(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエステル樹脂(A)全量中、ガラス転移温度が40℃以上であるポリエステル樹脂(A−1)を60質量%以上含有するポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂架橋剤(B)、液状ポリブタジエン樹脂(C)及びノボラック型エポキシ樹脂(D)を含有する塗料であって、上記ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂架橋剤(B)との質量比〔(A)/(B)〕が90/10〜40/60の範囲内であり、該ポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂架橋剤(B)との合計100質量部に対し、上記液状ポリブタジエン樹脂(C)の量が5〜20質量部であり、且つノボラック型エポキシ樹脂(D)の量が5〜20質量部であることを特徴とする塗料組成物。
ポリエステル樹脂(A)が、上記ポリエステル樹脂(A−1)60質量%以上と、ガラス転移温度0℃以上で且つ40℃未満のポリエステル樹脂(A−2)40質量%以下とからなることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
さらに、ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂架橋剤(B)との合計100質量部に基づいて、石炭酸レゾール型フェノール樹脂を0.1〜5質量部含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
さらに、ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂架橋剤(B)との合計100質量部に基づいて、酸硬化触媒を酸量として0.1〜5質量部含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
さらに、ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂架橋剤(B)との合計100質量部に基づいて、潤滑性付与剤を0.1〜5質量部含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂架橋剤(B)、液状ポリブタジエン樹脂(C)及びノボラック型エポキシ樹脂(D)を含有する。
【0018】
ポリエステル樹脂(A)
本発明組成物において、(A)成分であるポリエステル樹脂は、水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂などのいずれであってもよい。なかでもオイルフリーポリエステル樹脂であることが好適である。
【0019】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、主に多塩基酸と多価アルコールとのエステル化物である。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。これらの多塩基酸成分は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサンなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化反応は、公知の方法によって行うことができる。
【0021】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、上記エステル化反応において、多塩基酸のかわりに多塩基酸の低級アルキルエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルなど)を用い、エステル交換反応を行うことによっても得ることができる。両成分のエステル交換反応は、公知の方法によって行うことができる。
【0022】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸又は油脂を公知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。
【0023】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂製造の際の、酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物と公知の方法で反応せしめたものである。ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際の各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物と公知の方法で反応せしめたものである。ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。
【0024】
本発明において、ポリエステル樹脂(A-1)は、ガラス転移温度(以下、「Tg点」と略称することがある)が40℃以上であり、好ましくは60〜100℃、特に70〜90℃の範囲内であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A-2)は、ガラス転移温度が0℃以上40℃未満であり、特に10〜20℃の範囲内であることが好ましい。
【0025】
また、数平均分子量は3,000〜100,000、特に8,000〜5,0000、さらに特に10,000〜30,000であることが好ましく、水酸基価は0.5〜40mgKOH/g、特に3〜20mgKOH/gであることが好ましく、酸価が15mgKOH/g以下、好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下であることが好ましい。上記範囲内にあることがポリエステル樹脂の取扱い易さ、得られる塗膜の加工性、硬度、耐水性、耐沸騰水性などの点から好適である。
【0026】
ポリエステル樹脂(A)は上記範囲内のポリエステル樹脂(A−1)を2種類以上組み合わせても良い。また、上記範囲内のポリエステル(A−1)とTg点が0℃〜40℃のポリエステル樹脂(A−2)とを、(A−1)/(A−2)=100/0〜60/40の範囲で組み合わせても良い。更に上記範囲内のポリエステル樹脂(A−1)を2種類以上組み合わせたポリエステル樹脂(A−1)とTg点が0℃〜40℃のポリエステル樹脂(A−2)とを、(A−1)/(A−2)=100/0〜60/40の範囲で組み合わせても良い。
【0027】
本明細書において、Tg点の測定は、示差走査熱量計を用いた示差熱分析(DSC)によるものであり、また数平均分子量は、下記分子量測定方法によりゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
(分子量測定方法)
数平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した保持時間(保持容量)を、ポリスチレンの数平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000XL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0028】
アミノ樹脂架橋剤(B)
本発明組成物における(B)成分であるアミノ樹脂架橋剤は、上記ポリエステル樹脂(A)と架橋反応して硬化させるために配合されるものである。
【0029】
本発明におけるアミノ樹脂架橋剤(B)としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等のアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1〜6の低級アルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に包含される。
【0030】
上記アミノ樹脂としては、なかでもメチロール化メラミン樹脂もしくはメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、低級アルコールによってエーテル化した低級アルキルエーテル化メラミン樹脂又は低級アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましく、これらのアルコールは単独で又は2種以上を混合してエーテル化に使用できる。
【0031】
上記メラミン樹脂の具体例としては、例えばユーバン20SE、同225〔以上、いずれも三井化学(株)製〕、スーパーベッカミンJ820−60、同L−117−60、同L−109−65、同47−508−60、同L−118−60、同G821−60〔以上、いずれもDIC(株)製〕等のブチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル300、同303、同325、同327、同350、同730、同736、同738〔いずれも日本サイテック・インダストリイズ(株)製〕、メラン522、同523〔いずれも日立化成(株)製〕、ニカラックMS001、同MX430、同MX650〔三和ケミカル(株)製〕、スミマールM−55、同M−100、同M−40S〔住友化学(株)製〕、レジミン740、同747〔いずれもモンサント社製〕等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV−514、同1130〔いずれも三井サイテック(株)製〕、ニカラックMX500、同MX600、同MS95〔いずれも三和ケミカル(株) 製〕、レジミン753、同755〔いずれもモンサント社製〕、スミマールM−66B〔住友化学(株)製〕等のメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0032】
前記ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、日本サイテック・インダストリイズ(株)製の、サイメル1123(メチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1123−10(メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1128(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、マイコート102(メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、DIC(株)製の、スーパーベッカミンTD−126等を挙げることができる。
【0033】
液状ポリブタジエン樹脂(C)
本発明組成物における(C)成分である液状ポリブタジエン樹脂は、塗膜の密着性向上などの目的で配合される。
【0034】
液状ポリブタジエン樹脂(C)としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を有し、1,4−ブタジエン単位を40質量%以上、好ましくは70質量%以上含有し、繰返し単位の残部は、1,2−ブタジエンからなるものが好ましいが、この他にα−メチルスチレン、スチレンなどのブタジエン以外のモノマーを含んでいてもよい。数平均分子量としては、500〜10000、好ましくは1000〜5000のものが好適に使用される。
【0035】
液状ポリブタジエンとしては、変性剤などによって液状ポリブタジエン樹脂中にエポキシ基が導入されたエポキシ化ポリブタジエンが、アミノ樹脂架橋剤(C)などと有効に反応するので特に好適である。
【0036】
上記エポキシ化ポリブタジエンは、1,4−ブタジエン単位を40質量%以上、好ましくは70質量%以上含有する、原料となる液状ポリブタジエン樹脂を、過酢酸、過蟻酸等の過酸で変性することにより得ることができる。また、エポキシ化ポリブタジエンは、末端水酸基を有するポリブタジエンの末端水酸基をエポキシ化することによっても得ることができる。液状ポリブタジエン樹脂中に導入されるエポキシ基は、一分子当り2〜20個であることが好適である。上記エポキシ化ポリブタジエンは、エポキシ当量が100〜300g/当量であることが好適である。
【0037】
上記エポキシ化ポリブタジエンは、脱水ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の脂肪酸で変性することも可能である。変性量は30質量%以下の範囲であり、この量を超えると相溶性が悪くなる。
【0038】
エポキシ化ポリブタジエンの市販品としては、エポリード(登録商標)PB4700、同3600(以上、ダイセル化学工業社製);JP−100、JP−200(以上、日本曹達(株)製);Ricon657(クレイバレー社製);BF−1000(旭電化(株)製);ブレンマーCP(日本油脂(株)製)などを挙げることができる。
【0039】
ノボラック型エポキシ樹脂(D)
本発明組成物における(D)成分であるノボラック型エポキシ樹脂は、素材との密着性、皮膜硬度の改良などのために用いられるものであり、上記ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基と反応して硬化する樹脂である。ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などの各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0040】
上記ノボラック型エポキシ樹脂は、数平均分子量が200〜8,000、好ましくは600〜5,000で且つエポキシ当量としては180〜1,000g/当量、好ましくは200〜600g/当量の範囲内にあることが塗膜の硬化性と貯蔵安定性のバランスの点から適している。
【0041】
ノボラック型エポキシ樹脂(B)の市販品としては、フェノールノボラック型として、エピコート152、同154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPPN−201(日本化薬社製)、YDPN−638(新日鉄住金化学社製)などが挙げられ、クレゾールノボラック型として、エピコート180S65、同180H65(以上、いずれも油化シェルエポキシ社製)、EOCN−102S、同−103S、同−104S(以上、いずれも日本化薬社製)、YDCN−700−2、同−700−3、同−700−5(以上、いずれも新日鉄住金化学社製)などを挙げることができる。
【0042】
ノボラック型エポキシ樹脂は、なかでも塗膜性能のバランスを取り易く、且つ分子構造がビスフェノールAと異なるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0043】
本発明塗料組成物
本発明塗料組成物は、前述したポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂架橋剤(B)、液状ポリブタジエン樹脂(C)及びノボラック型エポキシ樹脂(D)を下記配合割合にて含有するものである。
【0044】
上記ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂(B)との質量比〔(A)/(B)〕(固形分比)が90/10〜40/60、好ましくは95/15〜50/50の範囲内である。上記範囲内にあることが、得られる塗膜の硬化性、耐水性、塗膜硬度、可撓性などの点から好適である。
【0045】
該ポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂架橋剤(B)との合計固形分量100質量部に対し、上記液状ポリブタジエン樹脂(C)の量(固形分量)が5〜20質量部、好ましくは8〜18質量部の範囲内である。上記範囲内にあることが、得られる塗膜の密着性、上水中でのレトルト処理後の塗膜密着性、アルカリ洗浄水溶液中でのレトルト処理後の塗膜密着性、耐傷付性などの点から好適である。
【0046】
本発明塗料組成物には、上記ポリエステル樹脂(A)、アミノ樹脂架橋剤(B)、液状ポリブタジエン樹脂(C)及びノボラック型エポキシ樹脂(D)に加えて、さらに石炭酸レゾール型フェノール樹脂、酸硬化触媒、潤滑性付与剤、溶剤、塗膜改質用樹脂(高酸価ポリエステル樹脂);顔料;凝集防止剤、消泡剤、レベリング剤などの塗料用添加剤を適宜配合することができる。
【0047】
上記石炭酸レゾール型フェノール樹脂は、塗膜の硬化性、密着性向上などの目的で、石炭酸(フェノール)とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化石炭酸樹脂のメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化してなる石炭酸レゾール樹脂である。
【0048】
上記メチロール化石炭酸樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0049】
上記メチロール化石炭酸樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
【0050】
上記石炭酸レゾール型フェノール樹脂は、ポリエステル樹脂(A)との反応性などの点から、ベンゼン核1核当り平均してアルコキシメチル基の個数が、アルコキシメチル基とメチロール基との合計個数に基づいて70%以上であることが好適であり、さらにベンゼン核1核当りアルコキシメチル基を平均して0.5個以上、好ましくは0.6〜3.0個有することが好適である。
【0051】
本発明塗料組成物中に、上記石炭酸レゾール型フェノール樹脂を配合する場合、その配合量(固形分量)は、ポリエステル樹脂(A)と上記アミノ樹脂架橋剤(B)との合計固形分量100質量部に基づいて、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部の範囲内であることが好適である。
【0052】
上記酸硬化触媒は、本発明組成物の硬化反応を促進するものであり、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、燐酸などの酸触媒又はこれらの酸のアミン中和物などを具体例として挙げることができる。なかでも上記スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適である。
【0053】
酸硬化触媒を配合することによって本発明組成物から得られる塗膜の硬化性の向上に加えて鮮映性を向上させることもできる。酸硬化触媒の配合量は、得られる塗膜の物性などの点から、酸量(例えば、スルホン酸化合物のアミン中和物の場合は、この中和物からアミンを除去した残りのスルホン酸化合物量)としてポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲内であることが好適である。
【0054】
上記潤滑性付与剤は、得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びカルナウバワックスなどを挙げることができる。潤滑性付与剤は、1種で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
本発明組成物中に潤滑性付与剤を適当量配合することによって、該組成物から得られる塗膜表面に滑り性を付与することができ、塗面の摩擦抵抗が小さくなり、成型加工性が向上し加工後における耐食性も向上する。潤滑性付与剤の配合量(固形分量)は、塗膜の柔軟性、滑り性などに基づく成型加工性、耐食性などの点からポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部の範囲内であることが好適である。
【0056】
本発明組成物には、塗装性の観点などから、通常、溶剤が配合される。上記溶剤としては、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)などの各成分を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
本発明組成物に配合できる上記塗膜改質用樹脂としては、例えば、エチレン−重合性不飽和カルボン酸共重合体及びエチレン−重合性カルボン不飽和酸共重合体アイオノマー、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0058】
上記エチレン−重合性不飽和カルボン酸共重合体及びエチレン−重合性カルボン不飽和酸共重合体アイオノマーは、塗膜の可撓性を改良することなどを目的に配合することができる。
【0059】
本発明組成物に配合できる顔料としては、塗料分野において公知の着色顔料(例えば、チタン白)、体質顔料などを使用することができる。
【0060】
本発明組成物は、例えば、金属板、金属缶、プラスチックス、ガラス板などの種々の被塗物に塗装することができる。
【0061】
塗装金属板
本発明の塗装金属板は、本発明の塗料組成物を金属板に塗装することにより得られる。
【0062】
上記金属板としては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄スズメッキ鋼板、クロム処理鋼板などが挙げられ、必要に応じて各種表面処理、プライマー塗装が施されたものが使用される。
【0063】
塗装金属板を缶に加工して用いる場合、その金属板としては、飲料缶、缶詰用缶、蓋、キャップ等に用いることができる金属板であればいずれも使用することができ、例えばアルミニウム板、ティンフリースチール板、ブリキ板等を挙げることができる。
【0064】
本発明の塗装金属板は、本発明の塗料組成物を、ロールコーター塗装、スプレー塗装などの公知の塗装方法によって金属板に塗装し、連続焼付け炉等の加熱手段によって焼き付けることにより得ることができる。焼付条件は特に制限されるものではないが、例えば、素材到達最高温度が、90℃〜300℃、好ましくは180℃〜260℃となる条件で5秒〜30分間、好ましくは8〜60秒間焼付けることが適している。
【0065】
塗装金属板における塗膜厚は特に限定されるものではないが、乾燥膜厚で3〜18μm、更には3〜12μmの範囲であることが好ましい。乾燥膜厚は塗装金属板の用途などにより適宜決めることができる。
【0066】
塗装金属缶
本発明の塗装金属缶は、金属缶の少なくとも缶胴もしくは缶蓋の内面及び/又は外面に本発明の塗料組成物による塗膜が形成されてなるものであり、本発明の塗料組成物は、特に加工性、密着性、耐レトルト性、アルカリ性水溶液中でのレトルト処理後の塗膜密着性、耐食性、耐傷付性に優れているので、金属缶の少なくとも外面に本発明の塗料組成物による硬化塗膜が形成されていることが望ましい。
【0067】
本発明の塗装金属缶は、前述した塗装金属板から金属缶を成形することもできるが、予め成形された金属容器に本発明の塗料組成物を塗装、硬化して硬化塗膜を形成することによって得ることもできる。
【0068】
硬化塗膜を形成する金属容器としては、従来公知の金属缶を全て用いることができ、これに限定されないが、側面継ぎ目を有するスリーピース缶、ツーピース缶の、例えば、缶胴等を挙げることができる。
【0069】
上記缶蓋は、前述した本発明の塗装金属板から、従来公知の任意の製蓋法によって成形することができる。一般的には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋として成形される。
【実施例】
【0070】
以下、製造例、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」および「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0071】
ポリエステル樹脂(A)の製造
製造例1
東洋紡績(株)製のポリエステル樹脂「バイロン103」(数平均分子量22,000、水酸基価5mgKOH/g、酸価2mgKOH/g以下、Tg点45℃)をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(質量比)の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−1)−1溶液を得た。
【0072】
製造例2
テレフタル酸49.8部、イソフタル酸49.8部、ヘキサヒドロテレフタル酸34.4部、アジピン酸28.3部、ネオペンチルグリコール99.8部、トリメチロールプロパン6.8部及び重縮合触媒を仕込み、加熱、撹拌して生成する水を除去しながらエステル化反応を行い、数平均分子量24,000、水酸基価10mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/g、Tg点60℃の樹脂を得た。得られた樹脂をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(質量比)の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−1)−2溶液を得た。
【0073】
製造例3
フタル酸37.7部、イソフタル酸66.4部、ヘキサヒドロフタル酸46.2部、トリメリット酸6.7部、エチレングリコール12.4部、ネオペンチルグリコール78.8部、トリメチロールプロパン6.8部及び重縮合触媒を仕込み、加熱、撹拌し、生成する水を除去しながらエステル化反応を行い、数平均分子量15,000、水酸基価5mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、Tg点80℃ の樹脂を得た。得られた樹脂をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50の混合溶剤にて希釈し固形分30%のポリエステル樹脂(A−1)−3溶液を得た。
【0074】
製造例4
テレフタル酸2660部、トリメリット酸15.5部、プロピレングリコール2450部、1,4−シクロヘキサンジメタノール350部、重縮合触媒1.8部をオートクレーブに仕込み、加熱、撹拌し、生成する水を除去しながらエステル化反応を行ない、数平均分子量15,000、水酸基価4mgKOH/g、酸価1mgKOH/g、Tg点89℃のポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(重量比)の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−1)−4溶液を得た。
【0075】
製造例5
テレフタル酸498部、イソフタル酸498部、アジピン酸292部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸344部、ネオペンチルグリコール998部、トリメチロールプロパン66部、チタンテトラブトキシド0.18部をオートクレーブに仕込み、加熱、撹拌し、生成する水を除去しながらエステル化反応を行ない、数平均分子量24,000、水酸基価3mgKOH/g、酸価1mgKOH/g、Tg点38℃のポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(重量比)の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−2)−1溶液を得た。
【0076】
製造例6
テレフタル酸55.6部、イソフタル酸80.5部、アジピン酸21.9部、エチレングリコール52.1部、1,3−ブチレングリコール13.5部、トリメチロールプロパン1.3部及び重縮合触媒を仕込み、加熱、撹拌して、生成する水を除去しながらエステル化反応を行い、数平均分子量3,700、水酸基価27mgKOH/g、酸価4mgKOH/g、Tg点22℃の樹脂を得た。得られた樹脂をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(質量比)の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−2)−2溶液を得た。
【0077】
製造例7
ユニチカ(株)製のポリエステル樹脂「ユニチカ エリエーテルUE−3230」(数平均分子量20,000、水酸基価5mgKOH/g、酸価1mgKOH/g以下、Tg点3℃)をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50の混合溶剤にて希釈して固形分30%のポリエステル樹脂(A−2)−3溶液を得た。
【0078】
塗料組成物の製造
実施例1
製造例1で得たポリエステル樹脂(A−1)−1溶液233部(固形分量で70部)、サイメル303(*1)30部、エポリードPB3600(*3)10部、YDCN−700−2(*4)10部及びカルナウバワックス0.5部及び「ネイキュア5225」(*7)2.0部(ドデシルベンゼンスルホン酸量として0.5部)を混合、溶解させ、ついでメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50(質量比)の混合溶剤を加えて固形分30%の塗料組成物を得た。
【0079】
実施例2〜22及び比較例1〜16
後記表1に示す配合とする以外は実施例1と同様に行い、固形分30%の各塗料組成物を得た。表1における各成分の配合量は、固形分表示によるものとする。但し、ネイキュア5225の配合量はドデシルベンゼンスルホン酸の量にて表示する。
【0080】
表1における(註)は、下記のとおりの意味を有する。
(*1)サイメル303:日本サイテックインダストリイズ社製、メチルエーテル化メラミン樹脂、商品名。
(*2)スーパーベッカミンTD−126:DIC(株)製、ベンゾグアナミン樹脂、商品名。
(*3)エポリードPB3600:ダイセル化学工業社製、エポキシ化ポリブタジエン、商品名。
(*4)YDCN−700−2:新日鉄住金化学社製、商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量195〜205g/当量、軟化点57〜64℃。
(*5)YDPN−638:新日鉄住金化学社製、商品名、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量170〜190g/当量。
(*6)ショウノールBKS377F:昭和電工(株)社製、商品名、石炭酸レゾール型フェノール樹脂
(*7)ネイキュア5225:米国、キング インダストリイズ社製、商品名、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量は25%。
【0081】
試験塗板の作成
上記実施例及び比較例で得た各塗料組成物を、厚さ0.2mmの#ティンフリースチール材に乾燥塗膜重量が70〜80mg/100cm
2となるようにロールコート塗装し、コンベア搬送式の熱風乾燥炉内を通過させて焼付け、試験塗板を得た。焼付け条件は、素材到達最高温度(PMT)が255℃、乾燥炉内通過時間が20秒間の条件とした。得られた試験塗板について下記の試験方法に基いて各種試験を行った。試験結果を後記表2に示す。
【0082】
試験方法
加工性:特殊ハゼ折り型デュポン衝撃試験器を用い、塗膜面が外側になるように下部を2つ折りにした試験塗板の折り曲げ部の間に厚さ0.27mmのアルミニウム板を2枚挟んで試験器に設置し、接触面が平らな厚さ1kgの鉄の錘を高さ50cmから落下させて折り曲げ部に衝撃を与えた後、折り曲げ先端部に6.5Vの電圧を6秒間通過させた際の、折り曲げ先端部2mm幅の電流値(mA)を測定し、下記基準にて評価した。
◎:電流値が0.5mA未満、
○:電流値が0.5mA以上で2.0mA未満、
□:電流値が2.0mA以上で5.0mA未満、
△:電流値が5.0mA以上で10mA未満、
×:電流値が10mA以上。
【0083】
密着性−1(脱イオン水中):試験塗板の塗膜に、カッターで1mm×1mmの碁盤目を100個作成し、この試料片を脱イオン水中で120℃−90分間のレトルト処理を施した。その後碁盤目部分に、セロハン粘着テープを貼ったのち、セロハン粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を観察し、下記基準によって評価した。
◎:塗膜剥離が全くなく、碁盤目塗膜のフチ欠けも認められない、
○:塗膜剥離が全くないが、碁盤目塗膜のフチ欠けが認められる、
□:塗膜の剥離が100個中、1〜2個認められる、
△:塗膜の剥離が100個中、3〜10個認められる、
×:塗膜の剥離が100個中、11個以上認められる。
密着性−2(アルカリ洗浄水溶液):試験塗板の塗膜に、カッターで1mm×1mmの碁盤目を100個作成し、この試料片をアルカリ洗浄水溶液中で120℃−90分間のレトルト処理を施した。その後碁盤目部分に、セロハン粘着テープを貼ったのち、セロハン粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を観察し、下記基準によって評価した。アルカリ洗浄水溶液はアデカクリーンエイド株式会社製、アデカチェーンルーブCSIの5%水溶液を使用した。
◎:塗膜剥離が全くなく、碁盤目塗膜のフチ欠けも認められない、
○:塗膜剥離が全くないが、碁盤目塗膜のフチ欠けが認められる、
□:塗膜の剥離が100個中、1〜2個認められる、
△:塗膜の剥離が100個中、3〜10個認められる、
×:塗膜の剥離が100個中、11個以上認められる。
【0084】
耐レトルト性:試験塗板を脱イオン水中に浸漬し、オートクレーブ中で125℃で30分間処理した塗膜の白化や膨れの状態を下記基準により評価した。
◎:全く白化、膨れが認められない、
○:膨れが認められず、ごくわずかに白化が認められる、
□:若干の白化又は膨れが認められるが、実用上問題がない、
△:少し白化又は膨れがかなり認められる、
×:著しく白化又は膨れが認められる。
【0085】
耐食性:デュポン衝撃試験器を用い、撃芯の尖端直径1/4インチ、錘荷重500g、落錘高さ12.5cmと30cmとの2条件で試験塗板の塗面に凸加工した試験塗板を、缶内容物擬似液である腐食液(クエン酸/食塩/水=3/3/94〔質量比〕)に浸漬し、腐食の程度を下記基準により目視で評価した。浸漬条件は、40℃で7日間とした。
◎:腐食なし
○:極僅かに腐食
□:僅かに腐食するが、実用上問題ない
△:かなり腐食
×:著しく腐食。
【0086】
耐傷付性:バウデン摩擦試験機(神鋼造機社製、曽田式付着滑り試験機)を用い、摩擦部3/16鋼球、荷重4kg、摩擦速度7往復/分の条件で摩擦試験を行い、塗膜にキズが発生するまでの摩擦回数を測定した。下記の基準によって評価した。
◎:摩擦回数200回でもキズが発生しない、
○:摩擦回数150回〜200回でキズが発生、
□:摩擦回数50回〜150回でキズが発生、
△:摩擦回数10回〜50回でキズが発生、
×:摩擦回数10回以下でキズが発生。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】