を部分中和させ、架橋性モノマーと共重合させることで合成される。合成されたポリアクリル酸ナトリウム系SAPは、以下のような構成の単位分子配列として示されており、架橋した3次元網目構造を持ち、ところどころにあるカルボキシル基が水を含むとゲル中にナトリウムイオンを解離する。高吸水性(自重の100〜1000倍)は、この樹脂の持つ親和性、浸透圧、架橋密度の3のつ力のバランスにあるとされている。
【0035】
【化1】
【0036】
(6)、強制排水剤は、中空管から圧入された流動化砂の一部が中空管回りに形成される隙間を上昇し地表側に排出されるのを防ぐため、圧入される流動化砂に注入して、流動化砂を急速に塑性化することにより、流動化砂から排水された水分だけを(砂材料の上昇を抑制)地表側へ上昇し排出させるようにする。この作用は、高吸水性樹脂としてポリアクリル酸ナトリウム系高吸水性樹脂が水を吸収すると、ナトリウムイオンを電離するが、強制排水剤として例えば塩化ナトリウム水溶液を外からかけると、分子内外のナトリウムイオン濃度は外では濃く、内では薄くなるため、浸透圧により水が内から外へでていく現象を応用する。なお、強制排水剤としては、塩化ナトリウム以外に、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどでも差し支えない。また、強制排水剤は、図2に例示されるごとく地盤中に圧入された直後の流動化砂7’に地表側より注液管8を通して水溶液として注入する方法が好ましい。但し、強制排水剤は、注液管8を用いず、製造装置側の混合室21やアジテータ室22に1バッチ後半の適当な時点で粉末又は水溶液として適量注入する方法も有効である。
【0037】
(流動化砂の製法要領)製造プラント2では、高吸水性樹脂の吸水性能を良好に発揮させるため、例えば、砂材料7を攪拌しながら、高吸水性樹脂と含水比調整用水とを加えた後、流動化剤と遅効性塑性化剤とを加えて流動化砂を作製する。これは、経験則より砂材料に、含水比調整用水と、流動化剤と、遅効性塑性化とを混合した流動化砂を先に作製した後、高吸水性樹脂を添加すると、高吸水性樹脂の吸水性能が充分に発揮できなかったり吸水に多くの時間がかる。また、高吸水性樹脂は、砂材料に含水比調整用水を加えた後に添加すると、含水比調整用水を吸水し、ゲル化してしまうため攪拌に時間を要する。これらを避けるためである。
【0038】
流動化砂の配合仕様は、以上の説明を踏まえて、配合試験により砂材料の選定、流動化剤、塑性化剤、含水比調整水、高吸水性樹脂の配合量が決められる。その目安は、砂材料では粒度特性として予め設定された最大粒径や細粒分含有率、流動化砂ではフロー試験、テクスチャー試験、ブリーディング試験を行って最適な配合比や配合量が決定される。高吸水性樹脂は後述する実施例1と2を参照のこと。なお、高吸水性樹脂を含有する流動化砂は、流動化剤の配合量をこれまでよりも少なくできることが分かっている。
【0039】
(圧入式砂杭造成工法)この工法は、図1の施工機1を使用した例で特徴点を挙げると次のようになる。まず、操作手順は、中空管3を昇降機構4を介して地中の設計深さまで貫入した後、所定ピッチだけ引き抜く引抜工程と、該引抜工程にて中空管3の下方にできる密度の低い領域及びその周囲に流動化砂を圧入する供給工程とを繰り返し行うことにより所定長さの改良砂杭9を造成する。施工管理は、運転室11の制御部において、中空管3の最大貫入深さ(下端深度)、1ピッチ分の引抜長さL、総ピッチ数((下端深度−上端深度)/L)、設定圧入(吐出)圧力などの値がプログラムに入力される。また、製造された流動化砂がアジテータ部22に用意される。
【0040】
施工に際しては、施工機1が施工箇所に移動されて位置決めされた後、中空管3が昇降機構4及び回転機構5を介して回転されながら地盤に貫入操作される。この貫入は、中空管3の下端が設計深さ(下端深度)に達したか否かを不図示の深度計からの信号により判断され、設計深さに達した時点で昇降機構4などを介して貫入が停止される。
【0041】
次に、制御部は、昇降機構4を介して1ピッチ(例えば、20cm)分だけ中空管3の引抜きを開始するよう制御し、同時に、ポンプPが稼動されて流動化砂が圧送されて引抜きに伴って中空管3の下方に形成される領域及びその周囲に圧入するよう制御する。すなわち、制御部は、引抜きが1ピッチ分に達したか否かを判断し、引抜きが1ピッチに達したと判断されると、昇降機構4が停止ないしはアイドリング状態となるよう制御する。また、制御部は、流動化砂の圧入状態として、上記した領域に吐出される流動化砂の圧入圧力が設定値に達したか否かを圧力計6から送られている検出信号に基づいて判断し、圧入圧力が設定圧力になったと判断すると、ポンプPが停止ないしは不図示の開閉バルブを閉状態に切り換える。
【0042】
また、土被圧が小さい地表に比較的近い図1の符号aで示した領域において、中空管3から圧入される流動化砂に、強制排水剤供給手段28から強制排水剤(例えば塩化ナトリウム水溶液)が配管29及び注液管8を介して注入される。このため、この制御部では、中空管3が符号aの範囲に入って流動化砂を圧入する時及び流動化砂を符号aの範囲に圧入終了した時を知らせる警報音等を発生する。作業者は、その警報音等に基づいて中液管8を引き抜き操作したり、強制排水剤供給手段28から配管29及び注液管8を介して強制排水剤を圧入中又は圧入された流動化砂に向けて注入する。なお、この例は、注液管8が手動で領域aの下側まで貫入されて、中空管3の引抜きに伴って手動で段階的に引抜かれるが、中空管3を機械的に貫入したり引抜くようにしてもよい。
【0043】
以上の強制排水剤供給手段28は、例えば、土被圧が小さい箇所として、地盤の地表側に近い箇所において、中空管3の下端から地中に圧入された流動化砂の一部が中空管回りに形成される隙間を通して上昇し地表側に排出されることを防ぐ対策として、図2のごとく圧入中又は圧入された流動化砂に強制排水剤を注入可能にする。これにより、この構成では、圧入された流動化砂が急速に塑性化されるため、流動化砂から分離された水分だけが地表側へ上昇し排出されることになる。
【0044】
また、以上の制御部では、総ピッチ数ないしは全ピッチ引抜完了したか否かが判断され、総ピッチ数に達するまで引抜きと流動化砂の圧入が繰り返される。また、総ピッチ数に達すると、1本の砂杭9が終了される。その後、地盤改良装置1は次の施工箇所に移動されて位置決めされた後、再び以上の操作が行われることになる。
されて位置決めされた後、再び以上の操作が行われることになる。
【0045】
(実施例1)この実施例は、高吸水性樹脂(SAP)を含有した流動化砂について物性試験を行ったときのものである。比較例1及び実施例1−4は、表1に示す組成と配合量で同じ混合方法で作製された流動化砂である。比較例1は高吸水性樹脂を含まない従来の流動化砂、実施例1−4はSAP(株式会社ハイモ製の『ハイモサブ300』)を含む本発明の流動化砂である。使用した砂材料、含水比調整用水、流動化剤、遅効性塑性化剤は比較例及び実施例共に同じものである。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表2の物性試験中、テーブルフロー試験は、セメントの物性試験方法(JIS R5201−1997)に準拠して行った。この試験結果から、テーブルフロー値は、例えば、比較例1と実施例1の対比よりSAPを乾燥砂1,000g当たり0.5g含有するだけでも平均で17mm小さくなること、また、実施例1−4よりSAPの含有量に比例して小さくなることが分かる。
【0049】
テクスチャー試験では、所定容器に流動化砂(試料)を充填し、市販のテクスチャー試験装置(株式会社山電製の卓上式物性測定器)にセットした後、シリンダーを一定速度で上下させ、試料上面から20mmの貫入及び引抜を行う。貫入応力(単位はPa)は、貫入時の最大荷重haを応力に換算した値である。付着力(J/m)は、引抜時の引抜抵抗エネルギーに相当する値である。重さ(g)は、容器に充填された試料の当初の重さである。この試験結果からも、貫入応力は、例えば、比較例1と実施例1の対比よりSAPを乾燥砂1,000g当たり0.5g含有するだけでも平均で122Pa大きくなることと、実施例1−4よりSAPの含有量に比例して急勾配で大きくなることが分かる。この点は付着力も多少ばらつきがあるものの同様な傾向となることが分かる。
【0050】
ブリーディング試験は、土木学会規準「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」セメントの物性試験方法(JSCE F522−2007)に準拠して行った。用いたポリエチレン袋は、流動化砂(試料)を入れた状態でその径が50mm、長さが500mm以上のものである。この袋の中に試料を約20cmの高さまで充填する。充填後、3時間経過したときの全試料に対する分離水の割合をブリーディング率(%)とし、流動化砂の分離性を評価した。この試験結果では、図3(a)からも明らなごとく、ブリーディング値は比較例1と実施例1の対比よりSAPを乾燥砂1,000g当たり0.5g含有するだけでも比較例1の3.2%から0.5%に急速に下がることが分かる。
【0051】
以上の試験結果からは、図5を参照すると、流動化砂がSAPを含有していると、流動化砂の保水力が補強されることにより、流動化砂が圧入前及び圧入中に受ける負荷によって生じる粒子間を結合している流動化剤の縮み度合を抑制し、流動化剤が遅効性塑性化剤に触れ難くしている。それに伴って、SAPを含有している流動化砂では、特に(a)から(b)状態となる時間、つまり排水を遅らせることで流動化状態を保っている流動化維持時間をSAPを含まない流動化砂に比べ長くなるよう調整できることが分かる。また、以上の試験結果のうち、特に、ブリーディング率の値は、流動化砂がSAPを含有する否かで、かつ、SAPを乾燥砂1,000g当たり0.5g含有するだけでも分離水の全流動化砂に対する割合が大幅に小さくなるため、本発明の流動化砂の製造時等における評価指標として重要となる。
【0052】
(実施例2)この実施例は、SAPを含有した流動化砂として、SAPの配合量が脱水量や脱水率等にどの様に影響するかを調べたときのものである。比較例2及び実施例5−8は、表3に示す組成と配合量で同じ混合方法で作製された流動化砂である。比較例2はSAPを含まない従来の流動化砂、実施例5−8はSAP『ハイモサブ300』を含む本発明の流動化砂である。使用した砂材料、含水比調整用水、流動化剤、遅効性塑性化剤は比較例及び実施例共に同じものである。
【0053】
この脱水試験では、流動化砂(試料)を収納容器に充填した後、試料の上から0.3MPで加圧し、表4の経過時間毎に試料からの脱水量を測定した値である。表4の脱水率と含水比はその脱水量の値に基づいて算出したものである。この試験結果において、脱水量としては、SAPを含有した実施例5−8ではSAPを含まない流動化砂である比較例2に比べて加圧後0.1分後だと何れも少なくなること(なお、加圧後0.03分と0.06分の値は測定誤差も混在していると思われる)、図3(b)から明らなごとくSAPの添加量に比例して脱水量も下がることが分かる。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
なお、以上の形態例や実施例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。また、『圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良』については、特許文献1〜3に記載されている工法、及びその内容から容易に考えられる工法を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
1…施工機
2…流動化砂製造プラント
3…中空管
4…昇降機構
5…回転手機構
6…圧力計
7…砂材料
8…注液管
9…砂杭
P…ポンプ
15…スイベル
16…管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6