特許第6188212号(P6188212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188212
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】段床構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/12 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E04H3/12 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-186490(P2013-186490)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52249(P2015-52249A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社岡村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 悟
(72)【発明者】
【氏名】松下 寛也
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−252296(JP,A)
【文献】 実開平01−154847(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0074837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/10 − 3/14
A47C 1/12 − 1/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の前側から後側に向かって階段状に高くなるように形成された複数段の床面を有し、前記床面の上方に椅子の着座部が配される段床構造であって、
複数段の前記床面の少なくとも一段に、当該床面の一部分に着脱可能に設けられ、当該床面の上方に配される前記椅子の前記着座部を使用する場合に足元を配置する補助床面を形成する補助床部材を備え、
前記補助床部材と対応する前記椅子の前記着座部における座面から前記補助床面までの高さは、前記補助床部材が設けられない箇所における前記椅子の前記着座部における座面から対応する前記床面までの高さと略等しいことを特徴とする段床構造。
【請求項2】
前記補助床部材と対応する前記椅子は、対応する前記補助床部材が設けられた床面に着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の段床構造。
【請求項3】
前記補助床部材は、対応する前記椅子に固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の段床構造。
【請求項4】
前記補助床部材は、1つの前記椅子に対して1つ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の段床構造。
【請求項5】
前記補助床部材は、前記前後方向に交差する左右方向に配列された複数の前記椅子に対して1つ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の段床構造。
【請求項6】
前記補助床部材は、前記左右方向に複数配列されていて、前記左右方向に隣り合う補助床部材は連結手段によって連結可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の段床構造。
【請求項7】
前記椅子は、前記着座部を支持する脚部を有し、、前記補助床部材には前記脚部が嵌合可能な嵌合溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の段床構造。
【請求項8】
前記椅子は、対応する前記床面上を走行するためのキャスタを有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の段床構造。
【請求項9】
前記補助床部材は、複数段の前記床面の少なくとも一段における当該床面の後側となる部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の段床構造。
【請求項10】
複数段の前記床面の少なくとも一段における当該床面の前側となる部分が通路を構成しており、
当該床面の後側となる部分に補助床部材が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の段床構造。
【請求項11】
複数段の前記床面の最後段に補助床部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の段床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劇場やホールなどの観覧施設に構築される前側から後側に向かって階段状に高くなる段床の段床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場やホールなどの観覧施設の床を、前側から後側に向かって階段状に高くなる段床の状態と、段の無い平場の状態とに切り替えることができる段床形成装置が知られている。
例えば、特許文献1には、段床を形成する複数の補助床部材が舞台部の下方に収容されていて、この補助床部材が劇場の床面に設けられたせり機構によってせり出されることで、平場に段床を形成可能な段床形成装置が開示されている。
また、特許文献2には、段床を形成する複数の補助床部材が前後方向に移動可能で、平場を形成するときには上下方向に積み上げられた状態となる段床形成装置が開示されている。
また、特許文献3には、段床を形成する複数の補助床部材が平場となっている状態の床部の下方に収容されていて、ジャッキなどの昇降手段によってリフトアップされることで平場に段床を形成可能な段床形成装置が開示されている。
【0003】
また、段床が形成されていても、車椅子の利用者が利用しやすいように、所定のスペースを平場にすることができる床形成装置や、観覧席用椅子が知られている(例えば特許文献4、5参照)。
例えば、特許文献4には、通路のすぐ下段の段床が、通路の高さまで上昇可能で、通路のすぐ下段の段床が、通路の高さまで上昇することで所定の広さの平坦なスペースが確保される床形成装置が開示されている。
また、特許文献5には、段床に装着された複数の椅子のうちの一部が他の椅子の後方へ回転移動可能に構成され、一部の椅子が他の椅子の後方へ回転移動することで、椅子のない所定の広さの平坦なスペースが確保される観覧席用椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平05−000503号公報
【特許文献2】実用新案登録第2522368号公報
【特許文献3】特許第2787226号公報
【特許文献4】特許第4153437号公報
【特許文献5】特開平11−244083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至4に開示された段床形成装置は、補助床部材を移動させるための機構が複雑で、段床と平場との切り替えが大掛かりになるとともにコストがかかるという問題がある。
また、補助床部材を移動させるための機構に動力を使用することが多いため、設置コストおよびランニングコストがかかるという問題もある。このため、特許文献1乃至4に開示された段床形成装置は、収容人数の少ない小規模な施設には適していないという問題があった。
また、引用文献5に開示された観覧席用椅子では、一部の椅子が他の椅子の後方へ回転移動するという構造上、椅子が回転移動するためのスペースが必要となり、椅子の設置数が少なくなるという問題がある。また、椅子が回転移動するためのスペースを確保することにより、椅子の前後方向の間隔が大きくなるため、例えば通路のすぐ後ろに設けられた椅子に着座すると舞台等の観覧対象物を見づらいという問題もある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、構造が簡便で段床と段の無いスペースとを容易に切り替えることができる段床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る段床構造は、前後方向の前側から後側に向かって階段状に高くなるように形成された複数段の床面を有し、前記床面の上方に椅子の着座部が配される段床構造であって、複数段の前記床面の少なくとも一段に、当該床面の一部分に着脱可能に設けられ、当該床面の上方に配される前記椅子の前記着座部を使用する場合に足元を配置する補助床面を形成する補助床部材を備え、前記補助床部材と対応する前記椅子の前記着座部における座面から前記補助床面までの高さは、前記補助床部材が設けられない箇所における前記椅子の前記着座部における座面から対応する前記床面までの高さと略等しいことを特徴とする。
【0008】
本発明では、複数段の床面の少なくとも一段に、当該床面の一部分に補助床部材を取り付けることで、この床面に段床を形成することができ、この補助床部材を床面から取り外すことで、床面に段の無いスペースを形成することができる。そして、床面に補助床部材を取り付けるか、床面から補助床部材を取り外すことで、段床と段の無いスペースとを切り替えることができるため、構造が簡便で、段床と段の無いスペースとを容易に切り替えることができる。
そして、床面から補助床部材を取り外して形成された段の無いスペースを、車椅子の利用者のためのスペースとしたり、機器類を設置するスペースとしたり多目的に使用することができる。
また、補助床部材と対応する椅子の着座部における座面から補助床面までの高さは、補助床部材が設けられない箇所における椅子の着座部における座面から対応する床面までの高さと略等しいことにより、補助床部材を設置して段床を形成した場合も、補助床部材を取り外して段の無いスペースを形成した場合も、椅子の座面が所定の高さに保持されているため椅子に着座した使用者が、前方を良好に視認することができる。
【0009】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材と対応する前記椅子は、対応する前記補助床部材が設けられた床面に着脱可能に構成されていることが好ましい。
このようにすることにより、床面から補助床部材を取り外すとともに椅子を取り外すことで、段および椅子の無い平場が形成されるため、この平場を車椅子の利用者のためのスペースとしたり、機器類を設置するスペースとしたり多目的に使用することができる。
【0010】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材は、対応する前記椅子に固定可能に構成されていてもよい。
このようにすることにより、椅子と補助床部材とが位置ずれすることを防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材は、1つの前記椅子に対して1つ設けられていてもよい。
このようにすることにより、1つの椅子ごとに補助床部材を必要に応じて設置したり取り外したりすることで必要箇所のみを段床にしたり段の無いスペースにしたりすることができる。
【0012】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材は、前記前後方向に交差する左右方向に配列された複数の前記椅子に対して1つ設けられていてもよい。
このようにすることにより、左右方向に配列された複数の椅子が設置された部分を一度に段床にしたり段の無いスペースにしたりすることができ、段床と平床との切り替えを容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材は、前記左右方向に複数配列されていて、前記左右方向に隣り合う補助床部材は連結手段によって連結可能であることが好ましい。
このようにすることにより、隣り合う補助床部材が確実に連結されるため、隣り合う補助床部材間に隙間ができて、この隙間に足が挟まったり物が落ちたりすることを防止することができるとともに、隣り合う補助床部材が位置ずれすることを防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る段床構造では、前記椅子は、前記着座部を支持する脚部を有し、
前記補助床部材には前記脚部が嵌合可能な嵌合溝が形成されているが好ましい。
このようにすることにより、床面に取り付けられた椅子の脚部に補助床部材の嵌合溝を嵌合させれば、床面および椅子に対して補助床部材が正位置に設置されるため、補助床部材の位置合わせを容易に行うことができ、補助床部材の設置を容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る段床構造では、椅子は、対応する床面上を走行するためのキャスタを有していることが好ましい。
このようにすることにより、椅子を容易に移動させることができる。
【0016】
また、本発明に係る段床構造では、前記補助床部材は、複数段の前記床面の少なくとも一段における当該床面の後側となる部分に設けられていてもよい。
このようにすることにより、床面を前側となる部分よりも後側となる部分が高くなる段床とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る段床構造では、複数段の前記床面の少なくとも一段における当該床面の前側となる部分が通路を構成しており、当該床面の後側となる部分に補助床部材が設けられていてもよい。
このようにすることにより、床面から補助床部材と椅子を取り外せば、通路と同じ高さのスペースが形成されるため、このスペースを例えば、車椅子の利用者のためのスペースとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る段床構造では、前記複数段の前記床面の最後段に補助床部材が設けられていてもよい。
このようにすることにより、床面から補助床部材と椅子を取り外せば、最後段にスペースが形成されるため、このスペースをカメラなどの機器類を設置するスペースとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数段の床面の少なくとも一段に、当該床面の一部分に補助床部材を取り付けることで、この床面に段床を形成することができ、この補助床部材を床面から取り外すことで、床面に段の無い段の無いスペースを形成することができる。そして、床面に補助床部材を取り付けるか、床面から補助床部材を取り外すことで、段床と段の無いスペースとを切り替えることができるため、構造が簡便で、段床と段の無いスペースとを容易に切り替えることができる。
そして、床面から補助床部材を取り外して形成された段の無いスペースを、車椅子の利用者のためのスペースとしたり、機器類を設置するスペースとしたり多目的に使用することができる。
また、補助床部材と対応する椅子の着座部における座面から補助床面までの高さは、補助床部材が設けられない箇所における椅子の着座部における座面から対応する床面までの高さと略等しいことにより、補助床部材を設置して段床を形成した場合も、補助床部材を取り外して段の無いスペースを形成した場合も、椅子の座面が所定の高さに保持されているため椅子に着座した使用者が、前方を良好に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態による段床構造の一例を示す斜視図である。
図2図1のA方向矢視図である。
図3】補助床部材の床面への着脱を説明する図である。
図4】連結手段を説明する図である。
図5】第2実施形態による段床構造の一例を示す斜視図である。
図6】第3実施形態による段床構造の一例を示す側面図である。
図7】第3実施形態における補助床部材と椅子が外された様子を示す図である。
図8】第4実施形態による段床構造の一例を示す側面図である。
図9】補助床部材の固定用金具を説明する図である。
図10】(a)、(b)は椅子の他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による段床構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態による段床構造1Aは、劇場やホールなどの観覧施設における前後方向(図中の矢印Bの方向)前側から後側に向かって階段状に高くなる段床の構造で、複数の段11,11…一部の段11A(11)に、その床面13A(13)の後側となる部分14に略直方体状に形成され、左右方向(図中の矢印Cの方向)に配列された2つの補助床部材2,2が着脱可能に設けられている。
【0022】
この補助床部材2は、その高さh1が一部の段11A以外の段11B(11)の高さh2と略等しくなるように形成されている。
そして、補助床部材2が一部の段11Aの床面13Aに取り付けられると段床が形成し、一部の段11Aの床面13Aから取り外されると段の無いスペースが形成される。
このように、一部の段Aの床面13Aは、段床と段の無いスペースとに切り替え可能であるため、切り替え可能床面13Aとして以下説明する。
また、切り替え可能床面13Aから補助床部材2が取り外された状態を段の無いスペースとし、段の無いスペースのうち補助床部材2が取り外された切り替え可能床面13Aから更に椅子3(後述する)が外された状態を平場として以下説明する。
【0023】
第1実施形態では、切り替え可能床面13Aは、前側となる部分15に左右方向(図中の矢印Cの方向)に延びる通路12が形成されていて、通路12の後側となる部分14に補助床部材2,2が着脱可能に設けられている。
【0024】
また、段床の段11,11…の床面13のうち、通路12部分以外にそれぞれ観覧用の椅子3が設けられている。これらの観覧用の椅子3のうち、切り替え可能床面13Aに設けられている椅子3は、切り替え可能床面13Aに着脱可能に設けられていて、切り替え可能床面13A以外に設けられている椅子(不図示)は床面13に固定されている。
椅子3は、左右方向Cに所定の間隔をあけて配列された複数の脚部31,31…と、左右方向Cに隣り合う脚部31,31間にそれぞれ設けられた着座部32,32…と、着座部32,32…の上方に設けられた背凭れ部33,33…と、脚部31,31…の上部にそれぞれ設けられた肘掛部34,34…とを備えている。
【0025】
そして、図2および図3に示すように、切り替え可能床面13Aに設けられている椅子3は、脚部31,31…が切り替え可能床面13Aに着脱可能な着脱部材35に連結されている。この着脱部材35には、切り替え可能床面13Aと係止可能な係止部36と、切り替え可能床面13Aを走行可能なキャスタ37とが設けられている。係止部36は、例えば、ネジなどの締結具(不図示)で切り替え可能床面13Aに固定されることによって切り替え可能床面13Aに係止されるように構成されている。
【0026】
このような切り替え可能床面13Aに設けられている椅子3は、切り替え可能床面13Aに取り付けられるときは、キャスタ37が切り替え可能床面13Aから上方に離間するとともに係止部36が切り替え可能床面13Aに係止されることで切り替え可能床面13Aに固定され、切り替え可能床面13Aから取り外されるときは、係止部36と切り替え可能床面13Aとの係止が解除されるとともにキャスタ37が切り替え可能床面13Aと当接することで切り替え可能床面13A上を走行可能に構成されている。
【0027】
また、図1乃至3に示すように、補助床部材2には、後端部2aに椅子3の脚部31が嵌合可能な嵌合溝21が形成されている。そして、補助床部材2は、嵌合溝21に椅子3の脚部31が嵌合するように切り替え可能床面13Aに取り付けられることで、正位置に設置される。
【0028】
また、図4に示すように、左右方向Cに隣り合う補助床部材2,2どうしは連結手段4によって連結されている。
連結手段4は、隣り合う補助床部材2,2の一方の補助床部材2A(2)に設けられて他方の補助床部材2B(2)側に突出する突出部41と、他方の補助床部材2Bに設けられて一方の補助床部材2Aの突出部41が挿入可能な挿入部42と、から構成されている。そして、一方の補助床部材2Aと他方の補助床部材2Bとがそれぞれ正位置に配列されると、一方の補助床部材2Aの突出部41が他方の補助床部材2Bの挿入部42に挿入され、突出部41と挿入部42とが互いに嵌合し、一方の補助床部材2Aと他方の補助床部材2Bとが連結される。
【0029】
図1乃至図3に戻り、このような補助床部材2は、切り替え可能床面13Aに取り付けられると、上方に椅子3の着座部32が配置されるように構成されている。このとき、補助床部材2の上面2bは、椅子3を使用する場合に足元を配置する補助床面2bを形成している。
そして、補助床面2bから椅子3の着座部32の座面32aまでの高さ(h3)は、切り替え可能床面13A以外の床面13からその上方の椅子3の着座部32の座面32aまでの高さ(不図示)と略同じ高さとなるように構成されている。
【0030】
続いて、切り替え可能床面13Aの段床と平場との切り替え方法について説明する。
まず、切り替え可能床面13Aを段床とする場合は、切り替え可能床面13Aに補助床部材2を取り付ける。このとき、補助床部材2の嵌合溝21に椅子3の脚部31を嵌合させる。また、左右方向Cに隣り合う補助床部材2,2の一方の補助床部材2Aの連結手段4の突出部41を、他方の補助床部材2Bの連結手段4の挿入部42に挿入して、突出部41と挿入部42とを互いに嵌合させ、隣り合う補助床部材2,2どうしを連結させる。このようにすることで、切り替え可能床面13Aに段床が形成される。なお、補助床部材2は、切り替え可能床面13Aにネジなどの締結具で固定可能に構成されている。
【0031】
また、切り替え可能床面13Aを平場とする場合は、左右方向Cに隣り合う補助床部材2,2の連結を解除し、補助床部材2,2を椅子3の前方に移動させて切り替え可能床面13Aから取り外す。これにより、切り替え可能床面13Aに段のないスペースが形成される。
続いて、椅子3の係止部36と切り替え可能床面13Aとの係止を解除し、キャスタ37と切り替え可能床面13Aと当接させ、椅子3を移動させて切り替え可能床面13Aから取り外す。このようにすることで、段11Aおよび椅子3がなくなり切り替え可能床面13Aに平場が形成される。
【0032】
次に、第1実施形態による段床構造1Aの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による段床構造1Aでは、前側となる部分15に通路12が形成された切り替え可能床面13Aの後側となる部分14に補助床部材2を取り付けることで切り替え可能床面13Aに段床が形成され、この補助床部材2を切り替え可能床面13Aから取り外すことで切り替え可能床面13Aに段のないスペースを形成することができる。そして、切り替え可能床面13Aに補助床部材2を取り付けるか、切り替え可能床面13Aから補助床部材2を取り外すことで、切り替え可能床面13Aを段床と段のないスペースとに切り替えることができるため、構造が簡便で、段床と段のないスペースとを容易に切り替えることができる。
【0033】
そして、補助床部材2の補助床面2bから椅子3の座面32aまでの高さh3は、切り替え可能床面13A以外の床面13からその上方の椅子3の座面32aまでの高さと略等しいことにより、補助床部材2を設置して段床を形成した場合も、補助床部材2を取り外して段のないスペースを形成した場合も、椅子3の座面32aが所定の高さに保持されているため、着座した使用者が前方を良好に視認することができる。
【0034】
また、椅子3は、切り替え可能床面13Aに着脱可能であることにより、切り替え可能床面13Aから補助床部材2および椅子3を取り外すことで、椅子3の無い平場が形成されるため、この平場を車椅子の利用者のためのスペースとしたり、カメラなどの機器類を設置するスペースとしたり多目的に使用することができる。
なお、補助床部材2を取り外して、一部の椅子3のみを取り外し、車椅子の利用者は、椅子3が外されたスペースに車椅子を置いて、切り替え可能床面13Aに固定されている椅子3に着座するようにしてもよい。このような場合も、椅子3の座面32aが所定の高さに保持されているため、着座した使用者が前方を良好に視認することができる。
【0035】
また、左右方向Cに隣り合う補助床部材2,2は、連結手段4によって連結可能であることにより、隣り合う補助床部材2,2どうしが確実に連結するため、隣り合う補助床部材2,2間に隙間ができて、この隙間に足が挟まったり物が落ちたりすることを防止することができるとともに、隣り合う補助床部材2,2が位置ずれすることを防止することができる。
また、補助床部材2には椅子3の脚部31が嵌合可能な嵌合溝21が形成されていることにより、切り替え可能床面13Aに固定された椅子3の脚部31と補助床部材2の嵌合溝21とを嵌合させれば、切り替え可能床面13Aおよび椅子3に対して補助床部材2が正位置に設置されるため、補助床部材2の位置合わせを容易に行うことができ、補助床部材2の床面13Aへの取り付けを容易に行うことができる。
また、椅子3は、切り替え可能床面13A上を走行するためのキャスタ37を有していることにより、椅子3を容易に移動させることができる。
【0036】
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0037】
(第2実施形態)
図5に示すように、第2実施形態による段床構造1Bは、段床のうち最後段の床面が切り替え可能床面13Bを構成していて、切り替え可能床面13Bの後側となる部分14に補助床部材2が取り付けられると、切り替え可能床面13Bが段床となり、切り替え可能床面13Bから補助床部材2が取り外されると切り替え可能床面13Bが段のないスペースとなるように構成されている。
【0038】
また、第2実施形態では、切り替え可能床面13Bの後側となる部分14にも前側となる部分15にも椅子(不図示)が、着脱可能に設けられている。そして、切り替え可能床面13Bから補助床部材2および椅子3が取り外されると、切り替え可能床面13Bに段及び椅子3の無い平場が形成される。
そして、この平場となった切り替え可能床面13Bは、例えば、カメラなどの機器類を設置するスペースとして使用することができる。
このため、第2実施形態では、通常時は上記のように切り替え可能床面13Bを平場としてカメラなどの機器類を設置し、観客席を増やしたい場合に、切り替え可能床面13Bに補助床部材2と椅子3とを取り付けることが好ましい。
【0039】
第2実施形態による段床構造1Bによれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施例による段床構造1Cは、段床のうち連続する2つの床面がそれぞれ切り替え可能床面13C,13Cを構成していて、切り替え可能床面13C,13Cの後側となる部分14にそれぞれ補助床部材2が着脱可能に設けられている。
そして、切り替え可能床面13Cの後側となる部分14と前側となる部分15は、前後方向Bの長さが略同じ寸法となるように形成されている。また、切り替え可能床面13Cの後側となる部分14および前側となる部分15には、それぞれ椅子3が着脱可能に設けられている。
【0041】
第3実施形態では、図6に示すように、2つの切り替え可能床面13C,13Cにそれぞれ補助床部材2および椅子3が設置されると、段床が形成されるとともに、前側から後側に向かって椅子3の座面32aが高くなるため、使用者は、椅子32に着座した状態で前方を良好に観覧することができる。
また、図7に示すように、一方の切り替え可能床面11Caの補助床部材2および椅子3を外すと、この切り替え可能床面13Caは、椅子3の無い平場となり、使用者が起立した状態で前方を観覧するためのスペースとすることができる。
【0042】
なお、他方の切り替え可能床面13Cbにおいても、補助床部材2および椅子3を外し、使用者が立った状態で前方を観覧するようにしてもよい。
また、平場となった切り替え可能床面13Cの直上の床面上にいる使用者が下方に転落することを防止するための転落防止バーや柵などの転落防止部材16を、平場となった切り替え可能床面11Cとその直上の床面との境界近傍に着脱可能に設けてもよい。
【0043】
(第4実施形態)
図8に示すように、第4実施形態による段床構造1Dは、切り替え可能床面13Dの前後方向の前側となる部分15に補助床部材2が着脱可能に設けられていて、後側となる部分14に通路12が形成されている。なお、第4実施形態では、前側となる部分15の前方にも床面が形成されているが、補助床部材2が着脱可能な部分より後方を切り替え可能床面11Dとし、補助床部材2が着脱可能な部分を前側となる部分15とする。
【0044】
第4実施形態では、切り替え可能床面13Dから補助床部材2および椅子3を取り外すことで、通路12の前側にスペースができるため、このスペースを例えば、車椅子の利用者のためのスペースとすることができる。
【0045】
以上、本発明による段床構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1実施形態では、切り替え可能床面13Aが、その前側となる部分15に通路12を形成可能な位置に設けられていて、第2実施形態では、切り替え可能床面13Bが、最後段に設けられているが、切り替え可能床面13A,13Bが設けられる位置は任意に設定されてよい。
また、切り替え可能床面13A,13Bに設けられる補助床部材2の数は任意に設定されてよい。また、補助床部材2は、1つの椅子3に対して1つ設けられていてもよいし、複数の椅子3に対して1つ設けられていてもよく、補助床部材2の形状は任意に設定されてよい。
また、上記の実施形態では、補助床部材2は、切り替え可能床面13Aの後側となる部分14または前側となる部分15のいずれかに着脱可能に設けられているが、補助床部材2が設けられる部分は任意に設定されてよく、切り替え可能床面13Aの前後方向Bの中間部に補助床部材2が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、補助床部材2は、切り替え可能床面13Aにネジなどの締結具で固定可能に構成されているが、切り替え可能床面13Aに固定しない構成としてもよい。
また、補助床部材2は、切り替え可能床面13Aに代わって椅子3に固定可能に構成されていてもよい。例えば、図9に示すように、補助床部材2の嵌合溝21に椅子3の脚部31と対応するように固定用金具22が取り付けられて、この固定用金具22と脚部31とをビスなどの締結具(不図示)で固定できるようにしてもよい。
また、補助床部材2は、切り替え可能床面13Aに設けられたときに、切り替え可能床面13Aと椅子3の両方に固定されていてもよい。
また、上記の実施形態では、補助床部材2に連結手段が設けられていて、左右方向Cに隣り合う補助床部材2が連結手段4によって連結されているが、補助床部材2に連結手段4が設けられていなくてもよい。また、隣り合う補助床部材2,2を連結させる連結手段4の形態は任意に設定されてよい。
また、上記の実施形態では、椅子3は、切り替え可能床面13A,13Bを走行するためのキャスタを備えているが、キャスタ37を備えていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、椅子3は、同一の段11の上部に脚部31および着座部32が配されているが、図10(a)に示すように後側の段11Cの上部に脚部31が設けられて前側の段11Dの上部に着座部32が配されている椅子3としてもよいし、図10(b)に示すように着座部32が後側の段11Cの前面に直接取り付けられていてこの着座部32が前側の段11Dの上部に配されている椅子3としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C,1D 段床構造
2 補助床部材
2b 補助床面
3 椅子
4 連結手段
11 段
12 通路
13 床面
13A,13B,13C,13D 切り替え可能床面
14 後側となる部分
15 前側となる部分
21 嵌合溝
22 固定用金具
31 脚部
32 着座部
32a 座面
37 キャスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10