(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188534
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】真空下でのポリマー水分散液の製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 2/10 20060101AFI20170821BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
C08F2/10
C08F2/44 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-220926(P2013-220926)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-133870(P2014-133870A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】1350180
(32)【優先日】2013年1月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エス・ペー・セー・エム・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・コッコロ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・タヴェルニエ
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−131233(JP,A)
【文献】
特表2001−508473(JP,A)
【文献】
特開平04−255701(JP,A)
【文献】
特開平11−310615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器中で、
− 少なくとも水溶性のモノマーと、1以上の塩および/または1以上の有機ポリマー分散剤とを含む水溶液の形態で反応溶媒を調製し、
− 前記モノマーを重合し、
− 得られたポリマーを前記反応器から取り出すことによる、親水性ポリマーの水分散液の製造方法であって、
前記反応溶媒の圧力を200mbarより小さい値まで低くすることを特徴とし、
前記水溶性のモノマーが、エチレン性二重結合を有し、以下の分類:
− カルボン酸官能基を有するモノマー、スルホン酸官能基を有するモノマー、およびそれらの塩を含む群から選択されるアニオン性モノマー;
− アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルホルムアミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、並びにアルコキシ系鎖を有する(メタ)アクリレートを含む群から選択される非イオン性モノマー;
− ジアリルジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアミノアルキルアクリレートおよびメタクリレート、それらの酸性化または四級化された形態、ならびに、ジアルキルアミノアルキル−アクリルアミドまたは−メタクリルアミド、およびそれらの酸性化または四級化された形態を含む群から選択される、カチオン性モノマー、
から選択され、かつ、
前記有機ポリマー分散剤が、上で定義した非イオン性モノマー、上で定義したアニオン性モノマー、および/または上で定義したカチオン性モノマーから得られる、アニオン性、カチオン性、または両性のポリマーまたはコポリマーから選択される、方法。
【請求項2】
前記反応溶媒の圧力を、該反応溶媒が沸騰する値まで低くする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応溶媒の圧力を、0.1〜100mbarの値まで低くする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応溶媒の圧力を、1〜60mbarの値まで低くする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応溶媒を大気圧で調製し、該反応溶媒の圧力を重合の間全てにわたって、または重合の間の一部で低くする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
− 前記反応溶媒を大気圧で調製し、
− 該反応溶媒の圧力を低くし、
− 重合を開始することを、この順で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
− 前記反応溶媒を大気圧で調製し、
− 該反応溶媒の圧力を低くするのと同時に重合を開始することを、この順で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
− 前記反応溶媒を大気圧で調製し、
− 重合を開始し、
− 重合の間中、前記反応溶媒の圧力を低くすることを、この順で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
重合温度が10〜80℃の間である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液中のモノマー濃度が、5〜50重量%の間である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩が、サルフェート、ジヒドロゲンホスフェート、ホスフェート、およびハライドアニオンを含む塩から選択され、対応するカチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、またはアルミニウムから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶液中の塩濃度が、最大でその塩の最大溶解度に相当する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機ポリマー分散剤が、1,000〜500,000g/molの間の分子量を有するポリマーである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機ポリマー分散剤の水相中の濃度が、30重量%未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法によって得られる親水性ポリマーの水分散液の、製紙工業(第2の保水剤、脱水剤等として)、水処理(飲料水または排水)、通常の全ての凝固または凝集技術、鉱業、石油産業(原油の二次回収、圧力下降の低減、またはフリクションの低減)、化粧品産業、繊維産業、洗剤製品産業の産業における、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は親水性ポリマーの水分散液に関する。こうした分散液は、塩および/または安定剤として知られているポリマーの存在下におけるモノマー混合物の水溶液中での重合により得られる。これらはまた、水中水型分散液とも称される。
【背景技術】
【0002】
親水性ポリマーは、多くの機能を果たすことで知られており、中でも最も重要なのは、それらの凝集剤、凝固剤、安定剤、増粘剤、および浮力剤としての使用である。これらは、水処理(都市の水、工業用水、および残留水)、製紙およびボール紙製造、石油産業(掘削、回収支援、またはEOR)、並びに鉱石、および、フィラーおよび顔料等の様々な鉱物の処理等の、様々な産業分野および様々な形態で使用される。
【0003】
長年の間、親水性ポリマーの水分散液を導く重合技術が開発されてきた。
【0004】
この技術は、塩、および/または、溶液または分散液中の分散剤等の他の化学薬品を含む水中で、モノマーまたはモノマーの混合物の重合を行うことを含む。その重合の間に形成される親水性ポリマーが生理食塩水溶液中に不溶であり、且つ/または分散剤を含むので、この親水性ポリマーは、十分に大きな分子量に達した場合沈殿する。重合の終わりに、水混合物中に懸濁されたポリマー粒子の分散液が得られる。
【0005】
この技術は、その使用の間、非常に迅速に(数秒以内で)水中にポリマーを溶解させることができる。
【0006】
特許文献1(ダウケミカル)には、無機塩を含む水溶液中で、アクリル酸および別のモノマーの共重合により得られる分散液が記載されている。この得られた分散液は、高い酸性のpHにより特徴づけられる。重合時間は16〜22時間の間である。
【0007】
多くの他の特許が出願されている。特許文献2(Hymo)には、分散剤が存在する生理食塩水中の親水性ポリマーの水分散液を製造する方法が記載されている。この反応時間は10時間である。
【0008】
特許文献3には、疎水性モノマーを分散液に組み込んで、特許文献2に記載された方法を繰り返している。重合時間は18〜24時間の間である。
【0009】
特許文献4にはまた、重合時間が10〜20時間の間である水分散液の製造方法が記載されている。
【0010】
こうした全ての先行技術の方法の問題の1つは、6〜24時間の間という、非常に長い製造時間である。この技術的な制約は、一般的に約10〜80℃、通常約20〜60℃、より正確には約30〜50℃の間の合理的な温度で重合を行う必要があることで説明される。これを怠ると、反応溶媒の粘度が上昇し、不可逆的にゲル化する。
【0011】
反応溶媒の冷却は必須である。これは、水分散液の製造に不利益となり得る溶媒の粘性化を起こさないのに十分低い温度を維持しなければならず、効率的且つ均一でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,658,772号
【特許文献2】米国特許第4,929,655号
【特許文献3】米国特許第5,605,970号
【特許文献4】欧州特許第1,040,141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決することを提案する課題は、親水性ポリマーの水分散液のための製造時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件出願人は、驚くべきことに、且つ、全く予測できなかったことに、この課題が低圧下または真空下、より具体的には200mbarより低い圧力下、優先的には真空下での重合を行うことにより解決されることを見出した。
【0015】
用語「真空下」は、大気圧よりもずっと低い圧力に相当し、一般的に「工業用の」圧力、すなわち、第1のまたはさらに第2の真空ポンプによって工業的に達成できる圧力に相当する。
【0016】
本件出願人はまた、反応水溶液が重合の間沸騰している場合、非常に顕著に重合時間が短縮されることも見出した。
【0017】
特定の理論に束縛されることなく、沸騰の間の熱の排出が、溶媒のより効果的で均一な冷却を可能にし、そのため、重合を促進できると考えられる。本件出願人はまた、その他の点で、同じ条件で、この新規な方法が分散液中でのポリマー濃度を増加できることも見出した。
【0018】
本発明の1つの主題は、部分的にまたは完全に200mbarより低い圧力で行われる重合により親水性ポリマーの水分散液を製造する方法である。
【0019】
より具体的には、本発明の主題は、反応器中で、
− 少なくとも水溶性のモノマーと、1または複数の塩および/または1または複数の有機ポリマー分散剤とを含む水溶液の形態で反応溶媒を調製し、
− 前記したモノマーを重合し、
− 得られたポリマーを前記した反応器から取り出すことによる、親水性ポリマーの水分散液の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法によれば、反応溶媒の圧力を、200mbar未満の値まで、好ましくは1〜100mbarの値まで、および有利にはその反応溶媒が沸騰するまで低くする。
【0021】
この減圧は、以下に例示して言及する手段に従う方法中の様々な時点で行われ得る。言い換えると、減圧は分散液の製造の間の全てにわたって、または一部で適用され得る。
【0022】
実際には、反応溶媒を大気圧下で調製し、重合の間の全てにわたって、または一部で、少なくとも200mbar未満の値までその反応溶媒の圧力を下げる。
【0023】
好ましい態様によれば、反応水溶液は、重合の全てまたは一部の間、沸騰している。
【0024】
好ましい実施形態において、反応溶媒の圧力は、0.1mbarから100mbarの間であり、優先的には1mbarから60mbarの間である。
【0025】
用語「親水性ポリマー」は、水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、および、疎水性鎖を含んでもよい親水性ポリマーを意味する。
【0026】
前述した工程に、窒素で脱気する追加工程、および加熱して反応温度を上げる追加工程を追加してもよい。
【0027】
重合の終わりに、反応器を、分散液を取り出すために大気圧に戻す。分散液を取り出す間、および分散液を保管する間に、200mbar未満の圧力を維持することも可能である。これらの条件下で、内容物は、低圧下に維持され、これは分散液の安定性を向上し得る。
【0028】
沸騰の間、水の量は蒸発するため、反応物の熱の拡散が生じ、結果としてより効果的な反応溶媒の冷却がもたらされる。これはまた、ポリマー溶液の濃縮という、2次的な利点が得られる。
【0029】
重合温度は、通常10から80℃の間であり、優先的には15から50℃の間であり、より優先的には20から40℃の間である。低圧、および溶媒全体にわたるより制御された且つより均一な温度により、反応器の壁面の近くにあろうと反応槽の中央にあろうと、反応溶媒の粘度は低いままである。
【0030】
圧力を低くする手段は公知の手段であり、制限されない。言及され得る例としては、メンブレン真空ポンプ、ベーン真空ポンプ、またはピストン真空ポンプが挙げられる。
【0031】
重合は、本発明の方法に必要な低圧を維持できる、漏れ防止構造の反応器中で行われる。
【0032】
重合は通常、反応器を減圧した後に開始されるが、減圧工程の前または間に開始されてもよい。減圧工程は、反応器の容積および真空を達成するのに用いられる機器に応じて、通常数秒間、または数分間続く。
【0033】
特定の一実施形態によれば、
− 反応溶媒を大気圧で調製し、
− 前記した反応溶媒の圧力を低下させ、
− 重合が開始することを、この順で行う。
【0034】
別の実施形態によれば、
− 反応溶媒を大気圧で調製し、
− 前記した反応溶媒の圧力を低くするのと同時に、重合を開始することを、この順で行う。
【0035】
別の実施形態によれば、
− 反応溶媒を大気圧で調製し、
− 重合を開始し、
− 重合の間に、前記した反応溶媒の圧力を低くすることを、この順で行う。
【0036】
水相中で調製されるポリマーを不溶化するための有機または無機塩を、1回または数回に分けて加えてもよい。通常、最初の追加は、重合の開始前に水溶液中になされる。複数回追加する場合、塩の更なる追加は、真空を中断して大気圧に戻すことにより行われてもよいし、または、優先的には、塩の容器自体を反応溶媒の真空に近い真空にし、その塩を真空下で加えることにより行われてもよい。塩を徐々に加えることの有利な点は、形成されるポリマーの沈殿を徐々に促進し、水相中のポリマーのより良好な安定化を促すことである。モノマー、分散剤、または他の成分においても、同じ手段が採用され得る。
【0037】
水溶液は、以下の分類から選ばれるエチレン性二重結合を有する水溶性モノマーを含む:
− アニオン性モノマー類。これらは有利には、カルボン酸官能基を有するモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩等)、スルホン酸官能基を有するモノマー(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびその塩等)を含む群から選択される;
− 非イオン性モノマー。これらは有利には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(例えば、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド)、およびN−メチロールアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体を含む群から選択される。ビニルホルムアミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、並びにアルコキシ系鎖を有する(メタ)アクリレートが用いられてもよい。好ましい非イオン性モノマーはアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、およびN−ビニルピロリドンである;
− カチオン性モノマー類。これらは好ましくは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、並びにジアルキルアミノアルキルアクリレートおよびメタクリレート、具体的にはジアルキルアミノエチルアクリレート(DAMEA)およびジアルキルアミノエチルメタクリレート(DAMEMA)、およびそれらの当業者に周知の方法によって酸性化または四級化された形態、並びにジアルキルアミノアルキル−アクリルアミドまたは−メタクリルアミド、およびそれらの当業者に周知の方法によって酸性化または四級化された形態、例えば(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、を含む群から選択される;
− 両性イオンタイプのモノマーも使用され得る;これらは同じモノマーにアニオン性およびカチオン性の電荷を併せ持つ。言及され得る両性モノマーの例としては、スルホベタインモノマー、例えばスルホプロピルジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、スルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド、およびスルホプロピル−2−ビニルピリジニウム、ホスホベタインモノマー、例えば、ホスファトエチルトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにカルボキシベタインモノマーが挙げられる。
【0038】
本発明の範囲から逸脱することなく、これらのモノマーの組み合わせにおいて、他のモノマーが使用されてもよく、特に、例として、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、および疎水性アクリルアミド誘導体等の、疎水性の性質を示す、疎水性または親水性モノマーが挙げられる。本発明によって得られるポリマーは直鎖状、分岐鎖状、櫛型、若しくは架橋ポリマー、または他の公知の構造のポリマーである。優先的には、ポリマーは直鎖状または分岐鎖状である。
【0039】
分岐鎖状または架橋ポリマーを得る1つの方法は、重合の間または後に分岐/架橋剤を用いることを含み、場合によって転移剤との組み合わせを用いることを含む。使用され得る分岐/架橋剤は、これらに限定されないが、イオン性タイプの分岐/架橋剤、例えば多価金属塩、ホルムアルデヒド、グリオキサル、または好ましくは、モノマーと共重合する二価イオンタイプの分岐/架橋剤、および好ましくは、例えばメチレンビスアクリルアミド(MBA)等のポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基、例えばビニル、アリル、アクリル、およびエポキシ官能基を有する)が挙げられる。実際には、分岐剤は100万モルのモノマーあたり、5〜1000モル、好ましくは5〜200モルの割合で導入される。
【0040】
転移剤の例としては、これらに限定されないが、イソプロピルアルコール、次亜リン酸ナトリウム、メルカプトエタノールが挙げられる。
【0041】
水溶液中のモノマー濃度は、通常、5〜50重量%の間であり、優先的には15〜35重量%の間である。
【0042】
本発明によって得られるポリマーは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性ポリマーまたはコポリマーであり、これは、水溶性、または分岐若しくは架橋されている場合には水膨潤性である。
【0043】
本発明によれば、調製したポリマーを不溶化するためのあらゆる有機または無機塩を使用することができる。好ましい塩としては、サルフェート、ジヒドロゲンホスフェート、ホスフェート、およびハライドアニオンを含むものが挙げられる。対応するカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、またはアルミニウムが挙げられる。これらの塩の2以上を同時に使用することもできる。
【0044】
塩が存在する場合、水溶液中の塩濃度は、最大でその塩の最大溶解度に相当し、優先的には5〜35重量%の間であり、より優先的には8〜27重量%の間である。
【0045】
有機ポリマーの分散剤または安定剤は、通常、分子量が100〜500,000g/molの間のポリマーである。それは、前述した非イオン性、アニオン性、および/またはカチオン性モノマーから得られるアニオン性、カチオン性、または両性のポリマーまたはコポリマーから選択され得る。通常、本発明のポリマー安定剤は、メインのポリマーの分子量よりも低い分子量を有し、優先的には10,000〜300,000g/molの分子量を有する。
【0046】
特に好適なポリマー安定剤は、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)若しくはその塩、または(メタ)アクリル酸若しくはその塩から得られるアニオン性または両性のポリマーまたはコポリマー、およびこれらのモノマーから得られるコポリマーである。
【0047】
使用され得るポリマー安定剤は、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジアルキルアミノアルキルアクリレートおよびメタクリレート、特にジアルキルアミノエチルアクリレート(DAMEA)およびジアルキルアミノエチルメタクリレート(DAMEMA)、および当業者に周知の方法によって酸性化または四級化されたそれらの形態、ジアルキルアミノアルキル−アクリルアミドまた−メタクリルアミド、および当業者に周知の方法によって酸性化または四級化されたそれらの形態、例えば、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドに基づくポリマーまたはコポリマーが挙げられる。
【0048】
水溶液中での有機ポリマー分散剤または安定剤の濃度は、それが存在する場合、通常30重量%未満であり、優先的には5〜20重量%の間である。
【0049】
当業者に周知の所定の添加剤もまた使用され得る。グリセロール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等の多価アルコールが例として挙げられる。ポリアルキレンエーテルもまた使用され得る。
【0050】
水相中での多価アルコール等のこれらの添加剤の1つの濃度は、通常0〜20重量%であり、優先的には0〜10重量%である。単一の安定剤または安定剤の混合物の使用もまた可能である。
【0051】
1または複数の有機ポリマー分散剤と組み合わせた、および任意選択で多価アルコールタイプの別の添加剤と組み合わせた塩の使用も可能であり、良好な安定性の水分散液を得ることができ、通常好ましい。
【0052】
重合は、当業者に公知のあらゆる方法によって開始される。言及され得る例としては、特に酸化還元対、アゾ化合物、および紫外線等の光照射が挙げられる。
【0053】
当業者であれば、当業者自身の知識および本明細書の記載に基づいて、どのように最良の組み合わせを選択するかを理解できるであろう。
【0054】
本発明の方法によって得られるポリマーは、100,000〜30,000,000g/molの間の分子量を有し、優先的には20,000,000g/mol未満の分子量を有する。本発明の主題はまた、以下の産業:製紙工業(第2の保水剤、脱水剤等として)、水処理(飲料水または排水)、通常の全ての凝固または凝集技術、鉱業、石油産業(原油の二次回収、圧力下降の低減、またはフリクションの低減)、化粧品産業、繊維産業、洗剤製品産業、および当業者にとって同様に適用できると理解され得る、同様の全ての用途における、本発明の方法によって得られる親水性ポリマーの水分散液の使用に関する。本発明の他の特性および有利な点は、以下の記載および非限定的な実施例により、より明白になるであろう。
【実施例】
【0055】
本発明および本発明から得られる有利な点は、以下の実施例から明白であろう。
【0056】
(実施例1)
アクリル酸およびATBSの分散剤コポリマーの12%水溶液105g、アクリルアミドの50%水溶液195.2g、アクリル酸42.4g、硫酸アンモニウム98g、グリセロール10.5g、50%NaOH溶液4.2g、50g/Lの臭素酸ナトリウムを含む水溶液1g、ホルメート0.7g、および水213.3gを共に混合し、その後窒素で脱気し、最後に攪拌しながら35℃まで加熱した。溶液のpHを3.6にした。反応器の内圧を43mbarに達するまで低くした。12gのメタ重亜硫酸ナトリウムを、重合の間中ゆっくり追加した。重合反応により発生した熱が約87gの水の蒸発により吸収されたため、2時間30分で反応を終了することができた。これは試験Dである。
【0057】
他の試験A、B、およびCを行った。結果を表1にまとめた。
【0058】
試験Aは、先行文献において行われた試験であり、大気圧下で10時間という長い時間にわたって行われた水中水型分散液の重合に相当する。
【0059】
試験Bにおいて、出願人は、メタ重亜硫酸の量を2時間30分にわたって定期的に加えることができるように、より迅速にメタ重亜硫酸を加えて、大気圧に保持している間に反応を加速させることを試みた。これは最初の1時間でゲル化を発生させた。
【0060】
試験Cにおいて、出願人は、圧力を80mbarに調節することにより、重合時間を3時間30分まで大幅に短縮させることに成功した。
【0061】
試験Dは、最も良好な結果であり、通常の重合時間に比べて1/4の重合時間をもたらした。
【0062】
試験A、C、およびDの方法は安定な分散液をもたらした。
【0063】
これらの結果はまた、分散液中のポリマー濃度の増加も可能にするので、本発明の方法の有利な点も示している。この増加は、14%の濃度の増加に相当するので、特筆すべきものである。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例2)
DAMEAおよびDADMACの分散剤コポリマーの20%水溶液64.8g、アクリルアミドの50%水溶液121.5g、四級化ジアルキルアミノエチルアクリレート(DAMEA)の80%水溶液42.7g、硫酸アンモニウム161g、グリセロール4.2g、50g/Lの臭素酸ナトリウムを含む水溶液1.6g、ホルメート0.45g、ジアルキルアミノエチルアクリレート塩化ベンジルの80%水溶液12.6g、および水251.3gを共に混合し、その後窒素で脱気し、最後に攪拌しながら35℃まで加熱した。溶液のpHを4〜5の間にした。反応器の内圧を41mbarに達するまで低くし、12gのメタ重亜硫酸ナトリウムを重合の間中ゆっくり追加した。重合反応により発生した熱が約43gの水の蒸発により吸収されたため、2時間30分で反応を終了することができた。これは試験Hである。
【0066】
他の試験E、F、およびGを行った。結果を表2にまとめた。
【0067】
試験Eは、先行文献において行われた試験であり、大気圧下で10時間という長い時間にわたって行われた水中水型分散液の重合に相当する。
【0068】
試験Fにおいて、出願人は、メタ重亜硫酸の量を2時間30分にわたって定期的に加えることができるように、より迅速にメタ重亜硫酸を加えて、大気圧に保持している間に反応を加速させることを試みた。これは最初の1時間でゲル化を発生させた。
【0069】
試験Gにおいて、出願人は、圧力を77mbarに調節することにより、重合時間を3時間15分まで大幅に短縮させることに成功した。
【0070】
試験Hは、最も良好な結果であり、通常の重合時間に比べて1/4の重合時間をもたらした。
【0071】
試験E、G、およびHの方法は安定な分散液をもたらした。
【0072】
これらの結果はまた、分散液中のポリマー濃度の増加も可能にするので、本発明の方法の有利な点も示している。
【0073】
【表2】