(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸引装置の両側には、前記第1のガス誘導空間部に送られたガスの流れを上方向に整える整流板が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層造形装置。
前記第2のガス回収口には、前記第2の壁面側に開口し、前記第1の回収口から回収されることなく、前記仕切部に沿って前記天井部まで上昇したガスを前記第2の回収口へと案内するガス案内部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層造形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、最近は、例えば、複数の箇所を同時に焼結したり、より高速に高エネルギーのレーザを照射したりすることが可能になってきている。このように、ヒュームの発生量が通常の造形加工よりも多い場合、或いは、チャンバの容量がより大きい場合であっても、長時間の連続運転に耐えるように、汚染ガスの排出に関してさらなる改良が望まれている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、汚染ガスをチャンバの外により効率的に排出することができる、積層造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の積層造形装置は、金属の材料粉末が敷かれるテーブルと、水平一軸方向に往復移動して前記テーブル上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層を形成するリコータヘッドと、密閉空間を形成し、前記密閉空間内に前記テーブルおよび前記リコータヘッドを収容するチャンバと、粉末層の所定領域にレーザを照射して焼結させ、焼結層を形成するレーザ照射装置と、前記チャンバ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、前記不活性ガス供給装置に接続され、前記チャンバの第1の壁面に設けられた不活性ガス供給口と、前記第1の壁面に対向する前記チャンバの第2の壁面から天井部にかけて設けられたガス回収機構と、前記ガス回収機構によって回収されたガスを回収するガス回収装置と、を備え、前記ガス回収機構は、所定間隔を空けて前記第2の壁面に沿って天井部まで延びる仕切部と、前記仕切部に形成された第1のガス回収口と、前記第1のガス回収口に設けられた吸引装置と、前記仕切部と前記第2の壁面との間に形成された第1のガス誘導空間部と、前記第1のガス誘導空間部と連通し、前記天井部に設けられる第1のダクトと、前記第2の壁面近傍の前記天井部に設けられた第2のガス回収口と、前記第2のガス回収口と連通する第2のダクトと、を有してることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、チャンバ内におけるガスの流れは、チャンバの壁面に沿って形成される。より具体的には、チャンバの第1の壁面に設けられた不活性ガス供給口から第1の壁面に対向する第2の壁面に向けて噴射されたガスは、チャンバの底面に沿って流れを形成し、第2の壁面まで到達したガスは、第2の壁面に沿って天井部まで上昇していく。
【0011】
本発明では、ガス回収機構は、所定間隔を空けて第2の壁面に沿ってチャンバの天井部まで延びる仕切部と、仕切部に形成された第1のガス回収口と、第1のガス回収口に設けられた吸引装置と、仕切部と第2の壁面との間に形成された第1のガス誘導空間部と、第1のガス誘導空間部と連通し、天井部に設けられる第1のダクトと、を有してる。これにより、仕切部に沿って上昇する汚染ガスの流れの方向の変更を最小限に抑えながら、仕切部に設けられた第1のガス回収口から汚染ガスを第1のガス誘導空間内に吸引し、本来の汚染ガスの流れに乗せて第2の壁面に沿って上方向へと誘導し、天井部に設けられた第1のダクトからガス回収装置へと送ることができる。従って、本発明によれば、本来チャンバ内に形成される汚染ガスの流れを活かすことにより、汚染ガスをチャンバの外により効率的に排出することができる。
【0012】
また、第1のガス回収口、第1のガス誘導空間部および第1のダクトへと続く効率的な汚染ガスの回収の流れを作ることにより、第1のガス回収口から回収されることなく漏れてしまう汚染ガスの量を少なくすることができる。従って、第2のガス回収口に吸引装置を設ける等、積層造形装置の構成を増やすことなく、第1のガス回収口から回収されることなく漏れてしまった汚染ガスを第2のガス回収口から漏れなく回収することができる。以上により、本発明によれば、汚染ガスをチャンバの外に漏れなく排出することができる。
【0013】
第2の発明の積層造形装置は、前記第1の発明において、前記第1のガス回収口、前記第1のガス誘導空間部および前記第1のダクトは、第1のガス回収流路を形成し、前記第2のガス回収口および前記第2のダクトは、第2のガス回収流路を形成し、前記第1のガス回収流路と前記第2のガス回収流路とは、少なくとも前記第1のガス回収口から前記第1のダクトの上流部分までの区間と前記第2のガス回収口から前記第2のダクトの上流部分までの区間とが分離されていることを特徴とするものである。
【0014】
ここで、第1のガス回収口には吸引装置が設けられているため、第1のガス回収流路からガス回収装置に単位時間あたりに送られる汚染ガスの量と、第2のガス回収流路からガス回収装置に単位時間あたりに送られる汚染ガスの量とでは、第1のガス回収流路からガス回収装置に送られる汚染ガスの量が圧倒的に多くなる。つまり、第1のガス回収流路と第2のガス回収流路とでは、その内部を流れる汚染ガスの勢いに差が生じている。従って、第1のガス回収口から第1のダクトの上流部分までの区間と第2のガス回収口から第2のダクトの上流部分までの区間とが連通している場合、第1のガス回収流路から送られてきた汚染ガスが第2のガス回収流路との連通部分で滞留、もしくは、第2のガス回収流路へと逆流し、チャンバ内に戻ってしまうおそれがある。
【0015】
本発明では、第1のガス回収流路と第2のガス回収流路とは、少なくとも第1のガス回収口から第1のダクトの上流部分までの区間と第2のガス回収口から第2のダクトの上流部分までの区間とが分離されている。従って、第1のガス回収流路から送られてきた汚染ガスが第2のガス回収流路との連通部分で滞留、もしくは、第2のガス回収流路へと逆流し、第2の回収口からチャンバ内に戻ることを防止することができる。
【0016】
第3の発明の積層造形装置は、前記第1または第2の発明において、前記吸引装置の両側には、前記第1のガス誘導空間部に送られたガスの流れを上方向に整える整流板が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、吸引装置の両側には、第1のガス誘導空間部に送られたガスの流れを上方向に整える整流板が設けられている。これにより、第1のガス誘導空間部内で汚染ガスが滞留することを防止し、第1のダクトへとより効率的に誘導することができる。
【0018】
第4の発明の積層造形装置は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記第2のガス回収口には、前記第2の壁面側に開口し、前記第1の回収口から回収されることなく、前記仕切部に沿って前記天井部まで上昇したガスを前記第2の回収口へと案内するガス案内部が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、第2のガス回収口には、第2の壁面側に開口し、第1の回収口から回収されることなく、仕切部に沿って天井部まで上昇したガスを第2の回収口へと案内するガス案内部が設けられている。これにより、第1の回収口から回収されることなく天井部まで達した汚染ガスを第2のガス回収口へと確実に導き、第2のダクトを通ってガス回収装置に送ることができる。
【0020】
第5の発明の積層造形装置は、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記仕切部は、前記第1のガス回収口から前記チャンバの底面の手前まで前記第2の壁面の内壁に沿って延びるように形成され、前記ガス回収機構は、前記第1のガス供給口から下側の前記仕切部と前記第2の壁面との間に形成された第2のガス誘導空間部をさらに有していることを特徴とするものである。
【0021】
本発明では、仕切部は、第1のガス回収口からチャンバの底面の手前まで第2の壁面の内壁に沿って延びるように形成され、ガス回収機構は、第1のガス供給口から下側の仕切部と第2の壁面との間に形成された第2のガス誘導空間部をさらに有している。これにより、吸引装置による吸引力が小さくなる第1のガス回収口から離れた場所、すなわち、チャンバの底面近くに運ばれた汚染ガスを本来の汚染ガスの流れに乗せて、第2の壁面に沿って上方向に誘導することができる。従って、吸引装置による吸引力が小さくなる場所に運ばれたガスを第1のガス誘導空間へと確実に導くことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、汚染ガスをチャンバの外により効率的に排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
積層造形装置は、レーザによる金属粉末焼結積層造形法によって金属製の三次元造形物を生成するためのものである。積層造形装置は、機械本機と、機械本機に収容される電源装置および制御装置と、機械本機の前側に設けられる操作パネルと、機械本機の後側に設定されるヒュームコレクタのような周辺機器等で構成されている。なお、以下では、
図1の図面向かって手前側を前側、奥側を後側、左側を左側、右側を右側、上側を上側、下側を下側と定義して、適宜、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」の方向語を使用して説明する。
【0026】
図1、
図2に示すように、積層造形装置は、密閉空間を形成して密閉空間内にレーザLの所定の照射領域を収容するチャンバ1と、チャンバ1内において後述する造形ベース6A上を前後方向に往復移動し少なくとも所定の照射領域に粉末層を形成するリコータヘッド3と、チャンバ1内に不活性ガスを循環供給する不活性ガス給排装置4とを備える。
【0027】
チャンバ1は、酸素濃度が所定値未満の材料粉末を焼結するために適する環境を形成する手段である。
図2に示すように、チャンバ1は、機械本機の前後方向に伸縮自在の仕切りであるジャバラ1Aによって後側の密閉空間である造形室1Bと前側の密閉空間である駆動室1Cとに分割される。造形室1Bと駆動室1Cとの間には、不活性ガスが通過できる僅かな隙間が存在する。駆動室1Cには、適宜レーザLの照射によって生成された焼結体の表面の仕上げ加工をするための切削装置5が収容される。
【0028】
造形室1Bには、レーザLの所定の照射領域を含む造形領域が形成される。造形領域は、造形を行なう作業領域全体であって、造形テーブル2の上面全面に相当する。所定の照射領域は、造形領域内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。従って、所定の照射領域は、任意の形状の三次元造形物を所定の高さ毎に分割した分割層毎に面積が異なることがある。
【0029】
機械本機の基台であるベッド6の上には、作業台である平板形状の造形ベース6Aが固定されている。
図1、
図2、
図5に示されるように、造形ベース6Aの中央部には、上から見て正方形の貫通部が設けられている。造形ベース6Aの貫通部に連通するベッド6の内側空間の中央空間に上面の外形が貫通部の内形に対して相似である造形テーブル2が造形ベース6Aの上面を上限として昇降自在に嵌装される。実施の形態の積層造形装置においては、造形テーブル2の上面を含めた造形ベース6Aの上をリコータヘッド3が移動して材料粉末が撒布されることにより、造形テーブル2の上面に造形領域が形成される。
【0030】
造形ベース6Aと造形テーブル2との間には、造形テーブル2を囲繞するように中央空間を形成し、中央空間に粉体材料を溜める材料保持壁6Bが設けられる。造形テーブル2の周縁に環状のパッキンまたはシールが設けられ、材料粉末が敷かれる中央空間を密閉する。パッキンまたはシールは、造形テーブル2が材料保持壁6Bで囲繞されている中央空間内を上下方向に移動できるように、材料保持壁6Bの壁面に対して摺動可能な材質で形成されている。
【0031】
ベッド6の内側空間には、中央空間内において造形テーブル2を上下方向に往復移動させる駆動機構2Wが設けられている。また、ベッド6の内側空間における密閉された中央空間の下側には、造形テーブル2の上面を含む造形ベース6上に撒布された材料粉末を自由落下させて収容し回収するバケット6Cが配置されている。
【0032】
リコータヘッド3は、材料粉末を造形ベース6A上の少なくとも所定の照射領域に所定の均一な厚さで撒布する手段である。リコータヘッド3は、チャンバ1の造形室1Bにおいて、図示しない駆動機構によって左右方向に交互に往復移動する。
【0033】
図3、
図4に示すように、リコータヘッド3は、材料粉末を貯留する材料貯留箱3Aと、材料貯留箱3Aに貯留されている材料粉末を造形ベース6A上に撒布して均一な厚さに均すブレード3Bと、リコータヘッド3の往復移動を案内するガイドユニット3Cとを含んでなる。
【0034】
材料貯留箱3Aは、実質的にリコータヘッド3の本体を形成する。
図2に示すように、材料貯留箱3Aは、機械本機の前後方向において、造形領域の奥行よりも長い全長を有する。
【0035】
ブレード3Bは、機械本機の前後方向における造形領域の奥行とほぼ同じ刃長を有する。ブレード3Bは、刃先と造形ベース6Aの上面との間の距離が粉末層の厚さと等しくなるように、材料貯留箱3Aの下側に取り付けられる。同一形状の2枚のブレード3Bがリコータヘッド3の移動方向に直交する方向の中心軸線に対して対称に材料貯留箱3Aに設けられる。
【0036】
一対のブレード3Bのうちのリコータヘッド3が移動方向に対して前側になるブレード3Bは、リコータヘッド3の移動中に、焼結工程において障害になる切削加工による切粉のような障害物を造形領域の外に押し出して排除する。後側になるブレード3Bは、リコータヘッド3の移動中に、下面の中央が開放されている材料貯留箱3Aから落下し供給される材料粉末を刃先と造形ベース6Aとの間に形成される間隙から流出させることによって、所定の厚さで材料粉末を撒布する。リコータヘッド3の移動方向が反転するときは、前後のブレード3Bが入れ替わる。
【0037】
ヒューム拡散装置8は、所定の照射領域において発生するヒュームがウィンドウ1Eに微細な金属の粒子を含む煤が付着することを防止する手段である。ヒューム拡散装置8は、円板形状の筐体8Aと、筐体8A内にウィンドウ1Eを囲繞するように設けられ筐体8A内に不活性ガス供給空間を形成する円筒形状の仕切板8Bとを備える。
【0038】
ヒューム拡散装置8の筐体8Aの底面の中央には、ウィンドウ1Eを透過して下向きに照射されるレーザLを所定の照射領域に向けて通過させる円形口8Cが設けられている。仕切板8Bには、多数の細孔が穿設されており、後述する不活性ガス供給装置4の第1の供給装置40Aから供給されてくる清浄な不活性ガスを細孔を通して清浄空間に充満させる。清浄空間に充満した不活性ガスは、円形口8CからレーザLの照射経路とおおよそ同軸方向に下方に向かって流れ出る。
【0039】
ヒューム拡散装置8は、円形口8Cから不活性ガスを噴出することにより、チャンバ1の天井まで上昇してレーザLの照射経路を横断するヒュームを照射経路から排除する。
【0040】
レーザ照射装置9は、少なくとも造形領域の範囲内において、レーザLを二次元方向に走査できるように設けられている。
図5に示すように、レーザ照射装置9は、レーザLを生成するレーザ源9Aと、レーザLを走査するガルバノスキャナ9Bとを含んでなる。レーザLは、材料粉末を焼結可能であるならば、種類は限定されず、例えば、CO2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザがある。ウィンドウ1Eは、可能な限りレーザLのエネルギーを低下させず、進行方向を歪めずに透過し得る材料で形成される。例えば、レーザLの種類がファイバレーザまたはYAGレーザである場合は、石英ガラスである。
【0041】
図1、
図2に示すように、レーザ照射装置9から発振されるレーザLは、ウィンドウ1Eを透過して造形室1Bの中を縦断するように照射される。レーザ照射装置9は、所望の形状の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層の各分割層毎に材料粉末を所定の高さで均一に撒布して形成される粉末層上の所定の照射領域に所要のエネルギーのレーザLを照射して焼結層を形成する。
【0042】
駆動装置5は、スピンドルに取り付けられた切削工具を任意の三次元方向に相対移動させるために、移動体を左右方向に往復移動させる駆動装置5Xと、移動体を前後方向に往復移動させる駆動装置5Yと、加工ヘッドを上下方向に往復移動させる駆動装置5Zとを有する。実施の形態の積層造形装置においては、駆動装置5Xの上に駆動装置5Yが搭載され、駆動装置の先端部位に駆動装置5Zが設けられている。
【0043】
不活性ガス給排装置4は、新しい不活性ガスの供給源である不活性ガス供給装置4Aからチャンバ1内に不活性ガスを供給し、造形室1B内の酸素濃度を所定値未満に抑える手段である。また、不活性ガス給排装置4は、造形室1Bに発生する汚染ガスを回収し、不純物を除去して造形室1Bに戻す手段である。
【0044】
不活性ガス給排装置4は、不活性ガス供給装置4Aと、チャンバ1から回収した汚染ガスを浄化する集塵機であるヒュームコレクタ4Bとを含んでなる。不活性ガスは、材料粉末と実質的に反応しないガスであって、例えば、窒素ガスである。実施の形態の不活性ガス供給装置4Aは、高純度の不活性ガスの供給源であって、具体的には、バルブを含む液体窒素ボンベである。不活性ガスは、窒素ガス以外に、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガスが適用できる。不活性ガス供給装置4Aは、造形室1Bに不活性ガスを供給する第1の供給装置40Aと、駆動室1Cに不活性ガスを供給する第2の供給装置40Bからなる。
【0045】
図1、
図2に示すように、積層造形装置には、ヒュームコレクタ4Bによって不純物が取り除かれた不活性ガスを造形室1Bに供給する第1の不活性ガス供給口F1と、第1の供給装置40Aから送られた不活性ガスを造形室1Bに供給する第2、第3の不活性ガス供給口F2,F3が設けられている。
【0046】
第1の不活性ガス供給口F1は、チャンバ1の左壁面に設けられている。第1の不活性ガス供給口F1は、チャンバ1の底面から天井までの中央より下側の高さに設けられている。第2の不活性ガス供給口F2は、リコータヘッド3の右側面に設けられている。第3の不活性ガス供給口F3は、造形フレーム6Aの左端直上に敷設された配管に設けられている。第3の不活性ガス供給口F3は、リコータヘッド3が所定の照射領域を通過して第2の不活性ガス供給口F2が所定の照射領域を間に置かずに第1のガス回収口V1に直面する位置にあるとき、第2の不活性ガス供給口F2から第3の不活性ガス供給口F3に選択的に切り換えられて開放される。その際、第3の不活性ガス供給口F3は、第2の不活性ガス供給口F2から供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスをチャンバ1内に供給する。
【0047】
積層造形装置には、第2の供給装置40Bから送られた不活性ガスを造形室1Cに供給する第4の不活性ガス供給口F4が設けられている。第4の不活性ガス供給口F4は、チャンバ1の左壁面の前側上端部に設けられている。
【0048】
また、積層造形装置には、汚染ガスを回収する第1〜第5のガス回収口V1〜V5が設けられている。
【0049】
第1のガス回収口V1は、後述するガス回収機構10のチャンバ1の底面から天井までの中央より下側の高さに設けられている。第2のガス回収口V2は、チャンバ1の天井部の右壁面近傍に設けられている。第3のガス回収口V3は、リコータヘッド3の左側面に設けられている。第4のガス回収口V4は、リコータヘッド3を案内するガイドレールに沿って排出管を設置し、造形領域に近接して造形領域に向かって開口するように排出管に形成されている。第5のガス回収口V5は、造形領域を挟んで第4のガス回収口V4に対向するように設けられている。なお、第1のガス回収口V1および第2のガス回収口V2についての詳細な説明は後述する。
【0050】
次に、汚染ガスを回収するためのガス回収機構10について説明する。
図6に示すように、ガス回収機構10は、チャンバ1の右壁面から天井部にかけて設けられている。ガス回収機構10は、仕切部材14と、第1のガス回収口V1と、ガス吸引ファン11と、第1のガス誘導空間部S1と、第1のダクト12と、第2のガス回収口V2と、第2のダクト13と、第2のガス誘導空間部S2などを有している。
【0051】
第1のガス回収口V1は、チャンバ1の右壁面の略全面を覆うように、右壁面の下側から天井部までチャンバ1の右壁面の内壁に沿って延びる板状の仕切部材14に形成されている。第1のガス回収口V1は、第1の不活性ガス供給口F1と高さが等しく、前後方向において対向して配置されている。第1のガス回収口V1は、前後方向に長い直方体形状である。第1のガス回収口V1の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しい。第1のガス回収口V1内には、複数のガス吸引ファン11が設けられている。
【0052】
図7に示すように、複数のガス吸引ファン11は、所定の間隔を空けて前後方向に並べて配置されている。本実施形態では、第1のガス回収口V1内には、3つのガス吸引ファン11が設けられている。ガス吸引ファン11の前後方向両端部には、上方向に延びる整流板15が設けられている。
【0053】
第1のガス誘導空間部S1は、第1のガス回収口V1内に導かれた汚染ガスをチャンバ1の天井部に設けられた第1のダクト12へと誘導するためのものである。第1のガス誘導空間部S1は、第1のガス回収口V1よりも上側の仕切部材14と、チャンバ1の右壁面との間に形成されている。第1のガス誘導空間部S1の上側部分は、その上端に近づくに連れて前後方向の幅が狭くなるように形成されている。第1のガス誘導空間部S1は、第1のダクト12と連通している。
【0054】
第1のダクト12は、略筒状である。
図6に示すように、第1のダクト12は、チャンバ1の右壁面の上端近傍の天井部に設けられている。第1のダクト12は、左右方向から見て、チャンバ1の右壁面の前後方向における中央線の延長線上に配置されている。すなわち、第1のダクト12は、第1のガス誘導空間S1の上端部、つまり、前後方向の幅が最も狭くなる部分の上側に設けられている。第1のダクト12は、配管を介してヒュームコレクタ4Bと接続されている。第1のガス回収口V1、第1のガス誘導空間部S1および第1のダクト12によって、第1のガス回収流路P1が形成されている。
【0055】
第2のガス回収口V2は、チャンバ1の右壁面近傍の天井部に設けられている。第2のガス回収口V2は、前後方向に長い直方体形状である。第2のガス回収口V2の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しい。第2のガス回収口V2には、前後方向から見て、その開口部左側から右壁面に向かってL字状に延びる略板状のガス案内板16が設けられている。ガス案内板16の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しい。第2のガス回収口V2は、第2のダクト13と連通している。
【0056】
第2のダクト13は、略筒状である。第2のダクト13は、第1のダクト12と分離された状態で、チャンバ1の天井部の第1のダクト12の左側に隣接して設けられている。第2のダクト13は、配管を介してヒュームコレクタ4Bと接続されている。第2のダクト13とヒュームコレクタ4Bとを接続する配管と、第1のダクト12とヒュームコレクタ4Bとを接続する配管とは独立している。第2のガス回収口V2および第2のダクト13によって、第2のガス回収流路P2が形成されている。
【0057】
図6に示すように、第1のガス回収流路P1と第2のガス回収流路P2とは、第1のガス回収流路P1における第1のガス回収口V1から第1のダクト12までの区間と第2のガス回収流路P2における第2のガス回収口V2から第2のダクト13のまでの区間とが仕切部材14によって分離されている。
【0058】
第2のガス誘導空間部S2は、ガス吸引ファン11の吸引力が弱くなる第1のガス回収口V1から離れた位置、より具体的には、チャンバ1の底面近くに運ばれた汚染ガスを第1のガス回収口V1へと誘導するためのものである。第2のガス誘導空間部S2は、第1のガス回収口V1よりも下側の仕切部材14と、チャンバ1の右壁面との間に形成されている。また、仕切部材14の下端には、前後方向から見て、仕切部材14の下端から左下方向に延びる略板状のガス案内板17が設けられている。ガス案内板17の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しい。
【0059】
次に、
図6、
図7を参照しつつ、造形室1Bに供給される不活性ガスおよび汚染ガスの流れと、ヒュームコレクタ4Bに至る回収経路について説明する。なお、
図6では、不活性ガスおよび汚染ガスの流れの明瞭化のためにリコータヘッド3の記載を省略し、第3の不活性ガス供給口F3から不活性ガスを供給する場合について説明する。また、
図6、
図7では、不活性ガスおよび汚染ガスの流れを一点鎖線矢印にて示している。
【0060】
図6に示すように、第1の不活性ガス供給口F1および第3の不活性ガス供給口F3から供給された不活性ガスは、ヒュームの発生源である照射スポットを含む所定の造形領域を横切るように、チャンバ1の底面に沿って流れを形成する。このとき、レーザの焼結によって造形領域から発生したヒュームは、第3〜第5のガス回収口V5から回収される。そして、第3〜第5のガス回収口V5から回収しきれなかったヒュームは、不活性ガスとともに汚染ガスとしてチャンバ1の右壁面に向かって運ばれる。
【0061】
汚染ガスは、チャンバ1の右壁面近くまで到達すると、ガス吸引ファン11の吸引力によって第1のガス回収口V1から吸引され、第1のガス誘導空間部S1へと送られる。また、チャンバ1の底面近くに運ばれた汚染ガスは、ガス案内板17によって案内されることにより、第2のガス誘導空間部S2へと導かれる。そして、汚染ガス本来の流れに乗ってチャンバ1の右壁面に沿って第2のガス誘導空間部S2を上昇し、第1のガス誘導空間部S1へと送られる。
【0062】
そして、
図7に示すように、第1の回収口V1および第2のガス誘導空間S2から第1のガス誘導空間部S1に送られた汚染ガスは、ガス吸引ファン11の前後両端部に設けられた2つの整流板15によってガスの流れの前後方向の幅が規定されるとともに、その流れの向きが上方向に整えられる。より具体的には、本実施形態のように、第1のガス回収口V1内に3つのガス吸引ファン11が設けられている場合、第1のガス誘導空間内S1では、上方向に向かう3本の汚染ガスの流れが発生し、それらはガス誘導空間部S1の幅が細くなる上端部で合流して第1のダクト12へと送られる。
【0063】
また、
図6に示すように、第1のガス回収口V1から回収しきれなかった汚染ガスは、仕切部材14に沿ってチャンバ1の天井部まで上昇する。そして、ガス案内板16によって案内されることにより、第2のガス回収口V2から第2のダクト13へと導かれる。
【0064】
第1のダクト12および第2のダクト13まで到達したガスは、それぞれ独立した配管を通ってヒュームコレクタ4Bへと送られる。
【0065】
(作用効果)
本実施形態では、第1のガス回収口V1は、チャンバ1の右壁面の略全面を覆うように、右壁面の下側から天井部までチャンバ1の右壁面の内壁に沿って延びる板状の仕切部材14に形成され、第1のガス回収口V1よりも上側の仕切部材14と、チャンバ1の右壁面との間には、第1のガス誘導空間部S1が形成されている。また、第1のガス回収口V1内には、3つのガス吸引ファン11が設けられている。また、第1のガス誘導空間部S1は、チャンバ1の右壁面の上端近傍の天井部に設けられた第1のダクト13と連通している。これにより、仕切部材14に沿って上昇する汚染ガスの流れの方向の変更を最小限に抑えながら、仕切部材14に設けられた第1の回収口V1から汚染ガスを第1のガス誘導空間S1内に吸引し、本来の汚染ガスの流れに乗せてチャンバ1の右壁面に沿って上方向へと誘導し、第1のダクト12からヒュームコレクタ4Bへと送ることができる。従って、本来チャンバ1内に形成される汚染ガスの流れを活かすことにより、汚染ガスをチャンバ1の外により効率的に排出することができる。
【0066】
また、第1のガス回収口V1、第1のガス誘導空間部S1および第1のダクト12へと続く効率的な汚染ガスの回収の流れを作ることにより、第1のガス回収口V1から回収されることなく漏れてしまう汚染ガスの量を少なくすることができる。従って、第1のガス回収口V2にガス吸引ファン11を設ける等、積層造形装置の構成を増やすことなく、第1のガス回収口V1から回収されることなく漏れてしまった汚染ガスを第2のガス回収口V2から漏れなく回収することができる。以上により、本実施形態によれば、汚染ガスをチャンバ1の外に漏れなく排出することができる。
【0067】
また、第1のガス回収流路P1と第2のガス回収流路P2とは、第1のガス回収流路P1における第1のガス回収口V1から第1のダクト12までの区間と第2のガス回収流路P2における第2のガス回収口V2から第2のダクト13のまでの区間とが仕切部材14によって分離されている。従って、第1のガス回収流路P1から送られてきた汚染ガスが第2のガス回収流路P2へと逆流し、第2の回収口V2からチャンバ1内に戻ることを防止することができる。
【0068】
また、ガス吸引ファン11の前後方向両端部には、上方向に延びる整流板15が設けられている。これにより、汚染ガスの流れの前後方向の幅が規定されるとともに、その流れの向きが上方向に整えられる。従って、第1のガス誘導空間部S1内で汚染ガスが滞留することを防止し、第1のダクト12へとより効率的に導くことができる。
【0069】
また、第2のガス回収口V2には、前後方向から見て、その開口部左側から右壁面に向かってL字状に延びる略板状のガス案内板16が設けられている。これにより、第1の回収口V1から回収されることなくチャンバ1の天井部まで達した少量の汚染ガスを第2のガス回収口V2へと確実に案内し、第2のダクト13からヒュームコレクタ4Bへと送ることができる。
【0070】
また、仕切部材14の下端には、前後方向から見て、仕切部材14の下端から左下方向に延びる略板状のガス案内板17が設けられている。これにより、ガス吸引ファン11による吸引力が小さくなる第1の回収口V1から離れた場所、すなわち、チャンバ1の底面近くに運ばれた汚染ガスを本来の流れに乗せて第2のガス誘導空間部S2へと導くことができる。そして、チャンバ1の右壁面に沿って汚染ガスを上方向に誘導することにより、ガス吸引ファン11による吸引力が小さくなる場所に運ばれた汚染ガスを第1のガス誘導空間S1へと確実に導くことができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0072】
本実施形態では、第1のガス回収流路P1とヒュームコレクタ4Bとを接続する配管と第2のガス回収流路P2とヒュームコレクタ4Bとを接続する配管とは、独立して分離されていると記載したが、第1のダクト12および第2のダクト13よりも下流側部分、すなわち、ヒュームコレクタ4Bと接続される配管は、その途中部で合流してヒュームコレクタ4Bに接続されていても構わない。
【0073】
また、本実施形態では、ガス吸引ファン11は、3つ設けられていると記載したが、ガス吸引ファン11は、特定の数に限らずいくつ設けられていても構わない。
【0074】
また、本実施形態では、第1のガス回収口V1は、前後方向に長い直方体形状であると記載したが、第1のガス回収口V1の形状は、例えば、前後方向に長い楕円形状等、如何なる形状であっても構わない。
【0075】
また、本実施形態では、第1のガス回収口V1の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しいと記載したが、第1のガス回収口V1の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅よりも小さくても構わない。第1のガス回収口V1の前後方向の幅は、例えば、テーブル2上に形成される造形領域の前後方向の幅と略等しくても構わない。
【0076】
また、本実施形態では、第2のガス回収口V2は、前後方向に長い直方体形状であると記載したが、第2のガス回収口V2の形状は、例えば、前後方向に長い楕円形状等、如何なる形状であっても構わない。
【0077】
また、本実施形態では、第2のガス回収口V2の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しいと記載したが、第2のガス回収口V2の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅よりも小さくても構わない。第2のガス回収口V2の前後方向の幅は、例えば、テーブル2上に形成される造形領域の前後方向の幅と略等しくても構わない。
【0078】
また、本実施形態では、ガス案内板16の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しい。ガス案内板16の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅よりも小さくても構わない。ガス案内板16の前後方向の幅は、例えば、テーブル2上に形成される造形領域の前後方向の幅と略等しくても構わない。
【0079】
また、本実施形態では、ガス案内板16は、第2のガス回収口V2の開口部左側から右壁面に向かってL字状に延びる略板状部材であると記載したが、ガス案内板16の形状は、チャンバ1の右壁面側に開口し、汚染ガスを第2のガス回収口V2に案内可能であれば如何なる形状であっても構わない。
【0080】
また、本実施形態では、ガス案内板17の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅と略等しいと記載したが、ガス案内板17の前後方向の幅は、チャンバ1の右壁面の内壁の前後方向の幅よりも小さくても構わない。ガス案内板17の前後方向の幅は、例えば、テーブル2上に形成される造形領域の前後方向の幅と略等しくても構わない。
【0081】
また、本実施形態では、ガス案内板17は、前後方向から見て、仕切部材14の下端から左下方向に延びるように設けられた略板状部材であると記載したが、ガス案内板17の形状は、チャンバ1の左壁面側に開口し、汚染ガスを第2のガス誘導空間部S2に案内可能であれば如何なる形状であっても構わない。
【0082】
また、本実施形態では、第1、第2のダクト12,13は、略筒状であると記載したが第1、第2のダクト12,13は、下流側の配管と連通可能であれば如何なる形状であっても構わない。また、第1、第2のダクト12,13は、複数設けられていても構わない。
【0083】
また、本実施形態では、仕切部材14とチャンバ1の右壁面とが別部材からなる場合について記載したが、仕切部材14とチャンバ1の右壁面とは、それぞれ別部材でなくても構わない。例えば、チャンバ1の右壁面に仕切部が一体的に形成されていても構わない。
【解決手段】積層造形装置に設けられたガス回収機構は、所定間隔を空けて第2の壁面に沿ってチャンバの天井部まで延びる仕切部と、仕切部に形成された第1のガス回収口V1と、第1のガス回収口V1に設けられた吸引装置と、仕切部と第2の壁面との間に形成された第1のガス誘導空間部S1と、第1のガス誘導空間部S1と連通し、天井部に設けられる第1のダクト12と、第2の壁面近傍の天井部に設けられた第2のガス回収口V2と、第2のガス回収口V2と連通する第2のダクト13と、を有してる。