(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188565
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】オイルレベルゲージ挿入部構造
(51)【国際特許分類】
F02F 7/00 20060101AFI20170821BHJP
F01M 11/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
F02F7/00 P
F01M11/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-263182(P2013-263182)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-117672(P2015-117672A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】新川 智
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−063808(JP,U)
【文献】
特開2000−240423(JP,A)
【文献】
特開2004−019572(JP,A)
【文献】
特開2004−036437(JP,A)
【文献】
特開2009−185637(JP,A)
【文献】
特開2012−057498(JP,A)
【文献】
特開2012−229625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00−13/06
F02F 1/00−1/42
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに固定されるロアカバーと、該ロアカバーの上面に接合されるアッパカバーと、を備えたシリンダヘッドカバーに形成されるオイルレベルゲージ挿入部構造において、
オイルレベルゲージ挿入部は、上記アッパカバーに設けられ、オイルレベルゲージが挿入される筒状のアッパ挿入筒と、該アッパ挿入筒の周囲のアッパカバー側から上記ロアカバーの上面側に向かって突出する突条壁と、上記ロアカバーに設けられ、上記アッパ挿入筒が挿入される筒状のロア挿入筒と、を有し、
上記アッパ挿入筒と上記突条壁との間で上記ロア挿入筒の上端と上記アッパカバーとが接合され、
上記ロア挿入筒の上端と上記アッパカバーとの接合部分は、その外周側が上記突条壁によって覆われ、その内周側が上記アッパ挿入筒によって覆われていることを特徴とするオイルレベルゲージ挿入部構造。
【請求項2】
上記ロア挿入筒の上端が全周に亙って連続して上記アッパカバーに接合されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルレベルゲージ挿入部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロアカバーとアッパカバーとからなるシリンダヘッドカバーに形成されたオイルレベルゲージ挿入部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、上下に2分割されたシリンダヘッドカバーのうち、上方側ヘッドカバーにオイルレベルゲージが挿入される筒状のオイルレベルゲージ保持部が形成され、下方側ヘッドカバーにオイルレベルゲージ保持部のレベルゲージ挿入孔と連続するゲージ孔が貫通形成された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−229625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような特許文献1においては、筒状のオイルレベルゲージ保持部の周囲に上方側ヘッドカバーと下方側ヘッドカバーとの接合点が設定されていない。そのため、オイルレベルゲージ保持部を所期位置で、かつ所期形状で保持しにくく、オイルレベルゲージ保持部の中心軸と、下方側ヘッドカバーに形成されたレベルゲージ挿入孔の中心軸やシリンダヘッドに形成されたレベルゲージ挿入孔の中心軸等とのずれによりオイルレベルゲージの挿入性が悪化してしまう虞がある。
【0005】
つまり、特許文献1に開示されるようなシリンダヘッドカバーにおいては、オイルレベルゲージ保持部の周囲に、どのように上方側ヘッドカバーと下方側ヘッドカバーとの接合点を設定するかについて十分な検討がなされているとはいえず、オイルレベルゲージの挿入部を設けるにあたって改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオイルレベルゲージ挿入部構造は、シリンダヘッドに固定されるロアカバーと、該ロアカバーの上面に接合されるアッパカバーと、を備えたシリンダヘッドカバーに形成されるものであり、オイルレベルゲージ挿入部は、上記アッパカバーに設けられ、オイルレベルゲージが挿入される筒状のアッパ挿入筒と、該アッパ挿入筒の周囲のアッパカバー側から上記ロアカバーの上面側に向かって突出する突条壁と、上記ロアカバーに設けられ、上記アッパ挿入筒が挿入される筒状のロア挿入筒と、を有し、上記アッパ挿入筒と上記突条壁との間で上記ロア挿入筒の上端と上記アッパカバーとが接合され、上記ロア挿入筒の上端と上記アッパカバーとの接合部分は、その外周側が上記突条壁によって覆われ、その内周側が上記アッパ挿入筒によって覆われていることを特徴としている。
【0007】
また、上記ロア挿入筒の上端は、全周に亙って連続するよう上記アッパカバーに接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロア挿入筒の上端とアッパカバーとの接合部分を、アッパ挿入筒の壁面を利用して覆い隠すことができる。そのため、アッパ挿入筒を利用せずにロア挿入筒の上端とアッパカバーとの接合部分を覆い隠す場合に比べて、ロア挿入筒の上端とアッパカバーとの接合部分を覆い隠す構造をアッパ挿入筒の半径方向で小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るオイルレベルゲージ挿入部構造が適用されたシリンダヘッドカバーの平面図。
【
図2】本発明の第1実施例のオイルレベルゲージ挿入部構造を示す断面図であり、
図1のA−A線に沿った断面図。
【
図3】第1比較例のオイルレベルゲージ挿入部構造を示す断面図。
【
図4】第2比較例のオイルレベルゲージ挿入部構造を示す断面図。
【
図5】本発明の第2実施例のオイルレベルゲージ挿入部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のオイルレベルゲージ挿入部構造が適用されたシリンダヘッドカバー1の平面図である。なお、本実施例におけるシリンダヘッドカバー1は、直列3気筒の内燃機関に適用されるものである。
【0011】
シリンダヘッドカバー1は、樹脂材料からなり、ロアカバー2と、ロアカバーよりも一回り小さいアッパカバー3と、から大略構成されている。シリンダヘッドカバー1の中央には、気筒列方向に沿って、点火プラグ(図示せず)が挿入されるプラグ挿入穴4が、ロアカバー2及びアッパカバー3を貫通するように形成されている。
【0012】
ロアカバー2は、型成形されてなり、細長い矩形の深皿形状を呈し、その外周縁の全周に、シリンダヘッドに取り付けられる鍔状のフランジ5が形成されている。
【0013】
アッパカバー3は、型成形されてなり、細長い矩形の浅皿形状を呈し、ロアカバー2の上面に振動溶着により接合されている。
【0014】
このシリンダヘッドカバー1は、ブローバイガス中のオイルミストを分離するオイルセパレータ6を有している。オイルミストセパレータ6は、ロアカバー2とアッパカバー3とによって画成される気筒列方向に沿った空間を利用したものであって、3つのプラグ挿入穴4の両側の2箇所に形成されている。
【0015】
そして、本実施例においては、一方のオイルミストセパレータ6aを上下に貫通するように、オイルレベルゲージが挿入されるオイルレベルゲージ挿入部7が形成されている。
【0016】
本願発明の第1実施例のオイルレベルゲージ挿入部7は、
図2に示すように、アッパカバー3側に形成されたアッパ挿入筒11及び突条壁12と、ロアカバー2側に形成されたロア挿入筒13と、を有している。
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図である。
【0017】
アッパ挿入筒11は、オイルレベルゲージ(図示せず)が挿入される筒状のものであり、シリンダヘッド側(
図2おける下側)ほど内径が小さくなるように、内周面がテーパ状に形成されている。
【0018】
突条壁12は、断面略矩形を呈し、ロアカバー2の上面側に向かってアッパカバー3から所定長さ突出し、アッパ挿入筒11の周囲全周に亙って連続するよう環状に形成されている。
【0019】
ロア挿入筒13は、アッパ挿入筒11が挿入される筒状のものであり、アッパ挿入筒11と突条壁12との間で、その上端が全周に亙って連続してアッパカバー3に振動溶着により接合されている。つまり、アッパ挿入筒11の外周側近傍位置において、アッパカバー3とロアカバー2とが接合されている。ロア挿入筒13の上端面には、溶着リブ14が全周に亙って突出形成されている。溶着リブ14は、振動溶着の際に溶けてアッパカバー3に接合されるものである。ロア挿入筒13の下端内周面には、アッパ挿入筒11の下端の外周縁を受ける鍔状のフランジ部15が突出形成されている。
【0020】
なお、
図2中の16は、シリンダヘッド側のカムブラケット17に形成されたオイルレベルゲージ挿入穴である。
【0021】
図3及び
図4は、本願発明に対する比較例のオイルレベルゲージ挿入部構造をそれぞれ示したものである。なお、上述した本願発明の第1実施例と同一の構成の要素については、説明の便宜上、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図3に示す第1比較例のオイルレベルゲージ挿入部21は、アッパカバー3に形成された筒状のアッパ挿入筒23の下端とロアカバー2とが振動溶着により接合された構成となっている。
【0023】
第1比較例におけるロアカバー2には、オイルレベルゲージが挿入されるオイルレベルゲージ挿入穴25と、このオイルレベルゲージ挿入穴25の外周縁近傍に全周に亙って突出形成された溶着リブ26と、が形成されている。この溶着リブ26は、振動溶着の際に溶けてアッパ挿入筒23の下端に接合される。
【0024】
このような第1比較例においては、振動溶着の際に、溶着リブ26とアッパ挿入筒23との接合部分の内周側及び外周側にそれぞれ溶着リブ26から溶けたバリが生じる。これらのバリの拡散を防止し、当該バリを覆い隠すためのリブ27、28をアッパ挿入筒23の下端面に設定しようとすると、その分アッパ挿入筒23の肉厚が厚くなってしまう。つまり型成形時のアンダーカットを考慮すると、アッパ挿入筒23の肉厚がリブ27、28を含めた厚さとなり、アッパカバー3を型成形した際にアッパ挿入筒23にひけが発生し易くなる。そのため、オイルレベルゲージが挿入されるアッパ挿入筒23の形状が安定しなくなる虞がある。
【0025】
また、この第1比較例では、アッパ挿入筒23に溶着リブ26が接合される構造となっているため、振動溶着時にアッパ挿入筒23に大きな保持力(加圧力)が作用することになり、この点からもアッパ挿入筒23の肉厚を厚くする必要があり、アッパ挿入筒23にひけが発生し易くなる。
【0026】
図4に示す第2比較例のオイルレベルゲージ挿入部31は、アッパカバー3に形成された筒状のアッパ挿入筒33の外周側で、ロアカバー2に形成された筒状のロア挿入筒35の上端とアッパカバー3とが振動溶着により接合された構成となっている。
【0027】
第2比較例においては、アッパ挿入筒33の外周側に、2つの環状の突条壁36、37が突出形成され、ロア挿入筒35の上端面に全周に亙って溶着リブ38が突出形成されている。ロア挿入筒35上端の溶着リブ38は、振動溶着の際に溶けてアッパ挿入筒33の外側に位置する突条壁36、37間でアッパカバー3に接合される。
【0028】
このような第2比較例においては、振動溶着の際に、溶着リブ38とアッパカバー3との接合部分の内周側及び外周側にそれぞれ溶着リブ38から溶けたバリが生じる。これらのバリは、アッパカバー3に設けられた2つの突条壁36、37によって拡散が防止され、かつ覆い隠すことができる。
【0029】
しかしながら、2つの突条壁36、37をアッパ挿入筒33の外側に間隔を空けて設ける必要があり、これら2つの突条壁36、37を含めると、オイルレベルゲージ挿入部31を形成するために必要なスペースは大きくなってしまい、シリンダヘッドカバー1の設計自由度が小さくなる虞がある。
【0030】
一方、上述した第1実施例のオイルレベルゲージ挿入部7においては、ロア挿入筒13の上端とアッパカバー3との接合部分を、アッパ挿入筒11の壁面を利用して覆い隠すことができる。そのため、アッパ挿入筒11を利用せずにロア挿入筒13の上端とアッパカバー3との接合部分を覆い隠す場合(例えば、上述の第2比較例)に比べて、ロア挿入筒13の上端とアッパカバー3との接合部分を覆い隠す構造をアッパ挿入筒11の半径方向で小さくすることができる。つまり、アッパ挿入筒11の周囲の設計自由度を向上させることができる。例えば、第1実施例のように、アッパ挿入筒11の位置が、シリンダヘッドカバー1の裏側に形成されたオイルミストセパレータ6と重なるような場合であっても、ロア挿入筒13の上端とアッパカバー3との接合部分を覆い隠す構造をアッパ挿入筒11の半径方向で小さくすることができるので、オイルミストセパレータ8の容積を十分確保することが可能となり、オイルミストセパレータ8の性能悪化を防止することができる。
【0031】
また、アッパ挿入筒11の下端をロアカバー2に接合するような構成(例えば、上述の第1比較例)に比べ、アッパ挿入筒11の肉厚を相対的に薄く設定することが可能となり、アッパ挿入筒11にひけが発生することを抑制できる。そのため、アッパ挿入筒11の寸法精度が向上し、オイルレベルゲージの挿入性やシール性を向上させることができる。
【0032】
そして、アッパ挿入筒11の外周側近傍位置で、アッパカバー3とロアカバー2とを接合することで、筒状のアッパ挿入筒11を所期位置で、かつ所期形状で保持し易くなり、アッパ挿入筒11の中心軸とシリンダヘッド側のオイルレベルゲージ挿入孔16との中心軸とのずれが抑制され、オイルレベルゲージの挿入性が向上する。
【0033】
図5は、本発明の第2実施例におけるオイルレベルゲージ挿入部41を示している。この
図5は、
図1のA−A線に沿った位置に相当する断面図である。
【0034】
この第2実施例のオイルレベルゲージ挿入部41は、上述した第1実施例のオイルレベルゲージ挿入部7と略同一構成となっているが、ロア挿入筒13先端の溶着リブ14とアッパカバー3との接合部分の内周側に生じる溶着リブから溶け出したバリは、一部区間でアッパ挿入筒11の壁面でなく、突条壁12よりもアッパ挿入筒11側(内周側)に位置する第2突条壁42によって覆い隠されている。また、第2突条壁42が設けられた区間では、ロア挿入筒13のフランジ部15も切り欠かれている。
【0035】
オイルレベルゲージ挿入部41周辺のレイアウト上の制約がアッパ挿入筒11の外側全周ではない場合には、アッパ挿入筒11外側のアッパ挿入筒11周方向に沿った一部区間に、アッパカバー3から突出する第2突条壁42を設け、当該一部区間では、突条壁12と第2突条壁42との間で、溶着リブ14をアッパカバー3に接合するようにしてもよい。
【0036】
このような第2実施例のオイルレベルゲージ挿入部41においても、上述した第1実施例のオイルレベルゲージ挿入部と略同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
なお、上述した各実施例においては、ロア挿入筒13の上端が全周に亙って連続してアッパカバー3に対して振動溶着されているが、例えば、オイルレベルゲージ挿入部7、41の一部がオイルミストセパレータ6から外れた位置に設定される場合等には、ロア挿入筒13の上端が間欠的にアッパカバー3に対して接合(溶着)された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…シリンダヘッドカバー
2…ロアカバー
3…アッパカバー
6…オイルミストセパレータ
7…オイルレベルゲージ挿入部
11…アッパ挿入筒
12…突条壁
13…ロア挿入筒
14…溶着リブ
16…オイルレベルゲージ挿入穴
17…カムブラケット