(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1カム面及び前記第2カム面は階段状を呈しており、前記第2カム部が回転したときに前記第1カム部に対する前記第2カム部の距離が段階的に変化するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の逃がし弁。
前記調圧機構には、前記第1カム部に対する前記第2カム部の回転を防止する回転防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の逃がし弁。
前記回転防止機構は、前記第1カム面に設けられた第1凸部もしくは第1溝部、及び、前記第2カム面の前記第1凸部もしくは前記第1溝部に対応する位置に設けられた第2溝部もしくは第2凸部から形成されていることを特徴とする請求項4に記載の逃がし弁。
前記回転防止機構は、前記第1カム面に設けられた第1傾斜面及び前記第2カム面に設けられた第2傾斜面から形成されていることを特徴とする請求項4に記載の逃がし弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているレギュレータによれば、調圧バネのバネ押さえに階段状カム部を形成し、これに回転ハンドルに設けたカムフォロアを係合させ、回転ハンドルの回転角度に応じた分だけバネ押さえを段階的に押動して調圧バネのバネ力を調整するため、回転ハンドルを1回転以上回転させなくとも、ある角度ずつ回すことによって段階的に調圧を行うことができる。
【0009】
また、特許文献2に開示されている逃がし弁によれば、調節ネジの上面に設けたネジ回し用の凹部に対応して蓋体にネジ回し用の案内孔が貫設されているため、割りピン、手動レバー及び蓋体を外すことなく、ネジ回しにより調節ネジを回転させて上下動させ、調節バネのダイヤフラム弁に対する弾性力を調整することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されているレギュレータにおいては、蓋を兼ねる回転ハンドルを回転させることによりバネ押さえを段階的に押動するため、レギュレータ自体の構成が煩雑であるといった問題がある。
【0011】
また、特許文献2に開示されている逃がし弁においては、ネジ回しの回転時に蓋体及び手動レバーも同様に回転するため、調節バネの弾性力の調節量に応じて手動レバーの位置が変化するといった問題が生じ得る。
【0012】
また、従来の逃し弁においては、調節バネの弾性力の調節後に調節ネジに対して回転防止用の接着処理を必要するものがあり、その調節作業が複雑化するといった問題が生じ得る。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成でもって開閉作動部材の開閉時の圧力を調節することのできる逃がし弁を提供することにある。また、調節バネの弾性力の調節後に調節ネジに対して回転防止用の接着処理を必要としない逃がし弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記する課題を解決するために、本発明に係る逃がし弁は、一次側接続口と二次側接続口を有する弁本体と、前記一次側接続口と前記二次側接続口の間に配設され、一次側の圧力が設定圧以上になったときに開弁して一次側の圧力を二次側へ逃がす弁体と、前記弁体を閉弁方向へ付勢する付勢部材と、前記弁体の開弁時の圧力を調節するべく前記付勢部材の付勢力を調節する調圧機構とを備えた逃がし弁であって、前記調圧機構は、周方向に高さが変化する第1カム面を有し且つ前記弁本体の内壁に回転不能に設けられた第1カム部と、該第1カム面と相補的な形状を呈する第2カム面及び前記付勢部材と当接する当接面を有し且つ前記弁本体に回転自在に配置された第2カム部とからなり、該第2カム部が回転したときに前記第1カム面に対する前記第2カム面の当接位置が変更されることで、前記第1カム部に対する前記第2カム部の距離が変化し、前記付勢部材の長さが変化して該付勢部材の付勢力が調節されることを特徴としている。
【0015】
好ましい形態では、前記第1カム部は、前記弁本体の内壁と一体に形成されている。
【0016】
他の好ましい形態では、前記第1カム面及び前記第2カム面は階段状を呈しており、前記第2カム部が回転したときに前記第1カム部に対する前記第2カム部の距離が段階的に変化するようになっている。
【0017】
他の好ましい形態では、前記調圧機構には、前記第1カム部に対する前記第2カム部の回転を防止する回転防止機構が設けられている。
【0018】
他の好ましい形態では、前記回転防止機構は、前記第1カム面に設けられた第1凸部もしくは第1溝部、及び、前記第2カム面の前記第1凸部もしくは前記第1溝部に対応する位置に設けられた第2溝部もしくは第2凸部から形成されている。
【0019】
他の好ましい形態では、前記第1凸部もしくは前記第1溝部、及び、前記第2溝部もしくは前記第2凸部は丸みを帯びている。
【0020】
他の好ましい形態では、前記回転防止機構は、前記第1カム面に設けられた第1傾斜面及び前記第2カム面に設けられた第2傾斜面から形成されている。
【0021】
他の好ましい形態では、
一次側の圧力が設定負圧以下になったときに開弁する負圧弁体、及び、前記負圧弁体を強制的に開弁させるべく前記弁本体に摺動自在に嵌挿された
揚弁軸と該
揚弁軸を移動させるための操作レバーとを有する強制開弁機構を更に備え、前記
揚弁軸が前記第1カム部の内周側に形成された内筒部及び前記第2カム部に形成された貫通孔に嵌挿されている。
【0022】
他の好ましい形態では、前記
揚弁軸にはばね受けが突設されており、前記
揚弁軸を前記弁本体に嵌挿する際に、前記ばね受けが前記貫通孔の外周側に形成された切欠きを挿通するようになっている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る逃がし弁によれば、弁体の開弁時の圧力を調節するべく付勢部材の付勢力を調節する調圧機構のうち、周方向に高さが変化する第1カム面を有する第1カム部が弁本体の内壁に回転不能に設けられ、前記第1カム面と相補的な形状を呈する第2カム面及び前記付勢部材と当接する当接面を有する第2カム部が弁本体に回転自在に配置されており、第2カム部が回転されたときに第1カム面に対する第2カム面の当接位置が変更されることで第1カム部に対する第2カム部の距離が変化するので、簡単な構成でもって弁体の開弁時の圧力を調節することができる。また、例えば第1凸部または溝部と第2溝部または凸部からなる回転防止機構を設けることにより、付勢部材の付勢力の調節後の接着処理を不要とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る逃がし弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る逃がし弁の一実施形態を示す縦断面図、
図2は、その部分切欠(平面視で中心角90度部分が切欠部)斜視図、
図3は、その平面図である。
【0027】
図示する逃がし弁1は、主に、弁本体10と、一次側の圧力に応じて開閉作動する開閉作動部材としての負圧弁体25及びダイアフラム弁体(弁体)30と、両面シール部材50と、揚弁軸40及び手動操作レバー65等からなる強制開弁機構60とを備えている。
【0028】
弁本体10は、合成樹脂製の下ケース10Aと上ケース10Bとで分割構成されている。下ケース10Aは上段側ほど大径となる概略段付きの円筒状を呈し、上ケース10Bは下段側ほど大径となる概略段付きの円筒状を呈している。上ケース10Bの下端面部に3箇所突設された位置決め部10eから下方に延びる位置決めピン10jが下ケース10Aの上端面部に3箇所突設された位置決め部10iに形成された位置決め穴10hに嵌挿され、上ケース10Bの下端面部に4箇所突設されたねじ止め部10c(
図3参照)が下ケース10Aの上端面部に4箇所突設されたねじ止め部10d(
図4参照)に例えばタッピンねじ39で締付固定されている。
【0029】
下ケース10Aには、
図4を参照すればよく理解されるように、その上段部に両面シール部材50が嵌め込まれる装着穴13が設けられ、その中段部、下段部には、装着穴13の底部13bに開口する挿通穴11が設けられている。この挿通穴11の下部(下ケース10Aの下段部)が、一次側(例えば貯湯タンクの上部)に導管で接続される一次側接続口7となっており、挿通穴11の上部が、負圧弁体25の下部円筒部25aが緩く嵌挿される弁体作動室19となっている。この弁体作動室19の下端部(挿通穴11の中間部)には、負圧弁体25を上方(閉弁方向)に付勢する第1閉弁ばね28の下端を受ける細長板状のばね受け17が架設されている。第1閉弁ばね28の下端は、ばね受け17の中央に上向きに突設された断面略小判形の突起17aに外嵌されている。
【0030】
下ケース10Aの中段部(弁体作動室19の外周側)には、内周側が負圧弁体25の下部円筒部25aの外周側を支持する4本の支持柱15aが、周方向に等間隔(90度間隔)を置いて設けられ、前記4本の支持柱15aのうち2本の支持柱15aはばね受け17上から上向きに形成されている。4本の支持柱15aはそれぞれ、下ケース10Aへの両面シール部材50の組み付け時の便宜等を図るべく、上端が装着穴13の底部13bから両面シール部材50の内周側と僅かに離間する位置まで突出するように形成されている。支持柱15a同士の間には、内周側が開口する平面視扇形状の4個の縦溝通路15が設けられている。
【0031】
また、下ケース10Aの最上段部は、断面が略横倒しL形で鍔状のダイアフラム受け部10aとなっており、このダイアフラム受け部10aの内周端部には円環状突部10bが下ケース10Aの上面から突出しない位置まで突設されている。
【0032】
下ケース10Aの上段部の装着穴13に嵌め込まれる両面シール部材50は、
図5に示すように、下ケース10Aへの組み付け時の便宜等を図るべく上下対称に作製され、段付き円環状の合成樹脂製枠状部51と、この枠状部51の内周側に形成された薄肉部に溶融ゴム材料を流し込むことにより一体成形された略円環状のゴム製シール部52とで構成されている。
【0033】
枠状部51の中央には、負圧弁体25の突出軸部25bが通る中央連通口55が形成されている。また、枠状部51の外周側には、縦方向に貫通するように、断面が周方向に沿う略矩形状の4個の縦貫連通路56が等間隔(90度間隔)を置いて設けられている。縦貫連通路56の内周側は、枠上部51の内周側に連なるように形成されている。
【0034】
枠状部51の内周側の薄肉部に一体成形されたゴム製シール部52の下面は、弁体作動室19に嵌挿された負圧弁体25の弁座27が接離する下側シール面5Aとなり、その上面は、ダイアフラム弁体30の弁座37が接離する上側シール面5Bとなっている。
【0035】
このような構成の両面シール部材50は、前記した下ケース10Aの装着穴13に嵌め込まれて例えば超音波溶着により固着されている。
【0036】
前記上ケース10Bの上段部内周には、後述する揚弁軸40(の棒状部40A)が摺動自在に嵌挿される内筒部18が設けられ、その一側における上段部中央から下段部にかけて例えばホースが接続される二次側接続口8が設けられている。また、その下段部内周はダイアフラム作動室14となっている。
【0037】
上ケース10Bの天井部10fには、ダイアフラム弁体30の開弁時の圧力を調節するべく、上段側ほど大径となる概略段付き有底円筒状を呈する調節部材80が配設されている。調節部材80の上段部が、上ケース10Bの外筒部16と内筒部18との間に嵌挿され、その上段部上面(第2カム面82)が、上ケース10Bの天井部10fの外筒部16と内筒部18との間の内壁面(第1カム面10k)と当接している。また、調節部材80の下段部内周には、揚弁軸40(の棒状部40A)が摺動自在に嵌挿される貫通孔81が設けられている。調節部材80の下段部と上ケース10Bの外筒部16との間の部分に、ダイアフラム弁体30を下方(閉弁方向)に付勢する第2閉弁ばね(付勢部材)38の上端側が収容され、この第2閉弁ばね38の上端は調節部材80の上段部下面(当接面82a)で受けられている。
【0038】
前記負圧弁体25は、下部円筒部25aと、この下部円筒部25aの天井部25c中央から枠状部51の中央連通口55を通って上方に突出し且つ上端が断面逆三角形を呈する突出軸部25bと、下部円筒部25aの天井部25c中央から下方に突出する突起25dとを有し、天井部25cの上面外周端部には、前記両面シール部材50の下側シール面5Aに接離する円環状の第1弁口26付き第1弁座27が設けられている。なお、突起25dには、負圧弁体25を上方に付勢する第1閉弁ばね28の上端が外嵌されている。
【0039】
前記ダイアフラム弁体30は、ゴム製のダイアフラム32と、段付き円筒状の弁体構成部材35と、前記第2閉弁ばね38の下端を受ける中央穴付き有底短円筒状のばね受け33と、を有している。なお、ばね受け33は、ダイアフラム32の上昇限界位置を定めるストッパの役目も果たしている(
図12参照)。
【0040】
ダイアフラム32の外周部は、上ケース10Bの下端部に設けられた鍔状部10gと下ケース10Aの最上段部のダイアフラム受け部10aとで挟圧保持されている。ダイアフラム32の内周部は、弁体構成部材35とばね受け33とで挟圧保持されている。詳しくは、弁体構成部材35とばね受け33との間にダイアフラム32の内周部を介在させた状態で弁体構成部材35の内周側に形成された薄肉突出部分をかしめることにより、ダイアフラム32と弁体構成部材35とばね受け33の三者が一体化されている。
【0041】
円筒状の弁体構成部材35は、その下面内周端部に、前記両面シール部材50の上側シール面5Bに接離する円環状の第2弁口36付き第2弁座37が設けられている。
【0042】
前記調節部材80とばね受け33との間に第2閉弁ばね38が縮装されることにより、ダイアフラム弁体30が下方(閉弁方向)に付勢されている。
【0043】
以上のような構成を有する本実施形態の逃がし弁1では、両面シール部材50の下側に下部室21が画成され、ダイアフラム弁体30より上側に上部室22が画成され、両面シール部材50とダイアフラム弁体30との間に感圧室23が画成される。
【0044】
ところで、各部品の寸法・特性ばらつきや部品同士の組付ばらつきに起因して開閉作動部材、特にダイアフラム弁体30の開閉時の圧力が変動することがある。本実施形態では、例えば逃がし弁1を組み立てて動作確認をしたときにダイアフラム弁体30の開弁時の圧力が許容範囲でない場合、調節部材80とばね受け33との間に縮装された第2閉弁ばね38のセット荷重(付勢力)を調節することにより、ダイアフラム弁体30の開弁時の圧力を許容範囲に収めるように調節することができる。
【0045】
具体的には、調節部材(第2カム部)80の上段部上面には、
図6に示すように、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する(高さが変化する)複数の水平面からなる階段状の第2カム面82が複数個(例えば3個)設けられている。この複数個の第2カム面82は、周方向に均等(例えば120度毎)に設けられている。なお、図示例では、各第2カム面82が6つの水平面から形成され、調節部材80は周方向に18個の水平面を有している。また、調節部材80の上段部下面は、第2閉弁ばね38と当接する当接面82aとされ、その下段部が第2閉弁ばね38に内嵌される。
【0046】
また、調節部材80の下段部内周には、上記したように揚弁軸40(の棒状部40A)が摺動自在に嵌挿される貫通孔81が設けられている。この貫通孔81の外周には、後述するように、揚弁軸40の棒状部40Aに突設されたばね受け41が挿通可能で且つ調節部材80を回転させるための調節治具90の係合腕94が嵌合可能な4つの切欠き83が、周方向に等間隔(90度間隔)を置いて設けられている。
【0047】
調節部材80の上段部上面と当接する上ケース10Bの外筒部16と内筒部18との間の内壁面は、調節部材80の第2カム面82と相補的な形状を呈している。すなわち、上ケース10Bの天井部10fの外筒部16と内筒部18との間の内壁には、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する複数の水平面からなる階段状の第1カム面10kが複数個設けられたカム部10mが一体に形成されている。このカム部10mの複数個の第1カム面10kは、周方向に均等に設けられている。
【0048】
さらに、調節部材80の第2カム面82を形成する各水平面には、その略中心部分に径方向へ向かって凹溝(溝部)85が設けられ、上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kを形成する各水平面には、前記凹溝85と対応する位置に径方向へ向かって凸部10n(
図8参照)が設けられている。逃がし弁1の使用時には、調節部材80の第2カム面82の凹溝85に上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kの凸部10nが嵌合し、第2閉弁ばね38の付勢力によって調節部材80が上ケース10Bのカム部10mに押圧されることにより、調節部材80が上ケース10Bに対して回転不能となっている。
【0049】
使用者等は、ダイアフラム弁体30の開閉時の設定圧力の調節する場合、揚弁軸40及び手動操作レバー65を取り外した状態で、調節治具90の下端を内筒部18を通して上ケース10B内に挿入し、該調節治具90で調節部材80を所望の角度だけ回転させ、上ケース10Bのカム部10mに対する調節部材80の当接位置を変化させることで、第2閉弁ばね38のセット荷重(付勢力)を調節する。
【0050】
前記調節治具90は、
図7に示すように、断面が略小判形の操作部91と、該操作部91よりも外形の小さい略円柱状の当接部92と、該当接部92の外縁まで延び且つ周方向に等間隔(90度間隔)に設けられた4つの係合腕94を有する係合部93とを有している。なお、操作部91の側面の曲面部分には、該操作部91の操作性を高めるべく、上下方向へ延びる複数の縦溝が設けられている。
【0051】
前記調節治具90によるダイアフラム弁体30の開弁時の圧力の調節方法を詳説すると、使用者等は、調節治具90の係合部93の4つの係合腕94が調節部材80の4つの切欠き83のそれぞれに嵌挿されるように、内筒部18を通して調節治具90の下端を上ケース10B内に挿入し、当接部92の下面92aを調節部材80の切欠き83同士の間の部分の上面83a(
図6参照)に当接させる。次いで、調節治具90を第2閉弁ばね38の付勢力に抗して押し込んで調節部材80を下方に移動させ、その押し込み力を保持した状態で調節治具90を回転させ、調節治具90の係合部93の係合腕94を調節部材80と係合させて調節部材80を回転させる。使用者等は、調節治具90を介して調節部材80を所望の角度だけ回転させた後、調節治具90に対する押し込み力を解除する。これにより、調節部材80は第2閉弁ばね38の付勢力により上方へ移動し、
図8に示すように、調節部材80の第2カム面82と上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kとが異なる位置で当接する。よって、上ケース10Bのカム部10mに対する調節部材80の距離が(例えば距離Hだけ)変化し、調節部材80とばね受け33との間に配される第2閉弁ばね38の長さが変化するため、第2閉弁ばね38のセット荷重(付勢力)が変更され、ダイアフラム弁体30の開弁時の圧力が調節される。
【0052】
上記したように、調節部材80の第2カム面82と上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kとはそれぞれ、周方向で段階的(
図8中、6段階)に高さが変化する複数の水平面からなる階段状を呈しており、調節部材80が周方向に回転したときに調節部材80と上ケース10Bのカム部10mとが段階的に係合するため、上ケース10Bのカム部10mに対する調節部材80の距離を段階的に変更することができる。
【0053】
ここで、調節部材80の第2カム面82の凹溝85及び上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kの凸部10nはそれぞれ丸みを帯びて形成されている。そのため、第2閉弁ばね38の付勢力に抗して調節部材80を下方に押し込んで調節部材80を回転させる際、調節部材80の第2カム面82の上ケース10Bのカム部10mの第1カム面10kの摩擦抵抗が低減されるので、使用者等は、調節部材80と上ケース10Bのカム部10mを離間させることなくあるいは僅かに離間させた状態で、調節部材80を上ケース10Bのカム部10mに対して円滑に回転させることができる。
【0054】
また、調節部材80の内周には、切欠き83の外周側から上方へ向かって拡径する傾斜面84が設けられ、上ケース10Bの内筒部18の下端は、傾斜面84を含む調節部材80の内周面と相補的な形状を有している(
図1及び
図6参照)。そのため、調節部材80が上下方向へ移動する際に調節部材80の下段部と上ケース10Bの内筒部18の下端との衝突を抑制することができ、調節部材80の移動量を確保することができる。
【0055】
なお、調節治具90を用いて調節部材80を回転させるときに調節部材80の当接面82aと当接する第2閉弁ばね38が同時に回転しないように、調節部材80の当接面82aには、例えばグリース等の潤滑剤を塗布する等、調節部材80の当接面82aと第2閉弁ばね38の上端との摩擦抵抗を低減する表面処理が施されていることが望ましい。
【0056】
なお、
図1は、上ケース10Bに対して調節部材80を最も近接して配置した状態(すなわち、第2閉弁ばね38の長さが最大である状態)(
図8(a)に対応した状態)を示したものであり、
図9は、上ケース10Bに対して調節部材80を最も離間して配置した状態(すなわち、第2閉弁ばね38の長さが最小である状態)(
図8(b)に対応した状態)を示したものである。
【0057】
次に、負圧弁体25を強制的に開弁させるための揚弁軸40及び手動操作レバー65を有する強制開弁機構60を説明する。この強制開弁機構60は、例えば、上記したように調節治具90を用いて第2閉弁ばね38のセット荷重を変化させ、該調節治具90を上ケース10Bから取り外した後、上ケース10Bに取り付けられる。
【0058】
揚弁軸40は、合成樹脂製とされ、
図1に示すように、上ケース10Bの内筒部18に摺動自在に嵌挿される棒状部40Aと、この棒状部40Aの上端部から横向きに折曲がる横辺部40Bと、棒状部40Aの上端近傍に設けられた鍔状部44とを有している。棒状部40Aは、上ケース10Bの内筒部18に嵌挿される大径部40bと、内筒部18の下端から下方に突出して調節部材80に設けられた貫通孔81に緩く嵌挿される小径部40aとを有している。小径部40aの下部は貫通孔81の下端からさらに下方に突出し、その下端面が前記負圧弁体25の突出軸部25bの上端面に多少の間隙を隔てて対向配置されている。
【0059】
揚弁軸40における棒状部40Aの大径部40bには環状溝49が形成されており、この環状溝49に、棒状部40Aの大径部40bの外周と上ケース10Bの内筒部18の内周とを封止するシール部材としてのOリング47が装着されている。
【0060】
棒状部40Aの小径部40aには、前記調節部材80よりも下方に複数(例えば4個)のばね受け41が外向きに突設されている。
揚弁軸40は、ばね受け41の下部と両面シール部材50の枠状部51の内周端との間に縮装された圧縮コイルばね48により常時上方に付勢されると共に、鍔状部44に圧接された手動操作レバー65により抜け止め係止されている。なお、揚弁軸40の棒状部40Aが上ケース10B内に挿入される際、小径部40aは調節部材80に設けられた貫通孔81を挿通すると共に、小径部40aに設けられた複数のばね受け41はそれぞれ、貫通孔81の外側に設けられた切欠き83を挿通する。
【0061】
手動操作レバー65は、揚弁軸40をてこの原理を利用して押し下げるようになっており、
図2に示すように、1本の金属線材を折曲加工することにより側面視概略鍵形状に作製されている。
【0062】
具体的には、手動操作レバー65は、前後方向(
揚弁軸40の横辺部40Bに沿う方向)に伸びるU字状把持部65a、このU字状把持部65aの両端から円弧を描くように下向きに90度強折り曲がる立下部65b、この立下部65bから円弧を描くように前後方向に折り曲がる下辺部65c、この下辺部65cから左右方向外向きに円弧を描くように折り曲がるU字状横辺部65d、及び横辺部65dからさらに左右方向外向きに伸びるピン軸部65eから形成されており、通常時は、
図10(A)に示すように、上記下辺部65cが揚弁軸40の鍔状部44に圧接されている。
【0063】
手動操作レバー65のピン軸部65eは、上ケース10Bの天井部10fから上向きに突設された左右一対の支持柱62に設けられた軸受穴63に回動自在に嵌挿されており、U字状把持部65aの反把持部側を指で掴んでその幅を狭めるようにすれば、ピン軸部65eを軸受穴63へ挿入したり、ピン軸部65eを軸受穴63から取り外すことができる。
【0064】
このような構成とされた強制開弁機構60では、負圧弁体25を強制的に開弁させる際には、
図10(B)に示すように、手動操作レバー65の把手部65aを持って約90度(図中、反時計回りに)回転させる。これにより、把手部65aが力点、ピン軸部65eが支点となり、作用点が下辺部65cから立下部65bに移行し、該立下部65bにより揚弁軸40の鍔状部44が押し下げられ、揚弁軸40の下端が負圧弁体25の突出軸部25b上端に接当して負圧弁体25が押し下げられ、負圧弁体25の弁座27が両面シール部材50の下側シール面5Aから離れて負圧弁体25が強制的に開弁される(
図14参照)。
【0065】
上記構成に加えて、本実施形態の逃がし弁1では、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になっても第2接続口8から大気を吸入できない事態(例えば、第2接続口8に接続されたホースがねじれたり、異物が詰まったりした場合等)に備えて、以下の構成が設けられている。
【0066】
すなわち、前記揚弁軸40内に大気を弁本体10に吸入するための吸気通路45が設けられると共に、この吸気通路45に、通常時(正常時)は吸気通路45を閉じ、一次側の圧力が設定負圧以下になった時(異常時)に吸気通路45を自動的に開く吸気弁70が設けられている。
【0067】
前記吸気通路45は、揚弁軸40の棒状部40Aに設けられた縦通路部45aと、この縦通路部45aの上端から横向きに折り曲がる横通路部45bとからなり、横通路部45bの外端側に吸気弁70が設けられている。
【0068】
吸気弁70は、ゴム製のボール弁体75と、内部に横通路部45bと略同径の吸気弁口72が形成された接続具71とからなり、接続具71の横通路部45b側端部には、横通路部45b及び吸気弁口72より大径の弁体収容室73が形成されている。接続具71の弁体収容室73側端部が、揚弁軸40の横辺部40Bの拡径された外端部に外嵌されて固着され、前記弁体収容室73にボール弁体75が移動自在に配置されている。横辺部40Bの拡径された外端部の内周側には、ボール弁体75により横通路部45bが閉塞されないように横通路部45bへ向かうボール弁体75の移動を規制する縦壁43cが90度間隔を置いて設けられている。なお、ボール弁体75は、例えば樹脂製や金属製であってもよい。
【0069】
ここで、本実施形態の逃がし弁1は、
図11に示すように、二次側接続口8や吸気弁70が下側になる姿勢で給湯装置に組み込まれる。したがって、通常時(正常時)は、ボール弁体75が自重により吸気弁口72を閉じた状態となる。それに対し、一次側の圧力が設定負圧以下になった時(異常時)には、ボール弁体75が負圧により横通路部45bの外端部の縦壁43cまで吸い上げられて吸気弁口72が開かれる。これにより、外部の大気が、吸気弁口72→弁体収容室73→吸気通路45を介して弁本体10の内部(の上部室22)に吸入される。弁本体10の内部に外気が吸入されることにより、この異常時に、後述するように負圧弁体25が開弁される。
【0070】
以下、一次側の圧力に応じた本実施形態の逃がし弁1の開閉動作について概説する。なお、以下の動作説明では、上ケース10Bに対して調節部材80を最も近接して配置した状態、すなわち、第2閉弁ばね38の長さが最大である状態における逃がし弁1の開閉動作について説明する。
【0071】
本実施形態の逃がし弁1では、一次側の圧力が設定圧以上になったとき、
図12に示すように、例えばダイアフラム弁体30のばね受け33の上端部が上ケース10Aの内周側に設けられた段部に衝接するまでダイアフラム弁体30が第2閉弁ばね38の付勢力に抗して押し上げられ、その第2弁座37が両面シール部材50の上側シール面5Bから離れてダイアフラム弁体30が開く。一次側からの蒸気や湯水は、一次側接続口7→下部室21→縦溝通路15→縦貫連通路56→感圧室23→第2弁座37と上側シール面5Bとの間に形成された間隙→第2弁口36→上部室22→二次側接続口8→ホース等を介して外部に放出される。
【0072】
一方、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になったときには、
図13に示すように、ダイアフラム弁体30は閉じたままで、例えば負圧弁体25の突起25dがばね受け17の突起17aに衝接するまで負圧弁体25が引き下げられ、負圧弁体25の第1弁座27が下側シール面5Aから離れて負圧弁体25が開く。外部からの大気は、二次側接続口8→上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面5Aとの間に形成された間隙→縦溝通路15→下部室21→一次側接続口7を介して貯湯タンクに吸入される。なお、この場合、一次側の負圧の大きさによっては、吸気弁70が開く場合があり、その場合には、吸気通路45を通じて大気が吸入される。
【0073】
また、緊急時や保守点検時等に負圧弁体25を強制的に開弁させるときには、
図14に示すように、手動操作レバー65の把手部65aを持って約90度回転させる。これにより、揚弁軸40が押し下げられ、揚弁軸40の下端が負圧弁体25の突出軸部25b上端に接当して負圧弁体25が所定量だけ押し下げられ、負圧弁体25の第1弁座27が下側シール面5Aから離れて負圧弁体25が強制的に開弁される。一次側からの蒸気や湯水は、一次側接続口7→下部室21→縦溝通路15→第1弁座27と下側シール面5Aとの間に形成された間隙→中央連通口55→第2弁口36→上部室22→二次側接続口8→ホースを介して外部に放出される(図中、矢印方向)。なお、一次側が負圧である場合は、外部からの大気が、二次側接続口8→上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面5Aとの間に形成された間隙→縦溝通路15→下部室21→一次側接続口7を介して貯湯タンクに吸入される(図中、矢印と逆方向)。
【0074】
上記に加え、例えば、第2接続口8に接続されたホースがねじれたり、異物が詰まったりして、一次側の圧力が設定負圧以下(負圧が大)になっても第2接続口8から大気を吸入できない異常事態となったときには、既に負圧弁体25が開いているので、
図15に示すように、ボール弁体75が負圧により横通路部45bの外端部の縦壁43cまで吸い上げられて吸気弁口72が開く。これにより、外部の大気は、吸気弁口72→弁体収容室73→吸気通路45を介して弁本体10の内部(上部室22)に吸入され、以降は、第2接続口8から大気を吸入する場合と同様に、上部室22→第2弁口36→中央連通口55→第1弁座27と下側シール面5Aとの間に形成された間隙→縦溝通路15→下部室21→一次側接続口7を介して貯湯タンクに吸入される。
【0075】
このような構成とされた本実施形態の逃がし弁1においては、第2閉弁ばね38のセット荷重を調節する調圧機構のうち、周方向で段階的に高さが変化する第1カム面10kを有するカム部10mが弁本体10の天井部10fの内壁に一体に設けられ、第1カム面10kと相補的な形状を呈する第2カム面82及び第2閉弁ばね38と当接する当接面82aを有する調節部材80が弁本体10に回転自在に配置されており、調節治具90によって調節部材80が回転されたときに第1カム面10kに対する第2カム面82の当接位置が変更され、カム部10mに対する調節部材80の上下方向の距離が変化するので、弁本体10の気密性を低下させることなく、簡単な構成でもってダイアフラム弁体30の開弁時の圧力を調節することができる。
【0076】
また、本実施形態では、弁本体10のカム部10mの第1カム面10kに凸部10nが設けられ、調節部材80の第2カム面82に凹溝85が設けられ、第2閉弁ばね38の付勢力によりカム部10mに対して調節部材80が押圧された姿勢で前記凹溝85に前記凸部10nが嵌合されているので、前記カム部10mの第1カム面10k及び調節部材80の第2カム面82が水平面からなる場合であっても、動作時における弁本体10のカム部10mに対する調節部材80の回転を防止することができる。
【0077】
<調圧機構の変形例>
図16は、
図1に示す逃がし弁の調節機構の変形例を示したものであり、図示する調節部材(第2カム部)180の上段部上面には、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する(高さが変化する)複数の水平面からなる階段状の第2カム面182が複数個(例えば2個)設けられている。この複数個の第2カム面182は、周方向に均等(例えば180度毎)に設けられている。なお、図示例では、各第2カム面182が6つの水平面から形成され、調節部材180は周方向に12個の水平面を有している。また、調節部材180の上段部下面は、ダイアフラム弁体を閉弁方向へ付勢する第2閉弁ばねと当接する当接面182aとされている。
【0078】
また、調節部材180の上段部上面と当接する上ケース110Bの内壁面は、前記調節部材180の第2カム面182と相補的な形状を呈している。すなわち、上ケース110Bの天井部110fの内壁には、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する複数の水平面からなる階段状の第1カム面110kが複数個設けられたカム部110mが一体に形成されている。このカム部110mの複数個の第1カム面110kは、周方向に均等に設けられている。
【0079】
本変形例では、調節部材180の第2カム面182を形成する各水平面の周方向縁部に、当接面182aまで延びる貫通溝(溝部)185が設けられ、上ケース110Bのカム部110mの第1カム面110kを形成する各水平面の前記貫通溝185と対応する位置に凸部110nが設けられている。逃がし弁1の使用時には、調節部材180の第2カム面182の貫通溝185に上ケース110Bのカム部110mの第1カム面110kの凸部110nが嵌合し、第2閉弁ばねの付勢力によって調節部材180が上ケース110Bのカム部110mに押圧されることにより、調節部材180が上ケース110Bに対して回転不能となっている。
【0080】
本変形例においても、調節治具を用いて調節部材180を下方に押し込んで移動させ、その押し込み力を保持した状態で調節治具を回転させて調節部材180を所望の角度だけ回転させた後、調節治具に対する押し込み力を解除する。これにより、
図17に示すように、調節部材180の第2カム面182と上ケース110Bのカム部110mの第1カム面110kとが異なる位置で当接する。よって、上ケース110Bのカム部110mに対する調節部材180の上下方向の距離、すなわち上ケース110Bに対する調節部材180の当接面182aの位置が段階的(図中、6段階)に変化し、調節部材180とダイアフラム弁体との間に配される第2閉弁ばねの長さが段階的に変化するため、第2閉弁ばねのセット荷重(付勢力)が変化し、ダイアフラム弁体の開弁時の圧力を所望に調節することができる。
【0081】
このような構成とされた本変形例の調節機構を有する逃がし弁においては、第2閉弁ばねのセット荷重を調節する際、調節部材180の上下方向移動量が増加傾向にあるものの、調節部材180の第2カム面182の貫通溝185に上ケース110Bのカム部110mの第1カム面110kの凸部110nが嵌合するので、動作時における弁本体のカム部110mに対する調節部材180の回転を確実に防止することができる。
【0082】
また、
図18は、
図1に示す逃がし弁の調節機構の更なる変形例を示したものであり、図示する調節部材(第2カム部)280の上段部上面には、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する(高さが変化する)複数の傾斜面からなる階段状の第2カム面282が複数個(例えば2個)設けられている。第2カム面282を形成する各傾斜面は、第2カム面282が段階的に下降する方向で視て逆方向へ上昇するように傾斜している(
図19参照)。ここで、第2カム面282を形成する各傾斜面は、水平面の一部もしくは全部を窪ませる(換言すれば、側面視で略三角形状の窪み285を形成する)ことにより形成することができる。なお、図示例では、各第2カム面282が6つの傾斜面から形成され、調節部材280は周方向に12個の傾斜面を有している。また、調節部材280の上段部下面は、ダイアフラム弁体を閉弁方向へ付勢する第2閉弁ばねと当接する当接面282aとされている。
【0083】
また、調節部材280の上段部上面と当接する上ケース210Bの内壁面は、前記調節部材280の第2カム面282と相補的な形状を呈している。すなわち、上ケース210Bの天井部210fの内壁には、下方に向かって視た際に時計回りで段階的に下降する複数の傾斜面からなる階段状の第1カム面210kが複数個設けられたカム部210mが一体に形成されている。第1カム面210kを形成する各傾斜面は、第1カム面210kが段階的に下降する方向で視て逆方向へ上昇するように傾斜している(
図19参照)。ここで、第1カム面210kを形成する各傾斜面は、水平面の一部もしくは全部を周方向に沿って下方に突出させる(換言すれば、側面視で略三角形状の凸部210mを形成する)ことにより形成することができる。
【0084】
本変形例では、逃がし弁1の使用時に、調節部材280の第2カム面282を形成する各傾斜面と上ケース210Bのカム部210mの第1カム面210kを形成する各傾斜面とが係合し、第2閉弁ばねの付勢力によって調節部材280が上ケース210Bのカム部210mに押圧されることにより、調節部材280が上ケース210Bに対して回転不能となっている。
【0085】
本変形例においても、調節治具を用いて調節部材280を下方に押し込んで移動させ、その押し込み力を保持した状態で調節治具を回転させて調節部材280を所望の角度だけ回転させた後、調節治具に対する押し込み力を解除する。これにより、
図19に示すように、調節部材280の第2カム面282と上ケース210Bのカム部210mの第1カム面210kとが異なる位置で当接する。よって、上ケース210Bのカム部210mに対する調節部材280の距離、すなわち上ケース210Bに対する調節部材280の当接面282aの位置が段階的(図中、6段階)に変化し、調節部材280とダイアフラム弁体との間に配される第2閉弁ばねの長さが段階的に変化するため、第2閉弁ばねのセット荷重(付勢力)が変化し、ダイアフラム弁体の開弁時の圧力を所望に調節することができる。
【0086】
このような構成とされた本変形例の調節機構を有する逃がし弁においては、調節部材280の回転量に応じた上ケース210Bのカム部210mに対する調節部材280の距離変化が小さくなるものの、簡単な構成でもって動作時における弁本体のカム部110mに対する調節部材180の回転を防止することができる。
【0087】
なお、一次側の圧力が設定圧以上になったときに開弁する弁体として、ダイアフラム弁体に代えて適宜の弁体を採用することができる。また、前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段として、コイルばねに代えて例えば板ばねや皿ばね等を採用することもできる。
【0088】
また、上ケースのカム部に対する調節部材の位置を変更できれば、カム部の第1カム面や調節部材の第2カム面の形状、第1カム面に設けられた凸部や第2カム面に設けられた溝部の形状は適宜変更することができる。また、カム部の第1カム面に溝部を形成し、調節部材の第2カム面に凸部を形成してもよいし、カム部の第1カム面と調節部材の第2カム面の双方に凹凸を形成してもよい。
【0089】
また、上ケースの内壁に設けられるカム部と上ケースとは別体に形成してもよい。その場合には、前記カム部が上ケースに対して回転不能に固定されていることが望ましい。
【0090】
さらに、調節部材を回転できれば、調節治具の形状及びそれに対する調節部材の形状等は適宜変更することができる。