特許第6188100号(P6188100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6188100
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】食品製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20170821BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20170821BHJP
【FI】
   A23L7/10 Z
   A23L29/212
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-172707(P2016-172707)
(22)【出願日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516267474
【氏名又は名称】三徳屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大聖寺谷 勇
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−064521(JP,A)
【文献】 特開平06−197713(JP,A)
【文献】 特開2012−135268(JP,A)
【文献】 特開2004−065258(JP,A)
【文献】 食品成分表2014,女子栄養大学出版部,2014年,初版,242−243、232−233頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00− 5/30
A23L 7/00− 9/20
A23L 23/00−25/10
A23L 29/00−29/10
A23L 29/212−29/225
A23L 35/00
WPIDS/WPIX/CAplus/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST758
0(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品であって、
前記米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、
前記米様粒体は、72.5質量%以上80質量%以下の水分含量であり、かつ、前記流動体の水分含量よりも0.5質量%超低い水分含量であり、さらに、前記食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下であり、
加熱殺菌済みでありかつ販売に供されるものである食品製品。
【請求項2】
前記米様粒体の水分含量は、73質量%以上である請求項1記載の食品製品。
【請求項3】
前記米様粒体は、前記食品製品を湯煎100℃で3分間加熱した前後の水分含量の変化が2.0質量%以下である請求項1又は2記載の食品製品。
【請求項4】
前記流動体は、75質量%以上の水分含量又は0.5質量%以上の油含量を有する請求項1から3いずれか記載の食品製品。
【請求項5】
前記油は、植物性油である請求項1から4いずれか記載の食品製品。
【請求項6】
前記容器は、密封容器である請求項1から5いずれか記載の食品製品。
【請求項7】
米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品を作成する方法であって、
デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含む米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容され、加熱殺菌された収容体を、0℃以上50℃以下の雰囲気中で96時間以上保管して販売に供される食品製品とする工程を有し、
前記食品製品における前記米様粒体は、72.5質量%以上80質量%以下の水分含量であり、かつ、前記流動体の水分含量よりも0.5質量%超低い水分含量であり、さらに、前記食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米様粒体と、油及び水を含む流動体とが混合状態で容器に収容された食品製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め調理を済ませ、再加熱することにより食しやすくなるようにした、米飯類のレトルト食品や、カレールー等の惣菜類のレトルト食品が市販されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−109986号公報
【特許文献2】特開2015−163077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、米飯類と惣菜類とを一緒に混合充填した、例えば雑炊等のレトルト食品においては、米が経時的に吸水して粥状となり、米の食感がなくなるのを避け難かった。そのため、米飯類と惣菜類とを一緒に混合した食品製品においては、米の食感(米粒感等)を有し、嗜好性に優れた製品の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、米に近い食感を与えられる食品製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含む米様粒体と、油及び水を含む流動体とを混合して容器に収容し、所定時間保管することにより、米様粒体が米に近い食感を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
(1) 本発明は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品であって、前記米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、前記米様粒体は、71質量%以上80質量%以下の水分含量であり、かつ、前記食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下である食品製品である。
【0008】
(2) また、本発明は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品であって、前記米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、前記米様粒体は、前記流動体の水分含量よりも0.5質量%超低い水分含量であり、かつ、前記食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下である食品製品である。
【0009】
(3) また、本発明は、前記米様粒体の水分含量は、73質量%以上である(1)又は(2)記載の食品製品である。
【0010】
(4) また、本発明は、前記米様粒体は、前記食品製品を湯煎100℃で3分間加熱した前後の水分含量の変化が2.0質量%以下である(1)から(3)いずれか記載の食品製品である。
【0011】
(5) また、本発明は、前記油は、融点25℃以の油を、前記油に対して50質量%以上の量で含む(1)から(4)いずれか記載の食品製品である。
【0012】
(6) また、本発明は、前記容器は、密封容器である(1)から(5)いずれか記載の食品製品である。
【0013】
(7) また、本発明は、販売に供されるものである(1)から(6)いずれか記載の食品製品である。
【0014】
(8) また、本発明は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品を作成する方法であって、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含む米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容され、加熱殺菌された収容体を、0℃以上50℃以下の雰囲気中で72時間以上保管して食品製品とする工程を有する方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、米に近い食感を与えられる食品製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0017】
<食品製品>
本発明の食品製品は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品である。
【0018】
[米様粒体]
以下、本発明の米様粒体について説明する。本発明の第1の米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、その水分含量は、71質量%以上80質量%以下、好ましくは72.5質量%以上79.5質量%以下、より好ましくは75質量%以上79.0質量%以下である。米様粒体は、上記範囲の水分含量を有することにより米に近い食感を与えることができる。米様粒体の水分含量が過小であると、芯がやや硬く感じられ、タピオカ様の食感や、ヌルヌルした舌触りを与えやすい。米様粒体の水分含量が過大であると、歯ごたえが感じられなくなり、米に近い食感を与えられなくなる。なお、本明細書において、米に近い食感とは、炊飯米が与える、歯触り、噛みごこち等の食感のことをいう。
【0019】
また、本発明の第2の米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、その水分含量は、流動体の水分含量よりも0.5質量%超低く、好ましくは0.7質量%超低く、より好ましくは1.0質量%超低い。流動体の水分が第2の米様粒体に適量移行することにより、第2の米量流体は、米に近い食感を与えることができる。しかし、流動体の水分は、米様粒体に完全に拡散するわけではなく、米様粒体の水分含量の上昇は、流動体の水分含量よりも0.5質量%超低い水分含量で飽和する。流動体の水分が米様粒体に拡散し続けると、米様粒体の歯ごたえが感じられなくなり、米に近い食感を与えられなくなる。
【0020】
また、本発明の第1及び第2の米様粒体(以下、単に「米様粒体」ということがある)は、食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。米様粒体は、米に比べ水分吸収が経時的に飽和しやすく、経時的に膨潤しにくい。よって、米は、流動体との混合によって経時的に粥状化してしまい食感が失われるのに対し、米様粒体は、流動体との混合によっても、所定時間経過した後の食感の経時的な変化が小さく、米に近い食感を維持できる。また、米様粒体は、経時的な水分含量の変化が小さいことから、品質管理が容易であり、長期保存が可能であることから、備蓄食品としても好適である。
【0021】
また、本発明の米様粒体は、食品製品を湯煎100℃で3分間加熱した前後の水分含量の変化が2.0質量%以下である。米様粒体は、加熱されても、水分含量の変化が小さく、食感の変化が小さい。よって、このような米様粒体を含む本発明の食品製品は、加熱の有無にかかわらず、米に近い食感を与えることができる。このため、熱源を必要としない非常用食品としても好適である。
【0022】
上述した、米様粒体の水分含量、流動体からの水分の移行量、及び水分含量の変化量は、米様粒体の外側の水分を拭き取った後、常圧加熱乾燥法により測定する。なお、本発明において、常圧加熱乾燥法は、温度135℃で時間2時間の条件下で、加熱乾燥して乾燥前後の重量差を水分含量とするものである。
【0023】
上述した、米様粒体の水分含量、流動体からの水分の移行量、及び水分含量の変化量は、米様粒体、油、水、温度等の製造条件を適切に組み合わせることで、適切な値を実現できる。例えば、米様粒体は、流動体と混合されることにより、その表面の一部又は全部が油によって被覆される。よって、米様粒体への流動体に含まれる水分の移行量は、油の種類や加熱条件等によって、適宜制御することができる。
【0024】
なお、上述した米様粒体の形状は、特に限定されないが、米に近い食感を有することから、また消費者に満足感を与える点から、米粒に近い形状の粒体、又は米粒の径に近い粒体であることが好ましい。
【0025】
以下、米様粒体の各成分について詳細に説明する。
(デンプン)
本発明において用いるデンプンは、特に限定するものではなく、従来より食用に供されている天然澱粉、化工澱粉を含め、各種のものいずれもが利用できる。例えば、米澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、大麦澱粉、ワキシーコーンスターチ、甘薯澱粉、馬鈴薯澱粉等の天然澱粉類、これらの澱粉を含有する穀粉、ハイアミロース澱粉、架橋澱粉、置換澱粉、シンボイリング澱粉、アセテート変性澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、α化澱粉、これらの化工処理を組み合わせた化工澱粉等の化工澱粉を単独で、又は適宜組み合わせて使用できる。特に、架橋結合澱粉、置換澱粉、シンボイリング澱粉、アセテート変性澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉等の、澱粉の有するカルボキシル基をエステル化やエーテル化等により化学処理して得られる、化工澱粉が好適であり、化工澱粉の内でも特にブラベンダー粘度(Brender Viscosity、ブラベンダー社製粘度計による)のピーク粘度が600〜800Buのものが最も好ましい。
【0026】
デンプンの使用量は、加水して得られる米様粒体の所望の外観、形状、性状等により適宜選択できるが、通常、水を加えた際の粒体中の澱粉含量、すなわち、添加水を含めた米様粒体の製造原料の全量に対するデンプンの使用量が1〜30重量%程度、好ましくは10〜20重量%程度となるようにする。
【0027】
(デキストリン)
デキストリンとしては、水に可溶なものならいずれでもよく、通常、デキストロース当量(DE)が10〜40程度、好ましくは20〜30程度のものが好適である。デキストリンは、用いるデンプンの重量に対して20倍以下、好ましくは約0.16〜10倍程度の範囲で使用される。デキストリンは、米様粒体の製造の際に、粒より溶出させて多孔質構造を形成させ、水を加えた際に、より天然の米飯に近似させるために用いるもので、必ずしも使用の必要はなく、使用せずとも、米様粒体の品質には影響はない。
【0028】
(ゲル化剤)
本発明において用いるゲル化剤は、特に限定するものではなく、食品分野で使用されているものならいずれでも使用できる。これには、2価の陽イオンによりゲル化するゲル化剤、及び加熱によりゲル化するゲル化剤の両者が包含され、これらはそのいずれかを単独で又は両者を組み合わせて使用することができる。2価の陽イオンによりゲル化するゲル化剤としては、例えば、ペクチン酸、ペクチン酸アルカリ塩、カラゲーナン、アルギン酸、アルギン酸アルカリ金属塩、低メトキシペクチン酸、及びそのアルカリ塩類等が挙げられる。また、加熱によりゲル化するゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、卵白、コンニャク精粉、グルコマンナン(コンニャクマンナン)、カゼイン、ジェランガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、寒天等が挙げられる。本発明においては、ゲル化剤として、特にコンニャク精粉、又はグルコマンナンと他のゲル化剤を併用することが好適であり、この際、コンニャク精粉又はグルコマンナンは、全ゲル化剤の50重量%以上とすることが好ましい。
【0029】
ゲル化剤の使用量は、デンプンの重量に対して、0.003〜7倍、好ましくは0.01〜3倍程度の範囲で使用される。特に好適なグルコマンナンを用いる場合は、デンプンの重量に対して0.003〜7倍、好ましくは0.1〜3倍程度とする。
【0030】
2価の陽イオンによりゲル化するゲル化剤を用いる場合、米様粒体は、2価金属イオンをさらに含むものとなる。2価陽イオンとしては、食品衛生上問題なく、かつゲル化剤と共にゲルを形成するものであればよく、例えば、カルシウム、マグネシウム等のイオンが味の点から好ましい。2価金属イオンを含む化合物としては、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、焼成卵殻カルシウム、焼成カキ殻カルシウム等のカルシウム塩、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム等の水溶性マグネシウム塩等の水溶性2価金属塩の少なくとも1種を使用することができる。2価金属イオンの使用量は、通常、用いる澱粉の重量に対して、2価金属塩として1倍以下、好ましくは約0.006〜0.5倍の範囲とする。
【0031】
(白濁剤)
本発明において用いる白濁剤は、米様の白濁した外観を得る目的、及び食物繊維としての目的で添加されるが、特に、物理的、化学的手法により微粉末としたものが好ましく、例えば、平均重合度100〜300で、約60メッシュの金網を通過する粉末セルロースや、重合度が100以下の粉末セルロース(特開昭57−212231号公報、特開昭59−219333号公報、特開昭61−211342号公報、特開昭62−138538号公報、特開昭62−240302号公報、特開平3−152130号公報、特開平3−163135号公報、特公昭60−19921号公報、特公昭62−30220号公報、特公昭63−44763号公報、特公平2−12494号公報等参照)等が好適である。これらの好適な粉末セルロースは、白濁した外観を付与する効果、及び食物繊維としての効果を奏する他に、得られる米様粒体の保水性を良好なものとし、加水した際の粒子からの離水を長期に亘って回避し、これによって米様粒体に、米に近い食感を付与することができる。また、上記白濁剤には、該セルロースの他に、例えば骨粉、絹、タルク、カオリン等も包含される。
【0032】
上記白濁剤の使用量は、用いる澱粉の重量に対して、0.03〜20倍、好ましくは約0.06〜5倍程度の範囲とする。ただし、デンプンとして化工澱粉、及びゲル化剤としてコンニャク精粉又はグルコマンナンを用い、白濁剤として粉末セルロースを用いる場合は、粉末セルロースはコンニャク精粉又はグルコマンナンに対して重量比で1.0を超える割合、好ましくは、約1.5倍以上である。
【0033】
本発明の米様粒体は、以上の各成分の他に、その外観、食感、呈味等に悪影響を与えない限りにおいて、必要に応じて、従来より食用に供されることの知られている各種の可食性物質を、適宜添加配合することができる。これらの物質には、オリゴ糖、ポリデキストロース等の多糖類、ビタミン類、ミネラル類、香料、増粘剤、着色剤、フレーバー、食物繊維等が包含され、されに可食性材料としてよく知られている各種の蛋白質、ペプチド、油脂、調味料(砂糖、塩、醤油等)もまた必要に応じて適宜添加配合することができる。
【0034】
[流動体]
以下、本発明の流動体について説明する。本発明の流動体は、油及び水を含む。流動体の水分含量は、米様粒体に水を移行させ、米に近い食感を付与する点から、好ましくは60質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以上85質量%以下である。なお、流動体の水分量は、上述した条件と同様の条件で、常圧加熱乾燥法により測定する。流動体の水分量は、流動体に含まれる固形物を除いた全体量に対する量とする。
【0035】
流動体の油含量は、油の種類によって適宜選択されればよいが、米様粒体に所定量の水を移行させ、米に近い食感を付与する点から、好ましくは0.5質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以上20質量%以下である。なお、流動体の油含量は、エーテル抽出法により測定する。流動体の油含量は、流動体に含まれる固形物を除いた全体量に対する量とする。
【0036】
油は、食用に供することができれば、特に制限されず、所望の食品製品に応じて適宜選択できる。また、油は、融点25℃以の油を、油全量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上の量で含むことが好ましい。また、所望の融点を得る点から、動物性油よりも植物性油が好ましい。例えば、サラダ油、パーム油、なたね油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油等が挙げられ、1種又は複数種組み合わせて使用してもよい。但し、動物性油は、植物性油よりも米様粒体への水の移行量を制限する効果が大きいことから、所望の移行量に応じて、適宜使用してもよい。
【0037】
さらに、油の量や種類によって米様粒体との被着率も異なることから、油は、所望とする、米様粒体の水分含量、流動体からの水分の移行量、水分含量の変化量に応じて適宜選択してもよい。
【0038】
また、流動体は、所望の食品製品に応じて、栄養価を付与するもの、風味を付与するもの、粘性を付与するもの、各種添加物を含んでもよい。例えば、流動体がカレールーである場合には、米と同様の栄養価を付与する点から、炭水化物である精米、サツマイモペーストを含んでいてもよい。
【0039】
[容器]
本発明の食品製品を収容する容器は、食品業界で公知の食品容器であれば、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定することができるが、本発明の食品製品は、経時安定性に優れることから、密閉容器が好ましい。密閉容器としては、例えば、気密性と遮光性を有するレトルトパウチ等が挙げられる。密閉容器に収容された食品製品は、後述するように備蓄食として好適である。
【0040】
[用途]
本発明の食品製品は、上述したように、米の食感に近い米様粒体を含むため、米飯類の代替品となり得る。したがって、本発明の食品製品は、流動体に各種惣菜類を選択することによって、例えば、カレーライス、ハヤシライス、粥、雑炊、ドリア、リゾット、丼物(親子丼、中華丼、すき焼き丼等)として好適に利用できる。
【0041】
また、上述したように、本発明の食品製品は、経時安定性に優れ、かつ、加熱に有無によらず嗜好性に優れる。よって、本発明の食品製品は、平常時に限らず、一人暮らしの老人や若者が手軽かつ安全に利用できる食品として、キャンプ用のアウトドアライフ用の食品として、災害時や遭難時の非常用備蓄食として好適に利用できる。
【0042】
なお、本発明の食品製品は、販売に供されるものである。本発明の食品製品は、食品工場等で米様粒体と流動体とが混合状態で容器に収容され、加熱殺菌されて製品とされた後、所定の期間(保管期間及び/流通期間)を経て、米様粒体が米に近い食感を与えることができる状態にされた後、販売に供されるものである。
【0043】
<製造方法>
本発明は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品を製造する方法であって、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含む米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容され、加熱殺菌された収容体を、0℃以上50℃以下の雰囲気中で72時間以上保管して食品製品とする工程を有する方法である。上述したように、流動体の水分は、米様粒体中に完全に拡散するのではなく、72時間以上経過後には、所定の水分含量で飽和状態に近くなる。
【0044】
本発明においては、米様粒体と流動体とが混合されることによって、米様粒体の表面の一部又は全部に、流動体中の油が被覆される。そして、容器内に収容された米様粒体と流動体とが加熱殺菌(例えば、レトルト殺菌)されることにより、流動体の水分が米様粒体へ移行し始める。その後、0℃以上50℃以下(例えば、8℃以上、15℃以上、40℃以下、30℃以下)の雰囲気中で72時間以上、好ましくは96時間以上、より好ましくは14日間以上、保管することにより、流動体の水分が米様粒体へ所定量移行し、米様粒体が米に近い食感を与えることができる。この保管期間が過小であると、流動体の水分の移行が不十分で、米様粒体が米に近い食感を与えることができない。保管期間の上限は、特に制限されないが、販売に供される期間まで、好ましくは6か月以下、より好ましくは1か月以下である。なお、食品製品の保管期間は、保管温度によって、上記範囲で適宜設定されればよく、異なる温度で、例えば8℃での保管の後、20℃での保管があってもよく、全体の保管時間が72時間以上であれば足りる。また、食品製品の保管は、上記温度以外で保管されることを除外しない。
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例]
下記原料からなる米様粒体と流動体であるカレールーとを所定量混合し、レトルトパウチに充填し、加熱殺菌(120℃で45分間)した。そして、この食品製品を8℃の環境下で保管し、米様粒体の水分含量の経時変化の測定と、食感の評価を行った。保管時間は、加熱殺菌後からの時間である。また、8℃14日間保管した食品製品を100℃で3分間湯煎し、この製品の、米様粒体の水分含量の経時変化の測定と、食感の評価を行った。その結果を表1に示す。8℃14日間後の食品製品の水分含量は80質量%、油含量は2.2質量%であった。
【0047】
米粒体:デンプン、食物繊維(ポリデキストロース、セルロース)、オリゴ糖、デキストリン、グルコマンナン、グルコン酸カルシウム、増粘剤(昆布類粘着物)、調味料(有機酸)からなる
流動体:食用油脂(植物性油)、水、カレー粉、サツマイモペースト、人参ペースト、精米、チャツネ、トマトペースト、コンブエキス、ウスターソース、ジンジャーペースト、ガーリックペースト、食塩、香辛料、酵母エキス、増粘剤(加工でんぷん)、着色料(カラメル)、調味料(有機酸)
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、食感の評価は、下記の通りである。
◎:米にとても近い食感を感じる
〇:米に近い食感を感じる
△:米に近い食感をやや感じる
×:芯がやや硬く、表面にヌルヌル感がある
【0050】
表1の結果から、米様粒体と流動体であるカレールーとを所定量混合し、レトルトパウチに充填し、加熱殺菌した後、72時間以上保管することにより、米に近い食感を与える食品製品を得られることが確認された。特に、14日間保存することにより、米にとても近い食感を与える食品製品を得られることが確認された。また、この食品製品においては、加熱せず食しても、米に近い食感を与えることができ、嗜好性に優れていることが確認された。
【要約】
【課題】米に近い食感を与えられる食品製品を提供すること。
【解決手段】本発明の食品製品は、米様粒体と、油及び水を含む流動体と、が混合状態で容器に収容された食品製品であって、米様粒体は、デンプン、デキストリン、ゲル化剤、及び白濁剤を含み、65質量%以上80質量%以下の水分含量であり、かつ、前記食品製品を8℃に24時間おいた前後での水分含量の変化が3.0質量%以下である。
【選択図】なし