(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188188
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】パネルマウントコネクタの誤挿入防止構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/74 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
H01R13/74 J
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273210(P2012-273210)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120258(P2014-120258A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243342
【氏名又は名称】本多通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大阿久 清志
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−172273(JP,U)
【文献】
特開2002−075542(JP,A)
【文献】
特開2011−249012(JP,A)
【文献】
特開2012−003984(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0258638(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102714376(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタの取付孔側の外周面に設けられた凹溝に嵌合されるコネクタ抜止め用の環状本体部とその環状本体部の一部に設けた切欠き部とでなる弾性係止片を有するパネルマウントコネクタと、
前記パネルマウントコネクタを取り付ける平板状のパネルに穿設されている取付孔との取付構造において、
異種の前記パネルマウントコネクタを前記取付孔に取り付ける場合に、一方のパネルマウントコネクタ側においてコネクタ側とパネル側との間で互いに相補的に取付可能に対応することで誤挿入を防止する誤挿入防止手段が設けられてなり、
前記誤挿入防止構造は、
パネルマウントコネクタのプラグ側に設けられる誤挿入防止用の段部と、
パネルマウントコネクタのジャック側に設けられる誤挿入防止用の第2の段部と、
前記ジャック用とプラグ用のパネル側のそれぞれの取付孔として前記段部を通過させる通過溝を有したプラグ用の取付孔と、該プラグ用の取付孔とは別に前記第2の段部を通過させる第2の通過溝を有したジャック用の取付孔とで構成され、
前記プラグ側の段部の横幅と、前記ジャック側の第2の段部との横幅との大きさを比較すると、前記第2の段部のほうが大きく、
また、前記ジャック側の第2の段部には前記第2の通過溝に設けられた突起部を通過させるためのスリットが設けられてなり、
前記第2の段部におけるスリットが設けられる位置は、前記係止片の両突起部の取付孔通過時の収縮作用を邪魔しない範囲内にするため、前記両突起部が周方向に移動して当該突起部間の最も狭くなる範囲aの内側に設けられていること、
を特徴とするパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置される太陽光発電装置等における筐体を形成するパネルのコネクタ取付孔に水密性を維持して取付けるパネルマウントコネクタ(プラグとジャック)の誤挿入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パネルマウントコネクタにおけるプラグ及びジャックのパネル取付方法は、
図7(A),(B)に示すように、丸型のパネル取付用コネクタの同軸コンタクト21、丸型コンタクト22におけるパネル固定方法において、パネルの取付孔に前記コンタクトを装着した後に当該コンタクトが抜け出ないように、環状の凹溝21a,22aに嵌合させた収縮可能な係止片23を用いてワンタッチ式のロック方法となっているものが知られている。前記係止片23の形状を
図7(C)に示すように、環状で一部が切欠かれたリングであり、挿入方向に先細くしたテーパ状23aに形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開特開2009−103655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパネルマウントコネクタは、平板状のパネルに穿設された丸形の取付孔に挿入して、前記リングにより抜け防止されるものであって、脱着防止用のリングを設けているが、複数のコネクタプラグとコネクタジャックとが、通常前記パネルに取付けられることが多い。しかしながら、それに対する誤挿入防止構造がなされていないので、前記コネクタの取付け工程において、パネルマウントコネクタプラグとパネルマウントコネクタジャック、その他異なるコネクタ等の異種のコネクタにおける、それぞれの取付け位置を誤るおそれがある。本発明に係るパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、コネクタの取付孔側の外周面に設けられた凹溝に嵌合されるコネクタ抜止め用の環状本体部とその環状本体部の一部に設けた切欠き部とでなる弾性係止片を有するパネルマウントコネクタと、前記パネルマウントコネクタを取り付ける平板状のパネルに穿設されている取付孔との取付構造において、異種の前記パネルマウントコネクタを前記取付孔に取り付ける場合に、一方のパネルマウントコネクタ側においてコネクタ側とパネル側との間で互いに相補的に取付可能に対応することで誤挿入を防止する誤挿入防止手段が設けられてなり、前記誤挿入防止構造は、パネルマウントコネクタのプラグ側に設けられる誤挿入防止用の段部と、パネルマウントコネクタのジャック側に設けられる誤挿入防止用の第2の段部と、前記ジャック用とプラグ用のパネル側の
それぞれの取付孔として前記段部を通過させる通過溝
を有したプラグ用の取付孔と、該プラグ用の取付孔とは別に前記第2の段部を通過させる第2の通過溝
を有したジャック用の取付孔とで構成され、前記プラグ側の段部の横幅と、前記ジャック側の第2の段部との横幅との大きさを比較すると、前記第2の段部のほうが大きく、また、前記ジャック側の第2の段部には前記第2の通過溝に設けられた突起部を通過させるためのスリットが設けられてなり、前記第2の段部におけるスリットが設けられる位置は、前記係止片の両突起部の取付孔通過時の収縮作用を邪魔しない範囲内にするため、前記両突起部が周方向に移動して当該突起部間の最も狭くなる範囲aの内側に設けられていることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパネルマウントコネクタプラグの誤挿入防止構造によれば、誤挿入防止手段である、例えば、突起部若しくは凹部と、これに対応するパネルの取付孔の凹部若しくは突起部との構造により、異種のパネルマウントコネクタを取り違えて、パネルに取付けてしまうような作業ミスを事前に防ぐことができるとともに、抜止め用の係止片の取付孔挿通時の収縮を邪魔しない範囲において前記誤挿入防止構造が設けられているので、抜け止め作用を確実に発揮しつつ誤挿入も防止できるものである。
【0009】
また、同種のコネクタを複数でパネルに取り付ける場合にも、第2の誤挿入防止手段を設ける位置を前記段部及び通過溝の位置に対して周方向において異なるように配置することで、事前に取付けミスを防止できるようになると言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-A】パネルマウントコネクタプラグ1であって、係止片2を装着している実施例を示す斜視図(A)と、平面図(B)とである。
【
図2-A】パネル3側の取付孔3aの形状を示す正面図(A),パネルマウントコネクタプラグ1を取り付けた状態の断面図(B)である。
【
図2-B】同本発明のパネルマウントコネクタプラグ1を取付ける側で、パネルの取付孔3aの各他の実施例に係る正面図(A)〜(C)である。
【
図3】同本発明に係るパネルマウントコネクタジャック1gにおける誤挿入防止構造の実施例を示す斜視図(A)と平面図(B)とである。
【
図4】同本発明に係るパネルマウントコネクタジャック1gを取付ける側のパネルの取付孔3aを示す正面図(A)と、他の実施例に係る取付孔3aの正面図(B)〜(D)である。
【
図5】他の実施例に係るパネルマウントコネクタプラグ1の斜視図である。
【
図6】筐体のパネル3の取付孔3aに固定したパネルマウントコネクタプラグ1とパネルマウントコネクタジャック1gとに、筐体内側においてウエッジ5をそれぞれ取り付けて、前記両コネクタの抜け防止を施す様子を順番に説明する説明斜視図(A),(B),(C),(D)である。
【
図7】従来例にかかる同軸コンタクトの平面図(A)と、丸型コンタクトの平面図(B)と、係止片23の斜視図(C)とである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るパネルマウントコネクタプラグとパネルマウントコネクタジャックとに係るパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造は、
図1乃至
図4に示すように、係止片用の段部を通過させる通過溝をパネルの取付孔に設けるとともに、一方のパネルマウントコネクタに前記係止片の取付孔通過時の収縮作用を邪魔しない範囲において誤挿入防止手段を設けるものである。
【実施例1】
【0012】
本発明に係るパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造について説明する。
図1−Aに示すように、パネルマウントコネクタプラグ1は、当該コネクタプラグ1の取付孔側の外周面に設けられた凹溝1aに嵌合されるコネクタ抜止め用の環状本体部2dと、その環状本体部2dの一部に設けた切欠き部2bとでなる弾性係止片2を有するパネルマウントコネクタプラグである。
【0013】
図1−Bに示すように、前記パネルマウントコネクタプラグ1の凹溝1aに嵌合する係止片2は、環状でその一部に切欠き部2bを有する本体部2dがある。該本体部2dの対向する両端縁部
の突起部2aに、その突起部2aにおける軸線a方向の端部から、前記軸線a方向に突出させた突出部2cをそれぞれ設けている。
【0014】
前記両突出部2cは、切欠き部2bを挟んで一対で対向して全部で4カ所にあるが、パネル3側の取付孔3aとの引掛かりを確保するのが目的なので、最低限、軸線aの後端側に突出部2cがあれば良いので、後端側のみに、切欠き部2bを挟んで対向した2カ所の突出部2cとすることも含むものである。更に、前記突出部2cが、係止片2の幅bよりも広くして軸線a方向に突出しているのは、嵌合相手の凹溝1aにおいて、係止片2が遊嵌して摺接する範囲内の外周壁面に凸部等の障害物を形成することができないからである。
【0015】
図2−A(A),(B)に示すように、前記パネルマウントコネクタプラグ1を取り付けるパネル3の、取付孔3aがある。符号3cは、パネルマウントコネクタプラグ1側の段部1bが通過するための、通過溝を示している。また、凸リング3bは、前記係止片2が通過して拡張した後に、抜止め用の壁となるものである。
【0016】
このようにして、
図2−A(B)に示すように、パネルマウントコネクタプラグ1が前記パネル3の取付孔3aに装着されるものである。
【0017】
前記パネルマウントコネクタプラグ1に対して、
図3に示すように、異種であるパネルマウントコネクタジャック1gは、取付孔側の凹部1aに環状の係止片2を遊嵌させ、前記凹部1aの近傍に、挿入時の先方側と後方側の2箇所にスリット(凹部)1jを設けている。
【0018】
前記スリット(凹部)1jを設ける位置は、
図3(A),(B)に示すように、ジャック側の第2の段部1kにおいて、係止片2が取付孔3a通過時に縮径する際、突起部2aが周方向に移動して、両突起部2a間の最も狭くなる範囲を示す範囲aの内側である。
【0019】
よって、この範囲aの内側に前記スリット1jが設けられるので、係止片2の縮径(収縮)作用の邪魔になることがない。こうして、係止片2による抜止め作用を確実にして、そのための第2の通過溝3fの範囲内において、誤挿入防止機構を兼用させて設けるようにしたものである。
【0020】
前記プラグ側の段部1bと前記ジャック側の第2の段部1kとは、その横幅の大きさが、1b<1kとなっている。それと同様に、前記取付孔3aの通過溝3cと、
図4(A)に示す第2の通過溝3fとは、溝の間隔の大きさが、3c<3fとなっていて、前記パネルマウントコネクタジャック1gを、
図2−A(A)に示すパネルマウントコネクタプラグ用の取付孔3aに挿入することができないようにしている。
【0021】
また、
図4(A)に示すように、パネル3側の取付孔3aには、突起部3dを設ける。
前記突起部3dを設ける位置は、前述と同様に、係止片2が取付孔3a通過時に縮径する際、突起部2aが周方向に移動して、両突起部2a間の最も狭くなる範囲を示す範囲aの内側である。
【0022】
前記先方側のスリット(凹部)1jがパネル3の突起部3dを通過して、後方側のスリット(凹部)1jが前記突起部3dに嵌まる。この突起部3dと、前記スリット(凹部)1jとが、誤挿入防止手段となるものである。これにより、パネルマウントコネクタプラグ1を、
図4(A)に示すパネルマウントコネクタジャック用の取付孔3aに挿入しても前記突起部3dに衝突して、挿入できないようにしている。
【0023】
前記異種のパネルマウントコネクタプラグ1とパネルマウントコネクタジャック1gとをパネル3に取付けて固定する場合、前記誤挿入防止手段が一方のパネルマウントコネクタジャック1g側にあることで、パネルマウントコネクタの誤挿入を防止できるのである。
【実施例2】
【0024】
このほか、例えば、パネル3の取付孔3aに、パネルマウントコネクタプラグ1が同種・複数個取り付けられる場合には、
図5に示すように、段部1bから周方向に略90度離れた位置に、突起部1fを一つ設ける。対応させてパネル3側の取付孔3aにも、
図2−B(A)に示すように、溝3eを設ける。このようにすることで、同種の他のパネルマウントコネクタプラグ1との誤挿入を、第2の誤挿入防止手段により防止できる。
【0025】
また、前記パネルマウントコネクタプラグ1が多数ある場合には、突起部1fの形成する位置を変えて対応し、パネル3側の取付孔3aにおいても、
図2−B(B),(C)に示すように、溝3eの位置を変えることで多数のパネルマウントコネクタプラグ1に対応することができる。
【0026】
また、パネルマウントコネクタジャック1gにおいても、同種多数をパネル3に取り付ける場合には、図示してないが、第2の段部1kから周方向に離れた位置の各所に、突起部1fを一つ設ける。対応させてパネル3側の取付孔3aにも、
図4(B)〜(D)に示すように、それぞれ対応する位置に、溝3eを設けるようにする。
【0027】
この場合、一つの取付孔3aに複数の溝3eを設けてしまうと、複数のパネルマウントコネクタプラグ1(又はジャック1g)を取り付けられるのは勿論だが、そのうちの一つの突起部1fを有するパネルマウントコネクタプラグ1(又はジャック1g)までが取り付けられてしまうので、この弊害を避けるために、各取付孔3aには、一つで、位置が異なる溝3eを設けるようにすることが、要件となる。
【0028】
このようにして、パネル3に同種で複数個のパネルマウントコネクタプラグ1(またはジャック1g)を取り付ける場合にも、第2の誤挿入防止手段において、溝の位置を相違するようにして、同種・複数の場合でも、誤挿入しないようにするものである。
【0029】
本発明に係るパネルマウントコネクタプラグ1やパネルマウントコネクタジャック1gをパネル3に取り付けた後は、
図6(A)〜(D)に示すように、筐体内のプリント基板6にコンタクト1dを半田付けして接続し、係止片2の収縮防止突起5aを有するウエッジ5を被せて、更に、樹脂を流し込んで、屋外の使用に耐えられる水密構造にするものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るパネルマウントコネクタの誤挿入防止構造は、他のコネクタをパネルに取り付ける場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 パネルマウントコネクタプラグ、 1a 凹溝、
1b 段部、 1c 隔壁、
1d コンタクト、 1e 収納部、
1f 突起部、
1g パネルマウントコネクタジャック、
1h 半円ハウジング、
1i シールリング、 1j スリット(凹部)、
1k 第2の段部、
2 係止片、 2a 突起部、
2b 切欠き部、 2c 突出部、
2d 本体部、
3 相手部材(パネル又はケース)、
3a 取付孔、 3b 凸リング、
3c 通過溝、 3d 突起部、
3e 溝、 3f 第2の通過溝、
5 ウエッジ、 5a 収縮防止突起、
5b 固定脚部、 5c コンタクト逃げ部、
6 プリント基板、
21 同軸コンタクト、 21a 凹溝、
22 丸型コンタクト、 22a 凹溝、
23 係止片、 23a テーパ状。