(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の態様に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本発明の実施形態に係る不織布は、芯鞘構造の繊維(複合繊維)を含むものである。不織布は芯鞘構造の繊維のみからなるものであっても、芯鞘構造の繊維と芯鞘構造を有しない繊維とからなるものでもよい。方向に依存しない柔軟な変形が特に容易になることから、不織布は芯鞘構造の繊維のみからなることが好ましい。なお、芯鞘構造の繊維の長手方向に垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、扁平形とすることができる。製造の容易さからは、略円形状であることが好ましい。
【0018】
芯鞘構造の繊維とは、繊維の長手方向に垂直な断面から見て、芯部と、芯部の少なくとも一部を覆う鞘部とからなる構造を有する繊維をいう。
図1は、芯鞘構造の繊維の模式断面図であり、
図1(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)は、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5及び第6の態様に係る繊維の模式断面図である。
図1(a)に示す第1の態様の繊維は、芯部F1と鞘部F2が同心円状に配置されるように、芯部F1が鞘部F2で覆れた構成を有している。
図1(b)に示す第2の態様の繊維は、芯部F1が鞘部F2で覆れた構成を有しているが、第1の態様と異なり、芯部F1が繊維の断面方向から見て偏在した位置に存在する。
図1(c)に示す第3の態様の繊維は、芯部F1が異形断面を有している他は、第2の態様の繊維と同様の構成である。
【0019】
図1(d)に示す第4の態様の繊維は、断面が楕円状の複数の芯部F1が鞘部F2で覆れた構造を有している。
図1(e)に示す第5の態様の繊維は、芯部F1が鞘部F2で覆れた構造を有しているが、芯部F1が、第1の芯部F1aと、これを覆う第2の芯部F1bとから構成されており、第1の芯部F1aと第2の芯部F1bは同心円状に配置されている。
図1(f)に示す第6の態様の繊維は、芯部F1が鞘部F2で覆われた構造を有しているが、芯部F1が第1の芯部F1aと第2の芯部F1bからなっており、複数の第1の芯部F1aが第2の芯部F1b中に配置された構成である。
【0020】
繊維断面に占める芯部F1と鞘部F2の断面積の比率は任意であるが、鞘部F2の断面積に比べ芯部F1の断面積が大きいことが好ましい。
【0021】
芯鞘構造の繊維の繊維径は、5μm以上25μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましく、10μm以上15μm以下であることが更に好ましい。芯鞘構造の繊維の繊維径が上記範囲にあると、得られる不織布にしなやかさを付与することできる。
【0022】
芯鞘構造の繊維の繊維長は、不織布を構成することができれば、特に制限されるものではないが、長繊維であることが好ましい。長繊維とは、JIS L1015の平均繊維長測定法(C法)で測定した平均繊維長が、25mm以上である繊維を示す。
【0023】
芯鞘構造の繊維は、その100%伸長時の伸長回復率が20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。芯鞘構造の繊維の伸長回復率が上記範囲にあると、伸縮性に優れ、おむつをはじめとする様々な用途に特に好適となる。
【0024】
芯鞘構造の繊維を構成する芯部F1及び鞘部F2としては、下記において詳述する熱可塑性エラストマー及びポリオレフィンがそれぞれ用いられる。
【0025】
芯部F1に含有される熱可塑性エラストマーは、得られる不織布の伸縮性の調整が可能な材料である。熱可塑性エラストマーは、一般に、分子中にゴム弾性を有する柔軟性成分(ソフトセグメント、軟質相)と、塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント、硬質相)とから構成され、そのハードセグメントの種類により、熱可塑性エラストマーを分類することができる。芯部F1に含有される熱可塑性エラストマーとしては、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(3)オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー、(5)塩ビ系熱可塑性エラストマー、(6)アミド系熱可塑性エラストマー、(7)シンジオタクチックポリ(1,2−ブタジエン)、(8)ポリ(トランス−1,4−イソプレン)等の重合体を好ましく用いることができる。
【0026】
これらのうち、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(3)オレフィン系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせが好ましく、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせがより好ましく、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせがさらに好ましい。
【0027】
また、上記熱可塑性エラストマーに、オレフィン系樹脂を混合することも可能である。オレフィン系樹脂を添加することで、芯部F1の硬度を調節することができる。また、芯部F1に含有される熱可塑性エラストマーの加工性も改良することができる。オレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、プロピレン−スチレン共重合体、エチレン−スチレン共重合体等がある。
【0028】
オレフィン系樹脂の添加量としては、熱可塑性エラストマー100重量部又は上記熱可塑性エラストマーの組み合わせによる混合物100重量部に対して、1.0〜200重量部である。
【0029】
(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーとは、加熱により流動性を発揮し分子中にウレタン結合を有するポリマーである。ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、伸縮性に優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好適である。
【0030】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、一般に、長鎖ポリオール、短鎖ポリオール等のポリオールと、ジイソシアネート等のイソシアネートとを重付加反応させることにより得られる、分子内にウレタン結合を有する材料である。ここで、長鎖ポリオールが柔軟性成分となり、短鎖ポリオールおよびジイソシアネートが分子拘束成分となる。
【0031】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料として用いられるポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール(アジペート系、ポリカプロラクトン系等)、ポリエーテル系ポリオール等のポリオールが代表的である。長鎖ポリオールとしては、ポリエーテルジオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール)、ポリエステルジオール(例えば、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,6−ヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコール)などが挙げられる。短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0032】
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの、芳香族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネート、脂環式イソシアネートのいずれのイソシアネートも適用できる。
【0033】
芯部F1には、上記ウレタン系熱可塑性エラストマーを1種類のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(2)エステル系熱可塑性エラストマーとして好ましく用いられるものとしては、例えば、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルを有するブロックと、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、又は脂肪族ポリエステルを有するブロックとから成るエステル系エラストマー等が挙げられる。
【0035】
(3)オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、加工性、コスト、耐光性、耐薬品性、及び皮膚刺激性等を考慮すると、メタロセンを触媒として用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体において、エチレンと共重合させるα−オレフィンとしては、炭素数が3〜30のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、オクタデセン等が挙げられる。これらの中でも1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく用いられる。エチレン−α−オレフィン共重合体におけるエチレンとα−オレフィンとの配合割合は、好ましくはエチレンが40重量%以上、98重量%以下であり、α−オレフィンが60重量%以上、2重量%以下である。
【0036】
(4)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ビニル−共役ジエン(またはその不飽和結合の一部、またはすべてが水素添加されたもの)−芳香族ビニルブロック共重合体、を基本構造とする様々なタイプの3元系ブロックポリマー材料を使用することができる。芳香族ビニル重合体を構成するビニル単量体として望ましいのはスチレンである。また、共役ジエンを構成する単量体としては、イソプレンが望ましい。それらの不飽和結合の部分、またはすべては、スチレン系熱可塑性エラストマーとして使用される時点で水素添加されていてもよい。
【0037】
(4)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレンブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン−エチレンブチレン−エチレンブロック共重合体(CEBC)などが挙げられる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSEBS共重合体が用いられる場合は、SEBS共重合体全体の重量を100重量%としたときのスチレン比率が、10重量%以上が好ましく、25重量%以下が好ましい。
【0038】
芯部F1は、熱可塑性エラストマーの他に、タッキファイヤー(粘着性付与剤)等の添加剤を含有してもよい。
【0039】
タッキファイヤーとしては、上記重合体との相溶性のよいものが好ましい。重合体成分として、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーと(4)スチレン系熱可塑性エラストマーとのブレンドポリマーが用いられる場合には、ウレタン系熱可塑性エラストマーの構造を壊さず、またスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性のよいものが好ましい。タッキファイヤーとしては、ロジン系、テルペン系、石油系のもの等を使用することができる。
【0040】
タッキファイヤーの軟化点を40℃以上160℃以下、又は70℃以上160℃以下の範囲とすることができる。また、2種以上のタッキファイヤーを組み合わせて使用してもよい。
【0041】
タッキファイヤーの量は、熱可塑性エラストマーの全量を基準として、0.1重量%以上10重量%以下とすることができる。
【0042】
芯部F1は、更に、各種の添加剤(酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填材、オイル等)を含むこともできる。例えば、熱可塑性エラストマーの溶融流動性を改質するために、熱可塑性プラスチックやオイル成分等を添加してもよい。
【0043】
熱可塑性エラストマーのせん断粘度は、2.5Pa・s以上であることが好ましく、5.0Pa・s以上であることがより好ましく、7.5Pa・s以上であることが更に好ましい。なお、熱可塑性エラストマーのせん断粘度の上限は、特に制限はないが、以下に述べる不織布の製造法において製造可能な粘度であればよい。熱可塑性エラストマーのせん断粘度が上記範囲にあると、鞘部となるポリオレフィンとの組み合わせによる芯鞘構造の繊維の製造がより容易にできるため好ましい。ここで、せん断粘度は、対向する部材間に試料を挟み、せん断力をかけて測定することが可能であり(DMA測定)、測定方法の詳細については、実施例に記載する。せん断粘度の測定は、例えば、ティー・エイ・インスツルメントジャパン株式会社製の粘弾性測定装置(ARES)が使用できる。
【0044】
熱可塑性エラストマーのメルトフローレートは、160g/10分以下であることが好ましく、15g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることが更に好ましい。一方、熱可塑性エラストマーのメルトフローレートの下限は、例えば、1g/10分以上とすることができる。熱可塑性エラストマーのメルトフローレートが上記範囲にあると、ポリオレフィンとの組み合わせによる芯鞘構造の繊維の製造がより容易にできる。ここでメルトフローレートは、ASTM D1238(測定温度190℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定される値を示す。
【0045】
熱可塑性エラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)は、50以上75以下とすることが好ましい。ショアーA硬度(JIS A硬度)が50以上75以下の範囲にある熱可塑性エラストマーを芯部F1として用いた場合に、良好な伸縮柔軟性を有する芯鞘構造の繊維を得ることができる。
【0046】
鞘部F2は、メルトフローレートが100g/10分以上であり、220℃以上260℃以下の範囲で選択される特定の温度において上記熱可塑性エラストマーより粘度が低い、ポリオレフィンを含んでいる。すなわち、鞘部F2に含有されるポリオレフィンは、220℃〜260℃の範囲内のある特定の温度を「溶融温度」として選択し(典型的には、不織布製造時の温度とすることができ、後述するメルトブロー法で製造される場合はダイの温度である。この「溶融温度」は、例えば240℃とすることができる。)、その特定の「溶融温度」において、かかるポリオレフィンの粘度が上記熱可塑性エラストマーの粘度より低い値であればよい。ポリオレフィンの粘度は、好ましくは上述した「せん断粘度」測定方法に基づき測定する。例えば、上記「溶融温度」において、せん断速度150s
−1で測定されるせん断粘度が採用できる。
【0047】
なお、芯部F1として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用した場合、芯部F1及び鞘部F2の素材としては、溶融温度240℃において、せん断速度を10s
−1〜100s
−1に変化させたときに、このせん断速度範囲内で、鞘部F2に含有されるポリオレフィンのせん断粘度が、芯部F1に含有される熱可塑性ポリウレタンエラストマーのせん断粘度よりも高く、せん断速度が100s
−1を超え、200s
−1に達するまでのせん断速度範囲内おいて、せん断粘度が逆転する(つまり、鞘部F2に含有されるポリオレフィンのせん断粘度が、芯部F1に含有される熱可塑性ポリウレタンエラストマーのせん断粘度よりも低くなる)ような素材を選択することが好ましい。特に好ましいのは、溶融温度240℃において、せん断速度を10s
−1から100s
−1に変化させた場合に、せん断粘度の低下が少ない素材(例えば、この範囲で粘度の変化が±10%以内である素材)である。また、鞘部F2に含有されるポリオレフィンの240℃、150s
−1でのせん断粘度は、30Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましい。
【0048】
ポリオレフィンのメルトフローレートは、ASTM D1238(測定温度190℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定される値を示す。この値は、上記の通り、芯部に含有される熱可塑性エラストマーよりも高い値であり、100g/10分以上であることが好ましい。ポリオレフィンのメルトフローレートが上記範囲にあると、熱可塑性エラストマーとの組み合わせによる芯鞘構造の繊維の製造がより容易にできる。なお、ポリオレフィンのメルトフローレートの上限値については、特に制限はないが、例えば、1500g/10分以下とすることができる。
【0049】
なお、鞘部F2に含有されるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられ、結晶性のものも非結晶性のものも使用可能である。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、ポリプロピレンとしては、プロプレンホモポリマー、プロピレン系二元共重合体、又はプロピレン系三元共重合体が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、上記したものの中でも、結晶性ポリプロピレンや結晶化度の低い(結晶化度:約45〜55%)のポリエチレンを使用することが好ましい。
【0050】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、その中でも、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0051】
直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)は、主成分であるエチレンと若干量のα−オレフィンとの共重合体であり、典型的にはチーグラー・ナッタ触媒等の配位アニオン重合触媒で製造される。直鎖状低密度ポリエチレンは、0.910〜0.925程度の密度(JIS K7112)を有しており、低密度で結晶性が低いものが伸長後の歪みが小さいため、密度は、0.915g/cm
3以上、0.940g/cm
3以下とすることが好ましい。共重合モノマーであるα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−オクテン等の炭素数4〜8αオレフィンが挙げられる。
【0052】
結晶性ポリプロピレンとしては、ハードエラスチック性を有するものであれば特に制限無く用いることができる。結晶性ポリプロピレンの好ましい例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンを主体とするエチレンとのコポリマー、及びプロピレンを主体とするα−オレフィンとのコポリマー等が挙げられる。
【0053】
結晶性ポリプロピレンは、その結晶化度が40%以上であることが好ましい。結晶化度が40%満たないと繊維の伸長回復率が不十分となる場合がある。なお、結晶化度は、DSC(示差走査熱量測定)法に従って測定された結晶の融解に要するエネルギーをもとに算出した値である。
【0054】
また、結晶性ポリプロピレンは、伸縮弾性が容易に発現し得る点から、その重量平均分子量が、1万以上100万以下であることが好ましく、2万以上60万以下であることが更に好ましい。
【0055】
不織布は、例えば、以下のメルトブロー法により製造することができる。すなわち、第一及び第二のエクストルーダと、フィードブロック・スプリッター・アセンブリと、オリフィスを有するメルトブロー・ダイと、を備えるブローンマイクロファイバー(BMF)装置を使用することができる。このようなBMF装置を用いることにより芯鞘構造の繊維を調製することができる。この繊維を繊維の流れ速度より十分遅いドラム回転スピードのドラムに吹き付けて、ドラム表面に繊維を集積させることによりウェブを形成することで、不織布を製造することができる。ドラムでロール状に巻き取ることにより、不織布を連続して製造することも可能である。
【0056】
まず、第一及び第二のエクストルーダにより、芯部となる熱可塑性エラストマー及び鞘部となるポリオレフィンをそれぞれ溶融し、フィードブロック・スプリッター・アセンブリに溶融樹脂を供給する。供給された溶融樹脂の流れは、その後、フィードブロック・スプリッター・アセンブリにより複数の溶融樹脂の流れに分離される。分離した溶融樹脂の流れは、ダイに到達する直前まで、互いに直接接触しない状態に保たれる。このようにすることで、異なる組成の溶融樹脂の流れの接触による溶融樹脂の流れの不安定化を抑制することが可能である。
【0057】
溶融樹脂の流れは、ダイに到達する直前で統合され、ポリオレフィン/熱可塑性エラストマー/ポリオレフィンとなる3層の溶融樹脂の流れとなり、ダイから押し出されることになる。ギアーポンプを調節することで、溶融樹脂の供給量を調整することも可能である。このように調節することで、統合された溶融樹脂に占める熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとの比を制御することができ、得られる芯鞘構造の繊維の性能を調整することが可能である。
【0058】
次に、ダイより押出される3層の溶融樹脂の流れに、高速の均一な加熱空気が供給される。供給された空気の高速な流れにより、押出された溶融樹脂の流れが延伸され、細長化する。この際、上記3層を構成する溶融樹脂層のメルトフローレートや粘度の関係により、繊維の構造が変化する。熱可塑性エラストマーよりもメルトフローレートが高く、低粘度であるポリオレフィンを選択する場合には、ポリオレフィンから構成される層が、中間層を包み込むようにして融合し、芯部と鞘部とを備える芯鞘構造の繊維を得ることができる。このように押出されることで得られた芯鞘構造の繊維を、繊維の流れ速度より十分遅いドラム回転スピードのドラムに吹き付けて、ドラム表面に繊維を集積させることによりウェブを形成し、不織布を製造することが可能である。なお、上述のポリオレフィンや熱可塑性エラストマーには、上述した他の成分も共存させることができる。
【0059】
上記の方法により製造された不織布は、製造時における不織布の送り方向であるMDとこれに垂直なCDとを有するが、実施形態に係る不織布は、不織布の方向に依存せず、MD及びCDのいずれの方向においても、柔軟に伸長し、変形させることが可能である。
【0060】
不織布は、その50%伸長時の応力が、機械方向と幅方向に限らずいずれの方向であっても、1.3N/25mm以下であることが好ましく、1.0N/25mm以下であることがより好ましく、0.5N/25mm以下であることが更に好ましい。一方、不織布における50%伸長時の応力の下限は、例えば、0.1N/25mm以上とすることができる。不織布の50%伸長時の応力が上記範囲にあると、容易に伸長させることができるので好ましい。
【0061】
不織布は一方面が平滑面とすることができる。不織布の一方面の平滑面は、ノズル孔と芯鞘構造の繊維を集積し巻取るドラムとの距離を製造時に制御することにより、調製することができる。
【0062】
不織布の坪量は、30g/m
2以下であることが好ましく、8g/m
2以上28g/m
2以下であるとより好ましく、15g/m
2以上25g/m
2以下であることが更に好ましい。不織布の坪量が上記範囲にあると、得られる不織布が軽量化し、通気性にも優れる。また、不織布の坪量が上記範囲にあると、得られる不織布は剛軟度が小さく(例えば、50mm以下)、MD及びTDのいずれの方向に対してもより柔軟に不織布が変形するようになり、柔らかい布地となる。これにより、おむつなどの用途に特に適するようになる。ここで、剛軟度は、JIS L1913の剛軟度測定(カンチレバー法)に基づいて測定される値を示す。
【0063】
不織布の厚さは、不織布を構成する繊維径及び坪量により規定される。一般的には、10〜500μmの範囲とすることができる。不織布の厚さが、上記範囲にあると不織布全体として、軽量であり、柔らかいものとなる。
【0064】
不織布は、その100%伸長時の伸長回復率が20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、50%であることが更に好ましい。不織布の伸長回復率が上記範囲にあると、例えば、衛生用品として用いた場合に、人体の動作に追従する機能に優れるようになる。
【0065】
本発明の実施形態に係る伸縮性積層体は、上記不織布と、間隔を置いて複数配置されたエラストマーストランドと、を含む伸縮性積層体であって、エラストマーストランドは、上記不織布に接合している領域と、上記不織布から離間している領域とを含むものである。このような伸縮性積層体とすることで、不織布が有する伸縮性を損なうことなく、伸長回復率をより大きくすることができる(例えば、50%以上、好ましくは80〜90%)。
【0066】
図2は、2層構造の伸縮性積層体の一例を示す斜視図である。2層構造の伸縮性積層体10は、
図2に示すように、不織布2と、間隔を置いて一方向に並列に複数配置されたエラストマーストランド4と、を有している。エラストマーストランド4は、不織布2に接合している領域と、不織布2から離間している領域とを有し、
図2の例では、不織布2は波状に成形されている。不織布2とエラストマーストランド4とは、熱融着により接合されていてもよく、接着剤を介して接合されていてもよい。
【0067】
図2に示すように、エラストマーストランド4は、伸縮性積層体10の機械方向であるMD方向に沿って延在しており、MD方向に垂直な伸縮性積層体10の幅方向であるCD方向に間隔を置いて多数配置されている。一方、波状に成形された不織布2には、エラストマーストランド4に接合する領域である谷部2aと、エラストマーストランド4から離間した領域であるアーチ状の山部2bと、がMD方向で交互に形成されている。谷部2a及び山部2bは、CD方向に沿って延在するように形成されている。谷部2a及び山部2bは、CD方向に沿って延在するように形成されている。谷部2aは、エラストマーストランド4に対してCD方向に伸びる線状に接合されている。なお、山部2bの形状は、CD方向から見てアーチ状となる形状に限られない。例えば山部2bは、CD方向から見て四角形状や三角形状となる形状であってもよい。
【0068】
伸縮性積層体10によれば、MD方向に伸縮性積層体10を伸ばす場合に生じる弾性力を二段階に変化させることができる。すなわち、伸縮性積層体10をMD方向に伸ばす場合、不織布2はエラストマーストランド4から離間して撓んでいる山部2bが伸ばされてフラットになるまで弾性力が十分に発揮されることはない。このため、最初の段階では、エラストマーストランド4の弾性力を上回る程度の軽い力で伸縮性積層体10を伸ばすことができる。そして、山部2bがフラットとなるまで伸ばされると、不織布2の弾性力がエラストマーストランド4の弾性力に加えられ、山部2bが伸ばされてフラットになるまでと同等の力で伸縮性積層体10を伸ばすことができなくなる。
【0069】
図3は、3層構造の伸縮性積層体の一例を示す斜視図である。3層構造の伸縮性積層体11は、
図3に示すように、間隔を置いてMD方向に並列に複数配置されたエラストマーストランド4と、エラストマーストランド4上に配置された波状に成形された不織布2と、エラストマーストランド4に対して不織布2の反対側に配置された不織布6と、を有している。
【0070】
エラストマーストランド4は、不織布2に接合している領域と、不織布2から離間している領域と、を有している。具体的には、エラストマーストランド4のうち不織布2と対向する面が、不織布2の谷部2aに対して接合している領域と、不織布2の山部2bに対して離間している領域と、を有している。すなわち、エラストマーストランド4のうち不織布2と対向する面の一部は、不織布2に接合されていない。不織布2とエラストマーストランド4とは、熱融着により接合されていてもよく、接着剤を介して接合されていてもよい。
【0071】
伸縮性積層体11は、エラストマーストランド4の両側に不織布2および6を有する3層構造であることから、伸縮性積層体11の表面をフラットな不織布6とすることができる。これを衛生用品等に適用した場合には、肌に接しても肌触りがよく、また、跡も残りにくく好ましい。
【0072】
図2および
図3において、波状に成形された不織布2における幅方向における1cm当たりの山部2bの数(ピッチ)は、0.39cm
−1以上、11.8cm
−1以下であることが好ましい。また、谷部2aの下端と山部2bの上端との高さの差は、0.1mm以上、5mm以下であることが好ましい。一方、山部7bの幅は、0.1mm以上、5mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0073】
エラストマーストランド4の繊維径は、15μm以上2mm以下であることが好ましく、50μm以上1mm以下であることがより好ましく、100μm以上500μm以下であることが更に好ましい。エラストマーストランド4の繊維径が上記範囲にあると、得られる伸縮性積層体の伸縮性が優れる。
【0074】
エラストマーストランド4は、その100%伸長時の伸長回復率が20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。エラストマーストランド4の伸長回復率が上記範囲にあると、例えば、衛生用品として用いた場合に、人体の動作に追従する機能に優れる点で好ましい。
【0075】
エラストマーストランド4は、伸縮性の調整が可能である材料からなることが好ましく、熱可塑性エラストマーが特に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、不織布を構成する芯鞘構造の繊維について述べた熱可塑性エラストマーの少なくとも1つを使用することができる。
【0076】
エラストマーストランド4に(4)スチレン系熱可塑性エラストマーが用いられる場合、代表的なものとして、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS共重合体)が挙げられる。
【0077】
SIS共重合体が用いられる場合は、SIS共重合体全体の重量を100重量%としたときのスチレン比率が、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、45重量%以下が特に好ましい。
【0078】
SIS共重合体のメルトフローレートは、流動性(加工性)及びエラストマーストランド4の安定性の点から高い方が好ましく、ある態様においては10以上45以下とすることができる。また、ある態様においては、SIS共重合体のメルトフローレートの下限を20、上限を40とすることができる。ここで、メルトフローレートはASTM D1238(測定温度200℃、測定荷重5.0kg)に基づいて測定される値を示す。
【0079】
SIS共重合体としては、未変性タイプのものも、変性タイプのものも使用できる。変性SIS共重合体は、例えばSIS共重合体に不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を付加反応(例えばグラフト化)させることにより得ることができる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、エンド−ビ−シクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸およびそれらの無水物、イミド化物などが挙げられる。
【0080】
SIS共重合体として、3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体を使用することもできる。また、ある態様においては、2種以上のSIS共重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
エラストマーストランド4には、上記重合体成分の他に、タッキファイヤー(粘着性付与剤)等の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤については、不織布を構成する芯鞘構造の繊維について述べた添加剤を同様に用いることができる。
【0082】
エラストマーストランド4は、芯鞘構造の繊維であることが好ましい。繊維の長手方向に垂直な断面の形状、芯鞘構造、芯部と鞘部との断面積の比率等については、不織布を構成する芯鞘構造の繊維について述べたことが妥当する。
【0083】
芯部としては、エラストマーストランド4に用いられるものとして上述した熱可塑性エラストマーを用いることができる。なかでもスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、上述した(4)スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン比率、SIS共重合体の場合のメルトフローレート、未変性・変性の使用可能性、分岐構造の有無、タッキファイヤー等の添加剤の含有の有無、含有量及びその種類等についても上述のとおりである。
【0084】
鞘部としては、不織布2及び不織布6に対して熱融着性を有する材料が好ましい。上述した不織布2が芯部F1と芯部F1を覆う鞘部F2とを含む鞘芯構造の繊維から構成されることから、エラストマーストランド4の鞘部として不織布を構成する繊維の鞘部F2と熱融着性の材料を用いることが好ましい。
【0085】
熱融着性のエラストマーストランド4の鞘部としては、非エラストマー成分を使用できる。非エラストマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。非エラストマー成分としては、結晶性のものも非結晶性のものも使用可能である。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、ポリプロピレンとしては、プロプレンホモポリマー、プロピレン系二元共重合体、又はプロピレン系三元共重合体が挙げられる。不織布を構成する繊維の鞘部F2との熱融着性の観点からは、エラストマーストランド4の鞘部を鞘材F2と同じ成分とすることが好ましく、特に、肌触りの観点から、エラストマーストランド4の鞘部成分及び鞘材F2を直鎖状低密度ポリエチレンとすることが好ましい。
【0086】
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、上述の不織布を構成する芯鞘構造の繊維における鞘部F2と同様のものを用いることができる。
【0087】
このように、エラストマーストランド4が、芯鞘構造の繊維からなる場合に、不織布を構成する繊維の鞘部F2と熱融着性の鞘部を有することで、熱融着によるエラストマーストランド4と、不織布2および不織布6と、の強い接合を実現することができる。また、エラストマーストランド4と、不織布2および不織布6と、を熱融着により強固に接合することができるので、伸縮性積層体10および11の製造時に接着剤を不要とすることもできる。
【0088】
上記の不織布2と、エラストマーストランド4と、を含む伸縮性積層体10は、例えば、以下に説明するような方法で得ることができる。
図4は、
図2に示す2層構造の伸縮性積層体の製造方法の一例を説明するための図である。
まず、メルトブロー法により製造されたシート状の不織布2は、
図4の矢印に示すように、波状の凹凸パターンを有する成形ロール300および301の間に送り出され、谷部2a及び山部2bを有する波状の不織布2に成形される。使用する成形ロール300および301を変えることにより、不織布2の形状(谷部2a及び山部2bの形状)や幅方向における1cm当たりの山部2bの数(ピッチ)を任意に変更することが可能である。波状に成形された不織布2は、成形ロール301の回転により、成形ロール301とチルロール302の間に送られる。
【0089】
一方、エクストルーダ303内では、熱可塑性エラストマーの可塑化が行われており、可塑化された熱可塑性エラストマーはエクストルーダ303から押し出されてTダイ304に供給される。Tダイ304を通ることで、エラストマーは多数のエラストマーストランド4へと成形される。Tダイ304から溶融状態で押し出されたエラストマーストランド4は、成形ロール301及びチルロール302の間に供給される。その後、成形ロール301及びチルロール302の間において、波状に成形された不織布2と多数のエラストマーストランド4とが接合されることで、2層構造の伸縮性積層体10が製造される。
【0090】
ここで、不織布2及びエラストマーストランド4の接合には、接着剤を用いてもよく、熱融着を利用してもよい。熱融着を利用する場合には、不織布2やエラストマーストランド4を構成する繊維の表面を前述した熱融着性の材料とすることで、接合強度を高めることができる。
【0091】
なお、3層構造の伸縮性積層体11を製造する場合には、成形ロール301及びチルロール302の間に不織布6を更に供給することで、3層構造の伸縮性積層体11を得ることができる。
【0092】
上述の本発明の一つの態様に係る不織布及び別の態様に係る伸縮性積層体は、おむつなどの衛生用品や家庭用品等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例に基づいて本発明の不織布、2層構造の伸縮性積層体及び3層構造の伸縮性積層体をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1)
不織布は以下の方法により製造した。
すなわち、下記表2に記載の成分からなる、熱可塑性エラストマー(芯部)及びポリオレフィン(鞘部)を含む芯鞘構造の繊維を、以下に記載のメルトブロー法により作製した。
第一のエクストルーダ(220℃)により、メルトフローレート(MFR)が160g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂(Dow Chemical社から市販のDNDA−1082)を溶融し約220℃に加熱したフィードブロック・スプリッター・アセンブリに供給した。一方、第二のエクストルーダ(260℃)により、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)樹脂(BASF社から市販のET870)を溶融し上記のフィードブロック・スプリッター・アセンブリに供給した。供給された溶融樹脂の流れを、スプリッター部により、それぞれ複数の流れに分割し、フィードブロック・スプリッター・アセンブリの出口の直前まで、互いに接触しない様に保持した。溶融樹脂の流れを出口で統合させ、ポリオレフィン/熱可塑性エラストマー/ポリオレフィンとなる3層の溶融樹脂の流れとした。この際、溶融樹脂の供給量を調整するギアーポンプを調節することによりポリオレフィン(LLDPE):熱可塑性エラストマー(TPU)が重量比%で20:80となるように溶融樹脂を供給し、長さ/直径の比が5:1の円形の滑らかな表面のオリフィス(10個/cm)をもつメルトブロー・ダイ(220℃)のダイ幅当たりのポリマー処理速度が、0.14kg/hr/cm(0.8lb/hr/in.)となるように保持した。
【0095】
押出された溶融樹脂に対し、加熱空気(約230℃)を高速で供給し、0.076cmのギャップ幅で、均一な不織布を形成するに適した圧力に保持した。この際、BMFダイより射出された3層の溶融流れは、MFRの低いポリオレフィン層が熱可塑性エラストマーを包み込むようにして、融合し、芯部と鞘部とを備える芯鞘構造の繊維へと成形される。この芯鞘構造の繊維を、繊維の流れ速度より十分遅いドラム回転スピードのドラムに吹き付けて、ドラム表面に繊維を集積させることによりウェブを形成し、不織布を得た。得られた不織布はドラムで巻き取った。BMFダイとドラムとの間隔は15.24cm(6インチ)であった。得られた不織布は、芯部と鞘部を備えた芯鞘構造の繊維を含み、繊維の平均直径が15μmであり、断面における芯部と鞘部との面積比率は、80:20であった。不織布の坪量は15g/m
2であった。
【0096】
(実施例2〜5及び比較例1〜3)
表2及び表3に記載の成分を用い、実施例1と同様にして不織布を製造した。得られた繊維の平均直径、断面における芯部と鞘部の面積比率、不織布の坪量は、表2及び3に示す。
【0097】
(せん断粘度の測定)
表2及び表3に記載の芯部及び鞘部を構成する重合体について、以下の方法でせん断粘度を測定した。
重合体をホットプレートにより、約1mm厚にヒートプレスした。なお、ヒートプレスの際の温度は、重合体の種類、溶融温度によって決定し、重合体の溶融温度(150〜240℃の範囲)とした。なお、TPUについては、ヒートプレス前に70℃ドライヤーで数時間乾燥させた。ヒートプレス後の重合体を25mmΦに切り出して試験片とした。この試験片を用い、DMA測定器(ティー・エイ・インスツルメントジャパン株式会社製の粘弾性測定装置(ARES))により、せん断粘度を測定した。せん断粘度の測定は、コーン&プレート粘度測定法に基づき、温度240℃(220〜260℃の間で選ばれた温度)、せん断速度150S
−1で行った。
この測定により、温度240℃、せん断速度150S
−1において、表2及び表3に記載の組成に関し、鞘部のせん断粘度が芯部のせん断粘度より低い値であることを確認した。下記表1に、その値を示す。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例6)
伸縮性積層体に用いられる不織布(フラット、波状)は以下の方法により作製した。
不織布(フラット)は、下記表4に記載の成分で構成される芯鞘構造の繊維を含む不織布を、実施例1と同様にして製造し、これを用いた。繊維断面における芯部と鞘部の面積比率は、80:20である。不織布の繊維径は12μm、坪量は20.5g/m
2であった。
不織布(波状)は、上記の様にして得られた不織布を用い、
図4に示すような装置を用いて、成形ロールにより、不織布の幅方向における1cm当たりの山部2bの数(ピッチ)が3.93cm
−1、谷部2aの下端と山部2bの上端との高さの差が1mm、山部2bの幅が1mmの波状となるように成形した。
【0100】
伸縮性積層体に用いられるエラストマーストランドは以下の方法により作製した。
Tダイ1軸溶融押出し機とチルロールとからなるフィルム製造装置(田辺プラスチック機械工業株式会社製、型番:VS30)を用い、実施例1と同様な方法で、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(Zeon社から市販のQuintac 3390)からなる芯部を直鎖状低密度ポリエチレン(ExxonMobail社から市販の6201XR)からなる鞘部で覆った、直径0.5mmの円形状断面を有するエラストマーストランドを作製した。断面における芯部と鞘部との面積比率は、99:1とした。エラストマーストランドの坪量は20g/m
2とした。
【0101】
2層構造の伸縮性積層体は以下の方法により製造した。
エラストマーストランドに対する不織布(波状)の接合は、200℃以上、300℃以下の温度で熱融着させることで行い、2層構造の伸縮性積層体を得た。不織布(波状)は、谷部2aにおいてエラストマーストランドと接合しており、山部2bはエラストマーストランドと離間している。
【0102】
3層構造の伸縮性積層体は以下の方法により製造した。
上記の様にして得られ2層構造の伸縮性積層体の製造時に、不織布(波状)と上記の不織布(フラット)とでエラストマーストランドを挟み込むように、不織布(フラット)を供給し、エラストマーストランドと不織布の接合を行った。エラストマーストランドに対する不織布の接合は、200℃以上、300℃以下の温度で熱融着させることで行い、3層構造の伸縮性積層体を得た。不織布(波状)は、谷部2aにおいてエラストマーストランドと接合しており、山部2bはエラストマーストランドから離間している。一方、不織布(フラット)は、全面において、エラストマーストランドと接合している。
【0103】
(実施例7〜15及び比較例4〜8)
下記表4〜表6に記載の成分を用い、上記と同様の方法により、実施例および比較例の不織布、2層構造の伸縮性積層体および3層構造の伸縮性積層体を作製した。
【0104】
(応力・ひずみ試験)
得られた不織布及び伸縮性積層体を幅25mm、長さ80mmの長方形状に形成して、MD方向及びCD方向の双方について、応力・ひずみ試験を行った。応力・ひずみ試験では、伸縮性積層体を25mmのチャック間距離で挟み込み、引張速度を300mm/minとして、伸縮性積層体の伸びが100%となるまで引張した後に戻すサイクルを二回行った。
図5は、ひずみ試験において伸縮性積層体に生じる応力と伸びとの関係を示す図である。
図5に示すように、第1の荷重工程及び第1の戻り工程を1回目のサイクル、第2の荷重工程及び第2の戻り工程を2回目のサイクルとして、1回伸長時(50%、100%荷重)及び2回戻り時(50%荷重)の応力、2回目のサイクル後のひずみ(第2のひずみ)の計測を行った。結果を表2〜表6に記載する。
【0105】
(剛性試験)
カンチレバー式に従い、得られた不織布及び伸縮性積層体について剛性試験を行った。
15mm×150mmの試験片を傾斜45度の斜面を前方に有する台形型の試験機の上底面に設置した。この際、試験片の長手方向の一方の端部が試験機の上底面の前端と重なるように調整し、試験片の長手方向の他方の端部の位置(初期位置)を記録した。その後、試験片を上底面の前端から迫り出すように移動させ、試験片が試験機の斜面に接地した際の、試験片の迫り出した距離を求めた。この距離は、試験片の上記他方の端部が、試験機の上底面における初期位置からを移動した距離(mm)を測定することで求めた。試験片の迫り出した距離に基づき、試験片の剛性を評価した。結果を表2〜表6に記載する。
【0106】
(表面柔らかさ試験:肌触り)
得られた不織布及び伸縮性積層体についての肌触りを下記の官能試験方法にて観察し、下記基準に基づき好適な肌触りを有しているか否かについて評価した。
幅150mm以上、長さ250mm以上の試験片を作製し、テーブルに置いた(伸縮性積層体の場合には不織布が上になるようにした)。次に、試験片が試験者の正面に位置するように配置した。右手の甲を試験片に当て、手前から右へスライドさせる動作を3回くりかえした。その時、試験者はテーブルを押す方向に力を加えないこととした。
試験片の肌触りを5段階で評価した。肌触りに優れるもの(非常に滑らかであって、非常にスムーズに動き、且つ非常にさらさらしているもの)を5とし、肌触りに劣るものを1とした。結果を表2〜表6に記載する。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
表2〜表6中の芯部及び鞘部の成分の記号は、以下の成分を意味する。
TPU:ウレタン系熱可塑性エラストマー(BASF社製 ET870,C65A、Huntsman社製 PS440)
SEBS:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(Kraton社製 G 1657)
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(Dow Chemical社製 DNDA−1082,DNDB−1077、ExxonMobil社製 6201XR)
SIS:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(Zeon社製 Quintac 3390)
PP:ポリプロピレン(Basel社製、MF650W、Total社製 3860X)