(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら2個以上の成形金型が型開閉方向に連設された射出成形機の場合、前記2個以上の成形金型の構造や、2個以上の成形金型を型開閉する型開閉手段の構造や作動が全て同一であることは殆ど無い。そういった中で2個以上の成形金型の型厚寸法をどのようにして適切な値に設定するかは重要な問題となる。
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設された射出成形機において、型厚寸法を適切な値に設定することが可能な射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設される射出成形機において、直接的
に成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段と、
演算により間接的に別の成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段と、前記各型厚測定手段により測定されたそれぞれの成形金型の型厚寸法に対して個別に補正が可能な型厚補正手段と、補正された型厚寸法を保存する記憶手段とが備えられ、
前記演算により間接的に別の成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段により測定された型厚寸法の補正値を前記直接的に成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段により測定された型厚寸法の補正値よりも大きくすることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の射出成形機は、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設される射出成形機において、直接的または間接的にそれぞれの成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段と、型厚測定手段により測定されたそれぞれの成形金型の型厚寸法に対して個別に補正が可能な型厚補正手段と、
射出成形機に少なくとも一つが取付けられ型閉の際にバネが圧縮される成形金型に対応する補正値と補正された型厚寸法を保存する記憶手段と、が
備えられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の射出成形機の制御方法は、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設された射出成形機の制御方法において、型閉された際にそれぞれの成形金型の型厚寸法を
長さの異なるボールねじを用いた型開閉手段のサーボモータのロータリエンコーダによりそれぞれ測定し、前記測定された型厚寸法に対して個別に補正を行う際に
、長さが長いボールねじを用いた型開閉手段のサーボモータのロータリエンコーダにより測定された型厚寸法の補正値を長さが短いボールねじを用いた型開閉手段のサーボモータのロータリエンコーダにより測定された型厚寸法の補正値よりも大きくして補正を行い、補正された型厚寸法を制御に用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の射出成形機の制御方法は、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設された射出成形機の制御方法において、型閉された際にそれぞれの成形金型の型厚寸法を測定し、前記の測定された型厚寸法に対して個別に
少なくとも一つの成形金型の型厚寸法の正の補正値を他の成形金型の型厚寸法の正の補正値以上にする補正を行い、補正された型厚寸法を制御に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の射出成形機は、2個以上の成形金型が型開閉方向に連設される射出成形機において、直接的
に成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段と、
演算により間接的に別の成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段と、前記各型厚測定手段により測定されたそれぞれの成形金型の型厚寸法に対して個別に補正が可能な型厚補正手段と、補正された型厚寸法を保存する記憶手段とが備えられ、
前記演算により間接的に別の成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段により測定された型厚寸法の補正値を前記直接的に成形金型の型厚寸法を測定する型厚測定手段により測定された型厚寸法の補正値よりも大きくするので、型開閉方向に連設された2以上の成形金型の型厚寸法をそれぞれ適切な値に設定することができ、成形時により正確な制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の射出成形機11について、
図1、
図2を参照して説明する。射出成形機11は、2個以上の成形金型A,Bが型開閉方向に連設される射出成形機である。ベッド12の上面には型締装置13が配置されている。型締装置13は、可動金型14が取付けられ型開閉方向に移動自在な可動盤15と固定金型16が取付けられ固定的に設けられた固定盤17との間に、型開閉方向に移動自在な中間部材19が設けられている。中間部材19にはその一部を構成する回転盤20が回転可能に取付けられ、回転盤20の両面にはそれぞれ中間金型18,18が取付けられる。そして型閉時および型締時には固定金型16と前記中間金型18の一方とにより固定側の成形金型Aが形成され、可動金型14と前記中間金型18の他方とにより可動側の成形金型Bが形成される。なお成形金型Aは中間金型18が成形の際に回転盤20の180°反転とともに反転されるので、常時同じ中間金型18と固定金型16によって形成される訳ではなく、異なる中間金型18とも形成される。また成形金型Bも常時同じ中間金型18と可動金型14によって形成される訳ではなく、異なる中間金型18とも形成される。
【0014】
前記固定盤17の四隅近傍には型締手段21である油圧によって作動される型締シリンダ22が設けられ、型締シリンダ22のロッドがタイバ23を構成している。タイバ23は、前記可動盤15と、前記中間部材19にも挿通されている。また可動盤15の外側面のタイバ23の挿通部分の近傍にはハーフナット24が設けられ、タイバ23に設けられた係止部25に係止されるようになっている。なお型締手段21の配置はこれに限定されず可動盤15側に型締シリンダが設けられたものやトグル機構を用いたものでもよい。
【0015】
また射出成形機11は可動盤15(可動金型14を含む)を型開閉方向に移動させる型開閉手段26と、中間部材19(中間金型18,18および回転盤20を含む)を型開閉方向に移動させる型開閉手段27が設けられている。可動盤の型開閉手段26(可動金型の型開開閉手段)は、ベッド12上に固定されたサーボモータ28の駆動軸とベッド12上に軸支されたボールねじ29とがベルト等を介して連結されている。サーボモータ28にはロータリエンコーダ31が設けられている。
【0016】
可動盤15の側面のブラケットにはボールねじナット33が固定され、ボールねじナット33にはボールねじ29が挿入されている。またサーボモータ28は、サーボアンプ34を介して射出成形機11全体を統括する制御装置35に接続されている。上記のベッド12または固定盤17に対する可動盤15の位置を検出することができるサーボモータ28、ロータリエンコーダ31を含む可動盤の型開閉手段26は、本発明の型厚測定手段も構成する。なお、
図1,
図2では1基の可動盤の型開閉手段26しか図示されていないが、一般的には2基〜4基が設けられる。
【0017】
可動盤15と中間部材19の間を型開閉する中間部材の型開閉手段27(中間金型の型開開閉手段)については、可動盤15の側面のブラケットにサーボモータ36が固定され、中間部材19にボールねじナット37が固定され、前記ボールねじナット37に挿通されるボールねじ38が、サーボモータ36の駆動軸と連結されている。そしてサーボモータ36にはロータリエンコーダ39が設けられている。またサーボモータ36は、サーボアンプ40を介して射出成形機11全体を統括する制御装置35に接続されている。上記の中間部材19の位置を検出することができるサーボモータ36、ロータリエンコーダ39を含む中間部材の型開閉手段27は、本発明の型厚測定手段も構成する。なお、
図1,
図2では1基の中間部材の型開閉手段27しか図示されていないが、一般的には2基〜4基が設けられる。なお可動盤の型開閉手段26と中間部材の型開閉手段27の取付けられる盤やベッド、サーボモータ28,36の駆動軸とボールねじ29,38の連結方法などもこれに限定されない。またサーボモータ28,36は、電磁ブレーキを備えたものでもよい。
【0018】
また固定盤17の外側のベッド12上には第1の射出装置41が設けられ、可動盤15の外側には可動盤15とともに移動する第2の射出装置42が設けられている。制御装置35は射出成形機11の全体の制御を行うが、本発明の型厚寸法の補正に関する部分においては、型厚測定手段により測定されたそれぞれの成形金型A,Bの型厚寸法t1,t2を取り込んで前記型厚寸法t1,t2に対して個別に補正が可能な型厚補正手段43と、補正された型厚寸法t1a,t2bを保存する記憶手段44を備えている。また制御装置35は設定画面45に接続されている。
【0019】
次に射出成形機11の制御方法について説明する。射出成形機11では成形を開始する前(特に初回には必ず)に固定側の成形金型A、可動側の成形金型Bの型厚寸法を測定し、制御に用いる。より具体的には成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法の測定・設定により、可動盤の型開閉手段26の制御原点を定め、制御原点を基準にして、可動盤15の型閉完了位置、金型保護開始位置、型開閉の速度の変更位置、型開完了位置などが設定される。また中間部材19についても中間部材の型開閉手段27の制御原点を定め、制御原点を基準にして、中間部材の型閉完了位置、金型保護開始位置、型開閉の速度の変更位置、型開完了位置などが設定される。従って成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法を正確に設定することは非常に重要である。
【0020】
しかしながら本発明の2個以上の成形金型A、成形金型Bが型開閉方向に連設される射出成形機11の場合、中間部材の型開閉手段27と可動盤の型開閉手段26が相互に関与しており、成形金型Aと成形金型Bの構造や、中間部材の型開閉手段27と可動盤の型開閉手段26の構造や作動がそれぞれ異なるので、成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法をそれぞれ単独で正確に測定することは難しい。また型厚測定時の型閉完了の判断は、可動金型14と中間金型18、固定金型16と中間金型18がそれぞれ型当接した際の型開閉手段のサーボモータ28,36のトルクを検出して行うので、型閉完了と判断した際にボールねじ29,38に負荷が発生して伸びが生じたり成形金型A、成形金型Bが圧縮されたりしている場合に正確な型厚測定に影響を与えるといった問題もある。
【0021】
次に型厚測定および型厚補正の具体的な手順について
図3のフローチャート図で説明する。まず射出成形機の制御装置35の記憶手段44には、成形金型Aの型厚寸法の補正値a(オフセット値)と成形金型Bの型厚寸法の補正値b(オフセット値)が前もって保存されている。成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法の補正値a,b(オフセット値)は、上記したように型開閉用のボールねじ29,38の伸びや成形金型A、成形金型Bの圧縮に対応するものであり、通常の場合、正の補正値a,b(オフセット値)がそれぞれ保存されている。ただし変形例として成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法の補正値a,b(オフセット値)はそれぞれ作業者が設定画面から個別に設定可能なものであってもよい。また結果的に同じ補正値を用いる場合も本発明に含まれる。更にまたいずれかの型厚寸法t1,t2の補正を行わない場合も本発明に含まれる。また前記の固定型と可動側の型厚寸法の個別の補正値a,b(オフセット値)は、出荷時から組込まれているものでもよい。
【0022】
射出成形機11の成形金型A、成形金型Bが初回の成形金型に交換した場合には必ず型厚寸法の測定を行う。そして測定された型厚寸法(補正された型厚寸法を含む)は記憶手段44に保存され、次回以降の成形の際に使用される。後日に射出成形機11の金型を再び成形金型A、成形金型Bに交換した場合は、前回測定した型厚寸法が記憶手段44に保存されているので、型厚寸法の測定は実施してもよいが、必ずしも必要ではない。
【0023】
型厚寸法の測定は、固定盤17、中間部材19の回転盤20、可動盤15に成形金型A、成形金型Bが取付られた後、半自動成形を含む成形を開始する前に行う。まず中間部材19および中間金型18,18、可動盤15および可動金型14がそれぞれ型開完了位置にある状態から説明を開始する。作業者が設定画面45の型閉スイッチを入力して(s1)自動型厚調整モードをスタートする。すると次に可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28と中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36が作動開始して(s2)、可動盤15と可動金型14が中間部材19および中間金型18,18に向けて移動される。この際中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36は、可動盤15と中間部材19の距離を縮小する方向に作動する。そしてこの際の固定盤17に対する中間部材19の位置は変更されない。そして可動金型14と中間金型18の型当接の判断は、サーボモータ36のトルクが設定されたトルク制限値を感知したことにより行われ(s3)、型当接されたと判断されると前記サーボモータ36をサーボフリーにする(s4)。
【0024】
次に再度可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28を作動開始して(s5)、可動盤15、可動金型14、中間部材19、および中間金型18,18が固定盤17および固定金型16に向けて移動される。そして固定金型16と中間金型18(固定金型側)の型当接の判断は、サーボモータ28のトルクがトルク制限値を感知したことにより行われる(s6)。そして固定金型16と中間金型18が型当接されたと判断されると、次に型厚測定手段である中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36のロータリエンコーダ39の検出値を読取って可動盤15に対する中間部材19の位置検出が行われる(s7)。そして前記可動盤15に対する中間部材19の位置から成形金型Bの型厚寸法t2(可動側型厚)の測定値を演算する(s8)。従って成形金型Bの型厚寸法の測定は直接的に行われる。また型厚測定手段である可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28のロータリエンコーダ31の検出値を読取って固定盤17に対する可動盤15の位置検出が行われる(s9)。そして固定盤17に対する可動盤15の位置から前記成形金型Bの型厚寸法を減算処理して成形金型Aの型厚寸法t1(固定側型厚)の測定値を演算する(s10)。従って成形金型Aの型厚寸法の測定は間接的に行われる。
【0025】
次に記憶手段44に予め設定保存した成形金型Bの型厚寸法の補正値b(オフセット値)を用いて、型厚補正手段43により成形金型Bの型厚寸法の補正を行う(s11)。そして補正後の成形金型Bの型厚寸法t2bを記憶手段44に保存する(s12)。また記憶手段に予め設定保存した成形金型Aの型厚寸法の補正値a(オフセット値)を用いて、型厚補正手段43により固定側の型厚寸法の補正を行い(s13)、補正後の成形金型Aの型厚寸法t1aを記憶手段44に保存する(s14)。これに限定されないが本実施形態では、成形金型Bの測定された型厚寸法t2に対して正の補正値bを加算して補正された型厚寸法t2bを求める。また成形金型Aの測定された型厚寸法t1に対して成形金型Bの補正値b以上の正の補正値aを加算して補正された型厚寸法t1aを求める。このように成形金型Aの側の補正値aを成形金型Bの補正値b以上(または補正値bよりも大きく)にするのは、可動盤の型開閉手段26のボールねじ29の長さのほうが中間部材の型開閉手段27のボールねじ38の長さよりも長くて伸びが生じやすく、型厚寸法を測定する際に成形金型Aの型厚寸法t1の測定値のほうが成形金型Bの型厚寸法t2の測定値よりも実際の金型寸法と比較して小さく測定される傾向にあるからである。ただし成形金型Aの側の補正値aと成形金型Bの補正値bは同じ値となること有り得る。そして記憶手段44に保存された補正後の型厚寸法t1aおよびt2bは、次に記載されるように射出成形機11の成形サイクルの制御に用いられる。ただし補正後の型厚寸法t1a,t2bで成形を行って問題がある場合は、補正値a、補正値bを変更し、制御に用いる型厚寸法t1a,t2bを変更し直してもよい。
【0026】
次に型厚寸法t1a,t2bを設定後の射出成形機11の成形サイクルの制御について説明する。射出成形機11の型閉工程では、固定金型16、中間金型18,18、可動金型14が型開きされた状態から中間部材19の型開閉手段27のサーボモータ36、可動盤15の型開閉手段26のサーボモータ28が作動されると、記憶手段44に記憶された成形金型Bの補正後の型厚寸法t2bと成形金型Aの補正後の型厚寸法t1aに基づいて、それぞれ型閉完了位置まで中間金型18,18、可動金型14がクローズドループ制御により移動される。その際に型開閉速度が変化する位置や金型保護開始位置についてもサーボモータ28,36のロータリエンコーダ31,39の検出値を読取って制御がなされることは言うまでもない。そして固定金型16と中間金型18による成形金型Aの型閉完了と中間金型18と可動金型14による成形金型Bの型閉完了がほぼ同時に行われる。
【0027】
型締工程を開始するに際して可動盤15が型閉完了位置に停止した状態で、可動盤15のハーフナット24の係止歯がタイバ23の係止部25に係止され、次に型締シリンダ22を作動させて成形金型Aおよび成形金型Bの型締を行う。型締が完了すると射出工程が開始され、第1の射出装置41から成形金型Aに1次成形用の樹脂の射出が行われ、第2の射出装置42から成形金型Bに2次成形用の樹脂の射出が行われる(この際に前回の1次成形品は成形金型Bのキャビティ内に残存しており2次成形によって樹脂が追加・結合される。そして所定時間、冷却工程が行われる。冷却工程が完了すると型締シリンダ22を用いて成形金型Aまたは成形金型Bの離型(強力型開工程)が行われる。また次の型開工程では、可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28、中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36が作動され、成形金型Aと成形金型Bがそれぞれ型開される。中間金型18,18と可動金型14が型開完了位置に到達すると取出工程が行われ、図示しない取出機により成形金型Bの一方の金型から2次成形の終了した複合成形品が取出される。そして回転盤20が180°回転され、1次成形品が貼り付いた中間金型18が可動金型側に移動される。そして再度、次の型閉工程が開始される。
【0028】
次に本発明の射出成形機11の別の制御方法について
図4により説明する。別の制御方法に用いる射出成形機11の構造については、
図1と同じであるので説明を省略する。別の制御方法の型厚寸法の測定は、最初に可動金型14および中間金型18,18が型開完了位置にある状態(
図4の(a)の状態)から、可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28のみを作動させて、可動盤15、可動金型14、中間部材19、および中間金型18,18を型閉完了方向へ移動させる。この際に中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36はロックされている。そして固定金型16に対して中間金型18の型当接が検出されたら(
図4の(b)の状態)、成形金型Aの型厚寸法をロータリエンコーダ31により測定する。そして記憶手段44に予め設定保存した成形金型Aの補正値a(オフセット値)を用いて、型厚補正手段43により型厚寸法の補正を行い、補正後の成形金型Aの型厚寸法t1aを記憶手段44に保存する。
【0029】
次に可動盤の型開閉手段26のサーボモータ28をサーボロックした状態として、中間部材の型開閉手段27のサーボモータ36のみを作動させて、中間部材19、および中間金型18,18を可動金型14へ向けて移動させる。そして可動金型14と中間金型18の型当接が検出されたら(
図4の(c)の状態)、成形金型Bの型厚寸法をロータリエンコーダ39により測定する。そして記憶手段44に予め設定保存した成形金型Bの補正値b(オフセット値)を用いて、型厚補正手段43により型厚寸法の補正を行い、補正後の成形金型Bの型厚寸法t2bを記憶手段44に保存する。そして補正後の成形金型Aの型厚寸法t1aと補正後の成形金型Bの型厚寸法t2bは成形時の制御に用いられる。なお
図4において成形金型Bの型厚寸法を先に測定してから成形金型Aの型厚寸法を後で測定してもよい。また上記の実施形態以外の方法で射出成形機11を用いての型厚寸法の測定と補正と保存を行ってもよい。
【0030】
なお
図1の射出成形機11において、回転盤20と中間金型18,18は回転させないで、両方の成形金型A、成形金型Bを同時に型締し、第1の射出装置41から成形金型Aのみに、第2の射出装置42から成形金型Bのみに溶融樹脂を射出して単色の成形品を成形するものでもよい。また射出成形機11の変形例として、中間部材(中間盤)に中間金型を回転させる機構が備えられておらず、固定金型と中間部材の一方の面に取付けられる中間金型(常時同じ中間金型)とにより成形金型Aが形成され、可動金型と中間部材の他方の面に取付けられる中間金型(常時同じ中間金型)により成形金型Bが形成されるものでもよい。前記変形例の場合も成形金型の数は2個以上であればよい。
【0031】
また本発明は2個以上の金型が型開閉方向に連設される射出成形機であればよく、
図5に示されるように3個の成形金型C,D,Eが型開閉方向に連設された射出成形機51でもよい。
図5では固定盤52に固定金型53が取付けられる。そして180°反転可能な第1の中間部材54の両面に第1の中間金型55、55がそれぞれ取付けられる。また180°反転可能な第2の中間部材56の両面に第2の中間金型57,57がそれぞれ取付けられる。そして可動盤58に可動金型59が取付けられる。
【0032】
第1の中間部材54は第1の型開閉機構60により型開閉方向に移動可能であり、第2の中間部材56は第2の型開閉機構61により型開閉方向に移動可能であり、可動盤58は第3の型開閉機構62により型開閉方向に移動可能である。そしてそれぞれ第1の型開閉機構60、第2の型開閉機構61、および第3の型開閉機構62の作動によりそれぞれの成形金型C,D,Eの型閉が行われる。また
図5の実施形態では、図示しない型締機構により成形金型C,D,Eは型締がなされる。射出成形機51についても図示しない射出装置が複数設けられる。
【0033】
そして型厚寸法の測定の際には、それぞれの型厚測定手段である第1の型開閉機構60,第2の型開閉機構61,第3の型開閉機構62により成形金型C,D,Eの型厚寸法が測定されるが、それぞれ成形金型や型開閉機構の構造の相違から初期の型厚寸法が正確に行われない場合があるので、型厚補正手段により個別に型厚寸法の補正が可能となっている。なお型厚寸法の補正については、補正が可能でも補正を行わないものでもよく、補正の有無の設定が可能なものでもよい。補正された型厚寸法は記憶手段に格納され、成形時の制御に用いられる。
【0034】
次に本発明の
図6の2個以上の金型が型開閉方向に連設される射出成形機71について説明する。射出成形機71は中央に固定盤72が固定的に設けられ、固定盤72には縦方向の軸を中心に回転する中間盤73が設けられている。そして前記中間盤73の両面にそれぞれ中間金型74,74が取付けられている。また
図6において左側には固定盤72に対して第1の型開閉機構75により型開閉される第1の可動盤76が設けられ、第1の可動盤76には第1の可動金型77が取付けられている。また
図6において右側には固定盤72に対して第2の型開閉機構78により型開閉される第2の可動盤79が設けられ、第2の可動盤79には第2の可動金型80が取付けられている。そして図示しない型締装置が設けられ、型締時には中間金型74,74のいずれか一方と第1の可動金型77が成形金型Fを構成し、中間金型74,74のいずれか他方と第2の可動金型80が成形金型Gを構成する。また第1の可動盤76および第2の可動盤79の外側には図示しない射出装置がそれぞれ設けられている。
【0035】
射出成形機71についても型閉時に第1の型開閉機構75および第2の型開閉機構78の図示しないサーボモータのロータリエンコーダ等により、固定盤72に対する第1の可動盤76の位置、固定盤72に対する第2の可動盤79の位置を検出することにより成形金型Fおよび成形金型Gの型厚を測定することができる。測定された型厚は、成形金型Fと成形金型Gではそれぞれキャビティの形状等が異なるから型厚補正手段により型厚寸法の補正が行われる(いずれか一方の型厚寸法については補正しない場合も含む)
【0036】
また射出成形機71と同じ配置の型開閉機構が設けられた射出成形機において、79が固定盤であり、73が中間部材、76が可動盤であるものでもよい。
【0037】
また上記の射出成形機11,51,71において型開閉手段のアクチュエータが油圧シリンダの場合等において、金型位置を検出して型厚寸法を測定する型厚測定手段は、ロータリエンコーダ以外に直線方向の位置を検出可能な変位センサであってもよい。また固定盤と中間盤(回転盤)、中間盤(回転盤)と可動盤といった盤面間の距離を非接触式の超音波センサやレーザーセンサ等のセンサ等により測定するものでもよい。
【0038】
更に射出成形機11,51,71において、取付けられる成形金型は、型閉の際にバネが圧縮される成形金型(バネ金型)が少なくとも一つ取付けられるものであってもよい。バネが圧縮される成形金型の場合、型開閉手段により型閉完了位置まで型閉する際に他の成形金型よりも大きな型閉力を必要とする。そのため型閉完了位置を検出するためのトルク制限値等も大きな設定値が必要となる。その結果、型閉完了して型厚寸法を測定する際にはボールねじ等の更に大きな負荷がかかって伸びが発生した状態となる。その結果、型厚測定手段により測定される型厚寸法は実際の値よりも小さくなり、比較的大きな補正値(オフセット値)が必要となる場合が多い。なお型閉の際にバネが圧縮される成形金型(バネ金型)に対応する補正値c(オフセット値)は、別途に記憶手段44に保存しておくようにしてもよい。また射出成形機11の固定側金型用と可動側金型用の補正値a,b(オフセット値)が予め設定されているところに、更にバネ金型を取付ける場合、バネ金型用の補正値c(オフセット値)を更に加算することも想定される。
【0039】
更に射出成形機11,71において、中間金型18,74を180°回転させる前とさせた後での2回、成形金型Aと成形金型Bの型厚寸法の測定と補正をそれぞれ行うものでもよい。例えば射出成形機11では、中間金型18,18は同一厚みとなるように製造されるが実際には僅かな誤差等があることもあり、中間金型18,18の反転の成形サイクル(奇数回の成形と、偶数回の成形)に応じて制御に用いる型厚寸法を変更してもよい。
【0040】
また本発明において、特許文献1のように成形時の金型の熱膨張等に対応するために成形途中でも型厚寸法の補正を行ってもよい。型厚寸法の補正は、成形ショット、成形時間、金型温度等を検出して行ってもよく、型閉時の型開閉用のサーボモータのトルクやタイバーセンサ等により型締力を検出して行ってもよい。
【0041】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。射出成形については、材料は限定されず、射出圧縮成形、発泡成形、サンドイッチ成形、インサート成形などの成形を行うものも含まれる。また本発明は2個以上の金型が縦方向の型開閉方向に連設される縦型射出成形機やプレス成形機であってもよい。