(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188213
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
B60S3/06
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-200141(P2013-200141)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-66973(P2015-66973A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】西沢 純夫
【審査官】
神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−153177(JP,A)
【文献】
特開平03−164354(JP,A)
【文献】
特開2005−170220(JP,A)
【文献】
特開平11−139267(JP,A)
【文献】
実開昭62−041273(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00 − 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車と洗車機本体の相対移動に伴い、自動車の前後面及び側面をブラッシング洗浄するサイドブラシを左右一対で且つ開閉自在に備えた洗車機において、
前記サイドブラシを開く方向に駆動する第1駆動手段と、前記サイドブラシを閉じる方向に駆動する第2駆動手段と、洗浄する自動車の特定位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で検出した自動車の特定位置で前記サイドブラシの第1駆動手段及び第2駆動手段の駆動を両方とも停止し、前記サイドブラシが回転により車体からの反発力を受けて車体から離れる方向に作用するフリー状態とする制御手段を備えたことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記特定位置は、自動車のドアミラー位置であることを特徴とする上記請求項1記載の洗車機。
【請求項3】
前記特定位置は、自動車の側面から前面もしくは後面に切り替わる位置であることを特徴とする上記請求項1記載の洗車機。
【請求項4】
前記第1駆動手段及び第2駆動手段は、複動型エアシリンダと、該エアシリンダのロッドを伸ばすポートへのエア供給を断通する第1バルブと、ロッドを縮めるポートへのエア供給を断通する第2バルブとからなり、前記制御手段は、自動車の特定位置で前記エアシリンダの両ポートへのエア供給を遮断するよう前記第1バルブ及び第2バルブを制御することを特徴とする上記請求項1乃至4記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を跨ぐように門型に形成された洗車機本体を往復走行させて自動車の車体を洗浄するタイプの洗車機に関し、特に自動車の前後面及び側面をブラッシングするサイドブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の洗車機には、自動車の上面を洗浄するトップブラシと、自動車の前後面及び側面を洗浄する左右一対のサイドブラシが設けられている。このうち、サイドブラシは、洗車機本体の上方に横架されたガイドレール上を走行するキャリアに支持され、このキャリアを閉じる方向に付勢するウェイトと開く方向に作動するエアーシリンダとにより開閉動作するようになっている。
【0003】
このようなサイドブラシでは、自動車車体へのブラシ接触圧がウエイトの荷重によって決定されるため、車体面への洗浄力を基準にブラシ接触圧を設定した場合には、ドアミラー等の装備品に対しては過接触の状態となる。また、ブラシが車体側面から前後面に回り込むときには、ブラシを閉じる方向への推進力が一時的に高まりブラシの暴れが発生する。そのため、従来では、これらの位置でエアシリンダを作動させてブラシを開く回避動作を与えており、洗い残しが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−237932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、サイドブラシによる装備品やコーナー部分の洗い残しを軽減しつつ、安全なブラッシングを実行することのできる洗車機を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため本発明は、自動車と洗車機本体の相対移動に伴い、自動車の前後面及び側面をブラッシング洗浄するサイドブラシを左右一対で且つ開閉自在に備えた洗車機において、サイドブラシを開く方向に駆動する第1駆動手段と、サイドブラシを閉じる方向に駆動する第2駆動手段と、洗浄する自動車の特定位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で検出した自動車の特定位置でサイドブラシの第1駆動手段及び第2駆動手段の駆動を両方とも停止し、
サイドブラシが回転により車体からの反発力を受けて車体から離れる方向に作用するフリー状態とする制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
自動車の特定位置は、自動車のドアミラー位置や車体側面から前面もしくは後面に切り替わる位置である。また、第1駆動手段及び第2駆動手段は、複動型エアシリンダと、該エアシリンダのロッドを伸ばすポートへのエア供給を断通する第1バルブと、ロッドを縮めるポートへのエア供給を断通する第2バルブとからなり、制御手段は、自動車の特定位置でエアシリンダの両ポートへのエア供給を遮断するよう第1バルブ及び第2バルブを制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイドブラシによる車体ブラッシングを安全に行うことができ、特にドアミラーや車体コーナー部でのブラシ過接触やブラシ暴れを防ぐとともに、洗い残しを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施態様について図面を基に説明する。
図1において、1は本体フレームで、門型に形成され、床面に敷設されたレール2・2上を走行モータ3に駆動されて往復走行する。本体フレーム1には、洗車処理を行う各種の処理装置として、車体の上面をブラッシングするトップブラシ4と、車体の前後面および側面をブラッシングする左右一対のサイドブラシ5と、車体上面に向けて空気を吹き付けるトップノズル6とを設ける他、特に図示しない水ノズル,洗剤ノズル,ワックスノズル等が備え、走行モータ3の駆動による本体フレーム1の走行に伴って水,洗剤,ワックス等を散布してブラッシングする洗浄作業と、トップノズル6より空気を吹き付ける乾燥作業を行うものである。
【0011】
7は走行エンコーダで、走行モータ3の出力軸に連係され、本体フレーム1が単位距離走行する毎にパルス出力し、そのパルス信号をカウントすることで本体フレーム1の走行位置を検知する。8はビームセンサで、本体フレーム1内面に発光器と受光器を一対で対向させ、複数(ここでは8a〜8cの計3対)の光軸を形成し、車体の端部・ルーフといった車体部位を捉える。
【0012】
サイドブラシ5は、
図2・3に示すように、垂直ブラシ軸10の上端をキャリア11に直結し、キャリア11に固定されたブラシモータ12により正逆転駆動される。キャリア11は、エアシリンダ13によって本体フレーム1内の後方上部に水平に横架されたガイドレール14に沿って開閉する。エアシリンダ13は、ロッド15を伸ばす側にエアを供給する第1ポート16と、ロッド15を縮める側にエアを供給する第2ポート17とを備えた複動型エアシリンダであり、ロッド15の先端をキャリア11の連結片18に連結し、各ポート16・17へのエア供給を切り替えることによってロッド15の先端に連係したキャリア11を開閉移動させる。
【0013】
19・20はソレノイドバルブで、エアシリンダ13の各ポートに通じる配管に設けられ、エアシリンダ13への給気・排気を切り替えるものである。すなわち、
図4に示すように、ソレノイドバルブ19をON・ソレノイドバルブ20をOFFすると、エア源Aからエアシリンダ13の第1ポート16にエア供給され、ロッド15が伸び、キャリア11をガイドレール14に沿って外側に移動してサイドブラシ5を開き位置にする(パターンO)。ソレノイドバルブ19をOFF・ソレノイドバルブ20をONすると、エア源Aからエアシリンダ13の第2ポート17にエア供給され、ロッド15が縮み、キャリア11をガイドレール14に沿って内側に移動してサイドブラシ5を閉じ位置にする(パターンC)。また、両ソレノイドバルブ19・20をOFFすると、エアシリンダ13へのエア供給がなくなり、ロッド15がフリーになって、サイドブラシ5の位置規制を排除した状態にすることができる(パターンF)。
【0014】
21・22はリミットスイッチで、キャリア11の検出片23が接近することでスイッチングするマグネットスイッチからなり、エアシリンダ13の作動により移動するサイドブラシ5の開位置及び閉位置を検出する。すなわち、リミットスイッチ21がスイッチングしてサイドブラシ5が閉じていることを検出し、リミットスイッチ22がスイッチングしてサイドブラシ5が開いていることを検出する。
【0015】
このように構成するサイドブラシ5は、垂直ブラシ軸10の上端がキャリア11に支持されて開閉自在となっている。キャリア11は、エアシリンダ13により開閉動作し、ソレノイドバルブ19・20によってエア供給を切り替えることで開き位置・閉じ位置・フリーの状態となる。キャリア11の開閉位置は、リミットスイッチ21・22により検出され、キャリア11に支持されるサイドブラシ5の開閉状態が認識される。
【0016】
続いて、
図5を用いて本発明の制御系について説明する。
24は洗車制御部で、走行エンコーダ7、ビームセンサ8、リミットスイッチ21・22、操作パネル25、洗車駆動部26が接続されている。操作パネル25は、洗車コースを選択するコースキー27、洗車の開始を指示するスタートキー28、洗車を中止するストップキー29を備えている。
【0017】
洗車駆動部26は、本体フレーム1の走行モータ3と、サイドブラシ5のブラシモータ12及びソレノイドバルブ19・20が接続される他、トップブラシ4・トップノズル6・散水ノズル等の駆動部が接続され、洗車制御部24からの指令により各装置を駆動するものである。
【0018】
次に、本発明の動作について説明する。
自動車を所定の停車位置に停車した後、操作パネル25のコースキー27で洗車コースを選択し、スタートキー28を入力すると、選択された洗車が実行される。洗車は、本体フレーム1の走行に伴い、必要に応じてシャンプー・ワックス・撥水等を散布しながらトップブラシやサイドブラシで車体面をブラッシング洗浄し、最終工程でトップノズルでブロー乾燥を図るものであり、1往復単位で洗車コースがプログラムされている。
【0019】
ここで、1往復洗車におけるサイドブラシ5の動作について、
図6を用いて説明する。尚、サイドブラシ5の開閉動作は、上記した通り、
図4に示すソレノイドバルブ19・20の通電パターンによって行われるものであり、以下の説明を簡略化するために、サイドブラシ5を開く通電パターン(バルブ19−ON・バルブ20−OFF)をパターンOといい、サイドブラシ5を閉じる通電パターン(バルブ19−OFF・バルブ20−ON)をパターンCといい、サイドブラシ5をフリーにする通電パターン(バルブ19−OFF・バルブ20−OFF)をパターンFという。
【0020】
サイドブラシ5は、通常、パターンFで待機している。これは、サイドブラシ5をパターンOの開位置やパターンCの閉位置で待機させたとき、外気温が低い場合に、本体フレーム内板やブラシ同士の接触面で凍結が起こり、貼り付いてしまうのを防ぐためである。
【0021】
洗車がスタートすると、本体フレーム1が往行を開始するとともに、サイドブラシ5をパターンCで閉じ、ブラシモータ12を駆動して左右のサイドブラシ5を本体フレーム1の往行方向の後ろから前に接触する方向に回転する。本体フレーム1の往行に伴い、先行するビームセンサ8のうち、最下部のビームセンサ8cが車体前端を捉えて透光から遮光に転じると、走行エンコーダ7のデータから車体前端位置を認識する。本体フレーム1がビームセンサ8とサイドブラシ5との距離分走行すると、サイドブラシ5が車体前面に達したと判断して本体フレーム1の走行を停止し、サイドブラシ5をパターンOで開いて車体前面をブラッシング洗浄する。
【0022】
その後、サイドブラシ5がリミットスイッチ22で検出される開位置まで開いたら本体フレーム1の往行を再開し、本体フレーム1が所定距離走行したらサイドブラシ5をパターンCで閉じて車体側面に接触させ車体側面をブラッシング洗浄する。更に本体フレーム1が往行し、サイドブラシ5がドアミラーに接近すると、サイドブラシ5をパターンFでフリーにし、ドアミラーをブラッシング洗浄する。サイドブラシ5をフリーにすることで、サイドブラシ5は開方向にも閉方向にも推進力を持たない状態となるが、ブラシの回転により車体からの反発力を受けて車体側面から離れる方向に作用し、結果的に車体側面よりも弱い接触圧でドアミラーを洗浄することができ、ドアミラーやブラシの破損を防ぐことができる。本体フレーム1が往行を続け、サイドブラシ5がドアミラーを越えると、再びサイドブラシ5をパターンCで閉じて車体側面に接触させ車体側面をブラッシング洗浄する。
【0023】
本体フレーム1が往行を続け、ビームセンサ8cが車体後端を捉えて遮光から透光に転じると、走行エンコーダ7のデータから車体後端位置を認識する。サイドブラシ5が車体後端に接近すると、サイドブラシ5をパターンFでフリーにし、
車体コーナー部をブラッシング洗浄する。サイドブラシ5を車体側面から車体後面に回り込む直前でフリーにすることで、サイドブラシ5の閉方向への推進力がなくなり、車体コーナー部で発生するブラシの暴れを防止することができ、また、完全にブラシを開いてしまうことで発生する洗い残しをなくすことができる。
【0024】
こうして、サイドブラシ5が車体コーナー部を越えると、本体フレーム1の往行を停止し、サイドブラシ5をパターンCで閉じて車体後面に接触させ車体後面をブラッシング洗浄する。サイドブラシ5をパターンCで閉じていき、リミットスイッチ21でサイドブラシ5が閉じ位置まで閉じたらサイドブラシ5をパターンFでフリーにし、左右のサイドブラシ5が激しく衝突することを防止する。車体後面をブラッシング洗浄した後、本体フレーム1の往行を再開し、本体フレーム1が終端まで走行したら洗浄を終了する。
【0025】
このように、本発明は、サイドブラシ5をドアミラー周辺・車体コーナー周辺・閉位置直前で、開き方向にも閉じ方向にも推進力を持たないフリー状態にすることで、ドアミラーの破損防止・ブラシの暴れ防止・ブラシの衝突緩和を図ったものである。このフリー状態は、上記洗浄位置での実行に限るものではない。例えば、本体フレーム1の動作切り替え(走行/停止や前進/後進)やブラシの回転切り替え(正転/逆転)のタイミングでサイドブラシ5をフリー状態にすることで、ブラシと車体との接触度合いが弱まり、動作切り替えによるブラシの引っ掛かりを防止することができる。
【0026】
本発明は以上のように構成されるものであるが、上記実施態様の門型洗車機に限らず、据置式洗車機に自動車を搬送するタイプや、洗車機本体と自動車を双方移動させるタイプ等、種々の洗車機に採用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 本体フレーム
5 サイドブラシ
8 車形検出装置
13 エアシリンダ
19 ソレノイドバルブ
20 ソレノイドバルブ
24 洗車制御部
26 洗車駆動部