特許第6188574号(P6188574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188574
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】発現プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170821BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170821BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/21
   C12P21/02 C
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-537193(P2013-537193)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公表番号】特表2013-544087(P2013-544087A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】GB2011001548
(87)【国際公開番号】WO2012059715
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】1018664.1
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508236033
【氏名又は名称】フジフィルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ ・ユーケイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100162455
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 典子
(72)【発明者】
【氏名】カラ,ブペンドラ・ヴァラブ
(72)【発明者】
【氏名】レノン,クリストファー・デーヴィッド・ジョン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−514490(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/115596(WO,A1)
【文献】 特開平09−107954(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/097829(JP,A1)
【文献】 特表2007−535923(JP,A)
【文献】 特表2006−517926(JP,A)
【文献】 Microb. Cell Fact., 2010, Vol. 9, no. 67
【文献】 LUCIA BANCI,MIA40 IS AN OXIDOREDUCTASE THAT CATALYZES OXIDATIVE PROTEIN FOLDING IN MITOCHONDRIA,NATURE STRUCTURAL & MOLECULAR BIOLOGY,2009年 2月 1日,V16 N2,P198-206
【文献】 Biochim. Biophys. Acta, 2009, Vol. 1793, pp. 71-77
【文献】 Biochim. Biophys. Acta, 2009, Vol. 1793, pp. 139-145
【文献】 Mol. Biol. Cell, 2009, Vol. 20, pp. 3481-3490
【文献】 Biochim. Biophys. Acta, 2008, Vol. 1783, pp. 601-609
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12P 1/00−41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット組換えポリペプチドの産生プロセスであって、ターゲットポリペプチドおよび分泌リーダーをコードする発現カセットを原核宿主において発現させ、そしてミトコンドリア・フォルダーゼおよび分泌リーダーをコードする発現カセットを同時発現する工程を含む、前記プロセス。
【請求項2】
ミトコンドリア・フォルダーゼがMia40ファミリーのメンバーを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
2つまたはそれより多いミトコンドリア・フォルダーゼの発現カセットを同時発現させる、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ミトコンドリア・フォルダーゼがMia40ファミリーのメンバーおよびerv1またはerv2ファミリーのメンバーを含む、請求項3記載のプロセス。
【請求項5】
ターゲットポリペプチドをコードする発現カセットおよびミトコンドリア・フォルダーゼをコードする発現カセットが、異なるベクター上に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ターゲットポリペプチドをコードする発現カセットおよびミトコンドリア・フォルダーゼをコードする発現カセットが、同じベクター上に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ミトコンドリア・フォルダーゼを、可溶性融合パートナーとともに発現させる、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ターゲットポリペプチドおよび分泌リーダーをコードする発現カセットならびにミトコンドリア・フォルダーゼおよび分泌リーダーをコードする発現カセットを含む原核宿主細胞を含む、タンパク質発現系。
【請求項9】
ミトコンドリア・フォルダーゼがMia40ファミリーのメンバーを含む、請求項8記載のタンパク質発現系。
【請求項10】
2つまたはそれより多いミトコンドリア・フォルダーゼの発現カセットを同時発現させる、請求項8または9記載のタンパク質発現系。
【請求項11】
ミトコンドリア・フォルダーゼを、可溶性融合パートナーとともに発現させる、請求項8〜10のいずれか一項に記載のタンパク質発現系。
【請求項12】
ミトコンドリア・フォルダーゼおよび分泌リーダーをコードする発現カセットを含む、ベクター。
【請求項13】
ミトコンドリア・フォルダーゼがMia40ファミリーのメンバーを含む、請求項12記載のベクター。
【請求項14】
2つまたはそれより多いミトコンドリア・フォルダーゼの発現カセットを含む、請求項12または13記載のベクター。
【請求項15】
ミトコンドリア・フォルダーゼの発現カセットが、可溶性融合パートナーもまたコードする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項に記載のベクターで形質転換されている、原核宿主細胞。
【請求項17】
宿主が大腸菌(E. coli)である、請求項16記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えポリペプチドを発現するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
組換え技術によるポリペプチドの製造は、特に宿主生物が大腸菌(E. coli)である場合、有効でそして多用途の方法であることが証明されてきている。宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドは、例えば不溶性封入体として、細胞質中に保持されることも可能であるし、あるいは周辺質内にまたは細胞用の培地内に分泌されることも可能である。細胞質中にポリペプチドを保持することにはいくつかの利点があるが、こうしたポリペプチドは、しばしば、不活性型で発現される。したがって、活性を持つ、正しくフォールディングされた型にポリペプチドを変換するためには、複雑な再フォールディング法を使用しなければならない。周辺質または培地内に分泌されるタンパク質は、しばしば、正しい型に容易に変換され、そしてより高い収量でより容易に得られうる。
【0003】
周辺質内への分泌増加を達成する方法は、当該技術分野に周知であり、そしてシグナルペプチド配列としても知られるいわゆる分泌リーダーの使用を含む。こうした分泌リーダーには、天然宿主細胞系、例えば大腸菌におけるspA、phoA、リボース結合タンパク質、pelB、ompA、ompT、dsbA、torA、torT、およびtolTリーダー、ならびにWO 2009/147382に開示されるものなどの真核リーダー配列が含まれる。米国特許5,639,635は、DsbAおよびDsbCタンパク質を使用して、分泌を改善し、そして組換えポリペプチドのフォールディングを訂正することも可能であることを開示する。組換えポリペプチドの分泌を促進するためのさらなる方法を同定することが依然として望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2009/147382
【特許文献2】米国特許5,639,635
【発明の概要】
【0005】
本発明にしたがって、ターゲット組換えポリペプチドの産生プロセスであって、ターゲットポリペプチドをコードする発現カセットを発現させ、そしてミトコンドリア・フォルダーゼをコードする発現カセットを同時発現する工程を含む、前記プロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ミトコンドリア・フォルダーゼは、ジスルフィド結合の形成およびミトコンドリア膜間腔におけるタンパク質の正しいフォールディングにおいて機能するタンパク質のクラスである。本発明のプロセスにおいて使用可能なミトコンドリア・フォルダーゼには、ミトコンドリア・スルフィドリル・オキシダーゼが含まれる。使用可能なミトコンドリア・フォルダーゼには、昆虫および植物ミトコンドリア・フォルダーゼ、ならびに特に哺乳動物および酵母ミトコンドリア・フォルダーゼ、ならびに前述のいずれかの機能性断片が含まれる。ミトコンドリア・フォルダーゼの機能性断片には、一般的に、対応する参照フォルダーゼのスルフィドリル・オキシダーゼ・ドメイン断片またはスルフィドリル・オキシダーゼ活性を有するその相同体が含まれる。例えば、酵母ミトコンドリア・フォルダーゼは、一般的に、ミトコンドリア膜に活性モチーフを係留するように働く配列を含む。本発明において、酵母ミトコンドリア・フォルダーゼは、存在するアンカー配列とともに使用してもよいし、またはアンカー配列は省かれてもよい。
【0007】
ミトコンドリア・フォルダーゼの例は、Mia40ファミリーのメンバーおよびその相同体、ならびにErvファミリーのメンバー、特にErv1およびErv2ファミリーおよびその相同体である。
【0008】
使用可能なMia40ファミリーのメンバーには、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、ニワトリ(Gallus gallus)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、ウマ(Equus cabbalus)、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)、アメリカムラサキウニ(Strogylocentratus purpuratus)、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、アカイエカ(Culex pipiens)、アカパンカビ(Neurosporasa crassa)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・クラバツス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus furnigatus)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、アシュビア・ゴシピル(Ashbya gossypil)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)、コットンウッド(Populus trichocarpa)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)およびキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)由来のMia40の相同体が含まれ、好ましくはヒトおよびサッカロミセス・セレビシエのものである。特定の態様において、使用可能なMia40の相同体は、以下の配列番号1と、40%より高い、しばしば50%より高い、一般的に60%より高い相同性、好ましくは80%より高い相同性、最も好ましくは90%より高い、特に95%より高い相同性を有する。Mia40の好ましい相同体は、配列番号1を有するヒト・コイルドコイルヘリックスコイルドコイルヘリックスドメイン含有タンパク質−4(CHCHD−4)である。
【0009】
使用可能なErvファミリーのメンバーには、酵母、哺乳動物、昆虫および植物由来のErv1およびErv2の相同体が含まれる。使用可能なervファミリーのメンバーには、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、ニワトリ、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ウマ、チャイニーズハムスター、アメリカムラサキウニ、セイヨウミツバチ、キイロショウジョウバエ、アカイエカ、アカパンカビ、クロコウジカビ、アスペルギルス・クラバツス、アスペルギルス・フミガツス、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、アシュビア・ゴシピル、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、オストレオコッカス・タウリ、コットンウッド、シロイヌナズナ、キイロタマホコリカビ、ジャガイモ(Solanum tuberosam)、ブドウ(Vitis vinifera)、タルウマゴヤシ(Medicato truncatula)、ダイズ(Glycine max)、オオムギ(Hordeum vulgare)、モロコシ(Sorghum bicolour)およびトウモロコシ(Zea mays)由来のものが含まれ、好ましくはヒトおよびサッカロミセス・セレビシエのものである。
【0010】
特定の態様において、Erv、例えばErv1およびErv2の相同体は、酸化還元中心、2つのアミノ酸によって分離されたシステイン対(−CXXC−モチーフ)および16アミノ酸によって分離されたシステイン対(C−16−Cモチーフ)およびフラビン・アデニン・ジヌクレオチド(FAD)結合部位を含むスルフィドリル・オキシダーゼ領域を含む。
【0011】
いくつかの好ましい態様において、配列番号6のアミノ酸74〜173と、少なくとも40%の相同性、好ましくは80%より高い相同性、最も好ましくは90%より高い、特に95%より高い相同性を有するスルフィドリル・オキシダーゼ領域を含むErv1相同体を使用する。
【0012】
いくつかの態様において、使用可能なErv1の相同体は、以下の配列番号6と、40%より高い、しばしば50%より高い、一般的に60%より高い相同性、好ましくは80%より高い相同性、最も好ましくは90%より高い、特に95%より高い相同性を有する。Erv1の好ましい相同体は、配列番号6を有するヒト肝再生タンパク質増強因子(ALRP)である。
【0013】
特定の態様において、使用するミトコンドリア・フォルダーゼは、酸化還元中心、2つのアミノ酸によって分離されたシステイン対(−CXXC−モチーフ)および16アミノ酸によって分離されたシステイン対(C−16−Cモチーフ)およびFAD結合部位を含む、erv1またはerv2、特に植物、酵母またはヒトerv1またはerv2の機能性断片、例えば80〜120アミノ酸、一般的に90〜110アミノ酸、そして特に約100アミノ酸を含む断片である。
【0014】
1またはそれより多いミトコンドリア・フォルダーゼは、ターゲットポリペプチド、好ましくは2またはそれより多く、そして特にMia40ファミリーのメンバーおよびerv1またはerv2ファミリーのメンバーであるターゲットポリペプチドと同時発現されてもよい。
【0015】
多くの好ましい態様において、ミトコンドリア・フォルダーゼを、好ましくはフォルダーゼのN末端側に付着した、分泌リーダーとともに発現させる。特定の態様において、フォルダーゼは、N末端タグと、該タグに、好ましくは該タグのN末端側で付着した分泌リーダーを含む。使用可能な配列リーダーの例には、大腸菌におけるspA、phoA、リボース結合タンパク質、pelB、ompA、ompT、dsbA、torA、torT、およびtolTリーダー、ならびにWO 2009/147382に開示される配列番号1、2、3、4および5などの真核リーダー配列が含まれる。2またはそれより多いフォルダーゼを発現させる場合、使用される配列リーダーは、同じであってもまたは異なってもよい。配列リーダーおよびフォルダーゼの組み合わせは、一般的に、当業者に周知の方法によって組み合わせをスクリーニングし、そして所望の特性を提供する組み合わせを選択することによって同定される。使用される分泌リーダーは、フォルダーゼの周辺質へのトランスファーを達成する。
【0016】
特定の態様において、ミトコンドリア・フォルダーゼ、特にMia40ファミリーのメンバーを、周辺質におけるフォルダーゼの可溶性を増加させる可溶性融合パートナーとともに発現させる。可溶性融合パートナーの例は、当該技術分野に周知である。好ましい可溶性融合パートナーは、活性または不活性型のいずれでも使用可能なチオレドキシンである。
【0017】
ミトコンドリア・フォルダーゼおよびターゲットポリペプチドの発現は、恒常性または誘導性のいずれであってもよいプロモーターの調節下にある。特定の態様において、ミトコンドリア・フォルダーゼの発現は恒常性プロモーターの調節下にあり、そしてターゲットポリペプチドの発現は誘導性プロモーターの調節下にある。他の態様において、ミトコンドリア・フォルダーゼおよびターゲットポリペプチドの両方の発現は、誘導性プロモーターの調節下にある。これらの態様において、誘導性プロモーターは、同じ誘導因子によって、または異なる誘導因子によって、調節されていてもよい。誘導性プロモーターが同じであってもまたは異なってもよいことが認識されるであろう。いくつかの態様において、ミトコンドリア・フォルダーゼおよびターゲットポリペプチドは、単一のプロモーター、好ましくは誘導性プロモーターの調節下にある。
【0018】
2またはそれより多いミトコンドリア・フォルダーゼを同時発現させる場合、各フォルダーゼとともに、同じタイプのプロモーターまたは異なるプロモーターを使用してもよい。各フォルダーゼの発現は、望ましい場合、単一のプロモーターの調節下にあってもよい。
【0019】
多くの好ましい態様において、プロモーターは原核プロモーターである。使用可能な原核プロモーターの例には:
a)ファージRNAポリメラーゼ依存性プロモーター、特にT7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーター系、好ましくは単一のT7プロモーター、本明細書に援用されるStudierおよびMoffat, J. Mol. Biol. 189:113−130(1986)に開示されるものを含む、特にT7遺伝子10プロモーター;および
b)宿主RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系、特に大腸菌RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系
が含まれる。
【0020】
T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーター系を使用する場合、T7 RNAポリメラーゼの供給源が必要であり、これは、当該技術分野に知られる方法によって提供され、そして一般的に、必要なファージポリメラーゼを発現するλDE3プロファージを宿主株内に挿入して、溶原性宿主株を生成することによる。また、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を所持する特殊化λ形質導入ファージに感染させることによって、T7 RNAポリメラーゼを細胞に送達してもよい。
【0021】
本発明の側面において使用可能な恒常性プロモーターの例には、T7A1、T7A2、T7A3、spcリボソームタンパク質オペロンプロモーター、β−ラクタマーゼ遺伝子プロモーター、ファージλのPプロモーター、複製調節プロモーターPRNAIおよびPRNAII、rrnBリボソームRNAオペロンのP1およびP2プロモーター、Lacリプレッサータンパク質プロモーターpLacI、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)および形質膜H(+)−ATPアーゼ(PMA1)プロモーター、接合因子(MF)−αプロモーター、KEX2、TEF−1、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、およびヒトβ−アクチンプロモーターが含まれる。恒常性プロモーターのさらなる例には、調節領域を除去するように修飾されている誘導性プロモーター、例えばlacまたはtacオペレーターを除去するように修飾されたlacまたはtacプロモーターが含まれる。
【0022】
使用可能な誘導性プロモーターの例には、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoA、アラビノース誘導性プロモーター、温度誘導性プロモーター(高温および低温両方)、銅誘導性プロモーター、uspA、uspB、malK、浸透圧誘導性プロモーター、ガラクトース誘導性プロモーター、フェロモン誘導性プロモーター、グルコアミラーゼ・プロモーター、テトラサイクリン反応性プロモーター、ヒトc−fosプロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、およびグルココルチコイド誘導性プロモーターが含まれる。
【0023】
プロモーターは、一般的に、宿主細胞において有効であることが知られるプロモーターから選択されると認識される。例えば、大腸菌プロモーターは、一般的に、大腸菌宿主細胞において使用される。
【0024】
恒常性または誘導性型のいずれかで使用される、好ましいプロモーターの例には、T7遺伝子10プロモーター、T7A1、T7A2、T7A3、lpL、lpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、ara、phoAおよびrrnBが含まれる。最も好ましいプロモーターは、lpL、lacおよびtacである。
【0025】
本発明のプロセスにおいて使用される発現カセットは、発現ベクター内に含まれる。発現ベクターは宿主細胞ゲノム内に組み込まれてもよいが、好ましくは、染色体外要素、例えばプラスミド内に含まれる。あるいは、発現ベクターは、ファージまたはウイルスベクター内に組み込まれ、そしてこれらを用いて、宿主細胞系内に発現系を送達してもよい。発現ベクターは、当該技術分野に知られる方法によって組立て可能である。
【0026】
本発明の発現ベクターは、一般的に、プラスミドの形で使用される。プラスミドは染色体外プラスミドまたは組込みプラスミドであってもよく、好ましくは染色体外プラスミドである。
【0027】
誘導性プロモーターを含む発現ベクターは、一般的に、オペレーター配列を含む。本発明記載のプロセスにおいて使用可能なオペレーター配列には、lac、gal、deoおよびglnが含まれる。1またはそれより多い完全パリンドロームオペレーター配列を使用してもよい。いくつかの態様において、2つの完全パリンドロームオペレーター配列を使用し、最も好適には、1つのオペレーター配列はプロモーターの下流に位置し、そして1つのオペレーター配列はプロモーターの上流に位置する。2つのオペレーター系を使用する場合、オペレーター配列には、好ましくは、プロモーターの調節を最大にするためにスペースが置かれる。多くの態様において、スペースは85〜150塩基対、置かれており、好ましくは90〜126塩基対、置かれており、そして最も好ましくは91または92塩基対、置かれている。特定の態様において、オペレーター配列は、転写開始点と重なる。
【0028】
オペレーター系は、一般的に、適切なリプレッサー配列とともに使用されることが認識されるであろう。リプレッサー配列は、リプレッサータンパク質を産生し、例えばlacオペレーターと用いる場合はlacI遺伝子配列である。他のlacリプレッサー配列もまた使用可能であり、例えば、lacリプレッサータンパク質レベルを増加させるために、lacI配列を使用してもよい。リプレッサー配列は、宿主細胞ゲノムによって、またはさらなる適合プラスミドを使用することによってもまた、提供可能である。
【0029】
発現ベクターは、特にベクターがプラスミドを含む際、典型的には、以下の1またはそれより多くも含む:選択可能マーカー、例えば抗生物質耐性を与える配列、およびcer安定性配列。
【0030】
本発明のプロセスで使用可能な宿主細胞は、原核宿主細胞である。原核細胞の例には、細菌細胞、例えば大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marsescens)、プチダ菌(Pseudomonas putida)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むグラム陰性細菌細胞、ならびに枯草菌(Bacillus subtilis)を含むグラム陽性細菌細胞が含まれる。好ましい宿主細胞は、細菌、特に腸内細菌科、特に大腸菌、および特にそのBまたはK12株である。
【0031】
多くの特に好ましい態様において、ターゲットポリペプチドは、分泌リーダー、特に周辺質への分泌を達成する周辺質分泌リーダーとともに発現され、好ましくは該リーダーをポリペプチドのN末端側に付着させる。いくつかの態様において、ターゲットポリペプチドは、N末端タグと、該タグに、好ましくは該タグのN末端側に付着した分泌リーダーを含む。
【0032】
使用可能な配列リーダーの例には、大腸菌におけるspA、phoA、リボース結合タンパク質、pelB、ompA、ompT、dsbA、torA、torT、およびtolTリーダー、ならびにWO 2009/147382に開示される配列番号1、2、3、4および5などの真核リーダー配列が含まれる。使用される配列リーダーは、ミトコンドリア・フォルダーゼで使用される任意の配列リーダーと同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0033】
本発明のプロセスによって発現可能なポリペプチドには、療法タンパク質およびペプチドが含まれ、サイトカイン、増殖因子、抗体、抗体断片、免疫グロブリン様ポリペプチド、酵素、ワクチン、ペプチドホルモン、例えばインスリン、ケモカイン、受容体、受容体断片、キナーゼ、ホスファターゼ、イソメラーゼ、ヒドロリアーゼ、転写因子および融合ポリペプチドが含まれる。
【0034】
発現させてもよい抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および生物学的活性を有する抗体断片が含まれ、上記いずれかの多価および/または多重特異性型が含まれる。
【0035】
天然存在抗体は、典型的には、ジスルフィド結合によって相互連結された2つの同一の重(H)鎖および2つの同一の軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む。各重鎖は、可変領域(V)および定常領域(C)を含み、C領域は、天然型において、3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。各軽鎖は、可変領域(V)および1つのドメイン、Cを含む定常領域を含む。
【0036】
およびV領域は、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超過変性領域に、さらに細区分可能である。VおよびVは各々、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0037】
発現可能な抗体断片は、望ましい生物学的活性を有する、損なわれていない(intact)抗体の部分を含む。抗体断片には、一般的に、少なくとも1つの抗原結合部位が含まれる。抗体断片の例には:(i)V、C、VおよびC1ドメインを有するFab断片;(ii)2つのFab誘導体間でジスルフィド架橋によって二価断片を形成可能な、C1ドメインのC末端に1またはそれより多いシステイン残基を有するFab’断片などのFab誘導体;(iii)VおよびC1ドメインを有するFd断片;(iv)C1ドメインのC末端に1またはそれより多いシステイン残基を有するFd誘導体などのFd誘導体;(v)抗体の単一アームのVおよびVドメインを有するFv断片;(vi)VおよびVドメインが共有結合している一本鎖Fv(scFv)抗体などの一本鎖抗体分子;(vii)定常領域ドメインを含みまたは含まずに別の可変ドメイン(VまたはVドメインポリペプチド)に連結された、定常領域ドメインを含まないVまたはVドメインポリペプチド(例えばV−V、V−V、またはV−V);(viii)ドメイン抗体断片、例えばVドメイン、またはVドメイン、およびVまたはVドメインいずれかの抗原結合断片、例えば単離CDR領域からなる断片などのドメイン抗体断片;(ix)2つの抗原結合部位を含むいわゆる「ディアボディ」、例えば同じポリペプチド鎖中で、軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V);ならびに(x)相補性軽鎖ポリペプチドとともに抗原結合領域の対を形成する、タンデムFdセグメント対を含むいわゆる直鎖抗体が含まれる。
【0038】
調製可能な好ましい抗体断片は、哺乳動物単一可変ドメイン抗体であり、これは、免疫グロブリン可変ドメインに特徴的な配列を含み、そして抗原に特異的に結合し(すなわち500nMまたはそれ未満、例えば400nMまたはそれ未満、好ましくは250nMまたはそれ未満、および最も好ましくは100nMまたはそれ未満の解離定数)、そして単一可変ドメインとして抗原に結合する;すなわちいかなる相補性可変ドメインも含まない、フォールディングされたポリペプチドドメインを含む、抗体断片である。単一可変ドメイン抗体には、完全抗体可変ドメイン、ならびに修飾可変ドメイン、例えば抗体可変ドメインに特徴的でない配列によって1またはそれより多いループが置換されているもの、あるいは一部切除されている(truncated)か、またはNもしくはC末端伸長を含む抗体可変ドメイン、ならびに可変ドメインのフォールディングされた断片が含まれる。調製可能な好ましい単一可変ドメインは、VおよびVの群より選択され、VカッパおよびVラムダを含む。最も好ましくは、単一可変ドメインは、ヒトまたはラクダ科(camelid)ドメインであり、ヒト化ラクダ科ドメインを含む。
【0039】
ターゲットポリペプチドが、分泌される2またはそれより多い鎖を含む場合、特に、ターゲットポリペプチドが、2またはそれより多い鎖を含む断片抗体である場合、鎖の各々は、分泌リーダーに付着することも可能であり、そしてこうしたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをこれにしたがって設計する。使用される分泌リーダは同じであってもまたは異なってもよい。
【0040】
発現系を、使用される細胞に関して、当該技術分野に周知の方法によって発現させる。好ましい発現法は、特に発酵によって、増殖培地中で宿主細胞を培養し、そして次いで発現されたポリペプチドを回収する工程を含む。用語「増殖培地」は、宿主細胞が増殖するために用いられる栄養培地を指す。多くの態様において、栄養液を使用する。所定の宿主細胞用の適切な増殖培地およびポリペプチドを回収する方法が、当該技術分野に周知である。
【0041】
誘導性プロモーターを使用する場合、発現は、こうしたプロモーターに適した誘導因子、例えばイソプロピル−β−D−1チオガラクトピラノシド(IPTG)、IPTGの類似体、例えばイソブチル−C−ガラクトシド(IBCG)、ラクトースまたはメリビオースを添加することによって誘導可能である。他の誘導剤を用いてもよく、そしてこれらは、別の箇所により詳細に記載される(例えば、The Operon, MillerおよびRenznikoff監修(1978)を参照されたい)。誘導因子は、個々にまたは組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明のプロセスによって産生されるポリペプチドは、望ましい場合、さらなる精製工程、例えば、イオン交換クロマトグラフィー;疎水性に基づくクロマトグラフィー、例えばHIC、逆相クロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー、または混合様式クロマトグラフィー:あるいはサイズに基づく精製、例えばゲルろ過の1またはそれより多くに供してもよい。また、産生されるポリペプチドを1またはそれより多い再フォールディング工程に供してもよい。
【0043】
ミトコンドリア・フォルダーゼおよびターゲットポリペプチドの同時発現に関して上述されるような発現カセットを含むタンパク質発現系は、本発明の別の側面を形成する。こうしたタンパク質発現系で形質転換された宿主細胞は、本発明のさらなる側面を形成する。ミトコンドリア・フォルダーゼの発現カセットを含むベクターは、本発明のさらに別の側面を含む。
【0044】
本発明は以下の実施例によって、限定なしに例示される。
ポリペプチド、ベクターおよび株の要約
【0045】
【表1】
【実施例】
【0046】
pAVE354の構築
pAVE354構築のための出発プラスミドは、pACYCDuet(EMD Bioscienceカタログ番号71147−3)であった。NcoIおよびXhoIでの消化によって、このベクターからT7プロモーターおよびマルチクローニングサイトを除去した。これらを、国際特許出願WO 2007/088371に記載されるように調製されたpAVE029のNcoI−XhoI断片で置き換えた。生じたプラスミドをNBJ0738−7−3と称し、そして制限消化および配列決定によって確認した。
【0047】
ミトコンドリア・フォルダーゼ・ヒト・コイルドコイルヘリックスコイルドコイルヘリックスドメイン含有タンパク質−4(CHCHD−4)タンパク質(Mia40ファミリーポリペプチド)のタンパク質配列を、Genbank、寄託番号AAH33775.1から得た(配列番号1: SYARQEGKDRIIFVTKEDHETPSSAELVADDPNDPYEEHGLILPNGNINWNCPCLG GMASGPCGEQFKSAFSCFHYSTEEIKGSDCVDQFRAMQECMQKYPDLYPQEDEDEEEEREKKPAEQAEETAPIEATATKEEEGSS)。分泌リーダー(配列番号2: MKVSTAFLCLLLTVSAFSAQVLA)を含む融合タンパク質を設計した。これを、大腸菌チオレドキシンA(TrxA: Genbank寄託番号AAA67582.1(配列番号3 IIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWSGPSKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLA)のN末端側で、タグ(DYKDEDK−配列番号16)を通じて付着させた。チオレドキシン活性部位51CGPC54を51SGPS54に変化させた。チオレドキシンC末端をCHCHD−4のN末端側に融合させ、これもまた突然変異させて、3位の非触媒システイン残基を除去し、そしてこれをセリン残基で置換した。リーダーを含むこの融合タンパク質のタンパク質配列を配列番号4に示す。
【0048】
配列番号4
【0049】
【化1】
【0050】
このタンパク質をコードする、配列番号5の遺伝子を、NBJ0738−7−3のNdeI/XhoI部位にクローニングし、そして制限消化および配列決定によって確認した。
【0051】
配列番号5
【0052】
【化2】
【0053】
ミトコンドリア・フォルダーゼ・ヒト肝再生タンパク質増強因子(ALRP、Erv1ファミリーポリペプチド)のタンパク質配列をGenbank寄託番号EAW85580.1から得た(配列番号6: AAPGERGRFHGGNLFFLPGG ARSEMMDDLATDARGRGAGRRDAAASASTPAQAPTSDSPVAEDASRRRPCRACVDFKTWMRTQQKRDTKFREDCPPDREELGRHSWAVLHTLAAYYPDLPTPEQQQDMAQFIHLFSKFYPCEECAEDLRKRLCRNHPDTRTRACFTQWLCHLHNEVNRKLGKPDFDCSKVDERWRDGWKDGSCD)。FLAGタグ(DYKDDDDK−配列番号17)を通じて、これを、N末端側で、配列番号2の分泌リーダーに付着させた。リーダーを含むこの融合タンパク質のタンパク質配列を配列番号7に示す。
【0054】
配列番号7
【0055】
【化3】
【0056】
配列番号7をコードする遺伝子を、オペレーター配列を含まない大腸菌Lacプロモーター、および大腸菌における発現のために最適化されたALRP遺伝子コドンからなる配列、配列番号8を用いて合成した。これを、NBJ078−18−3のHpaI部位内にEcoRV断片としてクローニングして、pAVE0354を作製し、そして制限消化および配列決定によって確認した。
【0057】
配列番号8
【0058】
【化4】
【0059】
CLD331およびCLD420の構築
pAVE314の生成のための出発ベクターは、WO2007/088371に記載されるように調製されたpAVE029であった。LamBリーダーを含むIGF−1の遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号9を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE314と名付けた。
【0060】
発現プラスミドpAVE314を大腸菌株W3110に形質転換して、CLD331を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD331に形質転換して、CLD420を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0061】
配列番号9
【0062】
【化5】
【0063】
CLD429およびCLD433の構築
pAVE356の生成のための出発ベクターは、pAVE029であった。OmpAリーダーを含むヒト成長ホルモン(hGH)の遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号10を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE356と名付けた。
【0064】
配列番号10
【0065】
【化6】
【0066】
発現プラスミドpAVE356をW3110に形質転換して、CLD429を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD429に形質転換して、CLD433を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0067】
CLD048およびCLD426の構築
株CLD048をWO 2007/088371に記載されるように調製した。
次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD048に形質転換して、CLD426を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0068】
CLD430およびCLD428の構築
pAVE157の生成のための出発ベクターは、pAVE029である。A5B7 Fabの遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号11を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE157と名付けた。
【0069】
配列番号11
【0070】
【化7】
【0071】
発現プラスミドpAVE157をW3110に形質転換して、CLD430を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD430に形質転換して、CLD428を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0072】
CLD453およびCLD454の構築
pAVE366の生成のための出発ベクターは、pAVE029であった。OmpAリーダーを含むFGF21の遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号12を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE366と名付けた。
【0073】
配列番号12
【0074】
【化8】
【0075】
発現プラスミドpAVE366をW3110に形質転換して、CLD453を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD453に形質転換して、CLD454を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0076】
CLD442およびCLD443の構築
pAVE364の生成のための出発ベクターは、pAVE029であった。OmpAリーダーを含むRapLRの遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE364と名付けた。
【0077】
発現プラスミドpAVE364をW3110に形質転換して、CLD442を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD442に形質転換して、CLD443を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0078】
RapLR配列(配列番号13)
【0079】
【化9】
【0080】
CLD438およびCLD439の構築
pAVE362の生成のための出発ベクターは、pAVE029であった。OmpAリーダーを含むElafinの遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号14を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE362と名付けた。
【0081】
配列番号14
【0082】
【化10】
【0083】
発現プラスミドpAVE362をW3110に形質転換して、CLD438を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD438に形質転換して、CLD439を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0084】
CLD440およびCLD441の構築
pAVE363の生成のための出発ベクターは、pAVE029であった。OmpAリーダーを含むMIC6の遺伝子をNdeI/XhoI断片として合成した。以下の配列番号15を参照されたい。これをpAVE029 NdeI/XhoI部位内にクローニングした。最初のスクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化によった。次いで、配列決定によって配列を確認した。生じたプラスミドをpAVE363と名付けた。
【0085】
配列番号15
【0086】
【化11】
【0087】
発現プラスミドpAVE363をW3110に形質転換して、CLD440を作製した。次いで、発現プラスミドpAVE354をCLD440に形質転換して、CLD441を作製した。生じた組換え株を精製し、そしてグリセロールストック中で−80℃に維持した。
【0088】
振盪フラスコ評価
テトラサイクリン(10μg/ml)を補った5mlルリア・ブロス(LB、5g/L酵母エキス、10g/Lトリプトン、および5g/L塩化ナトリウム)内に、10μlの融解グリセロールストックを接種した。これを軌道振盪装置中、37℃で16時間インキュベーションした。次いで、この培養の500μlを用いて、50mlのルリア・ブロス(上述のような組成)を含有する250mlエルレンマイヤーフラスコに接種した。フラスコを、軌道振盪装置中、200rpm、37℃でインキュベーションした。OD600=0.5+/−0.1になるまで増殖を監視した。この時点で、フラスコを適切な濃度のIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、そして上記条件下で22時間インキュベーションを続け、この間、増殖および産物蓄積の測定のために試料を採取した。
【0089】
発酵評価
450μlのグリセロールストックを、5g/L酵母エキス、10g/Lペプトン、10g/L塩化ナトリウム、10g/Lグルコースおよび15mg/Lテトラサイクリンを含有する450mLのルリア・ブロス(LB)を含有する2.0L整流装置付き振盪フラスコに添加することによって、以下の結果中に記載するような株の発酵接種物を産生した。フォルダーゼを含まない株を培養する際には、クロラムフェニコールを添加しなかったが、フォルダーゼを含む株を培養する際には、34mg/Lの濃度でクロラムフェニコールを含んだ。振盪装置−インキュベーター中、200rpmの攪拌で、37℃で10時間接種物を増殖させた。20mlの振盪フラスコ接種物を用いて、フォルダーゼまたは酵母エキスを含まない株を培養した際には、酵母エキスおよびテトラサイクリンを補い、フォルダーゼを含む株を培養した際には、テトラサイクリンおよびクロラムフェニコールを補って、4Lの最小グリセロールバッチ増殖培地を含有する5L作業体積発酵装置に接種した。以下に記載する操作条件下で発酵を行った。温度を30℃の一定温度(IGF−1株)に調節するか、または最初の7〜9時間は37℃、次いで30℃に低下させ、そして発酵の残りの時間、30℃に調節した(他のすべて)。25%(w/v)水酸化アンモニウムを自動的に添加することによって、pHを7.0に調節した。溶解酸素圧(dOT)セットポイントは、空気飽和の30%であり、そして最低250rpmから最大1500rpmの発酵装置スターラー速度および入口ガス流への酸素の補充の自動的な調整によって調節した。発酵容器への気流は、常に0.5v/v/分であった。
【0090】
dOTの急激な上昇によって特徴付けられる炭素供給源(すなわちグリセロール)の枯渇まで、発酵をバッチ方式で行った。炭素供給源消耗時点で、グリセロール/硫酸アンモニウムフィードの添加によって、流加発酵を開始した。発酵におけるバイオマスレベルがOD600=45〜55に到達したら、IPTGを最終濃度2mM(IGF−1)、0.1mM(h−Gh)、または0.5mM A5−B7まで添加することによって、誘導を行った。誘導後、流加期を40〜48時間続けた(IGF−1実行に関しては40時間;残りは48時間)。次いで、細胞および残った細胞不含増殖培地を採取した。採取した細胞をさらに、浸透圧ショック細胞分画に供して、可溶性大腸菌周辺質分画中に分配される、タンパク質含有細胞分画を単離した。
【0091】
分析法
試料の全細胞溶解物のSimplyBlue染色SDS−PAGEゲルを用いて、振盪フラスコに関する集積レベルおよび発酵評価を行った。採取した細胞をさらに、浸透圧ショック細胞分画に供して、可溶性大腸菌周辺質分画中に分配される、タンパク質含有細胞分画を単離し、そしてSimplyBlue染色SDS−PAGEゲルを用いて、異なる分画中の集積レベルを決定した。OS1(浸透圧ショック)分画は、スクロース緩衝液中での洗浄後の上清であり、OS2分画は、低イオン強度緩衝液での洗浄後の上清であり、「上清/増殖」培地は、細胞不含残渣増殖培地であり、そして「細胞ペレット」は、浸透圧ショック分画後の細胞ペレットである。
【0092】
精製された活性D1.3 Fabを用いて用意した標準曲線を参照することによって、ELISAアッセイにおけるリゾチーム(抗原)へのD1.3 Fabの結合を決定することにより、可溶性周辺質抽出物および残渣増殖培地中の生物学的活性D1.3 Fabの集積を概算した。
【0093】
精製された活性D1.3 Fabを用いて用意した標準曲線を参照することによって、ELISAアッセイにおけるヒトIgG Fabドメインに特異的な抗体へのA5B7 Fabの結合を決定することにより、可溶性周辺質抽出物および残渣増殖培地中の生物学的活性A5B7 Fabの集積を概算した。
【0094】
結果
株CLD331および420
SDS−PAGE/ウェスタンブロットによって、振盪フラスコ中、IGF−1は、振盪フラスコおよび発酵の両方から、〜6kDaのプロセシングされた産物として分泌されることが示され、分泌が成功したことが示された。
【0095】
株CLD429および433
SDS−PAGEによって、振盪フラスコ中、hGHは、〜22kDaのプロセシングされた産物として分泌されることが示され、分泌が成功したことが示された。
【0096】
株CLD048および433
ELISA分析によって、振盪フラスコ中、同等の条件下で、D1.3は、フォルダーゼを含まない場合の300μg/mlに比較して、フォルダーゼを含むと600μg/mlで分泌されることが示された。これによって、フォルダーゼの発現は、活性産物収量の増加を導きうることが示された。
【0097】
株CLD428および430
ELISA分析によって、振盪フラスコ中、同等の条件下で、A5B7は、フォルダーゼを含まない場合の18ng/ml/ODに比較して、フォルダーゼを含むと54ng/ml/ODで分泌されることが示された。
【0098】
発酵装置において、A5B7は、フォルダーゼを含まない場合の874μg/Lに比較して、フォルダーゼを含むと1335μg/Lで分泌された。
これらの結果は、フォルダーゼの発現が活性産物収量の増加を導きうることを示した。
【0099】
株CLD453および454
SDS−PAGE/ウェスタンブロットによって、振盪フラスコ中、FGF−21は、〜23kDaのプロセシングされた産物として分泌されることが示され、分泌が成功したことが示された。
【0100】
株CLD442および443
SDS−PAGE/ウェスタンブロットによって、振盪フラスコ中、RapLR1は、〜12kDaのプロセシングされた産物として分泌されることが示され、分泌が成功したことが示された。
【0101】
株CLD438および439
SDS−PAGE/ウェスタンブロットによって、振盪フラスコ中、Elafinは、フォルダーゼの存在下で、〜7kDaのプロセシングされた産物として分泌されるが、フォルダーゼがないと、株中で検出不能であることが示された。これによって、フォルダーゼの発現は、産物分泌の増加を導きうることが示された。
【0102】
株CLD440および441
SDS−PAGE/ウェスタンブロットによって、振盪フラスコ中、MIC6は、〜39kDaの産物として分泌されることが示され、分泌が成功したことが示された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]