特許第6188528号(P6188528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188528バックライトの異常検出装置および異常検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188528
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】バックライトの異常検出装置および異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20170821BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20170821BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20170821BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20170821BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H05B37/02 K
   G09G3/20 670N
   G09G3/20 633Z
   G09G3/34 J
   G09G3/36
   G09G3/20 611H
   G02F1/133 535
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-213622(P2013-213622)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-76363(P2015-76363A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】安本 貴史
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−131348(JP,A)
【文献】 特開2012−004815(JP,A)
【文献】 特開平05−292042(JP,A)
【文献】 特開2012−178021(JP,A)
【文献】 特開2003−088093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
G02F 1/133
G09G 3/20
G09G 3/34
G09G 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを光源とするバックライトで生じた異常をバックライト駆動回路で検出してPWM信号によりコントローラに通知するバックライトの異常検出装置であって、
上記異常が検出されたときに、異常の種類に応じたデューティを有するPWM信号である異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知するとともに、上記異常通知パルスを発生する前に、基準のデューティを有するPWM信号である基準パルスを発生して上記コントローラに通知する異常検出部を備え、
上記異常検出部は、上記異常の状態が所定時間以上継続した場合に上記異常の検出を確定させるようになされ、
上記異常検出部は、上記異常が確定する前の異常検出期間中に上記基準パルスを発生して上記コントローラに通知し、上記異常が確定された後に上記異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知することを特徴とするバックライトの異常検出装置。
【請求項2】
上記異常検出部は、上記異常の状態を検出すると、上記異常の状態が確定する時間を予測し、当該予測した時間に上記基準パルスの上記コントローラへの通知が完了するように上記基準パルスを上記コントローラに通知し、上記異常が確定されると同時に上記異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知することを特徴とする請求項1に記載のバックライトの異常検出装置。
【請求項3】
発光ダイオードを光源とするバックライトを駆動するバックライト駆動回路と、上記バックライト駆動回路を制御するコントローラとを備え、上記バックライトで生じた異常を上記バックライト駆動回路で検出してPWM信号により上記コントローラに通知するバックライトの異常検出システムであって、
上記バックライト駆動回路は、
上記異常が検出されたときに、異常の種類に応じたデューティを有するPWM信号である異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知するとともに、上記異常通知パルスを発生する前に、基準のデューティを有するPWM信号である基準パルスを発生して上記コントローラに通知する異常検出部を備え、
上記コントローラは、
上記バックライト駆動回路から通知された上記基準パルスの周期と、上記基準パルスの後に上記バックライト駆動回路から通知された上記異常通知パルスのオフ期間またはオン期間の何れか一方の長さとに基づいて、上記異常通知パルスのデューティを判定するデューティ判定部と、
上記デューティ判定部により判定された上記異常通知パルスのデューティに基づいて、上記バックライトで生じた異常の種類を特定する異常種特定部とを備えたことを特徴とするバックライトの異常検出システム。
【請求項4】
上記異常検出部は、上記異常の状態が所定時間以上継続した場合に上記異常の検出を確定させるようになされ、
上記異常検出部は、上記異常が確定する前の異常検出期間中に上記基準パルスを発生して上記コントローラに通知し、上記異常が確定された後に上記異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知することを特徴とする請求項3に記載のバックライトの異常検出システム。
【請求項5】
上記異常検出部は、上記異常の状態を検出すると、上記異常の状態が確定する時間を予測し、当該予測した時間に上記基準パルスの上記コントローラへの通知が完了するように上記基準パルスを上記コントローラに通知し、上記異常が確定されると同時に上記異常通知パルスを発生して上記コントローラに通知することを特徴とする請求項4に記載のバックライトの異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライトの異常検出装置および異常検出システムに関し、特に、発光ダイオード(LED)を光源とするバックライトで生じた異常をバックライト駆動回路で検出してPWM信号によりコントローラに通知する装置およびシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイのバックライトには冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)が用いられてきた。これに対して最近では、水銀を使わない環境配慮型のバックライトとして、図6に示すように、複数のLEDをマトリクス状に配置してなるLEDマトリクス100を光源に用いたものが提供されている。LEDを用いたバックライトにおいては、バックライト駆動回路200において何らかの異常状態を検出してマイコン(MCU)300に通知する手法として、マイコン300の汎用端子を用いた通知方式(GPIO:General Purpose Input/Output方式)が広く用いられている。
【0003】
GPIO方式の場合、マイコン300が標準的に備える端子(典型的には8個)のうち、2つのFAIL端子を用いて異常状態の通知が行われる。2つのFAIL端子であるから、通知できる内容は4パターンである。ただ、バックライト駆動回路200が停止中か動作中かの通知に2パターンを使うため、異常状態に関して通知できる内容は2パターンに過ぎない。
【0004】
そのため、GPIO方式の場合、バックライト駆動回路200からマイコン300に対して異常状態の有無は通知することができても、どんな異常が発生しているのかの詳細を通知することはできない。そのため、マイコン300では、異常状態が通知されると、ENABLE端子を用いてバックライト駆動回路200の動作を遮断するように制御してしまう。その結果、発生した異常がたとえ軽微なものであっても、液晶ディスプレイの表示が全く見えなくなってしまうという問題があった。なお、異常状態の詳細を通知するには、FAIL端子の数を増やさなければならない。しかし、そうするとマイコン300の端子数が増加し、形状の大型化が避けられない。
【0005】
これに対し、異常状態の通知をPWM信号により行うようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の駆動制御装置では、ドライバ回路部が検知した異常の種類に対応したPWMデューティ信号を異常情報として上位コントローラへ送信するようにしている。このようなPWM方式によれば、マイコンの端子数を増やすことなく、異常の種類をバックライト駆動回路からマイコンに通知することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−82360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、PWM方式では、バックライト駆動回路で使用している各種部品の個体差による特性のバラツキや、バックライト駆動回路の周囲温度の変化などにより、オシレータにより発生される基準クロックに変動が生じてPWM信号の周期が変動してしまうことがある。一般的に、周期は基準値に対して±20%程度の誤差が生じる可能性があるため、異常の種類に対応したデューティは、マイコンが公差と認められる範囲を考慮して約5%毎に設定しなければならない。この場合、バックライト駆動回路が停止中か動作中かの通知に使用する2パターンを除いて、異常状態に関して通知できる内容は18パターンに過ぎない。
【0008】
異常状態の詳細を通知する際には、過電流状態や過電圧状態といった回路全体に関する異常状態に加え、マトリクス状に配置されたLEDのうち、どの列のどの行のLEDがどういう状態(オープンまたはショート)で異常なのかという個々のLEDに関する異常状態まで通知することが求められる。しかし、上記特許文献1に記載のPWM方式を用いたとしても、通知できる異常の種類は18パターン程度であり、より多くの種類の異常を通知したいという要求に応えることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、バックライト駆動回路で検出した異常状態をPWM信号によりコントローラに通知する方式において、より多くの種類の異常を通知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、バックライト駆動回路で異常が検出されたときに、検出した異常の種類に応じたデューティを有するPWM信号である異常通知パルスを発生してコントローラに通知するが、その異常通知パルスを発生する前に、基準のデューティを有するPWM信号である基準パルスを発生してコントローラに通知するようにしている。また、本発明では、異常の状態が所定時間以上継続して異常が確定する前の異常検出期間中に基準パルスを発生してコントローラに通知し、異常が確定された後に異常通知パルスを発生してコントローラに通知するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、バックライト駆動回路で発生した異常の種類を示す異常通知パルスをコントローラに通知する前に基準パルスが通知されるので、PWM信号の周期に基準値からの誤差が生じていても、基準パルスの周期と異常通知パルスのオフ期間またはオン期間の何れか一方の長さとに基づいて異常通知パルスのデューティを正確に判定し、当該異常通知パルスのデューティから異常の種類を間違いなく特定することができる。これにより、異常通知パルスのデューティを5%より小さい単位の数%刻みで多数設定して、それぞれに対して異常の種類を割り当てることが可能となり、より多くの種類の異常を通知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態によるバックライトの異常検出システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態によるバックライト駆動回路およびマイコンの構成例を示す図である。
図3】異常の種類とPWM信号のデューティとの関係の一例を示す図である。
図4】バックライトで出力電流異常(過電流状態)が発生したときにおける動作例を示す図である。
図5】バックライトで出力電圧異常(過電圧状態)が発生したときにおける動作例を示す図である。
図6】LEDを用いた従来のバックライトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるバックライトの異常検出システムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態によるバックライトの異常検出システムは、複数のLEDをマトリクス状に配置してなるLEDマトリクス100を光源とするバックライトを駆動するバックライト駆動回路10と、当該バックライト駆動回路10を制御するマイコン(MCU)20とを備えて構成されている。
【0014】
本実施形態の異常検出システムでは、バックライトで生じた異常をバックライト駆動回路10で検出し、FAIL端子を用いてPWM信号によりマイコン20に通知するように成されている。バックライト駆動回路10は、バックライトの異常を検出するための異常検出装置を備えている。マイコン20では、バックライト駆動回路10から異常の発生が通知されると、その異常の種類に応じて必要なときは、ENABLE端子を用いてバックライト駆動回路10の動作を遮断するように制御する。
【0015】
図2は、バックライト駆動回路10およびマイコン20の構成例を示す図である。図2に示すように、本実施形態のバックライト駆動回路10は、駆動部51およびドライバIC52を備えて構成されている。ドライバIC52は、内蔵電源11、OSC12、定電流回路部13、昇圧制御部14および異常検出部15を備えて構成されている。また、本実施形態のマイコン20は、デューティ判定部21、異常種特定部22および制御部23を備えて構成されている。
【0016】
駆動部51は、入力電圧Vinをそれより高い出力電圧Voutに昇圧してLEDマトリクス100に印加する。この昇圧制御のために、昇圧制御部14により発生されるPWM信号が用いられる。このPWM信号は、マイコン20からDimming端子を通じて出力される信号に基づいて、調光率に応じた時間的割合でデューティを設定したものである(以下、調光パルスという)。
【0017】
ドライバIC52の内蔵電源11は、マイコン20によりENABLE端子がオンとされることによって起動し、ドライバIC52の内部の各ブロックに電源を供給する。OSC12は、ドライバIC52のRT端子に接続された抵抗(図示せず)の値に応じて、所定周波数にて発振し、基準クロックを発生する。通常、この外付け抵抗値とOSC12の特性のバラツキと温度特性により、発振周波数に±20%程度の誤差が生じる可能性がある。OSC12により発生された基準クロックは、昇圧制御部14および異常検出部15に供給される。
【0018】
定電流回路部13は、ドライバIC52のISET端子に接続された抵抗(図示せず)の値に応じて、定電流を設定する。また、定電流回路部13は、マイコン20からDimming端子を通じてPWM信号を入力する。このDimming−PWM信号がHiのときLEDは調光なしの100%点灯、Loで0%点灯、つまり消灯となる。定電流回路部13に供給されるDimming−PWM信号がHiのとき、外付け抵抗値に応じて設定した定電流がLEDマトリクス100から流れ込むようにデューティを調整された調光パルスが昇圧制御部14から駆動部51に供給される。
【0019】
例えば、LEDマトリクス100を点灯させる場合、昇圧制御部14は、OSC12より発生する固定周期の基準クロックを利用して、調光パルスがオンとなる期間中に駆動部51の昇圧駆動用トランジスタ(図示せず)のON/OFFをPWM制御することにより、入力電圧Vinを所定の出力電圧Voutに昇圧する。一方、LEDマトリクス100を消灯させる場合、昇圧制御部14の動作を停止させる。
【0020】
異常検出部15は、バックライトで生じた異常を検出する。検出する異常は、出力電流異常(過電流状態)、出力電圧異常(過電圧状態)、起動異常、デバイス温度異常、入力電圧異常(低電圧状態)、LEDマトリクス100における個々のLEDの故障(オープンまたはショート)などである。
【0021】
異常検出部15は、異常の状態が所定時間以上継続した場合に、異常の検出を確定させる。瞬間的な電圧上昇や電流上昇が生じたときにそれを異常の発生と誤検出してしまうことを防ぐためである。異常検出部15では、異常を最初に検出してから確定させるまでの所定時間をあらかじめ設定している。この所定時間は、ドライバIC52で固定されていてもよいし、外部から調整可能にしてもよい。
【0022】
なお、過電流状態の検出は、駆動部51の入力側に接続した抵抗R0を用いて行う。すなわち、異常検出部15が内部に備える過電流検出部(図示せず)は、この入力抵抗R0の両端電圧差を監視する。そして、過電流検出部は、監視した両端電圧差が所定の閾値より大きくなったときに、出力電流異常(過電流状態)が発生したことを検出する。
【0023】
また、過電圧状態の検出は、駆動部51の出力側に接続した分圧抵抗R1,R2を用いて行う。すなわち、異常検出部15が内部に備える過電圧検出部(図示せず)は、分圧抵抗R1,R2を介して過電圧検出部にフィードバックされる出力電圧Voutの分圧値を監視する。そして、過電圧検出部は、その分圧電圧が所定の閾値より大きくなったときに、出力電圧異常(過電圧状態)が発生したことを検出する。
【0024】
その他、起動異常、デバイス温度異常、入力電圧異常(低電圧状態)、各LEDの故障(オープンまたはショート)の具体的な検出方法については本発明の主題でないので詳細な説明を割愛するが、何れも公知の手法を適用することが可能である。
【0025】
異常検出部15は、異常の検出が確定されたときに、マイコン20のFAIL端子を通じて、異常の種類に応じたデューティを有するPWM信号(以下、異常通知パルスという)を発生してマイコン20に通知する。また、異常検出部15は、異常通知パルスを発生する前に、FAIL端子を通じて、基準のデューティ(例えば、50%のデューティ)を有するPWM信号(以下、基準パルスという)を発生してマイコン20に通知する。
【0026】
図3は、異常の種類とPWM信号のデューティとの関係の一例を示す図である。図3の例では、PWM信号のオフ期間のデューティ(オフデューティという)を3%刻みで示している。また、それぞれのオフデューティの値に対して異常の種類が対応付けられている。ただし、最小値である0%と最大値である100%はそれぞれバックライト駆動回路10が停止中か動作中かを示すのに用いられる。また、50%のオフデューティは基準パルスのデューティに対応する。それ以外のオフデューティの値が、30パターンの異常の種類を示すのに用いられる。
【0027】
マイコン20のデューティ判定部21は、バックライト駆動回路10の異常検出部15からFAIL端子を通じて通知された基準パルスの周期と、基準パルスの後に異常検出部15からFAIL端子を通じて通知された異常通知パルスのオフ期間またはオン期間の何れか一方の長さとに基づいて、異常通知パルスのデューティを判定する。本実施形態では、基準パルスの周期と異常通知パルスのオフ期間の長さとを用いて、異常通知パルスのオフデューティを判定する。例えば、基準パルスの周期が10msecで、異常通知パルスのオフ期間の長さが0.5msecであった場合、デューティ判定部21は、異常通知パルスのオフデューティが5%であると判定する。
【0028】
なお、バックライト駆動回路10で使用している各種部品の個体差による特性のバラツキや、バックライト駆動回路10の周囲温度の変化などにより、OSC12により発生される基準クロックの周波数に変動が生じ、異常通知パルスのオフ期間の長さが0.6msec(20%の誤差)であったとする。この場合でも、異常通知パルスの前に通知される基準パルスの周期にも20%の誤差が生じていて12msecとなっているので、デューティ判定部21は、異常通知パルスのオフデューティが5%であると判定することができる。
【0029】
異常種特定部22は、デューティ判定部21により判定された異常通知パルスのオフデューティに基づいて、バックライトで生じた異常の種類を特定する。例えば、異常種特定部22は、図3に示したようなテーブル情報を記憶していて、デューティ判定部21により判定された異常通知パルスのオフデューティに基づいてテーブル情報を参照することにより、そのオフデューティに関連付けられた異常の種類を特定する。
【0030】
制御部23は、異常種特定部22により特定された異常の種類に応じて、ENABLE端子を用いてバックライト駆動回路10に制御信号を送信することにより、バックライト駆動回路10の動作を制御する。例えば、出力電流異常(過電流状態)、出力電圧異常(過電圧状態)、起動異常、デバイス温度異常、入力電圧異常(低電圧状態)といった重大な異常が異常種特定部22により特定された場合、制御部23は、ENABLE端子を用いてドライバIC52の内蔵電源11をオフとすることにより、バックライト駆動回路10の動作を遮断するように制御する。
【0031】
これに対し、LEDマトリクス100における個々のLEDが故障(オープンまたはショート)しているといった軽微な異常が異常種特定部22により特定された場合、制御部23は、バックライト駆動回路10の動作を遮断することはせず、LEDの点灯を継続させる。ディスプレイ上の一部が暗くなるものの、バックライトやシステムに深刻なダメージを与えるような異常ではないからである。
【0032】
図4は、バックライトで異常が発生したときにおける異常検出システムの動作例を示す図である。なお、この図4は、出力電流異常(過電流状態)が発生したときの動作例を示している。
【0033】
例えば、バックライト駆動回路10の出力が短絡するといった異常が発生すると、図4(a)に示すように、入力抵抗R0に流れる電流が時間と共に増加していく。異常検出部15は、入力電流の上昇という異常の状態が所定時間以上継続した場合に、過電流状態の異常検出を確定させる。すなわち、図4(c)に示すように、異常検出の回数を示す異常検出カウンタの値が所定回に達したときに、異常検出部15は過電流状態の異常検出を確定させる。
【0034】
異常検出部15は、図4(d)に示すように、異常が確定する前の異常検出期間中に基準パルスを発生し、マイコン20に通知する。また、異常検出部15は、異常が確定された後に異常通知パルスを発生し、マイコン20に通知する。なお、基準パルスの固定デューティ(50%)に基づくオン期間とオフ期間の長さの調整や、異常通知パルスの異常種類に応じた可変デューティに基づくオン期間とオフ期間の長さの調整は、異常検出部15のカウンタ回路(図示しない)に基づいて行われる。
【0035】
本実施形態では、異常検出部15は、最初に異常の状態を検出したときに、異常の状態が確定する時間を予測し、当該予測した時間に基準パルスのマイコン20への通知が完了するように基準パルスをマイコン20に通知する。そして、異常が確定されると同時に異常通知パルスを発生してマイコン20に通知するようにしている。
【0036】
基準パルスおよび異常通知パルスの通知を受けたマイコン20では、基準パルスの周期と異常通知パルスのオフ期間の長さとに基づいて異常通知パルスのオフデューティをデューティ判定部21により判定し、そのオフデューティに基づいて異常の種類を異常種特定部22により特定する。そして、制御部23は、以上のようにして特定された異常の種類に応じて、ENABLE端子を用いてバックライト駆動回路10の動作を遮断するように制御する。
【0037】
すなわち、バックライト駆動回路10の動作を遮断する場合、制御部23は、図4(e)の実線に示すように、ENABLE端子から出力する制御信号をHiからLoに切り替える。なお、異常の種類がLEDの故障(オープンまたはショート)であり、バックライト駆動回路10の動作を遮断しない場合、制御部23は、図4(e)の点線に示すように、ENABLE端子から出力する制御信号をHiのまま維持する。
【0038】
ここで、異常通知パルスのオフ期間が終了するタイミングで異常の種類が異常種特定部22により特定されるので、制御部23はそのタイミングで直ちにバックライト駆動回路10を制御することが可能である。しかも、本実施形態では、異常検出部15により異常の検出が確定される前の異常検出期間中に、バックライト駆動回路10からマイコン20に基準パルスが既に通知されている。そのため、異常検出部15により異常が確定されてから制御部23がバックライト駆動回路10を制御するまでの時間が異常通知パルスのオフ期間の長さだけで済み、非常に短時間のうちに制御を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、図3に示したように、バックライト駆動回路10の動作を停止させる必要がない種類の異常よりも、バックライト駆動回路10の動作を停止させる必要がある種類の異常に対し、異常通知パルスのオフ期間の長さが短いデューティを設定している。これにより、異常が確定されてからマイコン20がバックライト駆動回路10の動作を遮断するまでの時間をできるだけ短くすることができる。
【0040】
図5は、バックライトで異常が発生したときにおける異常検出システムの他の動作例を示す図である。なお、この図5は、出力電圧異常(過電圧状態)が発生したときの動作例を示している。図5(a)に示すように、何らかの異常によって出力電圧Voutが時間と共に増加し、その状態が所定時間以上継続した場合に、異常検出部15は、過電圧状態の異常検出を確定させる。
【0041】
異常検出部15は、図5(d)に示すように、異常が確定する前の異常検出期間中に基準パルスを発生し、マイコン20に通知する。また、異常検出部15は、異常検出部15により異常が確定された後に異常通知パルスを発生し、マイコン20に通知する。この場合も、異常検出部15は、異常の状態が確定する時間を予測し、当該予測した時間に基準パルスのマイコン20への通知が完了するように基準パルスをマイコン20に通知する。そして、異常が確定されると同時に異常通知パルスを発生してマイコン20に通知する。
【0042】
基準パルスおよび異常通知パルスの通知を受けたマイコン20では、基準パルスの周期と異常通知パルスのオフ期間の長さとに基づいて異常通知パルスのオフデューティをデューティ判定部21により判定し、そのオフデューティに基づいて異常の種類を異常種特定部22により特定する。そして、制御部23は、以上のようにして特定された異常の種類に応じて、図5(e)に示すように、ENABLE端子を用いてバックライト駆動回路10の動作を必要に応じて遮断するように制御する。
【0043】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、バックライト駆動回路10の異常検出部15で異常が検出されたときに、検出した異常の種類に応じたデューティを有するPWM信号である異常通知パルスを発生してマイコン20に通知するが、その異常通知パルスを発生する前に、基準のデューティを有するPWM信号である基準パルスを発生してマイコン20に通知するようにしている。
【0044】
このように構成した本実施形態によれば、バックライト駆動回路10で発生した異常の種類を示す異常通知パルスをマイコン20に通知する前に基準パルスが通知されるので、バックライト駆動回路10で使用している各種部品の個体差による特性のバラツキや、バックライト駆動回路10の周囲温度の変化などにより、異常検出部15から出力されるPWM信号の周期に基準値からの変動が生じていても、基準パルスの周期と異常通知パルスのオフ期間の長さとから異常通知パルスのオフデューティを正確に判定し、当該異常通知パルスのオフデューティから異常の種類を間違いなく特定することができる。これにより、異常通知パルスのデューティを5%より小さい単位の数%刻みで多数設定して、それぞれに対して異常の種類を割り当てることが可能となり、より多くの種類の異常を通知することができるようになる。
【0045】
なお、上記実施形態では、基準パルスのデューティを50%に設定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。基準パルスはFAIL端子を通じてPWM信号の周期をマイコン20に伝えることが目的なので、基準パルスのデューティは任意に設定することが可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、異常が確定される前の異常検出期間中に基準パルスをマイコン20に通知する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、異常が確定された直後に基準パルスをマイコン20に通知するようにしてもよい。このようにしても、異常通知パルスのデューティを5%より小さい単位の数%刻みで多数設定して、より多くの種類の異常を通知することができるという効果は得られる。ただし、より早く基準パルスを通知して短時間のうちにバックライト駆動回路10を制御できるという点で、異常検出期間中に基準パルスをマイコン20に通知するのが好ましい。
【0047】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 バックライト駆動回路
15 異常検出部
20 マイコン(コントローラ)
21 デューティ判定部
22 異常種特定部
23 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6