(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188364
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】空燃比制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/14 20060101AFI20170821BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20170821BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
F02D41/14 310F
F02D45/00 368G
F01N3/24 R
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-56274(P2013-56274)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181599(P2014-181599A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】有本 康高
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】丹 功
【審査官】
藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−042387(JP,A)
【文献】
特開2003−206784(JP,A)
【文献】
特開2006−022772(JP,A)
【文献】
特開2013−002430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流及び下流に設けられた空燃比センサの出力を参照して空燃比をフィードバック制御するものであって、
触媒の上流の空燃比センサの出力と比較するべき目標値を、触媒の下流の空燃比センサの出力に基づく空燃比の度合いを表す指標値に応じて上下させることとし、
触媒の下流の空燃比センサの出力とその目標値とを比較して、当該出力が目標値よりもリッチである間は前記指標値を単位時間あたり所定のリーン積分値だけ逓減させ、当該出力が目標値よりもリーンである間は前記指標値を単位時間あたり所定のリッチ積分値だけ逓増させる積分のみを行い、
前記指標値の変化量に対する、触媒の上流の空燃比センサの出力と比較するべき前記目標値の変化量の比を、前記指標値が理論空燃比周辺の範囲内にあるときにはより小さく、前記指標値が当該理論空燃比周辺の範囲からリーン側またはリッチ側に偏倚しているときにはより大きく設定した空燃比制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関における燃料噴射量を制御する空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の排気通路には、内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる有害物質HC、CO、NO
xを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。HC、CO、NO
xの全てを効率よく浄化するには、排気ガスの空燃比をウィンドウと称する理論空燃比近傍の一定範囲に収束させる必要がある。そのために、触媒の上流及び下流にそれぞれフロントO
2センサ、リアO
2センサを配し、それらO
2センサの出力信号を用いる二重のフィードバックループを構築して、空燃比をフィードバック制御する。
【0003】
下記特許文献に記載の空燃比制御装置は、
図5に示すように、触媒の上流側のガスの空燃比を検出するフロントO
2センサの出力電圧を目標となる電圧値(鎖線で表す)と比較して、その目標値よりも高ければリッチ、その目標値よりも低ければリーンと判定する。そして、フロントO
2センサの出力がリーンからリッチに切り替わったときに、リッチ判定遅延時間TDRの経過を待って、フィードバック補正係数FAFをスキップ値RSMだけ減少させる。その後、補正係数FAFを所定時間あたりリーン積分値KIMだけ逓減させる。補正係数FAFの減少に伴い、燃料噴射量が絞られて、混合気の空燃比がリーンへと向かう。
【0004】
フロントO
2センサの出力がリッチからリーンに切り替わったときには、リーン判定遅延時間TDLの経過を待って、フィードバック補正係数FAFをスキップ値RSPだけ増加させる。その後、補正係数FAFを所定時間あたりリッチ積分値KIPだけ逓増させる。補正係数FAFの増加に伴い、燃料噴射量が上積みされて、混合気の空燃比がリッチへと向かう。
【0005】
遅延時間TDR、TDLは、触媒の下流におけるガスの空燃比の度合いを表す指標値FACFに応じて増減する。下記特許文献に記載の空燃比制御装置は、
図3に示すように、触媒の下流側のガスの空燃比を検出するリアO
2センサの出力電圧を目標となる電圧値(鎖線で表す)と比較して、その目標値よりも高ければリッチ、その目標値よりも低ければリーンと判定する。リアO
2センサの出力がリッチである間は、指標値FACFを所定時間あたりリーン積分値FACFKIMだけ逓減させる。
図6に示すように、指標値FACFが大きくなるほど、リッチ判定遅延時間TDR(実線で表す)は延長し、リーン判定遅延時間TDL(破線で表す)は短縮する。さすれば、フィードバック補正係数FAFが増加から減少に転じる時期が遅れ、減少から増加に転じる時期が早まる。結果、燃料噴射量が平均的に増すこととなり、空燃比の制御中心がリッチ側に変位する。
【0006】
逆に、リアO
2センサの出力がリーンである間は、指標値FACFを所定時間あたりリッチ積分値FACFKIPだけ逓増させる。指標値FACFが小さくなるほど、リッチ判定遅延時間TDRは短縮し、リーン判定遅延時間TDLは延長する。さすれば、フィードバック補正係数FAFが増加から減少に転じる時期が早まり、減少から増加に転じる時期が遅れる。結果、燃料噴射量が平均的に減ることとなり、空燃比の制御中心がリーン側に変位する。
【0007】
下記特許文献に開示された制御手法では、リッチ判定遅延時間TDR、またはリーン判定遅延時間TDLが長くなったときに、フィードバック補正係数FAFの振動の周期が延びることとなる。補正係数FAFの振動周期が延びることは、触媒の上流におけるガスの空燃比がウィンドウから外れている期間が長くなることを意味し、有害物質HC及びCOまたはNO
xの一時的な排出増を招く懸念が残る。
【0008】
加えて、遅延時間TDR、TDLの増減調整による空燃比制御中心の変化のダイナミックレンジが小さい(空燃比制御中心の上下動が、理論空燃比に極近い狭小な範囲内に留まる)。それ故、リアO
2センサの出力が明らかなリッチまたはリーンを示した、即ち触媒に吸蔵していた酸素が枯渇したか触媒の最大酸素吸蔵能力まで酸素が充満したときに、ガスの空燃比をリーン化またはリッチ化するための補正制御の応答性が遅いと言える。これもやはり、HC及びCOまたはNO
xの排出増につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−002430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、触媒による有害物質HC、CO、NO
xの浄化能率を高く保ち、これら有害物質の排出量の一層の削減を図ることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流及び下流に設けられた空燃比センサの出力を参照して空燃比をフィードバック制御するものであって、触媒の上流の空燃比センサの出力と比較するべき目標値を、触媒の下流の空燃比センサの出力に基づく空燃比の度合いを表す指標値に応じて上下させることとし、
触媒の下流の空燃比センサの出力とその目標値とを比較して、当該出力が目標値よりもリッチである間は前記指標値を単位時間あたり所定のリーン積分値だけ逓減させ、当該出力が目標値よりもリーンである間は前記指標値を単位時間あたり所定のリッチ積分値だけ逓増させる積分のみを行い、前記指標値の変化量に対する
、触媒の上流の空燃比センサの出力と比較するべき前記目標値の変化量の比を、前記指標値が理論空燃比周辺の範囲内にあるときにはより小さく、前記指標値が当該理論空燃比周辺の範囲からリーン側またはリッチ側に偏倚しているときにはより大きく設定した空燃比制御装置を構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、触媒による有害物質HC、CO、NO
xの浄化能率を高く保ち、これら有害物質の排出量の一層の削減を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置のハードウェア資源構成を示す図。
【
図2】同実施形態の空燃比制御装置による、フロントO
2センサの出力と補正量FAFとの相関を示すタイミング図。
【
図3】同実施形態の空燃比制御装置による、リアO
2センサの出力と指標値FACFとの相関を示すタイミング図。
【
図4】同実施形態の空燃比制御装置による、指標値FACFとフロントO
2センサの出力の目標値との関係を示すグラフ。
【
図5】従来の空燃比フィードバック制御における、フロントO
2センサの出力と補正量FAFとの相関を示すタイミング図。
【
図6】従来の空燃比フィードバック制御における、指標値FACFと遅延時間TDR、TDLとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式ガソリンエンジンであり、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0015】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0016】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0017】
さらに、排気通路4における触媒41の上流及び/または下流に、排気通路を流通する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設置してある。空燃比センサ43、44はそれぞれ、排気ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO
2センサであってもよく、排気ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよい。本実施形態では、触媒41の上流側及び下流側の各空燃比センサ43、44について、排気ガス中の酸素濃度に応じた電圧信号を出力するO
2センサを想定している。O
2センサ43、44の出力特性は、ウィンドウの範囲では空燃比に対する出力の変化率が大きく急峻な傾きを示し、それよりも空燃比が大きいリーン領域では低位飽和値に漸近し、空燃比が小さいリッチ領域では高位飽和値に漸近する、いわゆるZ特性曲線を描く。
【0018】
本実施形態の空燃比制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0019】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、触媒41の上流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号h等が入力される。
【0020】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k等を出力する。
【0021】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミングといった運転パラメータを決定する。運転パラメータの決定手法自体は、既知のものを採用することが可能である。ECU0は、運転パラメータ及びユーザの操作に対応した各種制御信号i、j、kを出力インタフェースを介して印加する。
【0022】
以降、空燃比のフィードバック制御に関して詳記する。本実施形態のECU0は、フィードバックコントローラとして機能し、気筒1に充填される混合気の空燃比を制御する。具体的には、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数等から吸気量を算出して基本噴射量TPを決定する。次いで、この基本噴射量TPを、触媒41の上流側の空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正し、さらには内燃機関の状況に応じて定まる各種補正係数Kやインジェクタ36の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間(インジェクタ11に対する通電時間)Tを算定する。燃料噴射時間Tは、T=TP×FAF×K+TAUVとなる。そして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
【0023】
触媒41の上流側の空燃比信号fを参照したフィードバック制御は、例えば、内燃機関の冷却水温が所定温度以上であり、燃料カット中でなく、パワー増量中でなく、内燃機関の始動から所定時間が経過し、触媒41の上流側の空燃比センサ43が活性中、吸気圧が正常である、等の諸条件が全て成立している場合に行う。このことは、アイドル運転中においても同様である。
【0024】
図2に示すように、ECU0は、触媒41の上流側のガスの空燃比を検出するセンサであるフロントO
2センサ43の出力電圧fを、目標となる電圧値(鎖線で表す)と比較して、その目標値よりも高ければリッチ、その目標値よりも低ければリーンと判定する。そして、センサ出力fがリーンからリッチに切り替わったときには、遅延時間の経過を待つことなく、フィードバック補正係数FAFをスキップ値RSMだけ減少させる。その後、補正係数FAFを所定時間あたりリーン積分値KIMだけ逓減させる。補正係数FAFの減少に伴い、燃料噴射量が絞られて、混合気の空燃比がリーンへと向かう。
【0025】
あるいは、センサ出力fがリッチからリーンに切り替わったときには、遅延時間の経過を待つことなく、フィードバック補正係数FAFをスキップ値RSPだけ増加させる。その後、補正係数FAFを所定時間あたりリッチ積分値KIPだけ逓増させる。補正係数FAFの増加に伴い、燃料噴射量が上積みされて、混合気の空燃比がリッチへと向かう。
【0026】
本実施形態において、フロントO
2センサ43の出力電圧fと比較するべき目標値は常時一定ではなく、触媒41の下流側のガスの空燃比に応じて上下する。本実施形態のECU0は、空燃比のフィードバック制御中、触媒41の下流側のガスの空燃比を検出するセンサであるリアO
2センサ44の出力gを参照して、触媒41の下流側のガスの空燃比の度合いを表す指標値FACFを算出し、当該指標値FACFを基にフロントO
2センサ43の出力fの目標値を設定する。
【0027】
触媒41の下流側の空燃比信号gを参照したフィードバック制御は、例えば、冷却水温が所定温度以上であり、空燃比フィードバック制御の開始から所定時間が経過し、リアO
2センサ44が活性してから所定時間が経過し、過渡期の燃料補正量が所定値を下回り、アイドル状態で車速が0若しくは0に近い所定値以下であるかまたは非アイドル状態で所定の運転領域にある、等の諸条件が全て成立している場合に行う。
【0028】
図3に示すように、ECU0は、触媒41の下流側のガスの空燃比を検出するセンサであるリアO
2センサ44の出力電圧gを、目標となる電圧値(鎖線で表す)と比較して、その目標値よりも高ければリッチ、その目標値よりも低ければリーンと判定する。そして、センサ出力gがリッチである間は、指標値FACFを所定時間あたりリーン積分値FACFKIMだけ逓減させる。
【0029】
センサ出力gがリーンである間は、指標値FACFを所定時間あたりリッチ積分値FACFKIPだけ逓増させる。
【0030】
図4に、触媒41の下流におけるガスの空燃比の指標値FACFと、フロントO
2センサ43の出力電圧fと比較するべき目標値との関係を示している。基本的に、指標値FACFが大きいほど、即ち触媒41の下流側のガスの空燃比がリーンの傾向にあるほど、上記の目標値を引き上げて燃料噴射量を増加させ、触媒41に流入するガスの空燃比をリッチ化する。逆に、指標値FACFが小さいほど、即ち触媒41の下流側のガスの空燃比がリッチの傾向にあるほど、上記の目標値を引き下げて燃料噴射量を減少させ、触媒41に流入するガスの空燃比をリーン化する。
【0031】
その上で、
図4に示しているように、指標値FACFが理論空燃比周辺、換言すればウィンドウを含む所定範囲(網点で表す)内にあるときには、指標値FACFの変化量に対する上記の目標値の変化量の比(指標値FACFを横軸に、上記の目標値を縦軸にとったときの特性曲線の傾き)を小さくする。これにより、触媒41の下流側のガスの空燃比が理論空燃比に近い状況における、燃料噴射量の補正量FAFの変動を抑制し、空燃比を安定化させる。
【0032】
翻って、指標値FACFが理論空燃比周辺の所定範囲外にあるときには、補正量FACFが当該範囲内にある場合と比較して、指標値FACFの変化量に対する上記の目標値の変化量の比をより大きくする。これにより、触媒41の下流側のガスの空燃比が理論空燃比から乖離している状況における、燃料噴射量の補正量FAFの変動を促進し、速やかに空燃比を補正できるようにする。
【0033】
本実施形態では、内燃機関の排気通路4に装着される排気ガス浄化用の触媒41の上流及び下流に設けられた空燃比センサ43、44の出力を参照して空燃比をフィードバック制御するものであって、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力fと比較するべき目標値を、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gに基づく空燃比の度合いを表す指標値FACFに応じて上下させることとし、前記指標値FACFの変化量に対する前記目標値の変化量の比を、前記指標値FACFが理論空燃比周辺の範囲内にあるときにはより小さく、前記指標値FACFが当該理論空燃比周辺の範囲からリーン側またはリッチ側に偏倚しているときにはより大きく設定する空燃比制御装置0を構成した。
【0034】
本実施形態によれば、触媒41による有害物質HC、CO、NO
xの浄化能率を高く保ち、これら有害物質の排出量の一層の削減を図ることができる。
【0035】
特に、遅延時間TDR、TDLを調整する従来の制御手法のように、フィードバック補正係数FAFの振動の周期が徒に延びることはなく、触媒41の上流におけるガスの空燃比がウィンドウから外れている期間が長くならない。
【0036】
加えて、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力fの目標値自体を上下させるものとしているので、そのダイナミックレンジを大きくとることができる。従って、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gが明らかなリッチまたはリーンを示したときに、ガスの空燃比をリーン化またはリッチ化するための補正制御の応答性を速めることが可能である。空燃比の制御中心をややリーンに位置付けることも容易となる。
【0037】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限られない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
0…空燃比制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒の上流の空燃比センサ(O
2センサ)
44…触媒の下流の空燃比センサ(O
2センサ)
f…触媒の上流の空燃比センサの出力(電圧)
g…触媒の下流の空燃比センサの出力(電圧)