(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の電流センサとして、下記特許文献1に開示された電流センサが知られている。この電流センサは、
図5,6に示すように、磁気コア51および磁電変換素子52を備えている。この磁気コア51は、
図5,6に示すように、磁電変換素子52を保持するための第1素子保持孔53が形成された第1開放端面51aと、第1開放端面51aに対向して形成されると共に磁電変換素子52を保持するための第2素子保持孔54が形成された第2開放端面51bとを有している。
【0003】
この磁気コア51では、磁気コア51からの磁束が、第1開放端面51aと第2開放端面51bとの間に形成された空隙部G(磁束漏入部)を介して、第1素子保持孔53および第2素子保持孔54に漏れやすくなっている。したがって、この磁気コア51を使用した電流センサによれば、磁気コア51からの磁束が漏れやすい第1素子保持孔53および第2素子保持孔54に亘って磁電変換素子52が保持されているため、磁気コア51に挿通された被測定電線に流れる微小な電流によって磁気コア51に発生する磁束をより多く磁電変換素子52に集めることができ、これによって感度(電流の検出感度)を向上させることが可能になっている。
【0004】
また、この磁気コア51では、
図6に示すように、第1開放端面51aと第2開放端面51bとの間の距離(空隙部Gの幅)をWとし、第1素子保持孔53を形成する側面のうちの第2素子保持孔54に対向する第1側面55aと第2素子保持孔54を形成する側面のうちの第1側面55aに対向する第2側面56aとの間の距離をL1(第1素子保持孔53および第2素子保持孔54で構成される保持孔全体の長さ)とし、第1素子保持孔53および第2素子保持孔54における磁電変換素子52の厚み方向(
図6中の上下方向)における孔幅をL2としたときに、孔幅L2が小さいほど、磁気コア51における第1素子保持孔53の開口部と第2素子保持孔54の開口部とを連絡する部位(同図中の×印を付した部位)で測定される磁束密度が大きくなる(つまり、電流センサの検出感度が向上する)ことが実験で確認されている。
【0005】
また、この磁気コア51では、距離Wが小さいほど、測定される磁束密度が大きくなる(つまり、検出感度が向上する)ことも実験で確認されている。また、この磁気コア51では、距離L1については、小さいほど、測定される磁束密度は大きくなる(つまり、検出感度が向上する)が、その差は僅かであるため、距離L1を変化させることによる顕著な効果は認められないことも実験で確認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の磁気コア51を使用した電流センサには、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この電流センサでは、磁気コア51に規定の距離Wで空隙部Gを形成する加工を施すと共に、磁気コア51における第1開放端面51aに規定の寸法の第1素子保持孔53を形成し、かつ第2開放端面に第1素子保持孔53と同一の寸法の第2素子保持孔54を形成する加工を施すことで、測定感度を向上させている。しかしながら、磁性材で形成された磁気コア51にこのような複数の加工を高い精度で施すには、時間と手間が掛かる。このため、この電流センサには、磁気コア51の製造コスト、ひいては電流センサ自体の製造コストが高くなるという課題が存在している。
【0008】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、十分な感度を維持しつつ、製造コストを低減し得る電流センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電流センサは、内部に被測定電線が挿通される環状の磁気コアと、当該磁気コアに配置された磁電変換素子とを備えている電流センサであって、前記磁気コアは、
当該磁気コアの厚み方向に離間して平行な一対の仮想平面上に互いに対向して配設された同一形状の一対の環状コアを有し、前記一対の環状コアは、周方向に沿った同じ位置で
それぞれ分割され
て当該分割された各位置に空隙部がそれぞれ形成され、前記磁電変換素子は、当該一対の環状コアにおける前記分割された位置の近傍に配設され
、前記磁電変換素子の配設位置は、前記一対の環状コアによって挟まれた空間内における当該一対の環状コアの間の前記厚み方向の中間の位置であって前記各空隙部に対向する位置に規定されている。
【0010】
また、請求項2記載の電流センサは、請求項1記載の電流センサにおいて、前記一対の環状コアおよび前記磁電変換素子を収容する環状の磁気シールドコアを有している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の電流センサでは、磁気コアが、
磁気コアの厚み方向に離間して平行な状態で互いに対向して配設された同一形状の一対の環状コアを有し、各環状コアが周方向に沿った同じ位置で分割され
て分割された各位置に空隙部がそれぞれ形成され、一対の環状コアにおける分割された位置の近傍
としての、一対の環状コアによって挟まれた空間内における一対の環状コアの間の厚み方向の中間の位置であって各空隙部に対向する位置に磁電変換素子が配設されている。
【0012】
したがって、この電流センサによれば、分割された環状コアの一部を構成する弧状コアを複数製造し、これらを使用して各環状コアを形成するだけで磁気コアを構成することができるため、従来の磁気コアとは異なり、磁電変換素子を保持するための保持孔を磁気コア自体に形成する作業を不要にすることができ、これにより、製造コストを大幅に低減することができる。また、磁電変換素子を一対の環状コアにおける分割部位の近傍に配設する構成を採用したことにより、一対の環状コア間の間隔を小さくし、かつ分割された位置での空隙部の距離を小さくすることにより、各環状コアの空隙部から磁電変換素子に向かう磁束の磁束密度を大きくすることができる。したがって、この電流センサによれば、上記のようにして製造コストを大幅に低減しつつ、十分な検出感度を確保することができる。
【0013】
請求項2記載の電流センサによれば、一対の環状コアおよび磁電変換素子を収容する環状の磁気シールドコアを備えたことにより、不要な外部磁界の影響を十分に低減することができ、この結果、検出精度を充分に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、電流センサ1の実施の形態について説明する。
【0016】
まず、電流センサ1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0017】
電流センサ1は、
図1に示すように、環状(リング状)のコア部2、複数の磁電変換素子3(本例では一例として、2つの磁電変換素子3a,3b。特に区別しないときには、「磁電変換素子3」ともいう)、負帰還コイル4、電圧電流変換回路5および検出抵抗回路6を備えているゼロフラックス方式の電流センサであって、コア部2の内部に挿通されている被測定電線61に流れる測定電流I1の電流値に応じて電圧値が変化する検出電圧V2を出力する。
【0018】
コア部2は、
図1に示すように、磁気コア11および磁気シールドコア21を基本的な構成要素として備えている。具体的には、磁気コア11は、
図1,2に示すように、平行な一対の仮想平面PL1,PL2上に互いに対向して配設された同一形状の一対の環状コア12,13を有している。本例では一例として、各環状コア12,13は、平面形状が円形の環状(円環状)に形成されているが、平面形状が三角形や四角形などの多角形の環状であってもよいし、また、楕円形の環状であってもよい。また、環状コア12,13は、1枚のコア材で構成してもよいし、複数のコア材を積層して構成してもよい。つまり、積層コアで構成してもよい。
【0019】
また、各環状コア12,13は、周方向に沿った同じ位置で複数に分割されている。本例では一例として、環状コア12は、仮想平面PL1上の仮想直線であって環状コア12の中心を通過する仮想直線と交差する位置において、2つ(半円状の弧状コア12a,12b)に分割されている。また、環状コア13は、周方向に沿った環状コア12と同じ位置において、2つ(半円状の弧状コア13a,13b)に分割されている。この構成により、環状コア12を構成する一方の弧状コア12aは、環状コア13を構成する一方の弧状コア13aと正対し、環状コア12を構成する他方の弧状コア12bは、環状コア13を構成する他方の弧状コア13bと正対している。
【0020】
また、
図1,2における矢印方向から各環状コア12,13の1つの分割された部位(分割部位)を見た各環状コア12,13の要部拡大正面図である
図3に示されるように、環状コア12の各分割部位、および環状コア13の各分割部位には、一定の距離(間隔)Wの空隙部(ギャップ)Gが形成されている。また、各環状コア12,13は、一定の間隔L2を空けて正対している。
【0021】
本例では一例として、
図4に示すように、弧状コア12a,12bは、内面に隔壁やリブなどの空隙形成部(本例では一例としてリブ)31aが配設された環状の収容部31bを一方の面(同図中の上面)に有し、かつ他方の面(同図中の下面)に磁電変換素子3a,3b用の保持部31cを有する合成樹脂製のコアケース31のこの収容部31bに収容される。これにより、弧状コア12a,12bは、空隙形成部31aによって相互間に上記した空隙部Gが形成された状態で環状コア12に構成される。また、各保持部31cのコアケース31の周方向に沿った形成位置は、保持部31cの中心が各空隙形成部31aの形成位置と一致するように規定されている。また、本例では、コアケース31の収容部31bは、弧状コア12a,12bを収容した状態で合成樹脂製の環状の蓋体32で閉塞される構成を採用しているが、蓋体32を省略する構成を採用することもできる。
【0022】
また、
図4に示すように、弧状コア13a,13bは、コアケース31と同じ構成を有するコアケース33の一方の面(同図中の下面)の収容部33bに収容されることにより、この収容部33bに形成された不図示の空隙形成部によって相互間に上記した空隙部Gが形成された状態で環状コア13を構成する。また、本例では、コアケース33の収容部33bもまたコアケース31の収容部31bと同様にして、弧状コア13a,13bを収容した状態で蓋体32と同一の構成の蓋体34で閉塞される構成を採用しているが、蓋体34を省略する構成を採用することもできる。
【0023】
コアケース33は、磁電変換素子3a,3b用の保持部33cを有する他方の面(同図中の上面)とコアケース31の他方の面(同図中の下面)との間で磁電変換素子3a,3bおよび磁電変換素子3a,3b用の環状の回路基板35を挟んだ状態で、コアケース31に連結される。一例として本例では、コアケース31の他方の面には連結用の柱状突起31dが4つ形成されると共に、コアケース33の他方の面にも連結用の柱状突起33dが4つ形成されて、コアケース31の柱状突起31dがコアケース33の対応する柱状突起33dと凹凸嵌合することで、コアケース31,33が互いに連結される。
【0024】
このコアケース31,33の連結状態においては、一方の磁電変換素子3aは、対向する一対の保持部31c,33c間で保持され、他方の磁電変換素子3bは、対向する他の一対の保持部31c,33c間で保持されている。また、各収容部31b,33bに収容されている各環状コア12,13は、
図2に示すように、互いに平行な状態に維持されている。
【0025】
なお、上記したように、コアケース31では、各保持部31cのコアケース31の周方向に沿った形成位置は、保持部31cの中心が各空隙形成部31aの形成位置と一致するように規定され、コアケース31と同じ構造のコアケース33でも、各保持部33cのコアケース33の周方向に沿った形成位置は、保持部33cの中心が各空隙形成部の形成位置と一致するように規定されている。
【0026】
したがって、このコアケース31,33の構成により、このコアケース31,33の連結状態においては、
図3に示されるように、各環状コア12,13の分割部位に形成された空隙部Gは、そのコアケース31,33の周方向に沿った位置が保持部31c,33c(同図では図示を省略している)で保持された磁電変換素子3bの中心(同図中の×印の部位)に一致した状態になっている。また、図示はしないが、各環状コア12,13の他の分割部位においても、この分割部位に形成された空隙部Gは、そのコアケース31,33の周方向に沿った位置が磁電変換素子3aの中心に一致した状態になっている。つまり、磁電変換素子3a,3bは、一対の環状コア12,13で挟まれた状態で、一対の環状コア12,13における分割部位(分割された位置)の近傍に配設されている。
【0027】
また、連結されたコアケース31,33に収容されることによって互いに平行な状態で一体化された環状コア12,13で構成される磁気コア11は、
図1に示すように、磁気シールドコア21内に収容されている。磁気シールドコア21は、パーマロイやフェライトなどの磁性材料を用いて、環状コア12,13の平面形状に合わせた平面形状を有する環状体に形成されている。本例では、環状コア12,13の平面形状が円形の環状であるため、磁気シールドコア21の平面形状も円形の環状体に形成されている。
【0028】
本例では一例として、磁気シールドコア21は、
図4に示すように、径方向に沿った断面形状がU字状に形成された同一構造の円環状の溝体41,42が組み合わされて構成されている。
【0029】
各磁電変換素子3a,3bは、ホール素子やフラックスゲートなどで構成されている。また、磁電変換素子3a,3bは、作動状態において、それぞれの近傍に位置する空隙部Gから漏れ出す磁束に基づいて磁気コア11の内部に発生する磁束を検出して、磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1a,V1bを出力する。本例では一例として、コア部2(具体的には磁気コア11)に挿通された被測定電線61に測定電流I1が流れることによって磁気コア11に磁束φ1が発生しているときには、磁電変換素子3aは電圧V1aを出力し、磁電変換素子3bは電圧V1aとは逆極性で電圧V1bを出力するように、磁電変換素子3a,3bの極性が規定されている。
【0030】
なお、磁気コア11の内部に発生する磁束とは、磁気コア11に挿通された被測定電線61に測定電流I1が流れることによって発生する磁束φ1と、負帰還コイル4に後述する負帰還電流I2が流れることによって発生する磁束φ2との差分(φ1−φ2)の磁束である。
【0031】
負帰還コイル4は、
図1に示すように、磁気シールドコア21の外面に巻回されている。なお、同図中では、負帰還コイル4は、磁気シールドコア21の一部の外面に集中して巻回されているが、磁気シールドコア21の全体に亘って巻回する構成を採用することもできる。
【0032】
電圧電流変換回路5は、本例では一例として差動増幅器を有して構成されて、入力される電圧V1a,V1bの差分に応じた電流値の負帰還電流I2を生成して、負帰還コイル4の一端に供給する。上記したように、磁電変換素子3a,3bは互いの電圧V1a,V1bの極性が逆になる状態で環状コア12,13間に配設されているため、電圧電流変換回路5は、電圧V1a,V1bの加算値V1a+V1b(=(V1a−(−V1b)))に応じた電流値の負帰還電流I2を生成する。
【0033】
この場合、磁気コア11内において被測定電線61が磁電変換素子3a側に接近したときには、電圧V1aが増加して、電圧V1bが減少する。また、磁気コア11内において被測定電線61が磁電変換素子3b側に接近したときには、電圧V1bが増加して、電圧V1aが減少する。したがって、この2つの磁電変換素子3a,3bを使用する構成により、磁気コア11内における被測定電線61の位置に拘わらず、加算値V1a+V1bの全体はほぼ一定に維持される。つまり、電流センサ1では、磁気コア11内における被測定電線61の位置による負帰還電流I2の変動が低減されている。
【0034】
なお、磁電変換素子3aが出力する電圧V1aと、磁電変換素子3bが出力する電圧V1bの極性が同じ極性になるように、磁電変換素子3a,3bの極性が規定されていたときには、電圧電流変換回路5の構成を差動増幅器を有する構成に代えて、加算器を有する構成にする。これにより、電圧電流変換回路5は、加算値V1a+V1b(=(V1a−(−V1b)))に応じた電流値の負帰還電流I2を生成して、負帰還コイル4の一端に供給することが可能になる。
【0035】
また、電圧電流変換回路5は、加算値V1a+V1bがゼロボルトになるように、つまり、各磁電変換素子3において検出される磁気コア11の内部に発生している磁束(φ1−φ2)の磁束密度がゼロになるように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、負帰還電流I2の電流値を制御する。
【0036】
検出抵抗回路6は、負帰還コイル4の他端と基準電位(本例ではグランド電位)との間に接続されて、負帰還電流I2を検出電圧V2に変換する。本例では一例として、検出抵抗回路6は、1つの検出抵抗で構成されているが、複数の抵抗の並列回路および直列回路のいずれかで構成することもできるし、これらを組み合わせた回路で構成することもできる。
【0037】
次に、電流センサ1の動作について、図面を参照して説明する。
【0038】
測定電流I1の流れている被測定電線61がコア部2(具体的には磁気コア11)の内部に挿通されている状態において、各磁電変換素子3a,3bは、環状コア12,13の各空隙部Gから漏れ出す磁束を検出することにより、磁気コア11の内部に発生する磁束(φ1−φ2)を検出して、磁束密度に応じた電圧値の電圧V1を出力する。
【0039】
この場合、磁気コア11は、単純な弧状(本例では半円弧状)の弧状コア12a,12bを相互間に一定の距離Wの空隙部Gを設けて平面視円環状に配置して環状コア12とし、また、弧状コア12a,12bと同じ形状の弧状コア13a,13bを相互間に一定の距離Wの空隙部Gを設けて、弧状コア13aが弧状コア12aに対向し、かつ弧状コア13bが弧状コア12bに対向する状態で平面視円環状に配置して環状コア13とするという、極めて簡単な構造で構成されている。このため、磁気コア11では、従来の磁気コア51とは異なり、磁電変換素子3a,3bを保持するための保持孔を磁気コア自体に形成する作業が不要になっていることから、製造コストの大幅な低減が図られている。
【0040】
また、各磁電変換素子3a,3bは、一定の間隔L2を空けて正対して配置された一対の環状コア12,13で挟まれた状態で、一対の環状コア12,13における分割部位(分割された位置)の近傍、本例では、環状コア12,13の対向する各分割部位間(各空隙部G間)に配設されている。したがって、従来の磁気コア51とは異なり、磁気コア自体に磁電変換素子3a,3bを保持するための保持孔は形成されていないものの、一対の環状コア12,13を全体として1つのコアとして見たときに、正対する一対の環状コア12,13で挟まれた空間部(環状コア12,13の各内周面を連結する仮想円筒体の周面、環状コア12,13の各外周面を連結する仮想円筒体の周面、および環状コア12,13の各対向面で囲まれた環状(本例では円環状)の空間部)が、磁電変換素子3a,3bを保持する保持孔に相当すると考えることができる。
【0041】
したがって、この電流センサ1では、従来の磁気コア51と同様にして、一対の環状コア12,13間の間隔L2を小さくし(磁電変換素子3a,3bを挟める範囲内で小さくし)、かつ弧状コア12a,12bおよび弧状コア13a,13b間に設けられている空隙部Gの距離Wを小さくすることで、各環状コア12,13の空隙部Gから各磁電変換素子3a,3bに向かう磁束の磁束密度を大きくすることが可能になっている。
【0042】
なお、本例の磁気コア11では、磁電変換素子3a,3bの保持孔としての上記の環状の空間部(環状コア12,13の各対向面で囲まれた環状の空間部)内に、すなわち、環状コア12の円周と同じ長さの環状の空間部内に、2つの磁電変換素子3a,3bが等間隔で配設される構成のため、磁電変換素子3の1つ分の空間部の長さは環状コア12の円周の半分に相当するとも考えられる。これにより、本例の磁気コア11では、従来の磁気コア51における保持孔の長さ(磁気コア11の周方向に沿った長さ)L1に相当する長さは、環状コア12の円周の半分の長さ、つまり、弧状コア12aの1つ分の長さに相当するとも考えられ、従来の磁気コア51の保持孔の長さL1よりも大幅に長いものとなっている。
【0043】
しかしながら、背景技術で述べたように、長さL1を小さくした方が感度は向上するものの、その差は僅かである。したがって、この磁気コア11のように、この長さL1に相当する長さが大幅に長い構成においても、この構成に起因した感度の低下は僅かであると考えられる。したがって、この電流センサ1では、従来の磁気コア51に対して磁気コア11の構造を簡易にしつつ、従来の磁気コア51と同等の検出感度(測定電流I1についての測定感度)を磁気コア11において確保することが可能になっている。
【0044】
電圧電流変換回路5は、各磁電変換素子3a,3bから入力している電圧V1a,V1bに基づいて、これらの加算値V1a+V1bがゼロボルトになるように、つまり、磁気コア11の内部に発生している磁束(φ1−φ2)の磁束密度がゼロになるように、負帰還電流I2の電流値を制御しつつ、負帰還電流I2を生成して負帰還コイル4に出力する。検出抵抗回路6は、この負帰還電流I2を検出電圧V2に変換して出力する。
【0045】
この場合、負帰還電流I2の電流値は、測定電流I1の電流値を負帰還コイル4の巻線数で除算した値になる。したがって、この電流センサ1では、検出電圧V2の電圧値、検出抵抗回路6の抵抗値、および負帰還コイル4の巻線数に基づいて、測定電流I1の電流値を検出することが可能である。
【0046】
このように、この電流センサ1では、磁気コア11が、平行な状態で互いに対向して配設された同一形状の一対の環状コア12,13を有し、各環状コア12,13が周方向に沿った同じ位置で分割され、磁電変換素子3a,3bが一対の環状コア12,13で挟まれた状態で、一対の環状コア12,13における分割部位(分割された位置)の近傍に配設されている。
【0047】
したがって、この電流センサ1によれば、弧状コアを複数(本例では4つ)製造して、これらを弧状コア12a,12bおよび弧状コア13a,13bとして使用して環状コア12,13を形成するだけで磁気コア11を構成することができるため、従来の磁気コア51とは異なり、磁電変換素子3a,3bを保持するための保持孔を磁気コア自体に形成する作業を不要にすることができ、これにより、製造コストを大幅に低減することができる。
【0048】
また、磁電変換素子3a,3bを一対の環状コア12,13で挟まれた状態で、一対の環状コア12,13における分割部位の近傍に配設する構成を採用したことにより、一対の環状コア12,13間の間隔L2を小さくし、かつ弧状コア12a,12bおよび弧状コア13a,13b間(分割部位)に設けられている空隙部Gの距離Wを小さくすることにより、各環状コア12,13の空隙部Gから各磁電変換素子3a,3bに向かう磁束の磁束密度を大きくすることができる。したがって、この電流センサ1によれば、上記のようにして製造コストを大幅に低減しつつ、測定電流I1に対する十分な検出感度(測定感度)を確保することができる。
【0049】
また、磁電変換素子3a,3bについては、一対の環状コア12,13における分割部位の近傍に配置されていればよい。このため、上記の一対の環状コア12,13で挟まれた状態で配設する構成に限定されず、例えば、一対の環状コア12,13における分割部位の近傍において、環状コア12,13の内周側や外周側に若干ずらして配設する構成を採用することもできる。この構成を採用したときには、磁電変換素子3a,3bが一対の環状コア12,13間に形成された上記の環状の空間部内から外れるため、一対の環状コア12,13間の間隔L2をより小さくすることが可能となる。このため、この構成の電流センサ1によれば、環状コア12,13における分割部位間で挟まれた位置から磁電変換素子3a,3bがずれたことで磁電変換素子3a,3bへの磁束の密度の低下分を、環状コア12,13間の間隔L2をより小さくすることで補うことができる結果、測定電流I1に対する十分な検出感度(測定感度)を確保することができる。
【0050】
また、この電流センサ1によれば、一対の環状コア12,13および磁電変換素子3a,3bを収容する環状の磁気シールドコア21を備えたことにより、不要な外部磁界の影響を十分に低減することができ、この結果、検出精度を充分に向上させることができる。
【0051】
なお、上記の電流センサ1では、環状コア12,13をそれぞれ弧状コア12a,12bおよび弧状コア13a,13bの2つに分割する構成を採用しているが、3つ以上に分割すると共に、各分割部位の近傍に磁電変換素子3を配設する構成を採用することもできる。
【0052】
また、上記の電流センサ1は、磁気コア11(具体的には、磁気シールドコア21)に巻回された負帰還コイル4、および電流電圧変換回路5を有するゼロフラックス方式の電流センサとして構成されているが、負帰還コイル4および電流電圧変換回路5を省く構成(非ゼロフラックス方式の構成)を採用することもできる。