(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フェニル基を有する重合性単量体、及び、フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体を成分とし、かつ非イオン性界面活性剤を水性媒体に対する重量%濃度で、0.005〜0.02%とした反応系で乳化重合したラテックスであって、
平均粒子径が0.005〜1.0μmであり、
上記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル類である粒子凝集測定用ラテックス粒子。
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーが、下記式(I)に示す構造を有し、重量平均分子量が1000〜15000であり、かつEO含有率が5〜90%である請求項1に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。
HO(C2H4O)a−(C3H6O)b−(C2H4O)cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+b+cが17〜300単位となることを限度として、a+cは2〜270単位の平均重合度のオキシエチレンとなるよう決定され、かつbは15〜40単位の平均重合度のオキシプロピレンとなるよう決定される。)
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーが、(1)〜(4)よりなる群より選ばれるものである請求項2に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。
(1)重量平均分子量1333、EO含有率10%、
(2)重量平均分子量2222、EO含有率10%、
(3)重量平均分子量8000、EO含有率85%、
(4)重量平均分子量13333、EO含有率85%。
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が、下記式(II)に示す構造を有し、HLB値が、5.0〜19.3の範囲にある請求項1に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。
R1O(AO)n−H (II)
(式中、R1は、炭素数8〜22の範囲にあるアルキル基またはアルケニル基を示し、AOはオキシアルキレン基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキル基を示す。nはAOが示すオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、nは2〜15の整数である。)
上記フェニル基を有する重合性単量体がスチレン、フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体がスチレンスルホン酸ナトリウムである請求項1に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳説する。本発明に用いられるフェニル基を有する重合性単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸などが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上が混合されていても良い。なかでもスチレンが好ましく用いられる。
【0013】
フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体としては、重合後のラテックス粒子表面にスルホン酸基を含有させることができる単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩などが挙げられる。また、この場合の塩としても、特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、スチレンスルホン酸塩が好ましく、スチレンスルホン酸ナトリウムが更に好ましく用いられる。
【0014】
本発明のラテックス粒子は、上記フェニル基を有する重合性単量体と上記フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体とを、水性媒体に対し非イオン性界面活性剤0.005〜0.02重量%含有した反応系で乳化重合することにより得られる。なお、本発明の「乳化重合」とは、重合開始時点で、乳化剤としての界面活性剤を反応系に全く添加しない「ソープフリー重合」以外の重合方法であって、重合開始時点で反応系にごく微量(前記した濃度範囲)の界面活性剤を外因的に添加共存させて行う重合方法のすべてを指す。本発明における界面活性剤は、従来の乳化剤用途での使用と異なり、界面活性剤それ自体が重合反応の成分を乳化させている必要はない。本発明において添加する界面活性剤は、それ自体により、重合反応の成分を実際に乳化していても、していなくてもよく、乳化していることは必須ではない。
【0015】
上記乳化重合の方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、非イオン性界面活性剤を0.005〜0.02重量%含む水性媒体が仕込まれた反応容器内に、上記フェニル基を有する重合性単量体、上記フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら加熱する方法等が挙げられる。この場合、重合温度としては50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜85℃である。また、重合時間としては、重合性単量体の組成、濃度、及び、重合開始剤等の条件にもよるが、通常5〜50時間である。
【0016】
上記水性媒体としては、水(脱イオン水)単独、もしくは水および水と相溶するアルコールなどの水溶性溶媒の混合溶媒を使用することが好ましく、例えば水とエタノールなどのアルコールとの混合溶媒を使用することが好ましい。中でも水単独を用いることがより好ましい。
【0017】
上記水性媒体に溶解させる非イオン性界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤を用いることができる。本発明に好適な非イオン性界面活性剤は、大きく以下の群に分けることができる。一つはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、もう一つはポリオキシアルキレンアルキルエーテル類である。
【0018】
本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、下記式(I)に示す構造を有し、重量平均分子量が1000〜15000であり、かつEO含有率が5〜90%である。
【0019】
HO(C
2H
4O)
a−(C
3H
6O)
b−(C
2H
4O)
cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+b+cが17〜300単位となることを限度として、a+cは2〜270単位の平均重合度のオキシエチレンとなるよう決定され、かつbは15〜40単位の平均重合度のオキシプロピレンとなるよう決定される。)
【0020】
本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、上述のように疎水性のポリオキシプロピレンブロックポリマーが、2つの親水性のポリオキシエチレンブロックポリマーにより挟まれた構造より成り、非イオン性界面活性剤として挙動する。
【0021】
本発明において使用するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含有する市販品の具体的な例としては、「エパン(登録商標)」の名称で第一工業製薬社より販売されている非イオン性界面活性剤や「プルロニック(登録商標)」の名称でアデカ社より販売されている非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
なお、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーの成分としての表記は数種類存在し、各表記間で相互に同一性、類似性を確認できるが、同一名称の市販品であっても各表記間での数値が完全に一致しない場合がある。これらは重合性高分子に特有のものであり当業者は当然に理解しうる。
【0022】
本発明において使用するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーの、より具体的な市販品の例を以下に挙げる。
「エパン(登録商標)」の名称で第一工業製薬社より販売されている非イオン性界面活性剤としては、以下が挙げられる。
エパン410:重量平均分子量1333、EO含有率10%、
エパン710:重量平均分子量2222、EO含有率10%、
エパン485:重量平均分子量8000、EO含有率85%、
エパン785:重量平均分子量13333、EO含有率85%、
エパン750:重量平均分子量4000、EO含有率50%、
エパン420:重量平均分子量1500、EO含有率20%、
エパン450:重量平均分子量2400、EO含有率50%、
エパン610:重量平均分子量2000、EO含有率10%、
エパン680:重量平均分子量8800、EO含有率80%、
エパン740:重量平均分子量3300、EO含有率40%、
エパン720:重量平均分子量2500、EO含有率20%、
これらのうち、エパン410、エパン710、エパン485、エパン785を使用することが本発明には好ましい。
【0023】
「プルロニック(登録商標)」の名称でアデカ社より販売されている非イオン性界面活性剤としては、以下が挙げられる。なお下記でPPGはポリプロピレングリコール(前出のポリオキシプロピレンと同義)を意味する。
プルロニックL−42:PPG分子量1,200、EO含有率20%
プルロニックL−43:PPG分子量1,200、EO含有率30%
プルロニックL−44:PPG分子量1,200、EO含有率40%
プルロニックL−61:PPG分子量1,750、EO含有率10%
プルロニックL−62:PPG分子量1,750、EO含有率20%
プルロニックL−64:PPG分子量1,750、EO含有率40%
プルロニックP−65:PPG分子量1,750、EO含有率50%
プルロニックF−68:PPG分子量1,750、EO含有率80%
【0024】
本発明のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類は、下記式(II)に示す構造を有し、HLB値が、5.0〜19.3の範囲にある。
R
1O(AO)
n−H (II)
(式中、R
1は、炭素数8〜22の範囲にあるアルキル基またはアルケニル基を示し、AOはオキシアルキレン基を示す。nはAOが示すオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、nは2〜15の整数である。)
【0025】
R
1が示す炭素数8〜22の範囲にあるアルキル基またはアルケニル基の具体例としては、オクチル基(炭素数8)、2−エチルヘキシル基(炭素数8)、デシル基(炭素数10)、イソデシル基(炭素数10)、ラウリル(ドデシル)基(炭素数12)、トリデシル基(炭素数13)、セチル基(炭素数16)、オクタデシル基(炭素数18)、オレイル基(炭素数18)等を挙げることができる。ここで、R
1が示す炭素数8〜22の範囲にあるアルキル基またはアルケニル基は、上記に例示したように直鎖であっても分岐鎖であってもよく、一以上の不飽和結合を有していてもよい。
【0026】
AOが示す炭素数2〜4のオキシアルキレン基の具体例としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。当該オキシアルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0027】
本発明において使用するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類のより具体的な市販品の例を以下に挙げる。
ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル(ニューコール1008:日本乳化剤社製など)、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(ノイゲンXL:ポリオキシアルキレン部分はポリオキシ短鎖アルキレンとポリオキシエチレンの重合体よりなる。第一工業製薬社製など)、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル(ノイゲンSD:第一工業製薬社製など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(DKSNL:第一工業製薬社製など)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノイゲンTDS:第一工業製薬社製など)、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル(ノイゲンTDX:ポリオキシアルキレン部分はポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンの重合体よりなる。第一工業製薬社製など)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ノイゲンLF:第一工業製薬社製など)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(ニューコール1606:日本乳化剤社製など)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(ニューコール1204:日本乳化剤社製など)、などが挙げられる。
これらのうち、ノイゲンTDS−50(ポリオキシエチレントリデシルエーテル。HLB10.5)、DKS NL40(ポリオキシエチレンラウリルエーテル。HLB9.5)、ニューコール1008(ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル。HLB14.6)を使用することが本発明には好ましい。
【0028】
本発明において表示されるHLB値は、下記式(III)を用いる、いわゆるグリフィン法により算出することができる。
HLB値=20x親水部の式量の総和/分子量 (III)
本発明においてHLB値は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の構造を特定する上で有用な情報である。例えば、ノイゲンTDS−50(ポリオキシエチレントリデシルエーテル。HLB10.5)であれば、HLB値=ポリオキシエチレンの式量の総和/(トリデシルエーテル部分の分子量+ポリオキシエチレンの式量の総和)より、10.5=(44n)/(199+44n)を代入することで、ポリオキシエチレン付加モル数nを、約5と見積もることができる。
【0029】
これらの非イオン性界面活性剤を、水性媒体に対する重量%濃度で、0.005〜0.02%用いることが本発明に該当する。0.005%未満であると本発明の非イオン性界面活性剤の効果が十分に得られない。0.02%超であると、非特異的反応も抑制するが、検出対象物質と特異的に反応する物質(抗原や抗体)を粒子表面に物理的に吸着しにくくなり、その結果、感度が低下するため好ましくない。尚、これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよいが、混合する場合は、その合計量が0.005〜0.02%の範囲となるように調製する必要がある。
【0030】
上記重合開始剤としては、公知のラジカル開始剤を用いることができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を挙げることができる。なかでも過硫酸塩が好ましく、より好ましくは、過硫酸カリウムが用いられる。上記重合開始剤の使用量としては特に限定されないが、通常は重合性単量体量に対して0.01〜5重量%の範囲で用いる。
【0031】
また、本発明のラテックス粒子の用途によっては、上記重合の際に、更に重合性不飽和単量体を添加してもよい。上記重合性不飽和単量体としては通常のラジカル重合に使用可能なものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、(メタ)アクロレイン、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体等が挙げられる。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0032】
上記ラテックス粒子の平均粒子径は、0.005〜1.0μmである。0.005μm未満であると、凝集による光学的変化量が小さすぎて測定に必要な感度が得られず、また、試薬調製時の遠心分離の際に多くの時間がかかり試薬コストが高くなる。1.0μmを超えると、被検物質が高濃度であるときにラテックス粒子の凝集による光学的変化量が測定可能領域を越えてしまい、被検物質の量に応じた光学的変化量が得られない。試薬用ラテックス粒子を使用する測定方法、測定機器によって異なるが、好ましくは0.05〜0.7μm、より好ましくは0.05〜0.4μmである。
【0033】
上記ラテックス粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましい。20%を超えると、試薬調製時のロット再現性が悪く、測定試薬の再現性が低下することがある。より好ましくは15%以下である。尚、上記粒子径の変動係数は、次の式により算出される。
粒子径の変動係数(CV値)=粒子径の標準偏差/平均粒子径
【0034】
本発明のラテックス粒子は、水等の水性媒体に懸濁した状態で得られる。粒子濃度としては特に限定されないが、通常は1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、試薬調製時に濃縮する必要があり、20重量%を超えると、凝集してしまうことがある。
【0035】
検出対象物質と特異的に反応する物質が物理的に吸着して担持されたラテックス粒子(感作ラテックス)および該ラテックス粒子を含む粒子凝集測定試薬も本発明の1つである。上記「検出対象物質と特異的に反応する物質」としては、免疫血清学的検査試薬(免疫学的凝集反応及び凝集阻止反応において使用されるもの)、生化学測定法として通常使用される生理活性物質であれば特に限定されないが、なかでも、抗原抗体反応に利用できるものが好適である。
【0036】
上記抗原抗体反応に利用できるものとしては、例えば、タンパク質、核酸、核タンパク質、エストロゲン脂質等の抗原又は抗体が挙げられる。抗原としては、例えば、各種抗原、レセプター、酵素等が挙げられ、β2マイクログロブリン、C−反応性蛋白質(CRP)、インスリン、ヒトフィブリノーゲン、フェリチン、リウマチ因子(RA)、α−フェトプロテイン(AFP)、マイコプラズマ抗原、HBs抗原等が挙げられる。また、抗体としては、例えば、各種の毒素や病原菌等に対する抗体が挙げられ、抗ストレプトリジンO抗体、抗エストロゲン抗体、抗β2マイクログロブリン抗体、抗梅毒トレポネーマ抗体、梅毒脂質抗原に対する抗体、抗HBs抗体、抗HBc抗体、抗HBe抗体、抗PSA抗体、抗CRP抗体、抗インスリン抗体、抗Dダイマー抗体等が挙げられる。なお、抗体としては、免疫グロブリン分子自体の他、例えば、F(ab')2のような断片であってもよい。更に抗体としてはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。
【0037】
上記ラテックス粒子に検出対象物質と特異的に反応する物質を担持(感作)させる方法としては、物理的な吸着方法であれば、特に限定されず、従来公知の方法により担持させればよい。
【0038】
また、担持後には、必要に応じて牛血清アルブミン等でブロック処理を施し、適当な緩衝液に分散して感作ラテックス分散液を作製することができる。この感作ラテックス分散液に、測定に用いる緩衝液および標準物質等を組み合わせて、粒子凝集測定用試薬(キット)として用いることができる。
【0039】
上記検出対象物質と特異的に反応する物質がラテックス粒子に担持される量は、用いられる被検物質と特異的に反応する物質の種類により異なり、特に限定されない。
【0040】
抗原や抗体などを担持する上記ラテックス粒子を含む測定試薬を使用するにあたっては、測定感度の向上や抗原抗体反応の促進のために種々の増感剤を含有してもよい。上記増感剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル化多糖類、プルラン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0041】
本発明のラテックス粒子を用いることで、高度に非特異的反応が抑制されるが、検体中に存在する他の物質により引き起こされる非特異的反応を更に抑制するため、又は、試薬の保存安定性を高めるために、アルブミン(牛血清アルブミン、卵性アルブミン)、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質やその分解物あるいはペプチド、アミノ酸又は界面活性剤等ラテックス粒子を使用した免疫学的測定方法、試薬の分野で公知の成分を含有してもよい。
【0042】
また、検出対象物質は、適当な希釈液で希釈してもよい。上記希釈液としてはpH5.0〜9.0の緩衝液であればどのようなものでも用いることができ、たとえば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。
【0043】
本発明の抗原や抗体などを担持する上記ラテックス粒子を含む測定試薬を用いれば、検体中の検出対象物質と、ラテックス粒子に担持された検出対象物質に特異的に反応する物質との反応により生じるラテックス粒子の凝集の度合いを光学的に測定することにより、検体中の検出対象物質の反応量を測定することができる。上記光学的測定には、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器、またはこれらの検出方法を複数備えた光学機器などに代表される一般の生化学自動分析機であればいずれも使用することができる。
【0044】
上記凝集の度合いを光学的に測定する方法としては従来公知の方法が用いられ、例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布又は平均粒径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。
【0045】
また、凝集度合いの変化量の測定法としては、例えば、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分(増加速度)に基づき凝集の程度を求める速度試験(レートアッセイ)、ある時点(通常は反応の終点と考えられる時点)で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の程度を求める終点試験(エンドポイントアッセイ)等が挙げられる。なかでも、測定の簡便性、迅速性の点から比濁法による終点試験が好適である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。尚、得られたラテックス粒子の粒径は下記のように測定した。
ラテックス粒子の粒径測定
ラテックス粒子を常法に従ってコロジオン膜状に載せ、透過型電子顕微鏡により粒子画像を撮影し、画像上の粒子径(100個以上)を計測することにより平均粒子径及び標準偏差を求めた。
【0047】
[実施例1]
攪拌機、還流用冷却器、温度検出器、窒素導入管及びジャケットを備えたガラス製反応容器(容量2L)に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:分子量1333、EO含有率10%、第一工業製薬社製)0.10gを超純水1000gに溶解させた溶液、及びスチレンモノマー150g、スチレンスルホン酸ナトリウム0.80g、過硫酸カリウム0.72gを添加し、容器内を窒素ガスで置換した後、70℃、210rpmの速度で攪拌しながら24時間重合を実施した。
重合終了後、上記溶液をろ紙にてろ過処理し、ラテックス粒子を取り出した。その後、透析膜にて48時間透析処理を行い、精製されたラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.114μm(CV10.4%)であった。
【0048】
[実施例2]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン710:分子量2222、EO含有率10%、第一工業製薬社製)0.10gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.116μm(CV9.6%)であった。
【0049】
[実施例3]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン485:分子量8000、EO含有率85%、第一工業製薬社製)0.10gに変更したこと、及びスチレンスルホン酸ナトリウム0.80gを2.00gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.093μm(CV9.5%)であった。
【0050】
[実施例4]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン785:分子量13333、EO含有率85%、第一工業製薬社製)0.10gに変更したこと、及びスチレンスルホン酸ナトリウム0.80gを2.00gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.108μm(CV6.6%)であった。
【0051】
[実施例5]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gを0.05gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.110μm(CV10.9%)であった。
【0052】
[実施例6]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gを0.20gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.104μm(CV11.2%)であった。
【0053】
[実施例7]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノイゲンTDS−50:第一工業製薬社製、HLB10.5)0.10gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.101μm(CV10.2%)であった。
【0054】
[実施例8]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(DKSNL−40:第一工業製薬社製、HLB9.5)0.10gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.102μm(CV10.5%)であった。
【0055】
[実施例9]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル(ニューコール1008:日本乳化剤社製、HLB14.6)0.10gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.107μm(CV11.1%)であった。
【0056】
[比較例1]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.099μm(CV11.1%)であった。
【0057】
[比較例2]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gを1.00gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.105μm(CV9.8%)であった。
【0058】
[比較例3]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gをポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン710:第一工業製薬社製)1.00gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.107μm(CV8.6%)であった。
【0059】
[比較例4]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gを0.04gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.102μm(CV9.9%)であった。
【0060】
[比較例5]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン410:第一工業製薬社製)0.10gを0.30gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は、0.101μm(CV10.8%)であった。
【0061】
[適用例1]
用いた試薬及び材料は以下の通りである。
<試薬及び材料>
・抗Dダイマー抗体
・抗体感作ラテックス調製用緩衝液:20mM Tris-HCl(pH8.0)を用いた。
・ブロッキング用緩衝液:2%BSAを含む20mM Tris-HCl(pH8.0)を用いた。
・検体希釈用緩衝液:0.15%BSAを含む30mM Tris-HCl(pH8.5)を用いた。
【0062】
<Dダイマー測定用試薬の調製>
実施例1〜6、比較例1〜3で得られたラテックス粒子を遠心分離で精製した後、5%(w/v)となるよう抗体感作ラテックス調製用緩衝液にて希釈して、希釈ラテックス液を調製した。
一方、抗Dダイマー抗体を濃度1mg/mLとなるよう抗体感作ラテックス調製用緩衝液にて希釈して、希釈抗体溶液を調製した。
上記希釈ラテックス液1容を攪拌しながら上記希釈抗体溶液1容を添加・混合し、更に攪拌した。その後、ブロッキング用緩衝液2容を追加添加し、攪拌を続けた。その後、これを回収し、緩衝液を用いて0.5%(w/v)に調整して、抗体感作ラテックス分散液とした。該抗体感作ラテックス分散液を用い、Dダイマー抗原標準液にて検量線を作成した。
装置:日立 7170型自動分析装置
使用波長:570/800nm、測定温度:37℃
被検査物質(0〜58μg/mLのDダイマー標準液):12μL
第1試薬(0.15%BSAを含む30mM Tris-HCl(pH8.5)):100μL
第2試薬(抗体感作ラテックス(0.5%(w/v))分散液):100μL
測光ポイント:18−34
【0063】
[測定例1]
実施例1〜6および比較例1〜3のラテックス粒子に抗Dダイマー抗体を感作した、抗体感作ラテックス(0.5%(w/v))分散液を用いて、上記測定方法に従い測定し、検量線を作成した(
図1)。実施例1〜6のラテックス粒子を用いた場合は高感度の測定が可能であった。一方、比較例1〜3のラテックス粒子を用いた場合は、実施例1に比較して低い感度しか得られなかった。
【0064】
[測定例2]
実施例1〜6および比較例1〜3のラテックス粒子に抗Dダイマー抗体を感作した、抗体感作ラテックス粒子(0.5%(w/v))分散液とDダイマー乖離検体(2種)を用いて、上記測定方法に従い測定し、その値を測定例1によって求めた検量線からそれぞれ濃度換算を行った。ここで、Dダイマー乖離検体とは、従来のDダイマー免疫比濁測定系で非特異的凝集反応が観察された検体をいう。その結果を
図2及び
図3に示す。実施例1〜6のラテックス粒子を用いた場合は、非イオン性界面活性剤を用いなかった比較例1に対して、乖離検体の非特異的凝集反応を高度に抑制することが認められた。また、比較例2〜3のラテックス粒子を用いた場合は、実施例1〜6よりも高度に乖離検体の非特異的凝集反応を抑制することが認められたが、感度が大幅に低下していることから、抗体がラテックス粒子表面に十分に吸着(感作)しなかったと考えられる。
【0065】
[適用例2]
用いた試薬及び材料は以下の通りである。
<試薬及び材料>
適用例1に同じ。
【0066】
<Dダイマー測定用試薬の調製>
実施例7〜9、比較例4〜5で得られたラテックス粒子を用いた以外は、適用例1と同様の操作にて抗体感作ラテックス分散液を調整した。
該抗体感作ラテックス分散液を用い、Dダイマー抗原標準液にて検量線を作成した。
装置:日立 7170型自動分析装置
使用波長:570/800nm、測定温度:37℃
被検査物質(0〜58μg/mLのDダイマー標準液):12μL
第1試薬(0.15%BSAを含む30mM Tris−HCl(pH8.5)):100μL
第2試薬(抗体感作ラテックス(0.5%(w/v))分散液):100μL
測光ポイント:18−34
【0067】
[測定例3]
実施例7〜9および比較例4〜5のラテックス粒子に抗Dダイマー抗体を感作した、抗体感作ラテックス(0.5%(w/v))分散液を用いて、上記測定方法に従い測定し、検量線を作成した(
図4)。実施例7〜9のラテックス粒子を用いた場合は高感度の測定が可能であった。一方、比較例4〜5のラテックス粒子を用いた場合は、実施例7〜9に比較して低い感度しか得られなかった。
【0068】
[測定例4]
実施例7〜9および比較例4〜5のラテックス粒子に抗Dダイマー抗体を感作した、抗体感作ラテックス粒子(0.5%(w/v))分散液と、適用例1と同じDダイマー乖離検体(2種)を用いて、上記測定方法に従い測定し、その値を測定例3によって求めた検量線からそれぞれ濃度換算を行った。その結果を
図5及び
図6に示す。実施例7〜9のラテックス粒子を用いた場合は、非イオン性界面活性剤を用いる濃度が低い比較例4に対して、乖離検体の非特異的凝集反応を高度に抑制することが認められた。また、比較例5のラテックス粒子を用いた場合は、実施例7〜9よりも乖離検体の非特異的凝集反応を抑制することが認められたが、感度が大幅に低下していることから、抗体がラテックス粒子表面に十分に吸着(感作)しなかったと考えられる。