特許第6188112号(P6188112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6188112
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】屋根の雪下ろし装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/16 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E04H9/16 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-75613(P2017-75613)
(22)【出願日】2017年4月5日
【審査請求日】2017年6月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506133183
【氏名又は名称】株式会社加藤
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀雄
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−186857(JP,U)
【文献】 特開昭63−134764(JP,A)
【文献】 特開2012−180732(JP,A)
【文献】 実開昭63−169660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側の端部が閉塞されもう片側の端部が開口され、複数の空気吹き出し孔が長手方向に所定の間隔で形成されたパイプ本体と、
前記パイプ本体の開口した一方の端部から前記パイプ内に空気を供給するための送風機と、
前記パイプ本体を屋根の棟に沿って延材した状態で固定するパイプ支持部とを有した屋根の雪下ろし装置であって、
前記各空気吹き出し孔は、前記屋根の雪下ろし装置を屋根に設置した状態で、各空気吹き出し孔から吹き出した空気が屋根全体の領域の内、棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている屋根の雪下ろし装置であって、
前記パイプ本体は、その中心軸線まわりに回動可能なように前記パイプ支持部に軸支され、かつ前記屋根の雪下ろし装置は、前記パイプ本体を所定の角度回動可能な回転駆動手段を備え、かつ、
前記各空気吹き出し孔は、前記パイプ本体の周方向所定の角度位置において当該パイプ本体の長手方向に沿って所定の間隔で直線的に並んで配置された1列の複数の空気吹き出し孔を備え、
前記屋根の雪下ろし装置を屋根に設置した状態で、前記1列の複数の空気吹き出し孔を前記屋根の棟から一方に向かって傾斜する一方の屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きになると共に、前記屋根の棟から他方に向かって傾斜する他方の屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるように前記回転駆動手段によって前記パイプ本体を回転させることを特徴とする屋根の雪下ろし装置。
【請求項2】
前記パイプ本体の閉塞された端部には、当該パイプ本体内に供給される空気が一定以上の圧力になった場合に空気抜き用のベントを設けていることを特徴とする請求項1に記載の屋根の雪下ろし装置。
【請求項3】
前記屋根の雪下ろし装置には、前記送風機によって前記パイプ本体に供給する空気を加熱するための加熱手段が備わっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の屋根の雪下ろし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に積もった雪の雪下ろしを人手によらず行うための屋根の雪下ろし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境の変化により、冬場においても異常気象に伴った巨大な低気圧が降雪地帯を通過し、屋根に一晩で多量の雪が積雪するような事態が起きている。
【0003】
このため、屋根の雪下ろし作業を頻繁に行う必要が生じ、それに伴う雪下ろし作業中の落下事故等が多発している。そこで、このような問題に対して様々な屋根の雪下ろし装置が考えられている(特許文献1乃至特許文献4参照)。
【0004】
例えば、特許文献1には、エアーマットを屋根上に据え付け、屋根の上方端側に設置したバイブレータ装置と振動板からなる振動手段を用いることで、エアーマット内部の空気を介してエアーマット全体を振動させることにより、積雪を滑り落とす除雪装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、楔型気密袋を屋根に固定しており、降雪時にはポンプを用いて気密袋を膨張させることで、屋根の傾斜角を急峻にすることで積雪を滑り落とす装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、融雪に用いる水を貯え、加熱用の電熱部材を巻き付けた貯水容器と、その電熱部材に電流を供給する発電装置を用いて、加熱と貯水を同時に行うことで、加圧した温水を散水し、エネルギーの無駄を減らしつつ、融雪させる装置が記載されている。
【0007】
特許文献4には、ヒーターパネルを屋根上に設置することで、ヒーターパネルの発熱により、屋根上部の積雪を融解させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007―239219号公報
【特許文献2】特開2007―285106号公報
【特許文献3】特開2015―161068号公報
【特許文献4】特開2007―273244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されている内容はエアーマットを振動させることで雪下ろしをするため、屋根全体にエアーマットを敷設する必要があり、一年中設置し続けると夏場の太陽光等により破損して空気漏れなどが生じて肝心の冬場に動作しなくなるか、このような事態を防ぐために定期的なメンテナンスを必要として余分なコストがかかる可能性がある。
【0010】
また、冬場のみの使用とすると、毎年冬になるごとに屋根の上での敷設作業を行わなければならず極めて面倒であり、かつ危険を伴う上、コストも掛ってしまう。
【0011】
また、特許文献2に記載されている内容は、ポンプで気密袋を膨張させることにより、急峻な傾斜角を作ることで屋根の雪下ろしを行うが、特許文献1と同様の問題を抱えている。
【0012】
また、特許文献3に記載されている内容は、水を温水にして屋根等に設置した散水部材から温水を撒くことで雪を溶かす装置であるが、水を温水化するためにはヒーターを加熱するためのかなりの電力を必要とし、それに応じて使用のための設置コストが嵩むだけでなく、毎年冬の期間にこの装置を使用するための電気代も高くなってしまう。
【0013】
また、特許文献4に記載されている内容は、ヒーターパネルを屋根上に設置することで雪を溶かす方法であるが、この装置で完全に屋根の雪下ろしを行うためには屋根に多数のヒーターパネルを設置する必要があり、設置のコストが非常に嵩んでしまう。
【0014】
また、この装置は屋根から容易に取り外すことが出来ず屋根に常時設置するようになるので、夏場の太陽光による屋根の温度上昇に起因してヒーターの断線などの故障を招き、冬場の使い始める際に定期的な点検やメンテナンスを必要とするようになる。
【0015】
本発明の目的は、コストが安く簡単に設置でき、かつ設置後に季節によって取外す必要がなく、更には雪下ろしに際して少ない電力で効果的に屋根の雪下ろしを行うことが出来る屋根の雪下ろし装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る屋根の雪下ろし装置は、
片側の端部が閉塞されもう片側の端部が開口され、複数の空気吹き出し孔が長手方向に所定の間隔で形成されたパイプ本体と、
前記パイプ本体の開口した一方の端部から前記パイプ内に空気を供給するための送風機と、
前記パイプ本体を屋根の棟に沿って延材した状態で固定するパイプ支持部とを有した屋根の雪下ろし装置であって、
前記各空気吹き出し孔は、前記屋根の雪下ろし装置を屋根に設置した状態で、各空気吹き出し孔から吹き出した空気が屋根全体の領域の内、棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている屋根の雪下ろし装置であって、
前記パイプ本体は、その中心軸線まわりに回動可能なように前記パイプ支持部に軸支され、かつ前記屋根の雪下ろし装置は、前記パイプ本体を所定の角度回動可能な回転駆動手段を備え、かつ、
前記各空気吹き出し孔は、前記パイプ本体の周方向所定の角度位置において当該パイプ本体の長手方向に沿って所定の間隔で直線的に並んで配置された1列の複数の空気吹き出し孔を備え、
前記屋根の雪下ろし装置を屋根に設置した状態で、前記1列の複数の空気吹き出し孔を前記屋根の棟から一方に向かって傾斜する一方の屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きになると共に、前記屋根の棟から他方に向かって傾斜する他方の屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるように前記回転駆動手段によって前記パイプ本体を回転させることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項に係る屋根の雪下ろし装置は、請求項1に記載の屋根の雪下ろし装置において、
前記パイプ本体の閉塞された端部には、当該パイプ本体内に供給される空気が一定以上の圧力になった場合に空気抜き用のベントを設けていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項に係る屋根の雪下ろし装置は、請求項1又は請求項2に記載の屋根の雪下ろし装置において、
前記屋根の雪下ろし装置には、前記送風機によって前記パイプ本体に供給する空気を加熱するための加熱手段が備わっていることを特徴としている
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る屋根の雪下ろし装置によると、コストが安く簡単に設置でき、かつ設置後に季節によって取外す必要がなく、更には雪下ろしに際して少ない電力で効果的に屋根の雪下ろしを行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る屋根の雪下ろし装置の第1の実施形態を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明に係る屋根の雪下ろし装置の第2の実施形態を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明に係る屋根の雪下ろし装置を用いた実際の屋根の雪下ろしを図3(a)乃至図3(c)の順番に示す説明図である。
図4図1に示す第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置の変形例を概略的に示す斜視図である
図5】本発明に係る屋根の雪下ろし装置を2階建ての家屋に取り付けた状態を概略的に示す側面図である。
図6図5において人が実際に2階の屋根に登って雪下ろしをしている状態を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置について、図面に基づいて説明する。最初に第1の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る屋根の雪下ろし装置の第1の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【0024】
第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置(以下、適宜単に「屋根の雪下ろし装置」とする)10は、パイプ本体100と、送風機300と、パイプ支持部400を有している。パイプ本体100は、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れた金属又は樹脂等でできており、片側の端部101が閉塞されもう片側の端部102が開口され、複数の空気吹き出し孔111,112,113,・・・(110),121,122,123,・・・(120)が長手方向に所定の間隔で形成されている。また、送風機300は、パイプ本体100の開口した他方の端部102に備わり、パイプ内に空気を供給する役目を果たしている。送風機300も、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れたものが使用されている。また、パイプ支持部401,402,403(400)は、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れた金属でできており、パイプ本体100を屋根50の棟55に沿って延材した状態で固定するためのもので、本実施形態においては屋根の棟の3箇所に設置されるようになっている。
【0025】
パイプ本体100に備わった各空気吹き出し孔110,120は、屋根の雪下ろし装置10を屋根50の棟に設置した状態で、各空気吹き出し孔110,120から吹き出した空気が屋根全体の領域の内、棟の近傍領域51,52に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている。
【0026】
具体的には、各空気吹き出し孔110,120は、パイプ本体の周方向第1の角度位置においてパイプ本体100の長手方向に沿って所定の間隔で直線的に並んで配置された第1の複数の空気吹き出し孔111,112,113,・・・(110)と、パイプ本体100の周方向第2の角度位置においてパイプ本体の長手方向に沿って所定の間隔で直線的に並んで配置された第2の複数の吹き出し孔121,122,123,・・・(120)からなる。
【0027】
より詳細には、第1の空気吹き出し孔110は、屋根の雪下ろし装置10を実際に屋根50の棟55に設置した状態で、第1の複数の空気吹き出し孔111,112,113,・・・(110)から吹き出した空気が、屋根の棟から一方に向かって傾斜する屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている。
【0028】
一方、第2の空気吹き出し孔120は、第2の複数の空気吹き出し孔121,122,123,・・・(120)から吹き出した空気が、屋根50の棟55から他方に向かって傾斜する屋根の棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている。
【0029】
本実施形態では、パイプ本体100の閉塞された端部101には、パイプ本体内に供給される空気が一定以上の圧力になった場合に空気抜き用のベント(図面では詳細には図示せず)を設けている。
【0030】
しかしながら、このベントについては必ずしも設ける必要はなく、雪が完全に詰まったりパイプ本体の全ての空気吹き出し孔に万が一雪が完全に詰まったり凍ってしまったりして空気が噴き出さなくなった場合は、ベントを機能させる代わりに送風機の回転数を落としたり送風機を一時的に止めたりしても良い。
【0031】
送風機300の作動のオンオフや送風量の調節を行うにあたっては、本実施形態では図1に示す屋外に設けたリモコン350を操作する。これによって、雪下ろしの状態を確認しながら送風機300からパイプ本体100に供給する空気量の調整を行う。なお、リモコン350に関しては、必ずしも本実施形態のように屋外に設ける必要はなく屋内に設けても良い。
【0032】
続いて、第2の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置(以下、適宜単に「屋根の雪下ろし装置」とする)について、図面に基づいて説明する。図2は、本発明に係る屋根の雪下ろし装置の第2の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【0033】
この屋根の雪下ろし装置20は、第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置10と基本的原理は同一なっている。具体的には、この実施形態に係る屋根の雪下ろし装置20は、パイプ本体200と、送風機300と、パイプ支持部400を有している。パイプ本体200は、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れた金属でできており、片側の端部201が閉塞されもう片側の端部202が開口され、複数の空気吹き出し孔211,212,213,・・・(210)が長手方向に所定の間隔で形成されている。また、送風機300は、パイプ本体の開口した他方の端部202に備わり、パイプ内に空気を供給する役目を果たしている。送風機300も、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れたものが使用されている。また、パイプ支持部500は、強度と耐久性や耐候性、耐食性に優れた金属でできており、パイプ本体200を屋根50の棟55に沿って延材した状態で固定するためのもので、本実施形態においては屋根の棟の5箇所に設置されるようになっている。
【0034】
パイプ本体200に備わった各空気吹き出し孔211,212,213,・・・(210)は、屋根の雪下ろし装置20を屋根に設置した状態で、各空気吹き出し孔211,212,213,・・・(210)から吹き出した空気が屋根全体の領域の内、棟の近傍領域に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている。
【0035】
続いて、本実施形態に係る屋根の雪下ろし装置20に関して、上述した第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置10と異なる構造について説明する。この屋根の雪下ろし装置20は、パイプ支持部500のうちパイプ本体の両端を支えるパイプ支持部501,502がパイプ本体200を回動可能にさせる軸受け511,512をそれぞれ有している。
【0036】
そして、それ以外のパイプ支持部503,504,505は、上述のパイプ本体の回動を妨げないローラー等の部材(図示せず)を有し、これによってパイプ本体200がその長手方向に反らないようにしっかりと支持している。
【0037】
なお、上述したパイプ本体の両端を支えるパイプ支持部だけでパイプ本体をしっかりと支持できるのであれば、中間部のパイプ支持部は必要としない。また、図2では詳細な構造の図示を省略したが、パイプ本体をその中心軸線周りに一定の回転角度で回動させるモーターと減速機構からなる駆動装置が備わっている。
【0038】
また、この屋根の雪下ろし装置20は、そのパイプ本体200の各空気吹き出し孔210が、パイプ本体の周方向所定の角度位置においてパイプ本体の長手方向に沿って所定の間隔で直線的に並んで配置された1列の複数の空気吹き出し孔211,212,213,・・・のみからなっている。
【0039】
そして、屋根の雪下ろし装置20を屋根50の棟55に設置した状態で、1列の複数の空気吹き出し孔211,212,213,・・・(210)を屋根50の棟55から一方に向かって傾斜する屋根50の棟55の近傍領域51に沿って当たるような向きになると共に、屋根50の棟55から他方に向かって傾斜する屋根50の棟55の近傍領域52に沿って当たるような向きとなるように駆動手段によって所定の回転角度でパイプ本体を回動させる。
【0040】
本実施形態においても、パイプ本体200の閉塞された端部201には、パイプ本体内に供給される空気が一定以上の圧力になった場合に空気抜き用のベント(図面では詳細には図示せず)を設けている。
【0041】
しかしながら、このベントについては必ずしも設ける必要はなく、雪が完全に詰まったりパイプ本体の全ての空気吹き出し孔に万が一雪が完全に詰まったり凍ってしまったりして空気が噴き出さなくなった場合は、ベントを機能させる代わりに送風機300の回転数を落としたり送風機300を一時的に止めたりしても良い。
【0042】
図4は、本発明の上述の2つの実施形態に係る屋根の雪下ろし装置を用いた実際の屋根の雪下ろしを図4(a)乃至図4(c)の順番に示す説明図である。同図に示すように、例えば降雪が止んで天気が良く気温が比較的上昇した日であれば、屋根全体に積もった雪が凍って固まってしまった場合であっても、屋根の棟から近傍の一定の屋根の領域に空気を吹き付けることで、屋根とその上に積もった雪の塊との間の境界となる部分の温度を高めることができる。これによってこの境界となる部分の雪が溶けて水の層をなすようになり、この水の層が屋根の棟から下のほうに向かって広がっていく。水の層となっている部分に積もっている雪は積雪時には粉雪であったがその後は水分を含んで一体化した氷に近い重い塊となっているので、上述した水の層がある一定範囲まで広がると、全層雪崩のような現象となって屋根の軒先に向かってまとめて落下していく。
【0043】
上述したように、例えば雪が降りやんだ翌日に本発明の送風機を作動させて屋根の峰の部分に積もった雪に空気を吹き付ける。この際、第1の実施形態においては、パイプ本体100が固定式であるので、パイプ本体100に配置された2列に配置された各空気吹き出し孔110,120から屋根50の棟55の両側の近傍領域51,52に積もった雪に空気が同時に勢いよく吹きかかる。また、第2の実施形態においては、駆動機構によってパイプ本体200を所定の回転角度で回動させて、パイプ本体200に配置された1列の各空気吹き出し孔210から屋根50の棟55から両側の近傍領域51,52に積もった雪に空気が交互に勢いよく吹きかかる。
【0044】
雪下ろし作業を行う日の天気が良くて外気温が比較的暖かめであれば、暖かい空気がそのままパイプ本体の空気吹き出し孔に接する雪を徐々に溶かし、しばらくすると屋根の棟の近傍に積もった雪と屋根との間に水の層ができて水気を含んで重くなったその上の空気の堆積層がやがてはその自重で水の層の上を滑り出し、軒先から地上に落下する。
【0045】
本発明によると、少ない電力で送風機を作動させることができるので、例えば屋根の軒先から落下する雪の塊に対する注意喚起の表示等を軒先の下の地上に設置しておけば、送風機を作動させたままで仕事や外出で家から離れることも可能である。これによって、送風機を長時間作動させることができるので、家に戻った時に屋根の雪下ろしが完了しているようにできるので、わざわざ仕事を休んだり外出の予定をキャンセルしたりして危険を伴う屋根の上での雪下ろし作業に無駄な時間と体力を費やす必要がなくなる。
【0046】
このようにして屋根の雪降ろし作業を実際に屋根の上で行うことなく完了することができる。そのため、今まで問題となっていた屋根の上での雪下ろし作業中の軒先からの転落事故を防ぐことができる。
【0047】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置において、必要に応じて送風機によってパイプ本体に供給する空気を加熱するための加熱手段が備わっていても良い。図3は、図1に示す第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置の変形例を概略的に示す斜視図である。
【0048】
図3においては、加熱手段としてのヒーターが備わった状態を示している。このようなヒーターを備えることで、パイプ本体の空気吹き出し孔から温度の高い空気を吹き出すことによって、雪が屋根の棟にも積もった場合であっても、より早くこの部分から雪を溶かすことができる。同図に示すように、屋根の棟から近傍の一定の屋根の領域の温度を上げることで、屋根全体に積もった雪が凍って固まってしまった場合であっても、屋根とその上に積もった雪の塊との間の境界となる部分の温度を高めることができる。
【0049】
これによって、この境界となる部分の雪が溶けて水の層をなすようになり、この水の層が屋根の棟から下のほうに向かって広がっていく。水の層となっている部分に積もっている雪は積雪時には粉雪であったがその後は水分を含んで一体化した氷に近い重い塊となっているので、上述した水の層がある一定範囲まで広がると、全層雪崩のような現象となって屋根の軒先に向かってまとめて落下していく。
【0050】
このようにして屋根の雪降ろし作業を実際に屋根の上で行うことなく完了することができる。そのため、今まで問題となっていた屋根の上での雪下ろし作業中の軒先からの転落事故を防ぐことができる。
【0051】
図5は、本発明に係る屋根の雪下ろし装置を2階建ての家屋に取り付けた状態を概略的に示す側面図である。同図に示すように、特に2階建ての家の屋根の2階部分の棟に本発明に係る屋根の雪下ろし装置を設けることで、地上から非常に高さの高い2階の屋根の雪下ろし作業中の転落事故を防ぐことができ、効果が非常に大きい。
【0052】
なお、上述の各実施形態においては、送風機のリモコンが屋根の軒先とは異なる家の側壁に備わっているので、雪下ろし時に軒先から落下してくる湿って一体化した雪の塊から身を守りながら、屋根の上の雪下ろし状態を観察しつつ雪下ろし作業を行うことができる。
【0053】
以上説明した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置によると、上述した発明は解決すべき課題の欄で述べた問題点を全て解決することができる。即ち、本発明に係る屋根の雪下ろし装置によると、コストが安く簡単に設置でき、かつ設置後に季節によって取外す必要がなく、更には雪下ろしに際して少ない電力で効果的に屋根の雪下ろしを行うことが出来る。
【0054】
最後に本発明に係る屋根の雪下ろし装置の上述の別の使用方法について説明する。この屋根の雪下ろし装置によると、屋根に雪は降り積もって降雪がやんだ後、一般的に行う天気の良い日だけの使用に限らず、雪が降り始めたときからも使用可能である。
【0055】
この別の使用方法においては、雪が降り始めた時本発明に係る屋根の雪下ろし装置を使用する。屋根にかなり雪が積もる地域において降る雪は水気を含まない粉雪であるため、雪が降り始めたときに上述した第1の実施形態に係る屋根の雪下ろし装置を作動させてパイプ本体の空気吹き出し孔から屋根の棟の近くの一定領域に空気を吹き付けるようにする。これによって、この領域に舞い降りてくる粉雪が空気で吹き飛ばされてこの領域に雪はほとんど積もらなくなる。
【0056】
本発明の送風機は、空気を送風するだけなので、水を温めて温水にするような加熱装置と異なり、低消費電力で長時間動かしても電気代はそれほどかからない。そのため、雪は降っている間中、本発明の送風機を作動させていれば、少なくとも屋根の棟の近くの一定領域においては雪が積もらなくなる。
【0057】
その結果、屋根の上に登って雪下ろしをする場合であっても、屋根の棟の近くの雪が全く積もっていない領域に立ちながらそれより下方に積もった雪の塊を押し下げて屋根の軒下に雪を落とすことができる。これによって、積もった雪と共に屋根から地上に落下するような危険性をなくすことができる。
【0058】
一方、本発明の送風機による送風量をかなり多くすれば、パイプ本体の空気吹き出し孔から空気が勢いよく噴き出し、屋根全体に粉雪が舞い降りるのを防いで屋根の上の積雪をなくすか、晴れた日の太陽光で自然に溶けてしまう程度の積雪量とすることも可能である。
【0059】
図6は、図5において人70が実際に2階の屋根に登って雪下ろしをしている状態を概略的に示す側面図である。同図においては、例えば豪雪により地域の一部が停電してしまい送風機による送風が行えなくなった場合に人が屋根の上に登って雪下ろしをする状態を示している。この場合、ロープ71を用意してその一端をパイプ本体の所定箇所にしっかりと結び付けるか、若しくは長手方向にある程度移動可能なようにしっかりと結びつけ、その他端を雪下ろしする人の腰やお腹に巻き付けて腰紐代りにすれば、パイプ本体が腰紐の支持軸の代わりとなって安全に雪下ろし作業を行うことができる。このように本発明は、実際に屋根に登って雪下ろし作業を行う際に於様々な特別な付加的効果も有している。
【0060】
なお、上述した各実施形態は本発明を実施するためのあくまで一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲内であれば様々な変形例が考えられる。例えば、加熱手段としての電気ヒーターは空気の流れ方向で見て送風機の下流側に連結して設けたが、これとは異なり送風機の上流側に連結して設けても良い。
【0061】
また、上述の実施形態においては、屋根の棟の両側に空気を吹き出すようにしたが、片側の屋根が日当りに優れてすぐに自然に積もった雪が溶けてしまう一方、反対側の屋根の日当たりが悪く、雪は積もると固まってしまい屋根にへばり付いて屋根の上での雪下ろし作業が難儀になる場合においては、屋根の棟からこの反対側の屋根に向かってのみ空気を吹き出すようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
10,20 屋根の雪下ろし装置
50 屋根
51,52 近傍領域
55 棟
70 人
71 ロープ
100 パイプ本体
101,102 端部
111,112,113,・・・(110) 空気吹き出し孔
121,122,123,・・・(120) 空気吹き出し孔
200 パイプ本体
201,202 端部
211,212,213,・・・(210) 空気吹き出し孔
300 送風機
401,402,403(400) パイプ支持部
350 リモコン
501,502,503,504,505(500) パイプ支持部
511,512 軸受け
【要約】
【課題】コストが安く簡単に設置でき、かつ設置後に季節によって取外す必要がなく、更には雪下ろしに際して少ない電力で効果的に屋根の雪下ろしを行うことが出来る屋根の雪下ろし装置を提供する。
【解決手段】片側の端部101が閉塞されもう片側の端部102が開口され、複数の空気吹き出し孔110,120が長手方向に所定の間隔で形成されたパイプ本体100と、パイプ本体の開口した一方の端部からパイプ内に空気を供給するための送風機300と、パイプ本体を屋根の棟に沿って延材した状態で固定するパイプ支持部400とを有し、各空気吹き出し孔は、屋根の雪下ろし装置を屋根に設置した状態で、各空気吹き出し孔から吹き出した空気が屋根全体の領域の内、棟55の近傍領域51,52に沿って当たるような向きとなるようにパイプ周面に備わっている。
【選択図】図1
図1
図2
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図4
図5
図6