(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料を燃焼させて回転動力をクランク軸より出力するエンジンと、発電機とモータの機能を有し前記エンジンのクランク軸に連結されたモータジェネレータと、前記クランク軸に連結されたインペラを有するポンプと、前記エンジンおよび前記モータジェネレータを制御可能な制御手段とを備えた複数のエンジンポンプを、ホースを介して直列に接続した流体移送システムであって、
前記複数のエンジンポンプの各制御手段は、
各々前記ポンプに設けられている流量センサおよび圧力センサからの信号に基づいて前記ポンプの仕事量を演算して、エンジンに余力があるか否かを判断し、
エンジンに余力があるエンジンポンプのモータジェネレータは発電機として動作させてエンジンに余力のないエンジンポンプへ電力を送り、
エンジンに余力のないエンジンポンプのモータジェネレータはモータとして動作させてエンジンによる前記インペラの回転駆動を補助するように構成されていることを特徴とする流体移送システム。
ケーブルを介して前記複数のエンジンポンプにそれぞれ接続された充放電可能な共通バッテリを備え、前記制御手段によりエンジンに余力があると判断されたエンジンポンプのモータジェネレータは発電機として動作されて前記共通バッテリへ電力を送って充電させ、エンジンに余力がないと判断されたエンジンポンプのモータジェネレータは前記共通バッテリから電力の供給を受けてモータとして動作されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体移送システム。
前記複数のエンジンポンプにはそれぞれ充放電可能なバッテリがそれぞれ設けられ、前記複数のエンジンポンプは互いにケーブルを介して電力の受け渡しが可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流体移送システム。
前記モータジェネレータはアキシャルギャップ型モータジェネレータであり、前記モータジェネレータおよび前記インペラが前記クランク軸に直結されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流体移送システム。
前記モータジェネレータと前記インペラは、前記エンジンのシリンダを挟んで前記クランク軸の反対側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の流体移送システム。
【背景技術】
【0002】
従来、
図1に示すように、複数のエンジンポンプ10を、ホース30を介して直列につなぎ、遠距離の液体搬送を可能とする中継送水システムが知られている。例えば、山林火災あるいは火災現場が消防水利から遠く離れている場合の長距離送水消化活動においては、消防ホース内を流れる水の摩擦抵抗のため、1台の可搬消防ポンプでは、消化活動に必要な水量,水圧が得られない。そこで、可搬式の消防ポンプを必要に応じて複数台、直列に接続して長距離送水を行うことがある。
【0003】
ところで、複数のエンジンポンプを直列につなぎ遠距離の送水を行う中継送水システムにおいては、ポンプを置く場所の高低差や各ポンプの能力差により、ポンプ間で吐出圧や流量がアンバランスになることがある。
そこで、従来は、各エンジンポンプのスロットルバルブの開度を調整することで、各ポンプ間の能力を合わせ、送水効率を高めることが行われていた。しかし、この方法は、終端での送水量が、最も能力の低いポンプに制約されてしまうとともに、各ポンプのスロットルバルブの開度を一つずつ調整しなければならないため、時間と労力を要するという問題がある。
【0004】
そこで、各ポンプにコントローラと操作盤を設けるとともに、各ポンプにコントローラ間を有線通信線で接続して、1つのポンプの操作盤から他のポンプのコントローラへ指令を送って、圧力や流量を制御できるようにした発明がある(特許文献1)。
また、1つの消防ポンプに、有線通信線を介して異なる場所に配置された複数のコントローラを接続してネットワークを構築し、任意のコントローラからポンプへ指令を送って圧力や流量を制御できるようにした発明も提案されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載されている発明は、ホースを介して複数のエンジンポンプを直列につなぐ中継送水システムにおける遠隔操作性を向上させることはできる。しかし、終端での送水量が、最も能力の低いポンプに制約されてしまうという問題は解決できないとともに、中継送水システム全体でのエネルギー効率を向上させることができないという課題がある。
【0007】
なお、モータを駆動源とする汲み上げポンプにおいて、主モータとは別個に発電機能を有するモータジェネレータ(補助モータ)を設けて、大きな電力を必要とする始動時には、主モータと補助モータを作動させる。そして、定常状態では、補助モータでの発生トルクまたは回生ブレーキトルクの調整によってインペラ軸の駆動力の調整を行うことで効率を高めるようにした汲み上げポンプの発明も提案されている(特許文献3)。しかし、特許文献3に記載されている発明は、モータを駆動源とするポンプの発明であるとともに、1つのポンプにおける効率向上に関するものである。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、終端での送水量が、最も能力の低いポンプに制約されることのない中継送水技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、中継送水システム全体でのエネルギー効率を向上させることができる中継送水技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
燃料を燃焼させて回転動力をクランク軸より出力するエンジンと、発電機とモータの機能を有し前記エンジンのクランク軸に連結されたモータジェネレータと、前記クランク軸に連結されたインペラを有するポンプと、前記エンジンおよび前記モータジェネレータを制御可能な制御手段とを備えた複数のエンジンポンプを、ホースを介して直列に接続した流体移送システムにおいて、
前記複数のエンジンポンプの各制御手段は、
各々前記ポンプに設けられている流量センサおよび圧力センサからの信号に基づいて前記ポンプの仕事量を演算して、エンジンに余力があるか否かを判断し、
エンジンに余力があるエンジンポンプのモータジェネレータは発電機として動作させてエンジンに余力のないエンジンポンプへ電力を送り、
エンジンに余力のないエンジンポンプのモータジェネレータはモータとして動作させてエンジンによる前記インペラの回転駆動を補助するように構成した。
【0010】
上記構成によれば、余力があるエンジンポンプではモータジェネレータが発電機として動作されて余力によって発電を行い、発生した電気エネルギーがエンジンに余力のないエンジンポンプへ電力として送られる。そして、余力のないエンジンポンプでは、モータジェネレータがモータとして動作されてエンジンによるインペラの回転駆動を補助するので、終端での移送量が、最もエンジン能力の低いポンプに制約されてしまうことがない。また、エンジンに余力があるエンジンポンプにおいて、最もエンジン能力の低いポンプに合わせて無理にエンジンの出力を落とす必要がないため、システム全体でのエネルギー効率を向上させることができる。
【0011】
ここで、望ましくは、ケーブルを介して前記複数のエンジンポンプにそれぞれ接続された充放電可能な共通バッテリを備え、前記制御手段によりエンジンに余力があると判断されたエンジンポンプのモータジェネレータは発電機として動作されて前記共通バッテリへ電力を送って充電させ、エンジンに余力がないと判断されたエンジンポンプのモータジェネレータは前記共通バッテリから電力の供給を受けてモータとして動作されるように構成する。
【0012】
上記構成によれば、終端での移送量が、最もエンジン能力の低いポンプに制約されてしまうことがない。また、全体して発電量が必要量を上回れば共通バッテリを充電し、発電量が足りなければ共通バッテリから電力の供給を受けることができるため、エネルギー効率を向上させることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記複数のエンジンポンプにはそれぞれ充放電可能なバッテリがそれぞれ設けられ、前記複数のエンジンポンプは互いにケーブルを介して電力の受け渡しが可能に接続するように構成する。
上記構成によれば、終端での移送量が、最もエンジン能力の低いポンプに制約されてしまうことがない。また、各エンジンポンプのバッテリ間がケーブルによって電力の受け渡しが可能に接続されるため、蓄電量が多いバッテリから蓄電量が少ないバッテリ電力を回すことで、各バッテリ間で蓄電量がアンバランスになるのを回避でき、システム全体でのエネルギー効率を向上させることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記制御手段は、前記圧力センサからの信号に基づいて異常圧力の発生を検出した場合には、前記ポンプの仕事量の大小に関わらず、モータジェネレータを
発電機として動作させてエンジンに回生ブレーキをかけるようにする。
これにより、モータによる回生ブレーキをかけた際に発生した電気エネルギーがバッテリに蓄積されるので、エネルギー効率をさらに向上させることが可能となる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記モータジェネレータはアキシャルギャップ型モータジェネレータであり、前記モータジェネレータおよび前記インペラが前記クランク軸に直結されているように構成する。
これにより、エンジンポンプの小型化が可能となる。
【0016】
また、望ましくは、前記モータジェネレータと前記インペラは、前記エンジンのシリンダを挟んで前記クランク軸の反対側にそれぞれ配置されるように構成する。
これにより、クランク軸の前後の重量バランスが良好となり、クラング軸の重量がアンバランスになることによって振動が発生するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、終端での送水量が、最も能力の低いポンプに制約されることのない中継送水システムを実現することができることができる。また、中継送水システム全体でのエネルギー効率を充分に向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施形態について詳しく説明する。
図1は、
図1は、発電機能を備えたエンジンポンプを使用した本発明の実施形態に係る中継送水システムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の中継送水システムは、複数のエンジンポンプ10を、ホース30を介して直列につなぎ、遠距離の液体搬送を可能とする。エンジンポンプ10は、筐体内にガソリンエンジンのような内燃機関およびエンジンに駆動されるポンプ15を内蔵し、筐体の外部に流入口11および吐出口12が設けられている。そして、この流入口11および吐出口12に、それぞれ他のエンジンポンプ10へ送水するためのホース30の端部が係合、接続されている。
【0020】
また、図示しないが、エンジンポンプ10の筐体内には、ガソリンなどの燃料を貯留する燃料タンクやエンジンから排気される排気ガスを消音して外部へ排出するマフラーなどが設けられている。さらに、本実施形態の中継送水システムを構成するエンジンポンプ10は、発電機として機能するとともにモータとしても機能するモータジェネレータおよびバッテリが設けられている。
また、エンジンポンプ10の筐体の外面には、他のエンジンポンプ10との間で電源の融通を行うためのケーブル31を接続するための端子13が設けられている。
【0021】
図2には、本実施形態の中継送水システムを構成するエンジンポンプ10の要部の構成が示されている。
図2に示すように、本実施形態の中継送水システムを構成するエンジンポンプ10は、エンジン14のシリンダ14aの下方に配設されているクランク軸14bの一方の端部(図では右側の端部)に、ポンプ15のインペラ15aが装着されている。また、クランク軸14bの他方の端部(図では左側の端部)には、モータジェネレータ16およびリコイルスタータ17が装着されている。
【0022】
そして、このリコイルスタータ17の近傍に、発電された交流を直流に変換し、さらにその直流を再び交流に変換するインバータを有するインバータユニット18が設けられている。また、インバータユニット18の近傍には、CPUやROM、RAMなどの電子部品からなる制御回路が実装されたコントローラ20が配置されている。
なお、エンジン14は、ガソリンエンジンでもディーゼルエンジンでもよい。
【0023】
ここで、エンジン14により駆動され発電を行うとともにモータとしても動作可能な上記モータジェネレータ16について簡単に説明する。
本実施形態に使用されるモータジェネレータ16は、アキシャルギャップ型モータジェネレータ(以下、アキシャルモータと称する)である。アキシャルモータ16は、複数の磁石が周方向に整列して固定され回転軸に取り付けられている円盤状のロータ16aと、周方向に整列された複数のコイルを有し前記ロータ16aと回転軸方向に所定の間隔をおいて対向配置されたステータ16bとを備える。
図2に示すアキシャルモータは、一対のロータ16aを備え、該ロータ16a間にステータ16bが配置されている。なお、アキシャルモータは、
図2の構成に限定されることはなく、例えば、ロータ16aを一対のステータ16bで挟む構成や、ロータ16aとステータ16bがそれぞれ1つずつとする構成であってもよい。
【0024】
このような構成のアキシャルモータは、回転軸を回転させると、ロータとステータとが相対回転することにより、ロータに固定された磁石とステータに設けられたコイルとによって電磁誘導が生じ、コイルに誘導電流が流れて発電を行う。
アキシャルモータは薄型に構成できるとともに、発電機としてもモータとしても動作することができるため、発電機とモータとを別個に設ける必要がなく、エンジンポンプ全体を小型に構成できるという利点がある。また、アキシャルモータは、コギングトルクが小さいので、モータとして動作させる際の電力ロスを少なくすることができる。
【0025】
さらに、本実施形態で使用するエンジンポンプ10は、クランク軸14bの一方の端部にポンプ15のインペラ15aが装着され、クランク軸14bの他方の端部にはモータジェネレータ16とリコイルスタータ17が装着されている。そのため、一方の端部に集中して装着する場合に比べて、軸にかかる荷重バランスが良好であり、軸荷重のアンバランスに起因する振動を減らすことができる。
また、図示しないが、インペラ15aが装着されている側のクランク軸14bの端部は、PTO軸(パワーテイクオフ)として動力を外部へ取り出せるように構成しても良い。
【0026】
次に、上記エンジンポンプ10におけるコントローラ20を中心とする電気的な制御システムの構成について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、コントローラ20には、筐体の外面の操作パネル等に設けられている始動スイッチ21や、ポンプ15の吐出口側に設けられている流量センサ22、送水圧力を検出する圧力センサ23からの検出信号が入力されている。また、コントローラ20には、ポンプ15のハウジング内に設けられ流入口11に水が来ていることを検出するための水センサ24、エンジンの回転数を検出する回転数センサ25からの検出信号が入力されている。
コントローラ20は、これらのスイッチやセンサからの信号に基づいて、前記モータジェネレータ16やインバータユニット18の他、エンジンのスロットルバルブ26、電源切替え用のスイッチSW1,SW2を制御するように構成されている。
【0027】
具体的には、コントローラ20は、エンジン運転中においては、流量センサ22や回転数センサ25からの検出信号に基づいて、例えば送水圧力または送水量が所望の圧力または量になるように、スロットルバルブ26の開度を調整する。
また、エンジンの運転状態から現在の仕事量W=η×P×Q(ηは移送する流体の粘性係数)を演算し、エンジンの能力に余裕があると判断したときは、モータジェネレータ16を発電機として動作させることができるように構成されている。この場合、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフの状態にさせ、モータジェネレータ16により発電されインバータユニット18において変換された電力を、端子13より外部へ供給する。また、この際、コントローラ20は、エンジンの出力を上げて、送水圧力と送水量を維持したままモータジェネレータ16により発電を行わせる。
【0028】
一方、エンジンの能力に余裕がないときは、コントローラ20は、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンの状態にさせ、外部からの電力を端子13よりモータジェネレータ16に供給してモータとして動作させることができる。
また、ポンプ15に水が来ていることを検出するための水センサ24を備えているため、コントローラ20は、水センサ24が水を検出した場合にエンジンを始動させたり、水を検出しなくなった場合にエンジンを停止させたりする制御を行う。なお、コントローラ20は、水が来ている場合と来ていない場合とでエンジンの出力を変化させる制御を行うようにしてもよい。また、ガソリンエンジンの場合には、コントローラ20は点火プラグへの給電/遮断の制御も行う。
【0029】
次に、
図4を用いて、上記のような構成を有するエンジンポンプ10を使用した中継送水システムにおける具体的な送水制御の例について説明する。
なお、
図4において、送水器1および送水器2は、
図2に示されているエンジンポンプ10を意味しており、ここでは送水器1から送水器2側へ水を送るものとする。また、
図4のうち、(A)は送水器1における送水量Q1と送水器2における送水量Q2がバランスしている場合、(B)は送水器1と送水器2における送水量Q1とQ2がアンバランスとなっている場合を表している。
【0030】
送水器1における送水圧P1と送水器2における送水圧P2がバランス(均衡)している場合には、
図4(A)のように、送水器1と送水器2のコントローラ(CNT)20は、モータジェネレータ16が何もしないように制御する。つまり、モータジェネレータ16が、モータとしても発電機としても動作しないように制御する。
また、このような状態で、例えば送水量を増加させる要求があった場合、送水器1と送水器2のコントローラ20は、送水圧Pと送水量Qとから自己のエンジンにおける仕事量W(=η×P×Q)を演算して能力に余裕があるか否か判断する。
そして、能力に余裕があれば自己のエンジンのスロットルバルブ26の開度を大きくして出力を増大させ、送水量を増加させる。一方、送水量を減少させる要求があった場合には、自己のスロットルバルブ26の開度を小さくして出力を低減させ、送水量を減少させる。
【0031】
ここで、例えば前段の送水器1において送水量を増加させる要求があったとする。この場合、前段の送水器1のコントローラ20は、エンジンの出力を高めるように制御するが、後段の送水器2の送水量が変化しなかったとすると、送水器1における送水圧P1が高くなる。そのため、送水器1と送水器2における送水圧P1と送水圧P2が不均衡となり、無理に出力を高めようとすると、エンストを起こすおそれがある。そこで、コントローラ20は、エンジンの出力を高めても送水量が増加せずに送水圧P1が高くなった場合には送水量Q1を減らす制御を行う。
【0032】
すると、送水器2においては仕事量W2が減少してエンジン出力に余裕が生じるので、送水器2のコントローラ20は仕事量W(=η×P×Q)を演算して余力があると判断し、モータジェネレータ16を発電機として動作させて発電を行うように制御する。そして、発電により発生した電力は、
図4(B)のように、ケーブル31を介して送水器1へ送る。
この際、コントローラ20は、他の送水器の送水圧Pや仕事量Wが分からないので、発電を開始する前に、端子13の電圧を見て他の送水器から電力が送られて来ていないか判断し、送られて来ていない場合に発電を行い、他の送水器へ送る。また、他の送水器へ電力を送り始めた直後に端子13の電圧を見て、他の送水器が電力を受け取っているか否か判断して、他の送水器が受け取っていない場合には発電を中止するようにしてもよい。これにより無駄な発電を回避することができる。
【0033】
一方、送水器1のコントローラ20は、仕事量Wを演算してエンジンに余力がないと判断すると、送水器2からの電力でモータジェネレータ16をモータとして動作させ、モータのアシストにより送水量Q1を増加させるような制御を行う。すると、送水器2において送水すべき流量Q2が増えるため、送水器2のコントローラ20は、モータジェネレータ16による発電量を減少させるフィードバック制御を行う。これにより、送水器2における発電量が減少して送水器1へ供給される電力が減り、モータ(16)によるアシスト量も減少して、均衡がとれたところで安定な運転状態となる。
上記のように、余力のある送水器ではモータジェネレータ16を発電機として動作させて発電を行い、生成された電気エネルギーを余力のない送水器へ送ることで、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。なお、コントローラ20は、エンジンに余力がないと判断した場合には、端子13の電圧を見て他の送水器から電力が送られて来ているか判断して、電力が送られて来ている場合にのみモータジェネレータ16をモータとして動作させるようにしてもよい。
【0034】
また、エンジンの能力に余裕があるか否かの判断は、例えばコントローラ20内のメモリに当該エンジンの最大能力(最大出力)もしくはそれに対応するポンプの仕事量を記憶しておいて、リアルタイムで演算された仕事量と比較することで行える。エンジンの最大能力と比較する代わりに、最も燃費の良い運転状態でのポンプの仕事量を記憶しておいて、演算された仕事量と比較してエンジンの能力に余裕があるか否か判断してもよい。
さらに、この実施例では、2台の送水器で中継送水システムを構築した場合を例にとって説明したが、3台以上の送水器で中継送水システムを構築した場合にも適用することができる。
【0035】
図5(A)には、
図2に示すような構成を有するエンジンポンプ10を使用した中継送水システムの他の実施例が示されている。
図5(A)の実施例は、複数の送水器に対して共通のバッテリ33を設けるようにしたものである。また、この実施例では、モータジェネレータ16にて発電された電力を交流から直流に変換して端子13より外部へ出力する機能と、端子13を介して外部より供給された電力を直流から交流に変換してモータジェネレータ16へ供給する機能を、インバータユニット18に持たせる。
【0036】
図5(A)に示すように、共通のバッテリ33を設けたシステムにおいては、例えば送水器1における送水圧P1が送水器2の送水圧P2よりも高くなったような場合に、送水器1のコントローラ20は送水量Q1を減らす制御を行う。そして、送水器2においてはポンプの仕事量W2が減少してエンジン出力に余裕が生じるので、送水器2のコントローラ20はモータジェネレータ16を発電機として動作させて発電を行い、その電力でバッテリ33を充電する。
【0037】
一方、送水器1のコントローラ20は、仕事量を演算してエンジンの能力に余裕がないと判断すると、バッテリ33からの電力でモータジェネレータ16をモータとして動作させ、モータのアシストにより送水量Q1を増加させるような制御を行う。これにより、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。
さらに、各送水器のコントローラ20は、圧力センサ23からの信号に基づいて異常圧力の発生を検出した場合には、ポンプの仕事量の大小に関わらず、モータジェネレータ16を発電機として動作させてエンジンに回生ブレーキをかける。そして、発生した電力をバッテリ33へ送って充電させることができ、さらにエネルギー効率を向上させることができる。
また、例えばシステムの起動時すなわち送水開始時や圧力変動が大きい場合には、バッテリ33からの電力を供給してモータジェネレータ16をモータとして動作させ、エンジンをアシストするように制御してもよい。
【0038】
なお、
図5(A)のように複数の送水器に対して共通のバッテリ33を設ける代わりに、送水器ごとにバッテリを設けるように構成することも可能である。
図5(B)には、送水器(10)ごとにバッテリ27を設けた場合の中継送水システムの実施例が示されている。このシステムでは、余力のある送水器ではモータジェネレータ16を発電機として動作させて、ケーブル31を介しての他の送水器へ電力を供給したり自己のバッテリ27を充電したりすることができる。また、余力のない送水器では、自己のバッテリ27または他の送水器から電力の供給を受けてモータジェネレータ16をモータとして動作させ、エンジンをアシストすることができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、一例として、発電機兼モータとして動作するモータジェネレータ16として、アキシャルモータを使用したものを説明したが、モータジェネレータはアキシャルモータに限定されるものでなく、他の形式のものでもよい。
また、モータジェネレータ16やポンプのインペラ15aの回転軸がクランク軸に直結されている構造について説明したが、モータジェネレータ16およびインペラ15aの回転軸がクランク軸にギヤ等を介して間接的に連結されている構造でも良い。
【0040】
また、各エンジンポンプに通信機能を持たせ、コントローラ20が演算した仕事量あるいは圧力センサが検出した検出値に関する情報を、他のエンジンポンプとの間で交換する。そして、自己と他のエンジンポンプの仕事量を比較して、モータジェネレータ16をモータとして機能させるか、発電機として機能させるかを決定するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、本発明を消防用のエンジンポンプを使用した中継送水システムに適用した場合について説明したが、本発明は、中継送水システムに限定されず、流体を遠方へ移送したい中継移送システム一般に広く利用することができる。