(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188315
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】飛しょう体
(51)【国際特許分類】
F42B 10/46 20060101AFI20170821BHJP
B64C 1/36 20060101ALI20170821BHJP
B64G 1/64 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
F42B10/46
B64C1/36
!B64G1/64 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-259039(P2012-259039)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105924(P2014-105924A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】久保田 知里
(72)【発明者】
【氏名】中村 真徳
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0169841(US,A1)
【文献】
特開平09−196599(JP,A)
【文献】
特開平10−221000(JP,A)
【文献】
特開平10−227600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 10/42 − 10/46
F42B 15/34
B64G 1/64
B64C 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2分割式のドームカバーを備えた飛しょう体であって、
前記2分割式のドームカバーは、分離可能な第1ドームカバーと第2ドームカバーとを有し、
前記第1ドームカバーと前記第2ドームカバーの各々は、
外殻と、
前記外殻の先端から前記外殻とは異なる方向に延びる内壁部と
を備え、
前記第1ドームカバーと前記第2ドームカバーの各々は、更に、前記外殻と前記内壁部との間の間隙に設けられた底部を備え、
前記第1ドームカバーの前記外殻と、前記第1ドームカバーの前記内壁部と、前記第1ドームカバーの前記底部とによって囲まれた領域は、第1中空密閉領域であり、
前記第2ドームカバーの前記外殻と、前記第2ドームカバーの前記内壁部と、前記第2ドームカバーの前記底部とによって囲まれた領域は、第2中空密閉領域であり、
前記第1中空密閉領域は、第1断熱領域として機能し、前記第2中空密閉領域は、第2断熱領域として機能する
飛しょう体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛しょう体に関する。特に、本発明は、飛しょう体のドームカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、典型的な飛しょう体を示している。飛しょう体は、胴体の一部に形成されたドーム(光学ドーム)を備えている。また、胴体で囲まれた空間内には光波シーカが搭載されている。この光波シーカは、ドームを通して入射する赤外線等に基づいて、目標を検出する。更に、ドームを覆うようにドームカバーが設けられている。このドームカバーは、光波シーカが作動するまでドームを保護する役割を果たし、所定のタイミングにおいて展開される。
【0003】
ドームカバーの展開方式として、「2分割方式」が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。以下、
図2〜
図4を参照して、典型的な2分割式ドームカバーについて説明する。
【0004】
図2は、2分割式ドームカバーのうち片側のドームカバー1を示している。ドームカバー1は、外殻2を備えている。外殻2の先細っている側が先端側であり、その反対側が後端側である。外殻2の後端付近にはヒンジ8が形成されている。
【0005】
図3は、2つのドームカバー1が合わさった状態(展開前の状態、閉じた状態)を概念的に示している。便宜上、一方を第1ドームカバー1Aと参照し、他方を第2ドームカバー1Bと参照する。第1ドームカバー1Aは、外殻2Aを備えており、外殻2Aの後端付近にはヒンジ8Aが形成されている。第2ドームカバー1Bは、外殻2Bを備えており、外殻2Bの後端付近にはヒンジ8Bが形成されている。
【0006】
展開前の状態において、第1ドームカバー1Aの外殻2Aと第2ドームカバー1Bの外殻2Bとは互いに接触している。これにより、外殻2Aと外殻2Bとで囲まれるように内部空間が形成され、その内部空間に配置されたドーム等が熱等から保護される。
【0007】
また、外殻2Aの先端と外殻2Bの先端とに挟まれる位置に、分離装置9が設けられている。分離装置9は、第1ドームカバー1Aと第2ドームカバー1Bとを分離するための力(展開動力)を発生させるための装置である。分離装置9としては、火薬の爆発を用いる火工品が挙げられる。あるいは、分離装置9として、エアバック、メタルブラダー、スプリング、ソレノイド等の機器が用いられてもよい。
【0008】
図4は、展開時の状態(開いた状態)を示している。所定のタイミングにおいて、分離装置9が作動し、展開動力が発生する。展開動力が与えられることによって、第1ドームカバー1Aの先端と第2ドームカバー1Bの先端とが分離し、第1ドームカバー1A及び第2ドームカバー1Bは、それぞれ、ヒンジ8A及びヒンジ8Bを回転軸として回転する。すなわち、2分割式ドームカバーが開く。この状態が、2分割式ドームカバーが展開した状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭61−106800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
2分割式ドームカバーにおいて、2つのドームカバーを分離するためには相当の展開動力が必要である。しかしながら、必要な展開動力が大きいことは、飛しょう体にとって好ましくない。
【0011】
例えば、分離装置が火工品の場合、必要な展開動力が大きいことは、必要な火薬量が多いことを意味する。火薬量が多いと、衝撃による搭載品へのダメージや、スス等のドームへの付着といった問題が発生する。また、分離装置がエアバック等の場合、必要な展開動力が大きいことは、分離装置の複雑化や大型化を招く。このことは、動作信頼性や飛しょう体の総重量の観点から好ましくない。
【0012】
本発明の1つの目的は、2分割式ドームカバーを備える飛しょう体において、必要な展開動力を削減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本発明の1つの観点において、2分割式のドームカバーを備えた飛しょう体が提供される。2分割式のドームカバーは、分離可能な第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)とを有する。第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)の各々は、外殻(20)と、外殻(20)の先端から外殻(20)とは異なる方向に延びる内壁部(30)と、を備える。
【0015】
飛しょう体は、更に、第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)とを分離するための力を発生させる分離装置(90)を備えている。その分離装置(90)は、第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)の内壁部(30A、30B)間に挟まれるように配置されている。
【0016】
第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)の各々は、更に、外殻(20)と内壁部(30)との間の間隙に設けられた底部(40)を備えていてもよい。
【0017】
第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)の各々において、外殻(20)、内壁部(30)及び底部(40)によって囲まれた領域は、中空密閉領域(50)であってもよい。
【0018】
あるいは、第1ドームカバー(10A)と第2ドームカバー(10B)の各々において、外殻(20)、内壁部(30)及び底部(40)によって囲まれた領域は、中実であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2分割式ドームカバーを備える飛しょう体において、必要な展開動力を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、典型的な飛しょう体の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、典型的な2分割式ドームカバーの一方の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、典型的な2分割式ドームカバーの展開前の状態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、典型的な2分割式ドームカバーの展開時の状態を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの一方の構成を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開前の状態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開時の状態を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開前の状態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開時の状態を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開前の状態を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開時の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施の形態は、
図1で示されたような飛しょう体に関連する。その飛しょう体は、2分割式ドームカバーを備える。以下、本発明の実施の形態に係る2分割式ドームカバーについて詳しく説明する。
【0022】
1.第1の実施の形態
図5は、2分割式ドームカバーのうち片側のドームカバー10を示している。ドームカバー10は、外殻20を備えている。外殻20は、ドームカバー10の展開前の状態においても外部に露出している部分である。また、外殻20の先細っている側が先端側であり、その反対側が後端側である。外殻20の後端付近にはヒンジ80が形成されている。
【0023】
また、本実施の形態において、ドームカバー10は更に、外殻20とは異なる部材である内壁部30を備えている。内壁部30は、外殻20の先端から、外殻20とは異なる方向に延びている。後述のように、この内壁部30は、ドームカバー10の展開前においては外部に露出していない。
【0024】
図6は、2つのドームカバー10が合わさった状態(展開前の状態、閉じた状態)を概念的に示している。便宜上、一方を第1ドームカバー10Aと参照し、他方を第2ドームカバー10Bと参照する。第1ドームカバー10Aと第2ドームカバー10Bとは、互いに分離可能である。第1ドームカバー10Aは、外殻20Aと内壁部30Aを備えており、外殻20Aの後端付近にはヒンジ80Aが形成されている。第2ドームカバー10Bは、外殻20Bと内壁部30Bを備えており、外殻20Bの後端付近にはヒンジ80Bが形成されている。
【0025】
展開前の状態において、第1ドームカバー10Aと第2ドームカバー10Bとが合わさることにより内部空間が形成され、その内部空間に配置されたドーム等が熱から保護される。また、展開前の状態において(つまり、第1ドームカバー10Aと第2ドームカバー10Bの分離前)、外壁20(20A、20B)の先端から内部空間に延びている内壁部30(30A、30B)は、外部に露出していない。
【0026】
また、第1ドームカバー10Aの内壁部30Aと第2ドームカバー10Bの内壁部30Bとに挟まれるように、分離装置90が設けられている。分離装置90は、第1ドームカバー10Aと第2ドームカバー10Bとを分離するための力(展開動力)を発生させるための装置である。分離装置90としては、火薬の爆発を用いる火工品が挙げられる。あるいは、分離装置90として、エアバック、メタルブラダー、スプリング、ソレノイド等の機器が用いられてもよい。
【0027】
図7は、展開時の状態(開いた状態)を示している。所定のタイミングにおいて、分離装置90が作動し、展開動力が発生する。展開動力が与えられることによって、第1ドームカバー10Aの先端と第2ドームカバー10Bの先端とが分離し、第1ドームカバー10A及び第2ドームカバー10Bは、それぞれ、ヒンジ80A及びヒンジ80Bを回転軸として回転する。すなわち、2分割式ドームカバーが開く。
【0028】
このとき、飛しょう体は高速で飛しょうしているため、2分割式ドームカバーの開いた先端を通して空気が高速で流入する。この流入空気は、第1ドームカバー10Aの内壁部30Aと第2ドームカバー10Bの内壁部30Bに空気力を及ぼす。それら内壁部30A、30Bに対する空気力は、
図7に示されるように、第1ドームカバー10Aと第2ドームカバー10Bを更に分離(展開)する方向に働く。すなわち、内壁部30A、30Bが受ける空気力が、分離装置90と同様の展開作用を与える。
【0029】
このように、各ドームカバー10に内壁部30を設けることにより、流入空気の空気力を利用した展開が可能となる。2分割式ドームカバーの先端が少しでも開きさえすれば、その後は、内壁部30が受ける空気力により展開が自然に進行する。逆に言えば、分離装置90が発生する展開動力としては、2分割式ドームカバーの先端が少し開くだけの最小限の力で十分である。すなわち、本実施の形態によれば、2分割式ドームカバーを備える飛しょう体において、必要な展開動力を削減することが可能となる。
【0030】
例えば、分離装置90が火工品の場合、展開に必要な火薬量は少なくてすむ。従って、衝撃による搭載品へのダメージや、スス等のドームへの付着が抑制される。また、分離装置90の小型化やより単純な機構の採用が可能となる。このことは、動作信頼性や飛しょう体の総重量の観点から好ましい。更に、内壁部30を分離装置90の取り付けに利用することも可能である。このことは、設計性の観点から有利である。
【0031】
2.第2の実施の形態
図8及び
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開前及び展開時の状態をそれぞれ示している。第1の実施の形態と重複する説明は、適宜省略する。
【0032】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に加えて、底部40が更に設けられている。この底部40は、外殻20と内壁部30との間の間隙に設けられている。そして、外殻20、内壁部30及び底部40で囲まれるように、中空密閉領域50が形成されている。この中空密閉領域50は、真空であってもよいし、又は、熱伝達率の低いガスが充てんされてもよい。
【0033】
より詳細には、第1ドームカバー10Aにおいて、底部40Aは、外殻20Aと内壁部30Aとの間の間隙に設けられている。そして、外殻20A、内壁部30A及び底部40Aで囲まれるように、中空密閉領域50Aが形成されている。また、第2ドームカバー10Bにおいて、底部40Bは、外殻20Bと内壁部30Bとの間の間隙に設けられている。そして、外殻20B、内壁部30B及び底部40Bで囲まれるように、中空密閉領域50Bが形成されている。
【0034】
本実施の形態によれば、まず、上述の第1の実施の形態と同じ効果が得られる。つまり、内壁部30A、30Bが設けられていることにより、2分割式ドームカバーの展開に必要な展開動力を削減することが可能となる。
【0035】
更に、本実施の形態によれば、中空密閉領域50A、50Bが存在していることにより、2分割式ドームカバーの展開前の断熱性が向上する。その結果、飛しょう時の熱防御性が向上する。
【0036】
3.第3の実施の形態
図10及び
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る2分割式ドームカバーの展開前及び展開時の状態をそれぞれ示している。第1及び第2の実施の形態と重複する説明は、適宜省略する。
【0037】
上述の第2の実施の形態では、外殻20、内壁部30及び底部40で囲まれた領域は“中空”であったが、第3の実施の形態では、その領域は“中実”である。これにより、各ドームカバー10の熱容量が大きくなり、内部空間へ伝わる熱量が抑えられる。結果として、第2の実施の形態と同様に、飛しょう時の熱防御性が向上する。
【0038】
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果が得られる。また、中実構造のため、外殻20、内壁部30及び底部40を一体成形することが可能である。このことは、製造コストの観点から有利である。
【0039】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0040】
10 ドームカバー
10A 第1ドームカバー
10B 第2ドームカバー
20、20A、20B 外殻
30、30A、30B 内壁部
40、40A、40B 底部
50、50A、50B 中空密閉領域
80、80A、80B ヒンジ
90 分離装置