特許第6188287号(P6188287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルインコ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社杉孝の特許一覧

<>
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000002
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000003
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000004
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000005
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000006
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000007
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000008
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000009
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000010
  • 特許6188287-伸縮管の固定装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188287
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】伸縮管の固定装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/14 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E04G5/14 301F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-161159(P2012-161159)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-20145(P2014-20145A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591195189
【氏名又は名称】株式会社杉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】市川 令子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 信夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌史
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−123968(JP,A)
【文献】 実開平06−040195(JP,U)
【文献】 特開2000−160828(JP,A)
【文献】 特開2007−002594(JP,A)
【文献】 特開2009−264072(JP,A)
【文献】 米国特許第05615968(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/14
E04G 5/16
E04G 7/20
E04G 7/30
E04G 7/32
E04G 7/34
F16B 7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径管(6)の内径D1と小径管(7)の外径D2をD1>D2に形成し、両管を軸方向に伸縮自在に嵌合した伸縮管(5)を構成し、大径管と小径管を相互に固定する装置において、
前記大径管(6)の端部に臨む支持部材(14)を該大径管に固設し、前記支持部材(14)に楔部材(15)を設けており、
前記小径管(7)の軸心A2に位置して相互に直交するX軸とY軸に関して、該小径管の外周面のうち、X軸方向の両側部をそれぞれ第1側部(X1)及び第2側部(X2)とし、Y軸方向の両側部をそれぞれ第3側部(Y1)及び第4側部(Y2)として、第1側部(X1)と第2側部(X2)と第3側部(Y1)に前記軸心A2を中心とする円弧外側面(7b)を形成すると共に、第4側部(Y2)を凹入変形することにより溝部(11)を形成し、該溝部を軸方向に延設しており、
前記大径管(6)は、前記溝部(11)に嵌合する位置決め手段(12)を設けており、
前記支持部材(14)は、前記小径管の第1側部(X1)に対面する受止め部(17)と、該受止め部から前記X軸方向に向けて該小径管の第2側部(X2)を超える位置まで延設された延長部(18)を設け、
前記受止め部(17)は、前記小径管の第1側部(X1)を受止める円弧内側面(19)を備え、該円弧内側面(19)を前記大径管(6)の軸心A1と同心の軸心A3を中心とする円弧に形成すると共に、該円弧内側面(19)の内径D3を前記小径管(7)の円弧外側面(7b)の外径D2と同径に形成し、
前記楔部材(15)は、前記延長部(18)のY軸方向に形成した楔通路(20)に摺動自在に挿通され、挿入方向がY軸から離れるように傾斜する直線Mに沿って形成された押圧面(15b)を前記小径管の第2側部(X2)に圧接させるように構成されており、
前記小径管(7)を大径管(6)に嵌入した状態で、前記楔部材(15)を前記直線Mに沿う挿入方向に挿入したとき、前記X軸に対して前記溝部(11)から離反する側に偏位した位置を接点Qとして、前記押圧面(15b)を小径管(7)の第2側部(X2)に接すると共に、該接点Qから第2側部(X2)を小径管(7)の軸心A2に向けて押圧することにより、第1側部(X1)を前記支持部材(14)の円弧内側面(19)に圧接し、相互の軸心A1、A2を同心状態として大径管(6)と小径管(7)を相互に固定するように構成して成ることを特徴とする伸縮管の固定装置。
【請求項2】
緊結手段を備えた一対の支柱(1,1)の間に前記伸縮管(5)を配置し、前記大径管(6)の延長端に設けたブラケット(8)を一方の支柱(1)の緊結手段に緊結し、前記小径管(7)の延長端に設けたブラケット(8)を他方の支柱(1)の緊結手段に緊結した状態で、大径管(6)と小径管(7)を固定する仮設足場用伸縮管を構成して成ることを特徴とする請求項1に記載の伸縮管の固定装置。
【請求項3】
前記X軸を水平方向、前記Y軸を鉛直方向としており、前記楔部材(15)を下向きに殴打することにより、前記小径管(7)を水平方向に押圧するように構成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮管の固定装置。
【請求項4】
前記伸縮管(5)により仮設足場用伸縮手摺(5a)を構成し、前記ブラケット(8)は、大径管(6)及び小径管(7)の延長端に、首振り自在に枢結されて成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の伸縮管の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場等において使用される伸縮管、例えば、伸縮手摺を構成する伸縮管の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等において構築される仮設足場は、作業者の安全を確保するため、手摺を設けることが望ましい。
【0003】
このような手摺は、一対の支柱の間に取付けられるが、支柱の間隔が異なる条件とされている場合があるため、間隔条件の相違に応じて自在に取付可能とした伸縮手摺が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の伸縮手摺は、相互に同心状に形成した大径管と小径管を軸方向に伸縮自在に嵌合した伸縮管を構成し、所望の長さとなるように伸縮させた状態で、大径管と小径管を相互に固定する固定装置を設けている。
【0006】
前記固定装置は、大径管の端部の近傍個所に螺挿したセットボルトにより構成するのが一般的であり、該セットボルトを弛めることにより小径管を摺動自在とした状態から、該セットボルトを締着すると、該セットボルトの先端が小径管を押圧することにより、摺動不能に固定する。
【0007】
ところで、伸縮管を伸縮可能にするためには、大径管と小径管の間にクリアランスが必要である。この際、伸縮動作を円滑容易にするためには、クリアランスを大きめに形成することが好ましい。
【0008】
しかしながら、前記の固定装置は、セットボルトの先端で小径管を押圧し、小径管を大径管の反対側の内周面に圧接させることにより固定する構成であるから、固定状態の大径管と小径管の軸心が相互に偏心するという問題がある。換言すれば、偏心量を小さくするためには、クリアランスを小さく形成しなければならないから、伸縮動作が円滑容易でないという問題がある。
【0009】
このため、本発明の課題は、大径管と小径管の軸心を同心状態として固定可能とした固定装置を提供する点にある。
【0010】
また、仮設足場における伸縮手摺の場合、大径管と小径管から成る伸縮管の両端にブラケットを設け、該ブラケットを一対の支柱の緊結手段に緊結するように構成することが好ましい。しかしながら、伸縮管を伸縮させるとき、大径管と小径管が相互に周方向に回動自在であると、支柱の緊結手段に対して両端のブラケットの姿勢を制御して整える必要があり、緊結作業を迅速容易に行うことができないという問題がある。
【0011】
このため、本発明の課題は、伸縮管の両端に設けたブラケットを即座に支柱に緊結できるように、該ブラケットの姿勢を保持した状態で伸縮管を伸縮可能かつ固定可能とする固定装置を提供する点にある。
【0012】
その他、本発明の課題は、固定状態から弛み難く信頼性の高い固定装置を提供し、更に、一対の支柱における緊結手段の姿勢条件に影響されず自在に緊結可能なブラケットを設けた伸縮管の固定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために本発明が手段として構成したところは、大径管の内径D1と小径管の外径D2をD1>D2に形成し、両管を軸方向に伸縮自在に嵌合した伸縮管を構成し、大径管と小径管を相互に固定する装置において、前記大径管の端部に臨む支持部材を該大径管に固設し、前記支持部材に楔部材を設けており、前記小径管の軸心A2に位置して相互に直交するX軸とY軸に関して、該小径管の外周面のうち、X軸方向の両側部をそれぞれ第1側部及び第2側部とし、Y軸方向の両側部をそれぞれ第3側部及び第4側部として、第1側部と第2側部と第3側部に前記軸心A2を中心とする円弧外側面を形成すると共に、第4側部を凹入変形することにより溝部を形成し、該溝部を軸方向に延設しており、前記大径管は、前記溝部に嵌合する位置決め手段を設けており、前記支持部材は、前記小径管の第1側部に対面する受止め部と、該受止め部から前記X軸方向に向けて該小径管の第2側部を超える位置まで延設された延長部を設け、前記受止め部は、前記小径管の第1側部を受止める円弧内側面を備え、該円弧内側面を前記大径管の軸心A1と同心の軸心A3を中心とする円弧に形成すると共に、該円弧内側面の内径D3を前記小径管の円弧外側面の外径D2と同径に形成し、前記楔部材は、前記延長部のY軸方向に形成した楔通路に摺動自在に挿通され、挿入方向がY軸から離れるように傾斜する直線Mに沿って形成された押圧面を前記小径管の第2側部に圧接させるように構成されており、前記小径管を大径管に嵌入した状態で、前記楔部材を前記直線Mに沿う挿入方向に挿入したとき、前記X軸に対して前記溝部から離反する側に偏位した位置を接点Qとして、前記押圧面を小径管の第2側部に接すると共に、該接点Qから第2側部を小径管の軸心A2に向けて押圧することにより、第1側部を前記支持部材の円弧内側面に圧接し、相互の軸心A1、A2を同心状態として大径管と小径管を相互に固定するように構成して成る点にある。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、緊結手段を備えた一対の支柱の間に前記伸縮管を配置し、前記大径管の延長端に設けたブラケットを一方の支柱の緊結手段に緊結し、前記小径管の延長端に設けたブラケットを他方の支柱の緊結手段に緊結した状態で、大径管と小径管を固定する仮設足場用伸縮管の固定装置を構成している
【0015】
好ましくは、前記X軸を水平方向、前記Y軸を鉛直方向としており、前記楔部材を下向きに殴打することにより、前記小径管を水平方向に押圧するように構成している。
【0016】
更に好ましくは、前記伸縮管により仮設足場用伸縮手摺を構成し、前記ブラケットは、大径管及び小径管の延長端に、首振り自在に枢結されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明によれば、伸縮管5を構成する大径管6と小径管7を所望の伸縮軸長とした状態で、楔部材15をY軸方向に打ち込み、小径管7の第2側部X2をX軸方向に押圧し、第1側部X1を支持部材14の円弧内側面19に圧接することにより、相互の軸心A1、A2を同心状態として両管6、7を固定する構成であるから、伸縮動作を円滑容易にするために両管6、7の間に十分なクリアランスを形成する場合でも、両管6、7が偏心されず、同軸線上に整列した状態で固定される利点がある。
【0018】
そして、Y軸方向に打ち込まれた楔部材15は、小径管7の軸線に直交した状態で第2側部X2に係止するので、該小径管7の伸縮方向に対する楔部材15の強固な押圧係止力が得られる。
【0019】
特に、本発明によれば、仮設足場における一対の支柱1、1の間に伸縮管5のブラケット8、8を緊結するに際し、小径管7に形成した溝部11に大径管6の位置決め手段12を嵌合しているので、伸縮作業中、大径管6と小径管7が相互に周方向に回動することなく、両端のブラケット8、8を所定姿勢に保持しており、これにより該ブラケット8、8を支柱1、1の緊結手段に緊結する作業が容易となる。
この際、前記楔部材15と、該楔部材15の押圧面15bにより押圧される小径管7の第2側部X2及び溝部11の関係は、楔部材15を直線Mに沿う挿入方向に挿入したとき、X軸に対して前記溝部11から離反する側に偏位した位置を接点Qとして、前記押圧面15bにより第2側部X2を該接点Qから小径管7の軸心A2に向けて押圧するように構成されているので、小径管7の断面に関して、溝部11から離れた第2側部X2の円弧面の部分を押圧することが可能になる。
【0020】
請求項3に記載の本発明によれば、楔部材15の打ち込み方向を下向きに構成しているので、伸縮管5を目安の伸縮軸長とした状態で楔部材15を自重で下降させれば、伸縮を妨げる仮止め手段が構成され、伸縮管5の取付作業が容易となり、しかも、固定装置10により固定する際、ハンマー等による殴打作業が容易であり、更に、打ち込み完了後も、楔部材15が自重により下向きの力を受けているので、弛み難く、緊結状態を維持する。
【0021】
請求項4に記載の本発明によれば、ブラケット8、8が首振り自在であるから、一対の支柱1、1における緊結手段の姿勢が異なる条件とされている場合でも、該ブラケット8を常に良好に緊結することができ、しかも、溝部11と位置決め手段12の嵌合により、大径管6と小径管7の相互回動を阻止し、両端のブラケット8、8を所定姿勢に保持するので、該ブラケット8、8を支柱1、1の緊結手段に緊結する作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の伸縮管の1実施形態に係る伸縮手摺に関して、仮設足場における取付状態を示す平面図である。
図2】前記伸縮手摺を示しており、(A)は平面図、(B)はブラケットを首振り姿勢として緊結した状態の平面図、(C)は伸長状態の正面図、(D)は収縮状態の正面図である。
図3】本発明の1実施形態に係る固定装置に関して、固定装置から小径管を分離した状態を示す斜視図である。
図4】前記固定装置により小径管を固定した状態を示す斜視図である。
図5】前記固定装置により小径管を固定した状態を示す中央縦断面図である。
図6】前記固定装置により小径管を固定する作用を示しており、(A)は楔部材を移動する前の状態を示す断面図、(B)は楔部材を移動した後の固定状態を示す断面図である。
図7】本発明に係る足場用伸縮管の固定金具の意匠を示しており、(A)は正面図、(B)は背面図である
図8】前記意匠に関して、(A)は平面図、(B)は底面図である。
図9】前記意匠に関して、(A)は右側面図、(B)は左側面図である。
図10】前記意匠に関して、(A)は図7(A)のA−A線断面図、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0024】
図面及び以下の説明は、伸縮管5として、仮設足場における伸縮手摺5aを例示し、伸縮手摺を任意の伸縮状態で固定する固定装置を示しているが、本発明が伸縮手摺に限定されないことは勿論であり、仮設足場に使用される伸縮手摺以外の種々の伸縮管、その他の技術分野における伸縮管にも広く適用可能であることを諒解されたい。
【0025】
図1は、作業者の作業空間及び往来通路を構成する作業床を曲折状に形成した仮設足場を例示しており、フランジ式楔緊結構造を備えた仮設足場を示している。支柱1は、上下に所定間隔をあけて金属板から成るフランジ2を固設しており、建造物等の外壁に対する遠近方向(以下「妻方向」という)に所定間隔をあけて立設された一対の支柱1、1を1組として、建造物等の外壁に沿う方向(以下「桁方向」という)に所定間隔をあけて立設されている。妻方向に隣り合う一対の支柱1、1の間には、横架材3が架設され、支柱1と横架材3は、相互に楔構造の緊結手段により固着されており、桁方向に隣り合う横架材3、3に足場板4が搭載され、これにより作業床が形成される。
【0026】
図1に例示する仮設足場は、例えば、環状タワー状の建造物の外壁に沿って環状の作業床を形成するように構築され、妻側の外側に位置する一対の支柱1、1の間隔L1に対し、妻側の内側に位置する一対の支柱1、1の間隔L2がL2<L1とされ、それぞれの一対の支柱の間に、伸縮自在な伸縮手摺5aが取付けられる。従って、妻側の外側に位置して取付けられる伸縮手摺5aは、前記間隔L1に対応し、伸長状態で取付けられる。また、妻側の内側に位置して取付けられる伸縮手摺5aは、前記間隔L2に対応し、収縮状態で取付けられる。
【0027】
伸縮手摺5aは、図2に示すように、相互に同心状に形成した大径管6と小径管7を軸方向に伸縮自在に嵌合した伸縮管5を構成し、該伸縮管5の両端、つまり、大径管6及び小径管7の伸長方向の延長端に、ブラケット8を設けており、該ブラケット8、8を前記一対の支柱1、1のフランジ2に楔手段を介して着脱自在に緊結される。尚、ブラケット8は、前記横架材3の両端に設けられた公知のブラケットと同様のものであるから、詳細説明を省略する。
【0028】
図1に例示するような作業床を曲折状に形成した仮設足場において、桁方向に隣接する支柱1、1のフランジ2は、図2(A)に示すように、フランジ2の楔孔を伸縮管5の軸線方向に整合させている場合と、図2(B)に角度θで示すように、フランジ2の楔孔を伸縮管5の軸線方向に偏位させている場合等があり、伸縮手摺5aの取付個所により、楔孔の姿勢条件が相違する。
【0029】
このため、前記ブラケット8は、それぞれの大径管6及び小径管7の延長端に、上下方向の枢軸9を介して首振り自在に枢結されている。これにより、ブラケット8は、水平方向に回動させるだけで、異なる姿勢条件とされたフランジ2の楔孔に対して、常に良好に緊結される。
【0030】
所望の長さとなるように伸縮させられた大径管6及び小径管7は、以下に詳述する固定装置10により、伸縮不能に固定される。
【0031】
図3に示すように、伸縮管5を構成する大径管6及び小径管7は、それぞれ同心円となる内周面と外周面を有する金属製の円形パイプ材により構成されている。大径管6は、内周面6aと外周面6bを有し、内周面6aは、軸心A1を中心とする内径D1により規定された円周面を形成する。これに対して、小径管7は、内周面7aと外周面7bを有し、外周面7は、軸心A2を中心とする外径D2により規定された円周面を形成する。大径管6の内周面6aと小径管7の外周面7bは、D1>D2に形成されており、この際、小径管7を大径管6に挿入したとき、円滑容易に摺動可能とする十分なクリアランスC(C=D1−D2)を有するように形成することができる。
【0032】
前記小径管7の軸心A2に位置して相互に直交する軸をX軸及びY軸としたとき、該小径管7の外周面7bのうち、X軸方向の両側部にはそれぞれ第1側部X1及び第2側部X2が形成され、Y軸方向の両側部にはそれぞれ第3側部Y1及び第4側部Y2が形成されている。図示実施形態の場合、前記X軸を水平方向、前記Y軸を鉛直方向としている。そこで、前記小径管7は、前記第1側部X1と第2側部X2と第3側部Y1に前記軸心A2を中心とする円弧外側面7bを形成し、前記第4側部Y2を凹入変形することにより溝部11を形成し、該溝部11を軸方向に延設している。
【0033】
前記小径管7を大径管6に挿入した状態で、図5に示すように、前記溝部11に嵌合する位置決め手段12が大径管6に設けられている。位置決め手段12は、例えば、大径管6に進退自在に螺入されたボルトにより構成され、小径管7を最大軸長となるように伸長させたとき、該ボルトの先端を溝部11の終端部11aに係止することにより、抜止め手段13を構成する。
【0034】
前記固定装置10は、図3に示すように、支持部材14と楔部材15により構成され、前記支持部材14を前記大径管6に固設するための連結部材16を備えている。連結部材16は、断面U形の金属板から成るアームを構成し、支持部材14の底部に溶接等で固着され、該アームを大径管6の端部の外周面に溶接等で固着することにより、支持部材14を大径管6の端部に臨むように固設する。
【0035】
前記支持部材14は、分厚い金属板をU形に折曲することにより形成され、前記小径管7の第1側部X1に対面する受止め部17と、該受止め部17の両端から前記X軸方向に向けて前記小径管7の第2側部X2を超える位置まで延設された延長部18、18を備えている。
【0036】
前記連結部材16により支持部材14を大径管6に固設した状態において、前記受止め部17は、前記小径管7の第1側部X1の外周面7bを受止める円弧内側面19を備えており、該円弧内側面19は、前記大径管6の軸心A1と同心の軸心A3を中心とする円弧を描くと共に、該円弧内側面19の内径D3を前記小径管7の円弧外側面7bの外径D2と同径(D3=D2)に形成している。
【0037】
前記楔部材15は、前記延長部18、18のY軸方向に形成した楔通路20、20に摺動自在に挿通されており、挿入方向がY軸から離れるように傾斜する直線Mに沿って押圧面15bを形成している(図6(B)参照)。この際、楔部材15を上向きに後退させた状態で、楔部材15を楔通路20、20から脱出不能とする抜止め部材21、21を設けることが好ましい。尚、下側の延長部18の楔通路20は、下側の抜止め部材21を通過可能とするように広幅に形成されており(図8(B)参照)、図6(A)に示すように、楔部材15は、下側の抜止め部材21(図示21xで示す)が上側の楔通路20(図示20xで示す)に抜止め状に係止する位置まで、上方に大きく移動し後退させることが可能である。
【0038】
図4に示すように、小径管7を大径管6に嵌入した状態で、上方に後退させた楔部材15の頭部15aをハンマー等で殴打し、下向きのY軸方向に打ち込むと、該楔部材15が小径管7の第2側部X2をX軸方向に押圧し、第1側部X1を前記支持部材14の円弧内側面19に圧接し、これにより、相互の軸心A1、A2を同心状態として大径管6と小径管7が相互に固定される。この際、打ち込み後の楔部材15は、小径管7の軸線に直交した状態で第2側部X2に係止しているので、該小径管7の伸縮方向に対して楔部材15が強固に係止し、該小径管7の伸縮移動を確実に阻止する。
【0039】
図示実施形態のような伸縮手摺5aを一対の支柱1、1の間に取付ける場合は、前述のように楔部材15を上方に後退させると、大径管6と小径管7が相互に伸縮自在な状態とされるので、所望の軸長となるように伸縮させ、図2に示すように、両端のブラケット8をフランジ2に緊結した後、固定装置10により固定すれば良い。この伸縮作業中、大径管6と小径管7は、溝部11と位置決め手段12により、相互に周方向に回動することなく位置決めされ、両端のブラケット8、8を所定の姿勢に保持しているので、フランジ2に対する緊結作業を迅速容易に行うことができる。そして、図示のように楔部材15を上下方向に設けておけば、楔部材15を持ち上げることにより伸縮可能とする反面、持ち上げから解放すると、楔部材15は、自重で下降し、小径管7の第2側部X2に当接して伸縮を妨げるので、目安の伸縮軸長とした状態で楔部材15を下降させるだけで、仮止め手段が構成され、伸縮手摺5aの取付作業を容易とする。
【0040】
両端のブラケット8をフランジ2に緊結した後、図6(A)に示す状態から楔部材15をハンマー等で殴打し、図6(B)に示すように下向きに打ち込むと、楔部材15は、図示のようにY軸に対して傾斜した直線Mに沿って下向きに移動し、X軸に対して前記溝部11から離反する側に偏位した位置を接点Q、つまり、X軸から角度θで示すように図示の上側に回動された軸線XUの位置を接点Qとして、押圧面15bを第2側部X2に接し、該押圧面15bにより該接点Qから第2側部X2を小径管7の軸心A2に向けて押圧するので、小径管7の断面に関して、溝部11から離れた第2側部X2の円弧面の部分を押圧し、これにより、第1側部X1を支持部材14の円弧内側面19に圧接した状態で固定する。このように、楔部材15を下向きに打ち込むように構成しておけば、作業者のハンマー等による殴打作業が容易となる。そして、大径管6と小径管7は、支持部材14の円弧内側面19により、相互の軸心A1、A2を同心状態として伸縮不能に固定されるので、偏心することなく、図示のように全周にクリアランスCを保持した状態で、同軸線上に固定される。打ち込み完了後も、楔部材15は、自重により下向きの力を受けているので、弛み難く、楔緊結状態を維持する。
【0041】
伸縮手摺5aは、一対の支柱1、1の間に取付けられ、作業者の安全を確保する。大径管6から延びる小径管7は、溝部11により補強されているので、折曲方向に関して容易に変形することはなく、耐用性に優れている。
【符号の説明】
【0042】
1 支柱
2 フランジ
3 横架材
4 足場板
5 伸縮管
5a 伸縮手摺
6 大径管
6a 内周面
7 小径管
7b 外周面
X1 第1側部
X2 第2側部
Y1 第3側部
Y2 第4側部
8 ブラケット
9 枢軸
10 固定装置
11 溝部
11a 終端部
12 位置決め手段
13 抜止め手段
14 支持部材
15 楔部材
15a 頭部
16 連結部材
17 受止め部
18 延長部
19 円弧内側面
20 楔通路
21 抜止め部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10