(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、中軸を容易に製造することに関しては、十分な工夫がなされていないのが実情であった。例えば、従来は、中軸の構成として、切削加工を要する構成が採用されていた。このような問題は、セラミックヒータを備えるグロープラグに限らず、シースヒータを備えるグロープラグ等の種々の種類のグロープラグに共通する問題であった。
【0005】
本発明の主な利点は、中軸を容易に製造することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
態様または適用例として実現することが可能である。
[態様]
軸線方向に沿って延びる貫通孔を有する金具と、
前記貫通孔に挿入された中軸であって、前記中軸の外周面と前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて配置された前記中軸と、
前記中軸の前記外周面と前記貫通孔の前記内周面との両方に接触することによって、前記中軸と前記貫通孔との間の前記隙間をシールするOリングと、
を備えるグロープラグであって、
前記中軸の前記Oリングと接触する部分の外周面の周方向に沿った表面粗さの最大高さは12.5μm以下であり、
前記グロープラグは、さらに、
前記金具よりも後端側に配置された端子部材と、
前記金具の先端部に固定され、通電によって発熱するヒータ部材と、
前記ヒータ部材の後端部に固定された接続部材と、
を備え、
前記中軸は、
前記中軸の先端に形成され、前記接続部材に接続された第1接続端部と、
前記中軸の後端に形成され、前記端子部材に接続された第2接続端部と、
前記第1接続端部と前記第2接続端部とを接続し、外径が一定な、定径部と、
を含み、
前記ヒータ部材は、前記軸線方向に沿って延びるセラミックヒータを含み、
前記接続部材は、前記セラミックヒータの後端部に固定され、
前記中軸の前記定径部の前記外径は、前記セラミックヒータの外径よりも小さく、
前記第1接続端部の硬度と前記第2接続端部の硬度とは、前記定径部の硬度よりも、大きい、
グロープラグ。
【0007】
[適用例1]
軸線方向に沿って延びる貫通孔を有する金具と、
前記貫通孔に挿入された中軸であって、前記中軸の外周面と前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて配置された前記中軸と、
前記中軸の前記外周面と前記貫通孔の前記内周面との両方に接触することによって、前記中軸と前記貫通孔との間の前記隙間をシールするOリングと、
を備えるグロープラグであって、
前記中軸の前記Oリングと接触する部分の外周面の周方向に沿った表面粗さの最大高さは12.5μm以下である、グロープラグ。
【0008】
この構成によれば、金具と中軸との間の気密性を、Oリングを用いることによって容易に向上できるので、気密性の向上のために中軸の構成を複雑な構成にせずに済む。例えば、Oリングを嵌め込む凹部を中軸に形成せずに済む。従って、中軸を容易に製造できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載のグロープラグであって、さらに、
前記金具よりも後端側に配置された端子部材と、
前記金具の先端部に固定され、通電によって発熱するヒータ部材と、
前記ヒータ部材の後端部に固定された接続部材と、
を備え、
前記中軸は、
前記中軸の先端に形成され、前記接続部材に接続された第1接続端部と、
前記中軸の後端に形成され、前記端子部材に接続された第2接続端部と、
前記第1接続端部と前記第2接続端部とを接続し、外径が一定な、定径部と、
を含む、グロープラグ。
【0010】
この構成によれば、中軸の先端部と後端部との間の部分(すなわち、定径部)の外径が一定であるので、中軸を容易に製造できる。
【0011】
[適用例3]
適用例2に記載のグロープラグであって、
前記中軸の前記定径部の前記外径は、前記中軸の素材の外径と同じである、グロープラグ。
【0012】
この構成によれば、中軸の素材を用いて容易に定径部を形成できるので、中軸を容易に製造できる。
【0013】
[適用例4]
適用例2または3に記載のグロープラグであって、
前記中軸の前記第1接続端部の外径は、前記中軸の前記定径部の前記外径よりも大きく、
前記中軸の前記第2接続端部の外径は、前記中軸の前記定径部の前記外径よりも小さい、
グロープラグ。
【0014】
この構成によれば、中軸の先端部の加工と後端部の加工とを行うことによって、中軸を容易に製造できる。
【0015】
[適用例5]
適用例2ないし4のいずれかに記載のグロープラグであって、
前記ヒータ部材は、前記軸線方向に沿って延びるセラミックヒータを含み、
前記接続部材は、前記セラミックヒータの後端部に固定され、
前記中軸の前記定径部の前記外径は、前記セラミックヒータの外径よりも小さい、グロープラグ。
【0016】
この構成によれば、中軸の定径部は、変形することによって、セラミックヒータに作用する力を緩和することができるので、セラミックヒータの破損を抑制できる。また、そのような定径部を有する中軸を、容易に製造できる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載のグロープラグであって、
前記中軸は、鍛造で成形されている、グロープラグ。
【0018】
この構成によれば、切削加工等の複雑な加工を用いずに済むので、中軸を容易に製造できる。
【0019】
[適用例7]
適用例1ないし6のいずれかに記載のグロープラグであって、
前記中軸は、ステンレス鋼を用いて構成されている、グロープラグ。
【0020】
この構成によれば、中軸の防錆処理(例えば、メッキ処理)を省略することができるので、中軸を容易に製造できる。
【0021】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、グロープラグ用の中軸、グロープラグ用の中軸の製造方法、グロープラグ、グロープラグの製造方法、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.実施例:
A−1.グロープラグの構成:
本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのグロープラグを示す説明図である。グロープラグ10は、図示しない内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の始動補助等のための熱源として機能する。
図1(A)は、グロープラグ10の縦断面図であり、
図1(B)は、グロープラグ10の一部分(セラミックヒータ40を含む部分)を示す拡大断面図である。図示されたラインCLは、グロープラグ10の中心軸を示している。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。図中の第1方向D1と第2方向D2とは、軸線CLと平行であり、第2方向D2は、第1方向D1と反対の方向である。後述するように、通電によって発熱するヒータ部材740は、グロープラグ10の第1方向D1側の端部を形成している。以下、このような第1方向D1側を「先端側」とも呼び、第2方向D2側を「後端側」とも呼ぶ。また、グロープラグ10の種々の部材の第1方向D1側の端を「先端」とも呼び、第2方向D2側の端を「後端」とも呼ぶ。
【0024】
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、セラミックヒータ40と、Oリング50と、絶縁部材60と、外筒70と、端子部材80と、を含んでいる。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)を筒状に形成した部材である。主体金具20は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔20xを有している。また、主体金具20は、第2方向D2側の端部に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも第1方向D1側に設けられた雄ネジ部22と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。
【0025】
主体金具20は、内径に応じて、3つの部分21、25、29に分けることができる。第1部分21は、主体金具20の第1方向D1側の部分であり、第1方向D1側の開口OP1を形成している。第3部分29は、主体金具20の第2方向D2側の部分であり、第2方向D2側の開口OP2を形成している。第1部分21の軸線方向の長さは、第3部分29の軸線方向の長さよりも、長い。また、第1部分21の内径は、第3部分29の内径よりも小さく、軸線方向の位置に依らず一定である。ただし、第1部分21の内径が、軸線方向の位置に応じて変化してもよい。第2部分25は、第1部分21と第3部分29との間の部分であり、第1方向D1に向かって内径が小さく変化する部分である。本実施例では、第2部分25は、第1部分21と第3部分29との間で内径を連続的に変化させている。なお、第2部分25において、内径がステップ状に変化してもよい。
【0026】
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、導電材料(本実施例では、ステンレス鋼)を丸棒状に成形した部材である。中軸30は、先端に形成された第1接続端部31と、後端に形成された第2接続端部39と、第1接続端部31と第2接続端部39との間に配置された定径部35と、によって構成されている。定径部35は、第1接続端部31と第2接続端部39とを接続しており、定径部35の形状は、軸線方向に沿って延びる円柱状である。定径部35の外径は、軸線方向の位置に依らず一定である。第1接続端部31は、貫通孔20xの内部に位置している。第1接続端部31は、先端を形成する小径部311と、小径部311の第2方向D2側に設けられた大径部312と、を含んでいる。第2接続端部39は、主体金具20の第2方向D2側の開口OP2よりも第2方向D2側に位置する部分を含んでいる。
【0027】
中軸30には、第2方向D2側から、先ずOリング50が嵌め込まれ、次に、絶縁部材60が嵌め込まれている。Oリング50は、絶縁材料(本実施例では、フッ素ゴム)を用いて形成されている。絶縁部材60は、絶縁材料(例えば、樹脂)を用いて形成されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の第2方向D2側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。Oリング50と絶縁部材60の筒状部62とは、中軸30の定径部35の外周面と、主体金具20の第3部分29の内周面と、の間に挟まれている。このように、主体金具20は、Oリング50と絶縁部材60とを介して、中軸30を支持している。中軸30は、中軸30の外周面と貫通孔20xの内周面との間に隙間をあけて配置されている。Oリング50は、中軸30の外周面と貫通孔20xの内周面との両方に接触することによって、中軸30と貫通孔20xとの間の隙間をシールする。
【0028】
主体金具20よりも後端側(具体的には、絶縁部材60の第2方向D2側)には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、導電材料(例えば、ニッケル等の金属)をキャップ状に形成した部材である。主体金具20と端子部材80との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の第2接続端部39が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、第2接続端部39に端子部材80が固定されている。これにより、第2接続端部39は、端子部材80に、電気的に接続される。
【0029】
主体金具20の先端部(具体的には、第1方向D1側の開口OP1)には、外筒70が固定されている。外筒70は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼等の金属)を筒状に形成した部材である。外筒70は、第1薄肉部71と、第1薄肉部71の第2方向D2側に設けられた厚肉部75と、厚肉部75の第2方向D2側に設けられた第2薄肉部79と、を含んでいる。これらの3つの部分71、75、79の間では、内径は同じである。第2薄肉部79は、主体金具20の開口OP1に挿入されている。
【0030】
外筒70には、通電によって発熱するセラミックヒータ40が挿入されている。セラミックヒータ40は、中心軸CLに沿って延びるように配置された丸棒状の部材である。セラミックヒータ40の外周面は、外筒70によって保持されている。セラミックヒータ40の先端部41は、外筒70の先端よりも第1方向D1側に突出し、セラミックヒータ40の後端部49は、外筒70の後端よりも第2方向D2側に突出している。セラミックヒータ40の後端部49は、主体金具20の貫通孔20xの先端側に挿入されている。以下、外筒70とセラミックヒータ40との全体を、「ヒータ部材740」とも呼ぶ。
【0031】
ヒータ部材740の後端部(具体的には、セラミックヒータ40の後端部49)には、接続部材90が固定されている。接続部材90は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)を円筒状に形成した部材である。接続部材90の先端側には、セラミックヒータ40の後端部49が圧入されている。接続部材90の後端側には、中軸30の第1接続端部31の小径部311が圧入されている。これにより、第1接続端部31は、接続部材90に電気的に接続される。
【0032】
次に、セラミックヒータ40の詳細について、説明する。
図1(B)には、セラミックヒータ40のより詳細な断面図が示されている。セラミックヒータ40は、軸線CLに沿って延びる丸棒状の基体210と、基体210の内部に埋設された、略U字状の発熱素子220(「発熱体220」とも呼ぶ)と、を含んでいる。
【0033】
基体210は、絶縁性セラミック(例えば、窒化珪素)を用いて形成されている。基体210の先端部41は、丸く加工されている。発熱素子220は、導電性セラミックを用いて形成されている。本実施例では、発熱素子220の材料は、主成分としての窒化珪素に、タングステンカーバイトを混合したセラミックである。
【0034】
発熱素子220は、2本のリード部221、222と、それらのリード部221、222を接続する接続部223と、電極取出部281、282と、を含んでいる。各リード部221、222は、セラミックヒータ40の後端部49から先端部41の近傍まで軸線CLと平行に延びている。接続部223は、セラミックヒータ40の先端部41に埋設され、第1リード部221の先端と第2リード部222の先端とを接続する。接続部223の形状は、セラミックヒータ40の先端部41の丸い形状に合わせて湾曲する略U字状である。接続部223の断面積は、リード部221、222のそれぞれの断面積よりも、小さい。従って、通電時には、接続部223の温度が、他の部分と比べて、急速に上昇する。
【0035】
第1リード部221の第2方向D2側の部分には、第1電極取出部281が接続されている。第1電極取出部281は、第1リード部221からセラミックヒータ40の外周に向かって延び、セラミックヒータ40の外面に露出する。第1電極取出部281の露出部分は、外筒70の内周面に接触している。これにより、外筒70と第1リード部221とが、電気的に接続される。
【0036】
第2リード部222の第2方向D2側の部分には、第2電極取出部282が接続されている。第2電極取出部282は、第1電極取出部281よりも、第2方向D2側に配置されている。第2電極取出部282は、第2リード部222からセラミックヒータ40の外周に向かって延び、セラミックヒータ40の外面に露出する。第2電極取出部282の露出部分は、接続部材90の内周面に接触している。これにより、接続部材90と第2リード部222とが、電気的に接続される。
【0037】
A−2.グロープラグの製造方法:
図2、
図3は、グロープラグ10の製造方法のフローチャートである。
図3は、
図2の続きを表している。フローチャートの各ステップには、そのステップで処理される部材の概略断面図が示されている。
図2、
図3のフローチャートは、中軸30の製造方法を詳細に示している。グロープラグ10の他の部材の製造方法としては、公知の方法を採用可能であり、詳細な説明を省略する。
【0038】
最初のステップS100では、中軸30の形成に用いられる棒部材30aが、線材900から切り出される。以下、この棒部材30aを、「第1棒部材30a」と呼ぶ。線材900は、細長く線状に加工された鋼材である。図中の外径Dwは、線材900の外径である。第1棒部材30aは、線材900の端から所定長さの位置を切断することによって得られる。従って、第1棒部材30aの外径は、線材900の外径Dwと、同じである。本実施例では、線材900として、ステンレス鋼の線材が用いられる。線材900は、第1棒部材30aの長さよりも十分に長い。通常は、線材900は、コイル状に巻いた状態で、供給される。
【0039】
次のステップS110では、第1棒部材30aの一端が加工されて、第1接続端部31が形成される。具体的には、複数の成形型(図示省略)を用いた据え込み鍛造によって、第1棒部材30aの一端が、第1接続端部31の形状に成形される。図中の第1外径D311は、小径部311の外径であり、第2外径D312は、大径部312の外径である。第1外径D311は、上述の外径Dwよりも大きく、第2外径D312は、第1外径D311よりも大きい。以下、ステップS110によって得られる棒部材を、第2棒部材30bと呼ぶ。
【0040】
次のステップS120では、第2棒部材30bの他端が加工されて、第2接続端部39が形成される。具体的には、複数の成形型(図示省略)を用いた回転鍛造によって、第2棒部材30bの他端の外径が低減して、第2接続端部39が形成される。第1接続端部31と第2接続端部39との間の部分は、そのまま、定径部35として用いられる。従って、定径部35の外径は、上記の外径Dwと同じである。以下、ステップS120によって得られる棒部材を、第3棒部材30cと呼ぶ。
【0041】
次のステップS130では、第2接続端部39の外周面に、ローレット加工が施される。これにより、第2接続端部39が完成する。この処理は、第2接続端部39から端子部材80が外れることを抑制するために、行われる。また、第2接続端部39の外径D39は、定径部35の外径Dwよりも小さい。以上のステップS100〜S130によって、中軸30が形成される。
【0042】
次のステップS140では、中軸30の第1接続端部31に、接続部材90が固定される。具体的には、中軸30の第1接続端部31の小径部311が、接続部材90の後端側の開口に圧入される。なお、接続部材90と第1接続端部31との接続を強固にするために、接続部材90と第1接続端部31との境界部分を溶接(例えば、レーザ溶接)してもよい。
【0043】
なお、ステップS140の段階では、予め、接続部材90に、セラミックヒータ40の後端部49が固定されている。固定方法としては、圧入やロウ付等の任意の方法を採用可能である。また、ステップS140の段階では、予め、セラミックヒータ40に、外筒70が固定されている。固定方法としては、圧入やロウ付等の任意の方法を採用可能である。なお、外筒70と、セラミックヒータ40と、接続部材90と、第1接続端部31との間の固定の順番としては、任意の順番を採用可能である。以下、外筒70とセラミックヒータ40と接続部材90と中軸30とを接続して得られる部材を、軸モジュール100と呼ぶ。
【0044】
次のステップS150(
図3)では、軸モジュール100が主体金具20に固定される。具体的には、中軸30が、主体金具20の先端側の開口OP1から貫通孔20x内に挿入されて、さらに、外筒70の第2薄肉部79が、主体金具20の開口OP1に挿入される。そして、外筒70が、厚肉部75が主体金具20の先端と接触する位置で、主体金具20に固定される。固定方法としては、圧入やレーザ溶接等の任意の方法を採用可能である。
【0045】
また、ステップS150では、Oリング50が、中軸30に、第2方向D2側から第1方向D1に向かって嵌め込まれる。Oリング50は、中軸30の定径部35の外周面と、主体金具20の第3部分29の内周面と、の両方に接触する位置に配置される。また、Oリング50を中軸30に嵌め込む際には、中軸30の第2接続端部39が、Oリング50を貫通し、次に、中軸30の定径部35が、Oリング50を貫通する。そして、第2接続端部39の外径D39は、定径部35の外径Dwよりも小さく、Oリング50の内径よりも小さい。従って、Oリング50を、容易に、定径部35に嵌め込むことが出来る。
【0046】
次のステップS160では、絶縁部材60が、中軸30に、第2方向D2側から第1方向D1に向かって嵌め込まれる。絶縁部材60の筒状部62は、中軸30の定径部35と、主体金具20の第3部分29と、の間に挿入される。そして、絶縁部材60は、フランジ部68が主体金具20の後端面に接触する位置に、配置される。
【0047】
Oリング50は、主体金具20の第2部分25と、絶縁部材60の筒状部62と、の間に挟まれた状態で、筒状部62によって押圧される。これにより、Oリング50は、中軸30の定径部35の外周面と、主体金具20の第2部分25の内周面と第3部分29の内周面と、に密着し、主体金具20と中軸30との間をシールする。
【0048】
次のステップS170では、端子部材80が中軸30の第2接続端部39に固定される。端子部材80には、凹部80xが設けられている。この凹部80xに中軸30の第2接続端部39が挿入された状態で、端子部材80は、軸線CLと直交する方向に加締められる。この結果、端子部材80が、第2接続端部39に固定される。端子部材80の軸線方向の固定位置は、端子部材80と主体金具20との間で絶縁部材60が軸線方向に沿って動かないように、設定される。以上により、グロープラグ10が完成する。
【0049】
A−3.Oリング50の気密性:
図4は、中軸30の外周面の粗さと、Oリング50の気密性と、の間の関係の説明図である。図中には、中軸30(具体的には、定径部35と第2接続端部39)の一部分の斜視図が示されている。定径部35の外周面上に形成された帯状の接触領域Acは、定径部35の外周面のうちのOリング50(
図1)と接触する領域である。接触領域Ac上には、周方向Dcが矢印で示されている。この周方向Dcは、中心軸CLを中心とする円に沿った方向である。接触領域Acは、この周方向Dcに沿って定径部35の外周面を1周するリング状の領域である。
【0050】
図中には、定径部35の外周面上に形成され得る細かい傷800が示されている。この細かい傷800は、中心軸CLとおおよそ平行に延びる線状の傷である。このような細かい傷800は、線材900(
図2)の製造時に形成され得る。例えば、線材900を線引きによって製造する場合には、線材900の外周面と接触する伸線ダイスによって、中心軸CLとおおよそ平行に延びる傷が形成され得る。実際には、多数の細かい傷が、線材900、すなわち、定径部35の外周面上の全体に形成され得る。
【0051】
中心軸CLとおおよそ平行な傷が形成された場合には、ガスが、Oリング50と中軸30との間の傷を通って、接触領域Acの先端側から後端側へ(あるいは、後端側から先端側へ)、漏洩し得る。このようなガスの漏洩は、傷が大きい場合、あるいは、傷が多い場合に、換言すれば、定径部35の外周面が粗い場合に、生じ易い。従って、線材900をそのまま定径部35として利用する場合には、定径部35、すなわち、線材900の外周面が滑らかであることが好ましい。
【0052】
定径部35の外周面の粗さとOリング50の気密性との関係を評価するために、上記実施例に基づいて5つのサンプルを生成して、気密評価試験を行った。中心軸CLとおおよそ平行な傷に起因する表面粗さの指標として、周方向Dcに沿った表面粗さの最大高さを採用した。表面粗さの最大高さとしては、JIS B 0601(2001)の4.1.3で規定される最大高さRzを採用した。最大高さRzが大きいほど、表面が粗い。5つのサンプルの間では、定径部35の接触領域Acにおける周方向Dcに沿った表面粗さの最大高さRzが互いに異なっている。他の構成は、5つのサンプルの間で共通である。以下に示す表1は、気密性試験の結果を示している。
【0054】
表中には、サンプル番号と、各サンプルの最大高さRzと、圧力と、気密性の評価結果と、が示されている。気密評価試験の方法は、以下の通りである。すなわち、グロープラグ10(
図1)の主体金具20の第1部分21に貫通孔を形成し、そのグロープラグ10を、雄ネジ部22に適合する取付孔を有する試験台に装着する。そして、グロープラグ10の先端側(すなわち、第1部分21に形成された孔)に、圧力を印加する。そして、主体金具20の開口OP2から流出する空気の単位時間当たりの流量(cm
3/min)を測定する。この流量は、Oリング50によるシール部分から漏洩した空気の流量である。この流量に基づく以下の評価基準に従って、気密性を評価した。
評価A:流量が1cm
3/min未満である。
評価B:流量が1cm
3/min以上である。
【0055】
評価試験に用いられた5つのサンプル#1〜#5のそれぞれの最大高さRzは、13.8μm、12.8μm、12.5μm、11.3μm、9.0μmであった。また、評価試験は、5つの圧力、すなわち、0.6MPa、1.0MPa、2.0MPa、3.0MPa、4.0MPaのそれぞれについて行われた。中軸30の材料としては、ステンレス鋼製の線材900を採用した。Oリング50の材料としては、フッ素ゴムを採用した。また、以下に示す寸法は、各サンプルに共通である。
定径部35(
図2)の外径Dw : 2.6mm
大径部312の第2外径D312 : 3.9mm
小径部311の第1外径D311 : 3.1mm
第2接続端部39の外径D39 : 2.25mm
【0056】
表1に示すように、最大高さRzが小さい場合には、大きい場合よりも、良好な評価結果が得られた。特に、最大高さRzが12.5μm以下である3つのサンプル#3、#4、#5に関しては、5つの圧力のいずれにおいても、評価Aが得られた。最大高さRzが12.8μmであるサンプル#2に関しては、0.6MPaの評価結果が評価Aであるものの、他の圧力の評価結果が評価Bであった。最大高さRzが13.8μmであるサンプル#1に関しては、全ての圧力の評価結果が評価Bであった。
【0057】
以上により、表面粗さの最大高さRzは、12.5μm以下であることが好ましい。良好な評価結果が得られた最大高さRzは、具体的には、12.5μm、11.3μm、9.0μmであり、これらの数値のうちの任意の値を、最大高さRzの好ましい範囲の上限として採用可能である。また、最大高さRzがゼロに近いほど、Oリング50と定径部35との間の隙間が小さくなるので、最大高さRzがゼロに近いほど、良好な気密性が得られると推定される。従って、最大高さRzの好ましい範囲の下限としては、ゼロを採用可能である。
【0058】
なお、表面粗さの最大高さRzが上述の好ましい範囲内(例えば、12.5μm以下)であれば、グロープラグ10の構成(例えば、中軸30の材料やOリング50の材料や中軸30の各部の寸法)が上記のサンプルと異なっていても、Oリング50の気密性の低下を抑制できると推定される。また、最大高さRzが上述の好ましい範囲内であれば、Oリング50による気密性を向上するための複雑な形状を中軸30に設けずに済む。例えば、Oリング50を嵌め込む凹部を中軸30に設けずに済む。従って、中軸30を容易に製造できる。
【0059】
また、上記実施例では、定径部35(
図2)の外径Dwが一定であるので、中軸30の第1接続端部31と第2接続端部39との間の部分の外径が一定ではない場合と比べて、中軸30を容易に製造できる。特に、定径部35の外径Dwが、中軸30の素材(例えば、線材900)の外径と同じであれば、素材をそのまま定径部35として利用することができるので、中軸30を容易に製造できる。なお、中軸30の素材をそのまま定径部35として利用する場合には、素材の製造に用いられる工具の表面のうちの素材の外周面と接触する部分を滑らかにすることによって、素材の表面粗さの最大高さRzを小さくすることができる。例えば、線引きによって線材900を製造する場合には、伸線ダイスの線材900が通る孔の内周面を滑らかにすればよい。
【0060】
また、上記実施例では、第1接続端部31の外径(第1接続端部31の外径が一定では無い場合は、最大外径。上記実施例では、第2外径D312)は、定径部35の外径Dwよりも大きい。従って、第1接続端部31の外径が、定径部35の外径Dwよりも小さい場合と比べて、ヒータ部材740と第1接続端部31との接続を容易にできる。また、第2接続端部39の外径D39は、定径部35の外径Dwよりも小さい。従って、定径部35にOリング50を容易に装着できる。また、第1接続端部31の加工と第2接続端部39の加工とを行うことによって、容易に中軸30を製造できる。
【0061】
また、上記実施例では、定径部35(
図2)の外径Dwは、セラミックヒータ40の外径D40よりも小さい。従って、外径Dwが外径D40以上である場合と比べて、セラミックヒータ40より細い定径部35が変形することによって、セラミックヒータ40に作用する力を緩和できる。この結果、セラミックヒータ40の破損を抑制できる。
【0062】
また、上記実施例では、中軸30は鍛造によって成形されているので、中軸30を容易に製造できる。特に、第1接続端部31と第2接続端部39との間の定径部35の外径Dwが一定であるので、切削加工等の複雑な加工を用いずに済む。従って、切削加工を用いる場合と比べて、中軸30を容易に製造できる。また、切削加工を用いずに中軸30を製造すれば、素材の一部が無駄になることを抑制できる。従って、素材量を節約できる。
【0063】
また、第1接続端部31が鍛造で形成されているので、第1接続端部31の硬度を向上できる。この結果、第1接続端部31に接続部材90を接続する場合に、第1接続端部31の意図しない変形を抑制できる。また、第2接続端部39が鍛造で形成されているので、第2接続端部39の硬度を向上できる。この結果、第2接続端部39に端子部材80を接続する場合に、第2接続端部39の意図しない変形を抑制できる。特に、上記実施例では、鍛造によって硬度が向上した第2接続端部39の外周面にローレット加工が施されている。従って、第2接続端部39と端子部材80との接続を強固にできる。ただし、ローレット加工(
図2:S130)を省略してもよい。
【0064】
また、上記実施例では、中軸30は、ステンレス鋼を用いて構成されている。従って、中軸30の防錆処理(例えば、メッキ処理)を省略できるので、中軸30を容易に製造できる。
【0065】
B.変形例:
(1)中軸30の形状と寸法としては、上述の実施例の形状と寸法とに限らず、種々の形状と寸法とを採用可能である。例えば、定径部35の外径が、素材(例えば、線材900(
図2))の外径と異なっていてもよい。定径部35の外径が素材の外径よりも小さい場合には、定径部35を鍛造(例えば、回転鍛造)によって形成してもよい。また、第1接続端部31の外径が定径部35の外径よりも小さくてもよい。この場合も、第1接続端部31を鍛造で形成することが好ましい。また、第2接続端部39の外径が定径部35の外径よりも大きくてもよい。この場合も、第2接続端部39を鍛造で形成することが好ましい。いずれの場合も、中軸30の少なくとも一部(例えば、第1接続端部31と第2接続端部39)を鍛造で成形することが好ましい。ただし、中軸30を、鍛造を用いずに、切削等の他の加工方法によって、形成してもよい。
【0066】
(2)中軸30の材料としては、種々のステンレス鋼を採用可能である。例えば、フェライト系ステンレス鋼を採用してもよく、オーステナイト系ステンレス鋼を採用してもよい。一般には、種々のステンレス鋼、すなわち、鉄とクロムとを含む種々の合金を採用可能である。ただし、ステンレス鋼とは異なる他の導電性材料を採用してもよい。例えば、鉄とニッケルの合金等の種々の金属を採用可能である。
【0067】
(3)Oリング50の材料としては、フッ素ゴムに限らず、種々の絶縁性の弾性材料を採用可能である。例えば、シリコンゴム等の種々の弾性高分子材料を採用可能である。また、Oリング50が柔らかいほど、気密性を向上できる。従って、グロープラグ10の設計条件(例えば、耐熱温度等)に適合する材料のうちの柔らかい材料を採用することによって、気密性を向上できる。例えば、上記の気密評価試験で用いたOリング50の材料であるフッ素ゴムの硬さは、80である。従って、表面粗さの最大高さRzの上記の好ましい範囲に適合する中軸30を用いる場合には、ゴムの硬さが80以下である材料を採用することによって、Oリング50による良好な気密性を容易に実現できる。なお、ゴムの硬さとしては、JIS K 6253−3で規定されるデュロメータ硬さを採用した。測定には、タイプAデュロメータを用い、測定時間(すなわち、加圧板を試験片に接触させてから値の読取りまでの時間)としては、15秒を採用した。
【0068】
(4)グロープラグ10の構成としては、上記実施例の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、中軸30とセラミックヒータ40とを接続する接続部材の構成としては、円筒状の構成に限らず、リード線等の種々の構成を採用可能である。中軸30の第1接続端部31の形状としては、接続部材との接続に適した任意の形状を採用可能である。また、中軸30に端子部材80を固定する方法としては、加締めとは異なる種々の方法を採用可能である。例えば、第2接続端部39に雄ねじを形成し、端子部材80に雌ねじを形成して、端子部材80を第2接続端部39にねじ込む方法を採用してもよい。中軸30の第2接続端部39の形状としては、端子部材80の構成に適した任意の形状を採用可能である。また、ヒータ部材としては、セラミックヒータ40とは異なるヒータ素子(例えば、シースヒータ)を備える部材を採用してもよい。
【0069】
(5)以上のように、中軸の構造と製造方法としては、実施例で説明した構造と製造方法とに限らず、種々の変形が可能である。いずれの場合も、中軸のOリングと接触する部分の外周面の周方向に沿った表面粗さの最大高さが12.5μm以下であれば、Oリングを用いて気密性を容易に向上できるので、中軸の構造が複雑化することを抑制でき、中軸を容易に製造できる。
【0070】
同様に、グロープラグの構造と製造方法としては、実施例で説明した構造と製造方法とに限らず、種々の変形が可能である。例えば、セラミックヒータ40を主体金具20に固定する方法としては、外筒70を介在させる方法に限らず、セラミックヒータ40を貫通孔20xに圧入する方法等の種々の方法を採用可能である。
【0071】
(6)上記実施例のグロープラグは、内燃機関の始動補助のために利用されるグロープラグに限らず、種々のグロープラグに適用可能である。例えば、排気ガスを昇温するための排気ガスヒータ装置や、触媒やディーゼル粒子フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)を再活性化するためのバーナーシステムや、冷却水を昇温するためのウォータヒータ装置等の種々の装置に利用されるグロープラグに、上記実施例のグロープラグを適用可能である。
【0072】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。