(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカバー板は複合板として構成されることによって全体の剛性が確保されている。しかし、搬送面と着磁用マグネットとの間のギャップを規定している表面側のカバー板は、例えば0.3mm以下の極薄の板材であり、剛性が低く、湾曲したり捻れたりして、変形しやすい。従って、この表面側のカバー板の取り扱いが容易ではない。
【0007】
ここで、表面側のカバー板の厚みを増加させて剛性を確保して、その扱いを容易にしようとすると、搬送面と着磁用マグネットとの間のギャップが拡大してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、表面が媒体の搬送面となるカバー板の剛性を確保した場合でも、搬送面と着磁用マグネットの間のギャップを狭くできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の磁気センサ装置は、
読み取り対象の媒体を着磁するための着磁用マグネットと、
表面に前記媒体が搬送される搬送面を備え、裏面に前記着磁用マグネットの一部分が挿入されて固定された凹部を備えるカバー板と、
前記カバー板の裏面に積層固定され、前記着磁用マグネットにおいて前記凹部の開口から突出している突出部分が挿入された貫通孔を備える支持板と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、着磁用マグネットを保持する部材が、積層固定されたカバー板と支持板から構成されているので、この部材全体としての剛性を確保することができる。よって、カバー板および支持板が磁気センサ装置の筐体から剥がれることを防止できる。また、表面に搬送面を備えるカバー板の裏面には凹部が形成され、この凹部に着磁用マグネットが固定されているので、媒体が搬送される搬送面と着磁用マグネットの間のギャップは凹部の底面部分と搬送面との間の寸法となる。従って、カバー板の扱いを容易にするためにカバー板の剛性を確保した場合でも、搬送面と着磁用マグネットの間のギャップを狭くすることができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記貫通孔は、前記カバー板と前記支持板の積層方向から見たときに、前記凹部の内側に位置しており、前記着磁用マグネットは、前記貫通孔より小さく、且つ、前記貫通孔内に配置され
、前記凹部に充填された接着剤によって前記凹部内に固定されて前記凹部内の位置が規定されているので、カバー板と支持板を積層固定した後に、支持板の裏面側から着磁用マグネットを貫通孔内に挿入することによって、着磁用マグネットをカバー板上の配置目標位置(凹部内の配置目標位置)に位置させることができる。
【0012】
本発明において、前記カバー板は非磁性金属であり、前記凹部の内周面は、前記搬送面と平行な底面部分、前記裏面から前記搬送面の側に向かって延びる環状壁部分、および、前記底面部分と前記環状壁部分とを連続させている湾曲面部分とを備え、前記着磁用マグネットは前記底面部分に当接していることが望ましい。金属製のカバー板に設けられる凹部が底面部分と環状壁部分の間に湾曲面部分を備えるものであれば、凹部をエッチング、タレットパンチプレス、レーザー加工などにより簡易に形成することができる。ここで、カバー板上のマグネットの位置は凹部の形状によって規定されているのではなく、支持板の貫通孔によって規定されるので、凹部において着磁用マグネットが当接する底面部分と環状壁部分の間に角部が設けられていなくても、マグネットをカバー板上の配置目標位置に配置することができる。また、凹部の底面部分の外周側に湾曲面部分が連続しているので、底面部分に力が加わったときに湾曲面部分を介して応力が分散される。この結果、底面部分の変形を防止或いは抑制できる。ここで、底面部分は着磁用マグネットの設置面となるので、底面部分の変形を抑制できれば、搬送面と着磁用マグネットとの間のギャップを均一にできる。
【0013】
本発明において、前記凹部は、エッチングにより形成されていることが望ましい。エッチングであれば、凹部の底面部分を搬送面と平行な状態に加工することが容易であり、搬送面と着磁用マグネットの間のギャップを均一なものとすることができる。
【0014】
本発明において、前記着磁用マグネットは接着剤によって前記カバー板および前記支持板に固定されており、前記支持板において前記凹部の内側に突出している前記貫通孔の開口縁部分と前記凹部において前記貫通孔よりも外周側に位置している凹部部分とにより形成されている空間は、前記接着剤で満たされていることが望ましい。このようにすれば、支持板の開口縁部分と凹部において貫通孔よりも外周側に位置している凹部部分とにより形成されている空間に満たされた接着剤が着磁用マグネットの脱落を阻止するアンカーとして機能するので、着磁用マグネットのカバー板および支持板への固定を確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着磁用マグネットを保持する部材が、積層固定されたカバー板と支持板から構成されているので、この部材全体としての剛性を確保することができる。よって、カバー板および支持板が磁気センサ装置の筐体から剥がれることを防止できる。また、表面に搬送面を備えるカバー板の裏面には凹部が形成され、この凹部に着磁用マグネットが固定されているので、媒体が搬送される搬送面と着磁用マグネットの間のギャップは凹部の底面部分と搬送面との間の寸法となる。従って、カバー板の扱いを容易にするためにカバー板の剛性を確保した場合でも、搬送面と着磁用マグネットの間のギャップを狭くすることができる。さらに、前記貫通孔は、前記カバー板と前記支持板の積層方向から見たときに、前記凹部の内側に位置しており、前記着磁用マグネットは、前記貫通孔より小さく、且つ、前記貫通孔内に配置され
、前記凹部に充填された接着剤によって前記凹部内に固定されて前記凹部内の位置が規定されているので、カバー板と支持板を積層固定した後に、支持板の裏面側から着磁用マグネットを貫通孔内に挿入することによって、着磁用マグネットをカバー板上の配置目標位置(凹部内の配置目標位置)に位置させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置を搭載する磁気パターン検出装置を説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は本発明を適用した磁気センサ装置を搭載する磁気パターン検出装置の説明図である。
図1に示すように、磁気パターン検出装置1は、銀行券、有価証券等のシート状の媒体2を送経路3に沿って搬送する媒体搬送機構4と、送経路3に設けられた磁気読み取り位置Aで媒体2の磁気パターンを検出する磁気センサ装置5を有している。
【0019】
磁気センサ装置5は、磁気読み取り位置Aを媒体搬送方向Xの第1方向X1から通過する媒体2に着磁を行う第1着磁用マグネット群6と、磁気読み取り位置Aを第1方向X1とは逆の第2方向X2から通過する媒体2に着磁を行う第2着磁用マグネット群7と、第1着磁用マグネット群6或いは第2着磁用マグネット群7によって着磁された状態で磁気読み取り位置Aを通過する媒体2の磁気パターンを読み取る磁界検出部8を備えている。磁界検出部8は着磁された媒体2にバイアス磁界を印加した状態として磁束を検出するものであり、磁気パターン検出装置1は磁界検出部8からの検出波形をリファレンス波形と照合することによって、媒体2の真偽判定や種類を判別する。
【0020】
(磁気センサ装置)
図2、
図3を参照して磁気センサ装置5を詳細に説明する。
図2(a)は磁気センサ装置5における第1着磁用マグネット群6、第2着磁用マグネット群7および磁界検出部8のレイアウトを示す斜視図であり、
図2(b)は磁気センサ装置5の概略断面図であり、
図2(c)は着磁用マグネットの周辺を拡大して示す部分断面図である。
図3(a)は積層固定されたカバー板と支持板を下方から見た斜視図であり、
図3(b)はカバー板を下方から見た斜視図であり、
図3(c)は支持板を下方から見た斜視図である。なお、以下の説明では、便宜上、磁気センサ装置5の上下を図面の上下に従って説明する。
【0021】
磁気センサ装置5は、
図2(a)に示すように、磁界検出部8を搭載しているフレーム10と、このフレーム10の上端部分に取り付けられたカバー板11および支持板12を備えている。カバー板11は支持板12の上方に積層されて拡散接合或いは接着剤などによって固定されて一体化している。第1着磁用マグネット群6および第2着磁用マグネット群7は一体化されたカバー板11および支持板12によって保持されている。
図2(b)に示すように、カバー板11は第1着磁用マグネット群6および第2着磁用マグネット群7のそれぞれを構成している複数のマグネット16が磁気読み取り位置Aを通過する媒体2によって磨耗しないように、各マグネット16の上端部分を覆っている。支持板12は各マグネット16の下側部分を側方から支持している。
【0022】
フレーム10は樹脂などの非磁性材料から形成されている。
図2(b)に示すように、フレーム10の上端面101の媒体搬送方向Xの中央部分には、一体化されたカバー板11および支持板12を取り付けるための矩形の凹部102が形成されている。凹部102の媒体搬送方向Xの両側には外側に向かって下方に傾斜する傾斜面103が設けられている。
【0023】
凹部102は、一定深さであり、媒体搬送方向Xと直交する方向に一定幅で延びている。凹部102の媒体搬送方向Xの中央部分には磁界検出部8が構成されている。磁界検出部8の上端面はセンサ面8aとなっており、フレーム10の上端面101と同一平面上に位置している。磁界検出部8は、媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列された複数の磁気センサ素子13を備えている。
【0024】
カバー板11は、非磁性のステンレス鋼製である。
図3(b)に示すように、カバー板11は矩形の輪郭形状を備えるとともに、媒体搬送方向Xの中央部分に矩形の開口部111を備えている。カバー板11の表面は、媒体2を搬送するための搬送面11aとなっている。カバー板11の裏面11b(下面)には、開口部111の第1方向X1の上流側に第1凹部群112が形成されている。また、開口部111の第2方向X2の上流側に第2凹部群113が形成されている。第1凹部群112および第2凹部群113は、それぞれ複数の凹部114を備えており、これら複数の凹部114のそれぞれは媒体搬送方向Xと直交する方向に一定ピッチで配列されている。
【0025】
各凹部114の開口114aは矩形をしている。また、
図2(c)に示すように、各凹部114の内周面は、搬送面11aと平行な底面部分114b、カバー板11の裏面11bから搬送面11aの側に向かって延びる環状壁部分114c、および、底面部分114bと環状壁部分114cとを連続させている湾曲面部分114dとを備えている。湾曲面部分114dとは、底面部分114bと環状壁部分114cを連続させるアールの部分である。開口部111、第1凹部群112(凹部114)および第2凹部群113(凹部114)はエッチングにより形成されている。
【0026】
支持板12は、非磁性のステンレス鋼製であり、一定厚さを備えている。
図3(c)に示すように、支持板12の輪郭形状はカバー板11の輪郭形状と同一であり、媒体搬送方向Xの中央部分に開口部111と同一形状の開口部121を備えている。また、支持板12は、開口部121の第1方向X1の上流側に第1貫通孔群122を備えており、開口部121の第2方向X2の上流側に第2貫通孔群123を備えている。第1貫通孔群122および第2貫通孔群123は、それぞれ上下方向に貫通する複数の貫通孔124を備えており、これら複数の貫通孔124は媒体搬送方向Xと直交する方向に一定のピッチで配列されている。各貫通孔124は上下方向から見た平面形状が矩形をしている。開口部121、第1貫通孔群122(貫通孔124)および第2貫通孔群123(貫通孔124)はエッチングにより形成されている。
【0027】
カバー板11と支持板12は、上下方向から見たときに、開口部111と開口部121が一致した状態で積層されて固定されている。カバー板11と支持板12が積層された状態では、上下方向(カバー板11および支持板12の積層方向)から見たときに、支持板12の各貫通孔124はカバー板11の各凹部114と重なる位置に配置される。また、
図2(c)に示すように、各凹部114の開口114aは各貫通孔124の平面形状よりも大きく、上下方向から見たときに、各貫通孔124は、各凹部114の内側に位置している。
【0028】
図2に示すように、第1着磁用マグネット群6および第2着磁用マグネット群7は、それぞれ複数のマグネット(着磁用マグネット)16を備えている。各マグネット16はフェライトやネオジウム磁石等の永久磁石であり、互いに同一の磁力を備えている。また、各マグネット16は、支持板12の各貫通孔124に挿入可能な直方体形状をしており、互いに同一の形状を備えている。
【0029】
各マグネット16を一体化されたカバー板11および支持板12に保持させる際には、まず、各マグネット16を、カバー板11および支持板12に対して、支持板12の側から当該支持板12の各貫通孔124に挿入する。すなわち、各マグネット16の挿入方向の先端部分16aをカバー板11の凹部114内に挿入して、その先端面16bを凹部114の底面部分114bに当接させる。これにより、各マグネット16において各凹部114の開口114aから突出している後側部分(突出部分)16cが貫通孔124内に位置する。
【0030】
ここで、各貫通孔124はカバー板11および支持板12の積層方向から見たときに各凹部114の内側に位置している。従って、マグネット16を貫通孔124に挿入することによって凹部114内におけるマグネット16の位置が規定される。すなわち、マグネット16を貫通孔124内に配置することにより、マグネット16はカバー板11上の配置目標位置に(凹部114内の配置目標位置に)配置される。なお、各マグネット16の積層方向の厚さ寸法は、
図2(c)に示すように、凹部114の深さ寸法および支持板12の厚さ寸法を合計した合計寸法以下となっている。従って、各マグネット16の先端面16bを凹部114の底面部分114bに当接させた状態とすると、各マグネット16の挿入方向の後端は支持板12の裏面12b(下面)から外側に突出しない状態となる。
【0031】
次に、各マグネット16は、接着剤Rによってカバー板11および支持板12に固定される。すなわち、各マグネット16の先端面16bを凹部114の底面部分114bに当接させた状態とした後に、支持板12の側から当該支持板12の各貫通孔124および凹部114内に接着剤Rが充填され、この接着剤Rにより各マグネット16のカバー板11および支持板12への固定が成される。
【0032】
ここで、各マグネット16は各貫通孔124に対して隙間無く嵌合する大きさではなく、各マグネット16と各貫通孔124の内周面との間には隙間が設けられている。従って、各マグネット16を貫通孔124に挿入した後に、これらの隙間を介して貫通孔124および凹部114に接着剤Rを充填することができる。また、接着剤Rの充填によって、支持板12において凹部114の内側に突出している貫通孔124の開口縁部分12cと凹部114において前記貫通孔124よりも外周側に位置している凹部部分114eとにより形成されている空間Sは接着剤Rで満たされる。この結果、空間Sに満たされた接着剤Rがマグネット16の脱落を阻止するアンカーとして機能するので、マグネット16の固定を確実なものとすることができる。なお、各マグネット16と各貫通孔124の内周面との間には隙間が設けられているので、各マグネット16を接着剤Rで固定する際に、各貫通孔124内で各マグネット16のカバー板11上における位置を微調整することが可能である。
【0033】
各マグネット16がカバー板11および支持板12保持されると、第1凹部群112の各凹部114および第1貫通孔群122の各貫通孔124により保持された各マグネット16によって第1着磁用マグネット群6が構成され、第2凹部群113の各凹部114および第2貫通孔群123の各貫通孔124によって保持された各マグネット16によって第2着磁用マグネット群7が構成される。第1着磁用マグネット群6の各マグネット16は、媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列されており、第2着磁用マグネット群7の各マグネット16は媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列されている。また、第1着磁用マグネット群6のマグネット16と第2着磁用マグネット群7のマグネット16は、媒体搬送方向Xから見たとき重なっている。
【0034】
第1着磁用マグネット群6および第2着磁用マグネット群7を保持したカバー板11および支持板12を接着剤を用いてフレーム10の凹部102に取り付けると、
図2(a)に示すように、カバー板11の開口部111の内側に磁界検出部8のカバー板11の側の部位が挿入され、カバー板11の搬送面11aと磁界検出部8のセンサ面8aが同一平面上に位置する。また、磁界検出部8の第1方向X1の上流側に第1着磁用マグネット群6が配置され、磁界検出部8の第2方向X2の上流側に第2着磁用マグネット群7が配置される。さらに、磁界検出部8は第1着磁用マグネット群6と第2着磁用マグネット群7の中間に位置し、磁界検出部8が搭載している複数の磁気センサ素子13のそれぞれは、媒体搬送方向Xから見たときに、第1着磁用マグネット群6のマグネット16および第2着磁用マグネット群7のマグネット16と重なる。
【0035】
なお、本例では、
図2(a)に示すように、第1着磁用マグネット群6および第2着磁用マグネット群7のそれぞれにおいて、媒体搬送方向Xと直交する方向で隣り合うマグネット16同士は、互いに反対の向きに着磁されている。より具体的には、媒体搬送方向Xと直交する方向に配列された複数のマグネット16のうち、1つのマグネット16は搬送面11aの側に位置する端部がN極に着磁され、搬送面11aとは反対側に位置する端部はS極に着磁されており、このマグネット16に対して媒体搬送方向Xと直交する方向で隣り合うマグネット16は、搬送面11aに位置する端部がS極に着磁され、搬送面11aとは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。
【0036】
また、本例では、
図2(b)に示すように、媒体搬送方向Xで対向する第1着磁用マグネット群6のマグネット16と第2着磁用マグネット群7のマグネット16は、磁界検出部8を挟んで異なる極が対向している。より具体的には、媒体搬送方向Xで対向する第1着磁用マグネット群6のマグネット16、および第2着磁用マグネット群7のマグネット16のうち、一方のマグネット16は搬送面11aの側に位置する端部がN極に着磁されており、他方の各マグネット16は搬送面11aに位置する端部がS極に着磁されている。なお、第1着磁用マグネット群6との磁界検出部8との間の距離と、第2着磁用マグネット群7と磁界検出部8との間の距離が等しくなっているので、磁界検出部8が配置されている位置では、第1着磁用マグネット群6の磁界と第2着磁用マグネット群7の磁界が中和している。
【0037】
(磁気センサ素子)
図4は磁界検出部8に搭載されている磁気センサ素子13の説明図である。磁気センサ素子13は、アモルファスあるいはパーマロイからなる薄板状のセンサコア131を備えており、センサコア131の厚さ方向を媒体搬送方向Xに向けて配置されている。センサコア131には、コイル線が巻き回されることにより、バイアス磁界を発生させるための励磁コイル132と、媒体2の磁気パターンを検出するための検出コイル133が構成されている。
【0038】
より詳細には、センサコア131は、胴部131aと、胴部131aの上端部の中央部分から搬送面11aの側に突出した第1突部131bと、第1突部131bとは反対側で胴部131aの下端部の中央部分から下方に突出した第2突部131cと、胴部131aの上端部の第1突部131bの両側、および、胴部131aの下端部の第2突部131cの両側からそれぞれ突出した第3突部131dを備えている。励磁コイル132は、胴部131aにおいて、第1突部131bおよび第2突部131cと、第3突部131dとの間に挟まれている部位にコイル線が巻き回されることにより構成されている。検出コイル133は、第1突部131bにコイル線が巻き回されることにより構成されている。
【0039】
(磁気パターン検出装置の磁気パターン検出動作)
図1、
図4および
図5を参照して、磁気パターン検出装置の磁気パターン検出動作を説明する。
図5(a)は磁気センサ素子13の励磁波形であり、
図5(b)は磁気センサ素子13からの検出波形である。
図1に示すように、磁気パターン検出装置1において媒体2が送経路3を第1方向X1或いは第2方向X2に搬送されると、媒体2は、磁気読み取り位置Aに至る前に、第1着磁用マグネット群6或いは第2着磁用マグネット群7により着磁される。そして、着磁された媒体2は磁界検出部8による磁気読み取り位置Aを通過する。
【0040】
磁界検出部8では、
図5(a)に示すように、励磁コイル132に交番電流が定電流で印加されており、センサコア131の周りには、
図4において点線で示すバイアス磁界が形成されている。媒体2が磁気読み取り位置Aを搬送されると、検出コイル133からは、
図5(b)に示す検出波形の信号が出力される。検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号となる。
【0041】
ここで、磁気センサ素子13からの検出波形の形状、ピーク値およびボトム値は、磁気パターンの形成に用いられている磁気インキの種類、磁気パターンの位置、および、形成されている磁気パターンの濃淡によって変化する。従って、かかる検出波形を、予め記憶保持しているリファレンンス波形と照合することにより、媒体2の真偽判定および媒体2の種類の判別を行うことができる。
【0042】
(作用効果)
本例によれば、マグネット16を保持する部材が、積層固定されて一体化されたカバー板11および支持板12から構成されているので、この部材全体としての剛性が確保されている。従って、カバー板11および支持板12が磁気センサ装置5のフレーム10から剥がれることを防止できる。
【0043】
また、表面に搬送面11aを備えるカバー板11の裏面11bには凹部114が形成され、この凹部114にマグネット16が固着されている。従って、媒体2が搬送される搬送面11aとマグネット16の間のギャップG(
図2(c)参照)は、凹部114の底面部分114bと搬送面11aとの間の寸法となる。よって、カバー板11を厚くしてカバー板11の剛性を確保した場合でも、搬送面11aとマグネット16の間のギャップGを狭くすることができる。
【0044】
ここで、本例では、カバー板11の剛性を確保したので、カバー板11の剥離強度が向上し、カバー板11が支持板12から剥がれることが防止或いは抑制されている。
【0045】
また、カバー板11の剛性を確保したので、カバー板11の湾曲や捻れを抑制でき、カバー板11の変形を防止できる。従って、装置の製造工程においてカバー板11の扱いが容易である。
【0046】
さらに、マグネット16を保持するカバー板11の湾曲や捻れが抑制されているので、搬送面11aとマグネット16のギャップGが均一となる。
【0047】
また、本例では、カバー板11の剛性を確保したので、カバー板11の剥離強度が向上している。従って、カバー板11および支持板12の積層固定をする際に、接着剤を用いることもできる。ここで、カバー板11および支持板12の積層固定に接着剤を用いた場合には、拡散接合によってカバー板11および支持板12を接合する場合と比較して、積層固定作業が簡易なものとなるので、装置の製造コストを抑制することができる。
【0048】
次に、本例では、凹部114の底面部分114bの外周側に連続して湾曲面部分114dが設けられている。従って、底面部分114bに力が加わったときに湾曲面部分114dを介して応力が分散される。この結果、底面部分114bの変形を防止或いは抑制できる。ここで、底面部分114bはマグネット16の設置面となるので、底面部分114bの変形を抑制できれば、搬送面11aとマグネット16の間のギャップを均一にできる。
【0049】
また、本例では、カバー板11上のマグネット16の配置位置は、カバー板11の凹部114の形状によって規定されるのではなく、支持板12の貫通孔124によって規定される。従って、凹部114の底面部分114bと環状壁部分114cの間に角部が形成されていなくても、マグネット16をカバー板11上の配置目標位置に配置することができる。ここで、カバー板11上のマグネット16の配置位置が支持板12の貫通孔124によって規定されているので、凹部114が底面部分114bの外周側に湾曲面部分114dを備えている場合でも、マグネット16を湾曲面部分114dと干渉しない底面部分114b上の位置に配置することが容易である。
【0050】
さらに、本例では、マグネット16をカバー板11上の配置目標位置に配置するために、底面部分114bと環状壁部分114cの間に角部を形成する必要がないので、凹部114の形成にエッチングを用いることができる。
【0051】
また、本例では、凹部114がエッチングにより形成されているので、凹部114の底面部分114bを搬送面11aと平行な状態に正確に加工することができる。従って、搬送面11aと各マグネット16との間のギャップGが均一でなかったり、ばらついたりすることを回避できる。
【0052】
(その他の実施の形態)
上記の例では、カバー板11の凹部114の形成にエッチングを用いているが、底面部分114bと環状壁部分114cの間に角部を形成する必要がないので、エッチングに代えて、タレットパンチプレス、レーザー加工などを用いることもできる。
【0053】
上記の例では、カバー板11の厚さ寸法の方が支持板12の厚さ寸法よりも大きくなっているが、カバー板11と支持板12は同一の厚さ寸法を備えていてもよい。また、支持板12の厚さ寸法の方がカバー板11の厚さ寸法よりも大きくてもよい。
【0054】
上記の例では、各マグネット16をカバー板11および支持板12に固定する際に、各マグネット16と各貫通孔124の内周面との間の隙間を利用して各マグネット16のカバー板11上における位置を微調整しているが、各マグネット16の側面を各貫通孔124の内周面部分に当接させることによって、各マグネット16を位置決めしてもよい。
【0055】
また、上記の例では、各マグネット16の厚さ寸法は、凹部114の深さ寸法と支持板12の厚さ寸法の合計寸法以下となっているが、合計寸法より大きくてもよい。すなわち、各マグネット16の挿入方向の後端が支持板12の裏面12bから外側に突出していてもよい。