特許第6188269号(P6188269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188269CO2の回収および圧縮を用いた発電プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188269
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】CO2の回収および圧縮を用いた発電プラント
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20170821BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B01D53/62
   F01K27/02 ZZAB
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-541788(P2010-541788)
(86)(22)【出願日】2009年1月9日
(65)【公表番号】特表2011-523583(P2011-523583A)
(43)【公表日】2011年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2009050205
(87)【国際公開番号】WO2009087210
(87)【国際公開日】20090716
【審査請求日】2011年12月21日
【審判番号】不服2015-18824(P2015-18824/J1)
【審判請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】08100390.7
(32)【優先日】2008年1月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ブラッター・リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ドレニク・オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル・ホルガー
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 永田 史泰
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−98910(JP,A)
【文献】 再公表特許第2007/094054(JP,A1)
【文献】 特開2004−320874(JP,A)
【文献】 特開2001−186651(JP,A)
【文献】 特開2005−230808(JP,A)
【文献】 特開2004−85099(JP,A)
【文献】 特開2002−79052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34
F01K1/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システム(18)と、煙道ガスからのCO2回収システムとを備えた発電プラント(1)を運転するための方法であって、
前記CO2回収システムの動作のための電力消費が、前記制御システム(18)により制御される前記発電プラント(1)の有効電力出力(D)のための制御パラメータとして使用され、
前記発電プラント(1)が電力を供給する先の送電網の周波数が不足している間、前記CO2回収システムの前記電力消費を低減させる制御をすることによって、前記有効電力出力(D)が増加される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
CO2回収システムが、送電網に補助的電力を供給するために低減された容量で運転されるかあるいは停止されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
CO2回収システムが運転中であり、CO2回収システムの電力消費が発電プラントの周波数応答のために使用できる場合に、発電プラント(1)が、CO2回収システムが通常運転中の状態にある負荷としてのベース負荷で運転されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
CO2回収率が、前記周波数が不足している間にCO2回収システムの電力消費を制御するために変化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記CO2回収システムが、回収されたCO2を圧縮するためのCO2圧縮ユニット(9)を備え、
前記CO2圧縮ユニット(9)が、前記周波数が不足している間に停止されるかあるいは低減された容量で運転されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記CO2回収システムが、回収されたCO2を圧縮するためのCO2圧縮ユニット(9)を備え、
前記CO2圧縮ユニット(9)が、周波数が不足している間に停止されるかあるいは低減された容量で運転されること、および回収されたCO2の一部あるいは全てが、周波数が不足している間に前記CO2圧縮ユニットのバイパス(12)を経由して放出されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記CO2回収システムを構成するCO2回収ユニット(2)に構成された、CO2吸収剤もしくはCO2吸着剤を再生するための再生ユニットが、周波数が不足している間に停止されるかあるいは低減された容量で運転されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記CO2回収システムを構成するCO2回収ユニット(2)に構成された吸収あるいは吸着ユニットが、周波数が不足している間に停止されるかあるいは低減された容量で運転されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記CO2回収システムを構成するCO2回収ユニット(2)に構成された吸収あるいは吸着ユニットが、周波数が不足している間に停止されるかあるいは低減された容量で運転されること、および
煙道ガスの一部あるいは全てが、周波数が不足している間に前記CO2回収ユニット(2)用の煙道ガスバイパス(11)を経由して放出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記CO2回収システムを構成するCO2回収ユニット(2)に構成された、CO2吸収剤もしくはCO2吸着剤を再生するための再生ユニットの蒸気(13)の消費が、再生ユニットが停止されること、あるいは低減された容量で運転されることに起因して低減され、余った蒸気が、前記送電網の周波数が不足している間、補助的電力生産のために発電プラント(1)の蒸気タービンに供給される、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
周波数が不足している間に、吸収剤もしくは吸着剤の再生が停止されるかあるいは低減された容量で吸収剤もしくは吸着剤の再生が行われること、および
貯留された吸収剤、あるいは吸着剤がCO2回収のために周波数が不足している間に使用されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法を実施するための発電プラント(1)において、発電プラント(1)が、少なくとも制御システム(18)および煙道ガスからのCO2回収システムを備えていることを特徴とする発電プラント(1)。
【請求項13】
少なくとも一つの蒸気タービンが、用いられる蒸気流の全てを、CO2回収システムのスイッチを切った状態で発電プラントにより生産されうるエネルギーに転換するように制御されていることを特徴とする請求項12に記載の発電プラント(1)。
【請求項14】
少なくとも一つの発電機と、CO2回収システムの電気システムが、CO2回収システムのスイッチを切った状態で生産される最大パワーを電力に転換し、この電力を送電網に送るように制御されていることを特徴とする請求項12または13に記載の発電プラント。
【請求項15】
回収されたCO2を圧縮するためのCO2圧縮ユニット(9)および/またはCO2の回収ユニット(2)のバイパス(12,11)が設けられていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一つに記載の発電プラント。
【請求項16】
吸収ユニットが、運転中ではない場合にでも煙道ガス(15)に耐性があるように作られていることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2の回収および圧縮を用いた発電プラント、ならびに周波数応答時の発電プラントの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの発生により地球温暖化が起こることや、また温室効果ガスの生成の増大により、さらに地球温暖化が加速することが明らかとなっている。CO2(二酸化炭素)は主たる温室効果ガスとして認識されているため、CCS(炭素回収および貯留)は、温室効果ガスの大気中への放出を減少させ、地球温暖化を制御する有力な手段のうちの1つと見なされている。この文脈においては、CCSは、CO2の回収、圧縮、輸送及び貯留の工程と定義する。回収は、炭素系燃料の燃焼後の煙道ガスのいずれかからCO2を除去する工程、もしくは燃焼前の炭素の除去及び処理と定義する。あらゆる吸収剤、吸着剤の再生、もしくは炭素のCO2を煙道ガスもしくは燃料ガス流から除去する他の手段は、回収処理の一部と見なす。発電プラントにおけるCO2回収には、いくつかの可能なアプローチがある。CO2回収に関する検討中の主な技術は、いわゆる燃焼前回収、酸素燃焼(oxyfiring)、ケミカルループ及び燃焼後回収である。
【0003】
燃焼前炭素回収は、燃料を燃やす前の全炭素含有量もしくはその一部の除去を含む。天然ガスに関しては、これは一般に蒸気で改質し、その後シフト反応によってCO2及び水素を生成することによって行われる。CO2は、得られたガス混合物から回収及び除去することが出来る。その後水素を使用して、有用なエネルギーを生成することが出来る。この処理は、合成ガスアプローチとしても知られている。石炭もしくはあらゆる化石燃料に同じアプローチを使用することが出来る。まず燃料をガス化し、次に天然ガスと同じ方法で処理する。IGCC(Integrated Gasification Combined Cycle:ガス化複合発電)と組み合わせたこのアプローチの用途が予見されている。
【0004】
オキシファイアリング(別名 純酸素燃焼(oxyfuel firing)もしくは酸素燃焼(oxygen combustion))は、石炭もしくは他の化石燃料を、空気中ではなく、酸素と再循環したCO2の混合物中で燃やす技術である。この技術は、濃縮CO2の煙道ガス及び蒸気を生成する。これより、単に、燃焼反応の副生成物である水蒸気を凝縮することによってCO2を分離することが出来る。
【0005】
化学ループ燃焼法は、金属酸化物、一般的には燃焼空気から燃料へ酸素を伝達する金属酸化物を、酸素担体として用いる。燃焼による生成物は、CO2、還元金属酸化物及び蒸気である。水蒸気を凝縮した後、輸送及び貯留のためCO2流を圧縮してもよい。
【0006】
現在大規模な工業的応用に最も近いとされているCCS技術は、圧縮、輸送及び貯留と組み合わせた燃焼後回収である。燃焼後回収では、煙道ガスからCO2を除去する。残っている煙道ガスは大気中に放出され、CO2は輸送及び貯留のため圧縮される。煙道ガスからCO2を除去する、吸収、吸着、膜分離、及び深冷分離等の、いくつかの既知の技術が存在する。
【0007】
CO2回収圧縮のための既知の技術は全て、比較的大量のエネルギーを必要とする。これらの処理を発電プラントとして統合することによる異なる処理及び電力及び性能ペナルティーの最適化に関する多くの出版物がある。
【0008】
燃焼後回収によるCCSの場合、さらなる処理、つまり、輸送及び貯留を行うためのCO2回収及びCO2の圧縮は、CCSの無い従来の発電プラントに対する、発電プラントの正味電力出力の減少に関する主たる理由である。
【0009】
特許文献1は、燃焼後回収やCO2吸収による電力出力ペナルティーを減少させる方法や吸収液の再生の実施例をそれぞれ挙げている。ここでは、吸収剤を再生するため、発電プラントの蒸気タービンの異なる段落から蒸気を抽出して、タービンの出力の低下を最小限に抑えることが提案されている。
【0010】
同じ背景において、特許文献2は、吸収剤を再生するためのCO2流を圧縮することから生じる圧縮熱を用いることを提案している。
【0011】
これらの方法は、特定のCO2回収設備の所要電力を減少させることを目的とするが、しかしながら、提案されたCO2回収方法を用いると、常に、プラント容量、つまり、プラントが送電網へ出力可能な最大電力の大幅な低下が起こる。
【0012】
CO2回収がプラント出力に及ぼす影響(impact)を軽減する第一の試みが、特許文献3に記載されている。ここでは、煙道ガスからCO2を回収するための吸収剤を利用する発電プラントが記載されており、このプラントでは、再生機を電力需要が高い時間はオフにし、これらの時間に吸収剤タンクに保管した吸収剤を用いることによってCO2回収を続けることを記載している。特許文献3は、CO2回収設備の1つの電力消費減の単純なON/OFFモードを記載している。それは、比較的高コストで非常にわずかな運転柔軟性しか得られない。
【0013】
周波数応答は発電プラントの運転にとって重要な問題であり、さらにCO2の回収および圧縮による発電プラントのために考慮される必要がある。特許文献4には周波数応答の基本原理が記載されており、送電網(grid)は公称周波数周辺で変動する送電網の周波数(grid frequency)を有している。制御周波数が公称周波数以下に低下すると電力出力が増加し、他方では制御周波数が前記公称周波数以上に上昇すると電力出力が減少するように、前記発電プラントの電力出力は制御周波数の関数として制御される。送電網の周波数は連続的に測定される。特許文献4には送電網の周波数を平均化し、かつ制御周波数として測定された送電網の周波数を使用するための有利な方法が記載されているが、この方法はガスタービンの電力出力制御の従来の制御機構に対して限定されている。周波数が不足していることに対する応答を可能にするために、発電プラントはいつも部分負荷運転をしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1688173号
【特許文献2】国際特許出願公開第2007/073201号明細書
【特許文献3】欧州特許公開公報第号0537593号
【特許文献4】欧州特許公開公報第号0858153号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主たる課題は、CO2の回収および圧縮を用いた発電プラントのための運転方法の周波数応答を最適化することである。本発明の別の課題は、最適化された運転方法に従い運転するために設計されたCO2の回収および圧縮システムを用いた発電プラントである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題の一つは、プラントの柔軟性を増し、従ってCO2の回収が無くとも従来の発電プラントに対して競争力を高めるために、CCS(炭素回収貯留)の長所を利用することである。本発明によれば、CO2の回収システムの電力消費は、周波数が不足している間の発電プラントの正味電力出力(D)のための制御パラメータとして使用される。これに関連して、例えば直接のCO2圧縮機駆動の面に関する電気的電力消費、機械的電力消費、ならびに別のやり方では蒸気タービン内で電気エネルギーに転換できる生蒸気の消費は、CO2の回収システムの電力消費としてみなされている。さらに不足周波数エクスカーションもしくは低周波数事象とも呼ばれる周波数が不足していることは、公称周波数より下の電力送電網の周波数の減少である。特に発電プラントの周波数応答容量は、電力を変更するためにCO2の回収および圧縮設備の電力消費の高速変動を使用して改善され、発電プラントは周波数が不足している間送電網に電力を供給することができる。
【0017】
本発明の真髄は、CO2の回収システムの電力消費を低減するか、あるいはこのCO2の回収システムを停止して、送電網の周波数の低下に対する反動として発電プラントの正味を増大させる発電プラント運転方法である。この発明の背景において、CO2の回収システムは補助設備を全て備え、圧縮ユニットを加えた完全なCO2の回収ユニットとして定義される。この発電プラント運転方法により、発電プラントの現行の制御に加えて、補足柔軟性がもたらされる。この方法を用いて、CO2の回収システムを発電プラントに統合したことにより、発電プラントの正味出力は周波数が不足している間に極めて高い比率で増大させることができ、部分負荷運転は全く必要とされず、周波数応答のための正味電力容量が保証される。高い比率の電力変動はCO2の回収システムの電力消費の変化率を速くすること(fast gradients)により達せられる。従って発電プラントはベース負荷での最適な効率でもって、もしくはベース負荷に近い最適な効率でもって運転することができる。
【0018】
従来の発電プラントにおいて、発電プラントの総電力出力を増やすことにより、および発電プラントの補助設備あるいは寄生電力消費、および発電プラントのシステムのどれかを減らすことにより、発電プラントの正味出力は周波数が不足している間に対応して増大させることができる。総電力出力の増大は電力プラントのベース負荷に限定されている。さらに発電プラントの総電力出力を増大させることができる比率は、発電プラントの過度電流とイナーシャ時に生じる熱負荷のために限定されている。従来の発電プラントにおいて、さらにいずれの系あるいは補助設備の寄生電力消費を減らす可能性は極めて限定される。一般的に、蒸気あるいは複合発電プラントのための最大の消費設備は、供給水ポンプ、冷却水ポンプおよび冷却設備であり、これらは連続運転の間は電源を切ることができない。
【0019】
発電プラントの安全な連続運転には要求されない、CO2の回収および圧縮の大きな電力消により、状況は変わり、かつ発電プラントに関する限界に直面することなく、正味電力の短時間でなされる過渡的変化のための新たな可能性が得られる。事実上、CO2の回収システムの電力消費は発電プラントの正味電力出力のための制御パラメータとして使用することができる。特にCO2の回収および圧縮のための電力消費は変えることができ、電力送電網の周波数応答要件を満たすために使用することができる。さらに周波数が不足していることに応じた発電プラントの高速過渡負荷を消費する長期間は回避でき、あるいはこの長時間は正味電力出力の変更が、CO2の回収システムの電力消費を制御することにより対処されるとこの新たな設計概念により低減できる。
【0020】
CO2の回収および圧縮による周波数応答の別の長所の一つは、予備周波数(frequency reserve)のための容量がこれ以上全く使用できない場合に送電網により要求されるかもしれない発電プラントの容量を下げた運転を回避できることである。間次第で、一部の発電プラントは、周波数が不足していることのための予備電力(power reserve)を残しておくために、一部の負荷で、例えば90%の負荷で運転することを要求されるかもしれない。90%での運転により、効率は低下する恐れがあり、かつ生産されるMWh当たりの資本と運転コストは上がる。ここでは、本発明により発電プラントが最適な効率でベース負荷で、あるいはほぼベース負荷で運転することができ、かつCO2の回収システムの電力消費がオフになりかつ周波数応答のために使用されることがあったときでも、尚周波数が不足している間、固有の予備電力を有している。
【0021】
正味電力出力のための制御パラメータとしてのCO2の回収システムを使用することの第一のアプローチにおいて、CO2の回収およびCO2の圧縮の設備あるいはその設備の主たる電力消費設備は、周波数が不足している間に簡単にスイッチが切れることがある。選択された技術とは独立して、CO2の分離を停止させ、プラントを、CO2を煙道ガスに排出する従来のプラントのように稼働させる。これによって、寄生電力需要を伴うCO2圧縮が必要とならない。
【0022】
CO2の回収および圧縮ユニットを単に停止あるいはさらには遮断させることとは関係なく、CO2の回収および圧縮設備の低減した容量に対する負荷軽減(deloading)あるいは部分負荷運転を周波数応答運転(frequency response operation)のために提案する。低減される容量は、満足できるCO2の回収率を達成するのに必要とされる容量以下のCO2の回収システムの構成設備少なくとも一つを運転することにより実現できる。その結果、回収率は周波数応答時に低減される。
【0023】
周波数が不足していることは本当にまれに、かつ短時間にわたってしか起こらないので、この運転モードのために回収されないCO2の蓄積量は一般に少量であり、かつ無視出来る。送電網に依存して、このような短時間のCO2排出を導く周波数が不足していることは、数年に一度しか起こらず、かつほんの数分あるいは20〜30分続くにすぎない。
【0024】
しかしながら、回収設備と圧縮ユニットの柔軟な運転により、CO2の回収および圧縮による発電プラントの競争力は増す。従ってこれにより、単なるパイロットプラント計画を超えてこの種のプラントを競争力のある市場に早期に発表することができ、結果としてCO2の排出は減少する。
【0025】
以下において、CO2の吸収の例を用いてCO2の回収及び圧縮による周波数サポートのための方法を説明する。この方法と以下に記載したその様々な変形はすべて、CO2の吸収、吸収剤の再生および回収されたCO2の圧縮を含むCO2の回収方法のために同等に適用できる。
【0026】
CO2回収及び圧縮処理の運転は、CO2の吸収、吸収剤の再生及び回収したCO2の圧縮から成るが、プラント運転の柔軟性を増大させる主な選択肢を三つ提供する。それらは、1つずつ、もしくは全て同時に行うことが出来る。それらは以下の通りである:
1.CO2圧縮ユニットを停止、もしくは低減容量で運転させる。
2.再生ユニットを停止、もしくは低減容量で運転させる。
3.吸収ユニットを停止、もしくは低減容量で運転させる。
【0027】
第一の選択肢で既に寄生電力消費を大幅に減少させるが、大量の非圧縮CO2は経済上保管出来ないため、非常に短期間内にCO2を大気中に放出することになる。従って回収したCO2の一部あるいは全ては、例えば周波数が不足している間にはCO2圧縮のバイパスを経由して放出できる。回収したCO2の安全な処分に関しては、例えば、CO2吸収ユニットの下流で煙道ガスと混合し、発電プラントのスタックを介して放出することが出来る。
【0028】
さらに大幅な寄生電力消費の低減が、第二の選択肢によって実現することが出来る。再生は、一般に吸収剤の「再沸騰」によって行うが、これは、CO2を放出するために吸収剤を蒸気によって加熱することを意味する。そのため、蒸気はそれ以上電力生産のために利用出来ない。一旦ピーク電力需要の間に再生を停止させると、余分な蒸気を電力生産のために利用出来る。
【0029】
第三の選択肢もまた、吸収工程を停止させるかあるいは行なうものであるが、これにより補助設備の電力消費はさらに低減される。この電力消費の低減は、先の二つの選択肢において達成される節約より大幅に小さい。吸収ユニットに依存して、煙道ガスの一部もしくは全てはこの運転モード時に回収設備の周囲でバイパスされる。
【0030】
従来の配置における吸収剤は急速に飽和し、それ以上CO2を回収出来なくなるため、吸収工程の運転自体は、さらなる対策なしには意味をなさない。しかしながら、吸収剤の貯留タンクの大きさに依存して、再生のないCO2の回収とCO2の圧縮は限定された期間の間は可能である。
【0031】
CO2の回収と圧縮の遮断がシステムの負荷軽減に比べて極めて速くかつ安全である場合が多いので、システムの少なくとも一部の遮断をプラントの負荷制御と組合せることを提案する。システムの少なくとも一部が遮断されると、結果としての正味電力出力は周波数応答に関するものに比べて大きいことがある。この場合、プラントの総電力出力は、従来のプラント制御を用いて低減でき、送電網毎に要求される適正な正味電力出力は保証される。
【0032】
CO2の回収システムの構成設備の停止に加えて、構成設備の部分負荷運転が可能である。例えばCO2の圧縮ユニットの質量流は入口案内翼のような制御手段により低減できる。二つあるいはそれ以上の平行な圧縮機トレインを含む圧縮ユニットの場合、少なくとも一つの圧縮機の停止により、CO2の圧縮ユニットの電力消費が低減するのも明白である。フル容量で運転している二つの平行な圧縮機トレインの場合、圧縮機トレインの一方の停止により、50%分だけ電力消費は減り、同様に回収したCO2の50%が圧縮でき、かつ一般に煙突までバイパスされることを示す。代替えとして、再吸収率を低減することができる。このことは例えば再生ユニットを流れる吸収剤流を低減することにより、そして残留している流れをバイパスし、さらに前記2つの流れが吸収ユニットに入る前に二つの流れを混合することにより達せられる。流れの一部だけが再生ユニットを通過すると、再生に必要とされる蒸気は低減し、余分な蒸気は電力生産に使用できる。再生された吸収剤を再生されない吸収剤を混合した結果として、CO2を吸収するための結果としての混合は低減し、低割合のCO2は煙道ガスから回収され、より少ないCO2は再生ユニットの圧縮のために放出される。最初にCO2を回収し、次いでバイパスするのはあまり経済的ではないので、回収システムの構成設備全ての容量を同時に低減することを提案する。
【0033】
周波数が不足している間に、再生せずにもしくは吸収剤を低減した容量で再生せずに、吸収ユニットを運転するための別の可能性は、この周波数が不足している間にCO2のために貯留した吸収剤を使用することである。
【0034】
限界的送電網状況が生じた場合、周波数が限界の敷居値以下に落ちる前に、指令センターからの信号がCO2の回収システムの電力消費の上記低減をすでに開始することができ、従って送電網を安定化させるのに役立つ。
【0035】
CO2回収システムの異なる制御方法が可能である。一実施例は、CO2回収システムの異なる構成設備の開ループ制御である。これは特に、異なる構成設備のON/OFF制御のみを使用する場合に適している。
【0036】
また開ループ制御は、CO2回収システムの連続的な電力消費制御、つまり、異なる構成設備のON/OFFの切り替えによる電力出力における急な段階のない制御を実現する、より高度な運転処理にも考えられる。この実施例では、CO2回収システムの連続的な電力消費制御は、一度に1つの構成設備の電力消費を変化させることによって実現され、一方、残りの構成設備は、一定の負荷で動作する。しかしながら、閉ループ制御は、例えば、過渡的な運転もしくは変動する境界条件下での運転で有利であることがある。
【0037】
異なる構成設備の低減容量での運転が予測される場合、閉ループ制御は、負荷分布のさらなる最適化を可能にする。これは特に、CO2回収率の制御を実行する場合、有利であるである。この場合、CO2回収システムの電力消費は、一度に1つの構成設備を制御することによっては変化せず、一方、残りの構成設備は、一定の負荷で動作する。異なる構成設備の容量の低下は、協調させねばならない。このため、各構成設備の現在の動作条件のフィードバックは有利であり、閉ループ制御が好ましい。
【0038】
本発明の別の課題は、CO2回収システムによるカーボンベースの燃料を燃焼させるための火力発電プラントであり、このプラントは上記の周波数応答方法に従った運転のために設計されている。相応したCO2回収システムにより高速のシステム負荷軽減(deloading)が可能になっている。
【0039】
本発明の一実施例は、カーボンベースの燃料を燃焼させている発電プラントであり、この発電プラントは少なくとも一つの煙道ガス流を有している。本発明による発電プラントは、電力発生に関して知られている従来の設備に加えて、煙道ガス流からCO2を除去するためのCO2回収ユニットとCO2圧縮ユニットを備えている。CO2回収ユニットは、煙道ガス流からCO2を除去する回収設備、CO2を吸収剤から取除くための再生ユニット、吸収剤あるいは煙道ガスからのCO2を結合するための他の手段、そして搬送に関してCO2の状態を調節するための処理システムを備えているのが一般的である。圧縮ユニットはCO2を圧縮するための少なくとも一つの圧縮機から成る。さらに圧縮ユニットは、圧縮時および/または圧縮後、圧縮されたCO2を再冷却するための少なくとも一つの冷却装置あるいは熱交換器から成っているのが一般的である。
【0040】
提案された運転構想により運転を可能にするために、発電プラントの蒸気タービンは、最大蒸気流を、CO2回収ユニットのスイッチを切った状態で発電プラントにより生産されるエネルギーに転換するように設計されている。
【0041】
別の実施例において、発電機と電気システムはCO2回収ユニットのスイッチを切った状態で生産される最大パワーを電力に転換し、この電力を送電網に送るように設計されている。
【0042】
このような発電プラントを上記のように運転するのを容易にするために、発電プラントはさらにCO2圧縮機のバイパスを備えていてもよく、このバイパスはCO2を安全に出すことができ、例えばCO2回収ユニットの煙道ガススタック下流部に案内する。
【0043】
別の実施例において、CO2回収ユニット、例えば吸収ユニットは運転中ではない場合にでも煙道ガスに耐性があるように設計されている。
【0044】
代替えとして、CO2回収ユニットのバイパスを見越してもよく、このバイパスによりCO2回収ユニットとは独立した発電プラントを運転することができる。さらにこのバイパスは発電プラントの操業を始めたり、あるいは停止したりするのに有利なだけでなく、CO2回収システムのメンテナンス時の発電プラントの運転にも有利である。
【0045】
他の実施例において、一定の期間CO2吸収材を供給するために採寸された貯留タンクが設けられており、この貯留タンクによりCO2の圧縮と再吸収が周波数が不足している間に止まった場合にでも連続的なCO2の回収が可能となる。
【0046】
CO2回収システムが複雑なシステムであると、上記の様々な制御方法に関して論議されるような適切な制御システムが要求される。この制御システムは発電プラントの電力制御に依存しているかあるいは影響を与えている。電力制御は発電プラント制御システムの真髄の部分なので、CO2回収システムの制御を発電プラント制御システムに集約するか、あるいは発電プラント制御システムによりCO2回収システムの制御を調整し、かつ関連があるデータラインをすべて発電プラント制御システムに接続することが長所である。発電プラントが幾つかのユニットから成り、発電プラント制御システムが発電プラント制御装置とユニットマスタ制御装置から成る階層制の構造を有していると、このようにCO2回収システムの制御を各ユニットのマスタ制御装置に統合するかあるいは一元化することが有利である。
【0047】
代替えとして、CO2回収システムは、それ専用の制御装置を有し、制御装置は直接のデータリンクを介してプラント制御システムに接続されている。プラント制御システムもしくはユニットの主制御装置は、少なくとも1つの信号をCO2回収プラントの制御装置に送信せねばならない。この信号は、例えば、指令された電力消費信号であるか、もしくは指令された回収率であってもよい。
【0048】
上記の場合では、CO2回収制御装置は、必ずしも1つのハードウェア装置ではなく、1つ以上の制御装置によって協調させる駆動装置とグループ制御装置に分散化することが出来る。
【0049】
CO2回収システムの制御を発電プラント制御システムによって協調させる場合、高レベルな制御装置は、例えば、指令された質量流量の合計をCO2圧縮ユニットのグループ制御装置に送信することが出来、実際の質量流量の合計を、このグループ制御装置からの入力として受信することが出来る。この実施例における圧縮ユニットは、数列の圧縮機を含む。圧縮機の各列は、それ専用の装置制御装置を有する。グループ制御装置は、異なる圧縮機列における指令されたCO2圧縮質量流量の合計のもっと良い分布方法を決定するアルゴリズムを有し、指令された質量流量を圧縮機各列の装置制御装置に送信する。代わりに、グループ制御装置は、圧縮機各列の実際のCO2圧縮質量流量を取得する。圧縮機各列の装置制御装置は、より低いレベルで従属する制御装置で再び作動することが出来る。
【0050】
同種の階層を、CO2回収システムの全ての構成設備の制御に適用することが出来る。
【0051】
本発明、本発明の本質ならびに長所を、添付した図を利用して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】CO2の回収および圧縮を用いた発電プラントの概略図である。
図2周波数が不足している際の応答がなされる間の、CO2の回収および圧縮のための柔軟な運転方法による発電プラントのための電力出力変動を概略的に示した図である。
図3】発電プラントの総出力の補正と組合せた状態の、周波数が不足している際の応答がなされる間の、CO2の回収および圧縮のための柔軟な運転方法による発電プラントのための電力出力変動を概略的に示した図である。
図4送電網のさらなる正味電力要求値がCO2の回収及び圧縮システムの中断(trip)により満たされた、CO2の回収および圧縮のための柔軟な運転方法による発電プラントのための電力出力変動を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0053】
提案された方法を実行するための発電プラントは、主としてCO2の回収ユニット2とCO2の圧縮ユニット9を加えた従来発電プラント1から成る。
【0054】
燃焼後回収における代表的な配置を、図1に示す。発電プラント1には、空気3及び燃料4が供給される。その主出力は、プラント総電力A及び煙道ガス15である。さらに、蒸気をプラント1から抽出し、蒸気管路13及び蒸気制御弁14を介してCO2回収ユニット2に供給する。蒸気は、低下した温度で、もしくは凝縮物として、戻り管路6を介してプラント1へ戻され、そこで蒸気サイクルへ再導入される。CO2回収ユニット2は一般に、CO2を煙道ガスから吸収剤によって除去するCO2吸収ユニット、及びCO2を吸収剤から放出する再生ユニットから成る。煙道ガスの温度及びCO2吸収ユニットの運転温度範囲によっては、煙道ガス冷却器が必要な場合もある。
【0055】
CO2を除去された煙道ガス16は、CO2回収ユニットからスタックへ放出される。CO2回収ユニット2が動作していない場合、煙道ガスバイパス11を介してバイパスさせることが出来る。
【0056】
通常の運転では、回収したCO2は、CO2圧縮機9内で圧縮され、圧縮されたCO2 10は、貯留するため、もしくはさらに処理を行うため先に送られる。
【0057】
CO2回収ユニット2の補助設備を駆動するために電力7が必要であり、CO2圧縮機9を駆動するために電力8を使用する。従って、送電網Dへの正味電力出力は、プラント補助設備17用の電力によって減少し、CO2圧縮ユニット8用の電力によって減少し、またCO2回収ユニット7用の電力によって減少した総プラント出力Aである。
【0058】
また、発電プラントの制御によってCO2回収及び圧縮に必要な追加の構成設備の制御を統合した、対応する制御システム18を図1に示す。制御システム18は、発電プラント1との少なくとも一本の必要な制御信号22線を有し、CO2圧縮ユニット9との少なくとも一本の制御信号線を有する。さらに、煙道ガスバイパス11を含むCO2回収ユニット2との少なくとも一本の制御信号線19を表示する。回収ユニット2が吸収もしくは吸着を基本原理としている場合、再生ユニットはシステムの一部であり、対応して、再生ユニットへの少なくとも1つの信号線20を必要とする。また回収ユニット2が、吸着剤/吸収剤21用の少なくとも1つの貯留タンクを含む場合、貯留システムへの制御信号線を必要とする。蒸気13を再生に使用する図示の実施例では、蒸気制御弁14を、制御信号線24を介して制御する。この制御線は、回収ユニット2の一部である再吸収ユニットに接続されているか、もしくは制御システム18に直接接続されている。
【0059】
正味電力Dの制御は二つの例を使用しながら説明される。正味電力Dの増加は、構成部分がすべてフル運転する運転点から始まる周波数応答のために必要とされる。
【0060】
単純なアプローチでは、まず、CO2圧縮機ユニット9の電力消費を制御して低下させることによって、正味出力(D)を増大させる。圧縮機ユニット9の電力消費電力消費が低下すると、CO2再生ユニット2から放出されるCO2の量が一定となる。結果的に、CO2流の一部は、CO2圧縮ユニットバイパス12を通ってCO2圧縮機ユニット9をバイパスさせねばならない。一度CO2圧縮機ユニット9が完全にオフにされると、CO2再生ユニットの電力消費が低下するよう制御することによって、正味出力Dが増大する。最終的には、CO2再生ユニットが完全にオフにされた場合、CO2吸収ユニット及び、該当する場合は、煙道ガス冷却器の電力消費を低下するよう制御することで、正味出力Dが増大する。CO2吸収ユニット2が空になるように設計されていない場合、つまり、吸収剤を流し、及び/もしくは煙道ガスの冷却を追加で行わないと、CO2吸収ユニットを煙道ガス15に暴露することが出来ない場合、CO2回収ユニット2用の煙道ガスバイパス11は、吸収ユニットに利用可能な電力の機能として開くようになっていなければならない。
【0061】
より高度なアプローチでは、CO2回収ユニット2及び圧縮ユニット9の全ての構成設備の電力消費が低下するよう制御し協調させることによって、正味出力Dを増大させる。目的は、電力消費が低下した状態でのCO2回収率を最大にすることである。この目的のため、全ての構成設備の容量を同時に同じ率で低下させ、全ての構成設備を通るCO2流は同じにする。そのため、電力消費は回収率の関数として変化する。異なる構成設備の流量が確実に一致するようにするため、これらの構成設備からのフィードバックが必要であり、閉ループ制御は有利である。非常に低い回収率では、また、CO2吸収ユニット2が空になるように設計されていない場合、例えば、吸収剤を流し、及び/もしくは煙道ガスの冷却を追加で行わないと、CO2吸収ユニットを煙道ガス15に暴露することが出来ない場合、CO2回収ユニット11用の煙道ガスバイパスは、吸収ユニット2に利用可能な電力の機能として開かねばならない。
【0062】
発電プラントの電力出力に関するCO2の回収システムの主要電力消費設備の影響が図2および4に示してある。さらに発電プラントの補助設備の電力消費の影響はそれ自体これらの図に示されている。
【0063】
図2には、CO2の回収および圧縮を用いた発電プラントの最適化された運転方法による、周波数が不足していることに関する事例が長い時間をかけて示してある。時間T=0秒において、発電プラントはCO2の回収および圧縮システムが運転中の状態にあるベースロードで通常の運転中である。電力プラントの新しい電力出力Dに関するCO2の回収システムのプラント補助設備と主たる電力消費設備の影響は、発電プラントの異なる段階での相対出力Pを表示することにより示してある。この図で示した電力出力は全て、再吸収のための抽気を伴うベース負荷におけるプラントの総電力出力Aにより正常化されている。A’は再吸収のための抽気が無い総電力出力である。Bはプラント補助設備により低減した総電力出力である。CはBがCO2の圧縮によりさらに低減した後の総電力出力である。DはCが電力消費により低減した後の結果として生じたプラントの正味電力出力である。正常化された送電網の周波数Fは定格の送電網の周波数により正常化された周波数であり、一般的に50Hあるいは60Hである。
【0064】
提案された運転方法によれば、BからCおよびCからDへの電力低減、ならびにAからA’への総電力の増大は、周波数が不足している間の正味電力出力を制御するために使用される。この事例において、正味電力Dは、20から30秒までの期間の間に正常化された送電網の周波数Fが100から99.8%に落ちる時に一定に保たれる。なぜなら制御装置が設計の周波数からの逸脱に対して反応しない0.2%の不感帯域を有しているからである。周波数がT=35秒で99.3%に落ち続けると、周波数応答は活発になり、正味電力出力DはT=30秒とT=35秒の間でCO2の圧縮の制御された運転停止により増大する。正常化された送電網の周波数FがT=35秒とT=40秒の間で98%まで落ち続けると、CO2再生はさらに停止され、蒸気はそれ以上再吸収のために抽出されない。従って、総電力はAからA’まで増大し、正味電力出力Dはそれに応じて落ちる。正味電力出力Dを増大させるための最終工程において、CO2の吸収はT=40秒とT=45秒の間で停止され、周波数Fは97.5%で安定する。
【0065】
図3において、CO2の回収および圧縮を用いた発電プラントの最適化された運転方法による周波数が不足している間を時間外で示した。T=0秒の際に、発電プラントは運転にあたりCO2の回収および圧縮によるベース負荷で正常運転状態にある。
【0066】
この事例において、正常化された送電網の周波数FはT=20秒とT=30秒の期間の間で100%から99.8%に落ちる。0.2%の不感帯域のために、30秒までは何の制御動作も起こらない。周波数がT=30秒とT=35秒の間に99.3%まで落ち続けると、正味電力出力Dは周波数応答として、CO2の圧縮の制御された停止により増大する。正常化された送電網の周波数FはT=35秒とT=40秒の間に97.8%まで落ち続けるので、CO2再生はさらに停止され、蒸気はそれ以上再吸収のために抽出されない。従って、総電力はAからA’まで増大し、正味電力出力Dはそれに応じて落ちる。T=40秒とT=45秒の間で正常化された送電網の周波数Fは98%まで回復し、正味電力Dは総電力A’の低減により減り、周波数が不足していることに相当している送電網の正味電力要求を満たす。同時に正常化された送電網の周波数Fは98%で安定する。
【0067】
図4周波数が不足している際の応答がなされる間のCO2の回収および圧縮のための柔軟な運転方法による発電プラントの電力出力のばらつきのための第三の事例を示している。この事例において、送電網の別の正味電力要求がCO2の回収および圧縮システムの構成設備の突然の停止により満たされる。
【0068】
さらに、T=0秒で、発電プラントは運転にあたりCO2の回収および圧縮によるベース負荷で正常運転状態にある。正味プラント電力出力Dに関するCO2の回収および圧縮システムの補助設備と主たる消費設備の影響は、発電プラントの様々な工程において相対出力Prを知らせることにより示してある。この図で示した電力出力はすべて、再吸収のための抽気によるベース負荷においてプラント総電力出力Aにより正常化されている。A’は再吸収のための抽気が無い総電力出力である。Bはプラント補助設備により低減した総電力出力である。CはBがCO2の圧縮によりさらに低減した後の総電力出力である。DはCが電力消費により低減した後の結果として生じたプラントの正味電力出力である。
【0069】
0.2%の不感帯域を呈していて、正味出力Dが正常化された送電網の周波数として一定であると、FはT=20秒とT=30秒の期間の間で100から99.8%まで落ちる。周波数の逸脱が0.2%を一度超えると、周波数応答は活発になり、正味出力DはT=30秒でCO2の圧縮の突然の停止あるいは中断により増大する。それ以上の制御動作は全く起こらないが、周波数FはT=35秒で99%まで落ち続ける。正常化された送電網の周波数Fが99%まで落ち続けると、CO2の再生はさらに中断(trip)され、蒸気はそれ以上再吸収のために抽出されない。従って、総電力はAからA’まで増大し、正味電力出力Dはそれに応じて増大する。それ以上の制御動作は何も起こらないが、周波数FはT=35秒とT=40秒の間で98%まで落ち続ける。正味電力出力Dを増大させるための最終工程において、正味周波数が一度T=40秒で98%まで落ちると、CO2の吸収は中断される。さらに正味周波数FGは安定すると97.5%に落ちる。
【0070】
先に記載されかつ図に示した好適な実施例は、当業者に対しては、好適実施例とは異なっていてかつ本発明の範囲内に含まれている実施例を開示している。
【0071】
低温のCO2を分離する場合に、あるいは上昇した圧力レベルでの吸収の場合に使用されるような、煙道ガスを再圧縮するために使用される電力を、電力に関する高い要求がある時間に節約するかあるいは低減することができる。もしくは冷却アンモニアを用いてCO2を分離する場合に、周波数が不足している間に冷却電力を節約するかあるいは低減することができる。さらに方法およびCO2の圧縮が無い相当する発電プラントも想到可能である。
【0072】
ここで与えられた事例において、送電網の周波数の低下と制御動作の間の時間差を示してある。測定速度、信号の伝送速度および制御装置の速度次第で、秒のオーダー内にある著しい時間の遅延がありえる。
【0073】
さらにガスタービンベースの発電プラントにおいて、あるいは組合せた発電プラントにおいて、対策が全くとられていないと、周波数が不足していることにより、ガスタービンの総電力出力が減ってしまうことになる。一般的に設計温度を超えた高いガス温度の上昇である過大加熱は、ガスタービン内の周波数応答のために行なわれる。周波数応答のための標準的な対策は、CO2の回収および圧縮を用いた発電プラントのために記載された特徴と組合せることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 発電プラント
2 CO2の回収ユニット
3 空気
4 燃料
6 戻り管
7 CO2の回収ユニットのための電力
8 CO2の圧縮ユニットのための電力
9 CO2の圧縮
10 圧縮されたCO2
11 CO2の回収ユニットのための煙道ガスバイパス
12 CO2の圧縮ユニットバイパス
13 CO2の回収ユニットへの蒸気
14 蒸気制御弁
15 CO2の回収ユニットへの煙道ガス
16 CO2を除去された煙道ガス
17 CO2の回収および圧縮は除外した、発電プラントの補助設備のための電力
18 制御システム
19 CO2の回収ユニットおよび煙道ガスバイパスとの制御信号交換
20 再生ユニットとの制御信号交換(該当する場合)
21 吸収剤/吸着剤貯留システムとの制御信号交換(該当する場合)
22 総電力及び正味電力を含むCO2回収を行わない従来の発電プラントに関する発電プラント制御信号の交換
23 CO2圧縮ユニット及び圧縮機バイパスとの制御信号交換
24 制御システムから直接来る、もしくは再生ユニットを介して来る蒸気制御弁への制御信号の交換(該当の場合)
A CO2再吸収用の蒸気抽気を伴うプラントの総電力出力
A’ CO2再吸収用の蒸気抽気を伴うプラントの総電力出力
B CO2回収及び圧縮がなしでプラント補助設備によって低減されたA
送電網の電力需要によって変化する、CO2圧縮用の所要電力によって低減されたB。
D CO2回収プラントの正味電力出力(送電網の電力需要によって変化する、吸収用の所要電力によって低減されたC)
FG 正常化された送電網の周波数
図1
図2
図3
図4