特許第6188251号(P6188251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188251
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】繰り出しペンシル
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/20 20060101AFI20170821BHJP
   B43K 21/08 20060101ALI20170821BHJP
   B43K 21/00 20060101ALI20170821BHJP
   B43K 24/18 20060101ALI20170821BHJP
   B43K 27/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A45D40/20 G
   A45D40/20 D
   B43K21/08
   B43K21/00 H
   B43K24/18 100
   B43K27/04
【請求項の数】1
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-233491(P2015-233491)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-99487(P2017-99487A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年1月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】谷 仁一
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−39418(JP,U)
【文献】 特開2003−52451(JP,A)
【文献】 実開昭63−103778(JP,U)
【文献】 特開2015−24081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00、40/20
B43K 21/00−21/26
B43K 24/18
B43K 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体と、
前記本体に相対回転可能に係合される先筒と、
前記先筒の後側に内挿される筒部を有し、前記先筒と前記本体との間に位置しており前記先筒に相対回転可能に係合される中筒と、
前記先筒の内部に収容される複数の描画材と、
前記描画材が装填されるパイプ材と、
複数の前記描画材のそれぞれに連結されて前記本体に対して回転不能且つ一定量摺動可能に設けられる複数のスライド部と、
を備え、
複数の前記スライド部のうち任意の一の前記スライド部が前記本体に対して一定量前進することで前記パイプ材が前記先筒に回転方向に係合し、前記パイプ材が前記先筒に回転方向に係合している状態で前記先筒と前記本体とを一方向に相対回転させることによって、前記先筒の内部で描画材が前進する繰り出しペンシルであって、
前記先筒と前記本体との前記一方向への相対回転を許容し、前記一方向の反対方向である他方向への相対回転を規制するラチェット機構を備え、
前記ラチェット機構は、前記筒部の外面から突出し径方向に弾性を有する弾性突部と、前記先筒の内面に設けられて前記弾性突部と軸線方向移動可能且つ回転可能に係合する凹凸部と、によって構成され、
前記筒部の外面及び前記先筒の内面のいずれか一方に設けられた突起と、いずれか他方に設けられた環状凸部と、は、脱着自在に軸線方向に係合し、
前記中筒は、前記スライド部が軸線方向に挿通する複数の開口を有し、
複数の前記開口の各々には、複数の前記スライド部のうち一の前記スライド部が挿通する、
繰り出しペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画材を押し出して使用する繰り出しペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繰り出しペンシルとしては、例えば特開2015−024081号公報に記載されたものが知られている。この公報には、充填された塗布材を使用者の操作により適宜押し出す塗布材押出容器が記載されている。この塗布材押出容器は、塗布材が充填される充填領域を内部に備えた充填部材と、充填部材の後端部に充填部材に対して相対回転可能に連結された操作筒と、充填部材及び操作筒の相対回転により軸線方向に移動する移動体と、当該相対回転による移動体の移動を可能にする螺子筒と、を備えている。
【0003】
上記の塗布材押出容器において、螺子筒は後端筒部を有し、操作筒は後端筒部に内挿された内部筒状部を有し、内部筒状部の外周面には径方向外側に突出する一方の突部が設けられ、後端筒部の内周面には径方向内側に突出し且つ一方の突部に回転方向に係合する他方の突部が設けられている。他方の突部は、その周囲に切り欠きを形成しており、この切り欠きによって径方向に弾性を有する。内部筒状部が後端筒部に内挿される前の状態において、他方の突部の先端部の内径は、後端筒部の外周面の外径よりも小さく、内挿された状態において、他方の突部は後端筒部の外周面に常時当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−024081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述した塗布材押出容器のような繰り出しペンシルにおいては、種々の要求が高まる中、使用者でも簡単に分解できると共に、内部の部品を容易に交換できることが望まれている。すなわち、内部の部品に異常が生じたとき等に、使用者が分解を行って当該部品を簡単に交換できることが望まれている。
【0006】
本発明は、分解を容易に行うことができると共に、内部の部品を簡単に交換できる繰り出しペンシルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る繰り出しペンシルは、筒状の本体と、本体に相対回転可能に係合される先筒と、先筒の後側に内挿される筒部を有し、先筒と本体との間に位置しており先筒に相対回転可能に係合される中筒と、先筒の内部に収容される複数の描画材と、描画材が装填されるパイプ材と、複数の描画材のそれぞれに連結されて本体に対して回転不能且つ一定量摺動可能に設けられる複数のスライド部と、を備え、複数のスライド部のうち任意の一のスライド部が本体に対して一定量前進することでパイプ材が先筒に回転方向に係合し、パイプ材が先筒に回転方向に係合している状態で先筒と本体とを一方向に相対回転させることによって、先筒の内部で描画材が前進する繰り出しペンシルであって、先筒と本体との一方向への相対回転を許容し、一方向の反対方向である他方向への相対回転を規制するラチェット機構を備え、ラチェット機構は、筒部の外面から突出し径方向に弾性を有する弾性突部と、先筒の内面に設けられて弾性突部と軸線方向移動可能且つ回転可能に係合する凹凸部と、によって構成され、筒部の外面及び先筒の内面のいずれか一方に設けられた突起と、いずれか他方に設けられた環状凸部と、は、脱着自在に軸線方向に係合し、中筒は、スライド部が軸線方向に挿通する複数の開口を有し、複数の開口の各々には、複数のスライド部のうち一のスライド部が挿通する
【0008】
この繰り出しペンシルは、先筒と本体との一方向への相対回転を許容すると共に他方向への相対回転を規制するラチェット機構を備えており、ラチェット機構は、中筒の筒部の外面から突出する弾性突部と、先筒の内面の凹凸部によって構成されている。このラチェット機構において、先筒の内面の凹凸部は、筒部の外面の弾性突部に対して軸線方向に移動可能となっている。また、筒部の外面及び先筒の内面のいずれか一方に設けられた突起は、他方に設けられた環状凸部に対して軸線方向に脱着自在に係合する。従って、中筒に対して先筒を軸線方向に脱着自在とすることができるので、先筒を中筒から外して分解を容易に行うことができる。よって、使用者は、内部の部品に異常が生じたとき等に、先筒を外して内部の部品を簡単に交換することができる。
【0009】
また、一本の繰り出しペンシルの内部に複数の描画材を収容することができると共に、任意の一の描画材を前進させて使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分解を容易に行うことができると共に、内部の部品を簡単に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る繰り出しペンシルを示す側面図である。
図2図1の繰り出しペンシルから先筒と一本のカートリッジとを外した状態を示す側面図である。
図3図1の繰り出しペンシルを示す縦断面図である。
図4】描画材、パイプ材、保持体及びスライド部を示す縦断面図である。
図5図1の繰り出しペンシルを示す断面斜視図である。
図6図1の繰り出しペンシルにおいて一本のスライド部を前方に移動させた状態を示す縦断面図である。
図7図6の状態の繰り出しペンシルを示す断面斜視図である。
図8】先筒を示す縦断面図である。
図9】(a)は中筒を示す側面図、(b)は中筒を示す縦断面図である。
図10図1のA−A線断面図である。
図11】(a)は保持体を示す縦断面図、(b)は(a)の保持体の前端部を拡大させた図である。
図12】(a)は移動体を示す斜視図、(b)は移動体を示す側面図である。
図13】(a)はパイプ材を示す側面図、(b)はパイプ材を示す縦断面図である。
図14】(a)はスライド部を示す側面図、(b)はスライド部を示す斜視図である。
図15】(a)は本体を示す縦断面図、(b)は本体を示す側面図、(c)は(b)のC−C線断面図である。
図16】(a)はパイプ材、移動体及び保持体を示す縦断面図、(b)は(a)のパイプ材の後端付近を拡大させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る繰り出しペンシルの側面図である。図2は、図1の繰り出しペンシルから一本のカートリッジを取り出した状態を示す側面図である。図3は、図1の繰り出しペンシルの縦断面図である。図1図3に示されるように、本実施形態の繰り出しペンシル100は、4本のパイプ材1A〜1Dそれぞれの内部に装填された複数の描画材M1〜M4のいずれかを使用者の操作により適宜吐出する(押し出す)多種ペンシルである。本実施形態において、描画材M1〜M4は、色が互いに異なる描画材を示している。
【0014】
描画材M1〜M4としては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアカラー、ネイルアート等を始めとした種々の棒状化粧料、又は文房具の棒状の芯等を用いることが可能である。更に、非常に柔らかい(半固形状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いることも可能である。また、外径が1mm以下の細径棒状物、外径が1.5mmから3.0mmの一般棒状物、又は外径が4.0mm以上の太めの棒状物も使用可能である。
【0015】
繰り出しペンシル100は、描画材M1〜M4が装填されるパイプ材1A〜1Dを内部に備える先筒2と、先筒2の後端部に連結されると共に先筒2に相対回転可能に係合される本体3と、を外観構成として具備している。以下の説明において、「軸線」とは、繰り出しペンシル100の前後に延びる繰り出しペンシル100の中心線を示し、「軸線方向」とは、前後方向であって軸線に沿った方向を示している。また、描画材M1〜M4の繰り出し方向を前方(前進する方向)とし、その反対方向を後方(後退する方向)とする。
【0016】
図4は、パイプ材1A及びその周辺の構成を示す縦断面図である。図4に示されるように、パイプ材1Aの内側には、雄螺子5aを有する棒状の移動体5Aが螺合されており、移動体5Aは、筒状の保持体6Aによって保持されている。このパイプ材1Aと移動体5Aと保持体6Aとによって本体3に対して交換可能なカートリッジ10Aにしたり、パイプ材1Aと移動体5Aの組み合わせを交換可能なカートリッジにすることも可能である。パイプ材1B,1Cはパイプ材1Aと同様の構成となっており、パイプ材1B,1Cと移動体5B,5Cと保持体6B,6Cとによって、それぞれカートリッジ10B,10Cを構成することも可能である(図3参照)。パイプ材1Dについても同様である。
【0017】
カートリッジ10Aの後部には、保持体6Aに軸線方向に係合されるスライド部8Aと、スライド部8Aを後方に付勢するスプリング9A(図5参照)と、が設けられる。カートリッジ10Aはスライド部8Aに対して軸線方向に脱着自在となっている。カートリッジ10B,10Cそれぞれの後部にも、上記同様、スライド部8B,8Cと、スプリング9B,9Cと、が設けられている。パイプ材1Dを構成する残り一本のカートリッジにも、同様にスライド部とスプリングとが設けられている。
【0018】
図5及び図6は、それぞれ繰り出しペンシル100の断面斜視図及び縦断面図である。図7は、一本のスライド部8Aを前進させた状態を示す断面斜視図である。図5図7に示されるように、先筒2及び本体3の内部には、描画材M1〜M4が装填された4本のパイプ材1A〜1Dと、移動体5A等の4本の移動体と、保持体6A等の4本の保持体と、スプリング9A等の4個のスプリングと、スライド部8A等の4本のスライド部と、が設けられる。これらの4本のパイプ材、4本の移動体、4本の保持体、4個のスプリング、4本のスライド部、にあっては、互いに異なる描画材M1〜M4が装填されること以外は同一の構成である。
【0019】
よって、以下の説明では、4本のパイプ材、4本の移動体、4本の保持体、4個のスプリング、4本のスライド部のそれぞれを、パイプ材1、移動体5、保持体6、スプリング9及びスライド部8と称する。また、カートリッジ10A等の4本のカートリッジ、描画材M1〜M4のそれぞれを、カートリッジ10、描画材Mと称する。
【0020】
本体3の前端には、中筒11が同期回転可能に係合されており、この中筒11の内部に4本の保持体6が保持される。また、中筒11及び先筒2には、先筒2と本体3(中筒11)との相対回転を一方向にのみ許容するラチェット機構12が設けられている。このラチェット機構12によって、上記一方向の反対方向である他方向における先筒2と本体3との相対回転が規制される。
【0021】
図8は、先筒2を示す縦断面図である。図8に示されるように、先筒2は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、筒状を呈し、前端にパイプ材1の前側部分を出現させるための開口部2aを有する。先筒2の内部には、4本のカートリッジ10を収容する収容領域2bが設けられており、収容領域2b内に設けられた4本のパイプ材1のうちのいずれか一本が、使用者の操作に従って開口部2aから前方に露出される。
【0022】
先筒2の外周面の前側には、前方に向かうに従って先細りとなるように傾斜する傾斜面2cが設けられている。先筒2における前側の内周面2dも前側に向かうに従って先細りとなっている。内周面2dには、パイプ材1を回転方向(軸線回りの方向)に係合するためのものとして、周方向に多数の凸部が並設されて当該凸部が内周面2dの傾斜方向に延びる突条2eが設けられている。この突条2eは、当該傾斜方向の一端から他端にまで全域に亘って延びている。また、この突条2eにおける周方向の間隔は前側に向かうに従って短くなっている。
【0023】
先筒2の内周面の後側には、ラチェット機構12の一方を構成するものとして、周方向に24個の凹凸が並設されて当該凹凸が軸線方向に所定長延びる凹凸部2fが設けられている。また、先筒2の内周面における凹凸部2fの後方には、中筒11を先筒2の後部で軸線方向に係合するための環状凸部2gと、環状凸部2gの前側に位置する環状凹部2hと、環状凸部2gの後側に位置する環状凹部2jと、が設けられている。
【0024】
図9(a)は中筒11の側面図であり、図9(b)は中筒11の縦断面図である。中筒11は、POM(ポリアセタール)による射出成形品とされており、段付き円筒状の外形を呈している。中筒11は、前側筒部11aと、前側筒部11aよりも大径外形を有する中央筒部11bと、前側筒部11a及び中央筒部11bよりも小径外形を有する後側筒部11cと、を前方から後方に向かってこの順に有している。
【0025】
前側筒部11aは、その内周面11dにおいて互いに対向する一対の位置に、ラチェット機構12の他方を構成する弾性突部11eを備えている。この弾性突部11eは、先筒2の凹凸部2fに回転方向に係合するものであり、径方向外側に突出するように設けられている。前側筒部11aにおける弾性突部11eの周囲には、中筒11の内外を連通するコの字状の切欠き11fが形成されており、この切欠き11fによって弾性突部11eは径方向に弾性を有している。中筒11の弾性突部11eは、先筒2の凹凸部2fに常時当接する。
【0026】
図10は、図1のA−A線断面図である。図10に示されるように、ラチェット機構12の一方を構成する先筒2の凹凸部2fは、先筒2の内周面に対して傾斜している傾斜面2f1と、先筒2の内周面に対して略垂直となるように形成された側面2f2と、を有する。また、ラチェット機構12の他方を構成する中筒11の弾性突部11eは、中筒11の外周面に対して傾斜している傾斜面11e1と、中筒11の外周面の接線に対して略垂直となるように形成された側面11e2と、を有する。
【0027】
図9に示されるように、中筒11の切欠き11fは、前側筒部11aにおける弾性突部11eの軸線方向両脇に穿設されて周方向に延びる一対のスリット11g,11hと、前側筒部11aにおける弾性突部11eの周方向一方側に穿設されスリット11g,11hに連続して軸線方向に延びるスリット11jと、を含んでいる。前側筒部11aで切欠き11fに囲まれた壁部は、径方向に可撓性を有するアーム11kを成している。よって、アーム11kの先端部の外面に配置された弾性突部11eは、径方向に弾性力(付勢力)を有している。
【0028】
中筒11の中央筒部11bの外周面には、先筒2の環状凸部2gに脱着自在に係合される突起11mと、先筒2の環状凹部2jに後方から入り込む環状凸部11nと、環状凸部11nの後側に位置する鍔部11pと、が設けられている。中筒11では、その鍔部11pより前側に位置する筒部が先筒2に後方から挿入される。
【0029】
中筒11の後側筒部11cには、本体3に対して回転方向に係合するための突条11qが軸線方向に延びるように形成されている。この突条11qは、後側筒部11cの外周面で周方向四等配の位置に形成されている。また、鍔部11pの後方には、本体3に軸線方向に係合するための凸部11rが形成されており、この凸部11rは突条11q間で周方向に延在している。
【0030】
中筒11は、その鍔部11pの内面側において、4本のスライド部8を軸線方向に挿通させる部位である保持体収容部11sによって仕切られている。この保持体収容部11sには、周方向四等配の位置に、スライド部8を軸線方向に挿通させるための円形の開口11tが設けられている。
【0031】
中筒11において、前側筒部11a及び中央筒部11bは、後側から先筒2に内挿される。このとき、前側筒部11aの弾性突部11eが先筒2の凹凸部2fに回転方向に係合し、中央筒部11bの突起11mが先筒2の環状凸部2gに係合して環状凹部2hに嵌り込むと共に、中央筒部11bの環状凸部11nが先筒2の環状凹部2jに入り込む。
【0032】
図11(a)は、保持体6を示す縦断面図であり、図11(b)は、図11(a)の保持体6の前端を拡大させた図である。保持体6は、全体として円筒形状を呈している。保持体6の材料としては、例えばPOMが用いられる。保持体6は、その前側に設けられて移動体5を収容する穴部6aを有すると共に移動体5を押圧する移動体押圧部6bと、移動体押圧部6bから後方に延在する円筒状の筒状部6cと、を備える。
【0033】
保持体6の移動体押圧部6bは、前端から後方に所定長延在して移動体押圧部6bの内周面で互いに対向するように一対に形成されたスリット6dを備えている。このスリット6dを備えた移動体押圧部6bにおいて、移動体5は、保持体6の樹脂の弾性力によって径方向内側に締め付けられる。また、このスリット6dによって、移動体押圧部6bは径方向外側に拡径可能となっている。
【0034】
スリット6dの後端には、径方向から見て拡がる拡張部6gが形成されており、この拡張部6gにより、移動体5を締め付ける移動体押圧部6bの弾性力は適宜調整されている。移動体押圧部6bの内面6eには、螺旋状の突起6fが形成されている。突起6fは、保持体6の内面6eにおいて軸線方向に沿った3箇所の位置に配置されている。この突起6fは、移動体5の雄螺子5aに径方向外側から当接する。また、保持体6によって、移動体5を軸線方向に係合し、移動体5を脱着自在に保持することも可能である。
【0035】
保持体6の筒状部6cの内側には、周方向四等配に配置されて軸線方向に延在する4本の突条6hが設けられている。この突条6hは、保持体6に対する移動体5の回り止めのために設けられる。突条6hには、前端に向かうにつれて先細りするテーパ面6nが設けられており、このテーパ面6nにより、突条6hは、移動体5を前側から挿入しやすい形状とされている。
【0036】
この突条6hによって、軸線方向に直交する平面で筒状部6cを切断したときの断面形状において、その筒状部6cの内部空間は非円形状(十字状)に形成される(図10参照)。更に、筒状部6cには、成形時に射出の圧力でコアピンが傾かないようにコアピンを支持するものとして、軸線方向に延びる長円状の貫通孔6jが保持体6の内外を貫通するように設けられている。
【0037】
保持体6の後端の内面には、スライド部8が回転方向に係合される突条6mと、スライド部8が軸線方向に係合される環状凸部6kが形成されている。突条6mは、前述の突条6hと同一直線上に配置されている。
【0038】
図12(a)は移動体5の斜視図であり、図12(b)は移動体5の側面図である。移動体5は、棒状の外形を呈している。移動体5の材料としては、例えばPOMが用いられる。移動体5は、その外周面において、雄螺子5aと、軸線方向に延在する4本の溝部5bと、を備えている。溝部5bは、周方向四等配に設けられている。
【0039】
また、移動体5は、その後側の表面に、雄螺子5aが形成されていない曲面部5cを有する。この曲面部5cは、移動体5が前進限にまで到達したときに移動体5を空回りさせるために設けられる。また、曲面部5cの後方に位置する雄螺子5aは、保持体6への組み付け時に突起6fの後方に挿入されることにより、移動体5の保持体6からの脱落を防止するために設けられる。雄螺子5aは、移動体5の軸線方向全体に亘って形成されている。なお、ここで、「軸線方向全体に亘って形成」とは、軸線方向全てに雄螺子5aが形成されている場合だけでなく、本実施形態のように軸線方向の途中に曲面部5cが形成される等、一部に雄螺子5aが形成されていない場合も含まれる。
【0040】
移動体5の4本の溝部5bは、保持体6の突条6hに入り込ませるために設けられる(図10参照)。この溝部5bは、移動体5と保持体6とを同期回転させるために設けられる。この溝部5bによって、軸線方向に直交する平面で雄螺子5a及び溝部5bを切断したときの断面形状は、保持体6の筒状部6cの内部空間に対応した非円形状(十字状)となる。
【0041】
移動体5における雄螺子5aのピッチ(軸線方向における雄螺子5aの螺子山間の距離)は、例えば0.3mm以上かつ1.0mm以下であり、好ましくは0.6mmである。従来の雄螺子のピッチは一般的に2.0mm以上かつ6.0mm以下となっているので、雄螺子5aのピッチは、一般的な雄螺子のピッチよりも短い微小ピッチとなっている。
【0042】
移動体5における雄螺子5a及び溝部5bは、溝部5bが突条6hに対してクリアランスをもつように前方から保持体6に挿入される。そして、保持体6の内面6eに設けられた突起6fと、移動体5の雄螺子5aとが係合することによって、保持体6は移動体5を保持する。このとき、突起6fは、雄螺子5aを径方向外側から押圧し、これにより、移動体5に対する保持体6の保持力が高められている。
【0043】
また、移動体5の前端には、パイプ材1内の描画材Mを前方に押し出す円柱状の押出部5dが設けられている。押出部5dは、その前端に位置する底面5eと、底面5eから十字状に凹む凹部5fと、周方向に延在する側面5gと、底面5eに対して傾斜し底面5e及び側面5gに連続するテーパ面5hと、を有する。凹部5fは、移動体5の組み付け時に、移動体5を回転させる工具を挿入させるための穴であり、この凹部5fに当該工具を挿入することにより組み付け時等に移動体5を回転させることが可能である。また、底面5eは、描画材Mを前方に押し出すための面である。
【0044】
図13(a)はパイプ材1の側面図であり、図13(b)はパイプ材1の縦断面図である。パイプ材1は、略円筒状を呈している。パイプ材1の材料としては、例えばPP(ポリプロピレン)が用いられる。パイプ材1は、描画材Mと同じ色に着色したり透明材料にしたりすることによって、描画材Mの色を識別しやすくすることも可能である。パイプ材1の内周面における後側には、移動体5を軸線方向に移動させるための雌螺子1aが形成されている。パイプ材1における雌螺子1aのピッチ(軸線方向における雌螺子1aの螺子山間の距離)は、移動体5の雄螺子5aと同様、一般的な雌螺子のピッチよりも短い微小ピッチとなっている。
【0045】
パイプ材1の内面における雌螺子1aの前側には、軸線方向に延びる突条1bが周方向四等配に設けられている。この突条1bによって、パイプ材1に装填された描画材Mの抜けを防止することが可能となっている。この突条1bの本数は、特に限定されないが、4本とした場合に、より効果的に描画材Mの抜けが防止される。パイプ材1の外周面における前側部分には、先筒2の突条2eに回転方向に係合されるものとして、周方向に複数の凹部が並設されて当該凹部が軸線方向に所定長延びる凹溝1cが設けられている。
【0046】
図14(a)はスライド部8の側面図であり、図14(b)はスライド部8の斜視図である。スライド部8の材料としては、例えばABS樹脂が用いられる。スライド部8の色は、例えば、対応する描画材Mの色と同一となっており、所望の色のスライド部8を前方に一定量摺動させることによって、所望の色の描画材Mを先筒2の開口部2aから露出させることが可能となっている。
【0047】
スライド部8は、軸線方向に延びる形状となっている。スライド部8の前端には、保持体6の筒状部6cに後方から挿入される4個の爪部8aが設けられており、各爪部8aは周方向四等配に配置される。各爪部8aは、径方向に弾性力を有しており、保持体6の環状凸部6kに脱着自在に係合される。爪部8aは、前側に先細りする傾斜部8kと、傾斜部8kの後端で環状凸部6kを軸線方向に係合させる凹部8mと、を有する。この爪部8aは傾斜部8kを備えることによって、スライド部8を保持体6に挿入しやすい形状とされている。
【0048】
また、スライド部8の前側には、スプリング9が巻き付けられる丸棒状の棒状部8cが設けられ、棒状部8cの後端には、棒状部8cから径方向外側に突出する平坦面8dが設けられている。棒状部8cは、中筒11の保持体収容部11sの開口11tに、軸線方向に挿通される。また、平坦面8dには、スプリング9の一端が当接される。このように、スライド部8は、その前側に設けられた棒状部8cと、棒状部8cの後端で径方向外側に突出する平坦面8dとを備えることによって、スプリング9を組み付けやすい形状とされている。
【0049】
スライド部8の後側には、他のスライド部8を後方に引き戻すための突出部8eが設けられており、この突出部8eは、本体3で径方向内側に突出すると共に軸線方向に延在する。スライド部8の後端には、本体3から径方向外側に突出する突出部8fと、スライド部8の後端で後方に突出して本体3に引っ掛けられる後端部8gと、本体3の径方向内側に突出し他のスライド部8の突出部8eが当接される傾斜面8hを有する突出部8jと、が設けられている。
【0050】
以上のように構成されるスライド部8は、その前端に保持体6が係合される。このとき、スライド部8の爪部8aが保持体6の環状凸部6kに軸線方向に係合することにより、スライド部8の前端に保持体6が軸線方向に係合され、脱着自在に保持することも可能である。
【0051】
図15(a)は本体3の縦断面図、図15(b)は本体3の側面図、図15(c)は図15(b)のC−C線断面図である。本体3は、ABS樹脂による射出成形品とされており、有底円筒状を呈している。本体3の後側には、軸線方向に延びてスライド部8の突出部8fを外方に突出させる切り欠き部3aが設けられており、この切り欠き部3aは周方向四等配の位置に設けられている。
【0052】
本体3における切り欠き部3aの径方向内側には、切り欠き部3aから径方向内側に延びる平坦部3bと、平坦部3bで軸線方向に延びる突出部3cと、が設けられている。突出部3cの後側は、本体3の底面3dにまで延びている。図6に示されるように、本体3の切り欠き部3aに沿ってスライド部8の突出部8fを前方に移動させると、スライド部8の後端部8gが突出部3cに沿って前進する。
【0053】
後端部8gが突出部3cの前端に達すると当該後端部8gが切り欠き部3aの径方向内側に入り込み、突出部3cの前端に後端部8gが引っ掛けられる。また、一のスライド部8(例えば図6のスライド部8A)における後端部8gが突出部3cの前端に引っ掛けられた状態において、一のスライド部8の傾斜面8hには他のスライド部8(例えば図6のスライド部8B)の突出部8eが近接している。
【0054】
また、図15(a)に示されるように、本体3の内周面における前側には、中筒11の突条11qに回転方向に係合する凹溝3eと、中筒11の凸部11rが軸線方向に係合する環状凹部3fと、中筒11の鍔部11pが前方から入り込む環状凹部3gと、が設けられている。凹溝3eは、本体3の前端に位置する環状凹部3gから後方に所定長延びており、本体3の内周面で周方向四等配の位置に配置されている。また、環状凹部3fは、凹溝3e間で周方向に延在している。
【0055】
本体3には、その前側から4個のスライド部8が挿入され、スライド部8の突出部8fは切り欠き部3aから外方に突出した状態とされる。また、本体3の前端には中筒11が入り込む。本体3に中筒11が入り込むとき、本体3の凹溝3eに中筒11の突条11qが入り込み、本体3の環状凹部3fに中筒11の凸部11rが軸線方向に係合し、中筒11の鍔部11pが環状凹部3gに入り込むことによって、本体3に中筒11が同期回転可能に係合される。
【0056】
図5及び図7に示されるように、スプリング9(スプリング9A〜9C)は、スライド部8の棒状部8cの外周とクリアランスを持つように棒状部8cに巻き付けられている。スプリング9は、その一端(前端)が中筒11における保持体収容部11sの後壁に当接し、その他端(後端)がスライド部8の軸線方向中央付近に位置する平坦面8dに当接した状態とされる。このスプリング9によりスライド部8は後方に付勢された状態とされる。
【0057】
以上のように構成される繰り出しペンシル100の使用時の動作について以下で説明する。図5に示される初期状態の繰り出しペンシル100にあっては、4個のスライド部8が本体3の切り欠き部3aの後端に位置した状態となっており、4本のパイプ材1が先筒2の内側に位置している。この状態でスライド部8Aを切り欠き部3aに沿って一定量前進させると、図6及び図7に示されるように、スライド部8Aに軸線方向に係合されたカートリッジ10Aが前進し、描画材M1が先筒2の開口部2aから前方に露出する。
【0058】
このとき、パイプ材1Aの前側部分が先筒2の内周面2dに入り込むことによって、スライド部8Aの棒状部8cが軸線方向に対して湾曲するように撓み、パイプ材1Aの凹溝1cが先筒2の突条2eに回転方向に係合する。そして、スライド部8Aの後端部8gが本体3の突出部3cの前端で径方向内側に入り込む。
【0059】
この状態において、例えば使用者が先筒2に対して本体3を一方向(例えば時計回り)に相対回転させると、中筒11、4個のスライド部8、4個の保持体6及び4個の移動体5が一方向への回転を開始する。ここで、先筒2の突条2eに凹溝1cが係合されていないパイプ材1B〜1Dは、上記一方向への相対回転に伴って回転する。
【0060】
一方、先筒2の突条2eに凹溝1cが係合されたパイプ材1Aに移動体5Aを介して連結されている保持体6Aは、上記一方向への相対回転に伴って一方向への回転を開始する。また、先筒2の突条2eに凹溝1cが係合されたパイプ材1Aは、移動体5Aの一方向への回転と共には回転せず、パイプ材1Aに対して移動体5Aが相対回転することとなる。よって、上記一方向への相対回転によって、移動体5の雄螺子5aとパイプ材1の雌螺子1aとの間で螺合作用が働き、パイプ材1Aに対して移動体5Aが前進を開始する。そして、移動体5Aの押出部5dの底面5eがパイプ材1Aに装填された描画材M1を前方に押し出すことによって、移動体5Aと描画材M1とが共にパイプ材1Aに対して前進を開始する。
【0061】
また、上記一方向への相対回転の際、図10に示されるように、ラチェット機構12を構成する中筒11の弾性突部11eが先筒2の凹凸部2fに回転方向に係合すると共に、切欠き11fによる弾性力で弾性突部11eが径方向に付勢されることから、弾性突部11eと凹凸部2fとの係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返される。すなわち、弾性突部11eと凹凸部2fとが回転方向に係合した状態で上記一方向への相対回転が行われると、弾性突部11eの傾斜面11e1が、凹凸部2fの傾斜面2f1に当接し、この状態で傾斜面2f1を駆け上がるように摺動する。
【0062】
そして、弾性突部11eが凹凸部2fの凸部を乗り越えた後、再び弾性突部11eと凹凸部2fとが回転方向に係合する。その結果、弾性突部11eと凹凸部2fとの係合及び係合解除の度に、使用者にクリック感が付与される。なお、凹凸部2fでは、周方向に24個の凹凸が並設されているので、一方向に15°相対回転させる度に使用者にクリック感が付与される。
【0063】
一方、使用者が先筒2に対して本体3を上記一方向の反対方向である他方向(例えば、反時計回り)に相対回転させようとすると、ラチェット機構12を構成する弾性突部11eの側面11e2が凹凸部2fの側面2f2に当接し、上記他方向への相対回転が規制される。よって、先筒2と本体3とは他方向には相対回転しない。すなわち、一方向の相対回転における回転力(トルク)は容易に回転できる力に設定して、他方向の相対回転における回転力は容易に回転できない力に設定する。例えば、本体3の外径を14mm程度に設計した場合、一方向の相対回転のトルクは0.1N・m(ニュートン・メートル)以下に設定し、他方向の相対回転のトルクは0.2N・m以上に設定する。
【0064】
また、図6に示されるようにスライド部8Aの前進によってパイプ材1Aを前進させ描画材M1を前方に露出させた状態において、他のスライド部8Bを一定量前進させると、スライド部8Aの傾斜面8hに近接していたスライド部8Bの突出部8eがスライド部8Aの傾斜面8hに当接する。スライド部8Bの突出部8eがスライド部8Aの傾斜面8hに当接すると、スライド部8Aが径方向外側に押し出されて、スライド部8Aの後端部8gと突出部3cの前端との係合が解除される。そして、スプリング9Aの後方への付勢力によってスライド部8Aが切り欠き部3aの後端位置に押し戻されることとなる。
【0065】
以上、この繰り出しペンシル100は、先筒2と本体3との一方向への相対回転を許容すると共に他方向への相対回転を規制するラチェット機構12を備えており、ラチェット機構12は、中筒11の前側筒部11a(筒部)の外面から突出する弾性突部11eと、先筒2の内面の凹凸部2fと、によって構成されている。このラチェット機構12において、先筒2の内面の凹凸部2fは、前側筒部11aの外面の弾性突部11eに対して軸線方向に移動可能となっている。
【0066】
また、中筒11の中央筒部11b(筒部)の外面に設けられた突起11mは、先筒2の内面に設けられた環状凸部2gに対して軸線方向に脱着自在に係合する。このように、中筒11は、弾性突部11eによるラチェット機構12としての機能と、突起11mによる脱着自在機能と、を一つの部品で兼ね備えている。従って、中筒11に対して先筒2を軸線方向に脱着自在とすることができるので、先筒2を中筒11から外して分解を容易に行うことができる。よって、使用者は、内部のカートリッジ10等の部品に異常が生じたときに、先筒2を外して内部の部品を簡単に交換することができる。
【0067】
また、繰り出しペンシル100において、先筒2の内部には、複数の描画材Mが収容され、複数の描画材Mのそれぞれに連結されて本体3に対して一定量摺動可能に設けられる複数のスライド部8を備え、複数のスライド部8のうち任意の一のスライド部8が本体3に対して一定量前進することで任意の一の描画材Mが前進する。従って、一本の繰り出しペンシル100の内部に複数の描画材Mを収容することができると共に、任意の一の描画材Mを前進させて使用することができる。
【0068】
すなわち、繰り出しペンシル100において、パイプ材1、移動体5及び保持体6は、複数設けられており、複数の保持体6のそれぞれに連結されて本体3に対して一定量摺動可能に設けられる複数のスライド部8を備え、複数のスライド部8のうち任意のスライド部8が本体3に対して一定量前進することで任意の一の描画材Mが先筒2から露出し、この状態で先筒2と本体3とを一方向に相対回転させることによって描画材Mが前進する。従って、一本の繰り出しペンシル100の内部に複数の描画材Mを収容することができると共に、複数の描画材Mを収容しても小径を維持することが可能となる。
【0069】
また、繰り出しペンシル100は、パイプ材1の内部に描画材Mが装填されると共に、パイプ材1及び保持体6の内部に移動体5が収容されている。そして、移動体5は、その雄螺子5aが、軸線方向全体に亘って形成されている。従って、パイプ材1及び保持体6によって、雄螺子5aを任意の位置で螺合及び保持することができる。また、この移動体5の雄螺子5aは、パイプ材1の内面の雌螺子1aと螺合すると共に、パイプ材1の後方に配置された保持体6の内面6eの突起6fに外側から当接される。
【0070】
よって、パイプ材1、移動体5及び保持体6の縦断面図である図16(a)及び図16(b)に示されるように、移動体5と螺合するパイプ材1と、移動体5を保持する保持体6とを軸線方向に並べることができるので、繰り出しペンシル100の径方向への肥大化が抑制されている。従って、この繰り出しペンシル100では、小径化を実現させることができる。
【0071】
なお、繰り出しペンシル100では、例えば、パイプ材1の雌螺子1aにおける螺子山の内径は、保持体6の突起6fの内径よりも僅かに大きくなっている。これにより、移動体5の雄螺子5aと雌螺子1aの螺子山との間には微小なクリアランスが形成されるが、雄螺子5aと突起6fとの間にはクリアランスが形成されず、突起6fを雄螺子5aに常時当接させることができる。
【0072】
また、保持体6の突起6fは、保持体6の内面6eにおいて螺旋状に形成されている。従って、雄螺子5aの形状に沿って突起6fを雄螺子5aに係合させることができるので、雄螺子5aに対する保持体6の保持力を高めることができる。
【0073】
また、保持体6は、その前側の端部から軸線方向に延びるスリット6dを有する。このスリット6dを備えることによって、保持体6の前側の端部における径方向の弾性力を高めることができる。従って、径方向における保持体6の保持力を高めることができるので、保持体6からの移動体5の抜けを一層確実に抑制することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、繰り出しペンシル100を構成する各部品の構成は上記の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0075】
前述の実施形態では、例えば図8及び図9に示されるように、中筒11の弾性突部11eと先筒2の凹凸部2fとがラチェット機構12を構成し、中筒11の外面に設けられた突起11mと、先筒2の内面に設けられた環状凸部2gと、が脱着自在に軸線方向に係合する例について説明した。しかしながら、変形例に係る繰り出しペンシルとして、先筒2の内面に、ラチェット機構12を構成する弾性突部11eと脱着自在に軸線方向に係合する環状凸部が設けられていてもよい。
【0076】
すなわち、この変形例に係る繰り出しペンシルは、筒状の本体3と、本体3に相対回転可能に係合される先筒2と、先筒2の後側に内挿される筒部(前側筒部11a及び中央筒部11b)を有し、先筒2と本体3との間に位置しており先筒2に相対回転可能に係合される中筒11と、を備え、先筒2と本体3とを一方向に相対回転させることによって、先筒2の内部で描画材Mが前進する繰り出しペンシルであって、先筒2と本体3との上記一方向への相対回転を許容し、上記一方向の反対方向である他方向への相対回転を規制するラチェット機構12を備え、ラチェット機構12は、中筒11の上記筒部の外面から突出し径方向に弾性を有する弾性突部11eと、先筒2の内面に設けられて弾性突部11eと軸線方向移動可能且つ回転可能に係合する凹凸部2fと、によって構成され、弾性突部11eは、先筒2の内面に設けられた環状凸部と脱着自在に軸線方向に係合する。
【0077】
この変形例に係る繰り出しペンシルでは、前述のように、弾性突部11eが、先筒2の内面に設けられた環状凸部と脱着自在に軸線方向に係合する。よって、ラチェット機構12を構成する弾性突部11eが、先筒2の内面の環状凸部と脱着自在に係合するので、この弾性突部11eが脱着自在の機能を兼ねていることになる。このように弾性突部11eに脱着自在機能を持たせることができ、この場合、突起11mを省略することが可能となる。
【0078】
また、前述の実施形態では、先筒2の内面に、環状凸部2gと、環状凸部2gの前側に位置する環状凹部2hと、環状凸部2gの後側に位置する環状凹部2jと、が設けられる例について説明した。しかしながら、環状凹部2h又は環状凹部2jを省略することも可能である。すなわち、環状凸部2gの前側、及び環状凸部2gの後側の少なくともいずれかを平坦面とすることも可能である。
【0079】
また、前述の実施形態では、中筒11の外面に設けられた突起11mと、先筒2の内面に設けられた環状凸部2gと、が脱着自在に軸線方向に係合する例について説明した。しかしながら、中筒11の突起11m、及び先筒2の環状凸部2gの形状及び配置態様は、上記の例に限定されない。更に、突起11m及び環状凸部2gに代えて、中筒11の外面に環状凸部が形成されると共に、先筒2の内面に突起が形成されていてもよく、この中筒11外面の環状凸部と先筒2内面の突起と、が脱着自在に軸線方向に係合してもよい。また、前述の実施形態では、中筒11が前側筒部11aと中央筒部11bとを備える例について説明したが、中筒の形状を適宜変更することも可能である。
【0080】
また、図11に示されるように、前述の実施形態では、保持体6が、スリット6dを備えることによって、保持体6の前端における径方向の弾性力を高める例について説明した。この保持体6は、更に、その内部で保持する移動体5に対して外側から弾性力を付与する弾性部を備えていてもよい。具体的には、例えば、保持体6の外面における複数のスリット6dの間で周方向に延在する環状凹部を形成し、この環状凹部に弾性体であるOリングを入れ込んでもよい。この場合、上記環状凹部にOリングが入れ込まれることによって、保持体6に保持される移動体5が径方向内側に締め付けられ、保持体6からの移動体5の抜けが更に確実に防止される。すなわち、弾性部による径方向外側からの弾性力によって、保持体6の保持力を一層高めることが可能となる。
【0081】
また、前述の実施形態では、保持体6の突起6fが、保持体6の内面6eにおいて螺旋状に形成されている例について説明した。しかしながら、保持体6の内面6eに形成される突起の形状及び配置態様は上記の例に限定されない。例えば、螺旋状でない突起が、保持体6の内面6eにおいて、軸線方向に沿った複数の位置に配置されていてもよい。この場合も、軸線方向に沿って配置された複数の突起のそれぞれが移動体5の雄螺子5aを径方向外側から押圧するので、保持体6から雄螺子5aを抜けにくくすることができる。このように、軸線方向に沿って設けられた複数の突起によって、雄螺子5aの抜けに対する強度を高めることができる。
【0082】
更に、前述の実施形態では、保持体6の突起6fが、保持体6の内面6eにおいて軸線方向に沿った3箇所の位置に配置されている例について説明した。しかしながら、この突起6fは、軸線方向に沿った1箇所、2箇所又は4箇所以上の位置に配置されていてもよい。
【0083】
また、前述の実施形態では、図13に示されるように、パイプ材1の内面における雌螺子1aの前方に突条1bが周方向四等配に設けられ、この突条1bによって、パイプ材1に装填された描画材Mの抜けが防止される例について説明した。しかしながら、突条1b以外によって、描画材Mの抜け防止措置が施されていてもよい。例えば、突条1bに代えて、パイプ材1の内面に摩擦係数を高める措置が施されてもよいし、パイプ材1の内面を多角形等の非円形とすることによって抜け防止措置が施されてもよい。
【0084】
また、前述の実施形態では、色が互いに異なる描画材M1〜M4を備えた多種ペンシルである繰り出しペンシル100について説明したが、太さが互いに異なる描画材を備えた繰り出しペンシルであってもよいし、更に、材料又は用途が互いに異なる複数の描画材を備えた繰り出しペンシルであってもよい。また、描画材の本数は4本に限定されず、2本、3本又は5本以上であってもよい。
【0085】
更に、本発明に係る繰り出しペンシルは、多種ペンシルでなくてもよい。すなわち、本発明に係る繰り出しペンシルは、描画材、パイプ材、移動体及び保持体を一本ずつ備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,1A〜1D…パイプ材、1a…雌螺子、2…先筒、2f…凹凸部、2g…環状凸部、3…本体、5,5A〜5C…移動体、5a…雄螺子、6,6A〜6C…保持体、6d…スリット、6f…突起、8,8A〜8C…スライド部、11…中筒、11a…前側筒部(筒部)、11b…中央筒部(筒部)、11e…弾性突部、11m…突起、12…ラチェット機構、100…繰り出しペンシル、M,M1〜M4…描画材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16