特許第6188526号(P6188526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188526ドレン生成回収装置及びドレン生成回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188526
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ドレン生成回収装置及びドレン生成回収方法
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20170821BHJP
   A47J 27/16 20060101ALI20170821BHJP
   F22B 37/30 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F24C1/00 310D
   A47J27/16 Z
   F22B37/30 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-212224(P2013-212224)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75289(P2015-75289A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日比 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】野村 耕平
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−186802(JP,A)
【文献】 実開昭62−067101(JP,U)
【文献】 実公昭63−040176(JP,Y1)
【文献】 特開2001−187307(JP,A)
【文献】 実開昭57−061301(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
A47J 27/16
F22B 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気からドレンを生成し回収する装置において、
装置内部は、
空間と、該空間に配置された蒸気流入口と、該空間に配置されたドレン排出口と、該空間において1以上の開度調整可能な蒸気抵抗体によって設けられた2以上のゾーンと、蒸気流入口から最も離れたゾーンに配置された大気開放口と、を備え、
かつ、
該蒸気抵抗体は、
各ゾ‐ンにおける蒸気流入量が蒸気流出量よりも多くなるよう、蒸気流路が設けられている、
蒸気のドレン生成回収装置。
【請求項2】
前記ゾーンの内最も蒸気流入口から離れたゾーンにおいて、さらに熱交換器が配置されている、請求項1に記載のドレン生成回収装置。
【請求項3】
前記熱交換器がミスト発生器である、請求項2に記載のドレン生成回収装置。
【請求項4】
前記蒸気抵抗体がダンパである請求項1〜3のいずれかに記載のドレン生成回収装置。
【請求項5】
前記蒸気が食品を蒸した後の排蒸気である、請求項1〜4のいずれかに記載のドレン生成回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸煮装置やタービンなどから役割を終えて排出される蒸気をドレン化し回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を蒸煮するための装置、特に連続蒸煮装置のような大量の蒸気を使用する装置を新規で設置する場合、この装置において役割を終えた後の蒸気を工場外へ排出するために蒸気ダクトも設けなければならないなど、何らかの方法により排蒸気を処理する必要がある。この場合、前記装置からの蒸気ダクトを工場外へ延ばさなければならず、工場内の他設備の設計に悪影響を及ぼすことがあり、場合によっては工場を大規模に改修しなければならない。
【0003】
また、食品蒸煮装置に限らず、蒸気タービンなどの大量の蒸気を使用する装置において、蒸気は、食品を蒸煮した後やタービンの回転のために仕事を取り出した後であってもなお十分な熱エネルギーを有していることがある。
すなわち、蒸気を使用する装置において、前述の蒸煮装置の例のように排蒸気を工場外へ排出することは、蒸気に内在するエネルギーを外部に放出することと同じ意であり、大きな無駄を招いている。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1では、食品を蒸煮する際に生じる排蒸気を冷水により冷却して凝集させることで、復水することができる装置が開示されている。しかしながら、前記の装置では、蒸気ダクトを工場外に接続しなくて済むという利点があるものの、冷水により蒸気を強制的に復水するため、排蒸気に内在する熱エネルギーを活用するという点に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−254663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、大規模な工場の改修を不要としながら、蒸煮装置やタービンから排出された蒸気を高効率にドレンとして回収することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、蒸気からドレンを生成し回収する装置として、装置内部が、空間と、該空間に配置された蒸気流入口と、該空間に配置されたドレン排出口と、該空間において1以上の蒸気抵抗体によって設けられた2以上のゾーンと、蒸気流入口から最も離れたゾーンに配置された大気開放口とを備え、かつ、蒸気抵抗体が、各ゾーンにおける蒸気流入量が蒸気流出量よりも多くなるよう、蒸気流路を設けたことを特徴とすることで、前述の課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明のドレン生成回収装置は以下のような構成である。
(1)蒸気からドレンを生成し回収する装置において、装置内部は、空間と、該空間に配置された蒸気流入口と、該空間に配置されたドレン排出口と、該空間において1以上の蒸気抵抗体によって設けられた2以上のゾーンと、蒸気流入口から最も離れたゾーンに配置された大気開放口と、を備え、かつ、該蒸気抵抗体は、各ゾーンにおける蒸気流入量が蒸気流出量よりも多くなるよう、蒸気流路が設けられている、ドレン生成回収装置である。
(2)また、前記ゾーンの内最も蒸気流入口から離れたゾーンにおいて、さらに熱交換器が配置されている、前記(1)に記載のドレン生成回収装置である。
(3)また、前記熱交換器がミスト発生器である、前記(2)に記載のドレン生成回収装置である。
(4)また、前記蒸気抵抗体が開度調整可能なダンパである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のドレン生成回収装置である。
(5)また、前記蒸気が食品を蒸した後の排蒸気である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のドレン生成回収装置である。
【0009】
加えて、本発明のドレンを生成及び回収する方法は以下のような構成である。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の装置によりドレンを生成及び回収する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドレン生成回収装置によれば、複雑な設備の導入や工場の大規模な改修を行うことなく、蒸煮装置や蒸気タービンから役割を終えて排出された蒸気を高効率にドレンに生成し、これを回収することができる。また、本発明のドレン生成回収装置は、回収されたドレンが熱エネルギーを十分に有した状態であるため、そのドレンを再利用することでエネルギーの効率的な利用も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るドレン生成回収装置の概略断面図。
図2】本発明の他の実施形態に係るドレン生成回収装置の概略断面図。
図3】本発明の他の実施形態に係るドレン生成回収装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係るドレン生成回収装置の模式的な縦断面図を示したものである。
【0014】
図1に示したとおり、本発明に係るドレン生成回収装置1は、蒸気流入口2より、図示しない蒸煮装置等の蒸気の生じる装置から発生した排蒸気が流入するようになっている。また、ドレン生成回収装置1の内部には空間があり、当該空間は、蒸気抵抗体10によってゾーン20、25に仕切られており、ドレン排出口30が備えられている。さらに、蒸気流入口2から最も離れたゾーン25には、大気開放口40が備えられている。
【0015】
前述の蒸気抵抗体10は、ゾーン20とゾーン25とを完全に隔てるものでなく、蒸気流路50を設けており、ゾーン20とゾーン25との間の蒸気の部分的な流通を可能としたものである。すなわち、蒸気抵抗体10は、ゾーン20に流入する大部分の蒸気を当該ゾーン20内に滞留させる役割を果たすが、一方で、少量の蒸気を隣接するゾーン25へ流出させる役割も果たす。これにより、ゾーン20における蒸気の流入に起因する過度な圧力の増加を抑制し、蒸気流入口2への蒸気の逆流や本発明のドレン生成回収装置1と接続する蒸気発生装置等からの蒸気の漏出を防止することができる。
【0016】
また、蒸気流入口2から最も離れたゾーン25に大気開放口40を配置することで、蒸気の流れが蒸気流入口2のあるゾーン20から大気開放口40のあるゾーン25へと流れるようになる。すなわち、蒸気は、蒸気流入口2から流入すると、はじめはゾーン20へ満たされていき、次第にゾーン20の圧力が高まると、大気開放口40の存在により大気圧と略平衡状態であるゾーン25に蒸気流路50を介して流れるようになる。
【0017】
そして、蒸気流入口2、蒸気流路50及び大気開放口40は、ゾーン20、25の各ゾーンにおける蒸気流入量がその蒸気流出量よりも多くなるように、位置やサイズなどを調整する。例えば、ゾーン25について、ゾーン20から流入する蒸気の質量を1とすると、大気開放口40から流出する蒸気及びゾーン20へ逆流する蒸気があるならその蒸気を合算した質量が1未満となるように、大気開放口40の開度を決定し、この大気開放口40の開度に基づいて、蒸気流路50のサイズ、言い換えると蒸気抵抗体10の開度を決定する。この場合、ゾーン25における蒸気流入量から蒸気流出量を差し引いた質量分の蒸気がドレンとなる。
【0018】
蒸気抵抗体10の開度及び大気開放口40の開度は、例えば、大気開放口40の開度を蒸気抵抗体10の開度よりも狭くすることが挙げられる。蒸気抵抗体を複数設ける場合についても、例えば、蒸気流入口に近い蒸気抵抗体から大気開放口にかけて、順次、蒸気抵抗体等の開口度を狭めることにより、各ゾーンにおける蒸気流入量が蒸気流出量より多くすることができる。
【0019】
なお、蒸気抵抗体10は、図1のドレン生成回収装置においては仕切り板を示しているが、蒸気流入口2から流入する蒸気量が変動する場合に対応するため、開度の調整が可能なダンパを用いることが好ましい。このようなダンパを用いることで、蒸気流入口2から流入する蒸気量が増加した場合にダンパを開き、蒸気をすみやかに奥のゾーン25へ流通させ、蒸気の逆流を防ぐことができる。
また、蒸気抵抗体10として、上記で例示したもののほかに、パンチング板やメッシュのような蒸気に抵抗を与えつつ流通を可能とするものも用いることができる。蒸気抵抗体10としてパンチング板やメッシュを用いる場合、蒸気流路50はパンチング穴や網目の隙間とすることができ、さらには、図1のようなドレン生成回収装置1の内壁と蒸気抵抗体10の間に隙間となる蒸気流路50を設けずに、これらを完全に内接させることもできる。
【0020】
加えて、大気開放口40は、開度を定めるために蒸気抵抗体を配置することもできる。さらに、大気開放口40は、前記蒸気抵抗体として開度の調整が可能なダンパを配置することもでき、パンチング板又はメッシュを配置することもできる。なお、大気開放口40に蒸気抵抗体又は開度調整可能なダンパを配置することで、蒸気抵抗体10にこのようなダンパを用いることと同様に、ゾーン25に流入する蒸気量が変動する場合に、大気開放口40の開度を調整する対応が可能となる。
【0021】
ゾーン20、25に満たされた蒸気は、それぞれのゾーンにおいて凝縮し、やがてドレンとなる。このように生成されたドレンは、ドレン排出口30を通じて回収される。回収したドレンは、高温の場合があり、温水として他用途に利用することもできる。
【0022】
次に、図1におけるドレン生成回収装置の他の実施態様について述べる。
【0023】
図2は、図1のドレン生成回収装置と異なる本発明に係るドレン生成回収装置の模式的な縦断面図を示したものである。
【0024】
図2のドレン生成回収装置は、蒸気抵抗体10、15によりゾーン20、21、25に仕切られている。なお、蒸気抵抗体15はダンパである。また、蒸気流入口2から最も離れたゾーン25には、熱交換器60が設けられており、さらに、大気開放口40に蒸気抵抗体11が付随している。
【0025】
本発明は、図2のドレン生成回収装置のように、2以上の蒸気抵抗体により3以上のゾーンを設けて複数回蒸気を滞留させるようにすることで、より顕著なドレン生成回収の効果を享受することができる。つまり、蒸気抵抗体は、蒸気がなるべく逆流しない程度に蒸気流への抵抗を何度も与えるよう複数備えることで、効率よく蒸気をドレンとすることができる。
【0026】
蒸気流入口2から最も離れたゾーン25に熱交換器60を設けることで、ゾーン25にまで流入してきた蒸気の熱を回収し、ドレンを効率的に生成することができ、同時に、大気開放口40からの蒸気の流出を抑えることができる。
【0027】
熱交換器60は、一般的に熱交換器として用いられるものであれば特に限定なく利用できるが、一例としてミスト発生器を用いることができる。ミスト発生器を熱交換器として用いる場合、冷水又は常温の水によるミストを散布することで、ゾーン25における蒸気を半強制的にドレンとすることができる。また、ミストの粒径は100〜300μmとすることが好ましい。
【0028】
また、図1及び図2では各ゾーンが直列型に並んでいたが、図3に示すように、ゾーン21、25のいずれもゾーン20と隣接するようゾーンを並列型に配置することもできる。
【0029】
このように、本発明のドレン生成回収装置は、食品を蒸した後の排蒸気や蒸気タービンで役割を終えた蒸気を効率よくドレンとし、回収することができる。
特に本発明のドレン生成回収装置は、冷却装置などの付属設備がなくても効率よく蒸気をドレンとすることができるため、省スペースかつ低コストを実現することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ドレン生成回収装置
2 蒸気流入口
10、11 蒸気抵抗体
15 蒸気抵抗体(ダンパ)
20、21、25 ゾーン
30 ドレン排出口
40 大気開放口
50 蒸気流路
60 熱交換器
図1
図2
図3