特許第6188130号(P6188130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188130
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】金属物品を修理するための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/08 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   C23C24/08 B
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-120422(P2013-120422)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-1452(P2014-1452A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】201210195082.0
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジーウェイ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・リゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジィシュー・ペン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェームズ・オコネール
(72)【発明者】
【氏名】ヤンミン・リ
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−068287(JP,A)
【文献】 特表2009−517576(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0086776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/08,26/00
B23K 9/04
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物品を修理するための方法であって、
隙間欠陥を有する金属物品を用意する工程と、
前記隙間欠陥が形成された領域の材料を前記金属物品から取り除き、隙間を形成する工程と、
前記形成隙間の中に修理用材料を配置する工程と、
前記金属物品と前記修理用材料との間に画定される接合ランドを封止し、真空化する工程と、
熱間等静圧圧縮成形法を使用して前記修理用材料と前記金属物品を処理することで修理を完成させる工程と、
を含み、
前記接合ランドを封止する工程が、前記接合ランドの表面領域を封止する工程によって実施され、
前記接合ランドの前記表面領域を封止する工程が、粉末マイクロスパーク堆積工程を使用して実施される、
方法。
【請求項2】
前記金属物品がガスタービンエンジン部品を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形成隙間が前記隙間欠陥の容積よりも大きい容積を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記修理用材料は、別個の金属部品または金属粉末状である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記表面領域上で封止された材料の厚さが、約0.01mmから約1.0mmの範囲にある、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記表面領域上で封止された前記材料の厚さが約0.5mmである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接合ランドを封止し、真空化する工程が、真空状態で実施される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記接合ランドの前記表面領域を封止する工程により、不連続接続の接合線が形成され、前記表面領域上に開口を画定する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記接合ランドを真空化するために脱ガスチューブが前記開口を介して前記接合ランドと流体連絡するように使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱間等静圧圧縮成形法によって前記修理用材料と前記金属物品を処理する工程の後に前記表面領域を機械加工する工程をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ガスタービンエンジン部品を修理するための方法であって、
隙間欠陥を有するガスタービンエンジン部品を用意する工程と、
前記隙間欠陥が形成された領域の材料を前記ガスタービンエンジン部品から取り除き、隙間を形成する工程と、
前記形成隙間の中に修理用材料を配置する工程と、
接合ランドの表面領域を封止し、前記ガスタービンエンジン部品と前記修理用材料との間に画定される前記接合ランドを真空化する工程と、
熱間等静圧圧縮成形法を使用して前記修理用材料と前記ガスタービンエンジン部品を処理することで修理を完成させる工程と、
を含み、
前記接合ランドの前記表面領域を封止し、前記接合ランドを真空化する工程が、非真空状態で実施され、
前記接合ランドの前記表面領域を封止する工程が、粉末マイクロスパーク堆積工程を使用して実施される、
方法。
【請求項12】
前記形成隙間が前記隙間欠陥の容積よりも大きい容積を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記修理用材料は、別個の金属部品である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記接合ランドの前記表面領域を封止する工程により、不連続接続の接合線が形成される、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記表面領域上で封止された材料の厚さが、約0.01mmから約1.0mmの範囲にある、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して金属物品を修理するための方法に関する。より詳細には、本開示は隙間欠陥を伴うガスタービンエンジン部品など金属物品を修理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレードおよびベーンなどガスタービンエンジン部品は、ガスタービンエンジンの安全な運転にとって重要である。このようなガスタービンエンジン部品は、通常、高温高圧で運転される。高温高圧に耐えるために、ガスタービンエンジン部品は普通、ニッケル基、チタン基、またはコバルト基の超合金材料など、超合金材料で作製される。
【0003】
しかしながら、ガスタービンエンジン部品の製造工程中ならびに長時間稼働後、限定しないが割れまたは裂け目を含む隙間欠陥が内部に生じることがある。ガスタービンエンジン部品を製造することは困難でありコストがかかるので、隙間欠陥を有するこのような部品は、取り換えるのではなく修理する方が望ましい。
【0004】
隙間欠陥を伴うガスタービンエンジン部品を修理するために様々な試みがなされてきた。例えば、レーザ加工システムを使用する。修理工程中に、レーザビームが隙間欠陥上に溶融池を形成し、修理用材料が溶融池の移動経路に沿って1層ずつ隙間欠陥上に堆積されることで部品の修理を完了する。
【0005】
しかしながら、修理中のレーザビームからの局所的な入熱のため、修理されたガスタービンエンジン部品に割れなどのさらなる隙間欠陥を誘発することもあり得る。さらに、修理される部品の超合金材料は、通常、方向性凝固した単結晶合金の構造体である。したがって、このように方向性凝固した単結晶の超合金材料上に堆積が行われると、堆積した材料の強度特性は本来の部品よりもはるかに低くなることがあり、ガスタービンエンジン部品を修理するためにこれは不利である。
【発明の概要】
【0006】
したがって、隙間欠陥を伴うガスタービンエンジン部品を修理してガスタービンエンジンの安全な運転を確実にするために新規な、改善された方法が引き続き求められている。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、金属物品を修理するための方法が提供される。本方法は隙間欠陥を有する金属物品を用意する工程と、隙間欠陥が形成された領域の材料を金属物品から取り除き、隙間を形成する工程と、この形成された隙間の中に修理用材料を配置する工程と、金属物品と修理用材料との間に画定される接合ランド(bonding land)を封止し、真空化する工程と、熱間等静圧圧縮成形法を使用して修理用材料と金属物品を処理することにより修理を実施する工程とを含む。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、ガスタービンエンジン部品を修理するための方法が提供される。本方法は隙間欠陥を有するガスタービンエンジン部品を用意する工程と、隙間欠陥が形成された領域の材料をガスタービンエンジン部品から取り除き、隙間を形成する工程と、この形成された隙間の中に修理用材料を配置する工程と、ガスタービンエンジン部品と修理用材料との間に画定される接合ランドの表面領域を封止し、その接合ランドを真空化する工程と、熱間等静圧圧縮成形法を使用して修理用材料とガスタービンエンジン部品を処理することにより修理を実施する工程とを含む。
【0009】
これらおよびその他の利点および特徴は、添付の図面と共に提供されている以下の本発明の好ましい実施形態の詳しい説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による金属物品を修理する方法を例示する概略フローチャートである。
図2図1に示されたフローチャートの最初の3つの工程を図解する概略図である。
図3図1に示されたフローチャートの最初の3つの工程を図解する概略図である。
図4図1に示されたフローチャートの最初の3つの工程を図解する概略図である。
図5】本発明の2つの実施形態に従って、図1に示されたフローチャートの第4の工程を図解する概略図である。
図6】本発明の2つの実施形態に従って、図1に示されたフローチャートの第4の工程を図解する概略図である。
図7】本発明の2つの実施形態に従って、図1に示されたフローチャートの第4の工程を図解する概略図である。
図8】本発明の2つの実施形態による粉末マイクロスパーク堆積(PMSD)処理の概略図である。
図9】本発明の2つの実施形態による粉末マイクロスパーク堆積(PMSD)処理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の好ましい実施形態について、添付の図面を参照しながら以下に述べる。以下の記述において、周知の機能または構成は、不要な詳細で開示を不明瞭にすることを避けるために詳細に述べない。
【0012】
本発明の一実施形態では、隙間欠陥を有する金属物品を修理するための方法が提供される。本明細書に使用されるとき、「金属物品」という用語は任意の適切な金属材料も包含する。1つの非限定の例では、この金属物品はブレードまたはベーンなどのガスタービンエンジン部品を含む。ガスタービンエンジン部品の材料の非限定の例はニッケル基、チタン基、またはコバルト基の超合金材料など超合金材料を含む。
【0013】
隙間欠陥は、ガスタービンエンジン部品の劣化に繋がりかねないどのような隙間も含み得る。この隙間欠陥は、寸法が比較的小さい可能性があり、割れまたは裂け目を含む。あるいは、この隙間欠陥は、寸法が比較的大き可能性があり、空洞を含む。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による隙間欠陥を有する金属物品を修理する方法を例示する概略フローチャート10を例示している。図1に例示されるように、修理中には、本方法は隙間欠陥を有する金属物品を用意する工程(工程11)、隙間欠陥が形成されるかまたは隙間欠陥を画定する領域の材料を金属物品から取り除くことにより、所定または所望の形状と隙間欠陥よりも大きい容積を有する隙間を形成する、またはくり抜く工程(工程12)、および金属物品上に形成された隙間の中に修理用材料を充填する工程(工程13)を含む。
【0015】
本方法はさらに、修理用材料と金属物品との間に画定される接合ランドを封止し、真空化する工程(工程14)、および熱間等静圧圧縮成形法(HIP)を使用して金属物品と修理用材料を処理することにより金属物品を修理する工程(工程15)を含む。一例では、工程14の封止する工程は接合ランドの表面領域を封止することによって実施される。工程14の封止工程と真空化工程の順序は変わってもよい。適宜、本方法は修理した金属物品の接合ランドの表面領域を機械加工する工程(工程16)をさらに含む。
【0016】
図2〜6は本発明の様々な実施形態による隙間欠陥101を有する金属物品100を修理する方法を示す概略図を例示している。図2〜6における構成は単に例示に過ぎないことに留意されたい。
【0017】
図2に例示されるように、金属物品100を用意し、隙間欠陥101が画定されている。例示された実施形態では、金属物品100は立方体形状を構成する。あるいは、金属物品100は円筒形状や円弧形状など、金属物品100の用途に基づいて任意の他の形状を有してもよい。例えば、金属物品100はガスタービンエンジンのブレードを構成して円弧形状を有する。
【0018】
隙間欠陥101は金属物品100の3つの表面17〜19からその内部へ下方向に延びる割れを構成する。いくつかの応用例では、隙間欠陥101は、金属物品100の単一表面からその内部へ下方向に延びることがある。他の応用例では、様々な状況に基づいて、隙間欠陥101は金属物品100の内部に形成されることもあり得る。
【0019】
その後、図3に例示されるように、隙間欠陥101が形成された領域の材料(符号無し)を金属物品100から取り除くことによりV字型の形成隙間20を形成する、またはくり抜く。いくつかの例では、形成隙間20の形状は予め定められていてもよく、形成隙間20は、修理用材料を収容するために隙間欠陥101よりも大きい容積を有する。形成隙間20の形状の非限定の例は立方体形状、円筒形状、円錐形状、または他の適切な形状を含んでもよい。
【0020】
形成隙間20の様々な寸法に基づいて、隙間欠陥101が形成された材料を取り除いた後の形成隙間20は金属物品100上に形作られた割れ、空洞、切れ目、凹部、開口、またはいずれかの他の隙間と称されることがある。
【0021】
その後、図4に例示されるように、修理用材料を形成隙間20の中に配置する。いくつかの構成では、修理後の金属物品100の強度を確保するために、修理用材料は元の金属物品100の材料と同様であってもよい。修理される金属物品100の様々な材料に基づいて、修理用材料はそれに応じて決定されてもよい。修理用材料の非限定の例はチタンとチタン合金、ニッケルとニッケル合金、コバルトとコバルト合金、およびNi基、Co基、またはTi基を含めた超合金を含む。
【0022】
図3に例示された構成では、隙間欠陥101は3つの表面17〜19から下方向に延び、金属物品100の材料を取り除いた後、3つの表面17〜19は、形成隙間20がそれぞれの表面17〜19から下方向に延びる3つの開口21〜23を有するように構築されるように、互いに連絡している。したがって、修理用材料は別個の金属部品24の形態で供給される。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「別個の金属部品」という用語は金属粉末ではなく隙間20の中に配置される一体型の金属部品を意味する。あるいは、形成隙間20は隙間欠陥を画定する領域を取り除いた後に金属物品100に形成されたメクラ穴(図示せず)のような構造など単一の開口を画定してもよい。こうして、別個の金属部品または金属粉末のいずれが中に配置されてもよい。
【0024】
修理用材料は、形成隙間20の中に配置され、それと良好に適合する。非限定の例では、形成隙間20は修理用材料の(1つまたは複数の)表面が金属物品100のそれぞれの表面17〜19と同一面になるようにされて修理用材料で完全に充填されてもよい。例えば、図4に示されているように、形成隙間20の中に別個の金属部品24を収容した後、表面25〜27は金属物品100のそれぞれの表面17〜19と同一面である。ある応用例では、修理用材料の(1つまたは複数の)表面は金属物品100のそれぞれの表面と同一面でなくてもよい。
【0025】
さらに、図示された例では単一の別個金属部品24が、形成隙間20の中に配置されるが、複数の別個金属部品を、単一の別個金属部品24として機能するように形成隙間20の中に一緒に配置する、例えば積層することも可能である。
【0026】
次いで、図5に例示されるように、修理用材料と金属物品100との間に画定される接合ランド(または接合界面)29(図3に図示)の表面領域28を封止し、その間に接合ランド29を真空化する。図示された例では、封止される表面領域28に沿って封止材料が連続したヘッド−テール接続の接合線30を形成するように表面領域28全体が封止される。
【0027】
封止材料の非限定の例は、コストが適切な、また金属物品100などベース材料と適合性のある任意の封止材料を含んでもよい。例えば、この封止材料はNi基の超合金GTD111のベース材料を封止するためのNi基の超合金IN718を含む。さらに、封止時に封止材料は金属粉末の形態をとることもあり得る。表面領域28に堆積させる材料の厚さは約0.01mmから1mmの範囲、例えば0.5mmであってもよい。
【0028】
封止工程を実施するために様々な封止技術を使用することが可能である。いくつかの例では、封止工程が実施されている間、接合ランド29が真空状態にあることを可能にするように封止工程は真空中で実施されてもよい。例えば、封止工程は真空状態で電子ビーム蒸着(EBD)工程を使用して実施される。
【0029】
他の例では、封止工程は非真空状態で実施されてもよい。図6に例示されるように、表面領域28(図4に示される)の一部が非真空状態で封止される。封止材料は不連続に接続した接合線31を形成し、開口32が表面領域28に画定される。本明細書で使用されるとき、「不連続」という用語は接合線31がヘッド−テール接続の接合線を形成するように連続的ではないことを意味する。
【0030】
その後、図7に例示されるように、修理用材料と金属物品100との間の接合ランド29を真空化するために脱ガスチューブ33が開口32を通じて接合ランド29と流体連絡する。1つの非限定の例では、接合ランド29の圧力が0.01torrより低くなると、接合ランド29を封止するように、脱ガスチューブ33を処理する、例えば熱により喰い切る。
【0031】
開口32を通じて接合ランド29を真空化するために他の適切な技術を使用することも可能である。ある応用例では、複数の開口32およびそれぞれの複数の脱ガスチューブ33を使用し、接合ランド29を真空化してもよい。
【0032】
図6に例示された構成では、限定はしないがレーザ粉末堆積(LPD)工程または粉末マイクロスパーク堆積(PMSD)工程を含めた様々な技術を使用し、不連続の接合線31を形成する。本明細書で使用されるとき、「PMSD」という用語は電気スパーク堆積法によって表面領域28上に堆積可能な材料を含む電極、および導電性の材料を構成する粉末を、高い粉末捕捉効率を達成するようにこの電極と基板との間の放電ギャップの中に導くために電極の内部または実質的に周囲に形成された粉末供給流路を使用する工程を意味する。
【0033】
図8〜9は本発明の2つの実施形態によるPMSD工程に使用される電極34、35の概略図である。図8に例示されるように、電極34は表面領域28などの基板102上に電気スパーク堆積法によって堆積させるための材料を含む。電極34はさらに、導電性の材料を構成する粉末37を電極34と基板102との間の放電ギャップの中に導くために電極34の内部に形成された粉末供給流路36を画定する。非限定の例では、堆積時に、粉末37は電極34に関して実質的に同軸の方向で放電ギャップの中に供給され、それにより、表面領域28を封止し、接合線を形成するための高い粉末捕捉効率を達成する。
【0034】
あるいは、図9に例示されるように、電極35は表面領域28などの基板102上に電気スパーク堆積法によって堆積させるための材料を含む。電極35はさらに、導電性の材料を構成する粉末37を電極35と基板102との間の放電ギャップの中に導くために電極35を少なくとも部分的に取り囲む粉末供給流路38を画定する。非限定の例では、堆積時に、粉末37は異なる方向で電極35の先端を取り囲む場所から放電ギャップの中に供給され、それにより、表面領域28を封止し、接合線を形成するための高い粉末捕捉効率を達成する。
【0035】
したがって、堆積時に、PMSD工程は、電気スパーク堆積法によって消耗電極を介して基板上に材料を堆積させ、一方、消耗電極の内部または周囲に形成された粉末供給流路を通じて、導電性材料を含む粉末を消耗電極と基板との間の放電ギャップの中に供給することを含む。
【0036】
PMSD工程のその他の記述は、本出願と同じ譲受人を有し、2012年1月27日に出願(事件整理番号236986−1)され、その内容を参照により本明細書に組み込む通常の米国特許出願第13/359973号明細書に見出すことができる。
【0037】
ある応用例では、修理用材料が金属粉末の形態であって適切な形状を有する形成隙間(図示せず)の中に充填されるとき、修理用材料と金属物品との間の接合ランドの表面領域の少なくとも一部が非真空状態で不連続の接合線を形成するように処理されてもよい。その後、修理用粉末材料および修理される金属物品を、真空オーブンなどの真空加熱装置内で加熱してもよく、それにより、修理用粉末材料の表面が焼結され、不連続の接合線もまた焼結され、連続したヘッド−テール接続の接合線を形成し、その結果、修理用粉末材料と金属物品との間の接合ランドが封止され真空化される。
【0038】
最後に、接合ランドを封止し、真空にした後に、修理用材料および修理される金属物品100は単体または単一の金属物品部材を形成して修理を実施するために熱間等静圧圧縮成形法(HIP)工程を使用して処理される。1つの非限定の例では、HIP条件はNi基の超合金を処理するために約1200℃の温度および200MPaの圧力を含んでもよい。処理される様々な材料に基づいてHIP条件は変わることがある。さらに、いくつかの応用例では、HIP処理に引き続いて、金属物品の(1つまたは複数の)表面を機械加工し、堆積した封止材料および/またはその上の熱影響部(HAZ)を取り除いてもよい。
【0039】
本発明の実施形態では、修理用材料と金属物品との間の接合は固相で実施される。修理中に溶融および再凝固を使用する従来式の修理工程と比較して、金属物品内の有害な相の形成を排除することができる。
【0040】
いくつかの例では、修理用材料は別個の金属部品の形態で供給され、それにより、修理用材料は修理時間を節約するために修理工程の前に製作することができる。さらに、修理される金属物品の材料に基づいて、別個の金属部品は修理される金属物品と同様の微細構造を有するように製作されてもよい。これは方向性凝固した単結晶の合金構造を有するガスタービンエンジン部品などの金属物品の修理にとって金属物品の強度性能を高めるのに有利である。一例では、修理された部品の強度は元の部品の強度の90%より高い。
【0041】
接合ランドの表面領域を封止する工程の間、PMSD処理などの様々な堆積処理を使用してもよく、修理される金属物品の限定的な直接融接が必要とされ、したがって熱影響部の形成は表面領域において回避されるかまたは緩和され得る。堆積層および/または熱影響部を取り除いた後には、熱影響部が接合ランドに形成されておらず、修理された金属物品の微細構造は損なわれていないので、金属物品の強度を確保する。
【0042】
典型的な実施形態で本開示について例示し述べたが、本開示の精神から逸脱することなく様々な修正および代替を行うことができるので、示された細部に限定することは意図されていない。したがって、本明細書に記載された開示のさらなる修正形態および均等物は日常的な実験を使用するだけで当業者に思い付くものであり、そのような修正形態および均等物はすべて、以下の特許請求の範囲によって規定される本開示の精神と範囲に入ると考えられる。
【符号の説明】
【0043】
11 隙間欠陥を有する金属物品を用意する
12 隙間欠陥が形成された領域の材料を金属物品から取り除き、隙間を形成する
13 この形成隙間の中に修理用材料を配置する
14 修理用材料と金属物品との間に画定される接合ランドを封止し、真空化する
15 熱間等静圧圧縮成形法を使用して金属物品と修理用材料を処理することにより金属物品を修理する
16 修理した金属物品の接合ランドの表面領域を機械加工する
17、18、19 金属物品の表面
20 形成隙間
21、22、23 開口
24 修理用金属部品
25、26、27 修理用金属部品の表面
28 接合ランドの表面領域
29 修理用材料と金属物品との間の接合ランド(または接合界面)
30、31 接合線
32 接合ランドの開口
33 脱ガスチューブ
34、35 電極
36、38 粉末供給流路
37 導電性の粉末
100 金属物品
101 隙間欠陥
102 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9