(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、
図1に示すように、剥離シート4と、剥離シート4の剥離面上に積層された粘着剤層3と、粘着剤層3の剥離シート4側とは反対側(
図1では上側)に積層された基材2Aとから構成されており、いわゆる片面粘着シートである。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面(剥離処理が施された面)をいう。一方、本明細書における剥離シートの剥離剤層とは反対側の面とは、剥離基材の剥離剤層と接しない側の面(非剥離処理面)をいう。
【0020】
本実施形態に係る粘着シート1Aは、薄膜の粘着シートである。具体的には、粘着剤層3の厚さが1〜16μmであり、基材2Aの厚さが1〜16μmであり、剥離シート4を除く粘着シート1Aの厚さ(粘着剤層3と基材2Aとの合計厚さ)が2〜20μmであるものである。粘着シート1Aの各部がこのような厚さを有することにより、粘着シート1Aは、例えば、薄型のモバイル電子機器への使用に適したものとなる。
【0021】
本実施形態における剥離シート4は、剥離基材401と、当該剥離基材401の片面に剥離処理により形成された剥離剤層402とから構成される。このように剥離基材401に剥離剤層402を形成することで、剥離シート4の剥離力を小さくし、剥離シート4の剥離時に薄膜の粘着剤層3が変形・破壊することを防止することができる。
【0022】
本実施形態における剥離剤層402は、シリコーン系化合物を含有する。すなわち、本実施形態における剥離剤層402を構成する剥離剤は、シリコーン系剥離剤である。シリコーン系剥離剤は、他の剥離剤と比較して、安価で、安定的に低い剥離力を達成することができる。
【0023】
剥離シート4における剥離剤層402とは反対側の面(非剥離処理面;符号40)のシリコーン量は、4%以下であり、好ましくは0.5〜3.8%であり、特に好ましくは0.5〜3.5%である。剥離シート4を製造後、巻き取ったときに、剥離剤層402と非剥離処理面40とは接触することになるが、このとき、剥離剤層402に含まれるシリコーン系化合物が非剥離処理面40に転移することがある。これにより、非剥離処理面40においてシリコーンが検出されることとなる。このシリコーン量が4%以下であると、非剥離処理面40の剥離用粘着テープに対する接着性が優れたものとなる。したがって、粘着シート1A(粘着剤層3)から剥離シート4を剥離する場合に、剥離用粘着テープを非剥離処理面40に貼付し、当該剥離用粘着テープを持ち上げることにより剥離のきっかけを作るときに、当該剥離用粘着テープが剥離シート4から脱離してしまうことが防止され、当該剥離用粘着テープによって剥離シート4を円滑に剥離することができる。また、上記シリコーン量が4%以下であると、非剥離処理面40が油性インキ密着性に優れたものとなる。したがって、非剥離処理面40に油性ペンでマーキングする場合であっても、油性インキが弾かれてしまうことが防止され、マーキングを問題なく行うことができる。上記シリコーン量が4%を超えると、非剥離処理面40の剥離用粘着テープに対する接着性が低下して、上記のように剥離用粘着テープを使用することができず、剥離シート4が剥離不良となる。また、非剥離処理面40の油性インキ密着性が低下して、油性インキが弾かれてしまう。なお、上記シリコーン量は、上記剥離剤層402の架橋を密にしたり、剥離シート4上で粘着剤層3を形成する際の加熱乾燥の温度や時間を低減すること等により、少なくすることができる。
【0024】
一方、上記シリコーン量の下限値は、0.5%以上であることが好ましい。上記シリコーン量を0.5%未満にしようとすると、剥離剤層402中におけるシリコーン系化合物の架橋密度を高くする必要が生じ、それにより剥離シート4の剥離力が高くなり過ぎて、剥離時に薄膜の粘着剤層3が変形するおそれがある。
【0025】
ここで、本明細書におけるシリコーン量(%)は、非剥離処理面40において、X線光電子分析法(XPS)によって測定されるケイ素原子(Si)、炭素原子(C)および酸素原子(O)の量に基づき、下記の式により算出される原子%である。
シリコーン量(%)={Si/(Si+C+O)}×100
すなわち、非剥離処理面40においてXPSにより検出される原子は、ケイ素、炭素および酸素で略100%となるため、それらの原子中におけるケイ素の割合を上記のとおりシリコーン量とする。なお、剥離基材そのものは、XPSによりケイ素が検出されない水準であることが大半であるため、当該シリコーン量を剥離剤層の剥離剤(シリコーン系化合物)の転移量の評価基準として利用することができる。
【0026】
シリコーン系剥離剤は、ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系化合物を含有する。ポリオルガノシロキサンとしては、例えばポリジメチルシロキサンが代表的に挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、反応性官能基を有しないものであってもよいし、反応性官能基を有するものであってもよいが、上記のシリコーン量を低く抑えるためにも、反応性官能基を有するものが好ましい。これを使用することで、剥離剤層402の形成時にポリオルガノシロキサンを架橋させて、剥離剤層402中に存在する低分子量のポリオルガノシロキサンの量を少なくし、もってシリコーン量を低減することができる。
【0027】
剥離剤層402の厚さは、0.01〜2μmであることが好ましく、特に0.01〜1μmであることが好ましく、さらには0.01〜0.5μmであることが好ましい。剥離剤層402の厚さが0.01μm未満であると、剥離剤層402を構成する材料等によっては、剥離剤層402としての機能が十分に発揮されない場合がある。一方、剥離剤層402の厚さが2μmを超えると、剥離シート4を単独で巻き取った時にブロッキングが発生し易くなり、粘着剤層3の形成時に不具合が発生するおそれがある。
【0028】
剥離基材401は、プラスチックフィルムから構成されることが好ましい。剥離基材401をプラスチックフィルムから構成することで、剥離剤層402における剥離基材401とは反対側の面、すなわち剥離シート4の剥離面を平坦にし、当該剥離面に接触している粘着剤層3の粘着面も平坦にすることができる。これにより、粘着面と被着体との接触面積を増やして、粘着力を高めることができる。
【0029】
剥離基材401を構成するプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなるポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンからなるポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルムなどのプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。これらの中でも、厚みの精度、表面平滑性、入手の容易さ等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0030】
上記のようなプラスチックフィルムからなる剥離基材401においては、その表面に設けられる剥離剤層402との密着性を向上させる等の目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、プラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。
【0031】
剥離基材401の厚さは、12〜75μmであることが好ましく、特に25〜50μmであることが好ましく、さらには25〜38μmであることが好ましい。剥離基材401の厚さが12μm未満であると、剥離剤層402の形成または粘着剤層3の形成のための乾燥工程時に生じる熱収縮が大きくなり、シワ等の不具合が発生するおそれがある。一方、剥離基材401の厚さが75μmを超えると、剥離シート4を剥離するときに粘着シート1A(基材2Aおよび粘着剤層3の積層体)が剥離シート4に追従してしまい、低い剥離力であっても剥離困難になるおそれがある。
【0032】
粘着剤層3に対する剥離シート4の剥離力(ISO 8510−2:1990に準じた剥離力)は、10〜200mN/25mmであることが好ましく、特に10〜150mN/25mmであることが好ましく、さらには10〜100mN/25mmであることが好ましい。剥離力が10mN/25mm未満であると、外部から粘着シート1Aに衝撃が加わったときに、粘着剤層3から剥離シート4が浮いてしまうことがある。一方、剥離力が200mN/25mmを超えると、剥離シート4の剥離力が高過ぎて、剥離時に薄膜の粘着剤層3が変形するおそれがあり、また、剥離用粘着テープによる剥離が困難になるおそれがある。
【0033】
本実施形態における基材2Aは、プラスチックフィルムから構成されることが好ましい。プラスチックフィルムによれば、基材2Aの厚さを前述した範囲にすることが比較的容易である。プラスチックフィルムの種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなるポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。これらの中でも、薄膜化に伴って要求される厚みの精度、表面平滑性、入手の容易さ等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0034】
基材2Aについても、隣接する粘着剤層3との密着性を向上させる等の目的で、所望により片面または両面に、上記剥離基材401と同様に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。
【0035】
基材2Aの厚さは、前述した通り1〜16μmであり、好ましくは2〜12μmであり、特に好ましくは2〜6μmである。基材2Aの厚さが16μmを超えると、剥離シート4を除く粘着シート1Aの厚さを20μm以下とすることが難しく、薄型のモバイル電子機器等に用いる粘着シートとしての要求性能を満たすことができなくなる。一方、基材2Aの厚さが1μm未満であると、十分な強度が得られず、加工時に破断するおそれがある。
【0036】
粘着剤層3を構成する粘着剤の種類としては、薄膜にて所望の粘着力が得られるものであれば特に限定されるものではなく、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれであってもよい。また、粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。粘着剤層3を構成する粘着剤としては、上記の中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、薄膜でも所望の粘着力を発揮し易く、また、シリコーン系化合物を含有する剥離剤層402を有する剥離シート4との剥離性も良好である。また、薄膜の粘着剤層3を得る観点から、上記粘着剤は、溶剤型の粘着剤であることが好ましい。
【0037】
アクリル系粘着剤は、薄膜でも膜強度の高い架橋タイプのものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体と架橋剤とを含有する粘着性組成物を架橋したものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、架橋剤と反応可能な反応性基を有することが好ましい。この反応性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられ、中でも水酸基またはカルボキシル基が好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)またはカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)を含有することが好ましい。
【0039】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーを0.1〜20質量%含有することが好ましく、特に1〜10質量%含有することが好ましく、さらには5〜10質量%含有することが好ましい。
【0042】
水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、形成される架橋構造が良好なものとなり、得られる粘着剤が、薄膜でも膜強度を高く維持することができる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましく、特に主成分として含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。
【0044】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜99.9質量%含有することが好ましく、特に30〜99質量%含有することが好ましく、さらには80〜99質量%含有することが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は30万〜200万であることが好ましく、特に50万〜150万であることが好ましく、さらには50万〜90万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0049】
架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられ、中でも水酸基およびカルボキシル基との反応性に優れるイソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸エステル重合体の反応性基との反応性の点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0051】
架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、特に0.1〜5質量部であることが好ましい。架橋剤の配合量が上記の範囲にあると、後述する粘着剤のゲル分率を好ましい範囲に制御し易く、粘着剤の耐久性を向上させることができる。
【0052】
上記粘着性組成物は、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばロジン系、メチルスチレン系、テルペン系等の粘着付与剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤、染料、顔料、防錆剤などを含有してもよい。
【0053】
粘着剤層3の厚さは、前述した通り1〜16μmであり、好ましくは2〜12μmであり、特に好ましくは2〜6μmである。粘着剤層3の厚さが16μmを超えると、剥離シート4を除く粘着シート1Aの厚さを20μm以下とすることが難しく、薄型のモバイル電子機器等に用いる粘着シートとしての要求性能を満たすことができなくなる。一方、粘着剤層3の厚さが1μm未満であると、被着体の表面凹凸に追従できずに、必要な粘着力が得られなくなる。
【0054】
粘着剤層3を構成する粘着剤のゲル分率は、20〜100%であることが好ましく、特に30〜90%であることが好ましく、さらには40〜80%であることが好ましい。ゲル分率が上記の値であることで、粘着剤層3は良好な耐久性を発揮する。ゲル分率が20%未満であると、加熱条件下等で粘着剤層3が変形したり発泡したりするおそれがある。なお、上記ゲル分率は、養生期間が経過して(例えば、23℃、50%RH環境下にて7日間保管後)形成された粘着剤についての値である。養生期間が経過しているかどうか不明の場合、改めて、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管した後、ゲル分率が上記範囲内となっていればよい。
【0055】
粘着剤層3を構成する粘着剤の25℃における貯蔵弾性率(G’)は、0.03〜0.3MPaであることが好ましく、特に0.03〜0.25MPaであることが好ましく、さらには0.03〜0.2MPaであることが好ましい。貯蔵弾性率が0.03MPa未満であると、粘着シート1Aのエッジから粘着剤が染み出してくるおそれがある。また、貯蔵弾性率が0.3MPaを超えると、粘着剤層3が被着体の表面凹凸に追従できず、粘着力が低下するおそれがある。なお、上記貯蔵弾性率(G’)は、JIS K7244−6に準拠して、測定周波数1Hzにてねじりせん断法により測定した値とする。
【0056】
粘着シート1Aは、無アルカリガラスに対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好ましく、特に4.7N/25mm以上であることが好ましく、さらには5N/25mm以上であることが好ましい。粘着力が上記の範囲内にあることにより、ガラス板等の被着体との間で、良好な接着性が得られ、浮きや剥がれなどを防止することができる。
【0057】
なお、ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、250mm長とし、2kgのゴムローラを使用して当該測定サンプルを被着体に対し貼付した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0058】
上記粘着シート1Aの一製造例としては、剥離シート4の剥離面に、粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成した後、その塗布層に基材2Aを積層する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層3となる。これにより、上記粘着シート1Aが得られる。
【0059】
粘着剤が架橋タイプの場合、粘着性組成物を架橋させることにより、粘着剤が得られる。粘着性組成物の架橋は、加熱処理により行うことができる。この加熱処理は、粘着性組成物の希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0060】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
【0061】
本実施形態に係る粘着シート1Aを使用するには、剥離シート4の非剥離処理面40における端部、好ましくはコーナー部に、剥離用粘着テープを貼付する。そして、粘着シート1Aの基材2Aを支持しつつ、上記剥離用粘着テープを湾曲させながら持ち上げて、粘着シート1Aの粘着剤層3から剥離シート4を剥離する。このとき、剥離シート4の非剥離処理面40は、剥離用粘着テープに対する接着性に優れるため、剥離用粘着テープが非剥離処理面40から脱離することが防止され、剥離シート4を円滑に剥離することができる。その後、露出した粘着剤層3を介して粘着シート1Aと被着体とを貼合する。
【0062】
上記剥離用粘着テープとしては、特に限定されるものではないが、アクリル系粘着剤を使用したものが好ましい。市販品としては、例えば、日東電工社製のポリエステル粘着テープNo.31B等を使用することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る粘着シート1Aにおいては、剥離シート4の非剥離処理面40が油性インキ密着性に優れるため、非剥離処理面40に対し油性ペンを使用しても、油性インキが弾かれることがなく、問題なくマーキングすることが可能である。
【0064】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、
図2に示すように、基材2Bと、基材2Bの一方の面(
図2では上側の面)に積層された第1の粘着剤層31と、第1の粘着剤層31における基材2Bとは反対側(
図2では上側)に積層された第1の剥離シート41と、基材2Bの他方の面(
図2では下側の面)に積層された第2の粘着剤層32と、第2の粘着剤層32における基材2Bとは反対側(
図2では下側)に積層された第2の剥離シート42とから構成される。本実施形態における粘着シート1Bは、いわゆる両面粘着シートであり、基材2Bは、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32を支持する支持基材である。
【0065】
第1の剥離シート41は、剥離基材411と、当該剥離基材411の片面に形成された剥離剤層412とから構成され、第2の剥離シート42は、剥離基材421と、当該剥離基材421の片面に形成された剥離剤層422とから構成される。第1の剥離シート41は、その剥離剤層412が第1の粘着剤層31に接するように第1の粘着剤層31に積層されており、第2の剥離シート42は、その剥離剤層422が第2の粘着剤層32に接するように第2の粘着剤層32に積層されている。
【0066】
本実施形態に係る粘着シート1Bも、薄膜の粘着シートである。具体的には、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32の厚さがそれぞれ1〜16μmであり、基材2Bの厚さが1〜16μmであり、第1の剥離シート41および第2の剥離シート42を除く粘着シート1Bの厚さ(第1の粘着剤層31、第2の粘着剤層32および基材2Bの合計厚さ)が3〜20μmであるものである。粘着シート1Bの各部がこのような厚さを有することにより、粘着シート1Bは、例えば、薄型のモバイル電子機器への使用に適したものとなる。
【0067】
基材2Bの材料および物性は、上記第1の実施形態に係る粘着シート1Aの基材2Aと同様であり、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32の材料および物性は、上記第1の実施形態に係る粘着シート1Aの粘着剤層3と同様である。
【0068】
また、第1の剥離シート41および第2の剥離シート42の材料および物性は、上記第1の実施形態に係る粘着シート1Aの剥離シート4と同様である。ただし、第1の剥離シート41と第2の剥離シート42とには、剥離力に差を設けることが好ましく、一方(例えば第1の剥離シート41)を剥離力の小さい軽剥離型剥離シート、他方(例えば第2の剥離シート42)を剥離力の大きい重剥離型剥離シートとすることが好ましい。具体的には、第1の剥離シート41と第2の剥離シート42とは、5mN/25mm以上の剥離力差を有していることが好ましく、10mN/25mm以上の剥離力差を有していることが特に好ましい。上記剥離力差を有することにより、最初に剥離する方の剥離シートを、粘着剤層の表面を傷付けることなく容易に除去できるからである。
【0069】
本実施形態に係る粘着シート1Bにおいても、第1の剥離シート41における非剥離処理面40および第2の剥離シート42における非剥離処理面40のシリコーン量は、4%以下であり、好ましくは0.5〜3.8%であり、特に好ましくは0.5〜3.5%である。これにより、第1の剥離シート41および第2の剥離シート42における非剥離処理面40の剥離用粘着テープに対する接着性が優れたものとなり、粘着シート1B(第1の粘着剤層31または第2の粘着剤層32)から第1の剥離シート41または第2の剥離シート42を剥離する場合に、剥離用粘着テープによって第1の剥離シート41または第2の剥離シート42を円滑に剥離することができる。また、第1の剥離シート41および第2の剥離シート42の非剥離処理面40における油性インキ密着性が優れたものとなり、油性インキが弾かれてしまうことが防止され、油性ペンによるマーキングを問題なく行うことができる。
【0070】
上記粘着シート1Bの一製造例としては、第1の剥離シート41の剥離面に、粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成した後、その塗布層に基材2Bを積層する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が第1の粘着剤層31となる。このようにして、第1の積層体を得る。一方、第2の剥離シート42の剥離面に、粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が第2の粘着剤層32となる。このようにして、第2の積層体を得る。そして、第1の積層体の基材2Bと第2の積層体の第2の粘着剤層32とが重なるように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせて、上記粘着シート1Bを得る。なお、剥離シート(41及び42)上における粘着剤層(31及び32)形成段階では、敢えて養生期間を取らずに基材2Bの積層を行い、後でまとめて第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32のいずれか長い方に合せた養生期間を取ることにより上記粘着シート1Bを得ることもできる。
【0071】
本実施形態に係る粘着シート1Bを使用するには、一例として、第1の剥離シート41(好ましくは軽剥離型剥離シート)の非剥離処理面40における端部、好ましくはコーナー部に、剥離用粘着テープを貼付する。そして、第2の剥離シート42(好ましくは重剥離型剥離シート)を支持しつつ、上記剥離用粘着テープを湾曲させながら持ち上げて、粘着シート1Bの第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離する。その後、露出した第1の粘着剤層31を介して粘着シート1Bと第1の被着体とを貼合する。次いで、第2の剥離シート42の非剥離処理面40における端部、好ましくはコーナー部に、剥離用粘着テープを貼付する。そして、被着体を支持しつつ、上記剥離用粘着テープを湾曲させながら持ち上げて、粘着シート1Bの第2の粘着剤層32から第2の剥離シート42を剥離する。その後、露出した第2の粘着剤層32を介して粘着シート1Bと第2の被着体とを貼合する。剥離シート4の非剥離処理面40は、剥離用粘着テープの接着性に優れるため、上記の第1の剥離シート41および第2の剥離シート42の剥離工程において、剥離用粘着テープが非剥離処理面40から脱離することが防止され、第1の剥離シート41および第2の剥離シート42を円滑に剥離することができる。
【0072】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0073】
例えば、粘着シート1Aの基材2Aにおける粘着剤層3とは反対側の面には、ハードコート層、易接着層、反射層、防眩層、導電膜等の機能層や、印刷層、印字層、塗料塗膜等の装飾層などの他の層が積層されていてもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0075】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル90質量部、アクリル酸10質量部、酢酸エチル200質量部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量(Mw)60万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
【0076】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(イソシアネート系架橋剤)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,コロネートL)0.15質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、不揮発分濃度15質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0077】
3.粘着シートの製造
剥離基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤で剥離剤層を形成した剥離シート(リンテック社製,RL−1,剥離基材の厚さ:38μm,剥離剤層の厚さ:0.1μm,総厚:約38μm)の剥離剤層表面(剥離面)に、上記粘着性組成物の塗布溶液を乾燥後の厚さが2μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0078】
次いで、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製,K100−2.0W,厚さ:2μm)を、上記塗布層の露出面側に貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、基材(厚さ:2μm)/粘着剤層(厚さ:2μm)/剥離シート(厚さ:38μm)の構成からなる粘着シートを作製した。
【0079】
〔実施例2〕
剥離シートとして、剥離基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤で剥離剤層を形成した別の剥離シート(リンテック社製,RL−2,剥離基材の厚さ:38μm,剥離剤層の厚さ:0.1μm,総厚:約38μm)を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0080】
〔実施例3〕
剥離シートとして、剥離基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤で剥離剤層を形成した別の剥離シート(リンテック社製,RL−3,剥離基材の厚さ:38μm,剥離剤層の厚さ:0.1μm,総厚:約38μm)を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0081】
〔実施例4〕
粘着剤層の厚さを4μmとし、基材として別のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製,エンブレットPET,厚さ:12μm)を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0082】
〔実施例5〕
粘着性組成物における架橋剤の配合量を0.03質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0083】
〔比較例1〕
剥離シートとして、剥離基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤で剥離剤層を形成した別の剥離シート(リンテック社製,RL−4,剥離基材の厚さ:38μm,剥離剤層の厚さ:0.1μm,総厚:約38μm)を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0084】
〔比較例2〕
剥離シートとして、剥離基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤で剥離剤層を形成した別の剥離シート(リンテック社製,RL−6,剥離基材の厚さ:38μm,剥離剤層の厚さ:0.1μm,総厚:約38μm)を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0085】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0086】
〔試験例1〕(シリコーン量の測定)
実施例または比較例で得られた粘着シートを裁断し、10mm幅、10mm長のサンプルを作製した。このサンプルにおける剥離シートの非剥離処理面のシリコーン量(%)を、X線光電子分析法(XPS)によって測定・算出した。測定装置としては、アルバックファイ社製のQuantera SXMを使用し、測定条件は以下の通りとした。
X線:AlKα(1486.6eV)
取り出し角度:45°
測定元素:ケイ素原子(Si),炭素原子(C),酸素原子(O)
【0087】
上記シリコーン量(%)は、以下の式に基づいて算出されるものである。結果を表1に示す。
シリコーン量(%)={Si/(Si+C+O)}×100
【0088】
なお、剥離剤層形成前のポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離基材)そのもののシリコーン量(%)も同様に測定したが、0%であった。すなわち、上記シリコーン量は、剥離剤層の剥離剤(シリコーン系化合物)の転移と相関関係を有するものであった。
【0089】
〔試験例2〕(剥離シートの剥離性評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートを裁断し、50mm×50mmのサンプルを作製した。このサンプルを、両面粘着テープ(リンテック社製,TL−201)を使用して、剥離シートの非剥離処理面が露出するように、基材側にて支持台に固定した。次いで、剥離シートの非剥離処理面のコーナー部における1.0cm
2の領域に剥離用粘着テープとしてのポリエステル粘着テープ(日東電工社製,No.31B)を貼付し、当該剥離用粘着テープを湾曲させながら持ち上げて、サンプルの粘着剤層から剥離シートを剥離した。この試験を3回実施した。その結果、3回とも剥離用粘着テープによって剥離シートが剥離できたものを剥離性良好(○)、1回でも剥離用粘着テープが剥離シートから脱離し、剥離シートが剥離できなかったものを剥離性不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
【0090】
〔試験例3〕(油性インキ密着性評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートを裁断し、100mm×100mmのサンプルを作製した。このサンプルにおける剥離シートの非剥離処理面に、油性ペン(ゼブラ社製,マッキー)で長さ5cmの線を引き、目視によりハジキの有無を確認した。その結果、ハジキが確認できなかったものを油性インキ密着性良好(○)、ハジキが確認されたものを油性インキ密着性不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
【0091】
〔試験例4〕(ゲル分率の測定)
実施例または比較例にて使用した基材に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,RL−5,厚さ:38μm)を使用し、粘着シートを作製した。具体的には、実施例または比較例の製造過程で得られた剥離シート/粘着剤層(厚さ:2μm)からなる構成体の露出している粘着剤層上に、上記剥離シートを剥離処理面側が接するように積層した。これにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
【0092】
得られた粘着シートを、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。その後、当該粘着シートを50mm×90mmのサイズに裁断し、両側の剥離シートを剥離して得た粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ♯380)に包み、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とする。
【0093】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で200mlの酢酸エチルに48時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて2時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの質量を、精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表1に示す。
【0094】
〔試験例5〕(粘着力の測定)
実施例または比較例で得られた粘着シートを裁断し、25mm幅、250mm長のサンプルを作製した。このサンプルから剥離シートを剥がし、2kgのゴムローラを使用して、当該サンプルを無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
〔試験例6〕(耐久性評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートを裁断し、50mm幅、50mm長のサンプルを作製した。このサンプルから剥離シートを剥がし、2kgのゴムローラを使用して、当該サンプルを無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付した。
【0096】
得られた積層体を、80℃・dryの耐久条件の環境下に500時間投入した。その後、目視により、浮きや発泡の有無を確認した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
○:浮きや発泡が確認されなかった。
×:浮きや発泡が確認された。
【0097】
【表1】
【0098】
表1から明らかなように、剥離シートにおける非剥離処理面のシリコーン量が4%以下であった実施例における粘着シートの剥離シートは、剥離用粘着テープによる剥離性、すなわち剥離用粘着テープに対する接着性に優れ、また油性ペンでのハジキがなく、油性インキ密着性にも優れていた。