(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ミシン目加工装置は、伝票やチケット等の用紙に対してミシン目を形成するものである。ミシン目加工装置は、例えば特許文献1の通り、搬送部によって用紙を搬送する。また、ミシン目加工装置は、刃受けドラム(ミシンドラム)と、刃受けドラムに対向する回転自在な円板状のミシン刃と、を備えており、刃受けドラムの表面に搬送される用紙にミシン刃を押し付けることで、用紙にミシン目を形成するようになっている。
【0003】
そのため、ミシン目加工装置は、所定の圧接力でミシン刃を用紙に押し付ける必要がある。そこで、ミシン目加工装置は、ミシン刃を用紙に向けて押すための押しバネを備えている。また、押しバネの軸方向に直列に配置された圧力調節用つまみが設けられており、この圧力調節用つまみの先端が、押しバネに当接するようになっており、オペレーターが圧力調節用つまみを回転することで、ミシン刃の圧接力を調節するようになっている。
【0004】
このように、従来のミシン目加工装置では、オペレーターが手動で圧力調節用つまみを回転して、ミシン刃の圧接力を調節する必要がある。ミシン刃の圧接力が強すぎると、ミシン刃が用紙を貫通して、刃受けドラムに強く押し付けられるので、ミシン刃の刃先が変形して切れ味が悪くなることがある。また、ミシン刃の圧接力が弱すぎると、ミシン刃の刃先が用紙を貫通せず、適切なミシン目を用紙に形成できないことがある。従って、オペレーターは、ミシン刃の圧接力に対して、極めて微細な調節をする必要があるので、相当な時間と経験を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、オペレーターが調節する必要がなく、自動的に、刃受けドラムに対するミシン刃の位置を最適に調節できるミシン目加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るミシン目加工装置は、
用紙を搬送しつつ搬送方向に沿って用紙にミシン目を形成するためのミシン目加工装置であって、
用紙を一枚ずつ供給するための給紙部と、
給紙部から用紙を順次受け取ってミシン目形成位置まで搬送するための搬送部と、
ミシン目形成位置に配置され、搬送部から受け取った用紙に搬送方向に沿ってミシン目を形成するためのミシン目形成部と、
ミシン目形成部からミシン目加工された用紙を受け取って集積するための用紙集積部と、
給紙部、搬送部、ミシン目形成部及び用紙集積部を制御するための制御部と、を備えたミシン目加工装置において、
ミシン目形成部は、
搬送方向に直交して延設され、軸周りに回転可能に支持された刃受けドラムと、
刃受けドラムを回転させるためのドラム駆動機構と、
刃受けドラムに対して平行に移動可能な少なくとも一つのミシン刃ヘッドと、を備え、
ミシン刃ヘッドは、
刃受けドラムに対向して配置され、刃受けドラムの軸に平行な軸まわりに回転可能に支持された円盤状のミシン刃と、
ミシン刃を、刃受けドラムから離間する離間位置と、刃受けドラムの表面に圧接する圧接位置との間で移動するためのミシン刃駆動機構と、
ミシン刃の回転を検知するための回転センサと、を備え、
制御部の制御に基づいて、
ミシン刃駆動機構がミシン刃を離間位置に配置し、ドラム駆動機構が刃受けドラムを回転して、その後、ミシン刃駆動機構がミシン刃を離間位置から圧接位置に向けて移動して、ミシン刃が刃受けドラムに当接すると、刃受けドラムの回転に伴ってミシン刃が回転し、回転センサがミシン刃の回転を検知したときに、ミシン刃駆動機構がミシン刃の移動を停止する位置調節動作を行う。
【0008】
好ましくは、ミシン刃駆動機構は、
モータと、
モータの駆動によって回転する偏心カムと、
刃受けドラムに対して直交して延設され、一端側でミシン刃を回転可能に支持するサポート部と、
サポート部の他端側に設けられ、偏心カムに当接するカム受け部と、
サポート部の一端側と他端側との間で、サポート部を回転可能に支持する回転軸と、
カム受け部が偏心カムに常に当接するように、サポート部の一端側を押圧する押しバネと、を備え、
偏心カムの回転によって、サポート部が回転軸のまわりを回転すると共に、ミシン刃が離間位置と圧接位置との間を移動する。
【0009】
好ましくは、ミシン刃ヘッドは、さらに、
ミシン刃の円周方向に一定間隔を置いて設けられ、ミシン刃の全円周にわたって設けられた複数の被検知部を備え、
位置調節動作では、
回転センサがミシン刃の円周の所定範囲に設けられた所定数の被検知部を検知した時点で、ミシン刃駆動機構がミシン刃の移動を停止する。
【0010】
好ましくは、ミシン刃ヘッドは、さらに、複数の被検知部を有するホルダを備え、
ホルダは、サポート部及びミシン刃に対して着脱自在である。
【0011】
好ましくは、ミシン目加工装置は、
刃受けドラムに平行に延設され、ミシン刃ヘッドを案内するための単一の第1のスライドガイドと、
第1のスライドガイドに平行に延設され、軸まわりに回転可能に支持された送りねじと、
送りねじを回転するための送りねじ駆動機構と、
各ミシン刃ヘッドに設けられたブレーキ付ナットと、をさらに備え、
ブレーキ付ナットは、
送りねじに螺合し、ミシン刃ヘッドに係合せずに送りねじと一体に回転することで、送りねじからミシン刃ヘッドに動力を伝達しない非制動位置と、ミシン刃ヘッドに係合することで、送りねじからミシン刃ヘッドに動力を伝達する制動位置と、をとり、
制御部の制御に基づいて、
ブレーキ付ナットが制動位置になりかつ送りねじが回転するときに、ミシン刃駆動機構がミシン刃を離間位置に配置し、その後、
ブレーキ付ナットが非制動位置になりかつ送りねじの回転が停止するときに、位置調節動作を行う。
【発明の効果】
【0012】
上記の通り、本発明では、ミシン刃ヘッドは、ミシン刃を、刃受けドラムから離間する離間位置と、刃受けドラムの表面に圧接する圧接位置との間で移動するためのミシン刃駆動機構と、ミシン刃の回転を検知するための回転センサと、を備える。さらに、本発明では、刃受けドラムに対するミシン刃の位置を調節するときに、制御部の制御に基づいて、ミシン刃駆動機構がミシン刃を離間位置に配置し、ドラム駆動機構が刃受けドラムを回転して、その後、ミシン刃駆動機構がミシン刃を離間位置から圧接位置に向けて移動して、ミシン刃が刃受けドラムに当接すると、ミシン刃が刃受けドラムの回転によって回転し、回転センサがミシン刃の回転を検知したときに、ミシン刃駆動機構がミシン刃の移動を停止する。
【0013】
従って、本発明では、ミシン刃が離間位置から圧接位置に移動しつつ、ミシン刃が刃受けドラムに当接した時点で、ミシン刃の移動を停止できるので、ミシン刃を刃受けドラムに必要以上に強く押し付けることがなく、ミシン刃の刃先の変形を防止できる。また、用紙が厚い場合でも、本発明では、ミシン刃が用紙を貫通して、刃受けドラムに当接した時点で、ミシン刃の移動を停止できるので、ミシン刃が用紙を貫通しないということがなく、用紙に適切なミシン目を形成できる。このように、本発明では、自動的に、ミシン刃を刃受けドラムに対して適切な位置に調整できるので、オペレーターは、ミシン刃の調整に伴う時間及び経験を必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係るミシン目加工装置の実施形態を説明する。
【0016】
図1の通り、ミシン目加工装置は、用紙Sを1枚ずつ供給する給紙部1と、給紙部1から用紙Sを順次受け取ってミシン目形成位置Mまで搬送する搬送部2と、ミシン目形成位置Mに配置され、搬送部2から受け取った用紙Sに搬送方向に沿ってミシン目を形成するミシン目形成部3と、ミシン目形成部3からミシン目加工された用紙Sを受け取って集積する用紙集積部4と、給紙部1、搬送部2、ミシン目形成部3および用紙集積部4を制御する制御部5とを備えている。
【0017】
給紙部1は、用紙スタックPを載置するための用紙棚6を備えている。用紙棚6は、(図示しない)公知の適当な昇降機構によって昇降運動可能に支持されている。
給紙部1は、また、用紙棚6の前方に近接して配置され、用紙棚6上の用紙スタックPの前端面に対向する垂直な揃え板7と、用紙棚6上の用紙スタックPの最上位の用紙Sの上方においてこれに対向して配置され、最上位の用紙Sを吸着して揃え板7を越えて前方に送り出す排紙ユニット8を備えている。排紙ユニット8は、この実施例では、サクションロータからなっているが、サクションロータの代わりに、例えばサクションベルトを使用することもできる。
【0018】
そして、サクションロータ8が回転運動するとともに、一定のタイミングでサクションロータ8の吸引および吸引停止が繰り返され、またその間に、給紙棚6が徐々に上昇運動して、用紙スタックPの最上位の用紙Sの上面が常にサクションロータ8の吸着範囲内に位置することにより、給紙部1から用紙Sが1枚ずつ供給される。
【0019】
搬送部2は、用紙Sの搬送路9の一側に配置され、搬送方向にのびる(図示しない)基準プレートと、上流側から基準プレートに向かって搬送方向に対し斜めにのびる傾斜搬送ベルト10と、傾斜搬送ベルト10上にその長さ方向に間隔をあけて配置され、それぞれ定位置において傾斜搬送ベルト10に圧接しつつ回転可能に保持された(図示しない)複数のボールとを備えている。
【0020】
そして、給紙部1から搬送部2に受け取られた用紙Sは、傾斜搬送ベルト10によってミシン目形成位置Mまで搬送され、その間に、ボールによって傾斜搬送ベルト10に押し付けられて傾斜搬送ベルト10上において横滑りし、その一側縁をその全長にわたって基準プレートに当接させることにより、斜行を補正される。
【0021】
ミシン目形成位置Mにはミシン目形成部3が配置されている。
ミシン目形成部3は、
図1および
図2に示すように、フレーム11と、用紙の搬送方向に直交してのび、フレーム11に対し軸まわりに回転可能に支持された単一の水平な刃受けドラム12と、フレーム11に取り付けられ、刃受けドラム12を回転させる(図示しない)ドラム駆動機構(例えば、サーボモータ)と、フレーム11に取り付けられ、刃受けドラム12から間隔をあけてこれに平行にのびる単一の第1のスライドガイド13とを備えている。
【0022】
そして、第1のスライドガイド13には、複数(この実施例では2個)のミシン刃ヘッド14がスライド運動可能に取り付けられている。
2つのミシン刃ヘッド14は、それぞれ、刃受けドラム12に対向して配置された円盤状のミシン刃14aと、ミシン刃14aを刃受けドラム12の軸に平行な軸のまわりに回転可能に支持するとともに、ミシン刃14aを、刃受けドラム12から離間する離間位置と、刃受けドラム12の表面に圧接する圧接位置との間で動かすミシン刃駆動機構14bと、を備えている。制御部5の制御に基づいて、ミシン刃駆動機構14bは、ミシン刃14aを離間位置と圧接位置間との間を移動する。
【0023】
図3の通り、ミシン刃駆動機構14bは、モータ145を備えており、モータ145は、駆動軸146を備える。制御部5の制御に基づいて、モータ145は、駆動軸146を正逆方向に回転する。ミシン刃駆動機構14bは、モータ145の駆動軸146の一端側に設けられた偏心カム144を備え、偏心カム144は、モータ145の駆動軸146の回転によって回転する。ミシン刃駆動機構14bは、刃受けドラム12に対して直交する垂直方向に延設され、一端側でミシン刃14aを回転可能に支持するサポート部140と、サポート部140の他端側に設けられ、偏心カム144に当接するカム受け部143と、サポート部140の一端側と他端側との間で、サポート部140を回転可能に支持し、刃受けドラム12と平行に延設される回転軸141と、を備える。ミシン刃駆動機構14bは、サポート部140の一端側を押圧する押しバネ142を備え、押しバネ142が、サポート部140を、回転軸141を中心に回転するように付勢して、その結果、カム受け部143が、偏心カム144に常に当接するようになっている。
【0024】
ミシン刃駆動機構14bは、モータ145の駆動軸146の他端側に設けられた検出板148と、検出板148の通過を検出するための原点センサ147と、を備える。原点センサ147は、距離センサなどからなり、制御部5に接続されている。検出板148は、モータ145の駆動軸146と共に回転するので、制御部5は、原点センサ148が検出板148を検出することで、モータ145の駆動軸146の原点位置を認識できるようになっている。
【0025】
図4の通り、偏心カム144の回転軸144aは、偏心カム144の中心よりも偏心して設けられているので、偏心カム144が回転すると、偏心カム144に当接するカム受け部143が移動するようになっている。カム受け部143の移動によって、サポート部140が回転軸141を中心に回転して、ミシン刃14aが離間位置(
図3(A)及び
図4(A))と圧接位置(
図3(B)及び
図4(B))との間を移動するようになっている。ここで、モータ145の駆動軸146が原点位置にあるとき、ミシン刃14aが離間位置に配置されるようになっている。
【0026】
図3の通り、ミシン刃ヘッド14は、ミシン刃14aの回転を検知するための回転センサ14gを備える。回転センサ14gは、L字部材などを介して、サポート部140に固定されている。ミシン刃ヘッド14は、ミシン刃14aの円周方向に一定間隔を置いて設けられ、回転センサ14gで検知される複数の被検知部14eを備える。本実施形態では、複数の被検知部14eは、ミシン刃14aをサポート部140に保持するためのホルダ149に設けられている。複数の被検知部14eは、ミシン刃14aの表面から突出しており、さらに、ミシン刃14aの中心から放射状に設けられている。ミシン刃14aの回転によって、複数の被検知部14eが順次回転センサ14gを通過するようになっている。回転センサ14gは、距離センサなどからなり、被検知部14eの突出を検知するようになっている。そして、回転センサ14gは、所定数の被検知部14eの通過を検知すると、ミシン刃14aの回転を認識するようになっている。
【0027】
刃受けドラム12に対するミシン刃14aの位置を調節するときに、制御部5の制御に基づいて、次の位置調節動作を行う。先ず、ミシン刃駆動機構14bがミシン刃14aを離間位置(
図3(A))に配置する。そして、ドラム駆動機構14bが刃受けドラム12を回転する。その後、ミシン刃駆動機構14bがミシン刃14aを離間位置(
図3(A))から圧接位置(
図3(B))に向けて移動する。その後、ミシン刃14aが刃受けドラム12に当接すると、刃受けドラム12の回転に伴ってミシン刃14aが回転する。回転センサ14gがミシン刃14aの回転を検知したときに、ミシン刃駆動機構14bがミシン刃14aの移動を停止する。
【0028】
従って、ミシン刃14aが離間位置(
図3(A))から圧接位置(
図3(B))に向けて移動しつつ、ミシン刃14aが刃受けドラム12に当接した時点で、ミシン刃14aの移動を停止できるので、ミシン刃14aを刃受けドラム12に必要以上に強く押し付けることがなく、ミシン刃14aの刃先の変形を防止できる。また、用紙Sが厚い場合でも、ミシン刃14aが用紙Sを貫通して、刃受けドラム12に当接した時点で、ミシン刃14aの移動を停止できるので、ミシン刃14aが用紙Sを貫通しないということがなく、用紙Sに適切なミシン目を形成できる。
【0029】
本実施形態では、ミシン刃14aの全円周の1/8〜6/8の範囲に設けられた所定数の被検知部14eが回転センサ14gを通過することで、ミシン刃14aの回転を認識するようになっている。ここで、ミシン刃14aの全円周の1/8よりも小さい範囲に設けられた所定数の被検知部14eに基づいて、ミシン刃14aの回転を認識するようにすると、ミシン刃14aの回転角度が小さいので、ミシン刃14aが完全に刃受けドラム12に当接していないおそれがある。また、ミシン刃14aの全周囲の6/8よりも大きい範囲に設けられた所定数の被検知部14eに基づいて、ミシン刃14aの回転を認識するようにすると、ミシン刃14aが停止するまで、ミシン刃14aが圧接位置に向けて必要以上に移動して、ミシン刃14aが刃受けドラム12に強く押し付けられるので、ミシン刃14aの刃先が破損するおそれがある。
なお、別の実施形態として、複数の被検知部14eは、ミシン刃14aの円周方向に一定間隔を置いて設けられた複数の孔部、複数の突起部、ミシン刃14aの刃先の凹凸などでもよい。また、回転センサ14gは、エリアセンサ、レーザーセンサ、反射センサなどでもよい。
【0030】
図5の通り、ミシン刃ヘッド14は、ミシン刃14aをサポート部140に支持するためのホルダ149を備える。ホルダ149は、中心に回転自在なベアリング部149cを備えている。ベアリング部149cは、中心にボルト孔149dを備えており、(図示しない)ボルトを介して、サポート部140に対して着脱自在に構成されている。ホルダ149は、複数の被検知部14eを備えている。ホルダ149及びミシン刃14aは、それぞれに対応する複数のボルト孔149bを備えており、これらボルト孔149bにボルト149aを螺合することで、ミシン刃14aとホルダ149とが着脱できるようになっている。このように、ホルダ149をサポート部140から着脱することで、ミシン刃14aをサポート部140に対して着脱できるので、ミシン刃14aの刃先が変形したときや、刃先ピッチの異なるミシン刃14aに取り換えるときなど、新しいミシン刃14aを簡単に交換できる。
【0031】
ミシン目形成部3は、また、第1のスライドガイド13に平行にのび、フレーム11に対し軸まわりに回転可能に支持された送りねじ15と、フレーム11に取り付けられ、送りねじ15を回転させる送りねじ駆動機構16とを有している。
送りねじ駆動機構16は、この実施例では、その駆動軸が送りねじ15の一端に直結されたサーボモータからなっている。なお、送りねじ駆動機構16の構成はこの実施例に限定されず、制御部5からの制御信号に基づいて送りねじ15の回転数を正確に制御可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0032】
ミシン刃ヘッド14のそれぞれと送りねじ15との間には、各1つのブレーキ付ナット17が配置されている。ブレーキ付ナット17は、ミシン刃ヘッド14に係合することで送りねじ15からミシン刃ヘッド14に動力を伝達する制動位置と、ミシン刃ヘッド14に係合せずに送りねじ15と一体に回転することで送りねじ15からミシン刃ヘッド14に動力を伝達しない非制動位置と、をとる。ブレーキ付ナット17の制動位置と非制動位置との切り替え動作は、制御部5によって制御される。
【0033】
この場合、ブレーキ付ナット17が制動位置にありかつ送りねじ15が回転するときは、ミシン刃駆動機構14bによって、関係するミシン刃ヘッド14のミシン刃14aが常に離間位置をとり、それによって、ミシン刃ヘッド14のスライド運動を妨げないようになっている。ミシン刃ヘッド14が最適な位置に配置されると、ミシン刃駆動機構14bが上記した位置調節動作を行い、ミシン刃14aを最適な位置に調節する。
【0034】
そして、ブレーキ付ナット17が制動位置と非制動位置とに切り替えられるとともに、送りねじ15が正逆回転せしめられることによって、複数のミシン刃ヘッド14は、それぞれ独立に、第1のスライドガイド13に沿って(用紙Sの搬送方向に直交する方向に)往復動し、あるいは第1のスライドガイド13上に静止状態に維持され得る。
こうして、複数のミシン刃ヘッド14のうち、特定のミシン刃ヘッド14は静止させたままで、残りのミシン刃ヘッド14をスライド運動させることができる。
【0035】
ミシン目形成部3は、また、フレーム11に取り付けられて刃受けドラム12に対向して配置され、刃受けドラム12およびミシン刃14a間に用紙Sを通過させる用紙搬送ユニット20を備えている。
用紙搬送ユニット20は、この実施例では、刃受けドラム12の上面および下面にそれぞれ対向して、かつ刃受けドラム12にこれから間隔をあけて平行にのび、フレーム11に対し軸まわりに回転可能に支持された(図示しない)一対のシャフトを有している。そして、一対のシャフトのそれぞれには、その軸方向に間隔をあけて、複数のプーリー21、22が、刃受けドラム12に対向してかつシャフトと一体に回転するように取り付けられている。この場合、上側のシャフトの各プーリー21と下側のシャフトの各プーリー22は1対1に対応するように配置される。
【0036】
用紙搬送ユニット20は、さらに、互いに対をなす上側のプーリー21および下側のプーリー22間にそれぞれ張設されたエンドレスベルト23と、フレーム11に取り付けられ、一対のシャフトのうちの一方を回転駆動させる(図示しない)シャフト駆動機構を有している。この場合、エンドレスベルト23の速度と刃受けドラム12の周速が等しくなるように、シャフト駆動機構およびドラム駆動機構が制御される。
【0037】
そして、各ミシン刃ヘッド14のミシン刃14aは、隣り合うエンドレスベルト23間の間隙中において刃受けドラム12の側面に対向して配置されている。また、シャフト駆動機構によって旋回運動するエンドレスベルト23と、ドラム駆動機構によって回転する刃受けドラム12との間を用紙Sが搬送され、この搬送の間に、用紙Sの所定位置に搬送方向に沿ってミシン目が形成される。
【0038】
ミシン目形成部3は、さらに、フレーム11に取り付けられ、第1のスライドガイド13から間隔をあけてこれに平行にのびる第2のスライドガイド24と、各ミシン刃ヘッド14の運動経路の範囲外において第2のスライドガイド24にスライド運動可能に取り付けられ、各ミシン刃ヘッド14を検出するためのセンサ(例えば、近接センサ素子)27と、フレーム11に取り付けられ、センサ27をスライド運動させるセンサ駆動機構28と、を備えている。
一方、各ミシン刃ヘッド14には検出板14fが取り付けられ、スライド運動するセンサ27がこの検出板14fの上方を通過する。そして、検出板14fがセンサ27によって検出されることで、ミシン刃ヘッド14が検出されるようになっている。
【0039】
用紙集積部4は、この実施例では、昇降運動可能とされ、その上にミシン目加工された用紙Sが積載される用紙積載棚32と、用紙積載棚32を昇降運動させる(図示しない)棚駆動機構と、用紙載置棚32の上流側に配置され、ミシン目形成部3から排出された用紙Sを用紙積載棚32まで搬送する搬送ユニットと、用紙積載棚32上の最上位の用紙Sの高さ位置を検出する(図示しない)高さ検出ユニットとを有している。搬送ユニットは、用紙載置棚32に隣接して配置された搬送ローラ対33と、搬送ローラ対33の入口、およびミシン目形成部3の搬送ユニット20の出口間にのびるシュート34とから構成されている。
【0040】
そして、ミシン目加工装置の運転開始後、高さ検出ユニットからの検出信号に基づき、用紙積載棚32は、用紙積載棚32上の最上位の用紙Sが、常時、次に搬送されてくる用紙Sよりも低い位置にあるように、一定距離ずつ下降し、それによって、用紙積載棚32上にミシン目加工された用紙Sが集積される。
【0041】
図示はしないが、制御部5は、タッチパネルディスプレイからなる操作パネルを備えており、作業者により、この操作パネルを通じて、ミシン刃ヘッド14の設定位置等の種々の設定情報や操作命令等が入力されるようになっている。
【0042】
こうして、ミシン目加工装置の運転開始に先立ち、制御部5に対し各ミシン刃ヘッド14の第1のスライドガイド13上の設定位置の情報が入力されると、制御部5は、まず、センサ27をスライド運動させて各ミシン刃ヘッド14を検出し、各ミシン刃ヘッド14の第1のスライドガイド13上の現在位置の情報を取得する。次いで、制御部5は、この取得した現在位置の情報と、入力された設定位置の情報とに基づき、各ミシン刃ヘッド14を互いに衝突させずに最短時間で現在位置から設定位置まで移動させる最適の順序と、各ミシン刃ヘッド14の移動方向および移動距離を演算によって求める。
そして、制御部5は、当該順序に従い、ブレーキ付ナット17の制動位置および非制動位置を切り替えつつ、サーボモータ(送りねじ駆動機構)16によって送りねじ15を所定回転数だけ正方向または逆方向に回転させることによって、各ミシン刃ヘッド14を設定位置まで移動させる。そして、制御部5は、ミシン刃駆動機構14bによって、上記した位置調節動作を行い、ミシン刃14aを最適な位置に調節する。
【0043】
上記の通り、複数のミシン刃ヘッド14が、単一の送りねじ15に取り付けられており、それらが単一の第1のスライドガイド13に沿って互いに独立に移動し、または静止状態に維持することができる。そして、ミシン刃ヘッド14毎に送りねじ15およびスライドガイド13を設ける必要がないので、ミシン刃ヘッド14を増設した場合でも、スペースが大幅に節減され、ミシン目加工装置が大型化、複雑化することがない。