(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布手段が、前記本文用紙束の前記背面に厚さD1で接着剤を塗布し、前記除去手段が、前記本文用紙束の前記背面の前記両端部に前記厚さD1よりも小さくかつ0よりも大きい厚さD2で接着剤が残るように前記両端部に塗布された厚さD1の接着剤の一部を除去し、前記接着手段が、前記本文用紙束の前記背面に前記表紙用紙を接着することにより前記本文用紙束の前記背面と前記表紙用紙の間にある接着剤が前記厚さD1よりも小さく前記厚さD2よりも大きい一定の厚さD3となるように、前記塗布手段と前記除去手段と前記接着手段を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の製本装置。
複数種類の前記本文用紙の長手方向の各寸法に応じた複数の間隔で配置された複数対の前記ブレードを、前記間隔が短い前記ブレードから前記間隔が長い前記ブレードまで、相対的に下方の位置から上方の位置まで中央部分が凹部となるように該凹部の両側に階段状に配置してなるブレード部材を有することを特徴とする請求項3記載の製本装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製本装置の発明によれば、本文用紙束の背面の両端部における接着剤Gのはみ出し(
図15に示す)は防止されるが、本文用紙束PSの背面の両端部が糊不足になるため、本文用紙束PSが厚さ方向の中間で割れてしまう背割れ(
図13に示す)や、本文用紙束PSの一部の本文用紙P2が抜けてしまう中抜け又は紙外れ(
図14に示す)等の不具合が発生しやすく、不良品の発生が多くなり、生産性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、本文用紙束の背面の両端部における糊のはみ出しを防止できるとともに、本文用紙束の背面の両端部が糊不足になることもなく、背割れや中抜け等の不具合が発生しにくい本を製造できる生産性が高い製本装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前述した特許文献1の製本装置の問題点に鑑み、背面の両端部における接着剤のはみ出しの問題を解消するとともに、同両端部において接着剤が不足して起こる不具合にも対応するため、背面に対する接着剤の塗布に関して鋭意研究した結果、同背面の全面に接着剤を塗布し、その後に同両端部から接着剤を全量除去する新規な構成の製本装置の発明を案出するに至った。このようにすれば、同両端部には一旦は接着剤を塗布しているため、これを除去しても、ここにはある程度の接着剤が残り、又は除去時に接着剤の一部が本文用紙の隙間に入り込むと考えられるため、接着剤のはみ出しも生じないし、接着剤が不足することもないと考えられるからである。
【0008】
しかしながら、実際には、本文用紙束の背面の両端部から接着剤を全量除去してしまうと、同両端部ではやはり接着剤の量が不十分になり、前述した背割れや中抜け等の不具合が発生する場合があることが判明した。そこで、本発明者は、かかる新たな課題を解決するため、さらに鋭意研究を続行した結果、本願にて提案する次のような構成の発明を得るに至った。
【0009】
請求項1に記載された製本装置は、
複数枚の本文用紙からなる本文用紙束の背面に接着剤を塗布し、前記本文用紙束に表紙用紙を接着して製本を行う製本装置において、
前記本文用紙束の前記背面の長手方向の寸法に相当する長さの塗布面を備えた接着剤の塗布手段と、
前記本文用紙束の前記背面の長手方向の両端部に所定の厚さで接着剤が残るように、前記塗布手段が前記背面に塗布した接着剤のうち
本文用紙束の背面の長手方向の両端部のみで前記両端部の接着剤の一部を除去する除去手段と、
前記本文用紙束に前記表紙用紙を接着させる接着手段と、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載された製本装置は、請求項1記載の製本装置において、
前記塗布手段が、前記本文用紙束の前記背面に厚さD1で接着剤を塗布し、前記除去手段が、前記本文用紙束の前記背面の前記両端部に前記厚さD1よりも小さくかつ0よりも大きい厚さD2で接着剤が残るように前記両端部に塗布された厚さD1の接着剤の一部を除去し、前記接着手段が、前記本文用紙束の前記背面に前記表紙用紙を接着することにより前記本文用紙束の前記背面と前記表紙用紙の間にある接着剤が前記厚さD1よりも小さく前記厚さD2よりも大きい一定の厚さD3となるように、前記塗布手段と前記除去手段と前記接着手段を制御する制御手段を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載された製本装置は、請求項2記載の製本装置において、
前記除去手段は、前記塗布手段が前記背面に塗布した接着剤の一部を掻き取るブレードであり、
前記ブレードで前記両端部の接着剤の一部を掻き取ることによって前記両端部に残される接着剤の厚さを調整するために、前記本文用紙束の前記背面と前記ブレードの相対的な位置関係を設定する移動手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載された製本装置の発明は、請求項3記載の製本装置において、
複数種類の前記本文用紙の長手方向の各寸法に応じた複数の間隔で配置された複数対の前記ブレードを、前記間隔が短い前記ブレードから前記間隔が長い前記ブレードまで、相対的に下方の位置から上方の位置まで中央部分が凹部となるように該凹部の両側に階段状に配置してなるブレード部材を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された製本装置によれば、接着剤の塗布手段は、本文用紙束の背面と同程度の長尺の塗布面を備えているため、この塗布手段と前記背面とを接触させることにより、短時間で前記背面の全体に接着剤を一様に塗布することができる。そして、本文用紙束の背面と除去手段の間隔を適宜に設定した後、本文用紙束の背面の長手方向と直交する方向に沿って除去手段と本文用紙束を相対的に移動させることにより、本文用紙束の背面に塗布された接着剤のうち、背面の長手方向の両端部の接着剤の一部を除去手段によって除去し、両端部に残される接着剤の厚さ乃至量を適宜に調節することができる。これによって、複数枚の本文用紙からなる本文用紙束の背面に接着剤を塗布し、この本文用紙束に表紙用紙を接着して行なう製本工程において、表紙用紙の接着に必要な接着剤の量を確保することによって背割れ、本文用紙外れを防ぎつつ、同時に両端部からの接着剤のはみ出しを防止することができる。
【0014】
請求項2に記載された製本装置によれば、塗布手段が本文用紙束の背面に接着剤を厚さD1で塗布し、除去手段が両端部の接着剤の一部を除去してD1よりも小さい厚さD2の接着剤を残す。この状態で本文用紙束に表紙用紙を接着することにより、厚さD1の部分の接着剤の一部が、前記除去手段によって接着剤が除去された前記両端部に流入する。これによって、本文用紙束の背面と表紙用紙の間にある接着剤は、厚さD1よりも小さく厚さD2よりも大きい一定の厚さD3となり、表紙用紙の接着に必要な接着剤の量が確保されるとともに、同時に本文用紙束の背面の両端部から接着剤がはみ出る不都合も防止される。
【0015】
請求項3に記載された製本装置によれば、本文用紙束の背面と除去手段であるブレードの相対的な位置関係を移動手段で適宜に設定することにより、本文用紙束の背面の長手方向の長さや本文用紙束の厚さ等に応じて両端部に残される接着剤の量を調整することができ、これによってあらゆるサイズの用紙を用いて確実かつ接着剤のはみ出しのない製本を行なうことができる。
【0016】
請求項4に記載された発明の製本装置は、本文用紙束の背面の両端に塗布された接着剤の一部を除去する除去手段として、複数対のブレードを備えたブレード部材を有している。このブレード部材は、相対的に下方である中央の凹部から、相対的に上方である両外側の位置に向けて、間隔が徐々に増大する複数対のブレードを階段状に配置した構成となっており、全体として谷の両側が階段状に拡大していくような形状・構造の部材である。このようなブレード部材によれば、部材としては単一でありながら、長手方向の寸法が異なる複数種類の本文用紙に対応した複数対のブレードを備えているため、本文用紙の種類に対応して使用する一対のブレードを定め、本文用紙束の背面と当該ブレードとの間隔を適宜に設定するだけで、本文用紙束の背面の両端部に対となったブレードの各々を対面させて、背面とブレードの相対的な移動により、両端部から接着剤を適正な長さ及び厚さで除去することができる。すなわち、長手方向の長さが短い本文用紙の本文用紙束に対しては、これに適した間隔で配置された一対のブレードを選択し、また長手方向の長さが長い本文用紙の本文用紙束に対しては、これに適したより長い間隔で配置された他の一対のブレードを選択し、本文用紙束と選択したブレードとの間隔を適宜に定め、本文用紙束の長手方向と直行する方向について両者を相対移動させて両端部にある接着剤の一部を掻き取ればよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1実施形態の製本システム1の構成を
図1乃至
図4を参照して説明する。
なお、
図1を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用するが、これは
図1中に示す凡例の矢印の通りユーザーが
図1に示す製本システム1を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。また、
図1を見た場合の紙面の手前側を前(前方)又は正面と称し、紙面の後側を後(後方)又は背面と称する。
【0019】
本実施形態の製本システム1は、印刷物から冊子(製本物)を作製するシステムである。
図1に示すように、製本システム1は、印刷装置2と製本装置3を備えている。
【0020】
印刷装置2は、製本装置3で冊子を作製するための表紙用紙P1および本文用紙(中紙とも呼ぶ)P2に印刷を行う装置である。
【0021】
印刷装置2は、
図1に示すように、印刷装置筐体4(以下、単に筐体4とも呼ぶ)を備えている。筐体4内には、印刷部5が設けられている。印刷部5は表紙用紙P1及び本文用紙P2に印刷を行う装置である。印刷部5は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクをそれぞれ吐出する4個のライン型のインクジェツトヘッド6A〜6Dを備えている。また、筐体4内には、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送するためのループ状の印刷搬送路7が印刷部5を囲むように設けられている。図示はしないが、この印刷搬送路7に沿って、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数の搬送用のローラが配置されている。
【0022】
筐体4の左側部には、表紙用紙P1を印刷部5側(印刷搬送路7側)へ給紙する表紙用紙給紙部8が設けられている。表紙用紙給紙部8は、複数の表紙用紙P1を積載する給紙トレイ9と、給紙トレイ9に積載された表紙用紙P1を印刷部5側へ送り出す給紙ローラ10と、給紙トレイ9と印刷搬送路7との間に設けられた給紙搬送路11と、給紙搬送路11に沿って配置された複数のローラ(図示せず)を備えており、表紙用紙P1を印刷部5側へ搬送することができる。
【0023】
筐体4内における印刷部5の下側には、本文用紙P2を印刷部5側(印刷搬送路7側)へ給紙する本文用紙給紙部12が設けられている。本文用紙給紙部12は、複数の本文用紙P2を積載する給紙トレイ13と、給紙トレイ13に積載された本文用紙P2を印刷部5側へ送り出す給紙ローラ14と、給紙トレイ13と印刷搬送路7との間に設けられた給紙搬送路15と、給紙搬送路15に沿って配置された複数のローラ(図示せず)を備えており、本文用紙P2を印刷部5側へ搬送することができる。
【0024】
印刷搬送路7の左側上部には、表紙用紙P1および本文用紙P2を一時的に収容するスイッチバック部16が設けられている。また、筐体4内の左部からスイッチバック部16内にかけて、スイッチバック搬送路17が設けられている。スイッチバック搬送路17は、両面印刷時において、表紙用紙P1および本文用紙P2を表裏反転させて印刷部5側へ搬送するための経路である。スイッチバック搬送路17の基端側(右端側)には、印刷搬送路7に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
【0025】
筐体4内の右側部には、印刷搬送路7から送り出された表紙用紙P1および本文用紙P2を製本装置3側(右方向)へ搬送するための連絡搬送路18が設けられている。連絡搬送路18の基端側(左端側)は、印刷搬送路7に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
【0026】
筐体4の上部には、操作入力部19が設けられている。操作入力部19は、ユーザの入力操作を受け付けるものである。操作入力部19は、ユーザが各種の入力操作を行うための操作ボタン、タッチパネル等を備えている。
【0027】
印刷装置2は、印刷制御部20を備えている。印刷制御部20は、CPU、RAM、ROM等を備えており、印刷装置2の各部の動作を統合的に制御して印刷を実行させる手段である。
【0028】
製本装置3は、印刷装置2で印刷された表紙用紙P1および本文用紙P2に所定の製本処理を施して冊子を作製する装置である。
【0029】
製本装置3は、製本装置筐体31(以下、単に筐体31とも呼ぶ)を備えている。筐体31内には、印刷装置2の連絡搬送路18から送り出された印刷済みの表紙用紙P1および本文用紙P2を右方向へ搬送するための導入搬送路32が設けられている。導入搬送路32の基端部(左端部)は、連絡搬送路18の先端部(右端部)に接続されている。また、図示はしないが、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数のローラが入搬送路32に沿って配置されている。
【0030】
筐体31内の右側上部には、印刷済みの本文用紙P2を整合して本文用紙束(単に用紙束とも呼ぶ)PSを形成するための整合部33が設けられている。整合部33は、複数の本文用紙P2を積載する整合トレイ34を備えている。整合トレイ34は、例えば水平な軸心周りに回転することにより、積載した用紙束PSを下方に向けて送り出し可能になっている。また、筐体31内の上部には、導入搬送路32から送り出された印刷済みの表紙用紙P1および本文用紙P2を整合部33側へ搬送等するための上部製本搬送路35が設けられている。上部製本搬送路35の基端部(左端部)は、導入搬送路32の先端部(右端部)に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
【0031】
筐体31の上部中央には、印刷済みの表紙用紙P1を一時的に待機させるストツクトレイ36が設けられてぃる。ストックトレイ36の基端部(左端部)は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35に接続、遮断可能になっている。また、ストツクトレイ36の適宜位置には、印刷済みの表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ(図示せず)が設けられている。上部製本搬送路35に沿った位置には、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数のローラ(図示せず)が配置されている。このうち、上部製本搬送路35に沿ってストックトレイ36の左側に配置された複数のローラは、印刷済みの表紙用紙P1の搬送方向を反転させて搬送できるようになっている。
【0032】
筐体31内におけるストックトレイ36の左側には、断裁部37が設けられている。断裁部37は、上部製本搬送路35を間にして表紙用紙P1を挟むように断裁するカッタ38を備えており、印刷済みの表紙用紙P1を用紙束PSの厚みに応じた寸法になるように断裁することができる。
【0033】
筐体31内の中央部には、接着部39が設けられている。接着部39は、整合部33の整合トレイ34から送り出された用紙束PSの背面PSaと、背面PSaに近接した側面PSbの一部にホットメルト接着剤(以下、単に接着剤とも呼ぶ。この接着剤は「糊」でもよい。)を塗布し、断裁部37から送り出された印刷済みの表紙用紙P1の中央部分に用紙束PSの背面PSaを接着し、表紙用紙P1で用紙束PSをくるんで冊子状に仕上げるくるみ製本(「くるみ綴じ」とも呼ぶ。)を実行するための装置である。
【0034】
図1に示すように、接着部39は、接着剤の塗布手段である接着剤塗布部40を備えている。接着剤塗布部40は、用紙束PSの背面PSaと側面PSbの一部にホットメルト接着剤Gを塗布する装置である。
【0035】
接着剤塗布部40は、用紙束PSを保持して移動可能な一対のクランパ41A,41Bを備えている。また接着剤塗布部40は、一対のクランパ41A,41Bを開閉させるクランパ開閉モータと、一対のクランパ41A,41Bを左右方向に移動させる移動手段としてのクランパ横移動モータと、一対のクランパ41A,41Bを上下方向に移動させる移動手段としてのクランパ縦移動モータと、一対のクランパ41A,41Bを左右方向に揺動させるクランパ揺動モータを備えている。また、必要に応じて、一対のクランパ41A,41Bを前後方向に移動させる移動手段としてのクランパ前後移動モータを設けてもよい。
【0036】
接着剤塗布部40は、
図1中に示すとともに
図2では拡大して示すように、ホットメルト接着剤Gを収容する接着剤収容部46を備えている。接着剤収容部46は、整合トレイ34の左下側に配置されている。接着剤収容部46は、
図1において前後方向を長手方向とする直方体状の容器であり、その上面は開放されており、その内部には長手方向に沿って塗布ローラ47が配置されている。塗布ローラ47は、用紙束PSの背面PSaと側面PSbの一部にホットメルト接着剤Gを塗布するための塗布手段である。塗布ローラ47は、
図1において前後方向に延びる長尺状の円柱形の部材であり、接着剤収容部46の内側において、ホットメルト接着剤Gの表面と略平行である水平な回転軸48に回転可能に支持されている。この回転軸48には図示しない塗布ローラ駆動モータが連結されており、接着剤収容部46内に収納されたホットメルト接着剤G内で塗布ローラ47を回動させることができる。また、塗布ローラ47の塗布面である外周面には、回転軸48の方向に所定の間隔をおいて多数の周溝81が形成されている。従って、接着剤収容部46内で塗布ローラ47を回転させれば、ホットメルト接着剤Gは周溝81に付着し、ホットメルト接着剤Gの上面から上方に露出した部分に汲み上げられるので、塗布ローラ47の塗布面のホットメルト接着剤Gが付着した部分を用紙束PSの背面PSaに向けて露出させることができる。そして、この塗布ローラ47の塗布面の長手方向(回転軸48の方向)についての長さは、最も長い用紙束PSの長手方向の寸法よりも大きく設定されている。従って、いずれの種類の本文用紙(中紙)P2を用いた場合であっても、ホットメルト接着剤Gの上面から上方に露出した塗布ローラ47の塗布面に用紙束PSの背面PSaを接触させることで、ホットメルト接着剤Gを用紙束PSの背面PSaの全面に接着剤Gを1回で均一な所定の厚さ(例えば
図6等を参照して後述するような厚さD1)で塗布することができる。
【0037】
図1中に示すとともに
図2乃至
図4において拡大して示すように、接着剤塗布部40の接着剤収容部46にはブレード部材80が設けられている。このブレード部材80は、用紙束PSの背面に一様な所定の厚さで塗布されたホットメルト接着剤Gのうち、当該背面の長手方向の両端部にある接着剤Gの一部を除去して所定の厚さにするための除去手段である。ブレード部材80は、
図1において紙面に垂直な前後方向を長手方向とする矩形板状の部材であり、接着剤収容部46の左側の上縁側に沿って取り付けられている。なお、
図4に示すように、ブレード部材80には所定の角度をもって取付板部82が一体に設けられており(特に
図4(c)参照)、この取付板部82が適当な角度で接着剤収容部46の左側の上縁側に固定されることにより、ブレード部材80は上下方向に平行な状態で配置されるようになっている。
【0038】
ブレード部材80は、
図4(b)に示すように、中央から両側上方に向けて間隔が階段状に拡大していく複数対のブレード90を有している。すなわちブレード部材80は、相対的に下方である中央の凹部から、相対的に上方である両外側の位置に向けて、間隔が徐々に増大していく複数対のブレード90を階段状に配置した構成となっており、全体として谷の両側が段々状に拡大していくような形状・構造の部材である。そして、これら複数対のブレード90,90の各間隔は、複数種類の本文用紙P2の長手方向の各寸法に対応している。
【0039】
この実施形態では、ブレード部材80は4対のブレード90,90を備えている。最も間隔が小さい一番下の段のブレード90,90の間隔は198mmであり、A5の長手方向の長さに対応している。下から2段目のブレード90,90の間隔は245mmであり、B5の長手方向に対応している。下から3段目のブレード90,90の間隔は267.4mmであり、レターサイズの長手方向に対応している。最も間隔が大きい下から3段目、すなわち一番上の段のブレード90,90の間隔は285mmであり、これはA4の長手方向に対応している。
【0040】
用紙束PSの背面に塗布されたホットメルト接着剤Gのうち、長手方向の両端部にある接着剤Gの一部を除去して所定の厚さにするためには、当該用紙束PSの背面の長さに対応する適切な間隔で配置された対のブレード90,90を選択する。そして、ホットメルト接着剤Gが所定の厚さで塗布された当該用紙束PSの背面をそのブレード90に近接させ、上下方向及び前後方向の位置を決めてから、右から左に向けて移動させれば、当該用紙束PSの背面の両端部にあるホットメルト接着剤Gを、所定長さで所定厚さだけ削り取って所定の厚さ(例えば
図6等を参照して後述するように前記D1より小さい厚さD2)にして両端部に残すことができる。
【0041】
前述したブレード部材80の各ブレード90によれば、各々に対応するサイズの用紙を束ねた用紙束PSの背面PSaに塗布した接着剤Gを、背面PSaの長手方向の所定寸法の範囲について、所定厚さだけ掻き取ることができる。すなわち、ブレード部材80の各対のブレード90,90は、対応する用紙のサイズによらず、いずれの用紙束PSの背面PSaについても、長手方向の所定寸法について概ね所定厚さだけ接着剤Gを除去することができる。
【0042】
このようなブレード部材80によるホットメルト接着剤Gの削り取り動作は、ブレード部材80と用紙束PSの相対的な移動によって実行でき、ブレード部材80と用紙束PSの何れかを他方に対して左右方向に移動させればよいし、又はブレード部材80と用紙束PSの両方を互いに逆向きで左右方向に移動させてもよいが、本実施形態では、接着剤収容部46に取り付けられたブレード部材80の位置は固定であり、これに対して用紙束PSを移動させるものとした。
【0043】
具体的には、一対のクランパ41A,41Bによって背面が鉛直下方に向くように用紙束PSを保持し、一対のクランパ41A,41Bを適宜移動させて用紙束PSの背面を塗布ローラ47に接触させ、塗布ローラ47の回転によってホットメルト接着剤Gを所定の厚さで背面に塗布する。その後、このクランパ41A,41Bの上下方向の位置をクランパ縦移動モータの制御によって設定し、クランパ41A,41Bの前後方向の位置を必要に応じてクランパ前後移動モータの制御によって設定する。これによって、用紙束PSの背面の長さに適した間隔のブレード90,90の対が、背面の両端部の接着剤に接触しうる位置に設定されるので、その後、クランパ横移動モータを駆動すれば、所定位置にあるブレード部材80に対して用紙束PSが左から右に移動して背面の両端部にあるホットメルト接着剤Gが所定長さで所定厚さだけ削り取られる。これにより、当該用紙束PSの背面の両端部には、その他の部分よりも所定寸法だけ薄くなったホットメルト接着剤Gの層が残されることとなる。
【0044】
このようなクランパ縦移動モータ、クランパ前後移動モータ、そしてクランパ横移動モータ等の移動手段を制御して行なうクランパ41A,41Bの位置決め動作及び接着剤の除去動作の制御は、後述する製本制御部63によって行なわれる。すなわち、この製本制御部63は、後述するように本製本装置3の各部を統括して制御する制御手段であるが、特に用紙束PSの背面とブレード部材80の間隔及び位置関係を調整することで背面の端部に残される接着剤の厚さD2を決める接着剤の除去量設定手段としても機能する。なお、この製本制御部63は、クランパ揺動モータやクランパ開閉モータの制御も行なう。また、この製本制御部63は、接着剤の塗布手段である塗布ローラ47を含む接着剤塗布部30を制御し、本文用紙束の背面に塗布する接着剤の厚さD1を制御する機能を有している。すなわち、この製本制御部63の制御によれば、本文用紙束の背面に塗布する接着剤の厚さD1を任意に設定することができるとともに、その接着剤の一部を除去して背面の両端部に残す接着剤の厚さD2を任意に設定することができる。
【0045】
図1に示すように、接着部39は折り曲げ部50を備えている。折り曲げ部50は、前記接着剤塗布部40によって背面にホットメルト接着剤Gが塗布された用紙束PSを表示用紙P1に接着し、この表示用紙P1を折り曲げて用紙束PSをくるむ工程を実行する接着手段である。
【0046】
折り曲げ部50は、接着剤収容部46の左側に設けられている。折り曲げ部50は、一対の背折りプレート51A,51Bと、背折りプレート51A,51Bの下側に設けられた突き当てプレート52とを備えている。背折りプレート51A,51Bは、互いに接近、離間するように、突き当てプレート52上で左右方向に移動可能になっている。背折りプレート51A,51Bは、互いに対向する押圧面51a,51bを有している。押圧面51a,51bは、略水平な突き当てプレート52の上面に略直交する鉛直面である。突き当てプレート52は、左右方向に移動可能になっている。クランパ41A,41Bによって把持された用紙束PSは、ホットメルト接着剤Gを塗布され、折り曲げ部50の直上まで運ばれた後、クランパ縦移動モータによって下降する。ホットメルト接着剤Gが塗布された用紙束PSの背面PSaは、表紙用紙P1を介して突き当てプレート52に当接した状態で、左右から背折りプレート51A,51Bの押圧面51a,51bが表紙用紙P1を介して用紙束PSを押圧することで、表紙用紙P1が折り曲げられるようになっている。このようにクランパ縦移動モータを用いて用紙束PSを表紙用紙P1を介して突き当てプレート52に押し付ける動作を行い、その状態で左右から背折りプレート51A,51Bの押圧面51a,51bで表紙用紙P1を介して用紙束PSを押圧する動作を行い、これによって表紙用紙P1を折り曲げた状態で用紙束PSに接着させることができる。このような用紙束PSに対する表紙用紙P1の接着動作は、前述した製本制御部63によって制御される。その結果、用紙束PSの背面と表紙用紙P1の間にある接着剤は、最初に背面に塗った接着剤の厚さD1よりも小さく、両端における接着剤の厚さD2よりも大きい一定の厚さD3となる。すなわち、用紙束PSに表紙用紙P1を接着することにより、厚さD1の部分の接着剤の一部が、ブレード90によって接着剤が除去された前記両端部に流入する。これによって、用紙束PSの背面と表紙用紙P1の間にある接着剤は、厚さD1よりも小さく厚さD2よりも大きい一定の厚さD3となり、用紙束PSの接着に必要な接着剤の量が確保されるとともに、同時に用紙束PSの背面の両端部から接着剤がはみ出る不都合も防止される。
【0047】
また、図示はしないが、折り曲げ部50は、背折りプレート51A,51Bを左右方向に移動させる背折りプレート移動モータと、突き当てプレート52を左右方向に移動させる突き当てプレート移動モータを備えている。
【0048】
筐体31内において、上部製本搬送路35の下側には、上部製本搬送路35から送り出された印刷済みの表紙用紙P1を折り曲げ部50へ搬送するための下部製本搬送路55が設けられている。下部製本搬送路55の基端部(左端部)は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35の基端部(左端部)に接続、遮断可能とされている。下部製本搬送路55に沿った位置には、表紙用紙P1を折り曲げ部50側へ搬送する複数のローラ(図示せず)が配置されている。
【0049】
筐体31内には用紙の搬送部56が構成されている。搬送部56は、導入搬送路32、上部製本搬送路35、下部製本搬送路55、およびこれらに沿って配置されたローラ、表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ、そして各ローラを駆動させる図示しないモータ等によって構成されている。
【0050】
筐体31内における折り曲げ部50の下側には、折り曲げ部50から落下する完成した冊子Bを案内して下方の所定位置に導くガイド部材57、58が設けられている。
【0051】
ガイド部材57、58の下側には、折り曲げ部50から落下した冊子Bを筐体31外に排出するための排出部59が設けられている。排出部59は、折り曲げ部50から落下した冊子Bを受け取り、冊子Bを左側へ搬送して下方に落下させる搬送コンベア60を備えている。また、排出部59は、搬送コンベア60の下側に設けられた排出コンベア61を備えている。排出コンベア61は、搬送コンベア60から落下した冊子Bを受け取り、冊子Bを右側へ搬送して筐体31外に送り出す装置である。排出コンベア61の下流側には、排出コンベア61から送り出された冊子Bを受け取る受取台62が設けられている。
【0052】
製本装置3は、製本装置3の各部の動作を制御して製本処理を実行させる制御手段としての製本制御部63を備えている。製本制御部63はCPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
【0053】
次に、以上説明した製本システム1の製本装置3において、用紙束PSの背面PSaに対する接着剤Gの塗布量(厚さ)や、ブレード部材80による用紙束PSからの接着剤Gの除去量(厚さ)乃至除去後の残存量(厚さ)、さらに表紙用紙P1の接着時に接着剤Gを用紙束PSの背面側に押し込む量等の相互関係、さらには接着剤Gを所定量だけ背面PSaから除去するために必要なブレード部材80の位置決め等について、
図5乃至
図10を参照して説明する。
【0054】
図5に示すように、本実施形態では、用紙束PSの背面PSaに最初に塗布する接着剤Gの厚さ(図中、「表示用紙接着に必要な糊層厚さ」)は、用紙束PSの頁数に対応する用紙束PSの厚さ(図中、「用紙束厚さ」)が大きくなるほど、大きくなっている。そして、前述したように、用紙束PSの背面PSaの端部において、ブレード部材80で削り取る接着剤の厚さは、用紙サイズや用紙束PSの厚さに関わらず概ね一定とされているため、ブレード部材80で削り取った後に残される接着剤の厚さ(図中、「掻き取り残す糊層厚さ」)も、用紙束PSの頁数に対応する用紙束PSの厚さ(図中、「用紙束厚さ」)が大きくなるほど、大きくなっている。接着剤Gの厚さをこのように設定するため、ブレード部材80と用紙束PSの背面の間隔(図中、「ブレードと背面の距離」)は、用紙束PSの厚さ(図中、「用紙束厚さ」)が大きくなるほど、大きく(図中では「遠い」)なっている。なお、
図5には示していないが、用紙束PSの背面PSaに対して表紙用紙P1を押し付けて接着剤Gを押し込む寸法も一定とされている。
【0055】
図6は用紙束PSが相対的に薄い場合であり、
図7は用紙束PSが相対的に厚い場合である。ここで、塗布ローラ47が用紙束PSの背面PSaに塗布する接着剤Gの当初厚さをD1とし、ブレード部材80が前記両端部の接着剤Gの一部を除去した後に当該両端部に残される接着剤Gの残存厚さをD2とすると、用紙束が相対的に薄い
図6における当初厚さD1よりも、用紙束が厚い
図7における当初厚さD1の方が大きい。そして、前述した通り、背面PSaの両端部で接着剤Gを除去する厚さは用紙束の厚さに関わらず概ね一定であるため、用紙束が相対的に薄い
図6における両端部の残存厚さD2よりも、用紙束が相対的に厚い
図7における残存厚さD2の方が大きくなっている。
【0056】
図8乃至
図10は、接着剤Gを塗布した用紙束PSの背面PSaに表紙用紙P1を接触させて製本を行なう工程を図示したものである。これらの製本工程図中、
図8は接着剤Gの層を形成した後、表紙用紙P1を接触させた瞬間を示す図であり、塗布ローラ47が用紙束PSの背面PSaに塗布する接着剤Gの厚さをD1で示し、ブレード部材80が前記両端部の接着剤Gの一部を除去した後に当該両端部に残される接着剤Gの厚さをD2で示している。これは前述した
図6及び
図7と同様である。また、
図9は用紙束PSの背面PSaの接着剤Gに接触させた表紙用紙P1を背面方向に押し込んで接着剤Gの層が変形し始めた状態を示している。そして、
図10は、用紙束PSの背面PSaに表紙用紙P1を接着した後の状態を示しており、その時の接着剤Gの厚さをD3で示している。
【0057】
本実施形態では、
図8乃至
図10において示した製本工程における接着剤Gの層の各厚さの関係はD1>D3>D2>0であり、ブレード部材80によって前記両端部から除去される接着剤Gの量は、表紙用紙P1の接着時に前記両端部から接着剤Gが外にはみ出ることなく、厚さD1の部分の接着剤の一部が、接着剤を除去した両端の部分に流入して全体の厚さがD3となるように設定されている。
【0058】
このように、用紙束PSの背面PSaから所定の厚さと長さで接着剤Gを削り取った後、この用紙束PSの背面PSaに表紙用紙P1を接着して接着剤Gを背面側に押し込むと、両端部から接着剤がはみ出すことなく、厚さD1の部分の接着剤の一部が両端部に流入して全体の厚さがD3となるが、これは、押されて移動する接着剤Gの量と、押された接着剤Gが逃げ込める空間の容積とが等しくなるように寸法関係が設定されていることを意味している。そして、押されて移動できる接着剤Gの総量は、接着剤Gの粘度等を考慮すると一定の限界があり、ほぼ表紙用紙P1を接着する際に接着剤Gを背面側に押し込む量によって決まることとなる。
【0059】
本実施形態では、用紙束PSの背面PSaの端部において、ブレード部材80で削り取る接着剤Gの厚さと長さ(これらの量は、接着剤Gが流れ込む空間の容積に対応する)は用紙サイズ等に関わらず一定であるため、前述したように接着時に表紙用紙P1を背面側に押し込む量も用紙サイズ等に関わらず一定となっている。すなわち、用紙束PSの背面PSaの両端部において接着剤Gを削り取る寸法が用紙サイズによらず一定であるということは、通常は接着時に表紙用紙P1を背面側に押し込む量も一定であることを意味するものと言える。
【0060】
なお、前述したように、用紙束PSの背面PSaに最初に塗布する接着剤Gの厚さD1は、用紙束PSの厚さが大きくなるほど、大きくしているが、接着時に表紙用紙P1を背面側に押し込む量は上に述べた通り通常は一定であるため、前述した通り、用紙束PSに表紙用紙P1を接着した後の接着剤Gの厚さD3も、用紙束PSの厚さが大きくなるほど大きくなる。
【0061】
このように本実施形態によれば、用紙束PSの背面PSaの全面に所定厚さで接着剤Gを塗布しておき、その両端部から一部の接着剤Gを除去することによって、適量の一部の接着剤Gを残すことができ、その結果として、表紙用紙P1の接着に必要な接着剤Gの量を確保することによって背割れ、本文用紙外れを防ぎつつ、同時に両端部からの接着剤Gのはみ出しを防止することができる。仮に、始めから両端部に塗布しないのでは接着が不十分になり、両端部からのはみ出しは生じないとしても背割れ、本文用紙外れは避けられず、また用紙束の背面の全面に所定厚さで接着剤を塗布しても、その両端部から全部の接着剤を除去したのでは、表紙用紙の接着時には押された接着剤が両端部に流入するだけで用紙間に入り込めずに終わり、やはり背割れ、本文用紙外れは避けられない。本実施形態では、両端部にある程度の接着剤Gを残しておくため、表紙用紙P1の接着時には押された接着剤Gが両端部の接着剤除去部分に流入して空間を埋めつくし、その接着剤Gには直ぐに圧力が加わって用紙P2,P2間に圧入されるので、両端部においても用紙P2と用紙P2を確実に接着することができる。もちろん両端部で接着剤Gのはみ出しが生じることもない。
【0062】
次に、本実施形態の製本システム1の動作について、
図1に示す製本システム1の構成と、
図11のフローチャートを参照して動作ステップごとに説明する。
(1) ステップ1(S1)
印刷装置2の操作入力部19に設けたフォーム情報入力キーから、中紙(本文用紙)P2のサイズ、中紙束の厚み、冊子の製本部数等、冊子の中紙に関する情報および表紙用紙P1に関する情報を入力する。なお、これらの情報は、印刷装置2の外部のPC(パーソナルコンピュータ)から受信することとしてもよい。
【0063】
(2) ステップ2(S2)
冊子の中紙情報及び表紙情報を印刷装置2内の印刷制御部20から製本装置3内の製本制御部63に送り、製本制御部63の記憶部に保存する。
【0064】
(3) ステップ3(S3)
印刷装置2内の印刷部5で中紙を印刷して、この中紙を製本装置内の中紙待機部に集積し、中紙束として一時待機させる。
【0065】
すなわち、印刷動作を開始すると、印刷制御部20は、複数の中紙(本文用紙)P2を本文用紙給紙部12から印刷部5側へと順次給紙していく。印刷制御部20は、給紙された本文用紙P2を、刷搬送路7に沿って搬送させつつ、印刷部5のインクジェットヘッド6A〜6Dにより印刷させる。スイッチバック搬送路17を経由して本文用紙P2を循環搬送させることで両面印刷も可能である。印刷制御部20は、印刷済みの複数の本文用紙P2を、連絡搬送路18を介して製本装置3の導入搬送路32側へと順次送り出す。
【0066】
製本制御部63は、印刷装置2から順次次搬送されてくる本文用紙P2を連絡搬送路18から上部製本搬送路35に沿って整合部33へと搬送させ、複数の本文用紙P2を整合部33で整合させる。これにより、用紙束PSが形成される。
【0067】
(4) ステップ4(S4)
印刷装置2内の印刷部5で表紙用紙P1を印刷して、この表紙用紙P1を製本装置3内の表紙待機部(ストックトレイ36)で一時待機させる。
【0068】
すなわち、本文用紙P2の給紙終了後、印刷制御部20は、表紙用紙給紙部8から表紙用紙P1を印刷部5側へと給紙させる。印刷制御部20は、給紙された表紙用紙P1を、印刷搬送路7に沿って搬送させつつ、印刷部5のインクジェットヘッド6A〜6Dにより印刷させる。スイッチバック搬送路17を経由して表紙用紙P1を循環搬送させることで両面印刷も可能である。印刷制御部20は、印刷済みの表紙用紙P1を、連絡搬送路18を介して製本装置3の導入搬送路32側へと送り出す。
【0069】
次いで、製本制御部63は、印刷装置2から搬送されてきた表紙用紙P1を、折り曲げ部50の背折りプレート51A,51B上の所定位置に配置して待機させる。具体的には、製本制御部63は、表紙用紙P1を連絡搬送路18から上部製本搬送路35に沿って搬送させ、断裁部37によって、予め判明している用紙束PSの厚みに応じた寸法に調製するため断裁させる。そして、製本制御部63は、長さ調製された表紙用紙P1を、ストックトレイ36に搬入させて待機させる。その後、製本制御部63は、表紙用紙P1をストックトレイ36から搬出させ、上部製本搬送路35および下部製本搬送路55に沿って折り曲げ部50まで搬送させ、背折りプレート51A,51B上の所定位置に配置する。
【0070】
(5) ステップ5(S5)
製本装置3内の整合部33で一時待機させていた中紙束PSは、整合トレイ34が回転することによって背面PSaを下方に向けた姿勢に設定される。そして、この中紙束PSをクランパ41A,41Bによってクランプし、接着剤塗布部40に搬送し、塗布ローラ47によって背面PSaの全体に接着剤Gを所定厚さで塗布する。
【0071】
すなわち、製本制御部63は、整合部33から用紙束PSを送り出させ、クランパ41A,41Bによって用紙束PSを背面PSaが鉛直下向きになるような姿勢でクランプする。次いで、製本制御部63は、用紙束PSをクランプした状態のクランパ41A,41Bを移動させ、用紙束PSの背面PSaを塗布ローラ47に接触させることで、用紙束PSの背面PSaの全面に所定の厚さでホットメルト接着剤Gを付着させる。
【0072】
(6) ステップ6(S6)
製本装置3内の製本制御部63の制御により、中紙の用紙サイズから中紙束PSの背面PSaの長手方向におけるブレードの位置を調整する。また、中紙束の厚みからブレードと中紙束PSの背面PSaの間隔(高さ方向の距離)を調整する。そして、中紙束PSの背面PSaの両端にあるホットメルト接着剤Gの一部をブレード部材80で掻き取った後に、表紙接着部である背折りプレート51A,51B上で待機している表紙用紙P1に用紙束PSの背面PSaを接着して冊子Bを作成する。
【0073】
本ステップにおけるブレード部材80による接着剤の掻き取りについてより詳細に説明する。まず製本制御部63が、クランパ縦移動モータを制御してクランパ41A,41Bの上下方向の位置を設定し、クランパ前後移動モータを制御してクランパ41A,41Bの前後方向の位置を設定することにより、中紙束PSの背面PSaとブレード部材80との位置関係を設定する。その後、クランパ横移動モータを駆動することにより、所定位置にあるブレード部材80の特定のブレード90に対し、用紙束PSを左右方向に移動させる。これによって、背面PSaの両端部にあるホットメルト接着剤Gを、ブレード部材80中の選択した特定のブレード90の対によって所定長さで所定厚さだけ削り取ることができる。当該用紙束PSの背面の両端部には、その他の部分よりも薄くなったホットメルト接着剤Gの層が残されることとなる。
【0074】
このように本実施形態のブレード部材80によれば、部材としては単一でありながら、長手方向の寸法が異なる複数種類の本文用紙P2に対応した複数対のブレード90,90を備えているため、本文用紙P2の種類に対応して使用すべき一対のブレード90,90を定め、用紙束PSの背面PSaと当該ブレード90との位置関係を適宜に設定するだけで、用紙束PSの背面PSaの両端部に必要なブレード90,90を対面させることができ、背面をブレード90に対して左右方向に移動させれば両端部から接着剤を適正な長さ及び適正な厚さで除去することができる。すなわち、長手方向の長さが短い本文用紙の本文用紙束に対しては、これに適した間隔で配置された一対のブレードを選択し、また長手方向の長さが長い本文用紙の本文用紙束に対しては、これに適したより長い間隔で配置された他の一対のブレードを選択すれば、適切な除去作業を行なうことができる。このようなブレード部材80に対する用紙束PSの位置決め及び除去動作の制御は、印刷装置2の印刷制御部20から製本装置3が受け取った印刷・製本情報や、製本装置3の製本制御部63が有する製本情報に基づいて、上述したように製本制御部63が行なう。
【0075】
(7) ステップ7(S7)
完成した冊子を排出部59によって受取台62に排出する。
【0076】
(8) ステップ8(S7)
次の冊子を作成するか否か判断し、作成する場合にはステップ3(S3)に戻って上述した作業手順を繰り返す。作製しない場合には、ジョブは終了となる。
【0077】
第2実施形態を説明する。第2実施形態は、接着剤Gの除去手段の構成が異なる他は第1実施形態と同一であり、その部分についての説明は省略する。
第1実施形態では、用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤Gの一部を除去する除去手段として、両外側に向けて階段状に間隔が広がっていく複数対のブレード90を備えたブレード部材80を利用することにより、ブレード90側を移動等させることなく、複数種類の用紙に対応できるようにしており、その際、用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤Gを除去する長さ及び厚さを一定としていた。
【0078】
しかしながら、
図12に例示する第2実施形態では、接着剤Gの除去手段として、用紙束PSの背面PSaの長手方向について所定の長さを有し、かつ同長手方向及び上下方向に移動自在とされた2個一組のブレード91,91を設け、用紙束PSの背面PSaの両端部に対して各ブレード91を自由に位置決めできるようにした。用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤Gの一部を除去するには、位置決めされたブレード91,91と用紙束PSとを相対的に左右方向に移動させることにより行なう。
【0079】
この場合、用紙束PSの背面PSaの長手方向及び上下方向に関するブレード91の各位置を自由に設定できるため、用紙の種類等に応じて、両端部から接着剤を除去する長さ及び厚さの一方又は両方を自由に設定し、その結果、両端部から接着剤Gを除去する形状を及び量を任意に定めることができる。
【0080】
また、以上説明した第1及び第2実施形態と異なり、接着剤Gの除去手段である一対のブレードの間隔が一定に定められているような場合であっても、ブレードの上下方向の位置が制御可能であれば、第1実施形態のように用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤を除去する長さ及び厚さの積を一定に制御することは可能である。この場合、用紙の種類に関わらず2つのブレードの間隔が一定であるから、用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤を除去する長さは用紙の種類によって異なってくる。その相違に応じてブレードの上下方向の位置を調整して用紙束PSの背面PSaの両端部から接着剤を除去する厚さを制御すればよい。
【0081】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、塗布ローラ47によって用紙束PSの背面PSaの全面に接着剤Gを短時間で一様に塗布できる。そして、用紙束PSの背面PSaとブレード部材80(又はブレード90,91)の位置関係を適宜に設定した後、用紙束PSの背面PSaの長手方向と直交する左右方向に沿ってブレード部材80等と用紙束PSを相対的に移動させるだけで、用紙束PSの背面PSaに塗布した接着剤Gのうち、背面PSaの長手方向の両端部の接着剤Gの一部を除去し、両端部に適当な量の接着剤Gを残すことができる。この状態で用紙束PSの背面PSaに表紙用紙P1を接着すれば、背面PSaの略中央部において相対的に厚い層をなす接着剤Gは、表紙用紙P1から圧力を受けて用紙P2,P2間に入り込むとともに、接着剤Gが相対的に薄い背面PSaの両端部に流れ込んで両端部の隙間を満たすので、この両端部においても接着剤Gは表紙用紙P1から遅滞なく圧力を受けて用紙P2,P2間に適度に入り込むことができる。従って、背面PSaの全面に対して適切な量の接着剤Gが供給され、用紙P2,P2同士及び背面PSaと表紙用紙P1は良好な状態で接着される。従って、背割れ、本文用紙外れを防ぎつつ、同時に両端部からの接着剤Gのはみ出しを防止することができる。