(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、
図1〜
図10を参照して実施の形態1によるFET減衰器101〜103について説明する。まずFET減衰器101から説明する。
図1は実施の形態1によるFET減衰器101の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、
(1)FET減衰器101は、90°ハイブリッド1、90°ハイブリッド1の通過端子2に接続する第1の温度補償回路51、90°ハイブリッド1の結合端子3接続する第2の温度補償回路52を備えている。第1の温度補償回路51と第2の温度補償回路52とは、同じ構成である。
(2)第1の温度補償回路51は、第1のFET4、抵抗6(抵抗要素)、ドレイン用電圧供給部、ゲート用電圧供給部40、ゲート端子Gに接続される抵抗7、抵抗7に一端が接続され他端が接地されるキャパシタ8を備える。
(3)ドレイン用電圧供給部30は、ドレインバイアス端子10に接続するドレイン用電源31、フィルタ9を備えている。
(4)ゲート用電圧供給部40は、ゲートバイアス端子15に接続するゲート用電源32、制御電圧生成回路14を備えている。
【0014】
さらに詳しく説明する。温度補償に用いるFET減衰器101は、
図1に示すように、入力端子、出力端子、通過端子2および結合端子3を有する90°ハイブリッド1の通過端子2には、ソース接地された第1のFET4(FET4とも呼ぶ)のドレイン端子Dを抵抗6を介して接続するとともに、結合端子3には、ソース接地された第2のFET5(FET5とも呼ぶ)のドレイン端子Dを抵抗6を介して接続する。また、第1、第2のFET4、5のゲート端子Gは、それぞれ抵抗7とキャパシタ8を介して接地する。さらに、第1、第2のFET4、5のドレイン端子Dには、それぞれフィルタ9を介してドレインバイアス端子10、11からニー電圧以下の電圧を印加し、第1、第2のFET4、5のゲート端子Gには、ポジスタ12(ポジスタは登録商標)と抵抗13からなる制御電圧生成回路14を介してゲートバイアス端子15、16から所望の電圧を印加する構成である。制御電圧生成回路14を介してゲートバイアス端子15、16から印加する「所望の電圧」とは、後述のように、FET減衰器101が配置された環境温度の上昇と共に負の側へ線形に増加する電圧である。
【0015】
フィルタ9は直流ではインピーダンスがほぼ0Ωで、マイクロ帯では非常に高インピーダンスとなるような、
図1に示すような例えばインダクタとキャパシタからなるローパスフィルタの構成のものである。ドレインバイアス端子10、11にドレイン用電源31から正の電圧を印加することにより、FET4,5のドレイン端子Dに低損失で電圧を印加することができる。
また、第1、第2のFET4,5のゲート端子Gにゲート用電源32からの電圧を印加するための制御電圧生成回路14は、高温になるに従い抵抗値が直線的に増加するポジスタ12(ポジスタは登録商標)と、抵抗13とから構成されている。このため、この制御電圧生成回路14のゲートバイアス端子15、16に、ゲート用電源32から一定の負の電圧を印加した場合、FET4,5のゲート端子Gには、温度に対して直線的に負の方向に大きくなる電圧(温度上昇に伴って線形に負の方向に大きくなる電圧)が現れる。
【0016】
図2に、実施の形態1によるFET減衰器101の第1の温度補償回路51(第2の温度補償回路52も同様)の基本構成を示す。この基本構成は、第1のFET4(第1のトランジスタ)のドレイン端子Dに抵抗6が直列接続された構成となる。また、Rdsは第1のFET4のドレイン・ソース間の内部抵抗であり、Vgsは第1のFET4に印加するゲート電圧、VdsはFET4に印加するドレイン電圧である。第1のFET4に流れるドレイン電流IdsはVgs及びVdsに依存する。
図3に、ゲート電圧Vgsをパラメータにした時のドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Idsの特性を示す。実施の形態1〜5のFET減衰器では、FETのドレイン電圧として、ドレイン電圧に対してドレイン電流がほぼ直線的に変化する電圧領域(ニー電圧)以下に選んでいる。
【0017】
図4に、ドレイン電圧をニー電圧以下に設定した場合のゲート電圧に対するドレイン・ソース間の内部抵抗Rdsの一例を示す。ゲート電圧が−0.2Vから−0.8Vでは、ドレイン・ソース間の内部抵抗Rdsは緩やかに増加し、−0.8Vから−1.0Vでは、急峻に増加する特性を示す。すなわち、ゲート電圧に対して、Rdsは非直線的に変化する。
【0018】
図5に、第1のFET4のドレイン端子側から見た、第1のFET4の等価回路を示す。出力インピーダンスはドレイン・ソース間の内部抵抗Rdsと、ドレイン・ソース間の内部キャパシタCdsとの並列回路として表すことができる。マイクロ波の中でも特に低周波(例えばL帯)においては、Rdsに比べCdsに起因するインピーダンスが非常に大きくなるため、Cdsの影響が無視でき、ドレイン・ソース間の内部抵抗Rdsのみと見なすことができる。
第1のFET4に印加するドレイン電圧Vdsをニー電圧以下に設定し、ゲート電圧Vgsを変化させることにより、Rdsが変化する等価回路として表すことができる。このため、
図2に示す抵抗6を含んだ反射係数Γoutは、下記の数式1で表すことができる。ここで、Rは抵抗6の値、Z
0は特性インピーダンス(通常50Ω)である。この式から明らかなようにΓoutはRdsとRに依存する。
【0020】
図6に、数式1を用いて計算した抵抗6の値をパラメータにした時のゲート電圧に対するΓoutの計算結果を示す。図中、実線はR=75Ω、破線はR=50Ω、点線はR=100Ωの場合である。いずれの抵抗の場合においても、ゲート電圧を−0.2Vから−1.0Vの負の方向に大きくすることで、Γoutが変化し、ゲート電圧に対して傾きが次第に大きくなるような非直線性を示す。また、抵抗6が大きいほど、ゲート電圧−0.2VではΓoutが大きくなるのに対してゲート電圧−1.0Vの時はほぼ一定の値を示す。すなわち、抵抗6によりΓoutの傾きを変えることができる。なお、FET4に対して説明したが、FET5(第2のトランジスタ)についても同様の動作となる。
【0021】
次に実施の形態1によるFET減衰器101の動作について説明する。
(1)
図1において入力端子からマイクロ波が入力された場合、90°ハイブリッド1の通過端子2と結合端子3とにそれぞれ等振幅でマイクロ波が分配される。
(2)分配されたマイクロ波はそれぞれの抵抗6を介して第1、第2のFET4、5のドレイン端子Dに入力され、そこでマイクロ波の一部がそれぞれ反射される。
(3)次にFET4,5で反射されたマイクロ波の一部が90°ハイブリッド1で合成され、出力端子に出力される。
(4)出力されるマイクロ波は、第1、第2のFET4、5の反射係数Γoutに依存し、FET減衰器101の減衰特性は反射係数Γoutとほぼ等価である。
【0022】
図7に、実施の形態1によるFET減衰器101のゲート電圧Vgsに対する減衰特性を示す。図中、実線は実施の形態1による減衰特性、破線は目標値、点線は参考までに第1、第2のFET4,5に印加するドレイン電圧Vdsをニー電圧よりも大きく設定した場合の減衰特性である。
【0023】
第1、第2のFET4、5のドレイン端子Dに印加する電圧をニー電圧以下にした場合、ゲート端子Gに印加する電圧を、
低温から常温に対応した−0.2Vから−0.6V、
常温から高温に対応した−0.6Vから−1.0V、
に設定することで、FET減衰器101の減衰量を低温から常温までは緩やかに小さくなり、常温から高温までは急峻に小さく、非直線的に変化させることができる。
なお、第1、第2のFET4、5に印加するドレイン電圧Vdsをニー電圧よりも大きく設定した場合、ゲート電圧を−0.2Vから−1.0Vの範囲では、傾きがほぼ一定の直線的な減衰特性となり、目標値が得られない。
【0024】
図8に、実施の形態1によるFET減衰器101を使用した場合の、衛星搭載マイクロ波機器の構成及び利得の温度特性を示す。
図8(a)は、マイクロ波機器として多数の単位増幅器を縦続接続して構成したマイクロ波帯の増幅器に、FET減衰器101を使用した場合の構成例である。
図8(b)は、マイクロ波機器の温度に対する利得特性であり、図中、実線はFET減衰器101を使用した場合、点線は温度補償を行わない場合の特性である。FET減衰器101を使用することによって低温から高温においてほぼ一定の利得特性を得ることができる。
【0025】
以上のように、FET減衰器101においては、
(1)第1、第2のFET4、5のドレイン端子Dに印加する電圧をニー電圧以下に設定し、
かつ、
(2)ポジスタ12(ポジスタは登録商標)と抵抗13からなる制御電圧生成回路14を介して、ゲート端子Gに温度(FET減衰器101が配置される環境の温度)に対して、直線的(線形)に負の方向に大きくなる電圧を印加する。
(3)上記(1)(2)により、FET減衰器101では、減衰量が低温から常温では緩やかに低下し、常温から高温では急峻に低下する特性が得られる。従って、
図8(b)の実線で示す温度に対して一定の利得が得られる衛星搭載マイクロ波機器を得ることができる。
(4)上記(3)の効果が得られるのであれば、ゲート端子Gに、直線的(線形)に正の方向に大きくなる電圧を印加するFETでも構わない。
【0026】
図9に、FET減衰器101とは別の構成の、実施の形態1によるFET減衰器102の構成を示す。FET減衰器102の第2の温度補償回路52−1からゲート用電圧供給部40をなくし、第2の温度補償回路52−1は、第1の温度補償回路51−1のゲート用電圧供給部40から供給を受ける構成である。具体的には次の様である。
【0027】
FET減衰器102では、FET4,5のゲート端子Gに直列接続されているそれぞれの抵抗7の一端を、共通に一つのキャパシタ8で高周波的に接地した。また、制御電圧生成回路14としては、
図1ではFET4、5のゲート端子Gに印加するためにそれぞれに制御電圧生成回路14(それぞれのゲート用電圧供給部40)を設けていたが、ここでは一つの制御電圧生成回路14(ゲート用電圧供給部40)を用い、それぞれの第1、第2のFET4、5にゲート電圧を印加する構成である。
【0028】
FET減衰器102のような回路構成においても、FET減衰器の動作としては
図1とほぼ同様であるため、低温から常温では緩やかに低下し、常温から高温では急峻に低下する特性が得られ、高精度の利得の温度補償を実現するこができる。このように、FET減衰器102では一つのキャパシタ8と、制御電圧生成回路14(ゲート用電圧供給部)で済み、部品点数、端子数が削減でき回路を小型化することが可能である。
【0029】
なお、
図9では第2の温度補償回路52−1からゲート用電圧供給部40をなくし、第2の温度補償回路52−1が第1の温度補償回路51−1のゲート用電圧供給部40から供給を受ける構成であるが、反対に、第1の温度補償回路51−1からゲート用電圧供給部40をなくし、第1の温度補償回路51−1が第2の温度補償回路52−1のゲート用電圧供給部40から供給を受ける構成でもよい。
【0030】
図10に、FET減衰器101、102とは別の構成の、実施の形態1によるFET減衰器103の構成を示す。FET減衰器103の第1の温度補償回路51−2、第2の温度補償回路52−2は、FET減衰器101に対して以下の構成である。
【0031】
FET減衰器103では、
図1において第1、第2のFET4、5のドレイン端子に接続している抵抗6の代わりに、第1、第2のFET4、5のソース端子Sに抵抗17(抵抗要素)を接続した構成である。このようにドレイン端子Dに接続されている抵抗6の代わりにソース端子Sに抵抗17を接続した場合においても、
図2と同様に、FET4のドレイン・ソース間の抵抗Rdsと抵抗Rが直列接続された等価回路として表すことができ、両者は等価である。したがって、FET減衰器103の動作としては
図1のFET減衰器101、及び
図9のFET減衰器103と等価であり、高精度の利得の温度補償を実現することができる。
【0032】
実施の形態2.
以下、
図11を参照して、実施の形態2によるFET減衰器201について説明する。
図11は、実施の形態2によるFET減衰器201の構成を示す図である。FET減衰器201では、第2の温度補償回路52−3の第2のFET5のソース端子Sをキャパシタ18を介して高周波的に接地するとともに、第2のFET5のソース端子とキャパシタ18間と、第1の温度補償回路51−3の第1のFET4のドレインバイアス端子10とを、直流的に経路28(接続部)で接続した構成である。
【0033】
このように構成することにより、ドレインバイアス端子11からドレイン電圧を印加することにより、ドレイン電流はフィルタ9を介して、第2のFET5のドレイン・ソース間に流れる。さらにソースに流れた電流はフィルタ9を介してFET4のドレイン・ソース間に流れるようになる。すなわち、FET4とFET5には全く同じドレイン電流が流れる。
【0034】
これにより第1、第2のFET4、5を流れるドレイン電流値が等しくなるため、第1、第2のFET4、5のRF特性のばらつきを小さく抑えることができ、FET減衰器103の入力端子及び出力端子のリターンロス特性を良くすることが可能である。また、この構成のFET減衰器103ではドレイン電流がFET一つ分に相当するため、
図1、
図9に示したFET減衰器101,102に比べドレイン電流を半分にでき、低消費電流化を図ることもできる。
【0035】
なお、
図11の説明ではキャパシタ18を、第2の温度補償回路52−3の第2のFET5のソース端子Sに接続した場合を示したが、第1の温度補償回路51−3のFET4のソース端子Sに接続した場合でも同等である。
【0036】
実施の形態3.
図12を参照して、実施の形態3について説明する。
図12は、実施の形態3によるFET減衰器301の構成を示す図である。
図12のFET減衰器301では、温度補償回路53がサーキュレータ60の端子19に接続されている。FET減衰器301の温度補償回路53は、
図1の第1の温度補償回路51の抵抗6に、さらにDCカットキャパシタ27を接続した構成である。なおサーキュレータ60は、入力端子(第1端子)、端子19(第2端子)、出力端子(第3端子)の3端子を有し、入力端子への入力を端子19に出力し、端子19への入力を出力端子に出力する。
【0037】
FET減衰器301では3端子を有するサーキュレータ60の一つの端子19(第2端子)に、DCカットキャパシタ27及び抵抗6を介して、ソース接地された第3のFET20のドレイン端子を接続する。
また、第3のFET20のゲート端子Gを抵抗7とキャパシタ8を介して接地するとともに、第3のFET20のドレイン端子Dにはフィルタ9を介してドレインバイアス端子10からニー電圧以下の電圧を印加し、第3のFET20のゲート端子Gにはポジスタ12(ポジスタは登録商標)と抵抗13からなる制御電圧生成回路14を介してゲートバイアス端子15から所望の電圧を印加する構成である。
【0038】
この構成のFET減衰器301ではサーキュレータ60の入力端子からマイクロ波が入力された場合、サーキュレータ60の端子19にマイクロ波が出力される。出力されたマイクロ波はDCカットキャパシタ27及び抵抗6を介して第3のFET20のドレイン端子Dに入力され、そこでマイクロ波の一部が反射される。反射されたマイクロ波の一部は、抵抗6及びDCカットキャパシタ27を介してサーキュレータ60の出力端子から出力される。第3のFET20のドレイン端子Dに印加するためのフィルタ9及び制御電圧生成回路14は、
図1に示した第1、第2のFET4、5に使用したものと同じである。この構成のFET減衰器301においても、
図1で説明したFET減衰器101と同じ動作であり、高精度の利得の温度補償が可能である。
【0039】
実施の形態3のFET減衰器301では90°ハイブリッド1の代わりにサーキュレータ60を用いることにより、一つの第3のFET20で済む(一つの温度補償回路53で済む)ため、小型化が可能であるとともに、低価格化を図ることが出来る。
【0040】
実施の形態4.
以下、
図13〜
図15を参照して実施の形態4について説明する。
図13は、実施の形態4によるFET減衰器401の構成を示す図である。FET減衰器401の第1の温度補償回路51−4、第2の温度補償回路52−4は実施の形態1のFET減衰器101のものと同様であるが、さらに、それぞれ伝送線路21を備えている点が異なる。つまり相違点は、第1のFET4のドレイン端子Dに接続された抵抗6の他端と90°ハイブリッド1の通過端子2との間、および、第2のFET5のドレイン端子Dに接続された抵抗6の他端と90°ハイブリッド1の結合端子3との間に、それぞれ「電気長が90°、特性インピーダンスZ
L」を有する伝送線路21を接続する。
【0041】
図14に、FETのドレイン端子Dに、抵抗6と伝送線路21を接続した場合の基本構成を示す。この構成において、抵抗6と電気長が90°、特性インピーダンスZ
Lを有する伝送線路21を介してドレイン端子側を見たインピーダンスZoutは「数式2」により、また反射係数Γoutは「数式3」により算出される。これらの式から、反射係数Γoutはドレイン・ソース間の内部抵抗Rds、抵抗6の値Rおよび特性インピーダンスZ
Lに依存する。
【0044】
図15に、伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lをパラメータにした場合の実施の形態4によるFET減衰器401のゲート電圧に対する反射係数Γoutを示す。図中、実線は伝送線路21がない場合、破線は伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lが40Ωの場合、点線は伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lが60Ωの場合である。ゲート電圧を−0.2Vから−1.0Vの負の方向に大きくすることで、反射係数Γoutが変化し、ゲート電圧に対して非線形的に傾きが大きくなる。
【0045】
また、伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lが小さいほど、ゲート電圧−0.2Vでは反射係数Γoutが大きくなるのに対して、ゲート電圧−1.0Vの時はほぼ一定の値を示す。すなわち、伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lにより反射係数Γoutの傾きを変えることができる。なお、第1のFET4に対して説明したが、第2のFET5についても同様の動作となる。
抵抗6の他に伝送線路21の特性インピーダンスZ
Lでもゲート電圧に対する反射係数Γoutの傾きを変えることができる。このため、温度補償に必要な減衰特性の微調整が可能となり、FET減衰器401をマイクロ波衛星搭載機器に使用した場合、より高精度に利得の温度補償を行うことができる。
【0046】
実施の形態5.
以下、
図16〜
図18を参照して実施の形態5について説明する。
図16は、実施の形態5によるFET減衰器501の構成を示す図である。FET減衰器501の第1の温度補償回路51−5,第2の温度補償回路52−5は、
図1の実施の形態1に示した第1の温度補償回路51,第2の温度補償回路52の第1、第2のFET4、5のドレイン・ソース間に、インダクタ22とキャパシタ23との直列回路(直列接続部)を接続した構成である。キャパシタ23の値はマイクロ波帯で非常に低インピーダンスとなるような大容量のものを用いる。
【0047】
図17に、ソース接地した第1のFET4をドレイン端子側から見た場合の等価回路を示す。マイクロ波のうち低周波(例えばL帯)においては、
図5で示したようにRdsに比べCdsに起因するインピーダンスが非常に大きくなるため、Cdsの影響が無視でき、ドレイン・ソース間の内部抵抗Rdsのみとみなすことができる。しかし、Cdsの影響が無視できなくなる高周波(例えばX帯)では、Cdsが反射特性に影響を及ぼし、所望の減衰特性が得られなくなる。このため、Cdsと並列共振するようなインダクタ22を装荷することにより、低周波帯と同様に高周波帯においても第1のFET4の出力インピーダンスは等価的にRdsのみで表すことができる。これにより、実施の形態1から実施の形態4と同様にゲート電圧に対して、非線形に減衰量を可変することができる。このFET減衰器501では特にCdsの影響が無視できなくなるマイクロ波のうちの高周波帯において有効である。
【0048】
なお、以上の実施の形態1〜5では、第1から第3のFET4、5、20にゲート電圧を印加するための制御電圧生成回路14として、ポジスタ12(ポジスタは登録商標)と抵抗13からなる分圧回路について述べた(
図1、
図9〜
図11、
図12〜13、
図16)。
図18に制御電圧生成回路14として、他の実施例の構成を示す。
図18(a)は高温になるに従い抵抗が低下するサーミスタ25と抵抗24からなる分圧回路、また
図18(b)はサーミスタ25の代わりにダイオード26で構成した場合である。これらの制御電圧生成回路14においても、ポジスタ12(ポジスタは登録商標)と抵抗13からなる分圧回路と同様に、高温になるに従い、ゲート電圧が負の方向に大きくなる特性を示し、これらの制御電圧生成回路14を使用することも可能である。
【0049】
以上の実施の形態1〜5のように、FET減衰器に用いられるFETはニー電圧以下の動作電圧においては、ゲート電圧に対して、FETのドレイン端子とソース端子間の抵抗が非直線的に変動する。これにより、ゲート電圧を温度上昇に対して直線的(線形)に変化させた場合でも減衰量が非直線的に変化するので、低温から常温では緩やかに低下し、常温から高温では急峻に低下する非直線的な特性を得られる。これにより、衛星搭載マイクロ波機器の利得の温度補償を高精度に行うことができる。また、このFET減衰器に使用する制御電圧生成回路としては、温度に対して直線的に制御電圧が変動するサーミスタ、ポジスタ(登録商標)あるいはダイオードと抵抗からなる簡便な分圧回路で済むため、従来のように構成が複雑になり、回路規模が大きくなることはない。
【0050】
以上の実施の形態1〜5におけるFETは
図7の「実施の形態」の効果が得られるものであればどのようなものでも構わないし、FETでなくても構わない。例えば高電子移動度トランジスタ(HEMT)でもよい。なおFETとしては、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、MESFET(Metal−Semiconductor Field Effect Transistor)がある。
【0051】
以上、本発明の実施の形態1〜5について説明したが、これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。