(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材とによって区画された固液分離部を貫通して延びる少なくとも1つのスクリューとを具備し、該スクリューは、軸部と該軸部に一体に形成されていて螺旋状に延びる羽根部とを有し、前記可動部材は、回転するスクリューの羽根部によって押し動かされるように形成され、前記固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって該固液分離部の出口に向けて搬送しながら、その処理対象物から分離された濾液を前記固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外へ排出させる固液分離装置において、
回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗する前のスクリューを初期状態のスクリューとし、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至ったスクリューを交換時期のスクリューとしたとき、該スクリューがその初期状態から交換時期に至るまでに、前記可動部材の内周面に接触することのないスクリューの表面部分であって、処理対象物に接触するスクリューの表面部分に非粘着性物質がコートされ、初期状態にあるスクリューの表面部分であって、当該スクリューが交換時期に至るまでに前記可動部材の内周面に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされておらず、前記固定部材には、その全表面に非粘着性物質がコートされ、前記可動部材には非粘着性物質がコートされていないことを特徴とする固液分離装置。
複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材と、該可動部材と前記固定部材とによって区画された固液分離部を貫通して延びる少なくとも1つのスクリューとを具備し、該スクリューは、軸部と該軸部に一体に形成されていて螺旋状に延びる羽根部とを有し、前記可動部材は、回転するスクリューの羽根部によって押し動かされるように形成され、前記固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって該固液分離部の出口に向けて搬送しながら、その処理対象物から分離された濾液を前記固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外へ排出させる固液分離装置において、
回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗する前のスクリューを初期状態のスクリューとし、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至ったスクリューを交換時期のスクリューとしたとき、該スクリューがその初期状態から交換時期に至るまでに、前記可動部材の内周面に接触することのないスクリューの表面部分であって、処理対象物に接触するスクリューの表面部分に非粘着性物質がコートされ、初期状態にあるスクリューの表面部分であって、当該スクリューが交換時期に至るまでに前記可動部材の内周面に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされておらず、前記固定部材には、その全表面に非粘着性物質がコートされ、前記可動部材の内周面が回転するスクリューの羽根部の外周縁に接触することによって摩耗する前の可動部材を初期状態の可動部材とし、前記内周面が回転するスクリューの羽根部の外周縁に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至った可動部材を交換時期の可動部材としたとき、該可動部材がその初期状態から交換時期に至るまでに、前記スクリューの羽根部の外周縁に接触することのない可動部材の表面部分に非粘着性物質がコートされ、初期状態にある可動部材の表面部分であって、当該可動部材が交換時期に至るまで前記スクリューの外周縁に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされていないことを特徴とする固液分離装置。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出された廃水などの有機系汚泥、その有機系汚泥を微生物によって分解処理した汚泥、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離するために、上記形式の固液分離装置を用いることは従来より周知である(例えば、特許文献1乃至4参照)。この形式の固液分離装置によれば、回転するスクリューによって、可動部材を固定部材に対して積極的に運動させることができるので、可動部材を駆動する専用の駆動装置を設けずとも、可動部材と固定部材の間の濾液排出間隙に入り込んだ固形物を効率よく排出させ、濾液排出間隙の目詰まりを防止することができる。
【0003】
ところで、この種の固液分離装置を長時間使用すると、スクリューの羽根部や軸部に処理対象物、例えば汚泥が付着する。そのスクリューに付着した処理対象物は、これを搬送することができないため、時間の経過とともに、少しずつその付着量が増え、これを放置すると、固液分離部に処理対象物が詰まってしまうおそれがある。
【0004】
同様に固定部材と可動部材にも処理対象物が付着し、その付着量が多くなると、固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙が狭くなり、ここを流通する濾液の量が減少して、固液分離効率が低下する欠点を免れない。
【0005】
上述のようにスクリュー、固定部材及び可動部材の表面に汚泥などの処理対象物が付着し、その量が多くなったときは、固液分離装置を分解して、スクリューなどに付着した処理対象物を除去する清掃作業を行う必要がある。ところが、かかる清掃作業には多大な手間と時間を必要とする。
【0006】
そこで、処理対象物が接触するスクリュー、固定部材及び可動部材の全表面に非粘着性物質をコートすることが考えられる(特許文献1参照)。この構成を採用すれば、スクリュー、固定部材及び可動部材の表面に処理対象物が付着することを防止し、ないしは抑制することが可能であり、これによってこれらの部材の清掃作業をなくし、或いはその作業回数を減らすことを期待できる。
【0007】
ところが、本発明者の検討したところによると、処理対象物が接触するスクリュー、固定部材及び可動部材の全表面に非粘着性物質がコートされていると、そのコート層が早期に剥がれてしまうおそれのあることが判明した。その理由は以下のとおりである。
【0008】
本発明に係る固液分離装置においては、回転するスクリューの羽根部の外周縁が可動部材の内周面を押圧して、その可動部材を運動させている。その際、処理対象物が接触するスクリューの全表面に非粘着性物質がコートされ、その羽根部の外周縁にも非粘着性物質がコートされていると、スクリューの回転時にその外周縁が可動部材の内周面に強く摺擦するので、当該スクリューの外周縁にコートされた非粘着性物質が剥がれてしまう。しかも、一旦、非粘着性物質のコート層が剥がれ始まると、これが漸次拡大し、遂にはスクリュー全体の非粘着性物質が全て剥離してしまうおそれがある。
【0009】
同様に、可動部材の全表面に非粘着性物質がコートされ、その内周面にも非粘着性物質がコートされていると、その内周面に回転するスクリューの羽根部の外周縁が強く摺接することによって、可動部材の内周面にコートされた非粘着性物質が剥がされ、これが漸次拡大するおそれを免れない。
【0010】
上述のように、スクリュー、固定部材及び可動部材の全表面に非粘着性物質をコートするだけでは、その非粘着性物質が早期に剥がされるので、これらの表面に処理対象物が付着することを長期に亘って防止することはできないのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、長期に亘ってスクリュー、固定部材及び可動部材の表面に処理対象物が多量に付着することを阻止できる冒頭に記載した形式の固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の固液分離装置において、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗する前のスクリューを初期状態のスクリューとし、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至ったスクリューを交換時期のスクリューとしたとき、該スクリューがその初期状態から交換時期に至るまでに、前記可動部材の内周面に接触することのないスクリューの表面部分であって、処理対象物に接触するスクリューの表面部分に非粘着性物質がコートされ、
初期状態にあるスクリューの表面部分であって、当該スクリューが交換時期に至るまでに前記可動部材の内周面に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされておらず、前記固定部材には、その全表面に非粘着性物質がコートされ、前記可動部材には非粘着性物質がコートされていないことを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0014】
同じく本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の固液分離装置において、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗する前のスクリューを初期状態のスクリューとし、回転するスクリューの羽根部の外周縁が前記可動部材の内周面に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至ったスクリューを交換時期のスクリューとしたとき、該スクリューがその初期状態から交換時期に至るまでに、前記可動部材の内周面に接触することのないスクリューの表面部分であって、処理対象物に接触するスクリューの表面部分に非粘着性物質がコートされ、
初期状態にあるスクリューの表面部分であって、当該スクリューが交換時期に至るまでに前記可動部材の内周面に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされておらず、前記固定部材には、その全表面に非粘着性物質がコートされ、前記可動部材の内周面が回転するスクリューの羽根部の外周縁に接触することによって摩耗する前の可動部材を初期状態の可動部材とし、前記内周面が回転するスクリューの羽根部の外周縁に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至った可動部材を交換時期の可動部材としたとき、該可動部材がその初期状態から交換時期に至るまでに、前記スクリューの羽根部の外周縁に接触することのない可動部材の表面部分に非粘着性物質がコートされ
、初期状態にある可動部材の表面部分であって、当該可動部材が交換時期に至るまで前記スクリューの外周縁に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされていないことを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項2)。
【0015】
また、上記請求項2に記載の固液分離装置において、初期状態の可動部材の内周面から該可動部材の外周面の側に所定距離あけて当該内周面に沿って延びる曲線を可動部材の表面に考えたとき、
初期状態にある可動部材の前記内周面と前記曲線とによって区画された可動部材の領域と、該可動部材の内周面とには非粘着性物質はコートされておらず、初期状態にある前記可動部材の前記内周面と前記曲線とによって区画された可動部材の領域と、該可動部材の内周面とを除く可動部材の表面部分に、非粘着性物質がコートされていて、前記所定の距離は、前記可動部材がその初期状態から交換時期に至るまでに、回転するスクリューの羽根部の外周縁との接触により生じる最大の摩耗量に等しく設定されているように構成することができる(請求項3)。
【0016】
さらに、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、初期状態のスクリューの羽根部の外周縁から前記軸部の側に所定距離をあけて当該外周縁に沿って延びる曲線をスクリューの羽根部の表面に考えたとき、
初期状態にあるスクリューの前記外周縁と前記曲線とによって区画された羽根部の領域と、該羽根部の外周縁とには非粘着性物質はコートされておらず、初期状態にあるスクリューの前記外周縁と前記曲線とによって区画された羽根部の領域と、該羽根部の外周縁とを除くスクリューの表面部分であって、処理対象物に接触するスクリューの表面部分に、非粘着性物質がコートされていて、前記所定の距離は、前記スクリューがその初期状態から交換時期に至るまでに、前記可動部材の内周面との接触により生じる最大の摩耗量に等しく設定されているように構成することができる(請求項4)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、スクリューがその交換時期に至るまで、可動部材の内周面が、スクリューにコートされた非粘着性物質に接触することはないので、スクリューが交換時期に至るまで、そのスクリューにコートされた非粘着性物質が剥がされることはない。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、上述した効果を奏することができると共に、可動部材が交換時期に至るまで、スクリューの羽根部外周縁が、可動部材にコートされた非粘着性物質に接触することはないので、可動部材が交換時期に至るまで、その可動部材にコートされた非粘着性物質が剥がされることはない。
【0019】
さらに、請求項1に係る発明によれば、可動部材には非粘着性物質がコートされていないため、可動部材の製造コストを低減でき、しかもその可動部材に多量の処理対処物が付着することを阻止できる。
【0020】
また、請求項1及び2のいずれに記載の発明においても、固定部材の全面に非粘着性物質がコートされているので、その固定部材の製造コストを低減でき、さらにスクリュー、固定部材及び可動部材のいずれにも処理対象物が多量に付着することを防止でき、これらに対する清掃作業をなくし、或いはその作業回数を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明し、併せて前述の従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
【0023】
図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0024】
ここに示した固液分離装置は、上部に汚泥の流入口3が形成され、かつ内部が中空に形成された入口部材1と、脱水処理されたケーキ状の汚泥が排出される排出口4が下部に形成された出口部材2と、その出口部材2と入口部材1との間に配置された複数の固定部材5と、隣り合う固定部材5の間に配置された可動部材6とを有している。
【0025】
図2は
図1に示した多数の固定部材5のうちの隣り合う2つの固定部材5と、その2つの固定部材5の間に配置された1つの可動部材6を示す分解斜視図であり、
図3は固液分離装置の一部を示す拡大縦断面図である。
図1乃至
図3から判るように、固定部材5と可動部材6は互いに平行な姿勢で軸線方向に配列され、隣り合う固定部材5の間に配置された小リング状の複数のスペーサ7によって、複数の固定部材5が互いに間隔をあけて同心状に配置され、その隣り合う固定部材5の間に1つの可動部材6が配置されている。
【0026】
本例の固定部材5と可動部材6は、共に円形の貫通孔8,9が形成されたリング状の板材により構成されている。
図1に示すように、多数の固定部材5と可動部材6を向いた側の入口部材1の側板12には開口10が形成され、同じく多数の固定部材5と可動部材6を向いた側の出口部材2の側板13にも開口11が形成されている。
図3に示すように、固定部材5と可動部材6の内部には、その貫通孔8,9によって区画された中空な固液分離部21が区画されている。
【0027】
図1に示すように、固液分離部21の入口部材1の側の端部が、固液分離部21の入口22となっていて、出口部材2の側の端部が、当該固液分離部21の出口23となっている。また、
図1に示すように、入口部材1の下部は、支持フレームのステー14に固定され、出口部材2の下部も支持フレームのステー15に固定されている。
【0028】
図2及び
図3に示すように、各固定部材5には4つの取付孔17がそれぞれ形成され、その各取付孔17と、隣り合う固定部材5の間に配置されたスペーサ7の中心孔には、ステーボルト18がそれぞれ貫通して延びている。その各ステーボルト18は、
図1に示したように、入口部材1の側板12と出口部材2の側板13を貫通し、各ステーボルト18の各長手方向端部に形成された雄ねじに、ナット19,20がそれぞれ螺着されて締め付けられている。これにより、複数の固定部材5が、互いに一体的に固定連結されると共に、その固定部材5が入口部材1と出口部材2に対して固定されている。なお、
図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどの図示を省略してある。
【0029】
上述した固液分離部21には、その固液分離部21を区画する固定部材5と可動部材6の貫通孔8,9を貫通して延びる1つのスクリュー24が配置されている。このスクリュー24は、軸部25と、その軸部25に一体に形成されていて螺旋状に延びる羽根部26とを有していて、軸部25は、スクリュー24の中心部を構成している。
図1に示すように、スクリュー24は、入口部材1と出口部材2の側板12,13に形成された開口10,11を貫通して延びていて、そのスクリュー24の軸部25の一方の端部が出口部材2に軸受35を介して回転自在に支持され、軸部25の他方の端部は、入口部材1に固定支持されたモータ27の出力軸28に着脱可能に固定連結されている。スクリュー24は、入口部材1と出口部材2に接触することはない。
【0030】
上述のように、本例の固液分離装置は、その固液分離部21を貫通して延びる1本のスクリュー24を有しているが、後述するように、複数のスクリューを有する固液分離装置にも本発明を適用することができる。固液分離装置は、可動部材と固定部材とによって区画された固液分離部を貫通して延びる少なくとも1つのスクリューを有しているのである。
【0031】
スペーサ7によって互いに間隔をあけて配置された各固定部材5を、これらがわずかに遊動できるように組み付けることもできる。また、隣り合う2つの固定部材のうちの一方の固定部材にスペーサを一体に形成し、そのスペーサによって、隣り合う2つの固定部材の間に間隙を形成し、ここに可動部材を配置することもできる。
【0032】
図3に示すように、各固定部材5の間にそれぞれ配置された各可動部材6の厚さTは、各固定部材間の間隙幅Gより小さく設定され、特に
図5に明示するように、各固定部材5の端面と、これに対向する可動部材6の端面の間には、微小な濾液排出間隙gが形成される。かかる微小濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させるための隙間である。可動部材6の厚さTは、例えば、1.0mm乃至3mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば1.2mm乃至5mm程に設定される。また、固定部材5の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。濾液排出間隙g、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0033】
図4は、固定部材5と、可動部材6と、隣り合う固定部材5の間に配置されたスペーサ7と、ステーボルト18の配置状態を示す説明図であり、この図では、図を判りやすくするため、可動部材6を破線で示すと共に、この図における各部材のサイズや形態、或いはその相対位置などは、
図3と一致していない。ここで、固定部材5の周方向に隣り合う2つのスペーサ7の間の間隔をLとしたとき、この間隔Lの方が可動部材6の外径D
4よりも小さくなっている(L<D
4)。このため、可動部材6が隣り合う固定部材5の間から抜け出ることが阻止される。また、
図2にも示すように、複数のスペーサ7の固定部材5の中心側の部分に接する円CCを考えたとき、各可動部材6の外径D
4は、円CCの直径D
1よりも小さく、しかも各可動部材6の外径D
4が各固定部材5の内径D
3よりも大きく設定されている(D
1>D
4,D
4>D
3)。これにより、各可動部材6は、各固定部材5の貫通孔8から抜け出ることなく、該可動部材6の半径方向に可動で、かつ隣り合う固定部材5の間に回転可能に保持される。
【0034】
図1に矢印Aで示したように、多量の水分を含んだ汚泥は、流入口3から入口部材1内に送り込まれる。その際、処理前の汚泥の含水率は、例えば99重量%程度であり、この汚泥には予め凝集剤が混入されていて、汚泥がフロック化されている。かかる汚泥が入口部材1に流入するとき、モータ27の作動によって、スクリュー24が、その中心軸線のまわりに回転駆動されているので、その汚泥は、
図1に矢印Bで示すように、入口部材1の側板12に形成された開口10を通って、固定部材5と可動部材6により構成された固液分離部21に流入する。このように、汚泥は固液分離部21にその軸線方向一端側の入口22から流入するのである。なお、各図には汚泥の図示を省略してある。
【0035】
上述のようにして固液分離部21に流入した汚泥は、モータ27により回転駆動されたスクリュー24によって、
図1及び
図3に矢印Cで示したように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23へ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定部材5と可動部材6との間の濾液排出間隙g(
図5参照)を通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、
図1に示したようにステー14,15に固定された濾液受け部材30に受け止められ、次いで濾液排出管31を通って流下する。
【0036】
ここで、
図3に示す如く、スクリュー24の羽根部26の外径D
6は、そのスクリュー24の回転が阻害されないように、固定部材5の内径D
3よりもわずかに小なる大きさに設定され(D
3>D
6)、スクリュー24が固定部材5に接触することはない。またスクリュー24の羽根部26の外径D
6は、可動部材6の内径D
5よりも大きく設定されている(D
6>D
5)。このため、スクリュー24が回転したとき、そのスクリュー24の羽根部26の外周縁32は、可動部材6の内周面33に摺接しながら、可動部材6をその半径方向に押し動かす。このため、各可動部材6は、固定部材5に対して積極的に運動する。このようにして、可動部材6を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、濾液排出間隙gに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、その間隙gに対するクリーニング効率を高めることができる。回転するスクリュー24によって可動部材6が押し動かされるように、各可動部材6が形成されているのである。
【0037】
上述のように固液分離部21内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が、
図1に矢印Dで示すように、固液分離部21の軸線方向他端側の出口23から排出される。この出口23に対向して、スクリュー24に固定された背圧板34が設けられ、出口23から排出される汚泥が背圧板34に当り、出口23から排出される汚泥の量が規制される。固液分離部21から排出された汚泥は、出口部材2の排出口4を通して下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。
【0038】
上述のように、固液分離装置は、その固液分離部内に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって、固液分離部の出口に向けて搬送しながら、その処理対象物から分離された濾液を、固定部材と可動部材の間の濾液排出間隙を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を固液分離部の出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。
【0039】
以上が固液分離装置の基本構成とその動作である。かかる固液分離装置によれば、効率よく汚泥中の水分を分離することが可能である。ところが、先に説明したように、固液分離装置を構成するスクリュー24や固定部材5や可動部材6の表面に多量の汚泥が付着すると、装置の機能が害される。
【0040】
そこで、本例の固
液分離装置おいては、スクリュー24の表面に非粘着性物質がコートされている。非粘着性物質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(デュポン社商標テフロン)などのフッ素系樹脂を使用することができる。後述するように、固定部材5と可動部材6の表面にコートされる非粘着性物質としても、テフロンなどのフッ素系樹脂を使用することができる。
【0041】
ここで、仮にスクリュー24の全面に非粘着性物質がコートされ、その羽根部26の外周縁32にも非粘着性物質をコートされていたとすると、スクリュー24の回転時にその外周縁32が可動部材6の内周面33に摺擦するので、外周縁32にコートされた非粘着性物質が剥がされ、これが漸次大きく拡大する。
【0042】
上述した不具合を回避するには、スクリュー24の外周縁32だけに非粘着性物質をコートしないようにすればよい。ところが、新品のスクリュー24を組み付けて固液分離装置を使用し続けると、スクリュー24の羽根部26の外周縁32は、可動部材6の内周面33に摺接し続けるので、その外周縁32は可動部材6の内周面33との接触によって少しずつ摩耗する。このようにスクリュー24の外周縁32は摩耗するので、新品のスクリュー24の外周縁32だけに非粘着性物質をコートせず、その他のスクリュー24の表面全体に非粘着性物質をコートしたとすると、その外周縁32の摩耗が進むにつれて、可動部材6の内周面33が、スクリュー24の外周縁32以外の面にコートされた非粘着性物質に当たるようになり、これによってその非粘着性物質のコート層が剥がされ、これが大きく拡大する。そこで、本例のスクリュー24には、次のように非粘着性物質がコートされている。
【0043】
まず、回転するスクリュー24の羽根部26の外周縁32が可動部材6の内周面33に接触することによって摩耗する前のスクリュー24、すなわち未だ実際に使用を開始していない新品のスクリュー24を初期状態のスクリューと称することにする。これに対し、回転するスクリュー24の羽根部26の外周縁32が、可動部材6の内周面33に接触することによって、その外周縁32が摩耗した結果、交換すべき時期に至ったスクリュー24を交換時期のスクリューと称することにする。スクリュー24を長時間使用した結果、その外周縁32が予め決められた量だけ摩耗し、そのスクリュー24を新たなスクリューと交換しなければならなくなったときのスクリュー24を交換時期のスクリューと称するのである。
【0044】
ここで、本例のスクリュー24においては、これがその初期状態から交換時期に至るまでの間に、可動部材6の内周面33に接触することのないスクリュー24の表面部分であって、搬送される汚泥に接触するスクリュー24の表面部分に非粘着性物質がコートされている。
逆に言えば、初期状態にあるスクリュー24の表面部分であって、そのスクリュー24が交換時期に至るまでに可動部材6の内周面33に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされていないのである。
【0045】
上記構成によれば、スクリュー24が初期状態から交換時期に至るまでの間、可動部材6の内周面33がスクリュー24にコートされた非粘着性物質に接触することはない。このため、スクリュー24が交換時期に至るまで、そのスクリュー24にコートされた非粘着性物質が可動部材6の内周面33との接触によって剥がされることはなく、スクリュー24への汚泥の付着を効果的に防止することができる。
【0046】
上述した構成のより具体的な例を示すと、
図2から判るように、初期状態のスクリュー24の羽根部26の外周縁32から、そのスクリュー24の軸部25の側に所定距離dをあけて、その外周縁32に沿って延びる曲線Eを、初期状態にあるスクリュー24の羽根部26の表面に考える。このとき、
初期状態にあるスクリュー24の外周縁32と前記曲線Eとによって区画された羽根部26の領域Fと、該羽根部26の外周縁32とには非粘着性物質はコートされておらず、初期状態にあるスクリュー24の外周縁32と上記曲線Eとによって区画された領域Fと、初期状態にあるスクリュー24の羽根部26の外周縁32とを除くスクリュー24の表面部分であって、搬送される汚泥に接触するスクリュー24の表面部分に、非粘着性物質がコートされている。例えば、
図2に点々の梨地模様を付した初期状態にあるスクリュー24の表面部分に非粘着性物質がコートされているのである。
【0047】
しかも、上記所定の距離dは、スクリュー24がその初期状態から交換時期に至るまでに、可動部材6の内周面33との接触により生じる最大の摩耗量に等しく設定されている。スクリュー24の外周縁32と、可動部材6の内周面33との接触状態は、スクリュー24の長手方向に沿ってばらつきがあるため、外周縁32の摩耗量は、スクリュー24の長手方向において一定とならないことがあるが、このような場合にも、その最大の摩耗量を所定の距離dとするのである。この距離dの値は、固液分離装置の諸条件によって定まるが、通常は、例えば5mm程度である。
【0048】
上記構成によれば、初期状態にあるスクリュー24を使用し始めた後、そのスクリュー24の外周縁32が、可動部材6の内周面33との接触によって摩耗し続け、当該スクリュー24が遂に交換時期に至るまでの間に、スクリュー24の表面にコートされた非粘着性物質が、可動部材6の内周面33に接触することはない。このため、そのコート層が剥がされることを阻止でき、長期に亘ってスクリュー24に多量の汚泥が付着することを阻止できる。これによりスクリュー24の清掃作業をなくし、或いはその清掃作業の回数を減少させることができる。
【0049】
なお、
図1に示すように、スクリュー24の軸部25の一方の端部は、軸受35に接触し、他方の端部はモータ27の出力軸28に接触しているので、これらの端部を含めた領域X,Yには非粘着性物質をコートしない。通常は、入口部材1と出口部材2の間のスクリュー24の部分に対して、前述したように、非粘着性物質をコートすれば充分である。
【0050】
一方、固定部材5には、その全表面に亘って非粘着性物質がコートされている。いずれの固定部材5も、回転するスクリュー24に接触することはないので、各固定部材5の全表面に非粘着性物質がコートされていても、これが回転するスクリュー24によって剥がされることはない。このように、固定部材5に非粘着性物質をコートすることによって、その表面に多量の汚泥が付着することを阻止できる。
【0051】
図2及び
図3に示したように固定部材5には取付孔17が形成されていて、この取付孔17にはステーボルト18が挿入されるので、取付孔17の内周面に非粘着性物質をコートする意味はなく、従ってここには非粘着性物質をコートしなくともよい。ところが、固定部材5の一部にのみ非粘着性物質をコートしないようにすると、固定部材5に非粘着性物質を塗布する際の作業が煩雑となる。そこで、本例の固定部材5には、その全面に非粘着性物質がコートされている。このようにして、固定部材5のコストの上昇を抑えることができるのである。
【0052】
一方、本例の可動部材6には、その全面に亘って非粘着性物質がコートされていない。このように可動部材6に非粘着性物質がコートされていなくとも、次に示すように、可動部材6の表面に多量の汚泥が付着することを防止できる。
【0053】
図5は、隣り合う2つの固定部材5と、その各固定部材5よりも汚泥搬送方向上流側に位置する可動部材6を示す説明図である。固液分離部内の汚泥は、回転するスクリュー24(
図5には示さず)によって、矢印C方向に搬送される。ここでスクリュー24が回転すると、可動部材6は、そのスクリュー24から半径方向の外力を受けると共に、汚泥の搬送に伴い、その搬送方向Cにも外力を受け、これにより可動部材6は固定部材5に対して
図5に矢印Iで示す力で押圧される。このとき、固定部材5には非粘着性物質がコートされているので、その表面に多量の汚泥が付着することはない。これに対し、可動部材6の表面には非粘着性物質がコートされていないので、その表面に汚泥が付着しようとするが、その一方の面6Aは固定部材5の面5Aに力Iで押し付けられていて、しかもその可動部材6はスクリュー24の回転によって固定部材5に対して可動部材6の半径方向に運動しているので、可動部材6の一方の面6Aに付着した汚泥は、固定部材5に対する運動によって掻き取られる。また、可動部材6の他方の面6Bにも汚泥が付着するが、固液分離部内で搬送される汚泥から分離された濾液が矢印Jで示すように、固定部材5と可動部材6との間の微小な濾液排出間隙gを通して固液分離部外に流出するので、その流れの勢いによって、可動部材6の面6Bに付着し、或いは付着しようとした汚泥は、流されて固液分離部外に排出される。
【0054】
上述のように、可動部材6の表面には非粘着性物質がコートされていないが、その表面に多量の汚泥が付着することはない。このため、濾液が排出される間隙が、固定部材5と可動部材6の表面に付着した汚泥によって大きく狭められ、汚泥の固液分離効率が低下する不具合を阻止できる。しかも、可動部材6の表面には非粘着性物質がコートされていないので、その製造コストを低く抑えることができる。
【0055】
また、上述のように可動部材6の全面に非粘着性物質をコートしない構成とする代わりに、次のように可動部材6の表面に非粘着性物質をコートすることもできる。
【0056】
ここで、可動部材6の内周面33が、回転するスクリュー24の羽根部26の外周縁32に接触することによって摩耗する前の可動部材6、すなわち使用開始前の新品な可動部材6を初期状態の可動部材と称することにする。これに対し、内周面33が回転するスクリュー24の羽根部26の外周縁32に接触することによって摩耗して、交換すべき時期に至った可動部材6を交換時期の可動部材と称することにする。可動部材6を長時間使用した結果、その内周面33が、スクリュー24の外周縁32との接触により予め決められた量だけ摩耗し、その可動部材6を新たな可動部材と交換しなければならなくなった可動部材6を交換時期の可動部材と称するのである。
【0057】
その際、可動部材6がその初期状態から交換時期に至るまでに、スクリュー24の羽根部26の外周縁32に接触することのない初期状態の可動部材6の表面部分に非粘着性物質がコートされている。
逆に言えば、初期状態にある可動部材6の表面部分であって、可動部材6が交換時期に至るまでスクリュー24の外周縁32に接触する表面部分には非粘着性物質はコートされていないのである。
【0058】
上記構成によれば、可動部材6が初期状態から交換時期に達するまでの間、スクリュー24の外周縁32が、可動部材6にコートされた非粘着性物質に接触することはないので、可動部材6にコートされた非粘着性物質がスクリュー24の外周縁32との接触によって剥がされることはない。しかも、可動部材6に非粘着性物質がコートされているので、その可動部材6に汚泥が付着することをより効果的に防止でき、濾液排出間隙gの詰まりをより一層確実に阻止できる。
【0059】
上述した構成のより具体的な例を示す。
図6は、初期状態の可動部材6を示す正面図である。この図に示すように、初期状態の可動部材6の内周面33からその可動部材6の外周面の側に所定距離d1あけて、その内周面33に沿って延びる曲線E1を、初期状態にある可動部材6の表面に考える。このとき、
初期状態にある可動部材6の内周面33と前記曲線E1とによって区画された可動部材6の領域F1と、該可動部材6の内周面33とには非粘着性物質はコートされておらず、初期状態にある可動部材6の内周面33と上記曲線E1とによって区画された可動部材6の領域F1と、初期状態にある可動部材6の内周面33とを除く可動部材6の表面部分に、非粘着性物質がコートされている。例えば、
図6に点々の梨地模様を付した初期状態にある可動部材6の表面部分に非粘着性物質がコートされているのである。
【0060】
しかも、上記所定の距離d1は、可動部材6がその初期状態から交換時期に至るまでに、回転するスクリュー24の羽根部26の外周縁32との接触によって生じる最大の摩耗量に等しく設定されている。
【0061】
前述のように、スクリュー24の外周縁32と可動部材6の内周面33との接触状態は、スクリュー24の長手方向に沿ってばらつきがあるので、各可動部材6の内周面33の摩耗量も一定しないことがあるが、このような場合にも、その最大の摩耗量を所定の距離d1とするのである。この距離d1も、固液分離装置の諸条件により定まるが、通常は、例えば5mm程度である。
【0062】
上述した構成によると、初期状態にある可動部材6を使用し始めた後、その可動部材6の内周面33がスクリュー24の外周縁32との接触によって摩耗し続け、当該可動部材6が遂に交換時期に至るまでの間、可動部材6の表面にコートされた非粘着性物質が、スクリュー24の外周縁22に接触することはない。このため、そのコート層が剥がれることを阻止でき、濾液排出間隙gが汚泥によって詰まってしまう不具合をより一層確実に防止できる。これにより、可動部材6の清掃作業をなくし、或いはその回数を減らすことができる。前述の領域F1と内周面33とを除く初期状態にある可動部材6の全表面に非粘着性物質がコートされていることが望ましい。
【0063】
以上、スクリュー24が1本だけ設けられた固液分離装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、特許第3565841号公報や特許第3638597号公報に記載されているように、複数の固定部材と、隣り合う固定部材の間に配置された可動部材とを有する固液分離部を貫通して伸びる複数のスクリューを備えた固液分離装置にも、支障なく適用できるものである。さらに、特許第3638597号公報に記載された固液分離装置のように、上部が開放した凹部を有する可動部材と固定部材を用いた場合には、かかる可動部材と固定部材の上方から、固液分離部に処理対象物を供給することもできる。この場合には、固液分離部の入口が、固定部材と可動部材の上方に位置することになる。
【0064】
本発明は、上述した各構成を各種改変して構成できるものである。