(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原反ロールから繰出された複数の紙管原紙をマンドレルシャフトに螺旋状に巻いて連続的に筒状部分を形成し、その筒状に形成された部分をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカットして長尺の紙管を形成する紙管形成工程と、
長尺の紙管にトイレットロールの複数倍幅以上の幅のトイレットペーパー原紙を巻いてログを形成する工程と、
ログを切断して個々のトイレットロールにする工程と、を有し、
前記紙管形成工程において、原反ロールから繰出された複数の紙管原紙のうち紙管内面に位置される紙管原紙をマンドレルシャフトに巻き付ける前に、その紙管内面に位置される紙管原紙の紙管内面側となる面に、鉄を酸化させる消臭剤を含む消臭液を塗工して消臭剤層を形成し、その消臭剤層上に鉄に対して安定なコート剤を塗工してコート層を形成する、ことを特徴とするトイレットロールの製造方法。
前記コート剤が、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステルオリゴマーモノマーのなかから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載のトイレットロールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールに用いる紙管は、複数の紙管原紙を螺旋状に巻いたスパイラル紙管が一般的であり、このスパイラル紙管は、ペーパーコアマシンとも称される紙管製造設備において、紙管原紙を巻き取った各原反ロールからそれぞれ紙管原紙を繰出すとともに、各紙管原紙を鉄製のマンドレルシャフトに螺旋状に巻き付けて製造される。
【0003】
したがって、トイレットロールの紙管内面に消臭剤を付与するには、紙管製造装置とは別の装置で消臭剤を予め紙管原紙に塗布して巻き取った原反ロールを製造し、この原反ロールを紙管製造装置にセットして紙管を製造する方法と、紙管製造装置において、原反ロールから紙管原紙を繰出してマンドレルシャフトに巻き付けるまでの間に、消臭剤を塗工する方法が考えられる。これらの方法のうち後者の方法のほうが、設備設置コストが低く、原反ロールの移送の手間も無い等の点で優れる。
【0004】
一方、トイレ空間の消臭に用いられる消臭剤の中には、消臭成分が悪臭成分と接触し、酸化反応や中和反応して化学的に消臭するものがある。特に、トイレ空間の主たる悪臭成分であるアンモニアの消臭効果に優れるものとしてポリフェノール系消臭剤がある。
【0005】
しかし、このポリフェノール系消臭剤は、鉄と反応するため上記の紙管製造装置において、原反ロールから紙管原紙を繰出してマンドレルシャフトに巻き付けるまでの間に、消臭剤を塗工するようにすると、マンドレルシャフトをはじめ紙管製造装置を構成する鉄素材部品を変色させるおそれがある。特に、ポリフェノール系消臭剤は、紙管原紙に対する浸透性や定着性が低く、塗工からマンドレルシャフトに巻き付けるまでの間に、十分に紙管原紙に浸透等し難く、よりマンドレルシャフト等の鉄素材と接触しやすい。さらに、マンドレルシャフトに紙管原紙を巻き付けてスパイラル紙管を製造する方法では、紙管の内面となる部分がマンドレルシャフトと摺れつつ移動することになるため、紙管原紙に対する浸透性が低いと、その際により塗布した消臭剤が擦り取られやすく、歩留まりの低下や製品の消臭性能を低下させるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、ポリフェノール系消臭剤のような鉄素材と反応する消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及び、係るトイレットロールを紙管製造装置を傷めることなく効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明とその効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原反ロールから繰出された複数の紙管原紙をマンドレルシャフトに螺旋状に巻いて連続的に筒状部分を形成し、その筒状に形成された部分をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカットして長尺の紙管を形成する紙管形成工程と、
長尺の紙管にトイレットロールの複数倍幅以上の幅のトイレットペーパー原紙を巻いてログを形成する工程と、
ログを切断して個々のトイレットロールにする工程と、を有し、
前記紙管形成工程において、原反ロールから繰出された複数の紙管原紙のうち紙管内面に位置される紙管原紙をマンドレルシャフトに巻き付ける前に、その紙管内面に位置される紙管原紙の紙管内面側となる面に、鉄を酸化させる消臭剤を含む消臭液を塗工して消臭剤層を形成し、その消臭剤層上に鉄に対して安定なコート剤を塗工して
コート層を形成する、ことを特徴とするトイレットロールの製造方法。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記消臭剤が、ポリフェノール系消臭剤である請求項1記載のトイレットロールの製造方法。
【0010】
〔請求項3記載の発明〕
前記コート剤が、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステルオリゴマーモノマーのなかから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載のトイレットロールの製造方法。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
前記コート層を、フレキソ印刷又はグラビア印刷により、面積率5〜70%の網点印刷する請求項1〜3の何れか1項に記載のトイレットロールの製造方法。
【0012】
〔請求項5記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
前記紙管内面に、ポルフェノール系消臭剤を含む消臭剤層と、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステルオリゴマーモノマーのなかから選ばれる1種又は2種以上を含む樹脂が網点状に配された前記消臭剤層を被覆するコート層と、を有することを特徴とするトイレットロール。
【0013】
〔請求項6記載の発明〕
前記コート層の厚さが、0.5〜10μmである請求項5記載のトイレットロール。
【0014】
〔請求項7記載の発明〕
前記コート層の網点面積率が、5〜70%である請求項5又は6記載のトイレットロール。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、鉄素材と反応する消臭剤が紙管内面に付与されたトイレットロール及び、係るトイレットロールを紙管製造装置を傷めることなく効率よく製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を
図1〜6を参照しながら以下に説明する。但し、本発明は、この実施形態に限られない。
【0018】
「トイレットロールの製造方法」
本発明の実施形態に係るトイレットロール10の製造方法例を特に
図1〜
図4を参照しながら説明する。但し、本発明のトイレットロールの製造方法は、この方法に必ずしも限定されるわけではない。
本実施形態のトイレットロールの製造方法は、
図1に示すように、長尺のスパイラル紙管30を製造する紙管形成工程(A)と、その長尺のスパイラル紙管を用いてログを製造するログ製造工程(B)と、ログを裁断して個々のトイレットロールにする裁断工程(C)を有している。
【0019】
〔紙管製造工程(A)〕
本実施形態の紙管製造工程は、
図1中(A)、
図2に示すように、原反ロール31A,32Aから繰出された二枚の帯状の紙管原紙31,32のうち一方の紙管原紙31の一方面に糊付けロール51により糊44を付与し、前記一方の紙管原紙31の糊付けされた面に他方の紙管原紙32の薬液非塗工面を対面させて幅方向に一部重ね、前記他方の紙管原紙32の糊付け面と接しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分29を形成し、その筒状部分29をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカッター58によりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。このスパイラル紙管は、一方の紙管原紙31が紙管外面側、他方の紙管原紙32が紙管内面側となる態様の二層積層構造となる。なお、本実施形態では、2枚の紙管原紙31,32をスパイラル巻きしているが、3枚以上の紙管原紙をスパイラル巻きして長尺の紙管を形成してもよい。
【0020】
紙管原紙31に対する糊44の付与量は特に限定されないが、塗布時で8.0〜80.0g/m
2程度である。また、糊44は、本発明の効果を妨げない範囲で既知の紙管用のものを用いることができ、アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示できる。
【0021】
図示の形態では、各紙管原紙31,32のマンドレルシャフト52への巻き付けは、一対のプーリー53,53間に巻き掛けられた平ベルト54により、マンドレルシャフト52上の所定部分に位置する筒状部分29に回転力を与え、その回転により紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52の軸心に対して所定角度で引き込んで、螺旋状に巻くようにしている。図示例では、一対のプーリー53,53を二機配置して二つの平ベルト54,54により、筒状部分29に回転力を与えているが、一機の一対のプーリーと平ベルトにより筒状部分に回転力を与えるようにしてもよい。また、図示しないが、筒状部分29に平ベルト54ではなくロールを当接させて回転力を与えるようにしても、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けることができる。
【0022】
ここで、紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管の形成するにあたっては、図示例からも理解されるように、紙管原紙31,32が連続的にマンドレルシャフト52に送り込まれることにより筒状部分29が長くなり、その筒状部分29が連続的に形成されてマンドレルシャフト52の先端方向に伸びていく。そして、その過程では、
図3に示すように、筒状部分29の内面29Aがマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになる。
【0023】
本実施形態では、このようにして長尺の紙管30を形成するにあたって、特に
図3及び
図4に示されるように、二枚の紙管原紙31,32のうち他方の紙管原紙32、すなわちマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際にマンドレルシャフトに対面する面を有する紙管原紙32に対して、接着糊44を付与した一方の紙管原紙31と重ね合わせるよりも前段において、消臭剤層41とコート層42とを形成する。なお、
図4中(a)は、紙管原紙32に消臭剤層41とコート層42を設けたものの部分平面図であり、(b)は(a)のb-b断面図である。
【0024】
この消臭剤層41及びコート層42を形成する他方の紙管原紙32は、米坪が120〜220g/m
2、紙厚が150〜500μmであるのが望ましい。消臭剤及びコート剤の塗工がしやすく、また、個々の紙管となった際に十分な強度を確保することができる。なお、長尺紙管30の形成するにあたって、この他方の紙管原紙32と対となるもう一方の紙管原紙31は、違う原反を使用してもよく、例えば、米坪を変えたりしてもよい。但し、双方ともに上記範囲であるのが望ましい。
【0025】
他方の紙管原紙32の一方面に消臭剤層41とコート層42とを形成するには、
図1及び
図4に示すように、消臭剤やコート剤が無塗工の紙管原紙32が巻かれた原反ロール32Aから繰出されたその紙管原紙32に対して、塗工機61にてまず消臭剤をその紙管原紙32の一方面の全体に塗工して消臭剤層41を形成する。
【0026】
本実施形態で用いる消臭剤は、鉄と反応してマンドレルシャフトをはじめとする鉄を酸化させて傷めるものである。そのような消臭剤の中でも本発明に用いるに特に望ましい消臭剤は、ポリフェノール系消臭剤である。ポリフェノール系消臭剤は、茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品から抽出されるポリフェノール、及びそのポリフェノールの誘導体であり、フェノール系水酸基による反応性により、悪臭成分の一つであるアンモニアに対して高い消臭機能を有するものの、鉄を酸化させるためマンドレルシャフト等を傷める。ポリフェノール系消臭剤のなかには、アンモニアに加えて、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性を有して消臭機能を有するものも存在するが、もちろん本発明に用いるポリフェノール系消臭剤はそのようなものであってもよい。なお、ポリフェノール系消臭剤は、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体の何れか一方に限定されるわけではなく、双方が含まれていてもよい。また、数種のポリフェノール、ポリフェノール誘導体の混合物でもよい。
【0027】
また、ポリフェノール系消臭剤のなかでも、特にタンニン及びその誘導体が望ましい。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール系水酸基を多く有するため消臭機能に優れるが、タンニン酸によって鉄を酸化させやすいため、本発明に用いるポリフェノール系消臭剤としては特に望ましいものである。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、ポリフェノール系消臭剤としては、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
【0028】
特に、消臭剤がポリフェノール系消臭剤である場合には、塗工に際して、ポリフェノール系消臭剤を25〜50%、メタノール、エタノール、プロパノールの群から選ばれる少なくとも一つの低級アルコールを3〜25%を体積比で混合した消臭液として塗工すると、ポリフェノール系消臭剤を紙管原紙32に浸透させることができる。すなわち、消臭剤層が紙管原紙に浸透した状態で形成される。本実施形態に係る消臭剤層41は、このように原紙内に一部又は全部が浸透する形態で形成されていてもよい。むしろ、このように一部又は全部が浸透する形態で形成されているほうが望ましい。なお、上記消臭液は、その他の非有効成分として水を体積比で38〜72%含有させることができる。
【0029】
そして、上記消臭液を用いることなどにより消臭剤層41を紙管原紙に浸透させるようにして形成すると、紙管原紙表面が乾燥しやすくなり、次のコート層42の塗工までの時間及び距離を短いものとすることができる。これは、消臭剤層41を形成してからコート層42を形成するまでの間に、ライン設計上、紙管原紙32を搬送するための鉄製のガイドロールを配置する必要があるにしても、その本数を最小限に留めることができるという利点がある。また、係るガイドロールを鉄製から酸化されないステンレス製のやや高価なものを使用するにしても、その使用本数を最小限に留めることができるという利点もある。
【0030】
消臭剤の塗工は、既知の印刷機、塗工機を用いて行なうことができる。上記消臭液の場合、塗工量は、3〜50g/m
2となるようにするのが望ましい。より望ましくは5〜25g/m
2である。3〜50g/m
2の範囲であれば、生産性よく消臭剤を十分に塗工することができ、また、十分な量の消臭剤を付与することができる。
【0031】
本実施形態に係る消臭剤の塗工に用いる塗工機61は、既知の塗工機、印刷機のなかから消臭液の性状に応じて適宜選択することができる。なかでも、塗工速度が速く全面に均一に消臭剤を付与することができる、フレキソコーター、グラビアコーターが特に適する。フレキソコーター、グラビアコーターを用いる場合には、ベタ印刷又は線数30〜100線/インチで印刷塗工するのがよい。線数30〜100線/インチで印刷塗工する場合の面積率は、消臭剤の付与量に応じて適宜変更する。
【0032】
このようにして消臭剤層41を形成した後には、この消臭剤層41上に、塗工機64によりコート剤を塗工してコート層42を形成する。
【0033】
前記コート剤としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステルオリゴマーモノマーのなかから選ばれる1種又は2種以上であるのが望ましい。これらのコート剤は、鉄に対して安定しており、しかも、塗工性に優れる。さらに、紙管原紙との接着性に優れ消臭剤層41の上に強固な
コート層を形成することができる。なお、これらのコート剤は、塗工に適するようにするために水や適宜の溶媒で粘度調整をすることができる。
【0034】
ここで、コート剤を塗工するにあたっては、少なくとも消臭剤層41を完全に被覆して、その消臭剤層の効果を過度に低下させないようにする。このようにするには、コート剤を部分的にパターン印刷してもよいが、より好適には、網点印刷によるコート剤を印刷塗工して、コート層42を形成する。このように網点印刷によりコート層42を形成すると、
図4に示されるように、ミクロ視では網点間に下層の消臭剤層が露出された状態となり、その消臭剤層41の消臭効果が発揮されなくなることがない。その一方で、マクロ視では、コート層42が紙管内面全体に配置されているため、消臭剤層42とガイドロール等の紙管製造設備における鉄素材との接触を効果的に防止することができる。
【0035】
本実施形態に係るコート層42の厚みは、0.5〜10μmであるのが望ましい。0.5μmであると、消臭剤層41と鉄素材との接触を十分に防止することができず、10μmを超えるとコート層42が厚すぎて通気性が悪化するなどして、消臭剤層の効果が低下するおそれが高まる。
【0036】
本実施形態に係るコート剤の塗工に用いる塗工機64は、既知の塗工機、印刷機のなかから消臭液の性状に応じて適宜選択することができる。なかでも、塗工速度が速く紙管原紙の全面に均一に網点印刷することができる、フレキソコーター、グラビアコーターが特に適する。フレキソコーター、グラビアコーターを用いる場合には、上記のとおり消臭剤層を完全に被覆しないようにすべくベタ印刷とはしない。好ましい条件は、線数15〜100線/インチで印刷塗工するのがよい。この場合、上記消臭剤層41を線数30〜100線インチで印刷塗工するならば、網点面積率は、消臭剤の印刷塗工時よりも低い網点面積率で印刷塗工する。このようにすれば網点間から確実に消臭剤層を露出させることができる。コート剤を線数15〜100線/インチで印刷塗工する場合の好ましい網点面積率は5〜70%であり、より好ましくは20〜40%である。この条件でコート剤を塗工すると、コート剤の定着性、コート層による消臭剤層の保護性、消臭剤層の効果のバランスがよい。なお、本発明に係る網点面積率とは印刷範囲に対する消臭剤又はコート剤の付与部分の層面積の割合である。
【0037】
このようにして紙管原紙32に対して消臭剤層41とその上にコート層42を形成した後には、その紙管原紙32はマンドレルシャフト52に導かれて巻き付けられて、長尺のスパイラル紙管30とされるが、本実施形態の紙管原紙32は、マンドレルシャフト52に導かれるまでの搬送経路に適宜の鉄製のガイドロールが消臭剤層形成面に当接するように配されていても消臭剤層41が直接にガイドロールに接触しないため、係るガイドロールを消臭剤によって傷めることがない。
【0038】
また、
図3に示すように、紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管30の形成するにあたっては、その過程で筒状部分29の内面29Aがマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになるが、その際にマンドレルシャフト52に対して消臭剤層41が接触しなくなるので、マンドレルシャフト52を消臭剤によって傷めることがない。さらに、マンドレルシャフト52と摺接して消臭剤層41が剥がれ落ちることも防止される。そのうえマンドレルシャフト52は、摺接の際の摩擦熱によって80〜100℃と高温になることがあるが、本実施形態ではコート層42が設けられているため、消臭剤層41と高温のマンドレルシャフト52が接することがなく、消臭剤の熱による劣化や変性が防止できる。なお、特に上記に示したコート剤は、この温度において安定的である。
【0039】
なお、図示の形態では、コート層22を塗工した後、ロール転写装置65によって、コート層22の上に滑剤を塗工するようにしている。滑剤は、マンドレルシャフト52と紙管原紙との摩擦を低減するためにスパイラル紙管を形成する際によく塗工されるものであり、本実施形態でもこのようにしている。滑剤を塗工するにあたっては、網点印刷してコート層22を目止めしないようにする必要があるが、一般的には滑剤の塗工量は1.0g/m
2以下であり、この程度の塗工量であれば、上記態様の消臭剤層及びコート層の構成で消臭効果が過度に低減することはない。なお、滑剤の具体例としては、流動パラフィンが例示できる。
【0040】
〔ログ製造工程(B)〕
本実施形態では、上記の長尺のスパイラル紙管30の製造と平行して又はその後において、ログ製造工程(
図1中(B)にて、ログ70を製造する。なお、ログ70とは、最終製品であるトイレットロール10の直径と同径でありかつ幅が最終製品の複数倍幅以上ある中間製品である。
【0041】
このログ70の製造は、連続的に又は段階的に、紙管形成工程(A)で製造した長尺のスパイラル紙管30に対して、これと実質的に同幅又はそれよりも若干幅狭のトイレットペーパー原紙71,71を、ロール71A,71Aから繰り出すとともに巻き付けてログ70を形成する。この巻き付けは、既知のワインダー装置X2が利用できる。なお、図示例は、二つのロール71A,71Aからトイレットペーパー原紙71,71を繰り出して、重ね合わせ部81にて2プライのトイレットペーパー原紙72とした後、ミシン目線形成装置82にてミシン目線の形成を行なった後、巻き取り装置83にて巻き取り2プライ構造となるようにしている。なお、図示の形態では、2つのロール71A、71Aからトイレットペーパー原紙71、71を繰り出し、積層構造とした2プライ構造のトイレットペーパー原紙72としているが、本発明に係るトイレットペーパー原紙は、この2プライに限定されず、1プライ若しくは3プライ以上であってもよい。さらには、複数プライ構造とする場合には、各原紙の米坪や物性等は同じである必要もない。また、予め積層されたシートを巻き取ったロールから積層シートを繰出して長尺紙管30に巻き付けてログ70を形成すようにしてもよい。
【0042】
なお、図示の本実施形態では、ミシン目線形成装置82を設けてミシン目線を付与する形態を示しているが、本発明では必ずしもミシン目線形成装置及びミシン目線の付与は必須ではない。また、本実施形態において、図示はしないが、ミシン目線付与装置82の前段に既知のコンタクトエンボス付与装置を設けてコンタクトエンボスを付与してもよいし、重ね合わせ部81の前段で各トイレットペーパー原紙71,71にエンボスロールでエンボスを付与するようにしてもよいし、その付与したエンボスの凸部頭頂に接着剤を付与して係る接着剤でトイレットペーパー原紙同士を積層一体化するようにしてもよい。
【0043】
〔ログ切断工程(C)〕
以上のように、ログ70を製造したならば、このログ70を既知のログアキュームレーターX3で複数本をストックしつつ後段のログカッター設備X4へと移動させる。そして、その後に
図1中(C)に示すように、既知のログカッター91でログ70を製品幅に裁断し、
図5に示すような、個々のトイレットロール10,10…とする。このログの切断と同時に、長尺の紙管も裁断され、長尺の紙管も個々の紙管となる。
【0044】
「トイレットロール」
次いで、本発明に係るトイレットロールの実施形態を説明する。本実施形態に係るトイレットロールは、上記トイレットロールの製造方法により製造することができる。このトイレットロール10は、
図5に示すとおり、紙管11に帯状のトイレットペーパー12が巻かれたものである。トイレットロール10の大きさ等は、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管内径L3が35〜50mmであるのが望ましい。この大きさであれば一般的なトイレットロール用のペーパーホルダーが利用でき、トイレットペーパー12の長さも十分である。
【0045】
本実施形態のトイレットペーパー12は、微細な凹凸であるクレープを有する家庭用薄葉紙である。但し、その具体的な組成・構成は限定されない。好ましくは、1プライから3プライのプライ構造を有し、紙厚が、100〜350μm、1プライ当り米坪が11.0〜25.0g/m
2である。この範囲であれば使用時の柔らかさや吸水性を確保できる。なお、本発明に係る米坪とは、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。なお、複数プライのものは複数プライのままで測定する
【0046】
本実施形態に係るトイレットロール10は、特徴的に、
図6に紙管11の輪切り断面を示すように、前記紙管11の内面11Aに消臭剤層21と、この消臭剤層21を被覆するコート層22が設けられている。
【0047】
消臭剤層21は、消臭剤を有効成分として消臭機能を発揮する層である。この消臭剤層21は、一部又は全部が、原紙部分内に浸透するように形成されていてもよい。この消臭剤層21は、図示のように紙管内面11Aの実質的に全面に形成されているのが望ましい。消臭剤の付与量を多くすることができる。なお、ここでの実質的にとは、例えば、網点印刷のように消臭剤の付与部分がミクロ視では細かな点で付与されていて、それらの点間に消臭剤が付与されていない部分が存在しているもののマクロ視では、全面に形成されているといえるものを含む意である。
【0048】
本発明に係る消臭剤層21の有効成分である消臭剤は、上述のポリフェノール系消臭剤である。この消臭剤であれば、十分な消臭効果を得ることができる。
【0049】
他方、コート層22は、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステルオリゴマーモノマーのなかから選ばれる1種又は2種以上である樹脂が塗工された塗工層である。このコート層22も、紙管内面11Aの全面に形成されているのが望ましい。但し、コート層では、前記消臭剤層を完全に被覆してその効果を過度に低下させないように、網点印刷により形成されているのが望ましい。網点印刷であれば、ミクロ的には網点間に消臭剤が露出される態様となるため、紙管内面全体で消臭剤の効果を得ることができる。
【0050】
コート層22が網点印刷で設けられている場合、その網点面積率は、5〜70%であるのが望ましい。より好ましくは、20〜40%である。5%未満では、消臭剤層の保護が不十分となり、70%を超えると消臭剤層の効果を低下させるおそれが高まる。
【0051】
なお、消臭剤層21及びコート層22がともに網点印刷により形成されている場合には、前記消臭剤層21の網点面積率よりもコート層22の網点面積率が低いのが望ましい。消臭剤層の効果がより確実に発揮される。
【0052】
コート層22の厚みは、0.5〜10μmであるのが望ましい。0.5μmであると、消臭剤層21の保護が不十分となり、10μmを超えるとコート層が厚すぎて通気性が悪化するなどして、消臭剤層21の効果が低下するおそれが高まる。
【0053】
以上説明の本実施形態のトイレットロール10は、上述の製造方法上の利点のほか、ペーパーホルダーで使用する際にも利点がある。すなわち、一般的にペーパーホルダーは、紙管11内に支持部を緩挿してトイレットロール10を回動自在に支持する。したがって、このような支持態様では、トイレットロール10からトイレットペーパー12を引き出す際には、紙管内面11Aと支持部が摺れる態様となるため、本実施形態に係るトイレットロール10のように消臭剤層21が強固な樹脂製のコート層22で保護されていると、その摺れの際に消臭剤が擦り落とされることがなくなる。