特許第6188125号(P6188125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188125統合圧縮機及びポンプを備えた単一システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188125
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】統合圧縮機及びポンプを備えた単一システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20170821BHJP
   F04D 13/14 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F25B1/00 396D
   F04D13/14
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-553271(P2012-553271)
(86)(22)【出願日】2011年2月11日
(65)【公表番号】特表2013-519864(P2013-519864A)
(43)【公表日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2011052077
(87)【国際公開番号】WO2011101296
(87)【国際公開日】20110825
【審査請求日】2014年2月3日
【審判番号】不服2016-6074(P2016-6074/J1)
【審判請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】CO2010A000006
(32)【優先日】2010年2月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】サッサネッリ,ジュセッペ
(72)【発明者】
【氏名】ベルティ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ベルガミニ,ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ブレシャーニ,ステファーノ
(72)【発明者】
【氏名】デイアコ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】バンキ,ニコラ
【合議体】
【審判長】 中村 則夫
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−57453(JP,A)
【文献】 特開2003−328998(JP,A)
【文献】 特開2009−174844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B1/00
F04D13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相の流体を加圧し且つ稠密相の流体をポンプ送給するよう構成されたシステムであって、
前記気相の流体を加圧するよう構成され、流体連結する複数のインペラを有する圧縮機部と、
前記圧縮機部に接続され、前記気相の流体を受けるよう且つ前記複数のインペラに流体を提供するよう構成された圧縮機部入口と、
所定密度以上の密度で前記気相の流体を提供するよう構成された圧縮機部出口と、
前記圧縮機部出口に接続され且つ流体を稠密相に変えるよう構成された温度変化装置と、
稠密相の流体をポンプ送給するよう構成された少なくとも1つのインペラを有するポンプ部と、
前記圧縮機部出口から前記温度変化装置を経て稠密相の流体を受けるよう構成されたポンプ部入口と、
前記システムから稠密相の流体を出力するよう構成されたポンプ部出口と、
所定速度で軸方向軸線の周りを回転するよう構成された単一のブルギアと、
前記単一のブルギアに接触し、互いに異なる所定速度で回転するよう構成され且つ各々が対応する圧縮機部インペラを作動させるよう構成されている複数のピニオンと、
前記ポンプ部から延び且つ前記単一のブルギアに係合して前記ポンプ部の少なくとも1つのインペラを回転させるよう構成されたポンプシャフトと、
を備え、
前記圧縮機部の少なくとも1つのインペラが、前記ポンプ部の少なくとも1つのインペラとは異なる速度を有し、稠密相は、前記所定密度よりも高い密度を有する流体によって定められ、
前記稠密相が、前記流体はガスであるが、ポンプで送給されるときには液体のように振る舞うほど高密度の相である、
システム。
【請求項2】
前記温度変化装置が、冷却装置、チラー、又は膨張器のうちの1つであり、前記圧縮機部出口と前記ポンプ部入口との間に設けられ、前記流体がCO2であり、前記圧縮機部が、気相のCO2を受け取り且つ気相のCO2を放出するよう構成され、前記ポンプ部が、稠密相のCO2を受け取り且つ稠密相のCO2を放出するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記温度変化装置が、気相の流体のエンタルピーを前記流体の臨界点のエンタルピー以下にまで低減するよう構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ブルギアを駆動する単一の駆動機構を更に備える、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記圧縮機部及び前記ブルギアを収容するよう構成された圧縮機ケーシングと、
前記ポンプ部を受けるよう構成されたポンプケーシングと、
を備え、
前記ポンプケーシングが前記圧縮機ケーシングに取り付けられる、
請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
N個の圧縮機インペラ及びM個のポンプインペラと、
前記気相の入力流体が前記N個の圧縮機インペラ全てを直列に通って駆動されるように前記N個の圧縮機インペラの出力及び入力を接続する配管と、
N番目の前記圧縮機インペラからの気相の流体が、相変化を受けた後にM個のポンプインペラ全てを直列に通って駆動されるように、前記M個のポンプインペラにN番目の前記圧縮機インペラの出力を接続する配管と、
圧縮機又はポンプインペラの出力と、次の圧縮機又はポンプインペラの入力との間に設けられる水除去装置と、
気相又は稠密相の流体の温度を次の圧縮機又はポンプインペラに流入する前に低下させるよう構成された、前記配管に沿った少なくとも1つの温度変化装置と、
を更に備え、
Nは2よりも大きく、Mは1以上である、
請求項1からのいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
6つの圧縮機インペラと8つのポンプインペラがあり、気相のCO2の前記圧縮機部における入力圧力が1barであり、稠密相のCO2の前記ポンプ部における出力圧力が10と120barの間である、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
圧縮機部及びポンプ部を含み、該圧縮機部が少なくとも1つの圧縮機部インペラを有し、前記ポンプ部が少なくとも1つのポンプ部インペラを有するシステムによって気相の流体を加圧し、稠密相の流体をポンプ送給するための方法であって、
前記圧縮機部の圧縮機部入口において気相の流体を受け取るステップと、
前記気相の流体を前記圧縮機部の1つ又はそれ以上の段において加圧、所定密度以上の密度で気相の流体として前記圧縮機部の圧縮機部出口に出てくるようにするステップと、
前記流体を前記圧縮機部から流出した後に冷却することにより前記流体の相を稠密相に転換するステップと、
前記ポンプ部のポンプ部入口にて前記稠密相の流体を受けるステップと、
前記ポンプ部の1つ又はそれ以上の段を通って前記稠密相の流体をポンプ送給し、前記ポンプ部入口よりも高い圧力を有する前記ポンプ部のポンプ部出口において前記流体が出てくるようにするステップと、
単一のブルギアを回転させて、少なくとも1つ又はそれ以上の圧縮機段及び少なくとも1つ又はそれ以上のポンプ段の全てを作動させるようにするステップと、
を含み、
前記稠密相は、前記所定密度よりも高い密度を有する流体により定義され、
前記稠密相が、前記流体はガスであるが、ポンプで送給されるときには液体のように振る舞うほど高密度の相である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題の実施形態は、全体的に、方法及びシステムに関し、より詳細には、所与の流体を圧縮及びポンプ送給するための単一のシステムにおいて圧縮機部とポンプ部とを統合する機構及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この数年間、石油化学製品への依存が増大したことは、汚染物質(例えば、CO2)エミッションの大幅な増加をもたらしただけでなく、オイル及びガス派生製品を処理するのに使用されるより多くの圧縮機、ポンプ、及び他の機械を有することも必要となった。
【0003】
例えば、発電分野においては、多大な量のCO2エミッションが生成される。世界中の人々が汚染エミッションに対して敏感になっており、政府は、環境に対するこれらのエミッションにペナルティーを科すシステムへと動いているので、汚染量を低減する技術、いわゆる環境保全技術(green technologies)の開発がかってないほどますます重要になっている。
【0004】
別の分野である、原油の二次回収(EOR、油田から抽出できる原油の量を増大させるための技術に関する)において、CO2及び/又はCO2混合気をより効率的で信頼性のある方法で輸送する必要性も産業及び環境にとって重要である。EORによれば、CO2及び/又はCO2混合気は、地下にポンプ送給して石油を取り出すために、貯蔵設備から陸上又は海上の何れかの掘削場所に提供される。従って、この分野では、CO2及び/又はCO2混合気の輸送は重要である。
【0005】
発電においては、CO2エミッションの削減は、この流体が高分子量を有し、周囲温度での臨界点が極めて低い圧力(74bar)であるので困難である。通常は気体として生成されるCO2を除去するためには、CO2は、発電プラントからの排出ガス中に存在する他の汚染物及び/又は物質から分離される必要がある。このステップは、従来から捕捉と呼ばれている。CO2の捕捉後、ガスは、所定圧力に達するまで加圧され、冷却して気相から稠密相(例えば、液相)に変化させ、次いで、この稠密相の状態で貯蔵場所まで輸送される。以下で検討するように、稠密相は、流体のタイプ、液体中の不純物の量、及び他のパラメータによって決まる。しかしながら、液体の正確な組成が既知でない限り、一般に流体の稠密相について定量的に記述できる固有のパラメータは存在しない。同じプロセスをEORにおいて用いることができ、CO2及び/又はCO2混合気は、捕捉された後、加圧され、再注入のための所望の場所に輸送される必要がある。
【0006】
従って、従来は、捕捉段階の後、圧縮機を用いて初期の気相のCO2を稠密相又は液体相にする。その後、CO2は、稠密又は液相の流体を再注入のための貯蔵設備又は別の所望の場所に輸送するポンプに送給される。ポンプ及び圧縮機が効率的に処理するために、圧縮機及びポンプの効率は圧力及び温度の影響を受けやすいので、気相及び稠密/液相のCO2の一定の圧力及び温度を達成しなければならない点に留意されたい。従って、従来の圧縮機及びポンプは、精密な相のCO2が圧縮機からポンプに移送されるように、互いに対して微調整をする必要がある。しかしながら、圧縮機及びポンプは従来、異なる供給者により製造されているので、これら2つの要素のマッチングは時間がかかり、製造者間の多大な協働を必要とする。更に、独立した圧縮機と独立したポンプを使用する既存のシステムは、占有面積が大きく、高価になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、前述の問題及び欠点を回避したシステム及び方法を提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの例示的な実施形態によれば、気相の流体を加圧し且つ稠密相の流体をポンプ送給するよう構成されたシステムが提供される。本システムは、気相の流体を加圧するよう構成された少なくとも1つのインペラを有する圧縮機部と、圧縮機部に接続され、気相の流体を受けるよう且つ少なくとも1つのインペラに流体を提供するよう構成された圧縮機部入口と、所定密度以上の密度で気相の流体を提供するよう構成された圧縮機部出口と、圧縮機部出口に接続され且つ流体を稠密相に変えるよう構成された温度変化装置と、稠密相の流体をポンプ送給するよう構成された少なくとも1つのインペラを有するポンプ部と、圧縮機部出口から稠密相の流体を受けるよう構成されたポンプ部入口と、システムから稠密相の流体を出力するよう構成されたポンプ部出口と、所定速度で軸方向軸線の周りを回転するよう構成された単一のブルギアと、単一のブルギアに接触し、互いに異なる所定速度で回転するよう構成され且つ各々が対応する圧縮機部インペラを作動させるよう構成されている複数のピニオンと、ポンプ部から延び且つ単一のブルギアに係合してポンプ部の少なくとも1つのインペラを回転させるよう構成されたポンプシャフトと、を含む。圧縮機部の少なくとも1つのインペラが、前記ポンプ部の少なくとも1つのインペラとは異なる速度を有し、稠密相は、前記所定密度よりも高い密度を有する流体によって定められる。
【0009】
別の例示的な実施形態によれば、圧縮機部及びポンプ部を含み、該圧縮機部が少なくとも1つの圧縮機部インペラを有し、ポンプ部が少なくとも1つのポンプ部インペラを有するシステムによって気相の流体を加圧し、稠密相の流体をポンプ送給するための方法が提供される。本方法は、圧縮機部の圧縮機部入口において気相の流体を受け取るステップと、気相の流体を圧縮機部の1つ又はそれ以上の段において加圧、所定密度以上の密度で気相の流体として圧縮機部の圧縮機部出口に出てくるようにするステップと、流体を圧縮機部から流出した後に冷却することにより流体の相を稠密相に転換するステップと、ポンプ部のポンプ部入口にて稠密相の流体を受けるステップと、ポンプ部の1つ又はそれ以上の段を通って稠密相の流体をポンプ送給し、ポンプ部入口よりも高い圧力を有するポンプ部のポンプ部出口において流体が出てくるようにするステップと、単一のブルギアを回転させて、少なくとも1つ又はそれ以上の圧縮機段及び少なくとも1つ又はそれ以上のポンプ段の全てを作動させるようにするステップと、を含む。稠密相は、所定密度よりも高い密度を有する流体により定義される。
【0010】
別の例示的な実施形態によれば、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読媒体が提供され、本命令は、実行時に、圧縮機部及びポンプ部を含み、該圧縮機部が少なくとも1つの圧縮機部インペラを有し、ポンプ部が少なくとも1つのポンプ部インペラを有するシステムによって気相の流体を加圧し、稠密相の流体をポンプ送給するための方法を実施する。本方法は、種々の段落に記載されるステップを含む。
【0011】
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する添付図面は、1つ又はそれ以上の実施形態を例証しており、本明細書と共にこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例示的な実施形態による、統合された圧縮機及びポンプを有するシステムの全体図。
図2】例示的な実施形態による、統合された圧縮機及びポンプを有するシステムの概略図。
図3】例示的な実施形態による、一定の温度及び圧力で圧縮機により加圧されポンプによりポンプ送給される流体の位相図。
図4】例示的な実施形態による、圧縮機部を作動させるブルギアに接続されたポンプ部の概略図。
図5】例示的な実施形態による、統合された圧縮機及びポンプを有するシステムの側面図。
図6】例示的な実施形態による、システムのポンプ部の概略図。
図7】統合された圧縮機及びポンプ並びに冷却システムを有するシステムの概略図。
図8】例示的な実施形態による、流体を圧縮及び輸送するための方法を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態の以下の説明は添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は同じ又は同様の要素とみなされる。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の範囲は添付の請求項によって定義される。以下の実施形態は、簡単にするために、CO2用に使用される圧縮機及びポンプの用法及び構造に関して検討する。しかしながら、以下で検討することになる実施形態は、この流体に限定されず、他の流体にも適用することができる。
【0014】
本明細書を通して「1つの実施形態」又は「実施形態」としての表現は、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて様々な箇所で表現「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」が出現するが、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではない。更に、具体的な特徴、構造、又は特性は、1つ又はそれ以上の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせてもよい。
【0015】
例示的な実施形態によれば、圧縮機部及びポンプ部を含む単一システムがある。単一システムは、気相の流体を入力として取り込み、これを稠密相(又は液相)の流体に変換して、稠密相の流体を所望の場所に輸送するよう構成される。稠密相は、流体の密度、圧力、及び温度によって定義することができる。各流体に対して予め定められる密度は、とりわけ、流体の組成によって決まる。稠密相の流体は、気体とすることができるが、ポンプ送給されるときには液体のように振る舞うほど高密度である点に留意されたい。この理由から、稠密相又は液相の流体をポンプ部に供給するのが望ましい。システムは、圧縮機部及びポンプ部の両方を駆動する単一のブルギアを有することができる。このようなシステムは、圧縮機段及びポンプ段の両方がブルギアの周りに形成されるので、独立型圧縮機と独立型ポンプを含む従来のシステムよりも小さな占有面積を有することができる。本システムはまた、独立型圧縮機及び独立型ポンプよりも使用する電力を少なくすることができる。本システムは、例えば、圧縮機からの気相の流体をポンプ部に供給する前に冷却して稠密相にするために、圧縮機部とポンプ部との間に設けられる1つ又はそれ以上の冷却装置を用いることができる。他の冷却装置は、任意選択的に、圧縮機部及び/又はポンプ部の種々の段の間に設置することができる。図1に示す例示的な実施形態によれば、統合システム10は、圧縮機部12とポンプ部14とを含む。圧縮機部12はケーシング16内に収容される。ケーシング16内部には、とりわけ、単一のブルギア20及び1つ又はそれ以上のピニオン22を含むギアボックス18がある。1つの用途では、ギアボックス18はケーシング16の外部に設けてもよい。各ピニオン22は、対応する圧縮機インペラに接続される対応するシャフト24に取り付けることができる。シャフト23は、一方の端部でブルギア20に直接、又は1つ又はそれ以上のピニオン25又は他の同等の機構を介して接続され、シャフト23の他方の端部がポンプ部14に入り、ポンプ部中に存在する1つ又はそれ以上の段を作動させるようにする。ギア26は、ブルギア20と、ピニオン22の1つ又はそれ以上との間に設けることができる。例示的な実施形態によれば、圧縮機部の段は、ホイールのハブの周りのスパイクのようにブルギア20の周りに分散されるが、ポンプ部14は、図示のようにシャフト23に沿ってインラインで分散され、これは、圧縮機及びポンプの段が全て共通シャフトに沿って分散されるインライン構成とは異なる。図1に示す構成と、インライン構成との別の相違点は、システム10の段がこれら独自の回転速度を有することができるが、インライン構成の段は全て単一の回転速度を有することである。
【0016】
圧縮機部12は、例えば、所望の流体を駆動する複数のインペラなど、複数の段を含むことができる。1つの用途において、圧縮機部12は、遠心圧縮機であり、圧縮機インペラ及び対応する圧縮機段の数は1つ又はそれ以上とすることができる。例示的な実施形態によれば、圧縮機インペラは、遠心力によって流動する流体を加速するよう選択され、その結果、圧縮機部12が遠心圧縮機として機能するようになる。例えば、図1に示す実施形態は、6つの段30−1〜30−6を示しており、各々が対応する圧縮機インペラを有する。各段は、入口と出口とを有する。圧縮機部12は、全体的圧縮機部入口32と全体的圧縮機部出口36とを有する。圧縮機部入口32は、気相の流体を受けるよう構成され、圧縮機部全体的出口35は、増大した圧力及び/又は密度の気相の流体を提供するよう構成される。例えば、入力圧力は1barとすることができ、出力圧力は、10〜1000barの間とすることができる。1つの用途において、出力圧力は、10〜120barの間とすることができる。出力密度は、0と5%の間の比較的低い不純物含有量を有するCO2が100と500kg/m3の間とすることができる。ポンプ部14はまた、1つ又は複数の段、例えば、稠密又は液体相の流体を駆動する複数のインペラを含むことができる。各段は、入口と出口とを有することができる。ポンプ部14は、全体的なポンプ部入口とポンプ部出口(後で図示)とを有する。ポンプ部入口は、全体的圧縮機部出口36に接続されて、圧縮機部から稠密相の流体を受けるように構成される。ポンプ部出口は、例えば、貯蔵場所に輸送するために所望の圧力で稠密相の流体を吐出するよう構成することができる。例えば、上述の不純物を有するCO2では、400〜800kg/m3の間の密度が、稠密相を特徴付ける所定密度である。換言すると、この特定の純度のCO2では、流体の密度が400〜800kg/m3付近又はそれよりも高く、流体の温度及び圧力が臨界値を上回る場合、流体は稠密相とみなされる。上述のように、この値は、CO2の特定の純度に対して適正であり、従って、この値は流体及びその純度の性質に伴って変化する。
【0017】
図1に示すポンプ部は、圧縮機部12のハウジング16内部に延びたシャフト23を有し、これによりブルギア20がシャフト23を駆動するようになる。従って、ブルギア20の(シャフト21による)回転は、圧縮機段のピニオンの回転だけでなく、ポンプシャフト23の回転、すなわちポンプ部インペラの回転を決定付ける。1つの用途において、圧縮機の段及びポンプの段を作動させるために、ブルギアの代わりに別の機構を用いることもできる。ブルギア20は、所与の速度で回転することができ、各圧縮機インペラは、対応するピニオンのサイズに応じた異なる速度で回転することができる点に留意されたい。しかしながら、ポンプインペラは、インラインで分散され、例えば、ポンプ部インペラは、同じ速度を有する。換言すると、単一のブルギアを使用することにより、圧縮機部及びポンプ部の種々の段は、単一のシステムが入力として気相の流体を受けて、稠密相又は液相の流体を出力するように設計することができる。
【0018】
例示的な実施形態によれば、種々の圧縮機部及びポンプ部の入口及び出口間の接続が図2に示されている。圧縮機部12は、この実施形態では6つの段を含む。しかしながら、上記で検討したように、この数は例示的なものであり、圧縮機部は、各用途の必要に応じてより多く又はより少ない段を含むことができる。圧縮機部12の全体入口32及び全体出口36は、図1に示されている。
【0019】
図2は、圧縮機部12の様々な段間の入口及び出口を示している。例えば、気相の流体が全体入口32に流入した後、第1の段が、出口34−1にて依然として気相の流体を吐出する。出口34−1は、第1の段の出口であり、全体出口36は、最後の段の出口であり且つ圧縮機部12の全体出口である。出口34−1にて増大した圧力及び温度を有する気相の流体は、気相の流体の温度を低減するため温度冷却装置40−1に提供することができる。圧縮機部の種々の段間で使用される冷却装置の数は、用途毎に変えることができる。冷却装置は、クーラー(クーラーは、液体の周りを所望の温度で水又は他の媒体を循環させて液体から熱を除去する装置である)、チラー(チラーは、蒸気圧縮又は吸収冷凍サイクルにより液体から熱を除去する機械である)、又は膨張器(ジュール・トムソン弁とも呼ばれ、機械的トルクを発生させるガスを膨張させることができる装置)とすることができる。
【0020】
図3は、圧力エンタルピーすなわちPh図上での図2の圧力を示している。また、Ph図には定温線が含まれる。定温線は、対応する温度により識別される。例えば、図3は、入口32において温度が25℃で圧力がおよそ1barであり、第1の段の出口34−1では、温度はおよそ120℃まで上昇し圧力がおよそ5barまで増大することを示している。図3に示す数字は、説明の目的であり、検討される実施形態の適用性を限定する意図はない。簡単にするために、図2の入口と出口に使用した参照符号は、これらの対応する温度及び圧力を示すために図3においても使用している。更に図3に関して、冷却装置40−1は、第2の段の入口32−2に流入する前に、第1の段の後の流体の温度を約120℃から約25℃まで低下させることができる。分離装置42−1は、第1の段の出口34−1と第2の段の入口32−2との間に接続され、加圧されたCO2流体から水(又は他の液体)を除去することができる。分離装置の数は、2つの隣接する各段の間に1つから、用途に応じてゼロまで変えることができる。第2の段は、出口34−2において依然として気相の流体を放出し、任意選択の第2の温度冷却装置40−2を通過した後、ガスは、第3の段の入口32−3に達する。気相の流体は、全体出口36から高圧で流出するまで、段から段まで、例えば、要素34−3、32−4、34−4、32−5、34−5、及び32−6を連続して通過する。図3は、ドーム50に近接しているがその外部にある気相の流体の温度及び圧力が維持されるのを示している。例示的な実施形態によれば、圧縮機部12は、流体がドーム50に流入することにより圧縮機の性能を低下させ、又は損傷を及ぼす結果となる可能性があるので、この流体のドーム50への流入を阻止することにより、気相の流体を処理するよう設計することができる。
【0021】
流体、この場合はCO2の臨界点52は、ドーム50の上部に示されており、その例示的な基準圧力及び温度値が図3に記載されている。臨界点は、流体の相間の境界が消滅する点である。臨界点よりも高い圧力及び温度を有する点は、超臨界相を形成する。例示的な実施形態によれば、稠密相は超臨界相である。しかしながら、以下で検討するように、稠密相は、超臨界相の点のサブセットを形成する点を含むことができる。(圧縮機内で)最も高い圧力を有して圧縮機部12から出る気相の流体は、図3の点36に達し、次いで、この流体は、ポンプ部14の入口60−1に提供される。ポンプ部は、気相ではなく、稠密相又は液相の流体で作動するよう設計されており、従って、圧縮機部12からの気相の流体は、稠密相又は液相に達するよう更に処理しなければならない点に留意されたい。
【0022】
流体を気相から稠密相に移送するプロセスは、各圧縮機段の速度、各段の流体の温度及び圧力、並びにドーム50に対する流体の温度及び圧力の調整と相関性がある。図3は、各圧縮機段後の温度を次の圧縮機段に合わせて調整(低下)させ、必要な圧縮機の仕事量を低減しながら圧縮機効率をどのように向上させるかを示しており、また、圧縮機部12の全体出口での気相の流体の温度がポンプ部14の入口に合わせてその相を変化させるのに適切な温度までどのように冷却されるかを示している。例示的な実施形態によれば、気相から稠密相への相転移は、例えば、圧縮機部12とポンプ部14との間の冷却装置40−6にて区間54に沿って行われる。1つの用途において、流体の温度は、図3に示すように、ポンプ部に提供される流体のエンタルピーが臨界点52におけるエンタルピーよりも小さいように変わる。図3は、CO2流体の所定密度に相当する一定密度ライン55を示している。上述のように、気相の加圧された流体は、稠密相に入るために曲線55と交差する必要がある。例証として、95%以上のCO2純度では、所定密度曲線55は、400〜800kg/m3の範囲の一定密度によって特徴付けられる。所定密度は、用途、ポンプの特性、流体のタイプ、流体の不純物、環境、その他に応じて変化することができる。例示的な実施形態によれば、稠密相は、所定密度よりも大きい密度を有する超臨界相に存在する点のみを含む。
【0023】
図2は、温度冷却装置40−6が圧縮機部12の最終段とポンプ部14の第1の段との間に挿入され、気相から稠密相に変化している間の流体の温度を制御できることを示している。ポンプ入口圧力は所与の圧力において流体入口温度に依存し、また、ポンプを駆動するための所要出力を決定付けるので、この機能により、ポンプ部のオペレータが当該流体温度を微調整することが可能になる。ポンプ部に提供されることになる流体の圧力は、圧縮機部12によって制御され、ポンプ部に提供されることになる流体の温度は、冷却装置40−6によって制御される。
【0024】
更に、図2は、圧縮機部の段はペアにされ、例えば、第1の段が第2の段とペアにされ、ブルギア20と接触した対応するピニオンによって回転される単一のシャフト24−1を有することができることを概略的に示している。更に、図2は、ブルギア20が圧縮機部12の全てのピニオン及びポンプ部14の全ての段に回転運動を伝達できることを示している。加えて、図2は、1つの駆動部59がブルギア20を駆動し、駆動部59が圧縮機部を収容するケーシングの外部に配置できることを示している。図2はまた、ポンプ部14が同じブルギア20によって駆動されることを示している。例示的な実施形態によれば、ブルギア20に対する圧縮機部及びポンプ部の段間の接続が図4に示されており、これはシステム10の概略図である。図4は、6つの段30−1〜30−6を有する圧縮機部12を示し、各々がブルギア20に接続され、ブルギア20に接続された単一のシャフト23を有する。図5は、駆動部5と反対側の側部からの圧縮機ポンプ段とポンプ部間の配管接続を示している。図1からの参照符号は、同じ要素に対して図4及び5で使用されており、従って、これらの要素の説明はここでは繰り返して行わない。駆動部59は、電気モータ、ガスタービン、ターボ機械、その他とすることができる。例示的な実施形態によれば、1つの駆動部のみを用いて圧縮機部とポンプ部の両方を駆動する。別の例示的な実施形態において、駆動部は、圧縮機部及びポンプ部を収容するケーシングの外部か、或いはケーシングの内部に設けることができる。
【0025】
ポンプ部14は、図6に示す例示的な実施形態によれば、10個の段を有するように実施することができる。用途に応じてより多くの又はより少ない段を実施することができる。第1の段は、稠密相の流体を受ける入口60−1と、第2の段に流体を吐出する出口(番号表記なし)とを有する。第2の段の入口は、第1の段からの流体を受け入れ、第2の段は、流体が10番目の段の全体出口36(ポンプ部14の全体出口でもある)に達するまで次の段に流体を吐出する。例示的な実施形態によれば、ポンプ部インペラは、同じシャフト23に接続され、従って、これらは同じ速度出回転する点に留意されたい。ブルギア20の速度に対するポンプ部インペラの速度は、接続しているピニオン25のサイズによって決まる。例示的な実施形態によれば、ポンプは、少なくとも8つの段を有する。加えて、ポンプ部は、他の装置、例えば、稠密相の流体の温度を低下させるための冷却装置を含むことができる。ポンプ部は、ポンプケーシング64内に収容される。ポンプケーシング64は、圧縮機ケーシング16に取り付ける(ボルト締めする)ことができ、或いは、圧縮機ケーシング16と一体的に作ることもできる。ギアボックス18は、圧縮機ケーシング16内、ポンプケーシング64内、2つのケーシングの間、或いは両方のケーシング内に配置することができる。
【0026】
同じシステム及び/又は同じスキッド内に一体化された圧縮機部及びポンプ部を有すること、また、圧縮機及びポンプの種々の段を駆動する単一のブルギアを有することにより、1つ又はそれ以上の実施形態は、圧縮機の出力をポンプの入力と一致させ、圧縮機からの気相の流体がポンプにおいて稠密相又は液相の流体に円滑に転移するように、システムオペレータが圧縮機及びポンプを特注する必要がないという利点を有することができる。換言すると、圧縮機部及びポンプ部の単一の製造業者が特定の流体(例えば、CO2)を効率的に扱うように圧縮機及びポンプの性能を一致させることにより、システムのオペレータは、第1の供給者によって製造された圧縮機を第2の供給者によって製造されたポンプに特定の流体に合わせて適切に一致させる問題から解放される。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態の他の利点は、統合された圧縮機及びポンプ部によって使用される出力の低減、駆動機構の簡素化、構成要素の削減(2つの駆動部ではなく1つの駆動部)、圧縮機部とポンプ部が同じギアによって駆動されるときのこれら両方の同期の改善、統合システムの占有面積の低減、及び圧縮機部とポンプ部が同じ製造業者によって提供されることによる保守時間及びコストの低減に関連する。
【0028】
例示的な実施形態によれば、圧縮機部及び/又はポンプ部における様々な段での流体の温度制御は、制御装置に組み込まれたプロセッサによって達成することができる。例えば、図7に示すように、制御ユニット70は、少なくとも1つのプロセッサ72を含み、該制御ユニットは、システム10に設けられた種々のセンサ74に接続される。この接続は、図7に示すように無線接続か、配線接続、或いはこれらの組み合わせとすることができる。センサ74は、温度センサ、圧力センサ、ブルギア用の速度センサ、及び圧縮機部及びポンプ部を監視するのに当該技術分野での使用が公知である他のセンサを含むことができる。制御ユニット70は、ソフトウェア命令がプログラムされることができ、或いは、ハードウェア内に実装されて圧縮機及びポンプ段の圧力及び温度を監視し、又は所望の温度に流体を冷却するよう冷却装置を制御することができる。例示的な実施形態によれば、ルックアップテーブル又は図3に示すようなグラフをプロセッサ72にリンクされたメモリ76内に記憶し、プロセッサ72が、システム10内の流体の位置、ブルギアの速度、及び/又は流体圧力に基づいて流体を何度まで冷却すべきかを決定できるようにすることができる。加えて、プロセッサ72は、圧縮機部の流体及びポンプ部の流体が図3に示したドーム50の下方の領域に達しないようにシステム10を制御することができる。また、プロセッサ72は、流体がポンプ部に流入する前に流体の相を変更するよう構成することができる。
【0029】
図8に示す例示的な実施形態によれば、圧縮機部及びポンプ部を含み、該圧縮機部が少なくとも1つの圧縮機部インペラを有し、ポンプ部が少なくとも1つのポンプ部インペラを有する、システムによって気相の流体を加圧し、稠密相の流体をポンプ送給するための方法が提供される。本方法は、圧縮機部の圧縮機部入口において気相の流体を受け取るステップ800と、気相の流体を圧縮機部の1つ又はそれ以上の段を通じて押し出し、流体が増大した密度で気相の流体として圧縮機部の圧縮機部出口に出てくるようにするステップ802と、ある相の流体を稠密相に変換するステップ804と、ポンプ部のポンプ部入口にて稠密相の流体を受けるステップ806と、ポンプ部の1つ又はそれ以上の段を通って稠密相の流体を駆動し、ポンプ部入口よりも高い圧力を有するポンプ部のポンプ部出口において流体が出てくるようにするステップ808と、単一のブルギアを回転させて、少なくとも1つ又はそれ以上の圧縮機段及び少なくとも1つ又はそれ以上のポンプ段の全てを作動させるようにするステップ810と、を含む。稠密相は、増大した密度よりも高い密度を有する流体によって定められる。

【0030】
開示された例示的な実施形態は、気相の流体を加圧し、稠密相又は液相の流体を輸送するシステム及び方法を提供する。本明細書は本発明を限定することを意図していない点を理解されたい。逆に、例示的な実施形態は、添付の請求項によって定義される本発明の技術的思想及び範囲に含まれる、代替形態、修正形態、及び均等形態を保護するものとする。更に、例示的な実施形態の詳細な説明において、請求項に記載された本発明を包括的に理解するために多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、種々の実施形態はこのような具体的な詳細事項がなくとも実施できる点は当業者であれば理解されるであろう。
【0031】
本発明の例示的な実施形態の特徴及び要素は、特定の組み合わせで実施形態において説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を伴わず単独で、或いは本明細書で開示される他の特徴及び要素の有無に関わりなく種々の組み合わせで用いることができる。本明細書は、開示される主題の実施例を用いて、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0032】
10 統合システム
12 圧縮機部
14 ポンプ部
16 ケーシング
20 単一のブルギア
22 ピニオン
18 ギアボックス
24 シャフト
23 シャフト
25 ピニオン
26 ギア
30−1〜30−6 6つの段
32 全体入口
36 全体出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8