特許第6188144号(P6188144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188144トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188144
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20170821BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20170821BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08G63/78
   C08G63/672
   G03G9/08 331
   G03G9/08 381
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-198177(P2013-198177)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63604(P2015-63604A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平井 規晋
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−107228(JP,A)
【文献】 特開2004−280084(JP,A)
【文献】 特開2004−280085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数3〜5の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、固有粘度が0.4〜1.2dl/gのフラン環を有するポリエステル樹脂とを重縮合する、トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法。
【請求項2】
アルコール成分及びフラン環を有するポリエステル樹脂と、さらにカルボン酸成分を重縮合する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
フラン環を有するポリエステル樹脂が、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
フラン環を有するポリエステル樹脂の量が、重縮合に供する原料中、5〜60質量%である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
【請求項5】
脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分とカルボン酸成分中のフランジカルボン酸化合物の総量が、カルボン酸成分と、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の合計量中、10〜100モル%である、請求項2〜4いずれか記載の製造方法。
【請求項6】
非晶質ポリエステル系結着樹脂の数平均分子量が、1000〜7000である、請求項1〜5いずれか記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法において形成される潜像の現像に用いられるトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法、該方法で得られた結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
【0003】
高画質化及び高速化に対応して、トナー用結着樹脂として、組成の調整が容易であるポリエステル樹脂が汎用されており、特に熱特性を改善するために、各種モノマーや製造方法の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、低温定着性、保存性の向上を目的として、フラン環を有する非晶質ポリエステルを含有したトナー用結着樹脂が開示されている。
【0005】
特許文献2には、低温定着性、耐オフセット性、耐久性の向上を目的として、結着樹脂及び着色剤を含有したトナーであって、前記結着樹脂が、軟化点が10℃以上異なる2種類の樹脂を含有し、軟化点が高い方の樹脂と低い方の樹脂のいずれもが、ポリエチレンテレフタレートもしくは変性ポリエチレンテレフタレートと、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、カルボン酸成分とを反応させて得られるポリエステル又は該ポリエステルを樹脂成分の一つとして有するハイブリッド樹脂である静電荷像現像用トナーが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、耐熱性、機械物性、耐候性の向上を目的として、フランジカルボン酸ジアルキルエステル成分とジオール成分を、エステル交換反応した後、チタン化合物の存在下に重縮合反応を行うことを特徴とするフラン構造を含むポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−107228号公報
【特許文献2】特開2009−276791号公報
【特許文献3】特開2008−291244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真法においては、幅広い非オフセット域を有し、より一層優れた低温定着性を有するトナーの開発が求められており、特に、高速機では、定着機の温度に対してトナーに伝導するエネルギー量が少なくなるため、さらなる低温定着性の向上が求められる。低温定着性を向上させるためには、トナーに用いられる結着樹脂の軟化点やガラス転移温度を下げるなどの方法が用いられる。しかし、そうすると低温でも融解しやすくなり、保存性や耐久性に劣るものとなる。従って、低温定着性と保存性及び耐久性とを両立するトナーが求められている。
【0009】
本発明は、得られるトナーの低温定着性と保存性及び耐久性とを両立できるトナー用結着樹脂、その製造方法、及び該結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性に影響する要因は、トナーに含有される結着樹脂のモノマー組成と構造によるものと考えて検討を行った。その結果、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分と、特定のフラン環を有するポリエステル樹脂を反応させて得られた非晶質ポリエステルを用いることで、得られるトナーに優れた低温定着性、保存性及び耐久性を発現させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、
〔1〕 炭素数3〜5の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、固有粘度が0.4〜1.2dl/gのフラン環を有するポリエステル樹脂とを重縮合する、トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法、
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られたトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂、並びに
〔3〕 前記〔2〕記載のトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により得られるトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂は、得られるトナーの低温定着性と保存性、耐久性を両立することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂は、炭素数3〜5の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、固有粘度が0.4〜1.2dl/gのフラン環を有するポリエステル樹脂を重縮合させて得られるものである。
【0014】
本発明において、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「非晶質」の樹脂とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
【0015】
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質ポリエステルのガラス転移に起因するピークとする。
【0016】
樹脂の結晶性は、用いる原料モノマーの種類と組み合わせにより、容易に調整することができる。具体的には、分岐鎖構造を有するカルボン酸成分やアルコール成分、3価以上のカルボン酸成分やアルコール成分、例えば、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール、トリメリット酸、無水トリメリット酸等を適量用いることで、非晶質化を促進することができる。
【0017】
本発明の方法により得られる結着樹脂を含有したトナーが、低温定着性と保存性及び耐久性とを両立することができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0018】
ポリエステルの定着性を調整するためには、分子量を調整すればよい。特に得られるトナーを低温で定着させるためには、分子量を低めに調整することが必要となる。本発明においては、炭素数の比較的小さい、すなわちモノマーとしての分子量が小さい脂肪族ジオールを用いているため、分子量の調節が容易であり、低温定着性を向上させることができる。しかしながら、通常、分子量を小さくすると、軟化点やガラス転移温度等の熱物性も低下してしまい、保存性や耐久性が悪化する。
これに対して、本発明の方法により得られるポリエステルは、分岐鎖を有するジオール由来の部分とフラン環を有するため、その骨格がリジッドとなり、熱物性の低下を抑制でき、保存性や耐久性が向上するものと考えられる。さらに、フラン環の原料として、フラン環を有するポリエステル樹脂を用いているため、モノマーやオリゴマーといった低分子量成分を減らすことができると考えられ、そのため、より保存性や耐久性を向上することができると考えられる。
【0019】
アルコール成分は、炭素数3〜5の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール脂肪族ジオールを含有する。
【0020】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、トナーの低温定着性及び保存性を向上させる観点から、炭素数は、3〜5であり、3〜4が好ましい。具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、なかでもトナーの低温定着性及び保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3−ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0021】
炭素数3〜5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0022】
なかでも、1,2-プロパンジオールの含有量は、アルコール成分中、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0023】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2〜7のα,ω−脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0024】
アルコール成分とフラン環を有するポリエステル樹脂に加えて、カルボン酸成分を重縮合に供することが好ましい。カルボン酸成分としては、トナーの低温定着性及び保存性を向上させる観点から、テレフタル酸化合物、イソフタル酸化合物及びフランジカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0025】
フランジカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、これらの酸の無水物、それらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0026】
前記芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、また、100モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。
【0027】
芳香族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0028】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量の調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0029】
重縮合に供するカルボン酸成分とアルコール成分とのモル比率(カルボン酸成分/アルコール成分)は、低温定着性の観点から、0.5〜1.1が好ましく、0.7〜0.9がより好ましく、0.75〜0.9がさらに好ましい。なお、この比率にはフラン環を有するポリエステル樹脂を構成するアルコール成分とカルボン酸成分も含まれる。
【0030】
本発明において、フラン環を有するポリエステル樹脂は、原料モノマーとして少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを重縮合させて得られる樹脂が好ましく、フラン環としては、式(Ia)又は(Ib):
【0031】
【化1】
【0032】
で表される構造が好ましい。
【0033】
フラン環を有するカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物(本明細書中、カルボン酸化合物は、カルボン酸と、カルボン酸の炭素数1〜6のアルコール、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む);2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオネート等のカルボン酸化合物(本明細書中、ヒドロキシカルボン酸化合物はカルボン酸化合物に含める)等が挙げられ、これらの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、トナーの保存性の観点からフランジカルボン酸化合物がより好ましく、トナーの低温定着性と保存性の観点から2,5-フランジカルボン酸がより好ましい。
【0034】
フラン環を有するアルコールとしては、ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;フルフリルアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられ、これらの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、フランジアルコール、及びヒドロキシメチルフルフリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0035】
式(Ia)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物等があげられる。
【0036】
式(Ia)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
【0037】
式(Ib)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、フラン-2-カルボン酸、フラン-3-カルボン酸等のフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物等が挙げられる。
【0038】
式(Ib)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、フルフリルアルコール等が挙げられる。
【0039】
上記のカルボン酸化合物及びアルコールの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、式(Ia)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物とアルコールとが好ましく、フランジカルボン酸化合物及びフランジアルコールがより好ましく、フランジカルボン酸化合物がさらに好ましい。
【0040】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは30〜70モル%である。
【0041】
さらに、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100%がよりさらに好ましい。フランジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0042】
フラン環を有するアルコールの含有量は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは20〜40モル%である。
【0043】
また、トナーの低温定着性と保存性の観点から、カルボン酸成分中、1種類のフラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%であり、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。アルコール成分中、1種類のフラン環を有するアルコールの含有量は、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは20〜40モル%である。なお、1種類とは、構造上の種類であり、組成式が同じであっても構造式が異なるものは、異なる種類としてみなす。
【0044】
フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分としては、トナーの低温定着性の観点から、脂肪族ジオールが好ましい。
【0045】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中では、保存性と耐久性の観点から、炭素数2〜6のα,ω−脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0046】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%であり、よりさらに好ましくは80〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。同様に、エチレングリコールの含有量も、トナーの低温定着性の観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%であり、よりさらに好ましくは80〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0047】
アルコール成分がフラン環を有するアルコールを含む場合、脂肪族ジオール/フラン環を有するアルコール(モル比)は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、0〜10が好ましく、0.1〜8がより好ましく、0.2〜5がさらに好ましい。
【0048】
これら以外のアルコール成分としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0049】
フラン環を有するカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0050】
フラン環を有するポリエステル樹脂は、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物であることが好ましく、エチレングリコールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物であることがより好ましい。
【0051】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量の調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0052】
カルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.4〜1.3が好ましい。
【0053】
フラン環を有するポリエステル樹脂の製造において、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて、エステル化触媒の存在下、160〜250℃の温度で行うことが好ましい。
【0054】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンテトラブトキシド、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0055】
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。
【0056】
ポリエステル変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分とビニル系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0057】
フラン環を有するポリエステル樹脂の固有粘度は、保存性と耐久性の観点から、0.4dl/g以上であり、0.5dl/g以上が好ましく、0.6dl/g以上がより好ましく、0.7dl/g以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、1.2dl/g以下であり、1.1dl/g以下が好ましく、1.0dl/g以下がより好ましく、0.8dl/g以下がより好ましく、0.7dl/g以下がより好ましい。
【0058】
フラン環を有するポリエステル樹脂の融点は、保存性と耐久性の観点から、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、235℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、280℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましく、235℃以下がさらに好ましい。
【0059】
フラン環を有するポリエステル樹脂の量は、保存性及び耐久性の観点から、重縮合に供する原料中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、85質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。同様に、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物の量は、重縮合に供する原料中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、85質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0060】
脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分とカルボン酸成分中のフランジカルボン酸化合物の総量は、保存性と耐久性の観点から、カルボン酸成分と、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の合計量中、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、100モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。
【0061】
また、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の量は、保存性と耐久性の観点から、カルボン酸成分と、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の合計量中、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、100モル%未満が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。
【0062】
フラン環を有するポリエステル樹脂は、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合反応によって得ることが好ましく、エステル化反応を行った後に、重縮合反応を行うことがより好ましい。すなわち、低分子量のエステル体を得たのちに、重縮合反応を行うことが好ましい。
【0063】
エステル化反応及び重縮合反応においては、エステル化触媒を用いることが好ましい。
【0064】
エステル化反応における反応温度は、130〜250℃が好ましく、150〜240℃がより好ましく、170〜230℃がさらに好ましい。
【0065】
重縮合反応における反応温度は、160〜280℃が好ましく、180〜260℃がより好ましく、190〜250℃がさらに好ましい。
【0066】
重縮合反応においては、圧力を調整することが好ましく、3kPa以下が好ましく、2kPa以下がより好ましく、1kPa以下がさらに好ましい。
【0067】
フラン環を有するポリエステル樹脂を合成する際に用いられる原料の脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の比率は、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物のモル比(脂肪族ジオール/フランジカルボン酸化合物)が、1.1〜3.0が好ましく、1.5〜2.8がより好ましく、1.8〜2.5がさらに好ましい。
【0068】
本発明の非晶質ポリエステル系結着樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合によるポリエステルユニットを含む樹脂をいい、ポリエステルだけでなく、ポリエステル・ポリアミド等も含まれるが、これらの中では、トナーの保存性及び帯電安定性の観点から、ポリエステルが好ましい。
【0069】
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい
【0070】
ポリエステル変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分とビニル系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0071】
本発明の結着樹脂の製造において、アルコール成分とカルボン酸成分とフラン環を有するポリエステル樹脂の重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、重縮合させて製造することができる。
【0072】
エステル化触媒としては、耐久性及び保存性の観点から、錫触媒及びチタン触媒が好ましい。
【0073】
錫触媒としては、酸化ジブチル錫等も挙げられるが、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましく、2-エチルヘキサン酸錫(II)がより好ましい。
【0074】
チタン触媒としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、総炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は総炭素数1〜28のアシルオキシ基を有する化合物がより好ましく、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートがさらに好ましい。
【0075】
エステル化触媒の使用量は、重縮合に供する原料の合計量100質量部に対して、0.1〜1.0質量部が好ましく、0.2〜0.7質量部がより好ましい。
【0076】
重縮合反応時の温度は、耐久性の観点から、200℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましい。また、保存性の観点から、250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましい。
【0077】
本発明の結着樹脂の軟化点は、保存性の観点から、100℃以上が好ましい。また、低温定着性の観点から、150℃以下が好ましい。
【0078】
本発明の結着樹脂は、低温定着性、耐久性及び保存性の観点から、軟化点の異なる2種の樹脂からなることが好ましい。
【0079】
軟化点が低い方の樹脂の軟化点は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、また、110℃以下が好ましい。軟化点が高い方の樹脂の軟化点は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、また、170℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0080】
軟化点が高い方の樹脂と軟化点が低い方の樹脂の質量比(軟化点が高い方の樹脂/軟化点が低い方の樹脂)は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び粉砕性の観点から、20/80〜80/20が好ましく、60/40〜40/60がより好ましい。
【0081】
本発明の結着樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、低温定着性の観点から、75℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。
【0082】
本発明の結着樹脂の酸価は、トナーの帯電性、保存性及び耐久性の観点から、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましい。また、トナーの吸湿性の観点から、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0083】
本発明の結着樹脂の水酸基価は、保存性及び耐久性の観点から、20mgKOH/g以上が好ましく、35mgKOH/g以上がより好ましい。また、保存性及び耐久性の観点から、55mgKOH/g以下が好ましく、45mgKOH/g以下がより好ましい。
【0084】
本発明の結着樹脂の数平均分子量は、ポリスチレン換算で、保存性及び耐久性の観点から、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、7000以下が好ましく、3000以下がより好ましい。
【0085】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の結着樹脂組成物の含有量は、結着樹脂中、90〜100質量%が好ましく、93〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。
【0086】
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0087】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0088】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0090】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
【0091】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0092】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0093】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
【0094】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0095】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0096】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
【0097】
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0098】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0099】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0100】
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0101】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0102】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【0103】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂、その製造方法、該結着樹脂を含有した静電荷像現像用トナーを開示する。
【0104】
<1> 炭素数3〜5の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、固有粘度が0.4〜1.2dl/gのフラン環を有するポリエステル樹脂とを重縮合する、トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂の製造方法。
【0105】
<2> アルコール成分及びフラン環を有するポリエステル樹脂と、さらにカルボン酸成分を重縮合する、前記<1>記載の製造方法。
<3> フラン環を有するポリエステル樹脂が、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物である、前記<1>又は<2>記載の製造方法。
<4> フラン環を有するポリエステル樹脂に用いられる脂肪族ジオールが、炭素数2〜6のα,ω−脂肪族ジオールである、前記<3>記載の製造方法。
<5> 炭素数2〜6のα,ω−脂肪族ジオールが、エチレングリコールである、前記<4>記載の製造方法。
<6> フラン環を有するポリエステル樹脂の量が、重縮合に供する原料中、5〜60質量%である、前記<1>〜<5>いずれか記載の製造方法。
<7> 脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分とカルボン酸成分中のフランジカルボン酸化合物の総量が、カルボン酸成分と、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の合計量中、10〜100モル%である、前記<2>〜<6>いずれか記載の製造方法。
<8> 脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の量が、カルボン酸成分と、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合物のフランジカルボン酸化合物部分の合計量中、10モル%以上100モル%未満である、前記<2>〜<7>いずれか記載の製造方法。
<9> カルボン酸成分がテレフタル酸化合物、イソフタル酸化合物及びフランジカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸化合物を含有する、前記<2>〜<8>いずれか記載の製造方法。
<10> 非晶質ポリエステル系結着樹脂の数平均分子量が、1000〜7000である、前記<1>〜8いずれか記載の製造方法。
<11> 重縮合反応時の温度が200〜250℃である、前記<1>〜<9>いずれか記載の製造方法。
<12> 重縮合反応を、錫触媒又はチタン触媒の存在下で行う、前記<1>〜<10>いずれか記載の製造方法。
<13> 錫触媒が、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物である、前記<12>記載の製造方法。
<14> 前記<1>〜<13>いずれか記載の製造方法により得られたトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂。
<15> 前記<14>記載のトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
<16> トナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂が、軟化点の異なる2種の樹脂からなる、前記<15>記載の静電荷像現像用トナー。
<17> 軟化点の異なる2種類の樹脂が、軟化点が80〜110℃の樹脂と軟化点が120〜170℃の樹脂である、前記<16>記載の静電荷像現像用トナー。
<18> フラン環を有するポリエステル樹脂が、脂肪族ジオールとフランジカルボン酸化合物の重縮合反応によって得られるものである、前記<15>〜<17>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【実施例】
【0106】
〔フラン構造を有するポリエステル樹脂の固有粘度〕
フェノールおよびテトラクロロエタンを60/40(wt比)にて混合した混合溶媒に、試料を0.1質量%、0.5質量%、0.8質量%の濃度で溶解し、30℃にてウベローデ型粘度計により溶液粘度を測定し、濃度0に外挿し、固有粘度を求めた。
【0107】
〔フラン構造を有するポリエステル樹脂の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度10℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最大ピークの頂点の温度を融点とする。
【0108】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0109】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度10℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0110】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0111】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0112】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0113】
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料をクロロホルムに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0114】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0115】
〔外添剤の平均粒子径〕
一次粒子の体積平均粒径を、平均粒子径として下記式より求める。
平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、例えば、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
【0116】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0117】
〔フラン環を有するポリエステル樹脂の製造〕
製造例1〔樹脂PEF−A及びPEF−B〕
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間エステル化反応を行った後、250℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後0.5kPaにてアルコール成分を留去しながら表1に示す固有粘度まで重縮合反応を行い、樹脂PEF−A及びPEF−Bを得た
【0118】
【表1】
【0119】
〔非晶質ポリエステル樹脂の製造〕
製造例2〔樹脂1〜9及び11〕
表2、3に示す原料モノマー、フラン構造を有するポリエステル樹脂又はポリエチレンテレフタレート(PET)及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、5.3kPaにて表2、3に示す軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0120】
製造例3〔樹脂10〕
表3に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、8kPaにて表3に示す軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0121】
製造例4〔樹脂12、13〕
表3に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、13.3kPaにて表3に示す軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。
【0122】
製造例5〔樹脂14〕
表3に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、無水トリメリット酸を投入し、1時間大気圧(101kPa)にて反応を行った後、13.3kPaにて表3に示す軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
〔静電荷像現像用トナーの製造〕
実施例1〜12及び比較例1〜3
表4に示す非晶質ポリエステルを合計で100質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)1質量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5質量部、及び離型剤「三井ハイワックスNP055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
【0126】
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒子径:約30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0127】
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、未定着の画像を得た。これに総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で画像の定着試験を行った。定着した画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。結果を表4に示す。
【0128】
試験例2〔保存性〕
20mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、湿度60%の環境下で60時間放置した。12時間毎に60時間までトナー凝集の発生程度を目視にて観察した。凝集の発生が認められた時点の時間の値が大きいほど保存性が良好である。結果を表4に示す。なお、表中の「>60」は60時間後も凝集は認められないことを示す。
【0129】
試験例3〔耐久性〕
「MICROLINE 3010」(沖データ社製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式)にトナーを実装し、温度32℃、湿度85%の環境下にて、トナーの画像が印刷された面積が全体の5.5%となるように斜めストライプのパターンを連続して印刷した。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジの有無を確認した。印刷は、画像上にスジが発生した時点で中止し、最高10000枚まで行った。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を、現像ロールにトナーが融着・固着したことによりスジが発生した枚数とした。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数が多いほど、トナーの耐久性が良好である。結果を表4に示す。なお、表中の「>10000」は10000枚印刷後もスジが認められないことを示す。
【0130】
【表4】
【0131】
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、いずれも低温定着性と耐熱保存性、耐久性とを両立できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の方法により得られるトナー用非晶質ポリエステル系結着樹脂を用いた静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。