特許第6188234号(P6188234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188234ウェットティシュー積層体入り容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188234
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ウェットティシュー積層体入り容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/00 20060101AFI20170821BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A47K7/00 C
   A47K10/16 D
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-72683(P2014-72683)
(22)【出願日】2014年3月31日
(62)【分割の表示】特願2012-217851(P2012-217851)の分割
【原出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-168693(P2014-168693A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2014年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小山 英俊
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−509315(JP,A)
【文献】 実開平05−081083(JP,U)
【文献】 特開2003−144343(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035697(WO,A1)
【文献】 特表2000−512878(JP,A)
【文献】 特開2002−086036(JP,A)
【文献】 実公平02−043918(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェットティシュー積層体入り容器の製造方法において、
ティシュー基材に薬液を塗布する薬液塗布ステップと、前記薬液が塗布された一のティシュー基材を折り畳み、その折り返し部分に前記薬液が塗布された他のティシュー基材の端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材を折り畳むことによって、複数枚のウェットティシューが連続的に積層されたウェットティシュー積層体を形成する積層体形成ステップと、前記ウェットティシュー積層体を容器に収納するステップと、を有し、
前記積層体形成ステップでは、
一のティシュー基材の端部と、当該一のティシュー基材の折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材の端部と、の重なり部分が、前記ティシュー基材の積層方向に沿って並び、
当該重なり部分の前記積層方向の一側から他側に亘る第1領域が、前記積層方向において前記容器の取出口からずれた位置に配置され、
前記重なり部分の短手方向を第1方向としたとき、前記重なり部分のうち前記一のティシュー基材の下端部よりも前記他のティシュー基材の上端部の方が前記第1領域における前記第1方向の中心から近い方の前記取出口の縁部側に配置されることで、当該一のティシュー基材を前記取出口から取り終わる際に、当該他のティシュー基材が前記第1領域における前記第1方向の中心から近い方の前記取出口の縁部に当接するように前記薬液が塗布されたティシュー基材を折り畳んで積層し、
前記薬液塗布ステップでは、
前記ウェットティシュー積層体のうち、前記第1領域における薬液の含浸率が、前記ウェットティシュー積層体の前記第1領域以外である第2領域への薬液の含浸率よりも低くなるように、前記ティシュー基材に前記薬液を塗布することを特徴とするウェットティシュー積層体入り容器の製造方法。
【請求項2】
前記薬液塗布ステップでは、
外周面に所定パターンの凹凸を有するパターンロールと、
前記パターンロールの外周面に当接され、当該パターンロール外周面の凹凸へ押圧される外周面を有するプレスロールと、
前記パターンロールの外周面に当接される外周面を有する転写ロールと、
前記転写ロールの外周面に前記薬液を供給する薬液供給手段と、を用いて前記薬液を塗布し、
前記パターンロールは、前記第1領域における単位面積あたりの前記薬液の塗布量が、前記第2領域における単位面積あたりの前記薬液の塗布量よりも少なくなるようなパターンの凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載のウェットティシュー積層体入り容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットティシュー積層体入り容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布等のティシュー基材に薬液を含浸させたウェットティシューが知られている。ウェットティシューは、例えば、一のウェットティシューが折り畳まれ、その折り返し部分に他のウェットティシューが挟み込まれた状態で折り畳まれることによって、複数枚のウェットティシューが連続的に積層された状態で、容器等に収納されている。このようにウェットティシューをポップアップ方式で折り重ねることによって、最上層のウェットティシューを取り出すと、これに挟み込まれていた次層のウェットティシューの一部が容器等の取出口から突出するので、ウェットティシューの取り出しが容易となる。
【0003】
ところで、ウェットティシューをポップアップ方式で折り重ねた場合、次層のウェットティシューの飛び出し長さ(取出口から突出した部分の長さ)が必要以上に長くなったり、複数枚のウェットティシューが連なって引き出されたりするという問題、すなわちウェットティシューが不要に飛び出してしまうという問題が生じ易い。
そこで、ウェットティシューの折り方として、ウェットティシューの不要な飛び出しを抑制することが可能な折り方が提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−062443号公報
【特許文献2】特開2012−120639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポップアップ方式で折り重ねた場合にウェットティシューが不要に飛び出してしまうという問題は、ティシュー基材に含浸させる薬液の粘度や薬液の含浸率も関係してくる。したがって、折り方を工夫しただけでは、ウェットティシューの不要な飛び出しを十分に抑制することはできない。
【0006】
本発明の課題は、ポップアップ方式でウェットティシューを折り重ねることによって形成されたウェットティシュー積層体入り容器の製造方法であって、ウェットティシューの不要な飛び出しが十分に抑制されたウェットティシュー積層体入り容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ウェットティシュー積層体入り容器の製造方法において、
ティシュー基材に薬液を塗布する薬液塗布ステップと、前記薬液が塗布された一のティシュー基材を折り畳み、その折り返し部分に前記薬液が塗布された他のティシュー基材の端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材を折り畳むことによって、複数枚のウェットティシューが連続的に積層されたウェットティシュー積層体を形成する積層体形成ステップと、前記ウェットティシュー積層体を容器に収納するステップと、を有し、
前記積層体形成ステップでは、
一のティシュー基材の端部と、当該一のティシュー基材の折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材の端部と、の重なり部分が、前記ティシュー基材の積層方向に沿って並び、
当該重なり部分の前記積層方向の一側から他側に亘る第1領域が、前記積層方向において前記容器の取出口からずれた位置に配置され、
前記重なり部分の短手方向を第1方向としたとき、前記重なり部分のうち前記一のティシュー基材の下端部よりも前記他のティシュー基材の上端部の方が前記第1領域における前記第1方向の中心から近い方の前記取出口の縁部側に配置されることで、当該一のティシュー基材を前記取出口から取り終わる際に、当該他のティシュー基材が前記第1領域における前記第1方向の中心から近い方の前記取出口の縁部に当接するように前記薬液が塗布されたティシュー基材を折り畳んで積層し、
前記薬液塗布ステップでは、
前記ウェットティシュー積層体のうち、前記第1領域における薬液の含浸率が、前記ウェットティシュー積層体の前記第1領域以外である第2領域への薬液の含浸率よりも低くなるように、前記ティシュー基材に前記薬液を塗布することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のウェットティシュー積層体入り容器の製造方法において、
前記薬液塗布ステップでは、
外周面に所定パターンの凹凸を有するパターンロールと、
前記パターンロールの外周面に当接され、当該パターンロール外周面の凹凸へ押圧される外周面を有するプレスロールと、
前記パターンロールの外周面に当接される外周面を有する転写ロールと、
前記転写ロールの外周面に前記薬液を供給する薬液供給手段と、を用いて前記薬液を塗布し、
前記パターンロールは、前記第1領域における単位面積あたりの前記薬液の塗布量が、前記第2領域における単位面積あたりの前記薬液の塗布量よりも少なくなるようなパターンの凹凸を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重なり部分が配置されたティシュー基材の積層方向の一側から他側に亘る第1領域における薬液の含浸率が、当該第1領域以外の第2領域における薬液の含浸率よりも低く、薬液の粘度や薬液の含浸率に関する制限を設けたり、ウェットティシュー(ティシュー基材)の折り方を工夫したりしなくても、重なり部分の貼り付きを弱めることができるので、ウェットティシューの不要な飛び出しが十分に抑制されたウェットティシュー積層体入り容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るウェットティシュー積層体を模式的に示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図2】ウェットティシュー積層体を容器に収納した状態を模式的に示す図であって、(a)は断面図であり、(b)はウェットティシューを容器から引き出すときのウェットティシューと容器との関係を示す図である。
図3】重なり位置が図2に示す位置とは異なるウェットティシュー積層体を容器に収納した状態を模式的に示す図であって、(a)は断面図であり、(b)はウェットティシューを容器から引き出すときのウェットティシューと容器との関係を示す図である。
図4】ウェットティシュー積層体の製造時に使用する薬液塗布ノズルの一例を説明するための図である。
図5】ウェットティシュー積層体の製造時に使用する薬液塗布ノズルの他の一例を説明するための図である。
図6】ウェットティシュー積層体の製造時に使用する薬液塗布ノズルの他の一例を説明するための図である。
図7】(a)は実施例におけるウェットティシュー積層体の折り畳み方を説明するための図であり、(b)はその評価結果を示す図である。
図8】変形例1のウェットティシュー積層体の製造方法を説明するための図であって、ウェットティシュー積層体の製造時に使用するロール転写装置の一例を示す図である。
図9図8に示すロール転写装置で薬液を塗布したティシュー基材の一例を模式的に示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図10図8に示すロール転写装置で薬液を塗布したティシュー基材の他の一例を模式的に示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図11図8に示すロール転写装置で薬液を塗布したティシュー基材の他の一例を模式的に示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0012】
<ウェットティシュー積層体の構成>
まず、本実施形態のウェットティシュー積層体の構成について説明する。
ウェットティシュー積層体1は、例えば、図1に示すように、一のティシュー基材10aを折り畳み、その折り返し部分に他のティシュー基材10aの端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のティシュー基材10aが連続的に積層された基材積層体10と、ティシュー基材10aに含浸された薬液20と、からなる。
すなわち、ウェットティシュー積層体1は、ティシュー基材10aと当該ティシュー基材10aに含浸された薬液20とからなるウェットティシュー1aが、ポップアップ方式で折り重ねられてなる積層体である。以下、ウェットティシュー1a(ティシュー基材10a)の積層方向を「上下方向」とする。
このウェットティシュー積層体1は、例えば、図2図3に示すように、上面に取出口M1を有する容器M内に収納された状態で使用されるようになっている。
【0013】
ティシュー基材10aは、所定の繊維を繊維素材として、例えば、スパンボンド、メルトブロー、エアレイド、スパンレース、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される、ウェットティシュー用の不織布である。
なお、ティシュー基材10aとしては、繊維集合体からなるものであれば特に限定されるものではなく、不織布の他に、例えば、紙や織布等も用いることができる。
【0014】
ティシュー基材10aを構成する繊維としては、レーヨンやコットン、パルプ等のセルロース繊維、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等のポリオレフィン系やPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系の合成繊維など、任意の繊維を用いることができる。
また、ティシュー基材10aを構成する繊維として、繊維同士を相互に融着させる熱融着性繊維(バインダー繊維)を含有することが好ましい。熱融着性繊維としては、例えば、加熱によって溶融し相互に接着性を発現する任意の繊維を用いることができる。この熱融着性繊維は、単一繊維からなるものであってもよいし、2種以上の合成樹脂を組み合わせた複合繊維などであってもよい。
【0015】
薬液20は、例えば、エタノール等の防腐剤、プロピレングリコール等の保湿剤、クエン酸等のpH調整剤などが配合された水(精製水)を主成分とする、ウェットティシュー用の薬液である。
【0016】
本実施形態において、基材積層体10を構成する各ティシュー基材10aは、例えば、図1に示すように、Z状に三つ折りされている。具体的には、ティシュー基材10aは、平面視略矩形状のシート材であり、ティシュー基材10aの一辺に平行な2本の折り線において一方の折り線が谷折りで他方の折り線が山折りとなるように折り畳まれている。以下、折り線の延在方向を「前後方向」とし、上下方向(ティシュー基材10aの積層方向)と前後方向の双方に直交する方向を「左右方向」とする。
したがって、ティシュー基材10aは、折り線を境界として、2本の折り線に挟まれた中央部と、Z状に三つ折りされた状態で中央部よりも上側に位置する上部と、下側に位置する下部と、に区分することができる。
そして、Z状に三つ折りされた一のティシュー基材10aの中央部と下部との間に、Z状に三つ折りされた他のティシュー基材10aの上部の端部が挟みこまれている。
【0017】
本実施形態において、折り線の位置は、ティシュー基材10aの各々において同じ位置に設定されている。
そのため、例えば、図1に示すように、一のティシュー基材10aの下部の端部(下端部)と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10aの上部の端部(上端部)と、の重なり部分Lは、上下方向(ティシュー基材10aの積層方向)に沿って並んでいる。
したがって、基材積層体10は、重なり部分Lが配置された上下方向の一側から他側に亘る第1領域11と、当該第1領域11以外の第2領域12と、に区分することができる。本実施形態の場合、前後方向の長さ及び左右方向の長さが重なり部分Lの前後方向の長さ及び左右方向の長さと同一であり、上下方向の長さが基材積層体10の上下方向の長さと同一である略直方体形状の第1領域11の左右両側に、略直方体形状の第2領域12が配置されている。
【0018】
そして、本実施形態において、第1領域11における薬液20の含浸率は、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低く設定されている。ここで、第1領域11(あるいは第2領域12)における薬液20の含浸率とは、薬液20が含浸されていない状態の第1領域11(あるいは第2領域12)の重量に対する、第1領域11(あるいは第2領域12)に含浸された薬液20の重量の百分率である。
【0019】
ウェットティシュー1a(ティシュー基材10a)は、ポップアップ方式で折り重ねられている。したがって、最上層のウェットティシュー1aを取出口M1から容器Mの外側へ引き出したときに、これに挟み込まれていた次層のウェットティシュー1aの端部(上端部)が取出口M1よりも突出する位置まで引き出される。
ウェットティシュー1a同士の貼り付き、特に重なり部分Lの貼り付き(すなわち、一のウェットティシュー1aの端部(下端部)と、これに挟み込まれていた他のウェットティシュー1aの端部(上端部)と、の貼り付き)が強い場合には、最上層のウェットティシュー1aを取出口M1から容器Mの外側へ引き出したときに、最上層のウェットティシュー1aと次層のウェットティシュー1aとが離れ難くなる。最上層のウェットティシュー1aと次層のウェットティシュー1aとが離れ難いと、次層のウェットティシュー1aの飛び出し長さ(取出口M1から突出した部分の長さ)が必要以上に長くなったり、複数枚のウェットティシュー1aが連なって引き出されたりしてしまう。
【0020】
次層のウェットティシュー1aの飛び出し長さが必要以上に長くなったり、複数枚のウェットティシュー1aが連なって引き出されたりするという問題、すなわちウェットティシュー1aが不要に飛び出してしまうという問題は、ティシュー基材10aに含浸させる薬液の粘度や薬液の含浸率(含浸量)が関係してくる。例えば、薬液の粘度や含浸率が高い場合には、重なり部分Lの貼り付きが強くなるので、このような問題が多発する傾向にある。そのため、従来のウェットティシュー積層体、すなわち、薬液が基材積層体全体に均一に塗布されていて、薬液の含浸率が均一であるウェットティシュー積層体においては、薬液に保湿剤等の薬液粘度を高める成分を配合したり、薬液の含浸率を高く設定したりすることが困難であった。
これに対し、本実施形態の場合、重なり部分Lが配置された第1領域11における薬液の含浸率が、当該第1領域11以外の第2領域12における薬液の含浸率よりも低く設定されている。したがって、薬液の粘度や薬液の含浸率(この場合、第2領域12における薬液20の含浸率)に関する制限を設けなくても、重なり部分Lの貼り付きを弱めることができるので、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しを抑制することが可能となる。なお、第1領域11における薬液20の含浸率は、制限を設ける必要があり、薬液20の粘度やティシュー基材10aの組成等に応じて適宜設定される。
【0021】
なお、第1領域11に薬液20が全く含浸されていないと、重なり部分Lの貼り付きが弱くなり過ぎて、最上層のウェットティシュー1aを引き出したときに、次層のウェットティシュー1aが取出口M1から突出せずに容器M内に落ち込んでしまう場合がある。
また、第1領域11に薬液20が全く含浸されていないと、第1領域11に位置していた部分と、第2領域12に位置していた部分と、の間の含浸ムラがより顕著になって、使用感や防腐効果などの悪化を招いてしまう場合がある。本実施形態における折り方の場合、ウェットティシュー1aを広げたときに、第1領域11に位置していた部分(折り線に直交する方向の両端部及び中央部)と、第2領域12に位置していた部分と、が交互に出現することになるので、ウェットティシュー1aを広げて使用する場合に特に、含浸ムラを感じやすくなる。
【0022】
したがって、第1領域11には、薬液20が全く含浸されていなくてもよいし、薬液20が含浸されていてもよいが、薬液20が含浸されている方が好ましい。
第1領域11に薬液20を含浸させる場合、第1領域12に均一に薬液20を含浸させてもよいし、第1領域12の一部のみ(例えば、第1領域12の左右方向の両端部のみや、左右方向の中央部のみ)に薬液20を含浸させてもよい。
第2領域12には、均一に薬液20を含浸させる方が好ましい。
【0023】
容器Mに設けられた取出口M1は、通常、例えば、図2(a)、図3(a)に示すように、容器Mの平面視略中央部に設けられている。
したがって、重なり部分Lがウェットティシュー積層体1(基材積層体10)の左右方向の中央部にある場合には、例えば、図2(b)に示すように、最上層のウェットティシュー1aを引き出すときに、最上層のウェットティシュー1aと次層のウェットティシュー1aとの重なり部分Lが、取出口M1の縁部に接触しない。あるいは、接触したとしても当該重なり部分Lに大きな抵抗は付与されない。
一方、例えば、重なり部分Lがウェットティシュー積層体1(基材積層体10)の左右方向の中央部からずれた位置にある場合には、例えば、図3(b)に示すように、最上層のウェットティシュー1aを引き出すときに、最上層のウェットティシュー1aと次層のウェットティシュー1aとの重なり部分Lが、取出口M1の縁部に接触して、当該重なり部分Lに大きな抵抗が付与される。すなわち、次層のウェットティシュー1aが不要に飛び出さないように、取出口M1の縁部で次層のウェットティシュー1aを押さえることができる。
【0024】
したがって、第1領域11は、例えば、図2(a)に示すように、取出口M1からずれない位置に配置されていてもよいし、例えば、図3(a)に示すように、取出口M1からずれた位置に配置されていてもよいが、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しをより効果的に抑制するという観点から、取出口M1からずれた位置に配置されている方が好ましい。
ここで、「第1領域11が取出口M1からずれた位置に配置されている」とは、取出口M1の左右方向中心線(取出口M1の左右方向中心を通って前後方向に延在する線)と、第1領域11の左右方向中央線(第1領域11の左右方向中心を通って前後方向に延在する線)と、が上下方向に重ならないことであり、取出口M1を介して第1領域11を視認不能であってもよいし、視認可能であってもよい。
無論、容器Mに設けられた取出口M1が、容器Mの平面視略中央部に設けられていない場合もある。したがって、第1領域11の位置は、取出口M1の位置に応じて適宜任意に変更可能である。
【0025】
なお、図2図3では、取出口M1を開閉させる蓋体の図示を省略したが、蓋体は、その開放端を上下方向に回動させることで開閉を行う蓋体であってもよいし、容器Mに対してスライド移動することで開閉を行う蓋体であってもよい。
【0026】
<ウェットティシュー積層体の製造方法>
次に、本実施形態のウェットティシュー積層体の製造方法の一例について、図4図6を参照して説明する。
まず、一のティシュー基材10aを折り畳み、その折り返し部分に他のティシュー基材10aの端部(本実施形態の場合、上端部)を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のティシュー基材10aが連続的に積層された基材積層体10を形成する(積層体形成ステップ)。
ここで、積層体形成ステップでは、一のティシュー基材10aの端部(本実施形態の場合、下端部)と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10aの端部(本実施形態の場合、上端部)と、の重なり部分Lが、上下方向(ティシュー基材10aの積層方向)に沿って並ぶように、ティシュー基材10aを折り畳んで積層して、基材積層体10を形成するようになっている。
【0027】
次いで、形成した基材積層体10に薬液20を塗布する(薬液塗布ステップ)。
ここで、薬液塗布ステップでは、基材積層体10の第1領域11における薬液20の含浸率が、基材積層体10の第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、基材積層体10に薬液20を塗布するようになっている。
【0028】
具体的には、薬液塗布ステップでは、薬液塗布ノズルNを用いて基材積層体10に薬液20を塗布する。
この薬液塗布ノズルNは、薬液20を噴出するための噴出孔Naが複数設けられているとともに、薬液塗布ステップにて、基材積層体10の第1領域11の直上に配置される第1部分N1と、基材積層体10の第2領域12の直上に配置される第2部分N2と、を有している。本実施形態の場合、噴出孔Naは、一列に並んで配置されていることとする。
【0029】
例えば、図4に示すように、第1部分N1に噴出孔Naが形成されていない薬液塗布ノズルNを使用した場合には、第1領域11に薬液20が全く含浸されていないウェットティシュー積層体1が製造される。
【0030】
また、例えば、図5図6に示すように、第1部分N1における噴出孔Naの占有率が、第2部分N1における噴出孔Naの占有率よりも低い薬液塗布ノズルNを使用した場合には、第1領域11に薬液20が含浸されたウェットティシュー積層体1が製造される。ここで、第1部分N1(あるいは第2部分N2)における噴出孔Naの占有率とは、第1部分N1(あるいは第2部分N2)の表面積に対する、第1部分N1(あるいは第2部分N2)に設けられた噴出孔Naの開口面積の総和の百分率である。
【0031】
図5に示す薬液塗布ノズルNは、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径と略同一であり、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数よりも少なくなるよう構成されている。ここで、第1部分N1(あるいは第2部分N2)における単位長さあたりの噴出孔Naの個数とは、第1部分N1(あるいは第2部分N2)に設けられた噴出孔Naの個数を、第1部分N1(あるいは第2部分N2)の長さで割った値である。
また、図6に示す薬液塗布ノズルNは、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数と略同一であり、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径よりも小さくなるよう構成されている。
【0032】
なお、第1部分N1における噴出孔Naの占有率が、第2部分N2における噴出孔Naの占有率よりも低い薬液塗布ノズルNは、図5図6に示すノズルに限ることはなく、適宜任意に変更可能であり、例えば、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数よりも少なく、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径よりも小さいノズルであってもよい。
また、図4図6では、第1領域11(重なり部分L)が左右方向の中央部に設けられている基材積層体10に薬液20を塗布するための薬液塗布ノズルNを示したが、前述したように、第1領域11(重なり部分L)は左右方向の中央部に設けられていなくてもよい。したがって、薬液塗布ノズルNの第1部分N1及び第2部分N1の位置や長さは、第1領域11及び第2領域12の位置や幅(左右方向の長さ)に応じて、適宜任意に変更可能である。
【0033】
そして、製造されたウェットティシュー積層体1は、容器Mに収納される。あるいは、製造されたウェットティシュー積層体1が、例えば詰替え用の積層体である場合には、包装体(図示省略)に包装される。
なお、ウェットティシュー積層体1を包装するための包装体に開口(ウェットティシュー1aを取り出すための開口)が設けられている場合、ウェットティシュー積層体1の第1領域11は、当該開口からずれた位置に配置されていてもよいし、当該開口からずれない位置に配置されていてもよいが、容器Mの取出口M1と同様、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しをより効果的に抑制するという観点から、当該開口からずれた位置に配置されている方が好ましい。
【0034】
以下、具体的な実施例によって本発明を説明するが、発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
<実施例>
まず、ティシュー基材10aとして、組成が、レーヨン50%、PET繊維30%、バインダー繊維20%であり、寸法が、MD方向150mm、CD方向175mmである不織布を準備した。
次いで、基材積層体10として、図7(a)に示すような積層体、具体的には、基材積層体10の左右方向の長さが80mm、第1領域11の左右方向の長さが15mm、第1領域11の右側にある第2領域12の左右方向の長さが10mmである積層体を作製した。すなわち、重なり部分Lが左右方向の中央部からずれた位置にある基材積層体10を作製した。
【0036】
次いで、薬液20として、ノンアルコール処方の薬液、具体的には、保湿剤、乳化剤としてプロピレングリコールが配合され、その他パラベン等の防腐剤が少量添加されるとともに、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤がごく少量添加された薬液を準備した。
ここで、薬液20がノンアルコール処方である場合、ノンアルコール処方でない場合と比較して、薬液20の表面張力が増すので、ウェットティシュー1a同士がより強く貼り付くことになる。
【0037】
次いで、作製した基材積層体10に、含浸率230%となるように薬液20を塗布して、ウェットティシュー積層体1(以下「実施例のウェットティシュー積層体」という。)を作製した。
ここで、図7(a)に示すように、第1領域11においては、左右方向の両端部分(各部分の左右方向の長さは1mm)のみに薬液20を塗布し、それ以外の部分(左右方向の長さが13mmとなる部分)には薬液20を塗布しないようにした。薬液20を塗布する部分(第2領域12,12及び第1領域11の左右方向の両端部分)には、均一に薬液20を塗布した。
【0038】
次いで、実施例のウェットティシュー積層体を包装体に入れて、取出口M1が平面視略中央部に設けられている容器M内に収納した。
ここで、実施例のウェットティシュー積層体の重なり部分Lは当該ウェットティシュー積層体の左右方向の中央部からずれた位置に設けられているので(図7(a)参照)、実施例のウェットティシュー積層体を容器Mに収納した状態において、第1領域11の位置は、取出口M1からずれている。
【0039】
<比較例>
また、比較例として、薬液の含浸率が均一であるウェットティシュー積層体、すなわち第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率と同一であるウェットティシュー積層体を作製した。なお、比較例のウェットティシュー積層体は、薬液の含浸率が均一である点以外は、実施例のウェットティシュー積層体と同一である。
そして、比較例のウェットティシュー積層体を、実施例のウェットティシュー積層体を入れた包装体と同一の包装体に入れて、実施例のウェットティシュー積層体を収納した容器Mと同一の容器に収納した。
【0040】
<評価>
そして、実施例のウェットティシュー積層体のポップアップ性の評価を行った。具体的には、ウェットティシュー1aを取出口M1から真上に1枚ずつ取り出す動作を45回行う作業を3回繰り返し行って、連なり回数と落ち込み回数の平均(繰り返し平均)を算出した。また、ウェットティシュー1aを1枚取り出した際の次層のウェットティシュー1aの頭出し長さ(飛び出し長さ)を測定し、その平均も算出した。
また、比較例のウェットティシュー積層体も同様の方法で、ポップアップ性の評価を行った。
その結果を、図7(b)に示す。
【0041】
図7(b)に示すように、比較例のウェットティシュー積層体においては、45回の取り出し動作のうち10.2回の取り出し動作で次層のウェットティシューが連なって出てきた。
これに対し、実施例のウェットティシュー積層体においては、45回の取り出し動作のうち1.3回の取り出し動作で次層のウェットティシューが連なって出てきた。
これにより、第1領域11における薬液の含浸率を、第2領域12における薬液の含浸率よりも低くすることで、連なり回数を改善できることが分かった。
【0042】
また、比較例のウェットティシュー積層体において、次層のウェットティシュー1aの飛び出し長さ(取出口M1から突出した部分の長さ)は、平均で76mmであった。
これに対し、実施例のウェットティシュー積層体において、次層のウェットティシュー1aの飛び出し長さは、平均で45mmであった。
これにより、第1領域11における薬液の含浸率を、第2領域12における薬液の含浸率よりも低くすることで、頭出し長さを改善できることが分かった。
【0043】
また、比較例のウェットティシュー積層体においては、45回の取り出し動作のうち0.3回の取り出し動作で次層のウェットティシューが取出口M1から突出せずに容器M内に落ち込んだ。
これに対し、実施例のウェットティシュー積層体においては、45回の取り出し動作のうち0.7回の取り出し動作で次層のウェットティシューが取出口M1から突出せずに容器M内に落ち込んだ。
これにより、第1領域11における薬液の含浸率を、第2領域12における薬液の含浸率よりも低くしても、落ち込み回数は悪化しないことが分かった。
【0044】
以上説明した本実施形態のウェットティシュー積層体1によれば、一のティシュー基材10aを折り畳み、その折り返し部分に他のティシュー基材10aの端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のティシュー基材10aが連続的に積層された基材積層体10と、ティシュー基材10aに含浸された薬液20と、からなり、一のティシュー基材10aの端部と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10aの端部と、の重なり部分Lは、ティシュー基材10aの積層方向に沿って並んでおり、基材積層体10は、重なり部分Lが配置されたティシュー基材10aの積層方向の一側から他側に亘る第1領域11と、当該第1領域11以外の第2領域12と、に区分され、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低い。
【0045】
したがって、薬液の粘度や薬液の含浸率に関する制限を設けたり、ウェットティシュー1a(ティシュー基材10a)の折り方を工夫したりしなくても、重なり部分Lの貼り付きを弱めることができるので、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しが十分に抑制されたウェットティシュー積層体を提供することが可能となる。
【0046】
また、以上説明した本実施形態のウェットティシュー積層体1によれば、取出口M1が設けられた容器Mに収納可能であり、容器Mに収納された場合に、第1領域11が取出口M1からずれた位置に配置されるよう構成することが可能である。
このように構成することによって、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しを効果的に抑制することが可能となる。
【0047】
以上説明した本実施形態のウェットティシュー積層体1の製造方法によれば、一のティシュー基材10aを折り畳み、その折り返し部分に他のティシュー基材10aの端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のティシュー基材10aが連続的に積層された基材積層体10を形成する積層体形成ステップと、基材積層体10に薬液20を塗布する薬液塗布ステップと、を有し、積層体形成ステップでは、一のティシュー基材10aの端部と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10aの端部と、の重なり部分Lが、ティシュー基材10aの積層方向(本実施形態の場合、上下方向)に沿って並ぶように、ティシュー基材10aを折り畳んで積層し、基材積層体10は、重なり部分Lが配置されたティシュー基材10aの積層方向の一側から他側に亘る第1領域11と、当該第1領域11以外の第2領域12と、に区分され、薬液塗布ステップでは、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、基材積層体10に薬液20を塗布するようになっている。
【0048】
したがって、薬液の粘度や薬液の含浸率に関する制限を設けたり、ウェットティシュー1a(ティシュー基材10a)の折り方を工夫したりしなくても、重なり部分Lの貼り付きを弱めることができるので、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しを十分に抑制することが可能となる。
【0049】
具体的には、以上説明した本実施形態のウェットティシュー積層体1の製造方法によれば、薬液塗布ステップでは、薬液20を噴出するための噴出孔Naが複数設けられているとともに、薬液塗布ステップにて、第1領域11の直上に配置される第1部分N1と、第2領域12の直上に配置される第2部分N2と、を有する薬液塗布ノズルNを用いて薬液20を塗布するようになっている。
【0050】
薬液塗布ノズルNとしては、例えば、第1部分N1に噴出孔Naが形成されていないノズル(図4参照)や、第1部分N1における噴出孔Naの占有率が第2部分N2における噴出孔Naの占有率よりも低いノズル等を用いることができる。
第1部分N1における噴出孔Naの占有率が第2部分N2における噴出孔Naの占有率よりも低い薬液塗布ノズルNとしては、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径と略同一であり、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数よりも少ないノズル(図5参照)や、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数と略同一であり、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径よりも小さいノズル(図6参照)、第1部分N1における単位長さあたりの噴出孔Naの個数が、第2部分N2における単位長さあたりの噴出孔Naの個数よりも少なく、第1部分N1に形成された噴出孔Naの径が、第2部分N2に形成された噴出孔Naの径よりも小さいノズル等を用いることができる。
【0051】
なお、薬液塗布ノズルNは、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、基材積層体10に薬液20を塗布できるノズルであれば、前述したノズルに限ることはなく、適宜に任意に変更可能である。
また、本実施形態の製造方法は、薬液塗布ノズルNを用いる方法に限ることはなく、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、基材積層体10に薬液20を塗布できる方法であれば、適宜任意に変更可能である。
【0052】
<変形例1>
次に、ウェットティシュー積層体の製造方法の変形例について、図8図11を参照して説明する。
まず、ティシュー基材10a(所定の大きさに切断前のティシュー基材)に薬液20を塗布する(薬液塗布ステップ)。
ここで、薬液塗布ステップでは、基材積層体10の第1領域11における薬液20の含浸率が、基材積層体10の第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、ティシュー基材10aに薬液20を塗布するようになっている。
【0053】
次いで、薬液20が塗布されたティシュー基材10aを、所定の大きさに切断する(切断ステップ)。
なお、所定の大きさに切断されたティシュー基材10aに、薬液20を塗布することも可能である。すなわち、薬液塗布ステップの前に切断ステップを行ってもよい。
【0054】
次いで、薬液20が塗布されて所定の大きさに切断された一のティシュー基材10a(すなわち、一のウェットティシュー1a)を折り畳み、その折り返し部分に薬液20が塗布されて所定の大きさに切断された他のティシュー基材10a(すなわち、他のウェットティシュー1a)の端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のウェットティシュー1aが連続的に積層されたウェットティシュー積層体1を形成する(積層体形成ステップ)。
ここで、積層体形成ステップでは、一のティシュー基材10a(一のウェットティシュー1a)の端部と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10a(他のウェットティシュー1a)の端部と、の重なり部分Lが、上下方向(ティシュー基材10a(ウェットティシュー1a)の積層方向)に沿って並ぶように、薬液20が塗布されたティシュー基材10aを折り畳んで積層して、ウェットティシュー積層体1を形成するようになっている。
【0055】
薬液塗布ステップでは、例えば、図8に示すように、外周面に所定パターンの凹凸を有するパターンロールR1と、パターンロールR1の外周面に当接され、当該パターンロールR1外周面の凹凸へ押圧される外周面を有するプレスロールR2と、パターンロールR1の外周面に当接される外周面を有する転写ロールR3と、転写ロールR3の外周面に薬液20を供給する薬液供給手段R4と、を備えるロール転写装置Rを用い、プレスロールR2でパターンロールR1にティシュー基材10aを押し付けることによってティシュー基材10aに薬液20を塗布する。
このロール転写装置RのパターンロールR1は、ティシュー基材10aのうち重なり部分Lとなる部分L*における単位面積あたりの薬液20の塗布量が、重なり部分Lとなる部分L*以外の部分における単位面積あたりの薬液20の塗布量よりも少なくなるようなパターンの凹凸を有している。ここで、「ティシュー基材10aのうち重なり部分Lとなる部分L*における単位面積あたりの薬液20の塗布量」とは、一のティシュー基材10aのうちの各部分L*に塗布する薬液20の総量(本変形例の場合、一方の部分L*に塗布する薬液20の量と、他方の部分L*に塗布する薬液20の量と、の和)を、当該一のティシュー基材10aのうちの各部分L*の面積の総和(本変形例の場合、一方の部分L*の面積と、他方の部分L*の面積と、の和)で割った値である。無論、「部分L*に塗布する薬液20の量」は0(ゼロ)である場合もある。
【0056】
具体的には、パターンロールR1としては、例えば、図9(a)に示すように、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部には、薬液20が全く塗布されず、重なり部分Lとなる部分L*以外の部分には、薬液20が塗布されたウェットティシュー1aを得ることが可能なパターンの凹凸を有するパターンロールR1を使用することが可能である。ここで、図9(a)、図10(a)、図11(a)において、ドット状のハッチングで示す部分が薬液20を塗布した部分である。
このパターンロールR1を使用して薬液20を塗布したティシュー基材10a(所定の大きさに切断後のティシュー基材)を、例えば、図9(b)に示すように、Z状に三つ折して、Z状に三つ折りされた一のティシュー基材10a(一のウェットティシュー1a)の中央部と下部との間に、Z状に三つ折りされた他のティシュー基材10a(他のウェットティシュー1a)の上部の端部が挟み込まれるよう折り重ねると、基材積層体10の第1領域11における薬液20の含浸率が、基材積層体10の第2領域12における薬液20の含浸率よりも低いウェットティシュー積層体1を製造することが可能となる。
【0057】
また、パターンロールR1としては、例えば、図10(a)に示すように、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部の一方には、薬液20が全く塗布されず、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部の他方と、重なり部分Lとなる部分L*以外の部分と、には薬液20が塗布されたウェットティシュー1aを得ることが可能なパターンの凹凸を有するパターンロールR1を使用することが可能である。
このパターンロールR1を使用して薬液20を塗布したティシュー基材10a(所定の大きさに切断後のティシュー基材)を、例えば、図10(b)に示すように、Z状に三つ折して、Z状に三つ折りされた一のティシュー基材10a(一のウェットティシュー1a)の中央部と下部との間に、Z状に三つ折りされた他のティシュー基材10a(他のウェットティシュー1a)の上部の端部が挟み込まれるよう折り重ねると、基材積層体10の第1領域11における薬液20の含浸率が、基材積層体10の第2領域12における薬液20の含浸率よりも低いウェットティシュー積層体1を製造することが可能となる。
【0058】
また、パターンロールR1としては、例えば、図11(a)に示すように、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部の一部には、薬液20が全く塗布されず、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部のうち当該一部以外の部分と、重なり部分Lとなる部分L*以外の部分と、には薬液20が塗布されたウェットティシュー1aを得ることが可能なパターンの凹凸を有するパターンロールR1を使用することが可能である。
このパターンロールR1を使用して薬液20を塗布したティシュー基材10a(所定の大きさに切断後のティシュー基材)を、例えば、図11(b)に示すように、Z状に三つ折して、Z状に三つ折りされた一のティシュー基材10a(一のウェットティシュー1a)の中央部と下部との間に、Z状に三つ折りされた他のティシュー基材10a(他のウェットティシュー1a)の上部の端部が挟み込まれるよう折り重ねると、基材積層体10の第1領域11における薬液20の含浸率が、基材積層体10の第2領域12における薬液20の含浸率よりも低いウェットティシュー積層体1を製造することが可能となる。
【0059】
なお、図11(a)には、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部において、薬液20が塗布される部分と、薬液20が塗布されない部分と、が前後方向に交互に並ぶようなパターンの凹凸を有するパターンロールR1で薬液20を塗布した場合の例を示したが、これに限ることはなく、例えば、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部において、薬液20が塗布される部分と、薬液20が塗布されない部分と、左右方向に交互に並ぶようなパターンの凹凸を有するパターンロールR1で薬液20を塗布することも可能である。
また、図11(a)には、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部に、薬液20が塗布される部分と、薬液20が塗布されない部分と、の両方が形成されるようなパターンの凹凸を有するパターンロールR1で薬液20を塗布した場合の例を示したが、これに限ることはなく、例えば、重なり部分Lとなる部分L*である左右方向の両端部の一方に、薬液20が塗布される部分と、薬液20が塗布されない部分と、の両方が形成され、当該両端部の他方には、薬液20が塗布される部分のみ(あるいは、薬液20が塗布されない部分のみ)が形成されるようなパターンの凹凸を有するパターンロールR1で薬液20を塗布することも可能である。
【0060】
以上説明した変形例1のウェットティシュー積層体1の製造方法によれば、ティシュー基材10aに薬液20を塗布する薬液塗布ステップと、薬液20が塗布された一のティシュー基材10aを折り畳み、その折り返し部分に薬液20が塗布された他のティシュー基材10aの端部を挟み込んだ状態で当該他のティシュー基材10aを折り畳むことによって、複数枚のウェットティシュー1aが連続的に積層されたウェットティシュー積層体1を形成する積層体形成ステップと、を有し、積層体形成ステップでは、一のティシュー基材10aの端部と、当該一のティシュー基材10aの折り返し部分に挟み込まれた他のティシュー基材10aの端部と、の重なり部分Lが、ティシュー基材10aの積層方向に沿って並ぶように、薬液20が塗布されたティシュー基材10aを折り畳んで積層し、薬液塗布ステップでは、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、ティシュー基材10aに薬液20を塗布するようになっている。
【0061】
したがって、薬液の粘度や薬液の含浸率に関する制限を設けたり、ウェットティシュー1a(ティシュー基材10a)の折り方を工夫したりしなくても、重なり部分Lの貼り付きを弱めることができるので、ウェットティシュー1aの不要な飛び出しを十分に抑制することが可能となる。
【0062】
具体的には、以上説明した変形例1のウェットティシュー積層体1の製造方法によれば、薬液塗布ステップでは、外周面に所定パターンの凹凸を有するパターンロールR1と、パターンロールR1の外周面に当接され、当該パターンロールR1外周面の凹凸へ押圧される外周面を有するプレスロールR2と、パターンロールR1の外周面に当接される外周面を有する転写ロールR3と、転写ロールR3の外周面に薬液20を供給する薬液供給手段R4と、を用いて薬液20を塗布し、パターンロールR1は、ティシュー基材10aのうち重なり部分Lとなる部分L*における単位面積あたりの薬液20の塗布量が、当該重なり部分Lとなる部分L*以外の部分における単位面積あたりの薬液20の塗布量よりも少なくなるようなパターンの凹凸を有している。
【0063】
なお、パターンロールR1は、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、ティシュー基材10aに薬液20を塗布できるロールであれば、前述したロールに限ることはなく、適宜に任意に変更可能である。
また、変形例1の製造方法は、パターンロールR1と、プレスロールR2と、転写ロールR3と、薬液供給手段R4と、を用いる方法に限ることはなく、第1領域11における薬液20の含浸率が、第2領域12における薬液20の含浸率よりも低くなるように、ティシュー基材10aに薬液20を塗布できる方法であれば、適宜任意に変更可能である。
【0064】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。また、前述の実施形態及び変形例の構成を組み合わせて適用しても良い。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 ウェットティシュー積層体
1a ウェットティシュー
10 基材積層体
10a ティシュー基材
11 第1領域
12 第2領域
20 薬液
L 重なり部分
M 容器
M1 取出口
N 薬液塗布ノズル
Na 噴出孔
N1 第1部分
N2 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11