【文献】
光山 和彦 他,時間インタリーブを適用したLDPC−MMSE−SIC伝送装置の試作と評価,電子情報通信学会技術研究報告,2010年10月20日,第110巻,第251号,pp.151-156,RCS2010-130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ伝送であった無線伝送装置や伝送システムは、デジタル変調された信号を伝送する技術であるデジタル伝送システムの普及に伴い、より多くの情報量を伝送することが可能となった。
例えば、テレビジョン放送番組素材をデジタル伝送する無線中継伝送装置はFPU(Field Pickup Unit)と称され、その伝送システムは、一般社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Business)の標準規格番号STD-B57で規格化されている(非特許文献2参照。)。
FPUの送信制御部では誤り訂正符号に畳み込み符号を用いており、畳み込み符号に対応する復号方法として、一般に最尤法に基づいたビタビアルゴリズムによる復号(以下、ビタビ復号と称する)が用いられる。
【0003】
近年、所要伝送レートの増加に伴い、送信機と受信機に複数のアンテナを用いて、伝送レートを向上させる信号処理技術としてMIMO(Multi Input Multi Output)がある。
MIMOは送信データ(ストリーム)を複数の信号(サブストリーム)に分割し、サブストリームを複数のアンテナから同時に送信させ、複数の受信アンテナに受信させている。各アンテナで受信された信号は、それぞれの送信アンテナからのサブストリームが互いに干渉しているが、サブストリームを分離検出することで伝送レートの増加を実現している。
【0004】
FPUにおいてもMIMO伝送システムを採用しており、ARIB STD-B57では1本の送信アンテナと1本の受信アンテナで構成されるSISO(Single Input Single Output)と、2本の送信アンテナと2本の受信アンテナで構成される2×2MIMOが規定されている。
MIMO伝送システムは、各サブストリーム間の空間相関が高くなると、受信機側での分離検出は困難になるため、その伝送特性は空間相関の影響を大きく受ける。
空間相関を低減させる手段として、送信側でアンテナ間隔を離す必要があることが知られているが、FPUは中継車のアンテナ設置場所に限りがあり、空間相関が高い状況下での運用が求められる。
【0005】
近年、空間相関が高い状況下でもMIMOの復号性能を向上させる信号処理技術として、ターボ等化信号処理が注目されている。ターボ等化信号処理とは、等化器の役割を果たすデマッパと復号器をデインタリーバとインタリーバを介して接続し、復号器の復号結果より得られる外部情報をデマッパへの事前情報としてフィードバックさせる処理を繰り返すことにより、干渉成分を除去することで復号性能を向上させる手法である。
具体的に、MIMOでは現実的なターボ等化信号処理の実現方法としてSC/MMSE(Soft Canceller followed by Minimum Mean Square Error filter)アルゴリズムが提案されている。SC/MMSEアルゴリズムは、復号器に入力される受信ビットLLR(対数尤度比:Logarithm of Likelihood Ratio)を、誤り訂正復号処理された符号化ビットLLRから減算することで得られる復号器の外部LLRに対してインタリーブ処理し、インタリーブ処理された外部LLRから軟推定値を作成してデマッパに出力する。
デマッパでは、入力された軟推定値を用いて干渉成分のレプリカを生成し、受信信号から減算後、残りの干渉成分をMMSEフィルタで除去させることにより、復号性能の向上を図っている。このアルゴリズムを実現するには、軟推定値を作成するための外部LLRが独立である必要があり、インタリーブ長が十分に長くてランダムなインタリーバが求められる。
【0006】
ターボ等化信号処理では、軟入力軟出力の復号器を用いる必要があり、復号法として最大事後確率(MAP:Maximum A posteriori Possibility)復号やSOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)復号などが例として挙げられる。
特に、MAP復号を実現するアルゴリズムとして、BCJRアルゴリズムによる復号(以下、BCJR復号と称する)が知られている。
実際には、BCJRアルゴリズムをそのまま適用すると計算量が膨大となり現実的ではないため、一般的にはMax−Log−MAP復号を用いる。
【0007】
ここでは、BCJRアルゴリズムに基づいたMax−Log−MAP復号について説明する。(非特許文献1等参照。) 畳み込み符号器に対応するトレリス線図において、状態遷移確率をγ、前向きメトリックをα、後ろ向きメトリックをβ、復号ビット系列長をL、復号ビット系列番号をl(小文字のL)、トレリス線図における遷移元内部状態をS’、遷移先内部状態をS、内部状態Sの畳み込み符号器出力をνとすると、各計算は以下の数式で表される。
【数1】
【数2】
【0008】
ターボ等化信号処理を用いるためにBCJR復号を選択した場合、復号処理を行うためのフレーミングを行い、トレリス線図の始点l=0と終点l=Lを決定すると共に、始点l=0の内部状態S
0と終点l=Lの内部状態S
Lを事前知識として知る必要がある。一般的には、内部状態を特定するためにテイルバイティング処理などの終端処理を施す。
しかしながら、ARIB STD-B57で規格されるFPUでは終端処理を行わないため、始点と終点の内部状態が不定である。従って、始点と終点で生き残りパスを選択した時に曖昧さが発生し、始点付近と終点付近の復号時に誤りが発生しやすく、ビット誤り率特性は劣化してしまう。
このような終端処理が施されない無線伝送装置や伝送システムの復号方法として、スライディング窓復号が提案されている。(特許文献1等参照。) スライディング窓復号では、始点をl=0、終点をl=Lと定義する窓の長さがLの復号ビット系列に対して、まずトレリス学習期間Kを定義し、l=−Kからl=0まで前向きメトリックα、l=L+Kからl=Lまでの後ろ向きメトリックβを算出し、l=0の内部状態S
0とl=Lの内部状態のS
Lを特定する。特定した内部状態を用いて、l=0からl=LまでBCJR復号処理を行う。従って、Kはl=0とl=Lの内部状態を特定できるような長さに設定する。
スライディング窓復号を用いることによって、終端処理が施されない無線伝送システムや装置においてもBCJR復号の復号性能の劣化を低減し、実装することが可能となる。
【0009】
次に課題としては、送信側で終端処理を施さず、かつ、誤り訂正の向上を図るために処理単位がフレーム間に跨り、並び替え方がランダムなインタリーバを備えた伝送システムにターボ等化信号処理を適用する場合、軟推定値作成時のビット情報の欠落がある。
例えば、ARIB STD-B57に準拠したFPUでは、OFDMシンボル間に跨るビット単位の並び替えを行うビットインタリーバと、各送信アンテナの送信信号に異なるパターンでサブキャリア単位の並び替えを行う周波数インタリーバを組み合わせることで、ランダムな並び替えを実現している。以下、説明の簡単化のため、FPUの空間多重方式MIMO伝送システムの一例について説明する。
【0010】
まず、FPUの送信機における処理の流れについて
図3で説明する。
FPUの送信機の処理のブロック図を示す
図3において、301は誤り訂正符号部、113はビットインタリーバ、115−1は送信信号1に対応する周波数インタリーバ1部、115−2は送信信号2に対応する周波数インタリーバ2部、302はマッパ、303−1は送信信号1に対応する処理ブロック(304−1はIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部、305−1はD/A(Digital to Analog Converter)、306−1は直交変調部)、303−2は送信信号2に対応する処理ブロック(304−2はIFFT部、305−2はD/A、306−2は直交変調部)、307−1は送信アンテナ1、307−2は送信アンテナ2である。
【0011】
送信ビット系列は、誤り訂正符号部301に入力され、畳み込み符号による誤り訂正符号化処理を施される。FPUでは拘束長7、符号化率1/2を原符号とするパンクチュアード畳み込み符号を用いる。誤り訂正符号化と共に、パンクチュアー化パターンに応じて、送信アンテナ1(307−1)から送信される送信信号1と送信アンテナ2(307−2)から送信される送信信号2に系統振り分けされ、ビットインタリーバ113に入力される。
【0012】
ビットインタリーバ113入力時から後に示す周波数インタリーバ115−1、115−2出力後のビット系列を
図9に示す。
ビットインタリーバ113では、多値変調を用いる場合、サブキャリア変調方式に応じたビット単位のインタリーブを行う。入力信号をb0,b1,b2,b3,b4,b5,・・・と定義した時、サブキャリア変調方式がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)では、
図4に示すように入力信号をS/P(Serial to Parallel)変換1部で2ビット化し、120ビット遅延素子402をb1,b3,b5に挿入してビットインタリーブされて出力される。
【0013】
サブキャリア変調方式が8PSK(Phase Shift Keying)では、
図5に示すように入力信号をS/P変換2部501で3ビット化し、60ビット遅延素子502をb1,b4、120ビット遅延素子402をb2,b5に挿入してビットインタリーブされた信号が出力される。
サブキャリア変調方式が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)では、
図6に示すように入力信号をS/P変換3部601で4ビット化し、40ビット遅延素子602をb1,b5、80ビット遅延素子603をb2、120ビット遅延素子402をb3に挿入してビットインタリーブされた信号が出力される。サブキャリア変調方式が32QAMでは、
図7に示すように入力信号をS/P変換4部701で5ビット化し、30ビット遅延素子702をb1、60ビット遅延素子602をb2、90ビット遅延素子703をb3、120ビット遅延素子402をb4に挿入してビットインタリーブされた信号が出力される。
【0014】
サブキャリア変調方式が64QAMでは、
図8に示すように入力信号をS/P変換5部で6ビット化し、24ビット遅延素子802をb1、48ビット遅延素子803をb2、72ビット遅延素子804をb3、96ビット遅延素子805をb4、120ビット遅延素子402をb5に挿入してビットインタリーブされた信号が出力される。
従って、多値変調時はサブキャリア変調方式を問わず、ビットインタリーブ時に120ビット遅延素子402が挿入されるため、送受信で最大120キャリアシンボルの遅延が生じることにより、N番目のOFDMシンボルのビット系列の一部は遅延素子によって、遅延されたビットが含まれる。インタリーブ時にフレーム間を跨いで遅延されるビットの最大遅延長をM’と定義する。FPUの場合はM’=120である。
【0015】
図9(i)に示すように、ビットインタリーバ入力前(
図9(i))の信号をb0〜bL−1とする(Lは1変調シンボルに割り当てるビット数がQ、OFDMシンボルのデータサブキャリア数がL’である時、L=QL’の関係より得られる)。
ここでは一例として、
図6で示しているサブキャリア変調方式が16QAM時のビットインタリーブを想定しており、Symbol Indexは0〜3のQ=4ビット単位である。
図6より、入力信号をS/P変換3部601で4ビット化した後(
図9(ii))、Symbol Indexが1の時は遅延素子602を用いて40ビット遅延、2の時は遅延素子603を用いて80ビット遅延、3の時は遅延素子402を用いて120ビット遅延をさせて出力される(
図9(iii))。
図9(iii)で示される斜線部は、ビットインタリーブ時の遅延挿入により混在したb0より過去のビットを表しており、本例ではSymbol Indexが1の時は40ビット、2の時は80ビット、3の時は120ビットが含まれる。
【0016】
ビットインタリーバ113から出力された信号は、周波数インタリーバ115−1、115−2に入力される。周波数インタリーバ115−1、115−2では
図9(iv)に示すように、入力されたビット系列によって構成されるOFDMシンボル内のサブキャリアを予め決められた順序で並び替える。周波数インタリーブの処理単位はOFDMシンボル内のデータサブキャリア本数と等しく、このインタリーブ処理単位長はL’となる。この長さL’の範囲内で並び替えが行われる。
【0017】
これらの一連のインタリーブ処理されたビット系列は、マッパ302に入力され、サブキャリア変調方式に応じたシンボルにマッピング処理が施される。
マッピング処理されたビット系列は、IFFT部304−1、304−2で逆高速フーリエ変換処理され、時間軸信号へと変換される。この時間軸信号をD/A305−1,305−2でデジタル信号からアナログ信号へと変換し、直交変調部306−1、306−2で直交変調を施した後、送信信号1は送信アンテナ307−1、送信信号2は307−2からそれぞれ送信される。
従って、ビットインタリーバの遅延素子によって、N番目のOFDMシンボルのビット系列の一部は、b0より過去のビットが含まれ、b0〜bL−1の一部はN+1番目のOFDMシンボルのビット系列に含まれる。
FPUは上記で示した送信機構成によって規定されるため、復号部でb0〜bL−1を揃えるには、N+1番目のOFDMシンボルを待つ必要があり、その待ち時間は復号ビット系列長Lで規定される。FPUにスライディング窓復号を用いることで、ビット情報の欠落を回避した状態でBCJR復号が可能となる。
【0018】
下記に従来構成として、FPUの受信機にトレリス学習期間がKであるスライディング窓復号、BCJR復号、及びSC/MMSEアルゴリズムに従うターボ等化処理を実装した時の流れについて示す。
従来構成の受信制御部の処理を説明するブロック図の
図2において、101−1は受信アンテナ1、101−2は受信アンテナ2、102−1は受信信号1に対する処理ブロック(103−1は直交検波部、104−1はA/D(Analog to Digital Converter)、105−1はFFT(Fast Fourier Transform)部)、102−2は受信信号2に対する処理ブロック(103−2は直交検波部、104−2はA/D、105−2はFFT)、106はデマッパ、107−1は周波数インタリーバ115−1に対応する周波数デインタリーバ1、同様に107−2は周波数インタリーバ115−2に対応する周波数デインタリーバ2、108はビットデインタリーバ、109はフレームバッファ、111はBCJR復号部、112は硬判定部、201は復号データ抽出2部である。
【0019】
受信アンテナ101−1と101−2に受信された受信信号は、A/D104−1,104−2でアナログからデジタルサンプル系列へ変換され、シンボル間干渉が生じないようなタイミングで有効シンボル長のFFT時間窓が設けられる。
FFT時間窓内の時間軸データは、FFT部105−1,105−2で高速フーリエ変換処理され、周波数軸信号へ変換される。
デマッパ106ではまずソフトキャンセラ処理としてインタリーブ処理された復号器出力の外部LLRから軟推定値を作成する。得られた軟推定値より受信アンテナ1(101−1)と受信アンテナ2(101−2)の受信信号に対応する干渉レプリカを生成し、各受信信号から干渉レプリカをそれぞれ減算する。但し、繰り返し処理前は干渉レプリカに対する事前情報がないため、減算しない。干渉成分を差し引いた信号はMMSEフィルタに入力され、各送信アンテナからの送信信号を空間的にフィルタリングすることで分離検出される。分離検出された信号より、シンボルにおける受信ビットLLRを算出する。
【0020】
受信ビットLLRに関するビット系列は、送信アンテナ1から送信された信号に対応する受信ビットLLRが周波数デインタリーバ107−1、送信アンテナ2から送信された信号に対応する受信ビットLLRが周波数デインタリーバ107−2に入力される。
周波数デインタリーバ107−1は、周波数インタリーバ115−1で並び替えたサブキャリアの順序を、周波数デインタリーバ107−2は、周波数インタリーバ115−2で並び替えたサブキャリアの順序を元の順序に再度並び替える。この時、デインタリーブ処理単位は周波数インタリーバと同様にL’で規定される。周波数デインタリーブ後のビット系列をビットデインタリーバ108に出力する。
【0021】
ビットデインタリーバ108に入力されたビット系列は、ビットインタリーバ113で各サブキャリア変調方式に応じて挿入した遅延を取り除いた後にP/S(Parallel to Serial)変換処理を施し、フレームバッファ109へ出力される。
フレームバッファ109には、一連のデインタリーブ処理された受信ビットLLRに関するビット系列が長さL毎に格納される。
【0022】
従来構成での復号部入力からターボループでの周波数インタリーバ入力までのビット系列の処理イメージを
図10に示す。
復号処理を行うN番目のOFDMシンボルの始点をl=(N−1)L、終点をl=NLと定義した時、l=(N−1)L−Kからl=NL+Kまでの復号ビット系列をフレームバッファ109から復号データ抽出2部を用いて抽出し、BCJR復号部111に入力させる(
図10(i))。
【0023】
BCJR復号部111に入力されたl=(N−1)L−Kからl=(N−1)Lまでのトレリス学習期間Kの受信ビットLLRから数式1〜2を用いて、遷移状態確率γと前向きメトリックαを算出し、l=(N−1)Lの内部状態を特定する。
同様に、l=NL+Kからl=NLまでのトレリス学習期間Kの受信ビットLLRから数式1と3を用いて、遷移状態確率γと後ろ向きメトリックβを算出し、l=NLの内部状態を確定する。
上記処理より得られたl=(N−1)Lの内部状態とl=NLの内部状態より、l=(N−1)Lからl=NLまでのビット系列に対する遷移状態確率γ、前向きメトリックα、後ろ向きメトリックβを数式1〜3を用いて算出する。
BCJR復号部111では得られた遷移状態確率γ、前向きメトリックα、後ろ向きメトリックβより数式4〜6を用いてl=(N−1)Lからl=NLまでの復号を行い、復号ビットLLRと符号化ビットLLRを算出し、出力する(
図10(ii))。
得られたl=(N−1)Lからl=NLまでの長さLの符号化ビットLLRから、l=(N−1)Lからl=NLまでの長さLのBCJR復号部111入力の事前LLRを減算し、BCJR復号部111出力の外部LLRを算出する。
【0024】
BCJR復号部111出力の外部LLRをビットインタリーバ113に入力する。ビットインタリーバ113では、送信機側と同様に、ビット単位でS/P変換後、サブキャリア変調方式に応じて遅延素子による畳み込みインタリーブ処理を施されて出力される(
図10(iii))。この時、遅延素子により、最大M’=120キャリアシンボルの遅延が生じるため、ビットインタリーバ出力時(
図10(iii))、(1)と(3)がN番目のOFDMシンボルの外部LLRに関するビット系列、(2)がN−1番目のOFDMシンボルの外部LLRに関するビット系列として並び替わる。
【0025】
送信アンテナ1からの送信信号に対応する外部LLRは周波数インタリーバ115−1、送信アンテナ2からの送信信号に対応する外部LLRは周波数インタリーバ115−2に入力させる。各周波数インタリーバでは入力されたビット系列によって構成されるOFDMシンボル内のサブキャリアを予め決められた順序で並び替える。この時、周波数インタリーバ115−1と周波数インタリーバ115−2で異なるパターンで並び替えを行い、出力される。周波数インタリーブの処理単位はL’であり、長さL’の範囲内で並び替えが行われるため、l=(N−1)L’からl=NL’のビット系列である(1)と(2)が対象となる。
【0026】
一連のインタリーブ処理された外部LLRのビット系列をデマッパ106に入力し、外部LLRとサブキャリア変調方式で取り得るマッピング点より、軟推定値を算出する。この軟推定値から受信アンテナ1に対応する受信信号1の干渉レプリカと、受信アンテナ2に対応する受信信号2の干渉レプリカを生成し、各受信信号からそれぞれ干渉レプリカを減算し、SC(Soft Cancel)を行う。
従って、N番目のOFDMシンボルの復号結果から軟推定値を作成する際、周波数インタリーバ入力時(
図10(iv))に(1)と(2)のビット系列が必要となるが、(2)はN−1番目のOFDMシンボルのビット系列であるため、従来構成ではビット情報の欠落が生じる。ビット情報の欠落による不完全な軟推定値による干渉除去が行われるため、復号性能は劣化してしまう。
【0027】
他の先行技術文献としては、特表2002−533991号公報(特許文献2)等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の第1実施例として、フレーム間を跨ぐ並び替えを行うインタリーバとフレーム内で並び替えを行うランダムなインタリーバを備えた伝送システムの受信制御部にBCJR復号を用いたターボ信号処理を適用する場合を説明する。
例えば、ARIB STD-B57に準拠したFPUでは、OFDMシンボル間に跨るビット単位の並び替えを行うビットインタリーバと、各送信アンテナの送信信号に異なるパターンでサブキャリア単位の並び替えを行う周波数インタリーバを組み合わせることで、ランダムな並び替えを実現している。以下、説明の簡単化のため、従来構成と同様にFPUの空間多重方式MIMO伝送システムを例に取り、説明する。
【0039】
本発明における受信機側の処理の流れについて
図1を用いて説明する。
図1は本発明での実施形態である一実施例の受信装置の構成例を説明するブロック図である。
図1において、101−1は受信アンテナ1、101−2は受信アンテナ2、102−1は受信信号1に対する処理ブロック(103−1は直交検波部、104−1はA/D(Analog to Digital Converter)、105−1はFFT(Fast Fourier Transform)部)、102−2は受信信号2に対する処理ブロック(103−2は直交検波部、104−2はA/D、105−2はFFT)、106はデマッパ、107−1は周波数インタリーバ115−1に対応する周波数デインタリーバ1、同様に107−2は周波数インタリーバ115−2に対応する周波数デインタリーバ2、108はビットインタリーバ、109はフレームバッファ、110は復号データ抽出1部、111はBCJR復号部、112は硬判定部、114は周波数インタリーバデータ抽出部である。
【0040】
受信アンテナ101−1と受信アンテナ101−2に受信された受信信号は、A/D104−1、A/D104−2でアナログからデジタルサンプル系列へ変換され、シンボル間干渉が生じないようなタイミングで有効シンボル長のFFT時間窓が設けられる。
FFT時間窓内の時間軸データは、FFT部105−1、FFT部105−2で高速フーリエ変換処理され、周波数軸信号へ変換される。
【0041】
デマッパ106は、まずソフトキャンセラ処理としてインタリーブ処理された復号器出力の外部LLRから軟推定値を作成する。得られた軟推定値より受信アンテナ101−1と受信アンテナ101−2の受信信号に対応する干渉レプリカを生成し、各受信信号から干渉レプリカをそれぞれ減算する。但し、繰り返し処理前は干渉レプリカに対する事前情報がないため、減算しない。干渉成分を差し引いた信号はMMSEフィルタに入力され、各送信アンテナからの送信信号を空間的にフィルタリングする。分離検出された信号より、シンボルにおける受信ビットLLRを算出する。
【0042】
受信ビットLLRに関するビット系列は、送信アンテナ1(307−1)から送信された信号に対応する受信ビットLLRが周波数デインタリーバ107−1、送信アンテナ2(307−2)から送信された信号に対応する受信ビットLLRが周波数デインタリーバ107−2に入力される。
周波数デインタリーバ107−1は、周波数インタリーバ115−1で並び替えたサブキャリアの順序を、周波数デインタリーバ107−2は、周波数インタリーバ115−2で並び替えたサブキャリアの順序を元の順序に再度並び替える。この時、インタリーブ処理単位は周波数インタリーバと同様にL’で規定される。周波数デインタリーブ後のビット系列をビットデインタリーバ108に出力する。
【0043】
ビットデインタリーバ108に入力されたビット系列は、ビットインタリーバ113で各サブキャリア変調方式に応じて挿入した遅延を取り除いた後にP/S変換処理を施し、フレームバッファ109へ出力される。
フレームバッファ109には、一連のデインタリーブ処理された受信ビットLLRに関するビット系列がビット系列長L毎に格納される。
【0044】
次に、本発明の一実施例における復号部入力からターボループでの周波数インタリーバ入力までのビット系列の処理イメージを
図11に示す。
図11は本発明での実施形態である一実施例の構成での復号部入力から周波数インタリーバ入力前までのビット系列を説明するための図である。
復号処理を行うN番目のOFDMシンボルの始点をl=(N−1)L、終点をl=NLと定義した時、l=(N−1)L−(K+M)からl=NL+Kまでのビット系列をフレームバッファ109から復号データ抽出1部110を用いて抽出し、BCJR復号部111に入力させる(
図11(i))。この時、Kをトレリス学習期間、M’をフレーム間に跨るインタリーブによって遅延されたビット系列長の最大値、Qを1変調シンボルに割り当てるビット数とした時、M=M’Qである。
【0045】
BCJR復号部111に入力されたl=(N−1)L−(K+M)からl=(N−1)L−Mまでのトレリス学習期間Kの受信ビットLLRに基づき、遷移状態確率γと前向きメトリックαを算出し、l=(N−1)L−Mの内部状態を確定する。
同様に、l=NL+Kからl=NLまでのトレリス学習期間Kの受信ビットLLRに基づき、遷移状態確率γと後ろ向きメトリックβを算出し、l=NLの内部状態を確定する。
【0046】
上記処理より得られたl=(N−1)L−Mの内部状態とl=NLの内部状態を用いて、l=(N−1)L−Mからl=NLまでのビット系列に対する遷移状態確率γ、前向きメトリックα、後ろ向きメトリックβを算出する。BCJR復号部111では得られたγ、α、βより数式4〜6を用いてl=(N−1)L−Mからl=NLまでの復号を行い、復号ビットLLRと符号化ビットLLRを算出し、出力する(
図11 (ii))。
得られたl=(N−1)L−Mからl=NLまでの長さL+Mの符号化ビットLLRから、l=(N−1)L−Mからl=NLまでの長さL+MのBCJR復号部111入力の事前LLRを減算し、BCJR復号部111出力の外部LLRを算出する。
【0047】
BCJR復号部111出力の外部LLRをビットインタリーバ113に入力する。ビットインタリーバ113では、送信側と同様に、ビット単位でS/P変換後、サブキャリア変調方式に応じて遅延素子による畳み込みインタリーブ処理を施されて出力される(
図11(iii))。この時、120ビット遅延素子402により、最大M’=120キャリアシンボルの遅延が生じる。
【0048】
ビットインタリーブ処理された外部LLRは、周波数インタリーバデータ抽出部114でl=(N−1)L’からl=NL’までのデータを抽出することで、
図10(iv)で説明したようなビット情報の欠落が生じることはない(
図11(iv))。
送信アンテナ1(307−1)からの送信信号に対応する外部LLRは周波数インタリーバ115−1、送信アンテナ2(307−2)からの送信信号に対応する外部LLRは周波数インタリーバ115−2に入力させる。各周波数インタリーバでは入力されたビット系列によって構成されるOFDMシンボル内のサブキャリアを予め決められた順序で並び替える。この時、周波数インタリーバ115−1と周波数インタリーバ115−2で異なるパターンで並び替えを行い、出力される。周波数インタリーブの処理単位はL’であり、OFDMシンボル内のデータサブキャリアの本数に相当する。この長さL’の範囲内で並び替えが行われる。
【0049】
一連のインタリーブ処理された外部LLRのビット系列をデマッパ106に入力し、外部LLRとサブキャリア変調方式で取り得るマッピング点より、軟推定値を算出する。この軟推定値から受信アンテナ1(101−1)に対応する受信信号1の干渉レプリカと、受信アンテナ2(101−2)に対応する受信信号2の干渉レプリカを生成し、各受信信号からそれぞれ干渉レプリカを減算する。
【0050】
以上の処理がターボ等化信号処理の一巡処理であり、この処理を複数回繰り返すことで、復号性能の向上を実現することが可能となる。繰り返す回数は所定回数Tあるいは、復号性能が所定の性能を満たすまで行う最大事後確率復号手段によって得られた情報ビットLLRを硬判定部112にて最終的な復号結果を得る。
【数3】
【0051】
以上の説明した実施例により、スライディング窓復号単位を延ばすことで、フレーム間を跨るインタリーブ処理を施すデジタル伝送システム及び装置においても、ターボ等化処理のためにビット情報の欠落を回避した軟推定値を作成し、復号性能の劣化を低減することが実現できる。
【0052】
上述の一実施例として、空間多重方式MIMO伝送システムのFPUを用いて説明したが、シングルキャリアのISI(符号間干渉)に関するターボ等化信号処理においても、本発明を用いることができる。
【0053】
本発明の実施形態である無線伝送システムは、送信制御部で終端処理を施さず、かつ、フレーム間に跨るインタリーブ処理を施すデジタル伝送システム及び装置においても、ターボ等化処理のためにBCJR復号を用いた場合の復号性能の劣化を低減することができる。