(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る医用画像処理装置および医用画像処理プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像処理装置10の一構成例を示すブロック図である。
【0010】
医用画像処理装置10は、
図1に示すように、入力部11、表示部12、ネットワーク接続部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0011】
入力部11は、少なくともポインティングデバイスを含み、たとえばマウス、トラックボール、キーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を制御部15に出力する。
【0012】
表示部12は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、制御部15の制御に従って医用画像などの各種画像を表示する。
【0013】
ネットワーク接続部13は、ネットワーク100の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続部13は、この各種プロトコルに従って医用画像処理装置10と他の電気機器とを接続する。ここでネットワーク100とは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LAN(Local Area Network)などの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0014】
記憶部14は、モダリティ101から出力される医療用のボリュームデータ(医用3次元画像データ)や再構成画像データを記憶する。モダリティ101は、たとえばX線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、X線診断装置などの医用画像診断装置であって、被検体(患者)の撮像により得られた投影データにもとづいてボリュームデータ(3次元画像データ)を生成可能な装置により構成することができる。
【0015】
また、医用画像処理装置10は、ネットワーク100を介して接続されたモダリティ101や画像サーバ102から再構成画像やボリュームデータを受けてもよい。ネットワーク100を介して受信した再構成画像やボリュームデータもまた、記憶部14に記憶される。また、医用画像処理装置10は、モダリティ101の構成要件としてモダリティ101に内包されてもよい。
【0016】
画像サーバ102は、たとえばPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)に備えられる画像の長期保管用のサーバであり、ネットワーク100を介して接続されたX線CT(Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置などのモダリティ101で生成された再構成画像やボリュームデータなどを記憶する。
【0017】
制御部15は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶されたプログラムに従って医用画像処理装置10の動作を制御する。
【0018】
制御部15のCPUは、ROMをはじめとする記憶媒体に記憶された医用画像処理プログラムおよびこのプログラムの実行のために必要なデータをRAMへロードし、このプログラムに従って、より多くの異常箇所画像を含むねじれ曲面任意多断面再構成画像(tCPR画像)を生成するための処理を実行する。
【0019】
制御部15のRAMは、CPUが実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。制御部15のROMをはじめとする記憶媒体は、医用画像処理装置10の起動プログラム、医用画像処理プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。なお、ROMをはじめとする記憶媒体は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0020】
図2は、制御部15のCPUによる機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図である。なお、この機能実現部は、CPUを用いることなく回路などのハードウエアロジックによって構成してもよい。
【0021】
図2に示すように、制御部15のCPUは、医用画像処理プログラムによって、少なくとも画像データ取得部21、芯線抽出部22、異常箇所検出部23、切断線設定部24、画像生成部25、および指標算出部26として機能する。この各部21−26は、RAMの所要のワークエリアをデータの一時的な格納場所として利用する。
【0022】
画像データ取得部21は、少なくともモダリティ101により生成されたボリュームデータを取得し、記憶部14に記憶させる。
ここで、従来のCPR画像について簡単に説明する。
【0023】
図3は、従来のCPR画像の生成方法の一例を示す説明図である。
【0024】
図3に示すように、従来のCPR画像を生成する場合には、まず、ボリュームデータにもとづいて、冠動脈などの血管、気管支、大腸、小腸など管状構造物30の芯線31に直交する複数の管断面32
i(iは正整数)が設定される。そして、複数の管断面32
iのそれぞれについて、所定の投影面33に対して平行かつこの管断面32
iの中心を通る管断面32
i内の直線である切断線34
iを設定する。そして、ボリュームデータからこの切断線34
iに属するデータを抽出し、複数の切断線34
iのデータを投影面33に投影することにより、従来のCPR画像が生成される。
【0025】
このため、全ての切断線34
iは、投影面33に対して平行である。換言すれば、投影面33に平行かつ芯線31に直交する管断面32
i内の方向を基準とし芯線31を回転中心とする回転角は、全ての切断線34
iについて固定されて同一となる。したがって、たとえば
図3に示す例では、切断線34
i−2、34
i−1、・・・、34
i+3のそれぞれは、互いに平行となる。
【0026】
図4は、従来のCPR画像と切断線34との関係の一例を示す説明図である。
図4は、
図3に示す例において、さらに管断面
32i−1および
32i+3が狭窄箇所や肥厚箇所などの異常箇所40を含む断面(以下、異常断面という)41である場合の例について示した図である。
【0027】
異常断面41
i−1の切断線34
i−1は、この異常断面41
i−1に含まれる異常箇所40を通るとともに異常断面41
i−1の中心を通る直線(以下、異常切断線という)42
i−1となっている。このため、この異常切断線42
i−1に捉えられた異常断面41
i−1に含まれる異常箇所40の情報は、従来のCPR画像に反映されユーザにより視認可能である(
図4右図参照)。
【0028】
一方、異常断面41
i+3の切断線34
i+3は、この異常断面41
i+3に含まれる異常箇所40を通ってはいない。このため、異常断面41
i+3に含まれる異常箇所40の情報は、切断線34
i+3で捉えることができず、従来のCPR画像では反映することができない(
図4右図参照)。
【0029】
このように、従来のCPR画像では、切断線34
iのそれぞれが互いに平行であるために、切断線34
iで捉えることができない異常箇所40が多数存在してしまうおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態に係る医用画像処理装置10は、切断線34iの管断面32i内での回転角を固定せず、異常断面41については異常切断線42となるように切断線34の芯線31を中心とする回転角をねじったCPR画像(ねじれ曲面任意多断面再構成画像、以下、ツイステッドCPR画像(twisted−CPR画像)またはtCPR画像という)を生成する。
【0031】
このために、まず、芯線抽出部22は、ボリュームデータにもとづいて管状構造物30の芯線31を抽出する。たとえば、芯線抽出部22は、まずボリュームデータを閾値処理することによりボリュームデータに含まれる管状構造物30の領域を抽出する。そして、芯線抽出部22は、この領域をたとえば細線化処理することで、芯線31を抽出する。
【0032】
管状構造物30は、ボリュームデータを閾値処理することにより全自動で抽出されてもよいし、モダリティ101から取得した再構成画像を表示部12に表示しておき、ユーザがこの表示部12に表示された再構成画像を確認しながら入力部11を介して手動により領域設定されてもよい。また、ユーザにより入力部11を介してユーザが管状構造物30に属すると考える1点の情報をクリック操作などにより受け付け、この1点の位置からセグメンテーション(領域拡張)することにより半自動で抽出してもよい。
【0033】
また、管状構造物30の芯線抽出方法としては細線化処理方法の他にも距離変換を用いる方法など従来種々の全自動による芯線抽出方法が知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。また、たとえばモダリティ101から取得した再構成画像を表示部12に表示しておき、ユーザがこの表示部12に表示された再構成画像を確認しながら入力部11を介して手動により芯線31を設定してもよい。この場合、芯線抽出部22はユーザにより手動で設定された芯線31の情報を受け付ける。また、半自動で芯線31を抽出する場合、芯線抽出部22は、たとえばユーザにより入力部11を介してユーザが芯線31に属すると考える複数点の情報をクリック操作などにより受け付け、この複数点の間を自動補間することにより芯線31を抽出する。
【0034】
手動による場合や半自動による場合には、芯線抽出部22は管状構造物30の領域を抽出する作業を省略してもよい。また、管状構造物30の領域情報を必要としない芯線抽出アルゴリズムを用いる場合にも、芯線抽出部22は管状構造物30の領域を抽出する作業を省略してもよい。
【0035】
異常箇所検出部23は、芯線31上の所定間隔の点のそれぞれについて管断面32を設定する。また、異常箇所検出部23は、ボリュームデータから管断面32のそれぞれを構成するボクセルデータ群を抽出し、これらのボクセルデータ値にもとづいて、管状構造物30の外壁および内壁を抽出する。そして、異常箇所検出部23は、抽出した内壁および外壁の情報にもとづいて平均値や最小径、面積などの情報を求め、これらの情報にもとづいて狭窄や肥厚などの異常箇所40を検出する。
【0036】
切断線設定部24は、管断面32のそれぞれについて切断線34を設定する。具体的には、切断線設定部24は、まず芯線31に直交するとともに異常箇所40を含む管断面32である異常断面41のそれぞれについて、芯線31と交わるとともに異常断面41に含まれる異常箇所40を通る異常断面41内の直線を異常切断線42として設定する。
【0037】
また、切断線設定部24は、異常箇所40を含まない管断面(正常断面)32のうち、2つの異常断面41に挟まれた1または複数の管断面32については、2つの異常断面41のそれぞれの異常切断線42の芯線31を中心とした回転角θの差を補間するように切断線(正常切断線、補間切断線)34を設定する。
【0038】
画像生成部25は、切断線設定部24により設定された切断線34(異常切断線42を含む)を通るように、tCPR画像(ツイステッドCPR画像)を生成し、表示部12に表示させる。
【0039】
図5は、tCPR画像の生成方法の一例を示す説明図である。
図5に示すように、tCPR画像を生成する際には、まず切断線設定部24により異常断面41のそれぞれについて異常切断線42が設定される。
図5には、
図4と同様に、管断面32
iのうち、管断面32
i−1および32
i+3がそれぞれ異常箇所40を含む異常断面41
i−1および41
i+3である場合の例について示した。
【0040】
図5に示すように、異常断面41
i−1および41
i+3のそれぞれについて切断線設定部24により、切断線34iの管断面32i内での回転角θを固定することなく、異常箇所40を通るように異常切断線42
i−1および42
i+3が設定される。
【0041】
また、切断線設定部24は、
図5に示すように、異常箇所40を含まない管断面(正常断面)32のうち、2つの異常断面41
i−1および41
i+3に挟まれた管断面32
i、32
i+1、32
i+2については、異常切断線42
i−1および42
i+3の回転角θの差を補間するように切断線(正常切断線、補間切断線)34
i、34
i+1、34
i+2を設定する。なお、芯線31を中心とする回転角θは、たとえば任意の所定の平面に平行かつ芯線31に直交する管断面32内の方向を基準(θ=0度)とすることにより設定することができる。なお、任意の所定の平面としてボリュームレンダリング面を用いてもよいし、アキシャル面等の主要直交3断面のいずれかを用いてもよい。
【0042】
図6は、tCPR画像と切断線34(異常切断線42を含む)との関係の一例を示す説明図である。
【0043】
図6に示すように、画像生成部25は、切断線設定部24により設定された切断線34(異常切断線42を含む)を通るように、tCPR画像(ツイステッドCPR画像)を生成する。このため、tCPR画像は、従来のCPR画像に比べ非常に多くの異常箇所40の画像を含むことができる。
【0044】
図7は、2つの異常断面41に挟まれた管断面32の切断線34の設定方法の一例を示す説明図である。
図7には、異常断面41
i−1の異常切断線42
i−1の回転角θをθ=0度としたとき、異常断面41
i+3の異常切断線42
i+3の回転角θがθ=90度である場合の例について示した。
【0045】
図7に示す例のように、2つの異常断面41に挟まれた1または複数の管断面32の切断線34は、2つの異常切断線42の回転角θの差を補間するように切断線(正常切断線、補間切断線)34を設定される。この結果、回転角θを固定せずにねじることにより生成されるtCPR画像においても、内壁画像や外壁画像の連続性を保つことができる。
【0046】
なお、この連続性に鑑みて、隣接する管断面32どうしの回転角θの差に閾値を設けてもよい。たとえば、距離が近いにもかかわらず回転角θの差が大きい場合、この2つの異常断面41の間では、内壁画像や外壁画像の連続性を保つことが難しいほど回転角θがねじれてしまう場合がある。このため、補間を行うと隣接する管断面32どうしの回転角θの差が閾値θthを超えてしまう場合には、閾値θth以内となるようにするよい。
【0047】
たとえば、
図7に示す例において閾値θth=15度である場合は、θ
i−1、θ
i、θ
i+1、θ
i+2をそれぞれ15度、30度、45度、60度とする。また、このとき、異常断面41
i+3の異常切断線42
i+3については、θ
i+3を90度のままとしてもよいしθ
i+2との関係から75度としてもよい。90度のままにしておく場合、内壁画像や外壁画像の連続性は多少損なわれる場合があるものの、tCPR画像に確実に異常箇所40の画像を含めることができる。一方、75度とする場合、tCPR画像に表示される異常箇所40の画像が小さくなってしまう場合があるものの、内壁画像や外壁画像の連続性を保つことができる。
【0048】
また、隣接する管断面32どうしの距離が可変である場合に対応するため、この角度閾値θthは、隣接する管断面32どうしの距離に応じて決定されるとよい。
【0049】
図8は、異常切断線42の設定方法の一例を示す説明図である。
【0050】
切断線設定部24は、異常断面41については異常箇所40を通り芯線31と交わるように異常切断線42を設定する。このとき、切断線設定部24は、たとえば
図8に示すように、芯線31と交わる異常断面41内の直線のうち最も異常箇所40を横断する距離の合計(
図8に示す例ではd1+d2)が長くなる直線を異常切断線42として設定するとよい。
【0051】
すなわち、切断線設定部24は、異常箇所検出部23により検出された異常箇所40の情報にもとづいて、自動で異常切断線42、正常切断線、補間切断線その他の切断線34を設定することができる。したがって、画像生成部25は、切断線設定部24により設定された切断線34(異常切断線42を含む)を通るように、自動でtCPR画像(ツイステッドCPR画像)を生成し、表示部12に表示させることができる。
【0052】
また、半自動でtCPR画像を生成してもよく、この場合、切断線設定部24は、ユーザにより入力部11を介して所定位置の切断線34の設定を受け付ける。たとえば、ユーザにより入力部11を介して2箇所の異常箇所40に対して異常切断線42が設定された場合、切断線設定部24は、この2箇所の異常切断線42の間の切断線34を自動的に設定する。また、この2箇所の異常切断線42の間に異常箇所40がある場合には、切断線設定部24はこの異常箇所40を通る異常切断線42を自動的に設定する。また、手動で全ての異常箇所40を通る異常切断線42がユーザにより手動で設定されてもよい。
【0053】
また、ユーザにより設定された切断線34を受け付ける場合であっても、切断線設定部24は、補間を行うと隣接する管断面32どうしの回転角θの差が閾値θthを超えてしまう場合には、閾値θth以内となるようにユーザにより設定された切断線34の設定を変更してもよい。
【0054】
また、切断設定部24は、全自動または半自動により設定された切断線34にもとづくtCPR画像が生成されて表示部12に表示されたあとであっても、ユーザによる入力部11を介した変更指示を受け付けると、この変更指示に応じて位置や回転角度その他の切断線34の設定を変更する。この場合、画像生成部25は、変更後の切断線34にもとづいてtCPR画像を生成して表示部12に表示させる。このとき、変更前の切断線34にもとづくtCPR画像と並列表示させてもよい。
【0055】
図9(a)は従来のCPR画像の一例を示す説明図であり、(b)はtCPR画像の一例を示す説明図である。
【0056】
図9に示すように、tCPR画像は従来のCPR画像に比べ、より多くの異常箇所40の情報を含むことができる。なお、
図9に示すようなtCPR画像を表示する際には、画像生成部25は、tCPR画像に対して異常箇所40の位置を示す強調画像を重畳表示させてもよい。強調画像としては、たとえば異常箇所を囲む図形や文字情報、異常レベルに応じた異常箇所を囲む図形の色分けや輝度わけ、またはこれらの組み合わせなどを用いることができる。
【0057】
続いて、tCPR画像にもとづく血流予備量比の算出方法について説明する。
【0058】
図10は、血流予備量比(FFR、Fractional Flow Reserve)について説明するための図である。
【0059】
FFRは、医師がカテーテル手術を行うか薬物療法を行うかの選択を行うための指標に用いられる。狭窄などの異常箇所40の異常の進行度の評価には、管状構造物30内の圧力が用いられる。具体的には、カテーテルなどのプレッシャーワイヤー51を直接管状構造物30に通し、異常箇所40の前部の圧力であるPinと後部の圧力であるPoutを計測する。FFRの値はFFR=Pout/Pinで定義される。そして、このFFRの値は、たとえばFFRが0.8より低いとカテーテル手術を行い、0.8より大きいと薬物療法で対応するなどの判断指標として用いられる。
【0060】
しかし、プレッシャーワイヤー51を用いたFFR計測は侵襲的であり被検体に対する負担が大きい。このため、最近、流体解析を用いたシミュレーションベースのFFR算出法が開発されている。
【0061】
この種のFFR算出法の1つに、CFD(Computational Fluid Dynamics)計算法がある。CFD計算法は、管状構造物30の形状と、管状構造物30の内部を流れる流体の粘性などの物理パラメータと、を入力とし、ナビエ・ストークスの式を用いてFFRの値を求める方法である。
【0062】
このCFD計算法は、管状構造物30の形状が3次元である場合には、計算に多大な時間を要してしまう。一方、本実施形態に係る医用画像処理装置10により生成されるtCPR画像は、管状構造物30の断面画像、すなわち2次元画像であるとともに、従来のCPR画像に比べ非常に多くの異常箇所40の情報を含む画像である。したがって、tCPR画像の形状情報を用いて2次元CFD計算を行えば、3次元CFD計算よりも短い時間かつ軽い負荷で、従来のCPR画像を用いるよりも多くの異常箇所40の情報を反映した正確なFFRを求めることができる。
【0063】
そこで、制御部15の指標算出部26は、画像生成部25により生成された管状構造物30のtCPR画像の形状情報にもとづいて2次元CFD計算を行うことにより、FFRを求める。tCPR画像の形状情報を用いることにより、従来のCPR画像の形状情報を用いる場合に比べより多くの異常箇所40の情報を反映することができるため、より正確なFFRを求めることができる。
【0064】
図11は、インプラント52を挿入するシミュレーションを行った場合のtCPR画像の一例を示す説明図である。
【0065】
ステントなどのインプラント52を挿入する予定がある場合であって、インプラント52のメッシュデータ(ポリゴンデータなど)の形状情報が取得可能である場合は、インプラント52の形状情報にもとづいてインプラント52の画像をtCPR画像に重畳表示することにより挿入をシミュレートすることができる。また、インプラント52のメッシュデータ(ポリゴンデータなど)の形状情報が取得可能である場合は、管状構造物30の形状情報に対してインプラント52を挿入した場合の形状情報を反映して2次元CFD計算を行うことにより、インプラント52を挿入した場合の仮想的なFFRを求めることができる。
【0066】
なお、インプラント52の形状情報は、記憶部14にあらかじめ記憶されていてもよいし、ネットワーク100からダウンロードされてもよいし、ユーザにより入力部11を介して設定されてもよい。
【0067】
図12は、FFRがtCPR画像に重畳された様子の一例を示す説明図である。
【0068】
指標算出部26により算出されたFFRの情報を示す画像は、
図12に示すように管状構造物30のtCPR画像に重畳されてもよい。このとき、FFRの情報を示す画像は、たとえば濃淡や輝度、色付けによりFFR値をあらわす画像としてもよく、この場合
図12に示すように濃淡や輝度、色付けとFFR値とを対応付けるカラーバー53をさらに表示するとよい。
【0069】
次に、本実施形態に係る医用画像処理装置および医用画像処理プログラムの動作の一例について説明する。
【0070】
図13は、制御部15のCPUにより、より多くの異常箇所画像を含むtCPR画像を生成する際の手順を示すフローチャートである。
図13において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0071】
まず、ステップS1において、画像データ取得部21は、少なくともモダリティ101により生成されたボリュームデータを取得し、記憶部14に記憶させる。
【0072】
次に、ステップS2において、芯線抽出部22は、ボリュームデータを閾値処理することにより全自動で、または手動あるいは半自動により、ボリュームデータに含まれる管状構造物30の領域を抽出する。
【0073】
次に、ステップS3において、芯線抽出部22は、この領域をたとえば細線化処理することにより全自動で、または手動あるいは半自動により、芯線31を抽出する。
【0074】
なお、ステップS3において手動あるいは半自動により芯線31を抽出する場合や、管状構造物30の領域情報を必要としない芯線抽出アルゴリズムを用いて芯線31を抽出する場合は、ステップS2は省略されてもよい。
【0075】
次に、ステップS4において、異常箇所検出部23は、管断面32のそれぞれについて狭窄や肥厚などの異常箇所40を検出する。具体的には、異常箇所検出部23は、芯線31上の所定間隔の点のそれぞれについて管断面32を設定し、管断面32のそれぞれを構成するボクセルデータ群を抽出し、これらのボクセルデータ値にもとづいて、管状構造物30の外壁および内壁を抽出する。そして、異常箇所検出部23は、抽出した内壁および外壁の情報にもとづいて平均値や最小径、面積などの情報を求め、これらの情報にもとづいて狭窄や肥厚などの異常箇所40を検出する。
【0076】
次に、ステップS5において、切断線設定部24は、芯線31に直交するとともに異常箇所40を含む管断面32である異常断面41のそれぞれについて、芯線31と交わるとともに異常断面41に含まれる異常箇所40を通る異常断面41内の直線を、全自動で、または手動あるいは半自動で、異常切断線42として設定する。
【0077】
なお、ステップS5において、手動で全ての異常切断線42が設定される場合、ステップS4は省略されてもよい。
【0078】
次に、ステップS6において、切断線設定部24は、異常箇所40を含まない管断面(正常断面)32のうち、2つの異常断面41に挟まれた1または複数の管断面32については、2つの異常断面41のそれぞれの異常切断線42の芯線31を中心とした回転角θの差を補間するように切断線(正常切断線、補間切断線)34を設定する。
【0079】
次に、ステップS7において、画像生成部25は、切断線設定部24により設定された切断線34(異常切断線42を含む)を通るように、tCPR画像(ツイステッドCPR画像)を生成し、表示部12に表示させる。
【0080】
以上の手順により、より多くの異常箇所画像を含むtCPR画像を生成することができる。
【0081】
図14は、制御部15のCPUにより、tCPR画像の形状情報にもとづいてFFRを算出する際の手順を示すフローチャートである。
図14において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0082】
この手順は、画像生成部25により管状構造物30のtCPR画像が生成されてスタートとなる。
【0083】
まず、ステップS11において、画像生成部25は、インプラント52を挿入した場合のシミュレーションを行うか否かを判定する。このシミュレーションの実行指示は、たとえばユーザにより入力部11を介して画像生成部25に与えられる。インプラント52の挿入シミュレーションを行う場合はステップS12に進む。一方、インプラント52の挿入シミュレーションを行わない場合はステップS13に進む。
【0084】
次に、ステップS12において、画像生成部25は、インプラント52の形状情報をtCPR画像に反映させる。
【0085】
次に、ステップS13において、指標算出部25は、画像生成部25により生成された管状構造物30のtCPR画像の形状情報を取得する。
【0086】
次に、ステップS14において、指標算出部26は、画像生成部25により生成された管状構造物30のtCPR画像の形状情報にもとづいて2次元CFD計算を行うことにより、FFRを求める。このとき、ステップS12においてインプラント52の形状情報がtCPR画像に反映されている場合は、このステップS14においてはインプラント52を挿入した場合の仮想的なFFRが求められることになる。
【0087】
次に、ステップS15において、画像生成部25は、FFRの情報を示す画像を管状構造物30のtCPR画像に重畳表示させる。
【0088】
以上の手順により、tCPR画像の形状情報にもとづいてFFRを算出することができる。
【0089】
なお、画像生成部25は、tCPR画像と同様にして、芯線31に沿って伸長させたストレッチCPRのような画像(ねじれSPR画像)を生成してもよい。
【0090】
また、異常箇所検出部23は、異常箇所40についてソフトプラークとハードプラークとに区分してもよく、この場合、画像生成部25は、ソフトプラークとハードプラークとを互いに異なる態様でtCPR画像に表示するとよい。また、この場合、切断線設定部24は、ソフトプラークのみを異常箇所40として異常切断線42を設定してもよい。
【0091】
本実施形態に係る医用画像処理装置10は、管状構造物30の芯線31に対して直交する断面のうち、異常箇所40を含む管断面32である異常断面41のそれぞれについて、異常箇所40を通るように異常切断線42を設定し、この異常切断線42を通るような管状構造物30の断面としてtCPR画像を生成することができる。このため、このtCPR画像は、従来のCPR画像に比べ、より多くの異常箇所40の情報を含んだ正確な画像ということができる。
【0092】
したがって、従来のCPR画像で全ての異常箇所40を把握するためには芯線31に沿った様々な断面でのCPR画像を生成する必要があったところ、本実施形態に係る医用画像処理装置10により生成されるtCPR画像によれば、ユーザは1つのtCPR画像で全ての異常箇所40を確認することができ、異常箇所40を見落とす可能性を大幅に低下させることができる。
【0093】
また、2つの異常断面41に挟まれた1または複数の管断面32の切断線34は、2つの異常切断線42の回転角θの差を補間するように切断線(正常切断線、補間切断線)34を設定される。この結果、回転角θを固定せずにねじることにより生成されるtCPR画像においても、内壁画像や外壁画像の連続性を保つことができ、ユーザに与える違和感を低減することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る医用画像処理装置10は、このtCPR画像の形状情報を用いて2次元CFD計算を行うことによりFFRを求めることができる。このため、3次元CFD計算よりも短い時間かつ軽い負荷で、従来のCPR画像を用いるよりも多くの異常箇所40の情報を反映した正確なFFRを求めることができる。
【0095】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0096】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。