(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷媒体として長尺の布帛を供給する布帛供給部と、該布帛供給部から供給された前記布帛に印刷を施す印刷部と、前記布帛供給部と前記印刷部との間に設けられ前記布帛を前記印刷部へ向けて案内するガイド部材と、前記印刷部において印刷が施された前記布帛を巻き取る布帛巻取部とを含み、
前記布帛を間欠的に前記印刷部へ送給して前記布帛に対し印刷を施す布帛用印刷装置における張力変動緩和装置であって、
前記布帛供給部と前記ガイド部材との間の前記布帛に当接して設けられ、
前記布帛の幅方向に亘って延在する支持部材と、該支持部材に支持されると共に前記布帛に対し幅方向に亘って当接する張力緩和部材とで構成され、
前記張力緩和部材は、前記支持部材に支持されると共に前記支持部材から前記布帛側へ向けて延びる弾性変形可能な弾性部と、該弾性部の前記布帛側の端部に位置すると共に前記布帛に対して印刷を施す際に前記布帛と当接する当接部と、前記支持部材に支持されると共に前記支持部材から前記布帛側の端部までの距離が前記当接部よりも前記布帛から離間するように形成された補助弾性部とを有する
ことを特徴とする張力変動緩和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に開示された印刷装置においては、印刷媒体の進行方向に対応する方向へ積極的に回転駆動されるローラは巻取ローラのみである。従って、この特許文献2の構成による印刷装置において、印刷媒体に対し特許文献1のように間欠的に印刷を行う場合は、その巻取ローラを間欠的に回転駆動し、印刷部よりも下流側において印刷媒体を所定量ずつ間欠的に引き出す(牽引する)ものとなる。
【0006】
また、特許文献2の印刷装置は、巻取ローラを回転駆動して印刷媒体を牽引することにより、供給ローラが従動回転して印刷媒体が供給ローラから送り出されるものである。従って、前記のように印刷媒体に対し間欠的に印刷を行う場合では、供給ローラは回転及び停止を繰り返すものとなる。
【0007】
その場合、積極的に回転駆動される巻取ローラに対し、従動的に回転駆動される供給ローラは、その慣性により、回転時及び停止時において動作遅れを生じる。そのため、印刷媒体が布帛である場合は、その布帛の張力が繰り返し変動することとなる。そして、布帛は紙等とは異なって伸縮性を有するため、その張力変動によって布帛が伸縮し、印刷部における印刷において印刷ズレが生じてしまう。従って、従来の印刷装置においては、伸縮性を有する布帛に対し間欠的に印刷を行うにあたり、高精細な印刷を施すことが難しいものとなっている。
【0008】
本発明の目的は、前記した布帛用印刷装置において、布帛の張力変動を緩和することによって、印刷ズレの発生を抑え、高精細な印刷を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、印刷媒体として長尺の布帛を供給する布帛供給部と、該布帛供給部から供給された前記布帛に印刷を施す印刷部と、前記布帛供給部と前記印刷部との間に設けられ前記布帛を前記印刷部へ向けて案内するガイド部材と、前記印刷部において印刷が施された前記布帛を巻き取る布帛巻取部とを含み、前記布帛を間欠的に前記印刷部へ送給して前記布帛に対し印刷を施す布帛用印刷装置を前提とする。
【0010】
そして、本発明は、前記目的を達成すべく、前記布帛用印刷装置に用いられる張力変動緩和装置であって、その張力変動緩和装置が、前記布帛供給部と前記ガイド部材との間の前記布帛に当接して設けられると共に、前記布帛の幅方向に亘って延在する支持部材と、該支持部材に支持されると共に前記布帛に対し幅方向に亘って当接する張力緩和部材とで構成され、その上で、前記張力緩和部材が、前記支持部材に支持されると共に前記支持部材から前記布帛側へ向けて延びる弾性変形可能な弾性部と、該弾性部の前記布帛側の端部に位置すると共に前記布帛と当接する当接部とを有することを特徴とする。
【0011】
なお、前記張力緩和部材における弾性部は、幅方向に亘って一体に形成されるか否かを問わず、また、当接部についても、幅方向に亘って一体に形成されるか否かを問わないものとする。ただし、布帛の張力は、その幅方向に亘って一定であるとは限らず、一定ではない場合でも布帛の張力を幅方向に亘ってできるだけ均等にするには次のようにすることが望ましい。そこで、前記のような本発明において、前記弾性部が、少なくとも前記布帛側の端部において幅方向に複数に分割され、前記当接部が、前記弾性部における前記端部の複数に分割された各部分に対応する複数の部分当接部で構成されるものとした方が好ましい。
【0012】
また、前記のように弾性部が少なくとも布帛側の端部において幅方向に複数に分割されている場合において、その弾性部における前記布帛側の端部以外の部分については、幅方向に一体に形成されているか否かは問わないが、弾性部の取り扱いを容易にし、張力変動緩和装置の製作に要する労力を軽減することを考慮した場合、弾性部については、幅方向に独立してそれぞれが前記支持部材に支持される複数の弾性材で構成されるものとした方が好ましい。
【0013】
さらに、張力緩和部材は、弾性部及び当接部を有していれば良く、言い換えれば、弾性部及び当接部の両方のみで構成されているものであっても良いが、布帛の張力変動の幅が大きな場合を考慮し、前記張力緩和部材が、前記弾性部及び当接部に加え、前記支持部材に支持されると共に前記支持部材から前記布帛側の端部までの距離が前記当接部よりも前記布帛から離間するように形成された補助弾性部を有するものとしても良い。
【0014】
また、支持部材は、その両端部において例えば布帛用印刷装置の支持フレーム等によって支持されるものであるが、その支持フレーム等に対する支持部材の取り付けについては、その取付(支持)状態が変更不能なものであっても良いが、弾性部の布帛に対する弾性を変更可能とすべく、支持部材が、その延在方向と平行な軸線周りに回転可能に設けられる(前記支持フレーム等に取り付けられる)ものとしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の張力変動緩和装置によれば、当接部及び弾性部を有する張力緩和部材が、その当接部において布帛(布帛供給部とガイド部材との間の布帛)に対し幅方向に亘って当接すると共に、その当接部が弾性変形可能な弾性部における布帛側の端部に位置する構成となっていることにより、布帛を間欠的に送給する際の布帛の張力変動を張力緩和部材の弾性部が弾性変形することによって緩和することができる。そして、その結果として、張力変動に起因する布帛の伸縮による印刷ズレの発生を抑え、高精細な印刷を可能とすることができる。
【0016】
また、本発明による張力変動緩和装置において、張力緩和部材における弾性部をその少なくとも端部側の部分において幅方向に複数に分割されたものとし、その弾性部における各分割された部分(分割部分)がそれぞれに対応する部分当接部を介して布帛と当接する構成とすれば、各分割部分が対応する布帛の部分の張力変動を個別に(独立したかたちで)緩和することができる。それにより、布帛の張力が幅方向に亘って一定ではない場合でも、布帛の幅方向における各部分の張力状態に応じた張力緩和がなされるため、布帛の張力を幅方向に亘って略均等にすることができる。
【0017】
さらに、前記のように張力緩和部材が複数の部分当接部によって布帛と当接する、すなわち、当接部が複数の部分当接部によって構成される場合において、弾性部も、各部分当接部に対応させるかたちで幅方向に独立してそれぞれが支持部材に支持される複数の弾性材で構成されるものとすれば、張力変動緩和装置の製造工程において、幅寸法の小さい複数の弾性材を組み合わせて弾性部を製作することになるので、この場合は、布帛の幅方向に亘る幅寸法を有する単一の弾性材で弾性部を製作する場合と比べ、弾性材の取り扱いが容易となり、張力変動緩和装置の製作に要する労力(手間)を軽減することができる。
【0018】
また、本発明による張力変動緩和装置を、張力緩和部材が、布帛の張力を基本的に緩和する弾性部に加え、その弾性部による張力緩和作用を補うための補助弾性部を有する構成とすれば、布帛の張力変動の変動幅が大きく変化する場合においてもその張力変動を緩和することができる。詳しくは以下の通りである。
【0019】
前述の間欠的な布帛の送給時における布帛の張力変動は、同じ布帛供給部(より詳しく言えば、布帛供給部の供給ロール)から供給される布帛に印刷を施す場合でも、その変動幅が常に一定とは限らず、変化する場合がある。例えば、前述のように、布帛の張力変動の原因として供給ロールの動作に伴う慣性の影響が考えられるが、供給ロールに巻かれた布帛が消費されることに伴って布帛を含む供給ロールの重量が変化するため、その慣性が変化し、それに伴って張力の変動幅が変化することが考えられる。また、そのような慣性の影響に限らず、機械的な問題によって一時的に供給ロールの動作が変化し、一時的に通常と異なる大きな張力変動が生じる場合も考えられる。
【0020】
通常、大きな張力変動が想定される場合には、その大きな張力変動によって弾性部が限界まで弾性変形してしまって張力変動が緩和されない状態とならないように、弾性部を大きい弾性を有する弾性材で形成することが考えられる。しかし、その場合、弾性部の弾性が大きいため、小さい張力変動には対応できず、変動幅の小さい張力変動が緩和されないおそれがある。一方、小さい張力変動に対応できるように、弾性部を小さい弾性の弾性材で形成すると、上記のように、大きい変動幅で張力が変動した場合、その張力変動を緩和できなくなる場合が生じ得る。
【0021】
そこで、布帛の張力変動がある程度以上大きくなった時に布帛の張力の作用を受ける補助弾性部を有する構成とすることで、張力の変動幅が小さいときには弾性部のみで張力変動を緩和し、張力の変動幅が大きくなって弾性部の弾性変形が大きくなると、補助弾性部が布帛の張力の作用を受けて弾性変形する状態となり、弾性部と補助弾性部との協働で布帛の張力変動を緩和する状態となる。それにより、弾性部のみの構成と比べ、印刷過程における弾力の変動幅の変化に対し、より大きな変化に対応することができる。
【0022】
また、本発明による張力変動緩和装置を、支持部材が、その延在方向と平行な軸線周りに回転可能に設けられる構成とすれば、支持部材を回転させて張力緩和部材における布帛との当接位置を変更することが可能となり、弾性部の布帛に対する弾性を変化させることができる。それにより、張力変動緩和装置(張力緩和部材)を交換することなく布帛の張力変動に対する張力緩和部材による緩和の程度を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の張力変動緩和装置6が適用された布帛用印刷装置10の一実施例(以下、「本実施例」と言う。)について、その布帛用印刷装置10を構成する各部の配置関係を概略的に示すものである。なお、以下の説明において、「下流側」とは、布帛CLの進行方向における下流側を指し、「上流側」とは、布帛CLの進行方向における上流側を指すものとする。
【0025】
図1に示すように、布帛用印刷装置10は、印刷媒体として長尺の布帛CLを供給する布帛供給部1と、布帛供給部1から供給された布帛CLに印刷を施す印刷部5と、布帛供給部1の下流側(布帛CLの経路中における布帛供給部1と印刷部5との間)に配置されると共に布帛供給部1から送給された布帛CLを案内して印刷部5へ向けて転向させるガイド部材としてのサポートロール4と、印刷部5の下流側に配置されると共に布帛CLを間欠的に移動させるためのフィードロール3と、フィードロール3の下流側に配置されると共に印刷が施された布帛CLを巻き取る布帛巻取部2とを備えるものである。
【0026】
そして、布帛CLは、布帛供給部1から送給された後、サポートロール4に巻き掛けられることよって転向され、印刷部5へ向けて案内される。そして、布帛CLは、印刷部5において印刷を施された後、フィードロール3に巻き掛けられることによって布帛巻取部2へ向けて転向されると共にフィードロール3の間欠的な回転動作によって進行方向へ送られ、布帛巻取部2にて巻き取られる。なお、各部について、より詳しくは以下の通りである。
【0027】
布帛供給部1は、本実施例では、布帛CLが巻き付けられた供給ロール1aと、布帛CLを供給ロール1aから引き出すと共に下流側へ送り出す送りロール1cと、供給ロール1aと送りロール1cとの間に設けられたロールであって供給ロール1aから引き出された布帛CLが巻き掛けられ送りロール1cへ向けて布帛CLを案内する送出側ガイドロール1bとを備えるものとして構成されている。但し、これらの各ロールは、その両端部に形成された軸部(図示略)において、各ロールの軸線方向に離間して配置された一対の支持フレーム(図示略)により、軸受等を介して回転可能に支持されているものとする。また、布帛供給部1において、本実施例では、送りロール1cは布帛CLを積極的に送給するために回転駆動されるものとなっており、そのために、送りロール1cには、ギア列等を含む駆動伝達機構1dを介し、前記両軸部の一方にサーボモータである送出モータM1が連結されている。
【0028】
サポートロール4は、布帛供給部1よりも上方に位置する印刷部5へ向けて布帛CLを案内するためのものであり、布帛供給部1の上方であって印刷部5よりも上流側に配置され、布帛供給部1における各ロールと同様に、その両端部において前記支持フレームに支持されている。そして、サポートロール4は、布帛供給部1から上方へ向けて送給された布帛CLが巻き掛けられることにより、布帛CLを印刷部5へ向かうように転向させる。なお、本実施例では、サポートロール4は、その回転に伴う布帛CLの上下方向の変位を防ぐために、前記支持フレームに対し回転不能に支持されているものとする。但し、このサポートロール4については、回転可能に前記支持フレームに支持されるものであってもよい。
【0029】
フィードロール3は、図示の例では、布帛供給部1における送りロール1cと同径のロールであって、上下方向に関し、その上端の位置をサポートロール4の上端の位置に一致させた配置で、すなわちフィードロール3とサポートロール4とによって支持される布帛CLが水平となる配置で、その両端部に形成された軸部(図示略)によって、前記支持フレームに対し軸受等を介して回転可能に支持されている。また、このフィードロール3は、前記のように布帛CLの進行方向への間欠的な送り動作を行うものであって、積極的に回転駆動されるものである。従って、このフィードロール3には、ギア列等を含む駆動伝達機構3dを介し、前記両軸部の一方にサーボモータである駆動モータM3が連結されている。
【0030】
布帛巻取部2は、本実施例では、フィードロール3の下方に配置されて布帛CLを巻き取る巻取ロール2bと、巻取ロール2bよりも上流側でフィードロール3の周面近傍に設けられるとともにフィードロール3から送られた布帛CLが巻き掛けられて巻取ロール2bへ布帛CLを案内する巻取側ガイドロール2aとを備えるものとして構成されている。そして、これらのロールが、その両端部に形成された軸部(図示略)において、軸受等を介し前記支持フレームに回転可能に支持されている。また、巻取ロール2bは、所定の張力で布帛CLを巻き取るために、巻径に応じて回転トルクを制御されつつ回転駆動されるものである。従って、巻取ロール2bには、ギア列等を含む駆動伝達機構2dを介し、前記両軸部の一方にトルクモータである巻取モータM2が連結されている。
【0031】
サポートロール4とフィードロール3との間の印刷部5には、布帛CLの上方に配置される印刷ヘッド5aが設けられている。すなわち、印刷部5は印刷ヘッド5aを含む。この印刷ヘッド5aは、本実施例では、公知のインクジェット式のものであって、この印刷ヘッド5aが布帛CLの幅方向に亘って走行することで、印刷部5における布帛CLに対し所定の範囲に亘って印刷が施される。因みに、印刷ヘッド5aには、使用される各色のインクに応じたノズル(図示略)が設けられており、各色のインクカートリッジ(図示略)から各ノズルに供給されたインクが、インク噴射装置(図示略)の作動によって各ノズルから噴射されるものとなっている。
【0032】
なお、本実施例の布帛用印刷装置10では、以下の1)〜3)の手順で印刷が行われるものとする。また、以下の手順における送出モータM1及び駆動モータM3の回転駆動については、予め設定された速度パターンに従って行われるものとする。
1)布帛CLが停止した状態(送出モータM1と駆動モータM3が停止した状態)で、印刷ヘッド5aが布帛CLの幅方向に亘って走行し、前後方向における所定の印刷範囲に亘って布帛CLに対し印刷を行う。因みに前後方向とは、布帛用印刷装置10において、布帛巻取部2を前、布帛供給部1を後とする方向である。
2)印刷ヘッド5aによる1回の印刷動作が完了した後、駆動モータ(フィードロール3)M3が回転駆動されて布帛CLの送り動作が行われ、それと同時に、送出モータM1が回転駆動されて送りロール1cによる印刷部5へ向けた布帛CLの送給動作が行われる。
3)布帛CLの送り動作(フィードロール3の回転駆動)が完了する時(駆動モータM3が停止する時)に、布帛CLの送給動作も完了し、その後、再び前記1)の印刷動作が実行され、以降、これら一連の処理が繰り返される。そして、このような回転駆動を間欠的に繰り返すことにより、送出モータM1と駆動モータM3とは布帛CLを所定量ずつ移動させ、それによって印刷部5に対する布帛CLの間欠的な送給が行われる。
【0033】
また、巻取モータM2は、印刷済みの布帛CLの巻取張力が一定となるようにトルク制御される。より詳しく言えば、印刷済みの布帛CLを巻き取る巻取ロール2bの巻径に応じて、巻取モータM2のトルクが調整される。このように巻取モータM2(巻取ロール2b)は、フィードロール3から送り出された布帛CLを所定の張力で巻き取る構成となっており、これにより巻き取られる布帛CLの巻皺を防止することができる。
【0034】
以上のように構成された布帛用印刷装置10において、本発明では、布帛供給部1とガイド部材としてのサポートロール4との間に張力変動緩和装置6が設けられるものである。具体的には、
図1に示すように、本実施例の張力変動緩和装置6は、布帛供給部1における送りロール1cとサポートロール4の間の略中間部において、サポートロール4と送りロール1cとの間の直線的な布帛CLの経路(仮想経路)に対し前後方向において供給ロール1a側(後側)にずれた位置に設けられる。従って、送りロール1cから送給される布帛CLは、上記直線的な経路よりも前後方向において供給ロール1a側へ偏倚した経路で張力変動緩和装置6へ向かい、その張力変動緩和装置6を経由してサポートロール4へ向かう経路で送給される。以下では、
図2〜4に基づき、本実施例における張力変動緩和装置6の構成について、詳細に説明する。
【0035】
張力変動緩和装置6は、本実施例では、円筒状の支持部材7と、薄板状の金属製の弾性材を筒状に形成した張力緩和部材8とを主体として備えている。
【0036】
支持部材7は、前述したように円筒状の部材であって、外周面における張力緩和部材8の取り付け位置には、張力緩和部材8を支持部材7に取り付けるための取付ボルト12が螺挿される雌ネジ孔(図示しない)が形成されている。
【0037】
張力緩和部材8は、前述したように薄板状の金属製の弾性材を筒状に形成した部材である。従って、その断面形状は円形となっている。なお、張力緩和部材8は、薄板状の金属の材質や肉厚、曲率を変更することによって弾性が変わるものである。また、張力緩和部材8は、その内径が支持部材7よりも大きくなるように形成されており、その内側(中空部8z)に支持部材7を挿通可能となっている。また、張力緩和部材8には、その周面の所定の位置に前記取付ボルト12の雄ネジ部(図示しない)を挿通させるための挿通孔(図示しない)が穿設されている。そして、張力緩和部材8は、その中空部8zに支持部材7が挿通された状態で、前記挿通孔に取付ボルト12の雄ネジ部が挿通されると共に、その取付ボルト12の雄ネジ部が支持部材7の前記雌ネジ孔に螺挿されることで、その内周面の一部を支持部材7の外周面に当接させた状態で支持部材7に対し取り付けられる。従って、張力緩和部材8は、支持部材7に対し偏心した状態となっている。
【0038】
なお、本実施例では、取付ボルト12の頭部12aと張力緩和部材8との間に円弧状の断面を有する保持具15が介装され、張力緩和部材8は、支持部材7の外周面と保持具15の内側面とに挟まれた状態で、支持部材7に対し取り付けられる。具体的には、保持具15には、取付ボルト12の雄ネジ部を挿通させるための貫通孔(図示しない)が穿設されており、張力緩和部材8を支持部材7に取り付けるにあたっては、先ず、保持具15の貫通孔に取付ボルト12の雄ネジ部を挿通させた後、取付ボルト12の雄ネジ部を張力緩和部材8の前記挿通孔に挿通させ、その状態で取付ボルト12の雄ネジ部を支持部材7の前記雌ネジ孔に螺挿させる。それにより、張力緩和部材8は、支持部材7の外周面と保持具15とに狭持された(挟み込まれた)状態で、支持部材7に固定される。
【0039】
また、張力緩和部材8は、その長さ寸法(布帛CLの幅方向における寸法、すなわち延在方向の寸法)が、支持部材7の長さ寸法よりも短いものとなっている。そして、張力緩和部材8は、その延在方向の両端から支持部材7の端部が突出する状態で、支持部材7に対し取り付けられる。但し、張力緩和部材8の長さ寸法は、少なくとも印刷部5で印刷可能な布帛CLの幅方向における寸法よりも長いものである必要がある。従って、布帛CLの幅方向の寸法を考慮し、張力緩和部材8及び支持部材7の長さ寸法が決定される。
【0040】
さらに、本実施例の張力緩和部材8は、前記した薄板状の金属製の弾性材のみで構成されており、筒状の弾性材が直接布帛CLに当接する構成となっている。従って、本実施例では、その筒状の弾性材における布帛CLと当接する部分が当接部81に相当し、当接部81以外の部分(当接部81よりも支持部材7側の部分)が弾性部82に相当する。言い換えれば、本実施例では、張力緩和部材8は、当接部81と弾性部82とが一体に形成されたものとなっている。また、本実施例の張力緩和部材8では、その断面形状が円形であることから、当接部81の両端から円周方向に沿って弾性部82が別々に延びる構成、すなわち、1つの当接部81に対し一対の弾性部82、82が存在する構成となっている。
【0041】
但し、本実施例における当接部81及び弾性部82の円周方向に関する範囲は、次のように設定されているものとする。先ず、布帛CLに張力緩和部材8が当接する範囲は、布帛CLの張力変動に伴う張力緩和部材8の弾性変形に従って変化する。そこで、本実施例のように当接部81と弾性部82とが一体形成された構成の場合には、張力緩和部材8が最も大きく弾性変形した状態(
図4(c)の状態)において、布帛CLに当接する範囲を当接部81とし、また、前記状態における布帛CLに当接する部分を除いた範囲を弾性部82とする。なお、張力緩和部材8は、前述のように支持部材7に対し偏心した状態となっているので、後述のように、張力緩和部材8の取り付け状態によっては、布帛CLに対する張力緩和部材8の当接位置が、張力緩和部材8の円周方向における異なる位置に変化する。従って、本実施例における張力緩和部材8の当接部81の位置は、張力緩和部材8の取り付け状態に応じて異なるものとなる。
【0042】
また、本実施例では、張力緩和部材8は、長さ寸法方向(すなわち布帛CLの幅方向。以下、「幅方向」という。)に亘って複数に分割されたものとなっている(
図2(a)、
図2(b))。詳しくは、張力緩和部材8は、幅方向の寸法(幅寸法)が張力緩和部材8の全体の幅寸法よりも小さい(1/n(n:2以上の整数))筒状部材8aであって、それぞれが弾性材によって形成された複数の筒状部材8aを、幅方向に並設して構成されている。なお、本実施例では、各筒状部材8aは、同じ直径で形成されているものとする。
【0043】
従って、本実施例の張力緩和部材8では、各筒状部材8aにおける布帛CLと当接する部分(以下、「部分当接部81a」という。)を組み合わせて張力緩和部材8における当接部81が構成され、各筒状部材8aにおける部分当接部81aを除く部分(以下、「部分弾性部82a」という。)を組み合わせて張力緩和部材8における弾性部82が構成されるものとなっている。言い換えれば、本実施例における張力緩和部材8の当接部81及び弾性部82は、上記の筒状部材8a単位で分割されたものとなっている。なお、各筒状部材8aは、それぞれが独立して支持部材7に取り付けられている。具体的には、各筒状部材8aには2以上の前記挿通孔が穿設されており、各筒状部材8aは、それらの挿通孔に挿通される前記取付ボルト12によって支持部材7に固定される。
【0044】
また、支持部材7は、
図5又は
図6に示すように、布帛用印刷装置10の一対の支持フレーム10a、10a(
図5では片側のみ図示)であって布帛CLの幅方向に離間して配置される一対の支持フレーム10a、10a間に架設可能な長さ寸法を有する。その上で、張力緩和部材8は、その支持部材7を介し、一対の支持フレーム10a、10a間に架設された状態で、両支持フレーム10a、10aによって支持されている。
【0045】
そのために、各支持フレーム10aは、支持部材7を受け入れるかたちで支持する支持ブラケット11と、支持部材7の回転及び上下方向の変位を規制する規制部材13とを備えている。
【0046】
各支持ブラケット11は、L字型の形状を有する板状の部材であって、上方へ向けて延在する部分(以下、「上方延在部11a」という。)と、上方延在部11aの下部から後方へ向けて延びる部分、言い換えれば対応する支持フレーム10aの後端部から後方へ向けて延びる部分(以下、「後方延在部11b」という。)とを有する。そして、各支持ブラケット11は、支持フレーム10aと幅方向において重なる配置で、上方延在部11aにおいて支持フレーム10aに対しボルト11zにより固定されている。また、各支持ブラケット11の後方延在部11bは、その上面に、支持部材7を受け入れ可能な円弧状に凹む受け部11cを有している。そして、支持部材7は、その長さ方向(延在方向)の両端部のそれぞれが、各支持ブラケット11における受け部11cに受け入れられるかたちで、支持ブラケット11を介して支持フレーム10aに支持される。
【0047】
また、各支持ブラケット11の上方延在部11aの上端には、後方へ向けて延在する平板状の規制部材13が取り付けられている。この各規制部材13は、支持ブラケット11の受け部11cに受け入れられた支持部材7の回転及び上下方向の変位を規制するためのものであって、上下方向に関し、その下面が支持部材7の上端に当接するような配置で対応する支持ブラケット11に取り付けられるものである。従って、支持部材7は、支持ブラケット11の円弧状の受け部11cに受け入れられると共に、上端に規制部材13が当接することにより、前後方向及び上下方向に変位不能な状態で支持ブラケット11に支持される。
【0048】
各規制部材13は、固定部材14によって支持ブラケット11に対し取り付けられる。詳しくは、この固定部材14は、雄ネジが形成されたネジ部(図示しない)と、上端に設けられた操作部14a(ハンドル)とを有する。一方、各規制部材13には、支持ブラケット11に取り付けられる位置に貫通孔(図示しない)が形成されている。また、支持ブラケット11の上方延在部11aには、その上面に開口する雌ネジ孔(図示しない)が形成されている。そして、各規制部材13は、固定部材14のネジ部が前記貫通孔に挿通されると共に、このネジ部が支持ブラケット11の雌ネジ孔に螺挿されることにより、支持ブラケット11に対し固定される。
【0049】
なお、支持ブラケット11における受け部11cの下端から上方延在部11aの上端までの寸法は、支持部材7の外径よりも若干小さくなっている。従って、操作部14aを操作することによって固定部材14を回転させて締め込むことにより、規制部材13が支持部材7に対し上方から受け部11cへ向けて押圧力を作用させた状態となり、支持部材7は、規制部材13と受け部11cとによって狭持されて回転不能な状態となる、言い換えれば、支持部材7は、その延在方向と平行な軸線周りに回転不能な状態となる。
【0050】
従って、支持部材7は、この狭持状態を解除することで回転可能な状態となる。具体的には、固定部材14を締め込む方向とは反対方向へ回転させることにより、規制部材13が支持部材7に対し押圧力を作用させない状態となり、支持ブラケット11の受け部11cと規制部材13とによる支持部材7の狭持状態が解除される。そして、その状態では、支持部材7は、支持ブラケット11の受け部11c内で回転自在となり、言い換えれば支持部材7は、その延在方向と平行な軸線周りに回転可能な状態となる。そこで、この状態で支持部材7を回転させて取り付け状態を変更することにより、張力緩和部材8の円周方向に関する布帛CLとの当接位置つまり当接部81の位置が変更され、それに伴って弾性部82の位置も変更される。
【0051】
以下では、
図4に基づき、本実施例の布帛用印刷装置10における張力変動緩和装置6の作用を、張力変動緩和装置6を備えていない場合と比較して説明する。
【0052】
前述のように、本実施例の布帛用印刷装置10においては、送りロール1c及びフィードロール3が停止した状態で、印刷部5において印刷ヘッド5aによる印刷が布帛CLに施され、その後、送りロール1cを回転させる送出モータM1と、フィードロール3を回転させる駆動モータM3とを同時に駆動することによって、印刷部5に対する布帛CLの間欠的な送給動作が行われる。なお、上記のように、本実施例の布帛用印刷装置10では、送りロール1c(送出モータM1)を積極的に回転駆動して布帛CLを送給するものであるが、制御上の応答遅れや供給ロール1aの重量による慣性の影響で、布帛CLを牽引するフィードロール3の回転開始に対し、印刷部5へ布帛CLを送給する送りロール1cの回転開始が遅れる場合がある。
【0053】
そのような布帛用印刷装置10において、張力変動緩和装置6を備えていない場合は、前記の送りロール1cの回転開始の遅れによって、送りロール1cからフィードロール3に亘る経路中における布帛CLの張力が一時的に大きく上昇する。特に、布帛用印刷装置10においては、布帛供給部1から送給される布帛CLをサポートロール4に巻き掛けて印刷部5へ向けて転向させているため、張力上昇に起因して布帛CLとサポートロール4の外周面との間の摩擦力が増加し、布帛CLがサポートロール4上を摺動し難い状態となり、印刷部5における布帛CLの張力がより高いものとなってしまう。そして、それが原因で、前述の従来技術の項で述べたように、布帛CLに伸びが発生し、印刷ズレが発生してしまう。
【0054】
これに対し、布帛用印刷装置10が張力変動緩和装置6を備えている場合は、その張力変動緩和装置6は前述のように送りロール1cとサポートロール4との間で布帛CLの経路を後方向(供給ロール1a側)へ偏倚させるようにして設けられるものであるが、その張力変動緩和装置6における張力緩和部材8によって布帛CLの張力が弾性的に受けられる構成となる(
図4(a))。従って、上記のような布帛CLの張力上昇に伴い、張力緩和部材8が弾性変形することにより、その張力変動(上昇)を吸収することができる(
図4(c))。
【0055】
より詳しくは、張力緩和部材8によって布帛CLの張力を弾性的に受けるように設けられている張力変動緩和装置6においては、張力によって布帛CLが張力緩和部材8に作用させる押圧力と張力緩和部材8における弾性部82の弾性力とが釣り合った状態となっている。そして、上記のように布帛CLの張力が高まろうとすると、それによって上記押圧力が高まろうとすることに伴い、上記のように釣り合った状態から張力緩和部材8の当接部81がより大きい押圧力で布帛CLによって押され、弾性部82(張力緩和部材8)が弾性変形する。そして、それにより、弾性部82の弾性変形量の分だけ当接部81が変位する。その結果として、送りロール1cとサポートロール4との間の布帛CLの経路長が短くなり、その経路長が短くなることによる弛緩作用により、布帛CLの張力上昇が緩和される。
【0056】
従って、前述のような送りロール1cの動作遅れが発生しても、それに起因する布帛CLの張力上昇が抑えられ、その張力上昇による布帛CLの伸びに起因する印刷ズレを防止することができる。なお、何らかの原因で布帛CLの張力が低くなった場合には、前記のように布帛CLの張力を弾性的に受けるように設けられている張力変動緩和装置6(張力緩和部材8)は、上記とは逆に、当接部81が後方向へ変位する、すなわち、布帛CLの経路長を長くするように弾性変形する(
図4(b))。それにより、布帛CLの張力低下が緩和される。
【0057】
また、本実施例の張力変動緩和装置6では、張力緩和部材8における弾性部82及び当接部81が幅方向において複数に分割された構成となっており、各部分弾性部82a(部分当接部81a)が隣接する部分弾性部82a(部分当接部81a)とは独立して弾性変形(変位)する構成となっている。そして、その構成によれば、布帛CLの張力が幅方向において一定ではない場合でも、幅方向における各部分の布帛CLの張力に応じて各部分弾性部82aが布帛CLの張力を弾性的に受けると共に、前記のような張力変動にも各部分弾性部82aが独立して対応し、布帛CLの幅方向における張力を略均一にすることができる。
【0058】
また、それに加え、前記張力緩和部材8は、幅寸法が短い複数の筒状部材8a(弾性材)から構成されていることから、布帛CLの幅寸法に相当する長さを有する単一の筒状部材(弾性材)から構成される張力緩和部材8と比べ、張力変動緩和装置6の製作において、取り扱いが容易であり、製作に要する労力(手間)が軽減される。
【0059】
さらに、本実施例の張力変動緩和装置6においては、支持部材7を任意の角度回転させて支持ブラケット11(支持フレーム10a)に対する支持部材7の取り付け状態(位相)を変更することにより、張力緩和部材8の円周方向に関する当接部81及び弾性部82の位置を変更させることが可能な構成となっている。
【0060】
詳しくは、張力緩和部材8の円周方向に関する当接部81の位置が変更されることにより、張力緩和部材8の支持部材7に対する取り付け位置と当接部81との位置関係が変化し、その結果として弾性部82の長さ(すなわち張力緩和部材8の前記取り付け位置から当接部81側の端部までの円周方向の距離)が変化する。そして、そのように弾性部82の長さが変化することにより、布帛CLの張力に対する張力緩和部材8の弾性変形量(当接部81の支持部材7側への変位量)が変化するものである。
【0061】
図6は、その一例として、取付ボルト12が前方向を向くようにして支持部材7が支持ブラケット11に支持された取り付け状態(
図6(a))と、前述のような取り付け状態の変更により、取付ボルト12が下方向を向くようにして支持部材7が支持ブラケット11に支持された取り付け状態(
図6(b))とを示す。なお、図示の例では、
図6(a)に示す取付ボルト12を前方向に向けた状態において、張力緩和部材8の円周方向に関する取付ボルト12の位置とは正反対側の位置で、布帛CLが張力緩和部材8と当接するものとなっている。すなわち、
図6(a)の状態では、取付ボルト12の位置とは前後方向において対称的な位置に、当接部81の円周方向の中心が位置するものとなっている。従って、
図6(a)に示す取り付け状態では、本実施例の張力緩和部材8における一対の弾性部82、82のそれぞれの前記長さは、ほぼ同じとなっている。すなわち、両弾性部82、82は、ほぼ同じ弾性を有し、布帛CLの張力変化に対する弾性変形量についてもほぼ同じものとなる。
【0062】
一方で、
図6(b)に示す取り付け状態では、張力緩和部材8の円周方向に関する当接部81の位置は、
図6(a)の取り付け状態とは異なり、円周方向における一方の側において取付ボルト12の位置に接近した位置となる。このため、
図6(a)に示す取り付け状態と異なり、両弾性部82、82の前後長さが異なるものとなる。言い換えれば、図示の例の場合、一対の弾性部82、82の一方(図示の例では、当接部81の下側の弾性部82)の前後長さが
図6(a)に示すものより短いものとなり、当該一方の弾性部82の弾性が
図6(a)に示す取り付け状態のときよりも大きくなる。その結果として、布帛CLの張力を受けたときの当接部81の支持部材7側への変位量は、この弾性が大きい弾性部82の影響によって小さくなり、張力緩和部材8全体の弾性変形量は、布帛CLの張力によって布帛CLから同じ力を受けた場合において、
図6(b)に示す取り付け状態のときの方が
図6(a)に示す取り付け状態のときよりも小さくなる。
【0063】
このように、本実施例の張力変動緩和装置6では、前述の取り付け状態の変更により、布帛CLの張力を受ける弾性部82の弾性を調整することができるため、例えば、伸縮量の異なる複数種類の布帛CLや、同じ種類の布帛CLであっても異なる張力状態で布帛CLに印刷を施す場合等に対し、(張力変動緩和装置6(張力緩和部材8)を変更することなく)同じ張力変動緩和装置6で対応することができる。
【0064】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、本発明では上記実施例に限定されるものではなく、以下のような構成により実施することも可能である。
【0065】
張力変動緩和装置における張力緩和部材について、前記実施例では、張力緩和部材8は、弾性部82及び当接部81の両方が幅方向に複数に分割された構成、すなわち、弾性部82及び当接部81がそれぞれ独立した複数の部分弾性部82a及び部分当接部81aによって構成されるものとしたが、本発明における張力緩和部材はこれに限らず、次のような構成であってもよい。
【0066】
例えば、
図7に示すように、当接部81は前記実施例と同様に複数の部分当接部81aで構成されるが、弾性部82は、全ての部分当接部81aに連なるようにして当接部81と一体に形成されると共に、当接部81の近傍を幅方向に関して複数に分割される構成としてもよい。より詳しくは、図示の例では、前記実施例と同様に弾性材を筒状にして張力緩和部材8を構成するものであるが、その弾性材は、張力緩和部材8として求められる幅寸法を有しているものとする。そして、図示の例では、その弾性材(張力緩和部材8)に対し、円周方向において、当接部81に相当する範囲よりも若干大きい範囲に亘ってスリット8s(切り込み)が形成されている。従って、この張力緩和部材8においては、当接部81については、幅方向に関し複数に分割される構成、すなわち複数の部分当接部81aで構成されるものとなっているが、弾性部82については、当接部81の近傍のみが分割され、それ以外の部分は一体化された構成となっている。
【0067】
そして、このような構成であっても、幅方向に分割された弾性部82における当接部81近傍が独立して張力変動に対応することから、布帛CLの幅方向における張力を略均一にすることができる。なお、このように弾性部82を部分的に分割する構成は、上記のように当接部81の近傍のみを分割するものに限らず、支持部材7に対する取り付け位置から当接部81に亘る範囲において、適宜に分割するものとしてもよい。
【0068】
また、本発明における張力緩和部材は、前記実施例や上記
図7の例のように、幅方向に関し、当接部81が複数に分割されると共に、弾性部82がその円周方向の範囲(支持部材7に対する取り付け位置から当接部81に亘る範囲)における少なくとも一部において分割されるものに限らず、当接部81及び弾性部82が幅方向に亘って一体に形成されたものであってもよい。
【0069】
なお、張力緩和部材8が前記実施例のように幅方向に関し当接部81及び弾性部82が複数に分割される場合、すなわち複数の筒状部材8aにより構成される場合において、その複数の筒状部材8a(円周方向に連続する部分当接部81a及び部分弾性部82a)は、幅方向において並設されて当接部81及び弾性部82が幅方向に亘って隙間なく連続するように構成されるものに限らず、例えば、
図8に示すように隣接する筒状部材8aが幅方向において離間する構成としてもよい。
【0070】
また、張力緩和部材については、
図9に示すように、前記実施例の張力緩和部材8に相当する構成(弾性部82及び当接部81で構成される筒状の弾性材。以下、「外側弾性体8A」という。)に加え、外側弾性体8Aの内側において支持部材7に支持され、且つ、当接部81よりも布帛CLから離間するように形成された補助弾性部8Bを含む構成としてもよい。
図9の例について、その構成は、詳しくは以下の通りである。
【0071】
補助弾性部8Bは、外側弾性体8Aと同じく、弾性材を筒状に形成したものである。また、この例における外側弾性体8Aは、構成において前記実施例の張力緩和部材8と同様なものとなっている。すなわち、外側弾性体8Aは、幅方向に分割され、幅方向に亘って並設される複数の筒状部材8a(円周方向に連続する部分弾性部82a及び部分当接部81a)で構成されるものとする。
【0072】
また、補助弾性部8Bは、上記外側弾性体8Aよりも小径に形成されている。より詳しく言えば、補助弾性部8Bの外径は、外側弾性体8Aの内径よりも小径に形成されている。さらに、補助弾性部8Bは、幅方向に関しては、外側弾性体8Aと同じ寸法に形成されており、その上で、外側弾性体8Aと同様に、幅方向において複数に分割されている、すなわち、複数の分割体8bを幅方向に並設して構成されているものとする。なお、補助弾性部8Bの各分割体8bにおける幅方向の寸法は、外側弾性体8Aを構成する各筒状部材8aと同じとする。そして、補助弾性部8B(各分割体8b)は、外側弾性体8A(対応する各筒状部材8a)の内側(中空部8z)に配置され、外側弾性体8A(各筒状部材8a)と同じ取り付け様態で、支持部材7に対し共通の取り付け位置で取り付けられている(支持されている)ものとする。
【0073】
より詳しく言えば、外側弾性体8Aの内側に補助弾性部8Bが配置され、その補助弾性部8Bの内側に支持部材7が配置され、これら外側弾性体8Aと補助弾性部8Bと支持部材7とが重ね合わされ、その重ね合わせ部分がその外側に配置した保持具15を介して取付ボルト12で固定されている。なお、補助弾性部8Bは、幅方向に関し、前記各分割体8bが外側弾性体8Aの筒状部材8aと幅方向における位置を合わせた配置となるように、支持部材7に取り付けられる。その結果として、補助弾性部8Bは、外側弾性体8Aと同様に支持部材7に対し偏心した状態となっており、また、補助弾性部8Bは外側弾性体8Aよりも小径であることから、補助弾性部8Bにおける支持部材7から布帛CL側の端部までの距離L2が、外側弾性体8Aにおける支持部材7から布帛CL側の端部までの距離L1よりも短いものであり、従って補助弾性部8Bは、当接部81よりも布帛CLから離間するものとなる。(
図9(a))。
【0074】
従って、この構成によれば、布帛CLの張力変動がある程度以上に大きくなって外側弾性体8Aが大きく弾性変形した場合に、外側弾性体8Aの内周面が補助弾性部8Bの外周面に当接し、外側弾性体8Aと補助弾性部8Bとの協働で布帛CLの張力を受けるものとなる(
図9(b))。より詳しくは、張力の変動幅が小さいときには外側弾性体8Aにおける弾性部82の弾性(弾性変形)のみで張力変動を緩和し、張力の変動幅が大きいときは、弾性部82の弾性と、補助弾性部8Bの弾性とを合わせた弾性により、布帛CLの張力変動を緩和するものとなる。それにより、外側弾性体8Aのみの構成と比べ、印刷過程における張力の変動幅の変化に対し、より大きな変化に対応することができる。
【0075】
なお、以上のように補助弾性部8Bを備える張力緩和部材8は、
図9の例に限らず、例えば、外側弾性体8Aが幅方向に分割されるものに限らず、外側弾性体8Aが幅方向に亘って一体に形成されたものであってもよい。但し、この場合、補助弾性部8Bは、
図9の例のように幅方向に分割されていてもよいが、それに限らず、幅方向に亘って一体に構成されたものであってもよい。
【0076】
また、張力緩和部材が補助弾性部を有する場合において、張力緩和部材は、前記した
図9の例のように、補助弾性部8Bが外側弾性体8Aの内側に配置されるものに限らず、
図10に示すように外側弾性体8Aと補助弾性部8Bとが幅方向において交互に配置される構成としてもよい。
【0077】
図10の構成について、詳しくは、外側弾性体8Aは、幅方向に複数に分割された複数の筒状部材8aより構成され、且つ、これら複数の筒状部材8aを幅方向に離間させて構成されたものとなっている。また、補助弾性部8Bも、同様に、幅方向に複数に分割された複数の分割体8bより構成され、且つ、これら複数の分割体8bを幅方向に離間させて構成されたものとなっている。なお、外側弾性体8Aにおける各筒状部材8aの間隔は、補助弾性部8Bの分割体8bの幅寸法と略同じに設定され、補助弾性部8Bにおける各分割体8bの幅寸法と略同じに設定されているものとする。その上で、
図10に示す張力緩和部材においては、外側弾性体8Aの各分割体8bが、幅方向に関し補助弾性部8Bにおける隣接する分割体8bの間に位置するように、配置されるものとなっている。従って、
図10の例における張力緩和部材8は、外側弾性体8Aを構成する複数の筒状部材8a(円周方向に連続する部分弾性部82a及び部分当接部81a)と、補助弾性部8Bを構成する複数の分割体8bとが幅方向に関し交互に配置されるものとなっている。
【0078】
そして、この
図10の例の張力緩和部材8においても、
図9の例と同様に、張力の変動幅が小さいときには、外側弾性体8Aにおける弾性部82つまり筒状部材8aにおける部分弾性部82aの弾性(弾性変形)のみで張力変動を緩和し、張力の変動幅が大きいときは、弾性部82(部分弾性部82a)の弾性と、補助弾性部8B(分割体8b)の弾性とを合わせた弾性により、布帛CLの張力変動を緩和するものとなる。従って、
図10の例においても、
図9の例と同様の効果が得られるものとなる。
【0079】
なお、以上で説明した例では、張力変動緩和装置における張力緩和部材について、いずれも弾性部と当接部とが一体に形成されたもの(より詳しくは筒状に一体に形成されたもの)としたが、本発明における張力緩和部材についてはこれに限らず、弾性部と当接部とが別体に設けられるものであって、弾性部の布帛側の端部(反支持部材側の端部)に当接部が取り付けられる構成としてもよい。例えば、弾性材を筒状に形成して弾性部とし、その外周面に当接部となる別の部材を取り付ける構成としてもよい。また、弾性部と当接部とを別体とする場合であって、前記実施例のように弾性部及び当接部を幅方向に分割する場合、分割された弾性部及び当接部のそれぞれ(前記実施例における部分弾性部82a及び部分当接部81a)の幅方向の寸法は同じである必要はなく、一方の幅寸法が他方の幅寸法よりも小さいものであってもよい。
【0080】
さらに、本発明における張力緩和部材については、以上の例のように、筒状に形成した弾性材の一部又は全部を弾性部とするものに限らず、
図11に示すものであってもよい。詳しくは、以下の通りである。
【0081】
前記実施例での張力緩和部材8は、断面形状が円形であって、その円周方向の一部を占める当接部81の円周方向両側に弾性部82が位置するもの、すなわち、一対の弾性部82、82を有するものとなっているが、これに代えて、その一対の弾性部82、82のうちの一方を省略し、
図11(a)に示すように円周方向における当接部81の一端側にのみ弾性部82が連続する構成、言い換えれば全体として断面C字状となる構成としてもよい。
【0082】
また、前述したように弾性部82と当接部81とが別体で構成される場合において、張力緩和部材8は、
図11(b)に示すように、側方から見て、板状の弾性部82が支持部材7側から布帛CL側へ向けて布帛CLの経路と交差する方向へ延在し、その布帛CL側の端部には布帛CLの経路に沿うように(後方へ向かって円弧状に膨らむように)延在する板状の当接部81を取り付ける構成としてもよい。
【0083】
さらには、支持部材7側から布帛CL側へ向けて布帛CLの経路と交差する方向へ延在する弾性部82については、
図11(b)に示す板状の弾性材に代えて、
図11(c)に示すようなコイルばね等のばね部材であってもよい。
【0084】
また、張力緩和部材8は、筒状に限らず、
図11(d)に示すように、断面U字状の弾性材であっても良く、この場合は、この断面U字状の両端部を支持部材7にそれぞれ取付ボルト12で固定するものとすればよい。
【0085】
以上の
図11(a)、(b)、(c)、(d)の例についても、張力緩和部材8は、幅方向に複数に分割されたものであってもよいし、幅方向に亘って一体に構成されたものであってもよい。
【0086】
なお、張力緩和部材8における支持部材7については、前記実施例のように取り付け状態を変更する必要がない場合は、円筒状のものに限らず、
図11(b)、(c)、(d)に示すような断面形状が四角形の角材、あるいは、断面形状が多角形の棒材であってもよい。
【0087】
また、本発明による張力変動緩和装置が適用される布帛用印刷装置10については、前記実施例のものに限らず、布帛CLを間欠的に印刷部5へ送給できるものであればどのような構成のものであっても良い。例えば、前記実施例では、布帛供給部1において、布帛CLが巻き付けられた供給ロール1aとは別の送りロール1cを回転駆動するものとしたが、これに代えて、供給ロール1aを送出モータM1で回転駆動する構成としても良い。但し、この場合は、送りロール1c及び送出側ガイドロール1bは省略可能である。
【0088】
また、送出モータM1を省略すると共に送りロール1cを省略し、フィードロール3による布帛CLの送り動作に伴って供給ロール1aが消極的に回転駆動されるものとしても良い。さらには、巻取ロール2bのみが巻取モータM2で回転駆動されるものとし、その巻取ロール2bによる巻き取りに伴って進行する布帛CLによって牽引されて供給ロール1aが消極的に回転駆動されるものとしても良い。なお、この場合、巻取ロール2bは間欠的に回転駆動されるものとなる。さらに、この場合、フィードロール3については、布帛CLに送り動作を与える機能を有さず、単に布帛CLを案内する部材となるため、回転不能に支持されるものであっても良い。
【0089】
さらに、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。