特許第6188572号(P6188572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188572
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像読取方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20170821BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20170821BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170821BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20170821BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H04N1/04 101
   H04N1/12 Z
   H04N1/028 Z
   G06T1/00 430C
   G03B27/54 A
   G03B27/50 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-271852(P2013-271852)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126505(P2015-126505A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】清須美 忠浩
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−178213(JP,A)
【文献】 特開2012−199693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
G03B 27/50
G03B 27/52 − 27/56
G06T 1/00
H04N 1/024 − 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動原稿給送部の画像読取箇所を原稿搬送方向の前後で挟むように対称の位置に配置された二つの光源を用いて原稿の画像を読み取る画像読取部を備えた画像読取装置であって、
コピー指示可能な操作画面上に光量調整キーを表示する表示受付手段と、
前記光量調整キーが押され、さらに読取開始キーが押されると前記自動原稿給送部に載置された白紙を搬送し、画像読取用の前記二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得する光量データ取得手段と、
前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定する光量データ判定手段と、
前記判定の結果、両者の光量データは同等でない場合に、小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを同等にする光量調整手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光量データ判定手段は、前記一方の光量データから他方の光量データを減算した差分データを算出し、前記差分データが正負の値か略ゼロかを判定することで、両者の光量データは同等か否かを判定する
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記光量調整手段は、前記光量データ判定手段で前記一方の光量データと前記他方の光量データとを比較したときの、大きい光量データを、前記小さい光量データで除算した除算値を補正倍率として算出し、前記小さい光量データを取得した光源の照射光量に、前記補正倍率を乗算した乗算値を新たな照射光量として算出し、前記小さい光量データを取得した光源を、前記新たな照射光量で点灯するように設定する
請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
請求項1−3いずれか一項に記載の画像読取装置と、前記画像読取部によって読み取られた原稿の画像データに基づいてトナー像を形成する画像形成部とを備えた画像形成装置。
【請求項5】
自動原稿給送部の画像読取箇所を原稿搬送方向の前後で挟むように対称の位置に配置された二つの光源を用いて原稿の画像を読み取る画像読取部を備えた画像読取装置の画像読取方法であって、
コピー指示可能な操作画面上に光量調整キーを表示する表示受付ステップと、
前記光量調整キーが押され、さらに読取開始キーが押されると前記自動原稿給送部に載置された白紙を搬送し、画像読取用の前記二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得するステップと、
前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定するステップと、
前記判定の結果、両者の光量データは同等でない場合に、小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを同等にするステップと
前記二つの光源の光量データを同等にした後、前記自動原稿給送部で搬送させた原稿の画像を前記画像読取部で読み取るステップと
を備えることを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像読取方法に関し、詳しくは、原稿が浮いた状態で搬送されても、当該浮きに対応する影が画像に入り難い画像読取装置及び画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ADF(Auto Document Feeder)によって原稿を搬送しながら読み取る画像読取装置が存在する。ここで、従来の画像読取装置は、紙厚が一定であれば浮きの生じ方も同じであることを前提としている。しかしながら、浮きは原稿の搬送中にランダムに変動し、同じ紙厚であっても浮きの生じ方は必ずしも完全には一致しない。そのため、従来の画像読取装置によると、搬送中にランダムに変動する浮きの程度に応じて適切に補正を行うことは出来ないという問題がある。
【0003】
前記問題を解決するために、特開2010−87628号公報(特許文献1)には、原稿を読み取って画像データを出力するラインセンサと、前記画像データのいずれかのラインを基準ラインとし、前記画像データの1又は複数のラインからなるライン群毎に、当該ライン群中の各画素の画素濃度を当該ライン群中の最大画素濃度と前記基準ライン中の最大画素濃度との比に応じて補正する補正手段とを備える画像読取装置が開示されている。これにより、原稿の浮きによる影響を適切に補正できるとしている。
【0004】
又、特開2007−243348号公報(特許文献2)には、読取対象からの光を画像信号に変換する、ライン状に配列された受光素子と、前記読取対象から前記受光素子までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段によって測定された前記距離に応じて、前記画像信号に対して所定の補正処理を行う画像補正手段とを備えることを特徴とする画像読取装置が開示されている。ここで、読取対象とは、原稿やガイド板など、受光素子によって読み取る対象となるものを指す。受光素子と原稿は相対移動され、これにより原稿の画像が読み取られ、画像信号が出力されるとしている。又、原稿(読取対象)が浮き上がると受光素子から原稿までの距離が変わるためピントが合わなくなり、画像の解像度が低くなるが、読取対象から受光素子までの距離に応じて、画像信号に補正処理が施されるため、解像度の高い画像を得ることができるとしている。
【0005】
又、特開平9−74462号公報(特許文献3)には、原稿の読取面を照明する光源と、前記読取面からの反射光を集光する光学系と、前記読取面の画像を読み取るイメージセンサを有する画像読取装置が開示されている。この画像読取装置では、ある区間内の各点における光量と読取時の所定光量との差または比が所定許容量内であり、かつ該区間の長さが前記原稿と前記読取面との所定離間距離以上である等光量直線が前記光学系の光軸と略一致または略平行となるように前記光源を設置したことを特徴とする。これにより、原稿がプラテンガラスなどに密着せず、浮いた場合でも、原稿面の照明光量をほぼ一定にすることができ、これにより、イメージセンサの受光量の低下を防ぎ、画像の黒ずみを軽減して読取画像の品質を向上することができるという効果があるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−87628号公報
【特許文献2】特開2007−243348号公報
【特許文献3】特開平9−74462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動原稿搬送装置において、原稿の読み取り時に、原稿の浮きが発生すると、当該原稿に照射した光の影が画像に写り込み、読み取った画像の濃度が濃くなってしまうという問題がある。
【0008】
ここで、被写界深度が浅い密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)を用いた画像読取装置では、上述した問題が顕著に現れる。つまり、両方向照射方式を採用するCISを用いた画像読取装置では、読み取り位置で、搬送中の原稿が浮いた場合に、反射光のバランスが崩れて、読み取られた画像に、浮きに対応する影が発生し、画像が濃くなる現象が発生する。
【0009】
このような画像読取装置では、原稿の搬送中に浮きが発生しないような搬送条件(搬送ローラ径、用紙厚、用紙長さ)を満たして、原稿をガラス面に密着して搬送させることは困難という現状がある。例えば、原稿をガラス面に密着させるためには、原稿を適度な押圧力でガラス面上に押し当てる構成を設けたり、上述した搬送条件を適宜調整したりする必要があり、搬送システムが複雑になり、材料費が嵩むことになる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、原稿が浮いた状態で搬送されても、当該浮きに対応する影が画像に入り難い画像読取装置及び画像読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、自動原稿給送部の画像読取箇所を原稿搬送方向の前後で挟むように対称の位置に配置された二つの光源を用いて原稿の画像を読み取る画像読取部を備えた画像読取装置であって、以下の構成を採用する。
【0012】
即ち、前記画像読取装置は、コピー指示可能な操作画面上に光量調整キーを表示する表示受付部と、前記光量調整キーが押され、さらに読取開始キーが押されると前記自動原稿給送部に載置された白紙を搬送し、画像読取用の前記二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得する光量データ取得手段と、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定する光量データ判定手段と、前記判定の結果、両者の光量データは同等でない場合に、小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを同等にする光量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
又、前記光量データ判定手段は、前記一方の光量データから他方の光量データを減算した差分データを算出し、前記差分データが正負の値か略ゼロかを判定することで、両者の光量データは同等か否かを判定する。
【0014】
又、前記光量調整手段は、前記光量データ判定手段で前記一方の光量データと前記他方の光量データとを比較したときの、大きい光量データを、前記小さい光量データで除算した除算値を補正倍率として算出し、前記小さい光量データを取得した光源の照射光量に、前記補正倍率を乗算した乗算値を新たな照射光量として算出し、前記小さい光量データを取得した光源を、前記新たな照射光量で点灯するように設定する。
【0015】
又、本発明は、画像読取装置と、画像読取部によって読み取られた原稿の画像データに基づいてトナー像を形成する画像形成部とを備えた画像形成装置として提供することが出来る。
【0016】
又、本発明は、自動原稿給送部の画像読取箇所を原稿搬送方向の前後で挟むように対称の位置に配置された二つの光源を用いて原稿の画像を読み取る画像読取部を備えた画像読取装置の画像読取方法として提供することが出来る。
【0017】
即ち、前記画像読取方法は、コピー指示可能な操作画面上に光量調整キー表示する表示受付ステップと、前記光量調整キーが押され、さらに読取開始キーが押されると前記自動原稿給送部に載置された白紙を搬送し、画像読取用の前記二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得するステップと、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定するステップと、前記判定の結果、両者の光量データは同等でない場合に、小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを同等にするステップと、前記二つの光源の光量データを同等にした後、前記自動原稿給送部で搬送させた原稿の画像を前記画像読取部で読み取るステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
又、本発明は、電気通信回線などを介して個別に流通する、コンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することができる。この場合、中央演算処理装置(CPU)が、本発明のプログラムに従ってCPU以外の各回路と協働して制御動作を実現する。又、前記プログラム及びCPUを用いて実現される各手段は、専用のハードウェアを用いて構成することもできる。又、当該プログラムは、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で流通させることも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の画像読取装置及び画像読取方法によれば、原稿が浮いた状態で搬送されても、当該浮きに対応する影が画像に入り難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る複合機の内部の全体構成を示す概念図である。
図2】本発明に係る操作部の全体構成を示す概念図である。
図3】本発明に係る複合機の制御系ハードウェアの構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態における複合機及び給紙部の機能ブロック図である。
図5】本発明の実施形態の実行手順を示すためのフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る複合機の操作画面の一例を示す図(図6(A))と、本発明の実施形態に係る複合機の光量調整画面の一例を示す図(図6(B))とである。
図7】本発明の実施形態に係る複合機の自動原稿給送部の概念図(図7(A))と、本発明の実施形態に係る複合機の一方の光量データを取得する状態を示す概念図(図7(B))とである。
図8】本発明の実施形態に係る複合機の他方の光量データを取得する状態を示す概念図(図8(A))と、本発明の実施形態に係る差分データの一例を示す図(図8(B))とである。
図9】本発明の実施形態に係る光量データを調整する状態を示す概念図(図9(A))と、本発明の実施形態に係る複合機の光量調整完了画面の一例を示す図(図9(B))とである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明の画像読取装置を備えた画像形成装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。又、フローチャートにおける数字の前に付されたアルファベットSはステップを意味する。
【0022】
<画像読取装置を備えた画像形成装置>
以下に、本発明の実施形態に係る画像読取装置(画像読取部)を備えた画像形成装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像読取部を備えた画像形成装置の概略模式図である。但し、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
【0023】
尚、本発明の画像読取部を備えた画像形成装置は、例えば、プリンタ、あるいはプリンタ、コピー、スキャナ、ファックス等を備えた複合機等が該当し、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等を備えた画像形成装置として機能する。
【0024】
以下に、例えば、コピー機能を利用する場合の複合機100(MFP:Multi Function Peripheral)の動作を簡単に説明する。
【0025】
先ず、ユーザが複合機100を利用する場合、原稿を筐体部の上面に備えられている原稿台101a、又は自動原稿給送部の載置台101bに載置する。続いて、ユーザは、前記原稿台101a近傍に備えられている操作部102(操作パネル)を使用して、画像形成に関する設定条件の入力を当該操作部102の操作画面から入力する。そして、ユーザが、前記操作部102に設けられたスタートキーを押下すると、複合機100が画像形成(印刷処理)を開始する。
【0026】
次に、画像読取部103において、所定のセンサにより、原稿台101a又は載置台101bに原稿があることを検知した上で、原稿の画像読取を実行する。前記原稿台101aに原稿が存在する場合には、画像読取部103が、光源104を原稿台101aの下方で走査して、原稿台101aの原稿の画像を読み取る。ここで、光源104から照射された光が、前記原稿台101aに置かれた原稿に反射される。反射された光は、ミラー105、106、107によって撮像素子108に導かれる。導かれた光は前記撮像素子108により光電変換されて、前記原稿に対応する画像データが生成される。又、前記載置台101bに原稿が存在する場合には、画像読取部103が、自動原稿給送部の給送ローラを回転させて、原稿を搬送させるとともに、光源104を、自動原稿給送部の原稿の搬送路のうち、コンタクトガラスが存在する位置へ配置して、光を照射させる。前記原稿から反射された光は、上述と同様にして、画像データとされる。
【0027】
さて、前記画像データに基づいてトナー像を形成する部分が画像形成部109である。前記画像形成部109には感光体ドラム110が備えられている。上記感光体ドラム110は、一定速度で所定の方向に回転し、その周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器111、露光ユニット112、現像器113、転写器114、クリーニングユニット115などが配置されている。
【0028】
前記帯電器111は、前記感光体ドラム110表面を一様に帯電させる。前記露光ユニット112は、帯電された感光体ドラム110の表面に、前記画像データに基づいてレーザーを照射し、静電潜像を形成する。前記現像器114は、形成された静電潜像に、トナーを付着させてトナー像を形成する。形成されたトナー像は、前記転写器114により、記録媒体(例えば、用紙、シート)に転写される。前記クリーニングユニット115は、前記感光体ドラム110の表面に残された余分なトナーを取り除く。これらの一連のプロセスは、前記感光体ドラム110が回転することにより実行される。
【0029】
前記用紙は、複合機100に備えられた給紙部125の複数の給紙カセット116から搬送される。搬送される時は、前記用紙は、ピックアップローラ117により何れか1つの給紙カセット116から搬送路へ引き出される。各給紙カセット116には、それぞれ異なる紙種の用紙が収容されており、画像形成に関する設定条件に基づいて用紙が給紙される。
【0030】
搬送路に引き出された用紙は、搬送ローラ118やレジストローラ119により感光体ドラム110と転写器114の間に送り込まれる。送り込まれると、前記用紙は前記転写器114により前記トナー像が転写され、定着装置120に搬送される。
【0031】
前記トナー像が転写された用紙が、前記定着装置120に備えられた加熱ローラと加圧ローラの間を通過すると、前記トナー像に熱と圧力が印加されて、可視像が用紙に定着される。前記加熱ローラの熱量は、紙種に応じて最適に設定され、前記定着が適切に行われる。前記可視像が用紙に定着されて画像形成が終了し、当該用紙は搬送ローラ118により、経路切替部121へ導かれる。
【0032】
前記経路切替部121では、前記複合機100による切り替え指示により、前記用紙を、前記筐体部の側面に設けられた排紙トレイ122へ案内したり、排紙口123を介して、前記筐体部の胴内に設けられた胴内トレイ124へ案内したりする。前記用紙は、前記排紙トレイ122か胴内トレイ124に積載され、収容される。上記手順により、複合機100はコピー機能をユーザに提供する。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る操作部の全体構成を示す概念図である。ユーザは、前記操作部102を用いて、上述のような画像形成についての設定条件を入力したり、入力された設定条件を確認したりする。前記設定条件が入力される場合、前記操作部102に備えられたタッチパネル201(操作パネル)、タッチペン202、操作キー203が用いられる。
【0034】
前記タッチパネル201には、設定条件を入力する機能と当該設定条件を表示する機能が兼ね備えられている。即ち、タッチパネル201上に表示された画面内のキーを押下することによって、当該押下されたキーに対応する設定条件が入力される。
【0035】
前記タッチパネル201の背面には、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部(図示せず)が設けられており、当該表示部が、例えば、前記初期画面等の操作画面を表示する。前記タッチパネル201の近傍には、タッチペン202が備えられており、ユーザがそのタッチペン202の先をタッチパネル201に接触させると、タッチパネル201下に設けられたセンサが接触先を検知する。
【0036】
更に、タッチパネル201近傍には、所定数の操作キー203が設けられ、例えば、テンキー204、スタートキー205、クリアキー206、ストップキー207、リセットキー208、電源キー209が備えられている。
【0037】
次に、図3を用いて、複合機100の制御系ハードウェアの構成を説明する。図3は、本発明に係る複合機100の制御系ハードウェアの構成を示す図である。ただし、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
【0038】
複合機100の制御回路は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、各駆動部に対応するドライバ305、操作部306(102)を内部バス307によって接続している。
【0039】
前記CPU301は、例えば、RAM303を作業領域として利用し、前記ROM302、HDD304等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて前記ドライバ306と前記操作部307からのデータや指示、キーに対応する信号、命令等を授受し、図1に示した各駆動部の動作を制御する。
【0040】
又、前記駆動部以外の後述する各手段(図4に示す)についても、前記CPU301がプログラムを実行することで当該各手段を実現する。前記ROM302、HDD304等には、以下に説明する各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。
【0041】
<本発明の実施形態>
次に、図4図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。図4は、本発明の複合機の機能ブロック図である。図5は、本発明の実行手順を示すためのフローチャートである。
【0042】
まず、ユーザが、複合機100の電源を投入すると、当該複合機100の操作部102の表示受付手段401が、所定の操作画面(初期画面)をタッチパネル201上に表示する(図5:S101)。
【0043】
前記操作画面600には、図6(A)に示すように、所定のメッセージ「コピーできます。」601と、コピー機能等の設定条件を入力するための機能項目キー602と、画像読取の光量調整するための光量調整キー603とが表示される。
【0044】
ここで、例えば、ユーザが、原稿の搬送時の浮きを気にして、前記光量調整キー603を選択すると、前記表示受付手段401は、当該光量調整キー603の選択を受け付けて(図5:S102YES)、タッチパネル201上に光量調整画面を表示する(図5:S103)。
【0045】
前記光量調整画面604には、図6(B)に示すように、所定のメッセージ「画像読取のCISについて、光量調整します。」605と、所定の指示「白紙を載置台に載置して下さい。」606と、白紙の原稿の読み取りを開始するための読取開始キー607と、キャンセルキー608とが表示される。
【0046】
前記光量調整画面604を見ながら、ユーザは、載置台101bに白紙(原稿)を載置して、前記読取開始キー607を選択すると、前記表示受付手段401が、当該読取開始キー607の選択を受け付けて、その旨を光量データ取得手段402に通知する。当該通知を受けた光源照射データ取得手段402は、自動原稿給送部で白紙を搬送した際に、画像読取用の二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得する。
【0047】
前記光量データ取得手段402が、一方の光量データと他方の光量データとを取得する方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、以下のようになされる。
【0048】
先ず、一般的な自動原稿給送部の内部について説明する。この自動原稿給送部700の内部では、載置台101bから案内される原稿が、図7(A)に示すように、給紙ローラ701により内部の搬送路702に引き出されて、当該搬送路702と、下方に位置するコンタクトガラス703とが設置する画像読取箇所704へ搬送され、当該画像読取箇所704で搬送方向と直角方向(走査方向)の画像データを読み取られ、給紙ローラ701により、排紙トレイへ排紙される。
【0049】
ここで、前記画像読取箇所704の直下には、画像読取のためのCIS705が配置される。このCIS705には、前記画像読取箇所704を搬送方向の前後で挟むように対称の位置に二つの光源706、707が設けられており、当該二つの光源706、707を同時に点灯することで、前記画像読取箇所704に、光量の偏りの無い均一な光が照射されるように構成されている。又、前記一方の光源706(ライン状LED光源)は、前記画像読取箇所704に対して垂直方向から45度だけ前方に傾けた斜め方向で、かつ、一方向のみから光を照射するよう構成され、前記他方の光源707(ライン状LED光源)は、前記画像読取箇所704に対して垂直方向から45度だけ後方に傾けた斜め方向で、かつ、一方向のみから光を照射するよう構成される。更に、前記画像読取箇所704の真下に配置された撮像素子センサ708が設けられている。
【0050】
前記一方の光源706と他方の光源707とが同時に点灯されると、両者から照射された光が、前記画像読取箇所704の原稿に反射されて、真下の撮像素子センサ708へ導かれる。当該撮像素子センサ708は、前記反射光を光電変換することで、走査方向にライン状となる光量データに変換する。この光量データが、原稿の搬送方向(副走査方向)に収集されることで、当該原稿の画像に対応する画像データが生成される。
【0051】
このような自動原稿給送部700において、先ず、前記光量データ取得手段402が、通常の原稿を搬送させる搬送条件に基づいて、前記自動原稿給送部700の給紙ローラ701を回転させて、載置台101bに載置された白紙を搬送させる(図5:S104)。
【0052】
次に、前記光量データ取得手段402は、図7(B)に示すように、前記搬送中の白紙の前方部分が前記画像読取箇所704を通過するタイミングで、前記二つの光源706、707のうち、一方の光源706のみを、予め設定された照射光量A1(mJ/cm2)で点灯し(図5:S105)、その反射光を撮像素子センサ708で受光して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得する(図5:S106)。
【0053】
次に、前記光量データ取得手段402は、続けて前記自動原稿給送部700の給紙ローラ701を回転させて、白紙の搬送を継続し、図8(A)に示すように、前記搬送中の白紙の後方部分が前記画像読取箇所704を通過するタイミングで、前記二つの光源706、707のうち、他方の光源707のみを、前記照射光量A1(mJ/cm2)と同等の照射光量B1(mJ/cm2)で点灯し(図5:S107)、その反射光を撮像素子センサ708で受光して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得する(図5:S108)。
【0054】
このようにして、前記光量データ取得手段402は、一方の光量データと他方の光量データとを取得する。尚、前記光量データ取得手段402が、前記搬送中の白紙の所定部分が前記画像読取箇所704を通過するタイミングを取る方法は、どのような方法でも良く、例えば、白紙の搬送方向(長手方向)のサイズ、白紙の搬送速度、載置台101bの給紙口から画像読取箇所704までの距離を予め測定しておき、白紙の所定部分(前方部分、後方部分)が画像読取箇所704を通過する時間を算出し、その時間に対応して、前記光量データ取得手段402が前記タイミングを取る方法が挙げられる。その他に、例えば、所定の原稿通過センサを画像読取箇所704の近傍に設置しておき、当該原稿通過センサの原稿の検知の有無に応じて、前記光量データ取得手段402が前記タイミングを取っても良い。
【0055】
又、前記光量データ取得手段402が一方の光量データを取得する白紙の部分は、特に限定は無く、例えば、光量データ取得手段402が、一方の光源706を継続的に点灯して、所定領域に対応する部分により得られた光量データの平均値を一方の光量データとしてもよい。又、光量データ取得手段402が、一方の光源706を間欠的に複数回(例えば、3回)点灯して、複数箇所の部分により得られた光量データの平均値を一方の光量データとしてもよい。他方の光量データも同様である。
【0056】
さて、前記光量データ取得手段402が、一方の光量データと他方の光量データとを取得すると、その旨を光量データ判定手段403に通知する。当該通知を受けた光量データ判定手段403は、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定する。
【0057】
前記光量データ判定手段403が、両者の光量データは同等か否かを判定する方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、以下のようになされる。
【0058】
即ち、前記光量データ判定手段403は、図8(B)に示すように、先ず、一方の光量データ801から他方の光量データ802を減算した差分データ803を算出する(図5:S109)。ここで、光量データは、走査方向に対応する各画素に対応して画素濃度が関連付けられた略直線状のラインデータとなる。そして、前記差分データ803が、正の値であれば、他方の光量データ802が一方の光量データ801と比較して小さいと判定され、前記差分データ803が負の値であれば、一方の光量データ801が他方の光量データ802と比較して小さいと判定される。尚、図8(B)では、他方の光量データ802が一方の光量データ801と比較して小さい場合を例示している。
【0059】
ここで、差分データ803の算出方法は、一方の光量データ801、他方の光量データ802のいずれの光量データが小さいか否かを判定出来れば、その方法に特に限定はなく、例えば、他方の光量データ802から一方の光量データ801を減算した差分データを算出しても良い。この場合は、前記差分データが正の値であれば、一方の光量データ801が小さく、前記差分データが負の値であれば、他方の光量データ802が小さいと判定される。
【0060】
又、前記差分データ803が正の値か負の値かを判定する場合に、例えば、前記差分データ803は、各画素毎の画素濃度であるため、全ての画素に対して画素濃度を平均化して、その平均値が正の値か負の値かを判定すれば良い。
【0061】
又、前記光量データ判定手段403は、前記差分データ803を四捨五入等の丸め処理を行って、略ゼロか否かを判定したり、ゼロに対して所定の上下限の閾値を設けて、前記差分データ803が前記上下限の閾値内であることを判定して、略ゼロを判定したりする。このように判定することで、前記光量データ判定手段403は、両者の光量データは同等かを判定する。
【0062】
さて、前記判定の結果、両者の光量データは同等でない場合に、前記光量データ判定手段403は、小さい光量データを取得した光源の照射光量を調整する必要があると判定し(図5:S110YES)、その旨を光量調整手段404に通知する。当該通知を受けた光量調整手段404は、前記小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データ801と前記他方の光量データ802とを同等にする(図5:S111)。
【0063】
ここで、前記光量調整手段404が、前記一方の光量データ801と前記他方の光量データ802とを同等にする方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、以下の方法によりなされる。
【0064】
即ち、前記光量調整手段404は、図9(A)に示すように、前記大きい光量データ(一方の光量データ801)を、前記小さい光量データ(他方の光量データ802)で除算した除算値を補正倍率α(−)として算出する。次に、前記光量調整手段404は、前記小さい光量データ(他方の光量データ802)を取得した光源(他方の光源707)の照射光量B1に、前記補正倍率α(−)を乗算した乗算値を新たな照射光量B2として算出する。そして、前記光量調整手段404は、次回以降で、原稿の画像を自動原稿給送部700で読み取る場合に、前記小さい光量データ(他方の光量データ802)を取得した光源(他方の光源707)を、前記新たな照射光量B2で点灯するように設定する。これにより、図9(A)に示すように、一方の光量データ801と他方の光量データ802とをほぼ同等にすることが可能となる。
【0065】
尚、前記補正倍率α(−)を算出する方法は、どのような方法でも良く、例えば、前記小さい光量データの画素における平均値と、前記大きい光量データの画素における平均値とを利用して算出しても良い。
【0066】
さて、前記光量調整手段404が前記一方の光量データ801と前記他方の光量データ802とを同等にすると、その旨を表示受付手段401に通知し、当該通知を受けた表示受付手段401は、タッチパネル201上に光量調整完了画面を表示する(図5:S112)。
【0067】
前記光量調整完了画面900には、図9(B)に示すように、所定のメッセージ「光量調整を完了しました。」901と、所定の効果「原稿の浮きが生じても、適切に画像を読み取ることが可能です。」902と、OKキー903とが表示される。これにより、ユーザに、光量調整が完了したことを知らせることが可能となる。
【0068】
一方、S110において、前記判定の結果、両者の光量データは同等である場合に、前記光量データ判定手段403は、光源706、707の照射光量A1、B1を特に調整する必要が無いと判定し(図5:S110NO)、その旨を表示受付手段401に通知する。当該通知を受けた表示受付手段401は、上述と同様に、前記光量調整完了画面900を表示して(図5:S112)、光量調整の処理を完了する。
【0069】
ここで、両者の光量データが同等となると、原稿の浮きが生じたとしても、原稿に照射される光量が均等になるため、影となるデータが含まれなくなる。従って、前記光量調整が完了した後に、原稿の画像を自動原稿給送部700で読み取ると、原稿に浮きが生じたとしても、光量が均等であるから、影が生じることなく、画像読取の品質を維持することが可能となる。
【0070】
このように、本発明では、自動原稿給送部700で白紙を搬送した際に、画像読取用の二つの光源のうち、一方の光源のみを点灯して、一方向からの光を搬送中の白紙に照射した場合の一方の光量データを取得するとともに、他方の光源のみを点灯して、他方向からの光を前記白紙に照射した場合の他方の光量データを取得する光源照射データ取得手段402と、前記一方の光量データと前記他方の光量データとを相互に比較し、両者の光量データは同等か否かを判定する光量データ判定手段403と、前記小さい光量データを取得した光源の照射光量を上昇させて、前記一方の光量データ801と前記他方の光量データ802とを同等にする光量調整手段404とを備える。
【0071】
これにより、原稿が浮いた状態で搬送されても、当該浮きに対応する影が画像に入り難くすることが可能となる。
【0072】
尚、本発明の実施形態では、前記画像読取部103を複合機100に適用した例を示したが、当該複合機100に限定する必要は無く、給紙が必要な複写機、スキャナ装置、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置にも適用することが可能である。
【0073】
又、本発明の実施形態では、光量調整キー603の押下に対応して、光量データを補正(調整)したが、他のタイミングであっても良い。例えば、本発明は、印刷の度に白紙を読み込んで光量データを補正してもよいし、所定枚数ごとや所定時間ごとに補正してもよい。更に、本発明は、ユーザが厚紙モードを選択したときに、出荷時等に予め記憶された補正値に基づいて補正を行うように実施してもよい。
【0074】
又、本発明の実施形態では、前記画像読取部103又は複合機100が各手段を備えるよう構成したが、当該各手段を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、上記プログラムを前記画像読取部103又は複合機100に読み出させ、その前記画像読取部103又は複合機100が上記各手段を実現する。その場合、上記記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各手段が実行するステップをハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る画像読取装置及び画像読取方法は、複合機はもちろん、複写機、スキャナ、プリンタ等に有用であり、原稿が浮いた状態で搬送されても、当該浮きに対応する影が画像に入り難い画像読取装置及び画像読取方法として有効である。
【符号の説明】
【0076】
100 複合機
103 画像読取部
401 表示受付手段
402 光量データ取得手段
403 光量データ判定手段
404 光量調整手段
図1
図2
図3
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図9