(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から6のいずれか1項に記載のポリマーと、1種または複数種の他の添加剤を含んでもよい、前記ポリマーに対して相溶性のある溶媒または担体とを含む、添加剤濃縮物。
燃料油の低温特性を改良するための方法であって、請求項1から6のいずれか1項に記載のポリマー、または請求項9に記載の添加剤濃縮物を燃料油に添加するステップを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
この第2の態様のポリマーを生成するために使用されるモノマーは、硫黄を含有しないため、そのようにして生成されたポリマーもまた、硫黄不含である。
好ましくは、R
2およびR
4は、共にメチルを表す。
好ましくは、R
5およびR
6は、共にエチレン(−CH
2−CH
2−)である。
好ましくは、R
7は、メチルまたはエチル、より好ましくはメチルである。
好ましくは、R
1は、直鎖アルキル基である。好ましい一実施形態において、R
1は、直鎖C
14アルキル基である。別の好ましい実施形態において、R
1は、好ましくはC
12基:C
14基の比が90:10〜10:90、例えば70:30〜30:70、例えば50:50である、直鎖C
12およびC
14アルキル基の混合を含む。さらに別の好ましい実施形態において、R
1は、直鎖C
12アルキル基である。さらに別の好ましい実施形態において、R
1は、好ましくはC
12基:C
15基の比が90:10〜10:90、例えば70:30〜30:70、例えば50:50である、直鎖C
12およびC
15アルキル基の混合を含む。さらに別の好ましい実施形態において、R
1は、直鎖C
18−C
22アルキル基の混合を含む。
好ましくは、nは、1〜20、より好ましくは5〜14の整数である。
好ましくは、本発明のポリマーは、統計コポリマー、より好ましくはランダムコポリマーである。モノマーの反応性比は得られるポリマー構造に影響することが、当業者に認識される。本発明のポリマーを生成するために使用されるモノマー(a)および(b)は、1に近い反応性比を有し、すなわち、モノマーは、コモノマーと反応する場合と同じ程度に、同じ種類の別のモノマーと反応しやすい。統計コポリマーは、重合が、既知の統計的規則、例えばベルヌーイ統計またはマルコフ統計に従う場合に形成される。ポリマー鎖内の任意の特定の点で特定の種類のモノマー残基が発見される確率が、周囲のモノマーの種類と無関係である統計ポリマーは、ランダムコポリマーと呼ぶことができる。統計およびランダムコポリマーは、交互コポリマー、周期コポリマーおよびブロックコポリマー等のより規則的なポリマーの種類から区別され得る。
【0008】
本発明のポリマーを生成するための合成方法は、当業者に知られている。制御ラジカル重合を用いて、ポリマー分子量および多分散性に対する制御が可能であるが、触媒連鎖移動重合(CCTP)技術が1つの好ましい方法である。
従来のフリーラジカル重合は、連鎖移動剤、多くの場合デカンチオール等のチオールを使用する。成長ポリマー基末端は、連鎖移動剤の弱いS−H結合から水素基を抽出し、使用する連鎖移動剤の種類および量を選択することにより、ポリマー増大を停止させることができ、ひいては分子量を制御することができる。この方法の欠点は、連鎖移動剤が、生成されるポリマー中に硫黄残基を残留させ得ることである。ある特定の用途、例えば燃料油において、硫黄含有製品を使用することは望ましくない。硫黄除去が可能であるが、これは経済的に魅力的ではない可能性がある。
「硫黄不含」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明のポリマー中に測定され得る硫黄の量が、残留量以下、例えば500質量パーツパーミリオン(ppm)以下、好ましくは100質量ppm以下、例えば50質量ppm未満であることを意味する。残留硫黄は、例えば連鎖移動剤、触媒または反応溶媒中にその源を有し得る。ポリマーのモノマー単位はいずれも、その構造内に組み込まれた硫黄原子を有さない。上に定義されたようなR
xの種類の置換基は、硫黄を含有しない。
【0009】
CCTPは、チオールよりはるかに効率的な連鎖移動触媒を少量使用することにより、チオールの使用に関連する問題を回避する。好ましい連鎖移動触媒は、コバルト含有錯体コバロキシムまたはCoBFである。この錯体の調製は、例えば、A BakacおよびJ.H Espenson、J.Am.Soc(1984)、106、5197〜5202およびA Bakacら、Inorg.Chem.、(1986)、25、4108〜4114により説明されている。触媒は、酢酸コバルト(II)四水和物、ジメチルグリオキシムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテレートから都合よく調製される。使用中、触媒は、ポリマー鎖端部の基と相互作用し、Co(III)−H錯体および末端オレフィン官能基を有するマクロモノマーを形成する。Co(III)−H錯体は、モノマーへの水素移動、およびそれによってCo(II)触媒錯体を再生することにより、新たなポリマー鎖を再び開始する。触媒:モノマー比の選択により、ポリマー分子量および多分散性に対する制御が可能となる。この技術は、低分子量ポリマーの生成に特に好適である。
好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、触媒連鎖移動重合を用いて調製される。好ましくは、コバロキシムまたはCoBF連鎖移動触媒が使用される。
【0010】
本発明のポリマーを生成するための代替法は、可逆的ヨウ素移動重合(RITP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)および可逆的付加開裂(RAFT)重合を含む。
好ましくは、ポリマーは、ポリスチレン標準を基準としてゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)が、1,000〜15,000の間、
又は1,000〜10,000、より好ましくは2,500〜8,000の間、さらにより好ましくは3,000〜7,000の間、例えば4,000〜6,500の間である。
好ましくは、ポリマーは、ポリスチレン標準を基準としてGPCにより測定される質量平均分子量(Mw)が、2,000〜20,000の間、より好ましくは5,000〜16,000の間、さらにより好ましくは6,000〜14,000の間、例えば5,500〜10,000の間である。
好ましくは、ポリマーは、Mw/Mnの比として定義される多分散性(Pdi)が、1〜5の間、より好ましくは1.2〜2.0の間、さらにより好ましくは1.25〜1.75の間である。
【0011】
第1の実施形態に関して、好ましくは、ポリマー中の構造単位(I):構造単位(II)のモル比は、50:1〜3:1の範囲内である。
第2の実施形態に関して、好ましくは、モノマーは、50:1〜3:1の範囲内のモル比(a):(b)で反応する。
ポリマーは、式(I)および(II)の単位に加えて、さらなる構造単位を含有してもよく、または、モノマー(a)および(b)に追加してモノマーを重合させることにより得ることができるが、好ましくは、ポリマーは、式(I)および(II)の構造単位のみを含有するか、またはモノマー(a)および(b)のみを重合させることにより得ることができる。
好ましい実施形態において、ポリマーは、テトラデシルメタクリレートモノマーを、ポリエチレングリコールメタクリレートモノマーと重合させることにより得ることができ、または得られ、ポリエチレングリコールセグメントは、ポリスチレン標準を基準としてGPCにより測定されるMnが、100〜800、好ましくは350〜600の範囲内である。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコールメタクリレートモノマーに対するテトラデシルメタクリレートモノマーのモル比が50:1〜3:1の範囲であるポリマーである。
【0012】
当技術分野において知られているように、燃料添加剤は、好適な担体流体または溶媒中に1種または複数種の燃料添加剤を含む添加剤濃縮物の形態で、一般に供給される。第3の態様によれば、本発明は、第1または第2の態様によるポリマーと、これに対して相溶性のある溶媒または担体とを含む、添加剤濃縮物を提供する。好適な溶媒および担体流体の例は、当技術分野において知られており、炭化水素溶媒、例えばナフサ、灯油、ディーゼルおよび暖房用オイル、「SOLVESSO」の商品名で販売されているもの等の芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、および他の酸素含有物、ならびにヘキサン、ペンタンおよびイソパラフィン等のパラフィン系炭化水素を含む。担体流体または溶媒は、ポリマーおよび燃料油の両方との相溶性を考慮して選択される。添加剤濃縮物は、好適には、1〜95質量%、好ましくは10〜70質量%、例えば25〜60質量%の溶媒または担体を含み得る。
本発明のポリマーは、直接、または添加剤濃縮物の形態で燃料油に提供され得る。
第4の態様によれば、本発明は、多量の燃料油と、少量の第1もしくは第2の態様によるポリマー、または第3の態様による添加剤濃縮物とを含む燃料油組成物を提供する。
【0013】
燃料油
燃料油は、例えば、石油系燃料油、特に中間留出燃料油であってもよい。そのような留出燃料油は、一般に、110℃〜500℃、例えば150℃〜400℃の範囲内で沸騰する。
本発明は、広範囲沸点留出物、すなわち、ASTM D−86に従い測定される90%〜20%沸点差が50℃以上である留出物を含む、全ての種類の中間留出燃料油に適用可能である。
【0014】
燃料油は、大気圧留出物もしくは真空留出物、分解軽油、または、直留ならびに熱分解および/もしくは触媒分解留出物の任意の割合のブレンドを含み得る。最も一般的な石油留出燃料は、灯油、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房用オイルおよび重質燃料油である。暖房用オイルは、直留大気圧留出物であってもよく、あるいは、真空軽油もしくは分解軽油またはその両方であってもよい。燃料はまた、フィッシャートロプシュプロセスから得られる成分を多量または少量含有してもよい。FT燃料としても知られるフィッシャートロプシュ燃料は、ガス液化燃料、石炭および/またはバイオマス変換燃料と言われる燃料を含む。そのような燃料を作製するために、まず合成ガス(CO+H
2)が生成され、次いでフィッシャートロプシュプロセスにより直鎖パラフィンおよびオレフィンに変換される。次いで、直鎖パラフィンは、接触分解/改質または異性化、水素化分解および水素化異性化等のプロセスにより改質され、イソ−パラフィン、シクロ−パラフィンおよび芳香族化合物等の様々な炭化水素を生成し得る。得られるFT燃料は、それ自体で、または本明細書に記載のもの等の他の燃料成分および燃料タイプと組み合わせて使用され得る。
【0015】
本発明はまた、しばしばバイオ燃料またはバイオディーゼルと呼ばれる、動物または植物材料由来の油から作製される脂肪酸アルキルエステルを含有する燃料油にも適用可能である。バイオ燃料は、燃焼時に環境への損害がより少ないと考えられ、再生可能資源から得られる。燃焼時、同等量の石油留出燃料、例えばディーゼル燃料により形成される二酸化炭素がより少なく、また形成される二酸化硫黄がごく僅かであることが報告されている。
動物または植物材料由来の油の例は、菜種油、コリアンダー油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、アーモンド油、パーム核油、ココナツ油、カラシ油、ジャトロファ油、牛脂および魚油である。さらなる例は、コーン、ジュート、胡麻、シアナッツ、挽いたナッツおよび亜麻仁油から得られる油を含み、また当技術分野において知られる方法によりそれらから得ることができる。グリセロールにより部分エステル化された脂肪酸の混合物である菜種油は、大量に利用可能であり、菜種を圧搾することによる単純な手法で得ることができる。使用済み調理油等のリサイクル油もまた好適である。
脂肪酸のアルキルエステルとして、例えば市販の混合物の形態での、50〜150、特に90〜125のヨウ素価を有する、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸またはエルカ酸の、エチル、プロピル、ブチル、および特にメチルエステルを考慮することができる。特に有利な特性を有する混合物は、主に、すなわち少なくとも50wt%の、16〜22個の炭素原子および1個、2個または3個の二重結合を有する脂肪酸のメチルエステルを含有する混合物である。好ましい脂肪酸のアルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびエルカ酸のメチルエステルである。
上記種類の市販の混合物は、例えば、動物性および植物性油脂の、低級(約C
1−C
6)脂肪族アルコールを用いたエステル交換による開裂およびエステル化によって得られる。脂肪酸のアルキルエステルの生成のために、20%未満の低レベルの飽和酸を含有し、130未満のヨウ素価を有する油脂から開始することが有利である。菜種油、ヒマワリ油、コリアンダー油、ヒマシ油、大豆油、落花生油、綿実油、牛脂等のエステルまたは油のブレンドが好適である。80wt%を超える、18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を有するある特定の種類の菜種油をベースとした脂肪酸のアルキルエステルが、特に好適である。
【0016】
上記油の全てがバイオ燃料として使用され得るが、植物油誘導体が好ましく、そのうち特に好ましいバイオ燃料は、菜種油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油、またはパーム油のアルキルエステル誘導体であり、菜種油メチルエステルが特に好ましい。そのような脂肪酸メチルエステルは、当技術分野においてしばしばFAMEと呼ばれる。
【0017】
本発明は、純粋なバイオ燃料に適用され得る。したがって、一実施形態において、燃料油は、本質的に100質量%の植物源または動物源由来の油、好ましくは本質的に100質量%の脂肪酸アルキルエステル、最も好ましくは脂肪酸メチルエステルを含む。
バイオ燃料は、一般に、石油由来の油と組み合わせて使用される。本発明はまた、バイオ燃料および石油由来燃料の任意の比の混合物に適用され得る。そのような燃料は、しばしばBx燃料と呼ばれ、ここでxは、バイオ燃料−石油ブレンド中のバイオ燃料の質量パーセントを表す。その例には、xが2以上、好ましくは5以上、例えば最大10、25、50、または95である燃料が含まれる。好ましくは、そのようなBx燃料中のバイオ燃料成分は、脂肪酸アルキルエステル、最も好ましくは脂肪酸メチルエステルを含む。
燃料油は、石油由来であるかまたは植物もしくは動物由来であるかを問わず、好ましくは硫黄含量が低い。典型的には、燃料油の硫黄含量は、500ppm(質量パーツパーミリオン)未満である。好ましくは、燃料油の硫黄含量は、100ppm未満、例えば50ppm未満である。硫黄含量がさらに低い、例えば20ppm未満または10ppm未満である燃料油もまた好適である。
燃料油中に存在するポリマーの量は、燃料油の種類および燃料油に必要とされる低温特性に従い変動し得る。好適には、ポリマーは、燃料油の質量を基準として10〜5,000質量ppmの間、好ましくは10〜1,000質量ppmの間、より好ましくは50〜500質量ppmの間の量で燃料油中に存在する。
本発明のポリマーはまた、流動性向上剤または流動点降下剤として、潤滑油中での用途を見出すことができる。
【0018】
第5の態様によれば、本発明は、燃料油の低温特性を改良するための方法であって、第1もしくは第2の態様によるポリマー、または第3の態様による添加剤濃縮物を燃料油に添加するステップを含む方法を提供する。
第6の態様によれば、本発明は、燃料油の低温特性を改良するための、第1もしくは第2の態様によるポリマー、または第3の態様による添加剤濃縮物の使用を提供する。
第5および第6の態様に関して、低温特性の改良とは、寒冷気候の地域で駆動する車両が経験し得るように、低い周囲温度まで冷却された際に燃料油が流動する、ポンピングされるまたはフィルタ媒体を通過する能力を指すことが、当業者に理解される。低温での燃料の操作性を決定するために、低温フィルタ目詰まり点(CFPP)試験および流動点(PP)試験等の試験が、業界において広く使用されている。低温特性の改良は、好ましくは、本発明のポリマーを含有しない燃料油と比較した際の、CFPP試験および流動点試験の一方または両方における改良を含む。
【0019】
さらなる添加剤
燃料油の低温特性を改変し得る他の添加剤が、本発明のポリマーと組み合わされてもよい。好適な材料は、当業者に知られており、流動性向上剤、例えばエチレン不飽和エステルコポリマーおよびターポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニル2−エチルヘキサノエートコポリマーおよびエチレン−ネオデカン酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−ビニル2−エチルヘキサノエートターポリマー、エチレン−酢酸ビニル−ネオノナン酸ビニルターポリマー、エチレン−酢酸ビニル−ネオデカン酸ビニルターポリマー;フマレート−酢酸ビニルコポリマー等のくし型ポリマー;水素化ポリブタジエンコポリマー、エチレン/1−アルケンコポリマーおよび同様のポリマー等の炭化水素ポリマーを含む。また、当技術分野においてワックス沈降防止剤(WASA)として知られる添加剤も好適である。また、EP0857776B1に記載のようなアルキル−フェノールホルムアルデヒド縮合物、またはEP−A−1482024に記載のようなヒドロキシ−ベンゾエートホルムアルデヒド縮合物等の縮合物種も好適である。
【0020】
本発明は、そのような追加的添加物の添加を企図するが、添加率に関するその応用は、当業者に知られている。好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、エチレン不飽和エステルコポリマー、ワックス沈降防止剤、アルキル−フェノールホルムアルデヒド縮合物またはヒドロキシ−ベンゾエートホルムアルデヒド縮合物のうちの1つまたは複数と組み合わされるか、またはそれらと組み合わせて使用される。さらに好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、エチレン不飽和エステルコポリマー、ワックス沈降防止剤、およびアルキル−フェノールホルムアルデヒド縮合物またはヒドロキシ−ベンゾエートホルムアルデヒド縮合物の一方または両方と組み合わされるか、またはそれらと組み合わせて使用される。特に好ましいエチレン不飽和エステルコポリマーは、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−ビニル−2−エチルヘキサノエートターポリマー、エチレン−酢酸ビニル−ネオノナン酸ビニルターポリマー、およびエチレン−酢酸ビニル−ネオデカン酸ビニルターポリマーである。特に好ましいワックス沈降防止剤は、無水フタル酸と、2モル比のジ−水添タロウアミンとの反応により形成されるアミド−アミン塩である。任意の追加的添加剤を別個に第4の態様の燃料油組成物に導入してもよく、または、本発明のポリマーと組み合わせて、第3の態様の添加剤濃縮物としてもよい。
【0021】
ここで、例示のみを目的として本発明を説明する。
CoBF触媒溶液の調製
メチルエチルケトン(80.50g、1.12mol)を、乾燥窒素流下で脱気し、シリンジを使用して、窒素下で脱気したCo(ジメチルグリオキシムBF
2)
2.2H
2O(CoBFとしても知られる)(55mg、0.13mol)にゴムセプタムを介して添加した。得られた溶液を1時間撹拌し、また使用前に再び撹拌した。触媒溶液は、約13mmol dm
-3の強度を有していた。
触媒連鎖移動(CCT)重合反応
モノマー(a)は、以下の直鎖テトラデシルメタクリレート(C
14MA)であった。
【0022】
【化4】
モノマー(b)は、以下のポリエチレングリコールメタクリレート(PEGOMeMA)であった。
【0023】
【化5】
ポリエチレングリコールセグメントの分子量(Mn)は約400であり、約8または9のnの値に対応していた。
脱気したPEGOMeMAモノマー(1.35g、2.84mmol)および脱気したC
14MAモノマー(39.27g、139mmol)を、脱気したAIBN(0.20g、1.22mmol)に窒素下で添加し、得られた溶液を撹拌した。これらのモノマーの割合は、(a):(b)のモル比が49:1となるような割合であった。上述のように調製された触媒溶液(2.3mol)を、窒素下でモノマーとAIBNの混合物に添加し、反応混合物を撹拌しながら80℃に5時間加熱した。得られた透明流体ポリマーから、メチルエチルケトンを真空下で揮散させた。
さらなるポリマー試料を上述のように調製した。使用したモノマーの量は、(a):(b)モル比が19:1、9:1、6:1および3:1となるように変動させた。
より少量の一定分量、つまり2.3mlではなく1.5mlの触媒溶液を用いて、全ての(a):(b)比を繰り返した。より少量の触媒を使用すると、より大きい分子量のポリマーの形成が促進された。以下の表1は、生成されたポリマーの詳細を示す。
【0025】
調製したポリマーのいくつかを、CFPP(低温フィルタ目詰まり点)性能について試験した。CFPPは、低温において燃料油試料がフィルタを通して流動する能力を評価するための、業界標準試験である。「Jn.Of the Institute of Petroleum」、第52巻、No.510(1996)、173〜285頁に詳細に記載されている手順により行われる試験は、自動車用ディーゼル中の中間留出物の低温流動に関連するように設計されている。簡潔には、試験対象油の試料(40cm
3)を、約−34℃に維持された浴内で冷却し、約1℃/分での線形冷却を行う。定期的に(曇り点の上から開始して摂氏1度ごとに)、試験対象油の表面下に位置付けた上下逆の漏斗を下端に取り付けたピペットである試験装置を使用して、所定期間内に細かい網目を通して流動する能力について油を試験する。漏斗の口全体に、12mmの直径で画定される面積を有する350メッシュの網が張られている。定期的試験は、ピペットの上端に真空を適用することにより開始し、それにより油は網を通してピペット内に20cm
3の油を示す標線まで吸引される。各通過が成功した後、油はすぐにCFPP管に戻す。油が60秒以内にピペットに充填されなくなるまで、1℃の温度降下ごとに試験を繰り返し、充填されなくなった温度をCFPP温度として報告する。
以下の表2は、低硫黄含量の石油ディーゼル燃料中で試験された本発明のポリマーのCFPP結果(℃単位)を示す。燃料の基準CFPPは−18℃であった。
【0026】
【表2】
表2
また、例2および例7のポリマーを、従来のエチレン酢酸ビニル(EVA)中間留出物流動性向上剤と組み合わせ、CFPP性能について試験した。以下の表3は、EVAと組み合わせ、2質量%の脂肪酸メチルエステル(FAME)を含有する石油ディーゼル燃料である低硫黄含量B2ディーゼル燃料中で試験した、本発明のポリマーのCFPP結果(℃単位)を示す。燃料の基準CFPPは−9℃であった。
【0028】
表1に示すポリマーを作製するために使用した触媒連鎖移動重合法を使用して、さらなる一連のポリマーを生成した。これらを以下の表4に詳細に示す。
ポリマーは、示されるようなある特定の鎖長の直鎖アルキルメタクリレートであるモノマー(a)を使用して作製した。例えば、「CxxMA」の列において、12という値は、モノマー(a)が直鎖C
12アルキルメタクリレートであったことを示し、12/14は、70mol%の直鎖C
12アルキルメタクリレートおよび30mol%の直鎖C
14アルキルメタクリレートの混合物であり、12/15は、7mol%の直鎖C
12アルキルメタクリレート、29mol%の直鎖C
13アルキルメタクリレート、24mol%の直鎖C
14アルキルメタクリレート、25mol%の直鎖C
15アルキルメタクリレート、7mol%の直鎖C
16アルキルメタクリレートおよび7mol%の直鎖C
18アルキルメタクリレートの混合物であった。
モノマー(b)は、以前に使用したPEGOMeMA型であった。−(OCH
2CH
2)セグメントの数「n」により示されるように、様々な分子量のモノマーを使用した。
使用した触媒は、以前と同じであり、示される量で使用した。
【0029】
【表4】
表4
表4に詳細に示されるポリマーは、表3における試験に使用したのと同じ従来のエチレン酢酸ビニル(EVA)中間留出物流動性向上剤と組み合わせて試験した。使用した燃料は、表3に記載の試験に使用したのと同じB2ディーゼル燃料であった。結果を以下の表5に詳細に示す。
【0031】
可逆的ヨウ素移動重合(RITP)によるポリマー合成
上記表1に記載のCCTP反応において使用したようなモノマー(a)および(b)を、この例においても使用した。アルミニウム箔で被覆され、撹拌棒を含むシュレンク管に、モノマー(a)(25.00g、88.5mmol)、モノマー(b)(0.841g、1.77mmol)、AIBN(1.452g、8.84mmol)、ヨウ素(1.123g、4.42mmol)およびトルエン(25.00g)を加えた。管をセプタムで封止し、混合物を3回の凍結−排気−解凍の脱気サイクルに供した。次いで管を、窒素下で撹拌しながら2.5時間95℃に加熱した。得られた透明流体ポリマーから、トルエンを真空下で揮散させた。同じ技術を使用するが、モノマー(a)の量を増加させて用い、第2の重合を行った。また、両方の重合を、より少ない量のヨウ素を用いて繰り返した。これによって、より大きい分子量のポリマーが生成された(例10および11)。このように生成された4種のポリマーの詳細を、以下の表6に示す。
【0033】
ポリマー35を、上記表3に報告した実験において使用された同じEVA中間留出物流動向上剤と組み合わせて、CFPP性能について試験した。また、同じB2燃料を使用した。結果を以下の表7に詳細に示す。