(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、酸化剤により配管が腐食することを防止するため材質を高価なSUS等にする必要が生じ、コスト高となりやすい。また、酸化剤の中には劇物に指定されているものがあり、酸化剤が万が一漏洩した場合を想定すると、より安全な方法で処理することが望ましい。また、特許文献2に記載された方法は、不溶化剤の材料コストが高い傾向がある。更に、非特許文献1に記載された方法では、仮置きのための用地が必要であり、且つ、仮置き中の建設汚泥の飛散や有害物質の溶出を防止するために、対策設備が必要となることがある。
【0006】
そこで本発明は、低コストで安全性の高い建設汚泥の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、密閉型シールド工法を用いたトンネル施工で発生し有害物質を含む建設汚泥を処理する処理方法であって、排泥管を含む輸送経路によりシールドマシン側から坑口側へ建設汚泥を輸送する汚泥輸送工程と、汚泥輸送工程による建設汚泥の輸送時に、排泥管の所定の位置において排泥管内に空気を供給する給気工程と、を有する、建設汚泥の処理方法を提供する。
【0008】
この処理方法では、輸送経路で輸送されている建設汚泥に対し、排泥管の所定の位置において空気を給気する。この空気は、建設汚泥中の気体の有害物質が移行する媒体になると共に、建設汚泥の酸化還元電位を上昇させる。排泥管を含む輸送経路によりシールドマシン側から坑口側へ建設汚泥が輸送される過程において、空気の上記作用に基づく各種の相互作用により建設汚泥中の有害物質が処理される。この処理方法によれば、有害物質の処理が空気により行われるため、低コストで安全性が高い。
【0009】
ここで、「建設汚泥」とは、シールドマシンによる掘削工事で生じる泥水又は泥土である。
【0010】
本発明の処理方法は、揮発性有機化合物を浄化する場合には、上記所定の位置よりも下流側において、建設汚泥から分離した気体を輸送経路から外部へ取り出す脱気工程を有することが好ましい。この場合、建設汚泥中の有害物質のうち空気中に移行した成分が脱気により空気と共に外部へ取り出されることになるため、建設汚泥から当該有害物質が除去されることになる。
【0011】
また、本発明の処理方法は、建設汚泥を貯留タンクに一時的に貯留する貯留工程を有し、脱気工程では、貯留タンク内の上部に溜まった気体を貯留タンクから外部へ取り出すことが好ましい。建設汚泥を貯留タンクに一時的に貯留することにより、排泥管に給気した空気が貯留タンクの上部に集合するため、有害物質が移行した空気を効率的に外部へ取り出すことができる。
【0012】
また、本発明の処理方法は、給気工程及び脱気工程を含む繰返し単位を複数備えることが好ましい。これによれば、建設汚泥中の有害物質が空気中に移行する機会が繰り返されるため、空気中への有害物質の移行が促進される。また、一度の給気工程及び脱気工程では有害物質の処理が不十分な場合であっても、これらを含む繰返し単位を複数備えることにより、段階的に有害物質を処理することが可能となるため、所期の処理を達成することが容易になる。
【0013】
ここで、脱気工程で外部へ取り出した気体の有害物質の濃度を分析する分析工程を有し、分析工程で分析された有害物質の濃度が所定値以下の場合は、次の繰返し単位以降における給気工程及び脱気工程を省略して建設汚泥の輸送を続行することが好ましい。上記繰返し単位により処理を実施している場合において、脱気工程で外部へ取り出した気体中の有害物質の濃度が所定値以下であるときは、既に処理が十分になされたことを意味するため、次の繰返し単位以降における給気工程及び脱気工程を省略することで、工程の繰返しの無駄を省くことができる。
【0014】
本発明の処理方法において、有害物質は、揮発性有機化合物であってもよい。揮発性有機化合物は、空気中に移行しやすいため、本発明の適用対象として好適である。
【0015】
本発明の処理方法は、給気工程を含む繰返し単位を複数備えることが好ましい。これによれば、空気中の酸素によって建設汚泥中の酸化還元電位が上昇する機会が繰り返されるため、酸化還元電位の上昇に基づいて処理される有害物質の処理が促進される。また、一度の給気工程では有害物質の処理が不十分な場合であっても、給気工程を含む繰返し単位を複数備えることにより、段階的に有害物質を処理することが可能となるため、所期の処理を達成することが容易になる。
【0016】
ここで、所定の位置よりも下流側において、輸送経路内の建設汚泥の水素イオン濃度、酸化還元電位及び溶存酸素濃度からなる群より選ばれる少なくとも一種の指標を測定する測定工程を有し、測定工程で測定された指標のうち少なくとも一種の値が所定の範囲内にない場合は、次の繰返し単位以降における給気工程を省略して建設汚泥の輸送を続行することが好ましい。上記繰返し単位により処理を実施している場合において、輸送経路内の建設汚泥の上記指標が所定の範囲内にないときは、有害物質の処理に適した条件が整っていることを意味するため、次の繰返し単位以降における給気工程を省略することで、工程の繰返しの無駄を省くことができる。
【0017】
また、給気工程においては、空気に代えて酸素を供給することが好ましい。酸素は空気と比べて、気体の単位体積当たりの酸化促進効果が高く、建設汚泥の酸化還元電位が上昇しやすくなるため、酸化還元電位の上昇に基づいて処理される有害物質の処理が一層促進される。
【0018】
本発明の処理方法において、有害物質は、ヒ素、シアン、水銀、六価クロム、鉛、カドミウム、フッ素及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。これらの化学種は、給気された空気(より正確には酸素)により酸化還元電位が上昇した建設汚泥中では、その化学的な存在形態が変化しうる。そして同様に、建設汚泥中に存在する天然由来の鉄イオンは酸化還元電位の上昇により水酸化鉄として存在しており、水酸化鉄は、存在形態が変化しうる上記化学種を吸着して沈殿する。吸着された上記化学種は環境中に溶出しにくくなるため、上記化学種は、本発明の適用対象として好適である。
【0019】
本発明は、密閉型シールド工法を用いたトンネル施工で発生し有害物質を含む建設汚泥を処理する処理装置であって、排泥管を有し、シールドマシン側から坑口側へ建設汚泥を輸送する輸送経路と、排泥管に空気を供給する給気手段と、建設汚泥を輸送経路に輸送するポンプと、を備える、建設汚泥の処理装置を提供する。
【0020】
この処理装置では、輸送ポンプにより建設汚泥が輸送経路に輸送され、この建設汚泥に対して排泥管において空気が給気される。この空気は、建設汚泥中の気体の有害物質が移行する媒体になると共に、建設汚泥の酸化還元電位を上昇させる。排泥管を含む輸送経路によりシールドマシン側から坑口側へ建設汚泥が輸送される過程において、空気の上記作用に基づく各種の相互作用により建設汚泥中の有害物質が処理される。この処理装置によれば、有害物質の処理が空気により行われるため、低コストで安全性が高い。
【0021】
本発明の処理装置では、排泥管は、建設汚泥から分離した気体を排泥管から外部へ取り出す脱気手段を備えることが好ましい。この場合、建設汚泥中の有害物質のうち空気中に移行した成分が脱気により空気と共に外部へ取り出すことができるため、建設汚泥から当該有害物質を除去することができる。
【0022】
また、本発明の処理装置では、輸送経路は、建設汚泥を一時的に貯留する貯留タンクを有し、貯留タンクは、建設汚泥から分離し貯留タンク内の上部に溜まった気体を貯留タンクから外部へ取り出す脱気手段を備えることが好ましい。建設汚泥を貯留タンクに一時的に貯留することにより、排泥管に給気した空気が貯留タンクの上部に集合するため、有害物質が移行した空気を効率的に外部へ取り出すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低コストで安全性の高い建設汚泥の処理方法及び処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、第2〜第4の実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の運転方法、作用、効果の説明も省略することがある。
【0026】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態として、建設汚泥が泥水であり、処理すべき有害物質が揮発性有機化合物(volatile organic compounds;VOC)である場合について説明する。
図1及び
図2は、密閉型シールド工法を用いたトンネルの施工中の坑内に設置された建設汚泥の処理装置の概略構成図であり、図示右側が泥水圧式のシールドマシン側を示し、図示左側が坑口側を示している。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態の処理装置1Aは、シールドマシン20により掘削して形成されたトンネルT内に設置され、シールドマシン20の背面側に設置されたスクリューコンベヤ30を通じて排出される泥水を坑口側へ輸送する装置である。処理装置1Aでは、処理単位3Aを一つの繰返し単位とし、複数の処理単位3Aがシールドマシン側から坑口側へ向けて、直列に繰り返されて連結されている。以下、処理単位3A同士を区別するときには符号「3A」に添え字を付して、最上流の処理単位から順に処理単位3A
1、3A
2、3A
3、…、3A
n、…、と称する。一つの処理単位3Aは、全長がおよそ300m程度であり、処理単位3Aの総設置数は掘進距離により増加し、最大で10程度である。
【0028】
図2に示されるように、処理単位3Aは、泥水の輸送経路をなす泥水輸送配管(排泥管)L1及び泥水貯留タンク(貯留タンク)9と、輸送経路の途中に設けられ泥水を輸送する流体輸送ポンプ(ポンプ)5と、泥水輸送配管L1に空気を給気するコンプレッサー(給気手段)7と、泥水貯留タンク9から脱気された気体を浄化処理する排気処理装置11と、を有している。
【0029】
処理単位3A
nにおける泥水輸送配管L1は、シールドマシン側から坑口側へ向けて延びる中空の管であり、シールドマシンによる掘削工事で生じる泥水がこの内部を流れる。流体輸送ポンプ5は、この泥水を泥水輸送配管L1に輸送するためのポンプであり、例えば、スラリーポンプが用いられる。コンプレッサー7は、流体輸送ポンプ5よりも下流側に設けられ、逆止弁V1の開閉により泥水輸送配管L1に空気を給気する。泥水貯留タンク9は、コンプレッサー7よりも下流側に設けられ、泥水輸送配管L1で輸送された泥水を一時的に貯留するタンクである。泥水輸送配管L1は、泥水貯留タンク9内の上部から泥水を泥水貯留タンク9の内部に導く。泥水貯留タンク9の下部からは、泥水輸送配管L2が延び、この泥水輸送配管L2は、次の処理単位3A
n+1の流体輸送ポンプ5に接続されている。
【0030】
泥水輸送配管L1は、泥水貯留タンク9に接続される上流側において分岐しており、分岐して延びる配管は、バイパス管L3として、泥水貯留タンク9を経由しないで泥水輸送配管L2と合流し、泥水を次の処理単位3A
n+1の流体輸送ポンプ5に導く。泥水輸送配管L1とバイパス管L3との分岐点には切替えバルブV2が設けられており、この切替えバルブV2の操作により、泥水の輸送について泥水貯留タンク9を経由させるか否かが切り替えられる。
【0031】
泥水貯留タンク9内の上部には、エア抜き弁(脱気手段)V3が設けられている。エア抜き弁V3から泥水貯留タンク9の外部へ脱気管L4が延び、この脱気管L4は、排気処理装置11に接続され、脱気された気体を排気処理装置11に導く。ここで、エア抜き弁V3は、泥水貯留タンク9内の気体の体積又は圧力が閾値を超えた場合に自動的に開となり、閾値を下回った場合に自動的に閉となる弁構造を用いることが好ましい。
【0032】
排気処理装置11は、導入された気体を浄化処理する装置であり、例えば、気体中のVOCを活性炭により吸着する、又は、紫外線照射により酸化分解する等の処理をする。
【0033】
排気処理装置11には、脱気管L5が接続され、排気処理装置11で浄化処理された気体を大気中へ放出する。脱気管L4及び脱気管L5にはそれぞれ、第1の分析装置13A及び第2の分析装置13Bが設けられており、排気処理装置11に導入される気体及び排気処理装置11で浄化処理された気体のVOCの濃度を測定することができる。
【0034】
次に、処理装置1Aの運転方法(処理装置1Aを用いた泥水の処理方法)について説明する。以上のように構成された処理装置1Aでは、流体輸送ポンプ5によりシールドマシン側から坑口側へ輸送されている(汚泥輸送工程)泥水に対し、コンプレッサー7の駆動により泥水輸送配管L1の所定の位置において空気を給気する(給気工程)。この空気は、泥水が泥水輸送配管L1で輸送される過程において、泥水中に含まれるVOCが移行する媒体として働き、VOCは気液平衡により空気中に気化する。
【0035】
そして、この泥水は上記所定の位置よりも下流側である泥水貯留タンク9に導かれ、ここで一時的に貯留される(貯留工程)。この一時的な貯留により、泥水輸送配管L1に給気した空気が泥水貯留タンク9内の上部に集合する。こうして泥水貯留タンク9内の上部に溜まった気体は、エア抜き弁V3を開とすることにより、脱気管L4を通じて泥水貯留タンク9から外部へ取り出される(脱気工程)。一時的に貯留された泥水は、泥水貯留タンク9の下部から泥水輸送配管L2により抜き出されて、次の処理単位3A
n+1の流体輸送ポンプ5に導かれる。
【0036】
泥水貯留タンク9から外部へ取り出された気体は、脱気管L4を通じて第1の分析装置13AでVOC濃度が測定された(分析工程)後、排気処理装置11へ導入される。そして、排気処理装置11で浄化処理された気体は、脱気管L5を通じて第2の分析装置13BでVOC濃度が測定された後、大気中へ放出される。
【0037】
ここで、処理単位3A
nにおける第1の分析装置13Aで測定されたVOC濃度が所定値以下の場合は、泥水中のVOCが、この処理単位3A
n以前において十分に取り除かれたことを意味するため、次の処理単位3A
n+1以降における動作の無駄を排除すべく、次の処理単位3A
n+1以降における切替えバルブV2を、バイパス管L3を使用する方へ切り替え、泥水輸送配管L1で輸送される泥水が、泥水貯留タンク9へ導入されないようにショートカットさせる。また同時に、次の処理単位3A
n+1以降におけるコンプレッサー7を駆動しないようにする。なお、これらの切替えは、手動としても自動としてもよい。
【0038】
処理装置1Aは、上記運転方法を処理単位3Aごとに繰り返して実施する。
【0039】
以上のように処理装置1Aが運転されることにより、泥水が泥水輸送配管L1で輸送される過程において、泥水と空気とが十分に撹拌混合され、泥水中に含まれるVOCが気液平衡により空気中に気化して泥水から取り除かれる。そして、このVOCを含む空気が脱気により外部へ取り除かれる。すなわち、この処理装置による泥水の処理は、VOCの処理が空気により行われるため、低コストで安全性が高い。
【0040】
また、この処理装置1Aでは、流体輸送ポンプ5よりも下流側で空気を給気し、次の処理単位3A
n+1における流体輸送ポンプ5の前段で、エア抜き弁V3による脱気が行われる。このため、流体輸送ポンプ5に空気が混入してポンプ効率が低下する虞が小さい。
【0041】
また、脱気の際は、泥水貯留タンク9内の上部に集合した気体(VOCが移行した空気)をエア抜き弁V3で外部へ取り出すことができるため、効率的である。
【0042】
また、処理単位3A
nにおける第1の分析装置13AによるVOC濃度の測定結果により、上記のとおり次の処理単位3A
n+1以降におけるバイパス管L3の使用及びコンプレッサー7の停止をすることにより、処理工程の無駄を省くことができ、泥水の輸送時間を短縮することができる。更に、第2の分析装置13BによるVOC濃度の測定結果を第1の分析装置13AによるVOC濃度の測定結果と比較することにより、排気処理装置11による浄化処理が正常に行われているか否かを判定することができる。
【0043】
また、処理装置1Aは、複数の処理単位3Aを備えているため、泥水中のVOCが空気中に移行(気化)する機会が繰り返され、空気中へのVOCの移行が促進される。また、一度の給気及び脱気ではVOCの処理が不十分な場合であっても、処理単位3Aを複数備えていることにより、段階的にVOC濃度を低減することが可能となり、所期の処理(数値目標等)を達成することが容易になる。なお、最終的にVOCが取り除かれた泥水は、安価に処分することもできるし、シールドマシンによる掘削のために循環利用することもできる。
【0044】
また、処理装置1Aでは、給気される空気中の酸素によって、後述する第3の実施形態と同様の作用により、実質的に重金属類も処理されうる。
【0045】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の処理装置が第1の実施形態の処理装置と異なる点は、泥水輸送配管の配設形状に特徴がある点、泥水貯留タンクが設けられていない点、及び、エア抜き弁が泥水輸送配管に設けられている点、である。
図3は、第2の実施形態の処理装置の概略構成図であり、図示右側がシールドマシン側を示し、図示左側が坑口側を示している。
【0046】
図3に示されるように、処理装置1Bは、泥水輸送配管L1、流体輸送ポンプ5、コンプレッサー7、排気処理装置11等を有して構成される処理単位3B
nを一つの繰返し単位として備え、この処理単位3B
nがシールドマシン側から坑口側へ向けて複数繰り返されて設置されたものである。
【0047】
処理単位3B
nにおける泥水輸送配管L1は、
図3に示されるように、水平に延びる部分における所定の位置(コンプレッサー7により空気が給気された位置)よりも下流側において、斜め上方に方向を変えて延びる部分を有し、その後、斜め下方に方向を変えて延び、元の水平に延びる高さ付近まで高さが戻る。そして、再度斜め上方に方向を変えて延び、その後、再度斜め下方に方向を変えて延び、次の処理単位3B
n+1における流体輸送ポンプ5に接続される。すなわち、泥水輸送配管L1は、側面視で三角形ないし台形の底辺を除く辺を形作るように蛇行した蛇行部分を有している。
【0048】
泥水輸送配管L1の蛇行部分の頂部(本実施形態では二箇所)には、いずれもエア抜き弁V3が設けられている。それぞれのエア抜き弁V3,V3から泥水輸送配管L1の外部へ脱気管L4,L4が延び、この脱気管L4,L4は、共通の排気処理装置11に接続されている。なお、
図3では、図示の都合上、排気処理装置11が泥水輸送配管L1よりも上方に位置するように描かれているが、エア抜き弁V3,V3以降の構造は流体輸送ポンプ5やコンプレッサー7等と同様の高さ位置に設置してよい。また、エア抜き弁V3は、泥水輸送配管L1の蛇行部分の頂部内の気体の体積又は圧力が閾値を超えた場合に自動的に開となり、閾値を下回った場合に自動的に閉となる弁構造を用いることが好ましい。
【0049】
また、泥水輸送配管L1は、最初のエア抜き弁V3の上流側において分岐しており、分岐して延びる配管は、バイパス管L3としてそのまま水平方向に延びて、泥水輸送配管L1の蛇行部分を経由しないで、当該蛇行部分が終了した部分で泥水輸送配管L1と合流し、泥水を次の処理単位3B
n+1の流体輸送ポンプ5に導く。泥水輸送配管L1とバイパス管L3との分岐点には切替えバルブV2が設けられており、この切替えバルブV2の操作により、泥水の輸送について蛇行部分を経由させるか否かが切り替えられる。
【0050】
処理装置1Bの運転方法としては、第1の実施形態の処理装置1Aと同様であるが、上記のように構成された処理装置1Bによれば、蛇行部分の頂部において、泥水輸送配管L1内の気体が泥水輸送配管L1内の上部に集合して溜まるため、当該頂部に設けられたエア抜き弁V3,V3を開とすることにより、VOCが移行した気体を脱気管L4,L4を通じて外部へ取り出すことができる。従って、処理装置1Bでは、第1の実施形態における泥水貯留タンクを設ける必要がない。
【0051】
なお、上記第2の実施形態では、エア抜き弁V3が設けられる頂部が二つ生じるように泥水輸送配管L1を蛇行させたが、当該頂部の数は二つに限られず、一つであっても三つ以上であってもよい。
【0052】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の処理装置が第1の実施形態の処理装置と異なる点は、処理すべき有害物質が重金属類である点、これに伴い異なる分析装置を用いる点、排気処理装置が設けられていない点、及び、酸素発生装置が設けられている点である。
図4は、第3の実施形態の処理装置の概略構成図であり、図示右側がシールドマシン側を示し、図示左側が坑口側を示している。
【0053】
ここで、処理すべき「重金属類」とは、ヒ素、シアン、水銀、六価クロム、鉛、カドミウム、フッ素及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む化学種を指す。
【0054】
図4に示されるように、処理装置1Cは、泥水輸送配管L1、流体輸送ポンプ5、コンプレッサー7、泥水貯留タンク9等を有して構成される処理単位3C
nを一つの繰返し単位として備え、この処理単位3C
nがシールドマシン側から坑口側へ向けて複数繰り返されて設置されたものである。
【0055】
コンプレッサー7には酸素発生装置15が接続されており、泥水輸送配管L1に対して酸素を給気する。
【0056】
泥水貯留タンク9の内部には、溶存酸素濃度(DO)を測定するための分析装置13Cが設けられている。また、泥水貯留タンク9内の上部に設けられたエア抜き弁V3からは、泥水貯留タンク9の外部へ脱気管L4が延び、この脱気管L4は、脱気された気体を大気中へ放出する。
【0057】
処理装置1Cの運転方法としては、第1の実施形態の処理装置1Aと同様であるが、処理対象が重金属類であるために、有害物質が処理される作用が以下のとおり相違する。
【0058】
図5は、横軸にpH、縦軸にEhをとった場合のヒ素の形態図であり、
図6は、横軸にpH、縦軸にEhをとった場合の鉄の形態図である。
図5及び
図6において斜線で示した領域(pH=6〜8程度、Eh=−0.2〜+0.2V程度の領域)は、一般的な土壌が有するpH及びEhがあてはまる領域であり、これによれば、ヒ素は通常、土壌中では亜ヒ酸(H
3AsO
3)として存在し、鉄は通常、土壌中では鉄イオン(II)(Fe
2+)として存在している。これらの形態図から分かるように、いずれもpH又はEhが変化すると、その存在形態(酸化状態、イオン化状態)が変化する。なお、
図5において、「P
O2=1bar」が付記された線は、酸素分圧が1気圧である条件で考えられる最大の酸化状態の境界を表し、「P
H2=1bar」が付記された線は、水素分圧が1気圧である条件で考えられる最大の還元状態の境界を表している。
【0059】
コンプレッサー7により泥水輸送配管L1に酸素が給気されると、輸送経路(すなわち泥水輸送配管L1,L2と泥水貯留タンク9)内において、泥水の酸化還元電位が上昇する。このとき、ヒ素及び鉄イオンはそれぞれ酸化されて、それぞれ
図5及び
図6に示された上向き矢印の方向へ存在形態が移り、ヒ素はヒ酸イオン(H
2AsO
4−又はHAsO
42−)として、鉄は水酸化鉄(III)(Fe(OH)
3)として存在するようになる。すると、水酸化鉄(III)は、ヒ酸イオンを吸着して共に沈殿し、その結果、ヒ素が環境中に溶出しにくい形態となる。沈殿した水酸化鉄(III)は、泥水の輸送と共に、トンネルの坑口側へ輸送される。
【0060】
処理単位3C
nの泥水貯留タンク9に設けられた分析装置13Cにおいて、泥水のDOを測定する(測定工程)。ここで、測定した上記指標のうち少なくとも一種の値が所定の範囲内にないとき、例えばDOの値が所定の基準値を上回っている場合は、泥水中の酸化還元電位が十分に高く、重金属類の処理に適した条件が整っていることを意味するため、次の処理単位3C
n+1以降における動作の無駄を排除すべく、次の処理単位3C
n+1以降における切替えバルブV2を、バイパス管L3を使用する方へ切り替え、泥水輸送配管L1で輸送される泥水が、泥水貯留タンク9へ導入されないようにショートカットさせる。また同時に、次の処理単位3C
n+1以降におけるコンプレッサー7を駆動しないようにする。なお、これらの切替えは、手動としても自動としてもよい。
【0061】
以上のように処理装置1Cが運転されることにより、泥水が泥水輸送配管L1で輸送される過程において、泥水と酸素とが十分に撹拌混合され、泥水中に含まれる重金属類が水酸化鉄に吸着されて沈殿し、環境中に溶出しにくい形態となる。すなわち、この処理装置による泥水の処理は、重金属類の処理が酸素により行われるため、低コストで安全性が高い。また、従来の仮置き処理と比べると、仮置きのための用地が不要であるし、また、仮置き中の泥水の飛散や重金属類の溶出を防止するための対策設備が必要となることもない。
【0062】
また、この処理装置1Cでは、流体輸送ポンプ5よりも下流側で空気を給気し、次の処理単位3C
n+1における流体輸送ポンプ5の前段で、エア抜き弁V3による脱気が行われる。このため、流体輸送ポンプ5に空気が混入してポンプ効率が低下する虞が小さい。
【0063】
また、処理単位3C
nにおける分析装置13Cによる各種指標(pH、Eh、DO)の測定結果により、上記のとおり次の処理単位3C
n+1におけるバイパス管L3の使用及びコンプレッサー7の停止をすることにより、処理工程の無駄を省くことができ、泥水の輸送時間を短縮することができる。
【0064】
また、処理装置1Cは、複数の処理単位3Cを備えているため、泥水中の重金属類が吸着されて沈殿する機会が繰り返され、重金属類の処理が促進される。また、処理を繰り返す中で、泥水の性質を分析装置13Cによって確認することができるため、掘削で生じる排出土の性質が変化した場合にも柔軟に対応することができる。また、一度の給気では重金属類の処理が不十分な場合であっても、処理単位3Cを複数備えていることにより、段階的に遊離の重金属類を低減することが可能となり、所期の処理(数値目標等)を達成することが容易になる。なお、最終的に重金属類が低減された泥水は、安価に処分することもできるし、シールドマシンによる掘削のために循環利用することもできる。
【0065】
また、処理装置1Cでは、空気と比べて気体の単位体積当たりの酸化促進効果が高い酸素を供給しているため、泥水の酸化還元電位が上昇しやすく、重金属類の処理が一層促進されている。
【0066】
なお、上記実施形態では、エア抜き弁V3から脱気した気体を直接大気中に放出していたが、第1の実施形態のように、排気処理装置を設けて当該気体を浄化処理してもよい。第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用により、給気した酸素によって実質的にVOCも泥水から取り除かれうるため、排気処理装置を設けることにより、このVOCを浄化処理することができる。
【0067】
また、泥水貯留タンク9には、必ずしもエア抜き弁V3を設けなくてもよい。この場合、給気した酸素は、最終的に泥水輸送配管L1の終端にて回収される。
【0068】
また、上記実施形態では、酸素を給気したが、代わりに空気を給気してもよい。この場合、酸素発生装置15が不要となるため、重金属類の処理をより低コストで行うことができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、重金属類がヒ素である場合について説明したが、他の重金属類(シアン、水銀、六価クロム、鉛、カドミウム、フッ素又はホウ素)である場合にも処理装置1Cを適用することができる。
図7は、横軸にpH、縦軸にEhをとった場合の鉛の形態図である。鉛の場合、pHが10前後である領域以外ではイオン化しており、且つ、酸素の給気による酸化還元電位の上昇のみではその存在形態が変化しないが、鉄のほうは上記と同様に水酸化鉄(III)に変化するため、これが鉛(鉛イオン)を吸着して沈殿させ、鉛を環境中に溶出しにくくさせる効果が奏される。
【0070】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の処理装置が第2の実施形態の処理装置と異なる点は、処理すべき有害物質が重金属類である点、これに伴い異なる分析装置を用いる点、排気処理装置が設けられていない点、及び、酸素発生装置が設けられている点である。
図8は、第4の実施形態の処理装置の概略構成図であり、図示右側がシールドマシン側を示し、図示左側が坑口側を示している。
【0071】
図8に示されるように、処理装置1Dは、泥水輸送配管L1、流体輸送ポンプ5、コンプレッサー7等を有して構成される処理単位3D
nを一つの繰返し単位として備え、この処理単位3D
nがシールドマシン側から坑口側へ向けて複数繰り返されて設置されたものである。
【0072】
コンプレッサー7には酸素発生装置15が接続されており、泥水輸送配管L1に対して酸素を給気する。
【0073】
泥水輸送配管L1の蛇行部分において、二つのエア抜き弁V3,V3間の位置に、DOを測定するための分析装置13Cが設けられている。また、エア抜き弁V3,V3からは、外部へ脱気管L4が延び、この脱気管L4は、脱気された気体を大気中へ放出する。
【0074】
処理装置1Dの運転方法としては、第3の実施形態の処理装置1Bと同様であるが、第4の実施形態では、第3の実施形態に比べて、泥水貯留タンク9を設ける必要がなく、泥水輸送配管L1の蛇行部分の頂部において脱気するのが容易であるため、第4の実施形態では、重金属類の処理に伴い脱気する必要がある場合に特に適している。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記第1〜第4の実施形態では、建設汚泥が泥水である場合について説明したが、建設汚泥が泥土である場合であっても同様に有害物質(VOC、重金属類)を処理することができる。