【文献】
日本光電工業株式会社,取扱説明書 CardiofaxV 心電計 ECG−1500シリーズ,日本,日本光電工業株式会社,2009年 6月 5日,初版,5-1-7,5-1-21〜5-1-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態における心電図解析装置の外観斜視図、
図2は、その心電図解析装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0013】
心電図解析装置1は、図示のように、装置全体の制御を司るCPU101、ブートプログラムやBIOSを記憶しているROM102、主記憶装置として機能するRAM103をはじめ、以下の構成を備える。
【0014】
HDD104はハードディスク装置であって、ここに本発明に係る制御処理を実行するための制御プログラムや後述する心電図データが格納される。もっとも、制御プログラムはROM102に格納される構成であってもよい。HDD104に対するデータの読み書きはHDDコントローラ104aを介して行われる。
【0015】
105は操作パネルである。106は表示部を構成する液晶ディスプレイ(LCD)であり、このLCD106上にタッチパネル107が配置されている。LCD106への画像表示はLCDコントローラ106aを介して行われ、タッチパネル107に対する操作の検出を含む制御はタッチパネルコントローラ107aを介して行われる。したがって、ユーザは操作パネル105又はタッチパネル107を用いて各種指示を入力することができる。
【0016】
108はサーマルプリンタであり、内蔵の印刷用紙に心電図波形、解析レポート等を印刷出力する。サーマルプリンタ108の制御はプリンタコントローラ108aを介して行われる。
【0017】
109はメモリカード109aを着脱自在に収容するメモリカードスロットである。メモリカードスロット109にメモリカード109aが接続されているときは、心電図データ、解析によって得られた所見データ等をメモリカード109aに記憶することが可能である。
【0018】
また、この心電
図1には、例えば標準12誘導の測定を行うために被検者の胸部や四肢に装着される複数の電極111が、誘導インタフェース(I/F)110を介して接続される。誘導I/F110は、電極群111から入力された電気信号をデジタルデータに変換するA/D変換器を含む。
【0019】
本実施形態における心電図解析装置1は概ね以上のような構成である。なお、本実施形態の心電図解析装置1は、
図1に示されるようなラップトップ型の専用機として実現されているが、例えばパーソナルコンピュータによっても実現可能である。
【0020】
次に、本実施形態における心電図解析装置1の処理動作について説明する。
【0021】
本実施形態の心電図解析装置1は、例えば直近の過去10分間の心電図データをバッファとしてのHDD104(あるいはRAM103)に一時保存、すなわちバッファリングすることができる。心電図解析装置1は、タッチパネル107や操作パネル105を介したユーザ指示に従い、バッファリングされた心電図データを呼び出し最表示したり、呼び出したデータを解析しレポートを作成することが可能である。
【0022】
図3に本実施形態の心電図解析装置1の全体的な動作の流れを示したフローチャートを示す。このフローチャートに対応する制御プログラムは例えばHDD104に記憶されており、心電図解析装置起動後、RAM103にロードされて、CPU101によって実行される。なお、ここでは具体的に説明しないが、事前にこれから測定を行う被検者に関する情報(ID、年齢、性別など)が設定済みであるものとする。また、その他心電図解析装置の動作設定も必要に応じてなされているものとする。
【0023】
まず、被検者に取り付けた電極111からの電気信号が誘導I/F110に入力され、ここで心電図データが取得される(ステップS201)。取得された心電図データは心電図データは直ちにリアルタイム波形としてLCD106に表示される(ステップS202)。
図4は、本実施形態の心電図解析装置におけるリアルタイム画面表示の例を示す図である。リアルタイム画面には、検査の状態、リアルタイム心電図波形、被検者の情報、心電図解析装置の状態等が表示される。
【0024】
検査モード表示部31には、現在表示されている検査モードが表示される。タイマ表示部32には通常、現在の時刻が表示される。運動負荷中は、タイマとして残り時間や経過時間が表示される。被検者情報表示部33には、被検者IDや性別、年齢等の被検者情報が表示される。
【0025】
波形表示部34には、現在検出されている心電図波形が表示される。この波形表示はリアルタイム表示であってもよい。ここで表示される波形は、設定により変更可能である。
図4の例では、標準12誘導の各波形と、予めリズム波形として選択された1つの誘導波形(ここではII誘導波形)が表示されている。
【0026】
心拍数表示部35には、心拍数が表示される。機器状態表示部36には、心電図解析装置1の状態に関する各種情報が表示される。本実施形態では、アイコン表示と文字表示とによって心電図解析装置の状態が表示される。表示される状態としては、電極はずれ、バッテリ駆動時にはバッテリの状態(残量)、プリンタ状態、記録紙状態(記録紙切れ、紙詰まり等)、メモリカード状態等がある。
【0027】
ファンクションキー表示部37には、現在表示中の画面で利用可能な機能のファンクションキーが表示される。アイコン部分をタッチすると、そのタッチがタッチパネル107で検出され、そのタッチされたアイコン部分に対応する機能が実行されることになる。
【0028】
図3に戻って、ステップS203で、バッファリング処理を開始する。バッファリング処理は、バッファとしてのHDD104に心電図データを書き込む処理であり、例えば四肢電極からそれぞれ所定値以上の電圧が検出された時点で開始される。バッファリング処理は、ユーザの指示とは無関係に、自動的に開始、継続される。
【0029】
ステップS205では、操作パネル105又はタッチパネル107を通じてユーザから自動解析記録の実行指示があったかどうかを検出する。自動解析記録の指示があった場合、ステップS207で自動解析記録処理を行う。ここでは、自動解析記録の指示があった時点から所定時間分の心電図データをバッファから読み出し、その読み出したデータに対して解析処理を実行する。なお、解析処理の内容は、波形の異常、R−R間隔の異常、ST上昇等といった予め定められた異常状態の有無を検出しその結果に応じて想定される疾患を判定する公知の処理であってよい。解析結果から所定のフォーマットのレポートが作成され、サーマルプリンタ108から印刷出力される。なお、レポートは、LCD106に表示させることもでき、被検者情報と関連付けてメモリカード109aやHDD104に保存することもできる。
ステップS205で自動解析記録の実行指示がなければステップS209へ進む。
【0030】
ステップS209では、タッチパネル107(
図4の「フリーズ」ファンクションキーの押下)を通じてユーザからフリーズ指示があったかどうかを検出する。フリーズの指示があった場合、ステップS211で、後述するフリーズ処理を行い、フリーズ解除指示により再度リアルタイム画面表示に復帰する(ステップS213)。ステップS209でフリーズ指示がなければ、ステップS215へ進む。
【0031】
ステップS215では、操作パネル105を介してユーザから終了指示の検出を行う。終了指示がなければ、処理はステップS205に戻って継続される。終了指示があれば、本処理を終了する。
【0032】
次に、
図5に示すフローチャートを用いて、
図2のステップS211で行われるフリーズ処理に係る表示制御について説明する。本明細書において、「フリーズ」とは、通常はリアルタイム表示され波形が左から右へと流れるように表示されているところ、この波形の流れを止めて表示することをいう。これは、画面上で波形を観察していて例えば不整脈が現れた場合に、その心電図を印刷したりよく観察したりするために行われるもので、
図4のリアルタイム画面表示において、ファンクションキー表示部37の「フリーズ」キーが押下されると、そのキーが押下された時刻までの所定時間長の波形をバッファから取り込んで表示することで実現される。以下その処理を具体的に説明する。
【0033】
まず、ステップS501において、ファンクションキー表示部37の「フリーズ」キーが押下された時刻までの所定時間長の心電図データをバッファから読み出す。そして、ステップS502で、読み出したデータに基づいてバッファイメージを作成する。バッファイメージとは、例えば、RAM103又はHDD104に設けられるバッファの使用状況が直感的に把握できるよう、バッファ領域の大きさを模した描画領域を、バッファ中の心電図データが存在する部分と存在しない部分とで視覚的に異ならせて描画したものである。
【0034】
次に、ステップS503で、フリーズ画面表示を行う。
図6は、本実施形態の心電図解析装置におけるフリーズ画面表示の例を示す図であり、
図4のリアルタイム画面表示と同等の内容が表示される領域には同じ参照数字を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
波形表示部94には、予め設定された誘導波形(
図6ではI、II、III、aVR、aVL、aVFの6チャンネルの誘導波形)が表示される。
図4ではリアルタイムで表示波形が変化するのに対し、フリーズ画面ではユーザが表示範囲を変更しない限り固定区間の表示がなされる点が異なる。初期の表示区間は任意に設定可能であるが、ここではフリーズ指示の入力時から直近の所定区間とする。
【0036】
波形表示部94の最下部には、水平な直線である波形記録範囲マーク92が示される。波形記録範囲マーク92は、フリーズ状態で自動解析記録が指示された際に、プリンタ又はファイルへ記録される波形の範囲(すなわち、自動解析区間)を表している。
図6の例では、波形表示部94に表示されている波形は10秒間であり、全区間自動記録範囲である場合を示すため、波形記録範囲マーク92は画面の左端から右端まで全区間に示されている。設定及び入力部108の操作により、記録範囲や区間を変更した場合、マークの長さや表示位置も対応して変更される。
【0037】
波形表示部94の下には、フリーズ圧縮波形部91が設けられる。ここでは、予め設定されたリズム誘導波形(本実施形態ではII誘導波形)の圧縮波形を表示する。フリーズ圧縮波形部91では、波形表示部94よりも長い期間の波形を時間軸方向に圧縮して表示するとともに、波形表示部94で表示されている区間と、自動解析記録時の記録範囲を表示するように構成されている。
【0038】
フリーズ圧縮波形部91の右端には、ステップS503で生成したバッファイメージ93が表示される。上述したとおり、バッファイメージ93は、RAM103又はHDD104に設けられるバッファ領域の大きさを模した描画領域を、バッファ中の心電図データが存在する部分と存在しない部分とで視覚的に異ならせて描画したものとすることができる。これにより、バッファの使用状況が直感的に把握可能となる。
【0039】
リアルタイムリズム波形表示部95は、
図4における波形表示部34の最下段と同様、予めリズム波形として選択された1つの誘導波形(ここではII誘導波形)をリアルタイム表示する。従って、ユーザは、フリーズデータによる作業を行いながらも、リアルタイムに計測されている心電図波形を確認することができ、必要な場合には直ちにフリーズを解除することが可能である。
【0040】
上述のバッファイメージ93は、表示切替ボタンを兼ねている。例えば、
図6に示した6chの波形のフリーズ画面において、バッファイメージ93をタップすると、
図7に示すように、バッファリングされているリズム波形を波形表示部94に表示する。
図7において、リズム波形は、例えば1行当たり20秒で表示されている。もう一度バッファイメージ93をタップすると、
図6の6chの波形表示に戻ることができる。このようにして、バッファイメージ93をタップすることでフリーズ波形表示を切り替えることができる。
【0041】
図7において、表示されたリズム波形のうち枠線71で囲まれた区間が、ステップS509で実行される自動解析記録処理の対象範囲となる。表示されているリズム波形のうちユーザが所望する位置をタップすることで自動解析記録範囲を移動させることができる。また、「解析範囲」キー72をタップすれば、枠線71の区間長を任意に変更することが可能である。この場合、ユーザは、表示されたリズム波形のうちステップS513の解析記録処理の対象範囲の開始位置及び終了位置をそれぞれタップする。このように、ユーザは解析記録処理の対象とする区間を任意に選択することができる。選択された区間を解析記録処理する場合、解析は表示され選択された区間のリズム波形のみを解析するのではなく、他の表示されていない誘導の波形を含めて解析記録処理が行われる。つまり表示対象の波形と解析記録対象の波形が同一とはならない。
【0042】
さて、従来の心電図解析装置においては、
図7のようなリズム波形のフリーズ表示のうち、枠線71で示される解析記録範囲として選択された特定の区間について、他の誘導の波形がどのようになっているのかを容易に確認する手段が存在しなかった。そのため、その選択された区間において、例えば、他の誘導の電極が正しく装着されているかの確認を一目で行うことができなかった。
なお、「正しく装着」とは、正しい状態(例えば、外れたり外れかかったりしていないとか、ノイズが混入していないような状態)や正しい箇所(例えば、右腕と左腕を逆にしていない)で装着していることをいう。正しく装着されていることの確認ができないまま解析記録処理を実行させると、他の誘導の電極が正しく装着されていない場合は、当然正しい解析結果が得られない。すなわち、誤った解析結果を導き出したり、解析そのものが不能となったりする。これにより、再度解析範囲を設定したり、被検者から心電図データを取得しなおさなければならなくなる。また、この解析結果のみを保存し、解析の対象となった波形全てを保存しなかった場合は、この解析結果が正しいものなのかどうか検証することもできなくなり、解析結果の信頼性が疑われることとなる。
【0043】
そこで、本実施形態では、
図7に示すように、例えば「12誘導表示」キー73を設け、これがタップされたことに応答して(ステップS504)、当該選択された区間における12誘導全ての波形のフリーズ表示が行われる(ステップS505)。
図8に、選択された区間における12誘導全ての波形のフリーズ表示の例を示す。本実施形態では、図示のように、選択された区間における12誘導全ての波形のフリーズ表示は、
図7に示したリズム波形フリーズ画面に重畳してポップアップする別ウィンドウにて表示される。このような選択された区間における12誘導全ての波形のフリーズ表示のウィンドウが、ワンタッチで表示されることが特徴である。これにより、その選択された区間において、例えば、他の誘導の電極が正しく装着されているかの確認を容易に行うことが可能となる。したがって、以下に説明するように、このあと、選択された区間について解析記録処理を実行することができるが、例えば他の誘導の電極が正しく装着されていないにもかかわらず解析記録処理を実行してしまうというミスを防止することができる。
そのような確認を終えた後は、消去キー82をタップすることでこのウィンドウを消去することができる。
【0044】
ステップS507では、解析記録指示がなされたかどうかをチェックする。解析記録指示があった場合には、フリーズ画面上で選択された所定長の区間(手動指定された区間又はデフォルトで設定された区間)を対象として解析記録処理を実行する(ステップS509)。解析結果は、サーマルプリンタ108に印刷出力することもできるし、電子データとしてメモリカード109aへ保存することもできる。また、その両方とも行うことも可能である。解析記録処理が終了したら、ステップS511へ進む。ステップS507で解析記録指示が検出できなければ、直接ステップS511へ進む。
【0045】
ステップS511では、フリーズ解除指示の有無を確認する。具体的には、フリーズ画面のファンクションキー表示部37に含まれるフリーズ解除キーが押下されたかどうかを検出する。フリーズ解除指示がなされた場合には、このフリーズ処理を抜け、
図3のステップS213へ進み、リアルタイム画面表示に戻る。
【0046】
フリーズ解除指示が無ければ、手動による記録範囲や解析対象区間の変更、表示区間の変更など、フリーズ画面の更新が必要な操作がなされたかどうかを確認する(ステップS513)。フリーズ画面の更新が必要な操作がなされた場合には、ステップS501に戻り、バッファデータの読み出しやバッファイメージの更新等を行い、フリーズ画面の更新を行う。フリーズ画面の更新が必要な操作がなされていない場合には、ステップS504へ戻る。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、フリーズ波形表示画面において、複数の誘導のうちの1つについてのフリーズ表示がされているときに所定の1つのキー(例えば、「12誘導表示」キー73)にタッチされたことに応答して、そのフリーズ表示のうちの選択された区間に対応する、他の誘導の全てについての波形がフリーズ表示される。これにより、その選択された区間において、例えば、他の誘導の電極が正しく装着されているかの確認を一目で行うことが可能となり、例えば他の誘導の電極が正しく装着されていないにもかかわらず解析記録処理を実行してしまうというミスを防止することができる。
【0048】
上述の実施形態において波形表示部34上の波形表示はリアルタイム波形表示としたが、リアルタイム表示に限らない。ホルタ心電計のように取得した心電図波形を記憶媒体に記憶させ、パーソナルコンピュータまたは専用の解析装置にて解析を行う場合のように、被検者に取り付けた複数の誘導の電極を介して得られた電気信号に基づいた心電図データを外部機器から取得し、この心電図データに基づき心電図波形を表示し解析する心電図解析装置にも本発明を適用できる。
また、波形表示部34上の波形表示は1つだけとは限らず、複数の誘導波形(例えば四肢誘導等)を表示して解析対象区間を設定するようにしてもよい。
また、表示または解析する誘導波形は、実際の電極から得た誘導波形以外に、複数の電極から実測した生体電気信号を基に計算により求めた合成誘導波形を用いてもよい。
また、本実施形態によれば、他の誘導の電極が正しく装着されているかの確認を行うため12誘導表示を行っているが、これに限らず、少なくとも実際に解析に使用される誘導が表示されればよい。
さらに、「12誘導表示」キー73にタッチすることにより12誘導を表示しているが、これ以外のキーに、例えば「解析」キーを押した場合に、解析の実行に先立って解析に必要な他の誘導を含めた波形がポップアップ表示され、解析を実行するかどうかの確認キーを同時に表示してもよい。