(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188293
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
H01R13/11 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-179209(P2012-179209)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-38724(P2014-38724A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月17日
【審判番号】不服2016-16765(P2016-16765/J1)
【審判請求日】2016年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】篠原 準弥
【合議体】
【審判長】
中村 達之
【審判官】
冨岡 和人
【審判官】
内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−13671(JP,U)
【文献】
特開2009−224137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を圧着する圧着部と、相手側の端子を収容する箱部と、前記圧着部と前記箱部とを連結するつなぎ部と、から構成される端子であって、
前記箱部は、相手側の端子と接続する端子ばね部と、前記端子ばね部を囲うように形成される側壁と、から構成され、
前記端子ばね部には、板状の端子を折り曲げられて形成される根元部と、相手側の端子と接続する接点と、が形成され、
前記根元部は、前記箱部の開口端から外方に露出して形成されているとともに、前記根元部には、前記箱部の開口端に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部が形成され、
前記側壁の前記開口端側には、前記テーパ部に沿って切欠部が形成されていることを特徴とする端子。
【請求項2】
請求項1記載の端子であって、
前記箱部の開口端から露出する前記根元部の幅は、前記箱部の幅以下であることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末に接続され、相手端子と弾性接触する端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等を電気的に接続するために、端子が用いられている。この端子は、雄端子と雌端子とが接続することによって電気的に接続するため、雄端子と雌端子との接触信頼性を確保することが要求されている。
【0003】
一般的には端子として使用されるバネ部のばね定数等を高めて、雄端子と雌端子との接触荷重を高めることが知られている。
【0004】
また、特許文献1に示すように、雄雌端子同士の接触信頼性を確保するために雌端子に、雄端子と接触する接点を複数箇所設けて雄端子をバランス良く狭持して雄雌端子同士の接触を確保している。
【0005】
さらに、特許文献2に示すように、雄端子と雌端子の接続部分に突起部を設けて、端子が過度に撓み過ぎるのを防止し、雄端子と雌端子との接触信頼性を確保することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−63961号公報
【特許文献2】特開2001−357921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、端子は小型化が求められており、小型化のためにばねの厚さ・幅等を減少させると強度、特にバネ性が弱くなるので雄端子と雌端子との十分な接触荷重を確保することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、端子を小型化しても、雄端子と雌端子との十分な接触荷重を確保することのできる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明では、導体を圧着する圧着部2と、相手側の端子を収容する箱部4と、前記圧着部2と前記箱部4とを連結するつなぎ部3と、から構成される端子1であって、前記箱部4は、相手側の端子と接続する端子ばね部12と、前記端子ばね部12を囲うように形成される側壁10と、から構成され、前記端子ばね部12には、板状の端子を折り曲げられて形成される根元部22と、相手側の端子と接続する接点24と、が形成され、前記根元部22は、前記箱部4
の開口端13から外方に露出して形成されている
とともに、前記根元部22には、前記箱部4の開口端13に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部26が形成され、前記側壁10の前記開口端13側には、前記テーパ部26に沿って切欠部14が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の端子1であって、前記箱部4
の開口端13から露出する前記根元部22の幅Nは、前記箱部4の幅H以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、端子ばね部12の根元部22が箱部4
の開口端13から露出して形成されているので、箱部4
の開口端13から露出する根元部22の幅Nを広くすることができるため、ばね定数を大きくすることができ、雄端子と雌端子の接触荷重を十分に確保することができる。また、根元部22が箱部4
の開口端13から露出して形成されているので、端子ばね部12のばね幅Bを小さくしても根元部22の幅Nを確保することができるので、端子1をより小型化することができる。
特に、根元部22の幅Nが先端部20のばね幅Bまで急激に狭くなると端子ばね部12の接点が他側の端子に押された場合、根元部22に応力が集中し端子ばね部12の破損の原因となっていたが、根元部22に開口端13に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部26が形成されていることにより、根元部22のばね幅を先端部20側へ徐々に減らすことができる。そのため、端子ばね部12の根元部22の幅を大きく取ることができるので、端子ばね部12を曲げて根元部22を形成する際、端子ばね部12の左右への振れやねじれを防ぐことができる。また、側壁10の開口端13側にテーパ部26に沿って切欠部14を設けたことにより、端子ばね部12の幅を有効に利用することができ、根元部22への応力の集中を防ぐことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、
図1〜5を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1〜5に示すように、本発明の端子1は、導体を圧着する圧着部2と、端子を収容する箱部4と、圧着部2と箱部4とを連結するつなぎ部3と、から構成されている。
【0020】
圧着部2は、図示しない電線の被覆材を固定する圧着片6と、図示しない電線の導体を圧着して固定する導体接続部8と、から構成されている。
【0021】
圧着片6及び導体接続部8は、
図1に示すように円弧状に形成されており、内周に図示しない電線を圧着して固定する。
【0022】
圧着部2に連設して形成されるつなぎ部3は、一端側を圧着部2の導体接続部8と連設して形成され、他端側を後述する箱部4の側壁10とを連設して形成されている。このつなぎ部3も圧着部2と同様に円弧状に形成されている。
【0023】
つなぎ部3の他端側に連設して形成され端子を収容する箱部4は、折り曲げられて形成される端子ばね部12と、端子ばね部12を囲うように立設する側壁10と、側壁10から連設されて形成される天井壁16と、から構成されている。また、後述する端子ばね部12が箱部4の底壁を兼ねている。
【0024】
図2に示すように、板状のばね材が折り曲げられて形成されるに示す端子ばね部12は、自由端の先端部20と、折り曲げられて形成される根元部22と、から構成されている。
【0025】
端子ばね部12の先端部20には、図示しない相手側の端子と接触する接点24が形成されている。この接点24が相手側の端子と接触することにより、端子同士が電気的に接続される。なお、
図3に示すように、端子ばね部12は後述する箱部4内に収容されるため、先端部20が形成されるばねの幅Bは、箱部4内に収まる寸法にて形成されている。
【0026】
また、端子ばね部12が折り曲げられて形成される根元部22は、後述する箱部4の開口端13から露出して形成されるとともに、開口端13に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部26が形成されている。なお、
図3に示すように、根元部22の幅Nは、箱部4の開口端13から露出して形成されているため、ばね幅を大きくすることができる。すなわち、根元部22の幅Nを、先端部20のばねの幅Bよりも大きく、箱部4の幅Hよりも小さく設定する。
【0027】
端子ばね部12を囲うように立設して形成される側壁10は、端子ばね部12のテーパ部26に沿って側壁10
の開口端13側が切り欠かれている切欠部14と、天井壁16の被係止部15に係止する係止部18と、が形成されている。
図4,5に示すように、切欠部14は、端子ばね部12の根元部22に形成されるテーパ部26の傾斜に沿って切り欠かれている。
【0028】
側壁10から連設されて形成される天井壁16は、箱部4から露出する根元部22を覆うように形成されて、側壁10の係止部18に係止される被係止部15が形成されている。係止部18が被係止部15に係止することによって箱部4が形成され、この箱部4の端部には開口端13が形成される。また、この箱部4の内部には、上記したように端子ばね部12が収容されて、開口端13から露出するように端子ばね部12の根元部22が配置されて折り曲げられている。
【0029】
上記のように、端子ばね部12の根元部22が箱部4から露出して形成されているので、箱部4から露出する根元部22の幅Nを広くすることができるため、ばね定数を大きくすることができ、雄端子と雌端子の接触荷重を十分に確保することができる。また、根元部22が箱部4から露出して形成されているので、端子ばね部12のばね幅Bを小さくしても根元部22の幅Nを確保することができるので、端子1をより小型化することができる。
【0030】
また、側壁10に切欠部14を設けたことにより、端子ばね部12の幅を有効に利用することができ、根元部22への応力の集中を防ぐことができる。
【0031】
さらに、根元部22の幅Nが先端部20の幅Bまで急激に狭くなると端子ばね部12の接点が他側の端子に押された場合、根元部22に応力が集中し端子ばね部12の破損の原因となっていたが、根元部22にテーパ部26が形成されることにより、根元部22のばね幅を先端部20側へ徐々に減らすことができる。そのため、端子ばね部12の根元部22の幅を大きく取ることができるので、端子ばね部12を曲げて根元部22を形成する際、端子ばね部12の左右への振れやねじれを防ぐことができる。
【0032】
なお、本実施例のテーパ部26は、
図5に示すように直線状に形成されているが、根元部22への応力の集中を防ぐ形状であればよい。例えば、テーパ部26を曲線形状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、端子に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 端子
2 圧着部
3 つなぎ部
4 箱部
10 側壁
12 端子ばね部
22 根元部